コロナ禍やウクライナ侵攻によりフィンランドのスタートアップ業界も影響がでています。スタートアップ企業の成功はフィンランド経済と起業家精神を刷新してきました。スタートアップイベント「Slush」も2018年には東京でも開催され注目されました。 |フィンランドのスタートアップ企業の今

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Terve! フィンランドのスタートアップ企業の今

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フィンランドのゲーム「アングリバード」のRovio社や「クラッシュ・オブ・クラン」のSupercell社、最近ではフード・デリバリーのWolts社をはじめとするスタートアップ企業の成功は、フィンランド経済と起業家精神を刷新してきました。またスタートアップイベント「Slush」も2018年には東京でも開催され、世界の起業家たちの間では常に注目のイベントとされています。

コロナ禍やウクライナ侵攻によりこのスタートアップ業界にも大きな影響を及ぼしています。今回はそんなフィンランドのスタートアップ業界の今をお届けいたします。

フィンランドのスタートアップ起業は、革新的な現象とみなされているようですが、そのルーツは1990年代に遡ります。当時は、急成長するテクノロジーに関心のある人々を集めたデモシーンという位置付けぐらいだったものが、建築やデザインで有名なアアルト大学の学生の運営による非営利団体のスタートアップコミュニティが誕生。今では経済成長を生み出す革新的で高いスキルを持った活動とみなされ、イノベーションによって経済成長を生み出すという考え方の一つにまでなっています。

この成長の影には、老舗企業ノキア社の崩壊後のフィンランド経済に新しい方向性として、このスタートアップ起業が提示されたことにあります。

その提示により企業家精神として情熱と自己実現、そしてチームワークを鼓舞することが定着してきました。

現在フィンランド・スタートアップ・コミュニティ(FSC)団体が立ち上がり、100以上のさまざまな段階の異業種が集まって活動をしています。

最近このFSCによる初のスタートアップ・バロメーターが実施されました。四半期ごとに、スタートアップエコシステムで活動する企業や投資家が、自社や周囲の経済状況についてどのような見解を持っているかをマッピングしました。

バロメーターによると、スタートアップ企業は自らの成長の可能性に強い信頼を寄せているとの回答が多くみられました。しかし、周囲の経済状況については同様の信頼を見出すことはできないとの回答も多くみられました。ロシアによって引き起こされた周辺国としての治安悪化の懸念も、企業にとっては大きな懸念材料です。

回答したスタートアップ企業は、ここ数年で大幅に人員を増やしている傾向がみられる一方、なかなか適切な人材が確保できない状況であることも明らかになりました。

その半数以上は、熟練労働者の不足が事業成長の最大の障壁であると回答しています。「市場における熟練・専門家の競争は激しく、彼らを惹きつけるには、さまざまな手段に基づいて行わなければならない」とSupermetrics社のCEOであるThuneberg氏は話しています。

そして先月にはFSC主導の新しい目標を発表しました。この目標は、フィンランドの成長企業をはじめ、アーリーステージ(初段階)のスタートアップ企業を含む、コミュニティ内の約130社のメンバー企業から生まれました。

「私たちの最大の目標は、フィンランドを最高の人材が集まる世界一の場所にすること、そしてフィンランドがスタートアップ企業を立ち上げ成長させて、フィンランド経済を支える新しい中心的な存在に成長し、雇用と税収をもたらすことを目指しています」とFSCのCEOであるPakarinen氏は述べています。

目標の具体的な中身は、コンピテンスと研究開発、気候変動やヘルスケアへの技術による課題解決、プラットフォーム・エコノミーやブロックチェーンなどの法規制、税制上の優遇措置などありとあらゆる方面の目標が掲げられました。「2030年までに、フィンランドのスタートアップや成長企業が、輸出やGDPとの関係においても、森林や金属産業などの基幹産業と並ぶ国の新しい経済の柱となり、フィンランドの最重要な経済部門の一つになると考えています」とFSCの理事長であるAhopelto氏も述べていました。

世界中の経済や秩序がガラリと変わり始めた2022年。間もなくその半分が過ぎようとしています。

ウクライナ侵攻によって歴史的転換であるNATO加盟に至った小国家フィンランド。この国の生き残りをかけた経済構造の変化の一つに、スタートアップ業界が引き続き一躍を担うことは間違いなさそうです。

参照記事:
https://www.helsinkitimes.fi/business/21490-the-first-ever-finnish-startup-barometer-the-talent-shortage-is-getting-worse-but-confidence-in-growth-remains-strong.html

https://www.helsinkitimes.fi/business/21411-finnish-startup-community-s-goals-for-the-next-governmental-program-crypto-legislation-platform-economy-and-climate-startups.html

写真出典元:
https://businesstampere.com/tamperes-startup-community-the-power-of-input-and-output/

2022/06/05

海外だより:フィンランドより一覧

Terve! ウクライナ人受入れに積極的なフィンランド

ウクライナ避難民を受け入れるフィンランド

前回のコラムから1ヶ月以上が経ちますが、ロシアによるウクライナ侵攻は過度な緊張を増しており、ウクライナ人が続々と隣国へ避難しています。フィンランドもその隣国のひとつとして、ウクライナ人の受け入れを積極的に進めています。移民局によると、今年中には最大8万人の避難民者がフィンランドに入国すると推計しています。

しかし、国が異なれば言語・文化すべてが異なります。そうした背景を基に、この混沌とした情勢の中、フィンランドはどのようにウクライナ人を受けて入れていくのでしょうか。今回は、現在進行中のその様子を簡単に見ていきたいと思います。

2月24日にウクライナ侵攻が始まって以来、4月4日の時点ですでに1万5千人のウクライナ人がフィンランドでの一時的な保護を申請しています。この一時的な保護はEUの一時的な保護指令に基づいており、居住申請が登録され、その後労働許可証を取得することになります。

フィンランドには、このウクライナ侵攻が始まる以前から一定数のウクライナ人が移住しており、その家族や親戚宛に入国してくる人たちが多いです。

今まで移民・難民を受け入れてきたフィンランドですが、過去と大きく異なるのは、彼らの属性です。ウクライナからくる避難民者は、約85%が女性、40%が18才未満の子どもです。この中には高等教育(学士以上)を受けた女性たちが一定数いると推定されています。過去の受け入れですと、例えばシリア難民などは家族一家で難民してくるケースが主に多く、また基礎教育を受けていない人たちもかなりの数がいました。

それと比較すると、入国後の対応は今までのような対応とは別の形で行わなければなりません。

フィンランド移民局は早速、雇用手続きの迅速化、例えば滞在許可証の取得を1週間から10日早めるなどの対応をはじめました。滞在許可が降りた後の社会・福祉サービスをはじめ、子どもの教育支援、そして就労支援へとトータルなサポートが必要となっています。

社会福祉サービスは、緊急のヘルスケアや基本的な公共サービスは迅速に対応できますが、戦争関連のトラウマに苦しむ人々に対応できるようなサービスや専門家の不足を指摘しています。

子どもの教育支援は、18歳までの義務教育は受けられますがウクライナ人にとって「義務」とはしないことを前提としています。各地の大学などでは、本来であれば非EU加盟国であるウクライナは授業料を支払う必要がありますが、これを免除する制度に変更しています。また編入やオープン講座などにも積極的に参加できるような仕組みを整備しています。

そして一番難しいのが、就労支援です。ただでさえフィンランドの外国人労働市場があまり良くない状況のところ、早急に就労が必要なウクライナ人が入国してきたということで、雇用局をはじめとする担当機関やボランティアグループは、今までの壁を打ち破る良い機会と捉えるようにしているようです。

