連日報道されている新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船。ところで数か国に渡って寄港するクルーズ船。船内はどの国の法律が適用されるのでしょう?船内の法律は、その船が登録されている国(旗国)と、沿岸国が関係しています。公海上では旗国の法律が適用されます。|クルーズ船はどこの国の法律が適用?

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公開日:2020.02.15  / 最終更新日:2022.01.27

クルーズ船はどこの国の法律が適用?

pic_tsuukan20200215_2新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船が、港に停泊中。連日ニュースで報じられていますね。

豪華客船での楽しい旅行が一転、不安な日々を過ごすことになった方々のことを思うと、本当に気の毒としか言いようがありません。

他にも入港拒否され、アジアの海上をさまようクルーズ船もあります。

今回このような不測の事態が起こってしまい、マイナスイメージを持った方もいるかもしれませんが、本来クルーズ船旅行は楽しいもの。

充実のエンターテインメント、豪華な食事、寄港先での観光など、楽しさに溢れた憧れの存在です。

数か国に渡って寄港するクルーズ船。船内はどの国の法律が適用されるのでしょう?

船内の法律は、その船が登録されている国(旗国)と、沿岸国が関係しています。公海上(陸地から12海里(約22km)以上離れた海上)では旗国の法律が適用されます。12海里以内は領海ですが、領海内であっても航海中は沿岸国に危害を及ぼさない限り(無害通航権)、船内では旗国の法律が適用されます。

港に停泊中や湾内では無害通航権の適用範囲外となり、その国の法律が適用されます。ちなみに、船長が警察権を持っています。

寄港先で観光する場合、船を降りるときに検疫など入国審査が行われます。日本では近年クルーズ船の寄港回数が増えました。そのため、寄港地での滞在時間をなるべく長くしてもらおうと、簡易な手続きで入国できます。

カジノができるクルーズ船もあります。
日本籍船だと、日本の法律が適用されるので、チップを換金することはできません。カジノ風ゲーム施設はあるかもしれませんが・・・。

カジノが合法な国が船籍のクルーズ船ならカジノもOK、換金もできます。ただし、カジノができるのは、船が日本から公海上に出てから。

また、公海上に出ると、船内は保税区域の扱いとなります。免税品が買え、消費税もかかりません。

大規模な宿泊設備を備えることから、宿泊需要の対応策に活用することも可能です。クルーズ船を一定期間にわたって、ホテルとして活用することを「ホテルシップ」といいます。

近年のオリンピックパラリンピックやワールドカップなどでは、ホテルシップに4~5隻の客船が使われているそうです。

東京オリンピックパラリンピックでもホテルシップの停泊が計画されています。しかし、当初名乗りを上げていた船社はキャンセル。現時点でJTBのチャーター船サン・プリンセス(バミューダ)とコスタクルーズ(イタリア)のみのようです。

政府はホテルシップを活用するためのガイドラインを作成したのですが、これが許可の嵐で、外国船籍は断念する気持ちもわかる、というものでした。例えば、プールやお風呂の営業は各都道府県等の確認。理容・美容サービスの提供には都道府県知事への届け出。クリーニング業にまで許可が必要。

日本籍船の場合は、日本の法律の下運航しているので、もともと許可を受けています。しかし、外国籍船の場合、通常のクルーズ運航・停泊において、国内での営業とみなされず、個々のサービスについて営業許可の取得等は求められていません。

ホテルシップ期間中のみ、数々の営業許可や安全措置を講じるのは労力に見合わない、と判断されたのかもしれません。

さて、新型コロナの余波ですが、クルーズ船市場にも大打撃。まさか寄港先が見つからず洋上でさまようリスクがある、なんて誰も想像しなかったのではないでしょうか。どの国が船に対して責任を負うのか、国際ルール作りが急がれます。

安心してクルーズ船を楽しめるようになるには、しばらく時間がかかりそうです。

2020/02/15
simalu 元通関士の実践コラム

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