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寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その9」 2012/07/31

寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その9 -海嘯 (田中芳樹)」

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」
2012年のNHK大河ドラマは平清盛。杭州を都とした南宋王朝をたどると、その興亡が平家と類似することに驚きます。

共通点は貿易で築いた富と高い文化。平家を滅ぼすのは関東騎馬武士団を率いる源家。指揮官源義経は東北平泉では自刃せず、大陸へ渡りチンギス汗に成るという夢の民間伝承もあり、そのチンギスの孫、騎馬民族蒙古元帝国第五代ハーン・フビライが、南宋朝廷を杭州臨安府から厓山の彼方の海洋へ追い滅ぼしました。

陸路を馬に追われ、最後は海戦で海にて滅ぶ。1185年、平家方八歳の安徳天皇は、平清盛の未亡人二位ノ尼に抱かれ壇ノ浦海中へ。1279年、南宋最後の帝ヘイ(日かんむりに丙)は九歳、「左承相陸秀夫負帝投海、宋亡。」ともに罪無き幼帝の入水で終焉を迎えました。

元王朝はこの後1281年に日本へ襲来(元寇弘安の役)、巡る因果、九州沖の「神風(台風)」でほぼ全滅の憂き目に遭い、これを機に滅びの下り坂を転がり出します。

元の軍船には南宋の民も徴兵され、日本方は海難の兵が宋の遺民だと判ると、亡国の境遇を哀れみ、密かに救命したというエピソードが残されています。

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船室を出てみると、蘇劉義や兵士たちがこぞって前方を指さしている。視線を動かして、陳宜中や鄭虎臣は見た。遠く海面上に陽炎が揺れ、そのなかに、あるはずのない城市が浮揚している。

蜃気楼。あるいは海市蜃楼という。海中に巨大な蜃(はまぐり)がおり、それが息を吐き出すと空中に楼閣があらわれると信じられていた。このとき、よほど気象条件がよかったのであろう。あわい虹色にきらめく海上の城市は、いくつもの高層の楼閣をつらね、潮の音はさながら数万の群衆のざわめきを想わせる。

「まるで杭州臨安府のようだ」
誰かがいった言葉に船上の男たちはと胸を突かれた。「ああ・・・・・・」という声が洩れた。

杭州の城市は今も存在する。だが「臨安府」の呼称は廃され、朝廷も存在しない。宋の首都ではなく、元の一地方都市となってしまった。あいかわらず繁栄し、人があふれていると伝え聞くが、それはもはや臨安府ではない。

臨安府!その名がとどろいて、船上の男たちは咽喉の奥から熱いかたまりがせりあがってくるのを感じた。強大な侵略者と戦いつづけ、主君と指揮官を失ってなお屈しない男たちが、ふいに泣き出した。生きようと死のうと、もはや絶対に臨安府に帰ることはできない。それは地上に実在する場所ではなく、海市蜃楼のように、手に触れることのできない存在であった。
- 田中芳樹 「海嘯 第八章 残照」中公文庫 -
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2012 © 宮下江里子@杭州超海科技有限公司
(Hangzhou Chao-hi Co. Ltd.)

寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その10最終回はこちら
寄稿シリーズ:「書籍の中の杭州 その8はこちら

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