「Terve! フィンランドにおける外国人の労働市場は今」
https://www.rakuraku-boeki.jp/kaigai-dayori/finland-dayori/2021-10-26

雇用局は「過去の難民者とは違い、入国してくるウクライナ人は大卒の女性で幼い子どもを抱えている。この状況は育児支援の必要性や就労の観点から人身売買のリスクの高さを表している。これをフィンランドの労働市場にうまく組み込ませることを、フィンランドの全政党にコンセンサス取らせるようにしなければならない」と指摘しています。

フィンランドとウクライナは、大国ロシアを隣国に持つ者同志という根本的な部分があるからか、この侵攻が始まった時には直ちに、支援団体の結成や募金支援、緊急医療や食糧支援などさまざまな形の支援が出来上がっていたのが印象的でした。

まったく先の見通しがつかないこの情勢の中、一旦は母国を去ったウクライナ人たちが一刻も早くフィンランドでの生活に慣れてくれるよう、同じ移民として関心を持ち続け、微力ながらの支援を行っていきたいと思います。

参照記事:
https://yle.fi/news/3-12406093

写真出典元:
https://www.ts.fi/uutiset/5619803

2022/4/22

海外だより:フィンランドより一覧

トルコではゴミを分別しないって本当?

トルコのゴミは分別しない

トルコでは、区や市、町や村といった行政単位でごみ処理をしています。多くの町では、ゴミを捨てるためのコンテナがあちらこちらに置いてあり、自分の好きな時にコンテナに捨てることができます。

イスタンブールのような都市部では、ゴミ処理車が回ってくる前の時間帯に道路にゴミを出しておくこともできます。実は、コンテナに捨てる際にも、道路にゴミを出す際にも、分別して捨てるという意識がトルコではまだほとんどありません。

ただ、ペットボトルや紙などは、集めて持っていくと買ってもらえる場所があるので、行政が設置しているコンテナから、売れる再生可能なゴミを集めて暮らしている人たちもいます。彼らのおかげで、一部分別してもらえていると言えなくもないかもしれませんが、十分とは言えないようです。

トルコ統計局の発表によると、2020年に行政単位で処理したゴミは、3,230万トンありました。このうち69.4%が埋め立て施設に埋められ、17%が行政の持つゴミ集積所に送られました。13.2%が再生工場で処理され、プラスチックや再生紙の原料として使われています。

13.2%しか使われていないにもかかわらず、再生処理された製品の売上高は年間50億ドルを超えています。また、再生紙を生産する際に使うエネルギーは新しく紙を生産するために必要なエネルギーの6割ですむといった数字も上げられ、経済面からも、環境のためにも、分別を進めていく必要があると言われ始めています。

トルコで使われている衣類回収ボックス

(写真は衣料品など専用の回収ボックス)

行政も分別を進めるための取り組みを行っています。ある程度の紙が出る事業所や学校などが依頼すれば、紙ごみ専用の段ボールでできたごみ箱を設置してもらって、いっぱいになった時に連絡をすると回収してもらえるというシステムができてきました。また、コンテナほどの数はないものの、町のあちらこちらに衣料品や本などを集めるボックスが別々に設置され、不要になったものをごみとして捨てるのではなく、再利用してもらえるようになっています。

トルコ最大の都市であり、1,500万を超える人が住むイスタンブールでは、毎日1万9千トンのゴミを処理していると言います。ゴミ処理場でまず、有機物と包装材に分別され、有機物は、発酵させてたい肥となります。毎日千トンほどがこの有機物で、年間18,500トンの肥料となり、イスタンブール市が管理する公園や緑地帯などで使用されています。

トルコのゴミ処理工場

(画像出典元:下記参照)

また、イスタンブール市内の食堂、学食、ケータリング会社などから出る残飯を集めて処理する際に出るメタンガスを電力にかえるというプロジェクトも進んでいます。

トルコで暮らしていると分別をしないことに慣れてしまいつつも、分別をしなくても良いのだろうかと良心の痛みのようなものを感じることがあります。でも、ゴミを使って様々なことをするプロジェクトが進んでいるのを見ると、少し安心できます。

画像出典元:
https://interaktif.trthaber.com/2018/geri-donusum/ibb-atik.php

参考サイト:トルコ統計局のゴミに関する統計(2020)
https://data.tuik.gov.tr/Bulten/Index?p=Atik-Istatistikleri-2020-37198#:~:text=Olu%C5%9Fan%20at%C4%B1k%20miktar%C4%B1%20104%2C8,8%20milyon%20ton%20at%C4%B1k%20olu%C5%9Ftu.

その他参考サイト:
https://www.trthaber.com/haber/turkiye/turkiyede-yillik-atik-miktari-32-milyon-tona-ulasti-563856.html

2022/04/06
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住

Terve! 大国の脅威にさらされる隣国フィンランド

ウクライナを支援するフィンランド

2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻がはじまりました。ロシアの矛先はウクライナですが、国境を接し陸続きの隣国フィンランドの状況、国民の心情はどうでしょうか。今回は、世界が混沌としている中のフィンランドの今をお伝えします。

フィンランドは1917年にロシアから独立して今年で105年になります。その間冷戦やフィンランドのEU加盟などの際には、常にロシアに対してしたたかな姿勢で外交政策を取ってきました。

第二次世界大戦後に設立されたNATO軍事同盟には、反対側の隣国スウェーデンと共に非加盟国として存在していました。

しかし今回のウクライナ侵攻で、フィンランド国民へ世論調査を実施したところ、5割がNATO加盟に賛成していました。

実はこの侵攻以前からNATO加盟への気運は高まっていて、加盟申請に対する国民投票を求める署名運動が展開されていました。その結果、国会審議で必要な5万票を集め、国会へ申請することになりました。

こうしたウクライナ侵攻をきっかけに国民の心情の変化は、さまざまな形で顕著になってきました。

一つは、侵攻への抗議デモが毎週末フィンランド各地で行われています。

他にはウクライナの原発発電所区域が爆撃された翌日からは、フィンランド国内における放射線量の測定や、甲状腺保護のためにヨウ素剤の服用への懸念などが高まってきました。今のところこのような必要は全くありませんが、日本人が災害に備えるのと同じように、ここフィンランドでも有事における備えの一つとして象徴されています。

また以前このコラムでも紹介した核シェルターの利用も懸念されています。もちろんこちらも今のところ利用の懸念は一切ありませんが、一般市民としてはどこにあるのか、もし何かあった際には本当に利用できるのか、といった「備えあれば憂いなし」の雰囲気が広がっています。

「Terve! フィンランドの核シェルター人口の7割をカバー」
https://www.rakuraku-boeki.jp/kaigai-dayori/finland-dayori/2017-06-02

こうした国民の懸念を知ってか、フィンランド大統領は「国際社会が変化の真っ只中にいるとき、私たちは冷静さを保たなければならない」と話しています。

大統領にとっても、この10年間でロシアと幾度も話し合いを重ねてきましたが、やはり他国のあり方、そしてそれを統治する人間の心を理解するのは非常に難しいと述べています。

歴史的に支配されていたフィンランドは独立し、今までうまく外交政策を取ってきた背景から、フィンランドはロシアについてより理解がある国、と思われてきた部分があるのかもしれませんが、大統領のこの発言によれば、それは誤解であることがわかります。

フィンランドとロシアの関係は大きく揺らぎ、今までのような関係に戻るには、ロシアが大変革しなければならないという報道もあります。

ウクライナ侵攻から2週間が過ぎましたが、事態は悪化するばかりで、フィンランドの立場や役割も今までと大きく変わりつつあります。

次のコラムを執筆する時には、事態が落ち着いていることを切に願うばかりです。

参考記事:
署名活動について
https://yle.fi/news/3-12335563

国民世論調査について
https://yle.fi/news/3-12337202

ヨウ素剤について
https://yle.fi/news/3-12339880

ロシアとフィンランドの関係変化について
https://yle.fi/news/3-12336199

大統領ステートメント
https://www.presidentti.fi/tiedote/tasavallan-presidentin-lausunto-kun-muutos-on-rajua-paan-on-pysyttava-kylmana/

写真出典元:
https://de.dreamstime.com/helsinki-finland-demonstration-against-russian-aggression-ukraine-february-26-2022-detail4966

2022/3/11

海外だより:フィンランドより一覧

トルコには「通りの猫・犬」がいるって本当?

