フィンランドでは「移民の国際労働市場での地位に影響を与える要因を特定する」プロジェクト結果が発表されました。報告書では、外国人の雇用の妨げになっている要因を主に5つ特定しそれぞれに関する提言を発表しました |フィンランドにおける外国人の労働市場は今

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公開日:2021.10.26

Terve! フィンランドにおける外国人の労働市場は今

フィンランドにおける外国人の雇用面接

コロナワクチン接種が対象者の約8割に届く状況となったフィンランド。10月からは、商業施設などは全て通常営業に戻り、リモートワーク推奨の制限も解除されます。それに伴い経済も少しずつ回復してきていますが、いまだに失業率が7.6%と他国に比べて高い割合になっています。

その中でも外国人における失業率が、外国人全体の27.5%に達しています。こうした状況を分析するためにフィンランドのエンジニアおよび建築業界のキャリア開発団体である「Tekniikan Akateemiset」が「移民の国際労働市場での地位に影響を与える要因を特定する」プロジェクト結果が発表されました。今回はフィンランドにおける外国人の労働市場の現状を簡単に紹介したいと思います。

この報告書によると、フィンランドの労働市場における外国人は、フィンランド人に比べて偏見、フィンランド語の過度な高レベルの要求、差別、資格や経験の認知不足、低賃金などが雇用の妨げになっていると指摘しています。このような要因を主に5つ特定し、それぞれに関する提言を発表しました。

1.「流暢なフィンランド語」が必須
多くの求人募集では「流暢なフィンランド語」という条件を目にします。しかし「流暢な」とは実際には何を意味するのでしょうか?全ての職種に「流暢さ」は必要なのでしょうか?また外国語のアクセントがあるだけで「流暢さ」には至らず、不適切なフィンランド語を話しているとみなされてしまうことがある、と指摘しています。

今回の調査では、雇用主が特定の仕事に必要な言語能力を適切に判断するためには、フィンランド国家言語能力証明書YKI(1-6)と欧州言語共通参照枠(A1-C2)のレベルの内容をもっとよく知るべきだと提言しています。

こうした求人広告における「流暢なフィンランド語」という条件は、外国人を雇用しないための言い訳である、とも指摘しています。

2. 海外で取得した教育や仕事の経験が認められない
外国人のスキルや資格が、採用プロセスや職場で認められないことはよくあることだ、と指摘しています。フィンランドでは母国や他国で培った知識や経験を基に職業に就いている外国人は少なく、全く新しい職業を学ばなければならなかったり、以前の職業について再教育を受けなければならなかったりする人が多くいます。

調査の過程では、外国人はスキルがないと思われていたり「フィンランド式の仕事のやり方」について教育を受ける必要があると思われていることが多い、ということがわかりました。外国人がフィンランドでの仕事の仕方を知らないという仮定は、フィンランド国外での教育や仕事の経験に対する差別的な態度を示している、とも指摘しています。

3. フィンランドで仕事の経験を積むための人脈や機会の不足
技術分野におけるフィンランド人と外国人の新卒学生を比較すると、仕事の経験や雇用に大きな違いがあることがわかります。
例えば仕事やインターンの経験があるのは、
フィンランド人新卒者:29%が2年以上、34%が1~2年の経験
留学生:4%が卒業時に2年以上、16%が1~2年の経験

実際、卒業時に就職活動をしている留学生の数は、フィンランド人の2倍にものぼると指摘しています。

4. 官僚主義
外国人にフィンランドへ入国し滞在してもらうためには、フィンランドへの移住や滞在のプロセスを簡易にしなければならないと指摘しています。滞在許可証の処理時間やビザの所得要件を引き下げるべきだと、具体的な提言も記載されています。

5. フィンランドの労働市場と従業員の権利に関する知識の欠如
フィンランドの労働市場は法律と労働協約に基づいており、従業員の権利が守られています。しかし外国人にとっては、自分の権利やフィンランドの労働市場のルールを知ることは大変な努力を必要とします。情報提供を行う言語をフィンランド語と英語の両方で提供することを提言しています。

このような要因は、技術分野(主にIT)に留まらず多方面から耳にし、実際に著者自身も経験したことがあります。個人事業を営む傍ら、言語のレベルアップを図ったり、自身の専門分野のレベルを維持したり新しいことを学んだりしても、フィンランドの労働市場へ参入するのは、そう簡単ではないと感じています。

フィンランドの大学で博士号や修士号を取得しても、残念ながらこの国で活かすことなく、日本へ帰国されたり近隣諸国へ移住したりという日本の留学生さんたちも今までに幾人もいらっしゃいました。

一見すると国際的に開かれた労働市場であるフィンランド、と認識しがちですが、意外にも内向的な傾向がみられ、外国人に対する労働問題は長年に渡って山積したままであるようです。

報告書:Immigrants’ integration into the labor market in Finland
https://lehti.tek.fi/english/language-requirements-prejudice-hinder-recruiting-immigrants

ニュース記事:Migrants suffer lower pay, prejudice, discrimination in Finland
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/union_report_migrants_suffer_lower_pay_prejudice_discrimination_in_finland/12114024

失業率:Employment increased and unemployment decreased clearly
https://www.stat.fi/til/tyti/2021/08/tyti_2021_08_2021-09-21_tie_001_en.html

写真出典元:
https://www.thenomadtoday.com/articulo/work-in-finland/in-finland-it-is-hard-to-find-work-unless-you-have-contacts-according-to-foreigner-fi-readers/20200225085157004457.html

2021/10/26
藤原斗希子
フィンランド在住

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