銀行が輸出する企業と接点を持つのは、銀行に船積書類が持ち込まれた段階からです。これをポイントに考えれば銀行との上手な付き合いができることでしょう。|銀行との上手な付き合い方-輸出と船積書類

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公開日:2015.10.29  / 最終更新日:2015.10.30

銀行との上手な付き合い方-輸出と船積書類

前回は貿易と外為の違いについてお話をしました。

ここからはその違いを踏まえて、銀行との上手な付き合い方を、
二回に分けて考えてみたいと思います。

先ずは輸出企業の皆さん向けのお話です。

ただし「カミ」をからめる話なので、
前回で触れた、「クリーン取引」はここでは考えません。

銀行が輸出企業と接点を持つのは、
銀行に船積書類が持ち込まれた段階からです。
ここが輸出「ドキュメンタリー取引」のスタート地点となります。

一方、輸出担当の皆さんから見れば、
銀行に書類を持ち込むのは船積後です。

陸上競技で言えば第四コーナーを過ぎて、
ホームストレッチに差し掛かった段階でしょうか。

ようやくゴールが見えてきたというわけですね。

「スタートとゴール」この認識の差は大きく、
いろいろな場面で、
銀行と企業の見解の相違が出る事になります。

平たく言うと、何か不都合が発生した場合、
銀行も企業も早く解決したいのに、

「なんでこんな書類を作ったのか?」(銀行)

「貨物はもう出したのだから、細かいことは言わずに、
一刻も早く輸入者側へ書類を発送してほしい。」(企業)

といった認識が衝突して、話がうまく進まないという、
不幸な状況に陥りがちです。

こんな状態では銀行と話をしても、
なかなかスムーズにはいかないと想像できませんか。

ちなみにこの衝突の傾向は、単純な取立依頼より買取の依頼、
中でもL/C付買取依頼の時に強く表れることになります。
(L/Cとは信用状のことです)

これはそれぞれの取引における、銀行の立場の違いによります。

取立であれば単なる委任契約の受任者の立場なので、
万一決済がされなくて代金回収が不能となっても、
銀行は直接損害を被るわけではありません。

しかし買取となると銀行は債権者の立場です。
代金回収が出来なければ、
輸出者から資金を返却してもらわねば、実損が出てしまいます。

銀行というところは、実損事故を極端に嫌がりますので、
その危険性のある取引には、事細かく関与してくるというわけです。

L/C付買取が最も細かく銀行と折衝が必要となる理由は、
銀行が今お話しした債権者の立場になるという点に加えて、
L/C取引では輸入者側から資金を回収するためには、
そのL/Cと輸出者提出の船積書類とが一致している事が、
大前提となるためです。

銀行から過剰(?)なまでの、問い合わせがくるのはこのせいです。

こういった銀行と上手に付き合うコツは以下の通りです。

先ずは一にも二にも「正確な書類」です。

特にL/C付の場合は、
もともとの契約やそれまでの商売の経緯がどうであれ、
L/Cで決められた通りの書類を作って、
銀行に提出することを強くお勧めします。

これはL/C取引の基本ルールである「信用状統一規則」という、
世界的な決め事の中に、L/Cで定めた条件通りの書類を、
L/C発行銀行に送れば、
必ず決済してもらえる、という約束が決められており、
銀行は、それを拠り所にする場合が大変に多いからです。

次に、銀行提出書類の作成にあたり、
L/C内容に疑問点があり、
不安を感じるようであれば、
持込予定の銀行に問い合わせれば、
実務上の対応について回答があると思います。

このように事前に銀行に照会しておけば、
その後何かあっても「事前に相談した」と強く反論できます。
(銀行はこの手のフレーズには弱いのです)

さらに言えば、普段から銀行担当者と連絡を密にしておき、
代金回収実績を積み上げておけば、銀行からたとえ照会があっても、

「指摘の点は、すでにシッパーバイヤー間で了解済みである。」

と回答することにより、迅速な書類発送が期待できます。

以上簡単ですが、輸出をする立場での、
銀行との付き合い方をお話ししました。

次回は輸入と銀行についてお話ししたいと思います。

2015/10/29 貿易実務の情報サイトらくらく貿易

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