トルコの通りの猫・犬の家

トルコには野良猫・野良犬という表現がありません。飼い主がいない犬や猫は、sokak kedisi(通りの猫)/sokak köpeği(通りの犬)という言い方をします。

そのあたりの人が面倒を見ていることもありますし、区や町などの行政が餌や住むところを提供していることもあります。行政区によっては、プラスチック製や木製の簡単に組み立てられる箱を配布していて、家の前などにのらちゃん用の家として使われていることもあります。

写真のように、マンションタイプのものを公園などに設置しているところもあります。住むところだけでなく、餌や水などもあちらこちらに置かれています。

犬は、狂犬病の予防接種が義務付けられています。野良犬のように見える犬でも、耳にタグがつけられているなら、予防接種を受けている犬なので安心です。

推定ですが、トルコには2000万匹の野良猫や野良犬がいると言われています。その約25%に当たる500万匹が飼い犬や飼い猫として買われていると言います。実は、トルコのペット市場は2010年代からずっと右肩上がりで拡大し続けています。平均すると、年間15%ずつ拡大してきたと言います。

コロナ禍の下、2021年のペット市場は年間で125%の拡大を見せています。家の中で暮らす時間が長くなる中、初めてペットを飼ったという人たちの数も増えていて、約2割の家で猫を、12%の家で犬がペットとして飼われているそうです。ペットとして飼われている動物としては他に、鳩やインコなどの鳥類、水槽で飼う金魚などの魚類もあります。

ペット市場は、2021年には100億リラ規模になり、2023年には10億ドル規模となるとみられています。2020年の市場では、72%が猫の餌で占められていました。飼い猫のうち、既製品の猫餌を食べているのは約25%、犬の場合はさらに低く約12%が既製品の餌を食べているとみられ、さらに拡大が期待されている分野であることがわかります。

トルコのペットショップ

ペット市場の大きな部分を占めている餌も、年代や種別、価格帯など、様々なカテゴリーに分化し、拡大しています。さらに、アクセサリーや薬品、ペット用の衛生用品などを考えると、現在ペット市場の大きさで世界の20位前後にいると言われるトルコ市場が、トップ10に入る日も近いかもしれません。

実は、餌だけでなく、アクセサリー類も含めて国内生産がすすめられています。トルコ全体で5500件のペットショップ、2000件のペット専門のクリニックがあり、毎年その数は増え続けています。

2021年9月に8回目を迎えた「ペットズー・ユーラシア」は、ペット産業の国際見本市です。最近では65か国にペット製品を輸出するようになり、ペット産業の分野でも輸出国になりつつトルコにとって、この見本市は重要な位置を占めていると言えます。
 
参考サイト:
ミッレット紙の記事「ペットに10億リラ規模の餌」
https://www.milliyet.com.tr/ekonomi/evcil-dostlarimiza-1-milyar-tllik-mama-6378912

ギュネイ・ギュンデム経済紙のサイト「ペット製品は何億ドル産業」
https://www.guneygundemi.com/haber/evcil-hayvan-urunleri-milyar-dolarlik-bir-sektor

ペットズー・ユーラシア2021のHP
https://petfuari.com/eurasia/en/

2022/02/19
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住

Terve! フィンランドの物価上昇はいかほどに?!

2022年フィンランドでは食料品が値上がり

コロナ禍の丸3年目の2022年が明けました。年末年始から世界中がオミクロン株に感染するなど、まだまだ油断を許さない感染症との共生生活が続いています。

そんな中、フィンランドでは年明けからあらゆる分野における価格が上昇しています。今回は一般的な日常生活における物価やサービス事情について紹介します。

2022年から値上がりの影響が最も大きいのは、食費です。

経済研究グループの予測によると、生産コストの上昇と不作の年により、食料価格は1.8%上昇するという調査結果が出ています。「フィンランドの食品価格の上昇は、2021年には約0.3%と緩やかだったが、年末に向けて指数関数的に上昇し始めるだろう」とし、この上昇は、消費者物価全体の上昇予測値よりも多いと予測しています。

背景には、不作と生産コストの上昇があるとし、特に石油、ガス、電力を必要とする、肥料、飼料、建設などのコスト高が要因と考えられています。またコロナ禍で物流コストにも負荷がかかり始めていることも要因であるとしています。

食費の他には、電気自動車の課税が変更になりました。

新車の電気自動車の場合は、購入時の自動車税が廃止されました。代わりに年間の自動車税として65ユーロが増税されることになりました。実際には、最初の課税査定日が2021年10月1日以降の車にすでに適用されています。嗜好品であるタバコにも増税されています。平均価格が11%上昇し、一箱の平均価格は10ユーロ強となっています。今年7月にはさらに増税され、2023年にはさらなる引き上げが行われる予定です。

逆に価格が値下がりしたものもあります。

パスポート発行費用を、警察署で申請する場合は、58ユーロから50ユーロに下がりました。電子申請の場合は44ユーロで変更なしです。

さらにはサービスがよくなったものもあります。

フィンランド国民が無料でがん検診を受けられるようになりました。60-68歳を対象に腸がん検診が、30−65歳を対象に子宮頸がん検診が受けられるようになりました。

また借地借家法が改正され、居住者が自分の所有地の運営について、より大きな発言力を持つことができるようになりました。フィンランドには、約5万戸の居住権付きの住宅があり、この制度は30年前から実施されています。

今後は、住宅所有者協会の理事会メンバーの40%が、その物件の居住者でなければならないという条件が付けられました。

こうして見てみると、世界中に影響を与えている食料価格の上昇が一番頭を悩ませています。現在の食料サプライチェーンが世界中に渡っていることも要因となって、フィンランドだけではなく日本でも、そして他国でも食料価格は上がる傾向にあります。

電気自動車の課税については、欧州の電気自動車政策の影響が大きいようです。2035年までにガソリン車とディーゼル車、さらには内燃機関とモーターを組み合わせたハイブリッド車も事実上、販売禁止という目標が背景にあります。

がん検診は、日本人からするとやや驚きの事実ですが、がん患者が世界中で一番多い日本と比べると、フィンランドにおけるがん検診がようやく始まったばかりと言えそうです。

今年中にはコロナが収束するという情報やデータがありますが、収束してもこの2年間の影響は計り知れず、私たちの生活における物価上昇の影響はこの先しばらく続きそうです。

参考記事:
YLE NEWS
https://yle.fi/news/3-12119278
YLE NEWS
https://yle.fi/news/3-12254046

欧州グリーンディール政策
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/331e9d95b330cf03/20200044_01.pdf

