貿易取引のため銀行にいくと本人確認と取引確認のための確認書類を求められます。確認を求める背景や必要なものが分かっていれば、余計な時間を使わずに済みます。 |法人が銀行で本人確認と取引確認が必要なわけは?

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公開日:2016.02.11

法人が銀行で本人確認と取引確認が必要なわけは?

『銀行に行くと事あるごとに、確認・確認と言われ書類が必要になる。
なんでこんなに面倒くさいのか。簡単にすむ方法はないの?』
(銀行窓口に訪れた経理担当者)

銀行の窓口では、よく確認書類を求められます。
たいていの人は手続きを、早くしてもらいたいので、
言われた通りにしています。

ただ書類を求める背景や必要なものが分かっていれば、
余計な時間を使わずに済みます。
今回はその辺のところを、お話ししてみたいと思います。

冒頭で確認・確認と述べましたが、実はこの言葉、
本人確認と取引時確認の二つに分かれます。

つまり銀行は取引者(皆さんのことです)を確認するとともに、
取引内容(海外送金なら海外送金)の確認をするわけです。

銀行の窓口担当者は、ニッコリ微笑んで取引依頼をうけつつ、
頭の中を猛烈に回転させて、この二つの確認を行っているのです。
その道のプロのなせる業とはいえ、敬服に値すると思います。

とはいえ感心ばかりでは仕方がないので、
ここから説明を加えていきます。

まず本人確認ですが、これは次の式が成立します。
本人確認=存在証明+同一証明 (ん!?よくわからん….)

ここでいう存在証明とは、
この世にその人が存在している証明のことです。
また同一証明とは取引を依頼している人と、
窓口来店者が同じ人である証明のことです。

本人確認とはこの二つの証明を合わせたものです。

これらを満たすものとしては、
具体的には官公庁(お役所ともいいます)が、
発行した顔写真付きの証明書があげられます。
代表的なものは運転免許証や住民基本カードです。
(住民基本カードは2018年から個人番号カードに変わりました)

これらには本人の顔写真、氏名、住所、生年月日が表示されています。
つまりこれがあれば、上の算式の右側を満たすことになります。
本人確認はこれでOKというわけです。

銀行へ行くときは念のため、顔写真付きの資料携帯をお勧めします。

なお、人によってはこれらの確認書類は持ってない!
という人もおられると思います。

銀行では、ほかの書類(例えば健康保険証)でも可としています。
ただ同一証明の部分が弱いため(顔写真がないので)、
追加の資料を求められる場合があります。

もしこの手の資料を持参するのであれば、
あらかじめ銀行に照会することをお勧めします。

lここまでは個人の話でしたが、
次に取引依頼者が法人の場合はどうでしょうか?
こちらの方が皆さんには切実かもしれません。

法人は擬制的な存在
(この言葉の意味するところは、
法人は生き物ではありません。
そこで法律行為が出来るようにするため、
人間のような扱いをする。ということです。
擬制的というのはそのことを指します。)

なので、個人(自然人ともいいます)と違って、
本人確認は法人そのもの存在の証明と、
窓口に出向く担当者の個人としての本人確認
(存在証明と同一証明を満たす)が必要となります。

さらにはなはだ面倒なことではありますが、
担当者の方が、本当にその法人の所属かも確認する
必要があります。(なりすましを防ぐためです)

法人の存在証明の例として挙げられるのは、
その会社の登記事項証明書などが代表例です。
また担当者の本人確認資料は、
個人のところで述べた通りです。

最後に担当者の所属確認ですが、
一般には社員証や名刺(複数枚)で確認する場合が多いようです。
(これには特段の決め事はありません)

このように本人確認は大変面倒な部分があります。
ただ簡略化出来ないかと言えばそうでもありません。

窓口で現金で取引する限りは、
毎回これらの手続きが必要になるのですが、
本人確認が済んでいる口座で取引すれば、
「本人確認済口座取引」ということで、
改めて確認資料は原則として求められません。

どこか銀行を決めてそこで出来るだけ取引をすれば、
少なくとも本人確認については、通常は心配する必要はありません。

次に取引時確認です。
これは本人確認と異なり、
銀行取引全部に対して求められているわけではありません。
しかし外為取引などは、ほぼすべてがその対象となります。

この取引時確認は本人確認と異なり、
特定の確認資料が求められているわけではありません。

ポイントは大きく分けて二つです。

一つは取引の対象相手です。
国連の制裁対象国や、日本や米国の独自制裁の対象国との取引は、
銀行では受け付けてくれません。
(ここでは具体的には国名はあげませんが、
銀行に聞けば教えてくれます。)

注意を要するのは制裁対象国との取引とは、
単に取引の相手方が制裁対象国の場合がダメ、
ということだけではなく、
取引の相手方は制裁対象国の業者ではないし、
貨物も別の場所に行くのだが、
貨物のエンドユーザーが、制裁対象国所在の業者である場合とか、
使用する運送手段が、制裁対象国に関係する場合も含める。

ということです。
これは想像以上に範囲が広く、
銀行も事前に制裁対象を明らかにすることは困難なので、
取引ごとに確認をしていくという流れになります。

皆さんとしては、この銀行の判断を誤った方向に行かせないように、
正確に情報を銀行に伝える必要があります。

ポイントの二つ目は、商品そのものです。
武器や麻薬のように誰もが、これはNGと言うのはもちろんですが、
特に輸出の場合に軍事転用が可能なものが要注意です。

これは「安全保障貿易管理」というカテゴリーで対応します。
実際の対応としては銀行に対して、
取引時にこの取引は、「安全保障得貿易管理上問題ない」と
宣言すればよいのですが、
万一宣言した後で該当することが分かると、
大変にややこしい事となります。

このカテゴリーは「経済産業省貿易経済協力局貿易管理部」と言う
部署で管轄しています。
舌をかみそうな長さですが、
もし商品が該当するかもしれないと考えたら、
一度電話されることをお勧めします。

以上今回は、かなり難しいお話になりましたが、
要は本人確認については本人確認済口座を通じて行う。
取引時確認については正確な情報を銀行に伝える。
(エビデンスが必要な場合もアリです)
この二点が肝だと思います。

2016/2/11 貿易実務の情報サイトらくらく貿易

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