中国は西側諸国から借りた巨額の金を全て使ってアパレル工場を作りどんどん製造してきた。ここ数年はそれらが国中にあふれかえり、アパレル工場が次々撤退している。 |アパレル工場が次々撤退。中国ではいま何が?

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公開日:2016.02.18

アパレル工場が次々撤退。中国ではいま何が?

【株価の下落、経済成長の落ち込みにあえぐ中国】

先ごろイギリスを訪れ、英南東部で計画中の原子力発電所に
中国製の原子炉を導入することでキャメロン首相と合意した
中国の習近平国家主席。

必死の外交を繰り広げているが、
中国経済はいま、株価の下落、
数年前までは二桁を誇った経済成長率の落ち込みなど、
下降線をたどる一方だ。

中国はこれまで、
西側諸国から借りた巨額の金を全て使って工場を作り、
物をどんどん製造してきたが、
ここ数年はそれらが国中にあふれかえり、
誰もこれを買わないばかりか、
これらの在庫を保管管理するだけでも大変な状態に陥っている。

中国政府はこうした現状に危機感を覚え、
国民の不満を抑えるべく、
汚職の摘発を徹底するのか、
労働人口を増やすためにひとりっこ政策を廃止したりしながら、
政権の基盤作りに必死に取り組んでいるところだ。

【アパレル業界における、世界の工場の座をあけわたす】

アパレル業界においても、これまでは、
生産コストの低さを武器に海外から企業を呼び込み、
世界の工場の代表として君臨してきたが、
経済の減速に伴いその座も危ぶまれている。

2010年に80.5%だった中国から日本への衣料品の輸入シェアは、
翌2011年以降落ちはじめ、2014年には66.8%にまで縮小。

米国における中国からの衣料品輸入シェアも同様に、
2010年の40.9%をピークに減少へと転じ、
2014年には37.9%まで低下した(大和総研レポート)。

いっぽう、
日本への衣料品輸入のシェアを伸ばしているのがベトナムだ。
2010年、わずか5.9%だった輸入シェアを
2014年は10.1%にまで伸ばし、
米国においても7.8%から10.8%と、
アジア各国のなかで最もシェアを拡大した。

ベトナム以外では、
ミャンマー、インドネシア、カンボジア、バングラデシュ
からの輸入が増えている。 

【人件費の高騰が大きな原因】

中国からの輸入シェア低落の原因は、人件費の高騰にある。

例えば、中国の工場地帯である深センにおける、
基本給、社会保障費などを含んだ一か月の労務コストは、
2011年には500ドル、2014年には約700ドルだが、
ベトナムのハノイでは2014年度で247ドル。
ミャンマーのヤンゴンでは172ドル、
カンボジアのプノンペンで157ドルと、
いずれも中国より格段に安い。

先に記したように
中国政府は国民の労働争議やテロ行為などを何よりも恐れている。

今後、景気がますます減速すれば
労働コストの削減などを実施する企業が出てくる可能性があるが、
それに反発した従業員によるストライキが起きるリスクはある。

2015年に中国本土で発生したストライキや抗議活動はおよそ2300件。
2014年よりも約1000件近く上回っており、
労働条件の悪化はこうした状況に拍車をかけかねない。

アパレル業界における中国への回帰は、
中国経済の減速と労働争議、
そして他アジア諸国の技術力、
労務コストなどがからみあい、
なかなか難しいと言わざるを得ないようだ。

2016/2/18 フリーライター 蛭川 薫

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