がん患者:がん早期発見推進協会
https://ecdpa.or.jp/world-cancer-died/

2022年コロナ収束?!:GateNotes(THE BLOG OF BILL GATES)
https://www.gatesnotes.com/About-Bill-Gates/Year-in-Review-2021

写真出典元:
https://yle.fi/uutiset/3-12245353

2022/1/31

海外だより:フィンランドより一覧

トルコのオペラ・バレエ、冬は劇場・夏は古代劇場で

トルコの国立バレエ

あまり知られていませんが、トルコは、実はオペラやバレエがお手軽に楽しめる国なんです。

その理由は、20世紀の初頭、共和国設立時に遡ります。共和国建国の父ケマルアタトゥルクは、教育の一分野として、芸術分野でも様々な改革を行いました。1923年に共和国設立後、1925年にはトルコの民族音楽の収集を開始、音楽教師を養成する学校を1924年に開校、1936年にはオペラ・音楽・バレエ・演劇の分野でのプロを養成するコンセルバトワールを設立しました。

コンセルバトワールというだけに、フランスの文化保存機構を範とし、西洋音楽をメインに据えた教育がおこなわれてきました。コンセルバトワールは、現在でも主要大学の多くに置かれていて、子供のころから歌や楽器のプロと一緒に研鑽する機会が開かれています。

イスタンブールやアンカラ、アンタルヤやイズミールといった大都市には、文化観光省の管轄下にある国立バレエ・オペラ団やオーケストラがあります。国立のバレエ団やオペラ団に所属している芸術家は、国家公務員として活動していることになります。そのため、オペラやバレエのチケットは、日本とは桁が違う金額で手に入れることができます。

例えば、オペラのチケットで前方の席で80リラ~100リラ、日本円にすると1000円~1200円くらいと、かなりお手軽に楽しめるのも嬉しいところです。

イスタンブールの新市街の中心、アタトゥルク広場に面したところに、アタトゥルク文化センターがあります。アタトゥルク文化センターは、1969年に開館した、複合文化施設でした。オペラやバレエ用の1307席ある大劇場、502席のコンサートホール、296席と190席の小劇場2つ、206席の映画館から成っていました。2008年には耐震性などの問題から一度閉館となり、新たに立て直されて2021年10月29日に再度開館しました。

トルコの演劇

イスタンブールの芸術愛好家にとって、待ちに待った時だったらしく、こけら落としのオペラ、アイーダの初日と翌日のチケットは2時間ほどで売り切れたそうです。このアイーダは、トルコの国営チャンネルTRTでも放送されていました。大都市のオペラやバレエ用の劇場は、10月にシーズンに入り、4月くらいまで、演目を変えながら上演しています。

夏には、劇場が閉まっていて寂しいと思っていましたが、実は、夏には夏の楽しみがあるのです。夏は、野外劇場でコンサートなどが開かれますが、地中海に面した人気のリゾート地アンタルヤの近くのアスペンドスにある古代劇場では、オペラやバレエが上演されています。オーケストラや役者さんたちもフルメンバーの本格的なプログラムになります。

古代劇場なので、石造りの座席に長時間座ることになるため、座布団を持参することをお勧めしますが、何千年もにわたって存在している劇場の音響効果はやはり素晴らしいです。舞台で繰り広げられるドラマの世界の中に自分もいるかのような臨場感があると思います。

写真出典元:文化観光省オペラ・バレエ部門ホームページ
https://www.operabale.gov.tr/en-us/Pages/HomePage.aspx

写真出典元: Kültür ve sanat haritası(チケット販売サイト)
https://www.kultursanatharitasi.com/wp-content/uploads/2018/02/f%C4%B1nd%C4%B1kk%C4%B1ran-768x511.jpg

2022/01/05
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! サンタの国フィンランドのクリスマス商戦

フィンランド、クリスマスプレゼント

フィンランド人にとってクリスマスは、年中行事の中で最も大切な行事の一つ。その中でもプレゼントは、なくてはならないもの。今回はこのクリスマスプレゼントにまつわる話しを紹介したいと思います。

商品価格の調査会社は、フィンランド人のクリスマスプレゼントに費やす価格を調べました。調査によると、最も一般的な金額は、50〜100ユーロ(回答者の21%)または101〜200ユーロ(20%)でした。

また回答者の8%はプレゼントを購入する予定はまったくなく、10%はプレゼントに50ユーロ未満しか費やしていません。つまりフィンランド人のほぼ5分の1は、50ユーロ未満のプレゼント購入、またはプレゼントを購入していないことがわかりました。一方で、回答者のわずか5%が、500ユーロ以上を費やしていることもわかりました。

そのプレゼントの平均的な購入日(期間)は、やはりクリスマス直前の週末。ただし、回答者の4分の1以上(27%)が、クリスマス直後から始まるセールにて商品の一部またはすべてを割引価格で購入することを計画しています。

近年の傾向としては、クリスマス商戦が始まってから、またはクリスマス中(12月24−26日)の土壇場で購入する人が増えています。ちなみに昨年は25日に最も割引された商品として、調理器具、Xbox Oneゲーム、デジタルカメラ、かみそりなどが含まれていました。

この調査会社の分析から、商品価格は早くも22日ごろから下落し始めるようで、それを待ち構えてプレゼントを購入する人が増えているようです。

一方で、フィンランドは手作り(DIY)文化が根強いので、手作りプレゼントを贈る人もいます。手袋、マフラーやニット帽など編み物グッズ、クッキーやケーキなどの自家製のお菓子などを作り、自分でラッピングも楽しみながらプレゼントを用意します。

さらにはLahjakortti(ギフトカード)も根強い人気商品です。商品や映画館、レストラン、スポーツジムなどの体験プレゼントは然ることながら、最近ではBtoBの企業で自社のサービスを利用してもらうという狙いで用意している会社もあります。

そして一人当たりのプレゼントをもらう数は、大人も子どももだいたい3−5個が平均的な数のようです。子どもの場合は両親、祖父母、ここに名付け親が入って3つ以上。大人は、パートナーや友人、両親・兄弟姉妹などから3つ以上と、この辺りは日本とさほど変わらないでしょうか。

しかしフィンランドのクリスマスとは、プレゼントの内容や金額、そして個数は関係なく、家族や大切な人たちと一緒に食事をしたりサウナに入ったり、今年一年を振り返ったり来年のことを考えたり、またご先祖へお墓参りをしたりするのが一般的です。

というわけで、今年一年お読みくださりありがとうございました。
まだまだコロナ禍が続きますが、どうぞウィルス感染などに注意してお過ごしください。

皆さまにとって良い年となりますように。
Onnellista Uutta Vuotta 2022!

