輸入においては銀行との接点が早い段階よりあります。船積書類が到着すれば書類を受領するために、手金で決済するか、輸入ユーザンスを銀行に起こしてもらうことになります。|銀行との上手な付き合い方-輸入ユーザーンス

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公開日:2015.11.10

銀行との上手な付き合い方-輸入ユーザンス

前回は輸出企業の銀行との付き合い方についてお話をしました。

今回は輸入企業の皆さん向けてのお話です。
今回もL/C付取引が対象となります。

輸出企業との大きな違いは、
銀行との接点が、かなり早い段階からあるということです。

L/C付の取引であれば輸出者側との商談成立後、
場合によっては直ちに銀行に出向き、
L/C開設の申し込みをする必要があります。

そしてL/C発行後も、船積書類が到着する前に商品が到着した場合は、
L/G(荷物引取保証)やRelease Order(荷物引渡指図書)の発行を、
銀行に頼む必要が出来てきます。

更に船積書類が到着すれば、その書類を受領するために、
手金(てがね)で決済するか、輸入ユーザンスを銀行に起こしてもらい、
(この場合はユーザンス手形を差し入れる必要があります。)

この輸入ユーザンス、通常引き取った輸入貨物の販売代金の
回収金で、返済するのですが、
受け取った資金が現金ではなく手形の場合は、
その手形を割引してもらう必要が出てきます。
また手形回収でなくてもユーザンス期間だけでは終わらずに、
更に国内手形貸付を受けたりする場合もあります。

こうなると輸入では其の商売の過程で、
銀行はあちこちで顔を出すことになります。

輸出企業が輸入の話を手掛けたときに、
輸入は輸出の反対ぐらいの認識で銀行と付き合うと、
その煩雑さに悲鳴をあげることになります。

自分の仕事をスムーズにするためにも、
輸入企業の担当者は、銀行と上手く付き合う必要があるというのは、
おわかりいただけましたでしょうか。

さて、ではなぜ輸入では銀行とのやり取りが煩雑になるのでしょうか。
もちろん接点が多いのも大きな理由の一つですが、
私が経験した限りでは、
企業の担当者と銀行の担当者の、
輸入に対する認識の差が大きいように思います。

ここで目線を変えて、銀行から輸入企業を見てみましょう。

実は銀行にとって、輸入企業は一般の国内融資先と同じに見えています。
つまり貸出先であり与信先であると言うわけです。

違いがあるとすれば、仕入先が輸入なら海外ですが、
国内融資先であれば国内との違いだけです。

であれば輸入企業に対する銀行の姿勢は、
お金を貸すという銀行本来からのものに他なりません。

これに対して輸入企業の皆さんは、例えばL/Cの開設依頼が、
お金を借りるのと同じだとは思っていません。

いわば入口から、ボタンの掛け違いが生じているわけです。

皆さんにしてみれば、好きでその状態になったわけではないのですから、
こんな状態は何とかしてほしいと思うのは、当たり前だと思います。

そこで銀行の担当者の輸入に対する考えをお示しして、
それへの対応方法をご披露したいと思います。

1.銀行にL/Cを開設してもらうとき。
L/C金額と同額の借入申込みに話を置き換えた場合、
銀行はすぐ応じてくれるでしょうか?

自分のところはすぐ応じてくれるので大丈夫という方は、
そのまま銀行でL/C開設のお話をされても問題ないと思います。
しかし自分のところは心配である。
というのであれば、銀行の担当者からの質問は、
商売の中身に関する質問ではなく、
担保や保証人に関するものが複数飛んでくることになります。
(これが余り愉快な話ではありません)

2.商品の販売先は決まっていますか。
またそこからの回収条件は何でしょうか。

輸入の話をしているのに、なぜ国内取引の話が出るのか,
と不思議な気になるかもしれませんが、
銀行の担当者の輸入に関する話の関心は,
ズバリこの一点に集約されています。
要はきちんとお金を返してくれるかどうか。そこが知りたいのです。

ここの部分が明確で問題が無ければ、話は簡単です。
もしここが若干でも弱いのであれば、
上記1.でもお話しした担保だ保証人だとの話になります。

以上結論を申し上げると、輸入で上手く銀行を使うには、
輸入取引(特にL/C)は資金借り入れと同じと割り切って、
場合によっては追加で担保や保証人を考える。
これで行けばストレス・レベルを下げる事が出来ると思います。

輸出に比べて接点が多い分、銀行のロジックに辟易する場面も、
多いかと思いますが、銀行の本音を知って、
先手必勝で行って頂ければと思います。

2015/11/10 貿易実務の情報サイトらくらく貿易

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