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寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その7」 2012/06/28

寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その7 -雷峯塔物語 (田中貢太郎)」

駐在員の任務のひとつが訪問客の杭州案内。
初回なら迷わず西湖、三潭印月、宝石山の保俶塔、この一連の風景が中国一元札に印刷されているのは周知のとおり、少々年上の方には「白蛇伝」の舞台雷峰塔を加えれば、さらに親しみが沸くこと間違いなしです。

日中両国で著名な伝奇物語の題を聞き、東映動画第一号と即答するのはアニメ通、声優は宮城まり子に森繁久彌と言えたらもうマニア。しかし他に日本語で知られた作は少なく、大正の怪談作家の田中貢太郎がまとめたものが通読にはお奨めでしょう。
ただしこれは悲恋型、人と白蛇の異婚夫婦は法海禅師に引き裂かれ、白娘は「雷峯塔倒れ、西湖水乾れ」るまで塔下封印の結末です。

全編戦うヒロインに比し、ヒーロー許宣の不甲斐無さが今の若いカップルを彷彿とさせるのが一興かもしれません。雷峰塔は、西湖南、落雷で崩壊後近年再建され、エレベータで塔に上れば西湖を一望、今も賑わう観光名所です。
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 宋の高宗帝が金の兵に追われて、揚子江を渡って杭州に行幸した際のことであった。杭州城内過軍橋の黒珠巷という処に許宣という若い男があったが、それは小さい時に両親を没くして、姐の縁づいている李仁という官吏の許に世話になっていた。(中略)

 許宣はそのとき二十二であった。きゃしゃな綺麗な顔をした、どこか貴公子然たる処のある男であった。それは清明の節に当る日のことであった。許宣は保叔塔寺へ往って焼香しようと思って、宵に姐に相談して、朝早く起きて、紙の馬、抹香、赤い蝋燭、経幡、馬蹄銀の形をした紙の銭などを買い調え、飯を喫い、新しく仕立てた着物を著、鞋も佳いのを穿いて、官巷の舗へ往って李将仕に逢った。

「今日、保叔塔へお詣りしたいと思います、一日だけお暇をいただきとうございます」
 清明の日には祖先の墓へ行って祖先の冥福を祈るのが土地の習慣であるし、両親のない許宣が寺へ往くことはもっとものことであるから、李将仕は機嫌好く承知した。

「いいとも、往ってくるがいい、往ってお出で」
 そこで許宣は舗を出て、銭塘門の方へ往った。初夏のような輝の強い陽の照る日で、仏寺に往き墓参に往く男女が街路に溢れていた。(中略)

 山の麓に四聖観という堂があった。許宣が四聖観へまでおりた時、急に陽の光がかすれて四辺がくすんできた。許宣はおやと思って眼を瞠った。西湖の西北の空に鼠色の雲が出て、それが陽の光を遮っていた。東南の湖縁の雷峯塔のあるあたりには霧がかかって、その霧の中に塔が浮んだようになっていた。その霧はまだ東に流れて蘇堤をぼかしていた。
- 田中貢太郎 「中国の怪談(一)雷峯塔物語」河出文庫 -
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2012 © 宮下江里子@杭州超海科技有限公司
(Hangzhou Chao-hi Co. Ltd.)

寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その8はこちら
寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その6はこちら

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