1ユーロ=¥126.35 (12/21)

記事参照元:
https://www.is.fi/taloussanomat/art-2000008463381.html

写真提供元:
https://res.cloudinary.com/findance/image/fetch/w_680,f_auto/https://www.findance.com/kuvat/cloudinary/joululahjat-Snzs6.jpg

2021/12/21

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Terve! フィンランドらしい?!抗議の仕方

フィンランドの動物愛護の抗議グループ

日本でお馴染みのケンタッキーフライドチキン(KFC)が、首都ヘルシンキにオープンしました。開店当日、1番最初のお客さまに1年間分のチキンを無料提供するという情報を駆けつけて、3日前からテントを張って待っていたその人とは。

今回はフィンランドならではの光景を紹介します。

開店3日前からテントを張って待っていた人は「チキン・ラバー(鶏肉愛好者)」と名乗る男性でした。開店時間になると、この男性が「歴史的瞬間」とスピーチを始めましたが、その内容が動物の権利に焦点を当てたもので、つまりこの男性は動物愛護の抗議グループの一人であることがわかりました。

「私は自分の嗜好ではなく、何十億もの鶏やその他の抑圧された動物のために、ここでスピーチするために3日前から待っていました」と述べました。

その後、抗議グループの他のメンバー2人が「Love wins. Not wings(勝利を愛するが、鳥の羽は要らない)」などと書かれたTシャツを着て登場しスピーチを続けようとしたところに、警備員に退場させられてしまいました。

このKFC以外にも、ここ数年でファーストチェーン店が続々と上陸をしているフィンランドですが、食料のサプライチェーン上で発生する人権問題や店舗における労働環境問題に対して指摘する声が多くあります。今回もここフィンランドで提供する鶏肉は国産か輸入産か、また、グローバルなファーストチェーンよりは地元のレストランやカフェを支援すべきだ、などとオープン前から活発な議論が行われていました。

ちなみにKFCでは、動物愛護に関する5つのガイドラインを策定し、他のファストフードチェーンよりも透明性が高いと言われています。ただイギリスとアイルランドの自社製品に使われている鶏の3分の1以上が足皮膚炎(動物が正常に歩けなくなる痛みを伴う足の病気)を患っていることを認めています。

このような情報開示や昨今の気候変動問題を通じて、若い世代を中心にヴィーガン(菜食主義者)も浸透しはじめており、こうした店舗オープンに対する抗議も高まっていました。

ただ抗議の方法が、米国の抗議グループやスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのように組織やメディアに真っ向から対立するのではなく、鶏肉愛好者と見せかけておいて群衆が注目するオープン当日にスピーチを企む方法は、したたかさが垣間見られるフィンランド人の国民性だと、著者の目には写りました。

日本と比較すると、日本ではKFCは「クリスマスメニュー」の一つと捉えられている部分もあるかと思いますが、もちろんフィンランドではKFCとクリスマスは無関係です。また日本ではこのような抗議活動が展開されることは、まずほぼ皆無かと思われます。

グローバルなファーストチェーン店をひとつオープンするにあたり、フィンランドの反響は思いのほか大きく、そして著者にとっては改めて国民性を知る機会になりました。

参照記事及び写真出典元:
https://yle.fi/news/3-12184346

KFC, Citizenship Report 2020
https://www.yum.com/wps/portal/yumbrands/Yumbrands/citizenship-and-sustainability/reporting-and-disclosures

2021/12/02

海外だより:フィンランドより一覧

非営利団体の活動資金フランスはこんな風に集める!

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自分の所属している趣味のサークル、職場、子供達の学校などでお金を集める場面が出てきた場合どうするでしょうか。フランスでは、例えば職場の誰かへのお祝いを皆で集めるという時、金額は各自の判断で決めると事がとても多いです。あくまでも強制ではなく、各自の意思で参加することを尊重しているように感じます。

また、より多くの金額を集める場合などは、ネットから参加できるクラウドファンディングも浸透してきています。しかし、ネット環境に馴染みのないシニア世代も未だに多いのが現状です。

今回は学校やスポーツクラブなどの非営利団体の資金集めについてレポートします。

学校や非営利団体で生じる活動資金の主な使い道は、修学旅行や社会科見学そして道具などの買い替えです。父兄や会員からお金を徴収する前にまず行われるのが外からの資金集めです。各地域の自治体に資金サポートを申請と同時に、色々なイベントを企画します。

一般的なのは物品販売です。不用品を売るバザー、手作りお菓子の販売、福引を作り参加してもらうなどです。これらのものは、事前準備として材料や景品を買うなど先行投資が必要になります。加えて、イベントを運営するスタッフの手配やスケジュール調整などもなかなか大変な面もあります。

そんな中ここ数年で人気を集めているのがカタログ販売です。例えば学校で修学旅行の計画が持ち上がります。通信販売をしているチョコレート販売会社からカタログが配られます。オーガニックのチョコレート、ギフトセットやビスケットなど色々な商品が選べるようになっています。

カタログには正規の販売価格の横に、10パーセント割引された価格が記されており注文する側はこの割引価格で買い物ができる様になっています。なおかつ契約したPTAやスポーツクラブは、売り上げの25%を受け取れます。

フランス人はチョコレートが大好きな国民です。親戚などにこのカタログをみせて、旅行の計画を話すと殆どの人が心よく注文に応じてくれます。寄付などには積極的にしてくれるフランス人なので、子供達の見聞を広めるとなれば喜んで参加してくれます。

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フランスでもペーパーレス化が進んでおり綺麗なカタログを手にする機会が減ってきています。特にシニア世代には、カタログをみて注文できるという手法は馴染みがあり、支援をお願いしやすいと言えましょう。

実際、各家庭5件程度の注文を取り付けてきます。クリスマス前の時期ですと自分用と贈り物用にと買うこともあり一件5000円以上の注文が簡単とれてしまいます。送料込なのも手軽です。

昨今の社会情勢から父兄や生徒が集まって何かを販売することが難しいことから、カタログ通販会社とタイアップしたこのような方法であればリスクや負担を軽減しながら資金集めができます。また、販売数が多ければ各自の自己負担金が減るという事もあり、提案する側の士気も高まります。

商材はチョコレートの他にもスペイン産のオリーブオイル、農家直売のチーズなど食べ物が多いのですが、春には家庭菜園の苗、クリスマスにはもみの木などもあります。

しかし何と言ってもチョコレートが一番人気のようです。通販会社は個人客と団体購入と客層を広げるシステムをしっかり構築しており、なおかつ金銭的余裕のあるシニア世代に買ってもらえる様なカタログの作成などの工夫が支持されている理由なのかもしれません。

2021/11/24

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドにおける外国人の労働市場は今

フィンランドにおける外国人の雇用面接

コロナワクチン接種が対象者の約8割に届く状況となったフィンランド。10月からは、商業施設などは全て通常営業に戻り、リモートワーク推奨の制限も解除されます。それに伴い経済も少しずつ回復してきていますが、いまだに失業率が7.6%と他国に比べて高い割合になっています。

その中でも外国人における失業率が、外国人全体の27.5%に達しています。こうした状況を分析するためにフィンランドのエンジニアおよび建築業界のキャリア開発団体である「Tekniikan Akateemiset」が「移民の国際労働市場での地位に影響を与える要因を特定する」プロジェクト結果が発表されました。今回はフィンランドにおける外国人の労働市場の現状を簡単に紹介したいと思います。

この報告書によると、フィンランドの労働市場における外国人は、フィンランド人に比べて偏見、フィンランド語の過度な高レベルの要求、差別、資格や経験の認知不足、低賃金などが雇用の妨げになっていると指摘しています。このような要因を主に5つ特定し、それぞれに関する提言を発表しました。

1.「流暢なフィンランド語」が必須
多くの求人募集では「流暢なフィンランド語」という条件を目にします。しかし「流暢な」とは実際には何を意味するのでしょうか?全ての職種に「流暢さ」は必要なのでしょうか?また外国語のアクセントがあるだけで「流暢さ」には至らず、不適切なフィンランド語を話しているとみなされてしまうことがある、と指摘しています。

今回の調査では、雇用主が特定の仕事に必要な言語能力を適切に判断するためには、フィンランド国家言語能力証明書YKI(1-6)と欧州言語共通参照枠(A1-C2)のレベルの内容をもっとよく知るべきだと提言しています。

こうした求人広告における「流暢なフィンランド語」という条件は、外国人を雇用しないための言い訳である、とも指摘しています。

2. 海外で取得した教育や仕事の経験が認められない
外国人のスキルや資格が、採用プロセスや職場で認められないことはよくあることだ、と指摘しています。フィンランドでは母国や他国で培った知識や経験を基に職業に就いている外国人は少なく、全く新しい職業を学ばなければならなかったり、以前の職業について再教育を受けなければならなかったりする人が多くいます。

調査の過程では、外国人はスキルがないと思われていたり「フィンランド式の仕事のやり方」について教育を受ける必要があると思われていることが多い、ということがわかりました。外国人がフィンランドでの仕事の仕方を知らないという仮定は、フィンランド国外での教育や仕事の経験に対する差別的な態度を示している、とも指摘しています。

3. フィンランドで仕事の経験を積むための人脈や機会の不足
技術分野におけるフィンランド人と外国人の新卒学生を比較すると、仕事の経験や雇用に大きな違いがあることがわかります。
例えば仕事やインターンの経験があるのは、
フィンランド人新卒者:29%が2年以上、34%が1~2年の経験
留学生:4%が卒業時に2年以上、16%が1~2年の経験

実際、卒業時に就職活動をしている留学生の数は、フィンランド人の2倍にものぼると指摘しています。

4. 官僚主義
外国人にフィンランドへ入国し滞在してもらうためには、フィンランドへの移住や滞在のプロセスを簡易にしなければならないと指摘しています。滞在許可証の処理時間やビザの所得要件を引き下げるべきだと、具体的な提言も記載されています。

5. フィンランドの労働市場と従業員の権利に関する知識の欠如
フィンランドの労働市場は法律と労働協約に基づいており、従業員の権利が守られています。しかし外国人にとっては、自分の権利やフィンランドの労働市場のルールを知ることは大変な努力を必要とします。情報提供を行う言語をフィンランド語と英語の両方で提供することを提言しています。

このような要因は、技術分野(主にIT)に留まらず多方面から耳にし、実際に著者自身も経験したことがあります。個人事業を営む傍ら、言語のレベルアップを図ったり、自身の専門分野のレベルを維持したり新しいことを学んだりしても、フィンランドの労働市場へ参入するのは、そう簡単ではないと感じています。

フィンランドの大学で博士号や修士号を取得しても、残念ながらこの国で活かすことなく、日本へ帰国されたり近隣諸国へ移住したりという日本の留学生さんたちも今までに幾人もいらっしゃいました。

一見すると国際的に開かれた労働市場であるフィンランド、と認識しがちですが、意外にも内向的な傾向がみられ、外国人に対する労働問題は長年に渡って山積したままであるようです。

報告書:Immigrants’ integration into the labor market in Finland
https://lehti.tek.fi/english/language-requirements-prejudice-hinder-recruiting-immigrants

ニュース記事:Migrants suffer lower pay, prejudice, discrimination in Finland
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/union_report_migrants_suffer_lower_pay_prejudice_discrimination_in_finland/12114024

失業率:Employment increased and unemployment decreased clearly
https://www.stat.fi/til/tyti/2021/08/tyti_2021_08_2021-09-21_tie_001_en.html

写真出典元:
https://www.thenomadtoday.com/articulo/work-in-finland/in-finland-it-is-hard-to-find-work-unless-you-have-contacts-according-to-foreigner-fi-readers/20200225085157004457.html

2021/10/26

海外だより:フィンランドより一覧

コロナで変わったトルコの引越し事情

トルコの1LDKのアパート
コロナ時代の引っ越しは小さい家を選ぶ傾向があります

トルコの新学期は9月に始まります。大学の合格発表も7月の末から8月の頭のあたりに出ることが多くなっています。そのため、8月から9月にかけては、引っ越しシーズンになります。ところが、トルコでも2020年の3月に最初のコロナ患者さんが出た後、状況が変わりました。

学校の授業はインターネットを通したものになり、多くの官公庁や会社の仕事もテレワークに移行したため、大学や会社のある街に住む必要が無くなりました。2020年3月26日以降、全国の大学で授業がインターネットを使ったものになると決められ、多くの学生寮も閉鎖されると発表されました。学生寮は、海外から帰ってきた人たちの隔離施設として使われるようになり、寮にいた学生は実家に帰らざるを得なくなりました。

寮にいた学生だけでなく、家を借りていた学生たちも、借りていた家を畳んで実家に帰る人が多くいました。そのため、2020年4月に3ヶ月から6ヶ月のスパンでの貸倉庫の利用が前年に比べて77%増えたといいます。通常、6月から9月にかけて貸家が増えるのですが、2020年は4月に空き家がどっと増え、家の窓に、貸家表示されている家が多くみられるようになりました。

トルコのアパートの窓には貸部屋の広告pic_turkey20211003_2
部屋の窓には貸家の広告が

トルコで家を探す際には、インターネットの不動産サイトも使いますが、最も多いのは住みたい地区を歩いて探す方法です。貸家にはKIRALIK、売り家にはSATILIKという表示がされ連絡先も書かれています。気になる家があったらその場で電話をして、家の大きさや家賃などを問い合わせ、条件に合うようであればその場で見せてもらいます。

気に入ったら、そのまま不動産屋さんか大家さんと契約交渉に移ります。間に不動産屋さんが入る場合には、家賃の12か月分の12%を手数料として支払います。家によって、日本の敷金に当たるデポジットが設定されていて、家賃1ヵ月分から3ヶ月分くらいを要求されることもあります。これは、退室時に返ってくることになっていますが、残念ながら、外国人の私はあまり返してもらえたことがありません。

統計によると、2020年の下半期には引っ越しが前年に比べて44%増えたといいます。興味深いことにパンデミックの下、3LDKの大きめの家への引っ越しが4%減り、1LDKの小さな家への引っ越しが逆に4%増えたと言います。

トルコの引っ越しはリフトで行います
引っ越しにはリフトを使います

トルコにも引っ越し業者がいて、梱包作業から家具の組み立てまですべてをお願いすることもできます。1LDKの大きさの家の市内での引っ越し費用の平均が、1400リラから1600リラくらいするため、市内の引っ越しであれば、友人や家族の力を借りて自分たちで引っ越しをする人もいます。

県を越えた引っ越しの場合、荷物の量だけでなく、距離と部屋のある高さによって変わってきます。5階建て以上の家の場合、屋内のエレベーターを引っ越しに使うことが禁じられているため、外付けのリフトを使う必要があり、その費用が乗ってきます。
 
参考サイト:
貸倉庫の利用数の増加
https://emlakkulisi.com/kovid-19-sonrasi-tasinmalar-yuzde-107-artti/642768

引っ越し数のデータ
https://emlakkulisi.com/turkiyede-tasinma-orani-yuzde-42-buyudu/665693

2021/10/03
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! フィンランド人の徴兵制への参加

徴兵の申請を待つフィンランドの若者

前回の「フィンランドの若者に人気の職業とは?」の男性ランキングで3位に入った「国防・防衛」について、今回はフィンランドの徴兵制について簡単に紹介したいと思います。

「Terve! フィンランドの若者に人気の職業とは?」
https://www.rakuraku-boeki.jp/finland-dayori/2021-07-02

フィンランドの徴兵法により、すべてのフィンランド国民は国防に参加する義務を負っています。18歳から60歳までのフィンランド国民の男性は兵役義務があり、女性は任意で兵役を申請することができます。兵役義務者は、約6ヶ月から1年の間に、武装または非武装の兵役、または非兵役のいずれかを完了する必要があります。

18歳になった男性は全員、その年に召集令状に参加します。今年は2003年生まれの男性が対象となります。召集の際には、兵役への適性チェックとして面接が行われ、健康診断や兵役についての希望を聞かれ、それに基づいて兵役の開始日と場所が決められます。兵役に適さないと判断された場合は、兵役が免除され非兵役として非軍事的な市民福祉サービスなどの業務に就くことになります。

兵役では陸海空軍に分かれて質の高い軍事訓練を受けることができます。日常生活に役立つスキルやリーダーシップをはじめ、フィンランドの国土ならではのサバイバル(森などの自然との共生生活)スキルなども身に付けます。兵役を終えると、危機管理業務や軍人の専門職に応募することができます。

こうしたキャリアップを見据えた背景があるため、前回の人気職業で3位にランクインした理由がお分かりになるかと思います。

徴兵制に対する考え方はさまざまですが一般的に伝えられていることとして、フィンランドは小国家であり、どの軍事同盟にも加盟していないため、自国の領土を自力で防衛することが必要との考えが根底にあります。そのため、国防軍の準備態勢を整え、維持し、軍事的な国防任務のために徴兵制度を導入し、徴兵者を訓練しています。

フィンランドは過去に西側のスウェーデン王国、東側のロシア帝国に占領および支配された歴史的背景からも、この徴兵制度はやはり自力で防衛することを重要視していると理解できます。

この徴兵制度は、時代とともに進化しています。訓練システム自体は常に開発されていますが、召集される国民にとっても、理由があって兵役につかない人や近年では女性の兵役希望者も増えています。

今年2021年は、国内約250ヵ所で召集令状が予定され、約3万6千人の若者が参加する予定です。彼ら自身の選択によって将来どのような道が開かれるのか。この徴兵制度はフィンランド人にとっての人生の選択の一つとも言えそうです。

参考記事:

徴兵召集に関するニュース記事・写真出典元 
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/defence_forces_calls_on_tens_of_thousands_of_young_men_for_conscription/12060387

フィンランド国防軍
https://puolustusvoimat.fi/en/finnish-conscription-system

2021/09/06

海外だより:フィンランドより一覧

フランス人に注目される日本の食材とは?

サラダやタルトなどフランスの食材

海外暮らしの発見の面白さはギャップからくることが多いようです。

食材でいえばフランスのキュウリは、かなり大きくニガウリなみの大きさです。逆に人参は、とてもほそく日本の3分の1位の大きさ。なすもピーマンもとても大きいです。フルーツは、手ごろな値段で味のよいものが手に入りやすくマルシェを見るだけでも食材の豊富さに楽しさを覚えます。

しかし、野菜などの素材は豊富でも、和食を作ろうとすると日本では当たり前に手に入ったものが簡単に入らないことに愕然とします。

お肉では、しゃぶしゃぶなどに使われる薄切り肉、すでに骨を外してある鶏のもも肉、鶏のひき肉などはこちらのスーパーでは入手が困難。お魚も丸ごと売られていることがほとんどです。

パリでは、アジア系スーパーにて日本と同じレベルのものが手に入りますが、地方になるとアジアスーパーも近くにない場合が多く日本食材の確保はハードルがあがります。日本では、食卓で当たり前に楽しめていた油揚げと豆腐のお味噌汁でさえ縁遠くなってしまいます。

しかし、食べたい意欲が強いと人は頑張れるものです。海外暮らしの人たちは家で手作りしたり、似たような食材を見つけて代用したりと創意工夫で和風な食事を楽しんでいます。

とはいっても私などは日本の里帰りのスーツケースは未だに日本食材で膨れ上がってしまいます。

今までは、フランス在住日本人に求められていた日本食材がフランス人にも注目を浴び始めています。近所のスーパーにも寿司テイクアウトコーナーができ、そこの一角に日本のビールやラムネの瓶などがお値段高めですが売られています。

オーガニック食品のコーナーには、パック包装されたお豆腐、糸こんにゃくなどもヘルシーな食材としておしゃれなパッケージで売りに出されています。パッケージに使われている写真はサラダやタルトなどフランスのお馴染みのお料理です。お豆腐は、生クリームの代わりに、こんにゃくはサラダに加えるという使い方がされているようです。

今、じわじわと人気がでているのが「餅アイス」と呼ばれるもの。日本の雪見大福よりは小さめな作りで、マンゴー風味などトロピカルなフレーバーが多いです。箱にはグルテンフリーという文字が書いてあります。アイスがメインでお餅の部分はわずかなのに、グルテンフリーという点をアピールしているのが面白いと思いました。

日本食は健康的であるというイメージはしっかりフランス人の間で定着しているようです。フランスのオーガニックストアにはあずき、大豆、お豆腐、おから、玄米などが手に入りますし、この前は梅干しも小瓶にはいったものが売られていました。オーガニックスーパーが増えているフランスでは、食生活を見直す人たちが多くなってきたといえるでしょう。

食べることが大好きなフランスの人たち。日本人が普段何気なく口にしている食べ物も彼らにとっては魅力的なヘルシーフードとなります。和食を食べるというより、日本で親しまれている食材をフランスの食生活に取り入れるスタイルのようです。

健康的な日本の食材はこれからもフランスではどんどん普及していくのではないでしょうか。

2021/08/12

海外だより:フランスより一覧

人気の医療ツーリズムがトルコでも盛ん!

トルコヤロヴァの湯治施設の温泉プール

トルコは、17か所の世界遺産を抱える観光立国ですが、最近人気となっている観光資源が医療ツーリズムです。トルコの定義では、1. 温泉治療、2. 老人の介護、3. 病院での治療・処置を行う狭義の医療ツーリズムの3分野を広義の医療ツーリズムとしています。

温泉治療に関しては、アラブ諸国やロシア周辺諸国とトルコ国内からの観光客に人気となっています。元々、温泉資源に恵まれていて、イスタンブールの隣県のブルサやヤロヴァ、魚が住んでいる温泉で有名なシヴァス、ぬるめのお湯が流れ落ちる石灰棚で有名なパムッカレなど、数多くの温泉地があります。

温泉治療をおこなっている宿泊施設には、湯治客用のプランがあったり、医師の処方箋をもって保険を使って滞在できるようになっていたりするところもあります。温泉治療をする施設の管轄は観光省ですが、リハビリ治療などをする複合施設の充実化に補助金を出す、建設に際して奨励金を出すなど、国を挙げて力を入れています。

トルコでの医療ツーリズム奨励のために行われている活動
https://yigm.ktb.gov.tr/TR-11479/turkiye39de-saglik-turizmine-yonelik-yapilan-calismalar-.html

USHAŞ(国際健康サービス株式会社:医療ツーリズムを推進するために2019年に保健省の下部組織として設立された半官会社)の統計によると、2002年には観光産業の1%足らずだった医療ツーリズムが2020年には4.5%を占めるようになったといいます。2020年はコロナの影響で観光業自体が大きな打撃を受けていたことを考えると、それほどではないように見えるかもしれません。

しかし、コロナ以前の2019年のデータで見ると、医療ツーリズムに訪れた患者さんの数は662,087人、10億6500万アメリカドルの売り上げとなっています。また、2021年の第一四半期では110,716人の患者さんが医療ツーリズムのプログラムを購入し、1億9600万ドル超の売上を挙げています。コロナがまだ収束していないとはいえ、ほぼコロナ以前の状況に近づいているのがわかります。

国としても、医療ツーリズムに力を入れていて、次のような取り組みを行っています。
1. 医療ツーリズムに携わる企業や病院に関する規定を定めて、年に2回の監査を行うといった制度上の整備
2013年に発行された医療ツーリズムで提供される健康サービスの規定:
https://www.ado.org.tr/mevzuat/yonergeler/saglik-turizmi-ve-turist-sagligi-kapsaminda-sunulacak-saglik-hizmetleri-hakkinda-yonerge

2. この規定に基づいて、医療ツーリズムにサービスを提供できる病院に認可を出す
認可されている私立病院のリスト:
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30579ozel-saglik-tesisleripdf.pdf

3.医療ツーリズムを行う施設や組織に奨励金を出す

2.のリストは、私立病院だけでなく、大学病院や公営の病院のリストもあります。特に多いのはイスタンブールですが、地中海岸のアンタルヤやエーゲ海に面したイズミール・アイドゥンといった都市の病院が次に多くなっているのは、やはり、観光分野の一部であると言えます。インプラント治療を受けながらエーゲ海や地中海のリゾート地で過ごす、というプランは、魅力的な感じがします。

病院リストを見ると、眼科や歯科、美容整形といった分野に人気があるのがうかがえます。眼科でのレーシック手術、歯科でのインプラント治療、植毛を含む美容整形は、技術が高い割に自国に比べると費用が大分安いということで、ヨーロッパ諸国やアラブ諸国のツーリストに人気です。アラブ諸国からの観光客には、手術でなおす糖尿病治療も人気のようです。

日本でも最近、トルコでの植毛手術を扱っているところが出てきています。日本から、トルコに来て植毛をして帰る2泊3日のプランを出しているところもあります。トルコでの植毛技術はかなり高いので、コロナの収束後、気になる方は是非観光がてら試してみるというのはいかがでしょうか。

参考サイト:
USHAŞ(国際健康サービス株式会社、英語サイト):
https://www.ushas.com.tr/en/health-tourism-data/

2019年医療ツーリズム認可組織リスト:
私立病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30579ozel-saglik-tesisleripdf.pdf

私立大学病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/27126vakif-universitesi-saglik-tesisleripdf.20190510153016.pdf

公立病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/27126vakif-universitesi-saglik-tesisleripdf.20190510153016.pdf

公立大学病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30381kamu-universitesi-saglik-tesisleripdf.pdf

仲介業者
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30450araci-kuruluslarpdf.pdf

2021/07/13
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! フィンランドの若者に人気の職業とは?

フィンランドの若者たち

6月から長い2ヶ月の夏休みに入ったフィンランドの学生たち。この期間に高校生以上を中心にKesätyö(ケサ・トゥオ)という日本でいう夏休みのアルバイトを体験することが、将来の就職や自身のキャリアアップにつながると言われています。今回は、フィンランドの若者たちに人気の職業を紹介します。

フィンランドには、すべての若者が働くことに興味を持ち、自分でお金の管理や社会の一員として社会に関わることを支援する「TAT」という団体があります。このTATが今春、中学・高校・応用大学の学生約15,000人を対象に、将来の職業についての見解を調査しました。

その結果、男女ともに関心の高い職業分野は、
1位「ヘルスケア」
2位「メディア・コミュニケーション」
3位「文化・エンターテイメント」
4位「観光・飲食」
5位「小売業などの商業系」となりました。

男女別にみてみると、女子は
1位「ヘルスケア」
2位「サービス業」
3位「旅行・飲食」

男子は
1位「テクノロジー分野」
2位「建築・建設」
3位「国防・防衛」*

となりました。
*フィンランドは、主に男子18歳を対象に兵役制度があります。この制度を経験した後、国防・防衛関連の仕事に就くことを希望しているようです。

このようにヘルスケア関連の職業に男女ともに人気があるのは、フィンランドはEU加盟国の中で高齢化社会となるのが一番速いと言われている背景があり、このヘルスケア分野の職種の一つである保育士と介護士の2つの資格を持った「Lahihoitaja(ラヒ・ホイタヤ)」の需要が年々高まっていると言われています。

男女平等のイメージが強いフィンランドですが、今回の調査結果からは、依然として非常にジェンダー的(性別に偏った)であることがわかりました。女子は、サービス業を中心とした仕事ですし、男子は、テクノロジーや建設、物流・貨物輸送などの分野に人気がありました。

また普段の生活において情報やスキルを得る方法として、学校教育が最も一般的であることもわかりました。このほかに親や友人たちとの会話、読書や趣味を通じてとありますが、男子は、YouTubeやゲームから情報やスキルを得ているという回答があり、ジェンダー的かつ世代間の違いも現れていました。

さらには両親の教育的背景や雇用形態が、職業の選択や将来を考える上で強く影響することもわかりました。今回の調査では、大卒の親を持つ若者の81%が小学校卒業後に高等学校への進学を予定しているのに対し、職業資格(中卒・高卒・職業学校卒)を持つ子どもでは36%にとどまっています。また両親ともに働いていない若者の14%が、将来仕事を見つけられないと考えています。

現在フィンランドの失業率は7.6%で、昨年のコロナ禍よりは回復しましたが、人口550万人中でこの割合は依然として高い数値であります。そうした労働市場の背景も重なり、若者の職業選択は、昔に比べると早期から、そして親や友人からの影響も強くなっていると言われています。

コロナでヘルスケア分野の職業の需要も増えて、ますますこの分野の人気が高まることも示唆されていました。今夏は、コロナの変種株がヨーロッパ諸国を感染している影響で、まだまだ経済回復も鈍く全体的に停滞中です。

こうした社会背景の中、若者が将来に対して自分の能力に自信を失ってしまわないように、親や友人たちとワーキングライフについて語り、人生の幸福のためにその重要性を強調することが重要であると、TAT団体のディレクターは話していました。

参考記事:
TAT団体および職業調査レポート
https://www.tat.fi/tyttojen-kiinnostus-johtajuuteen-nousussa-perinteinen-sukupuolijakauma-patee-edelleen-tulevaa-alaa-valitessa/

フィンランドの失業率
https://www.stat.fi/til/tyti/2021/05/tyti_2021_05_2021-06-22_tie_001_en.html

画像提供元:
https://www.mtvuutiset.fi/artikkeli/nuoret-stressaavat-alavalintaa-ja-moni-pitaa-valivuoden-nuoret-eivat-odota-omannakoisen-elaman-alkamista-elakeikaan/7419096#gs.4gaone

2021/07/2

海外だより:フィンランドより一覧

Terve! フィンランドEU圏外からのオンライン注文に通関必須

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コロナ禍で世界中のオンラインショッピングの注文が急増している中、欧州議会(EU)は今年7月1日よりEU圏外から圏内へと輸入されるオンライン商品に通関手続きを実施する新しい規制を施行する予定です。今回はその規制や現状の郵便事情について紹介します。

現在、EU圏外のオンラインショッピングで買い物をして、その合計が22ユーロ以下の場合は付加価値税(VAT)が免除され、通関や関税の対象外となっています。しかし7月1日から施行される新しい規制ではこの免除措置が廃止され、価格の大小に関わらずすべてのオンラン商品に通関が必要となります。

現在アジアや米国のオンラインショップの大半では、すでにVATを直接支払えるシステムが構築されているところもあります。しかし、最終的なチェックアウト価格にVATが含まれていないオンラインショップで注文した場合、消費者は90セントのサービス料をフィンランドの郵便局(Posti)に支払う必要があります。

一方EUでは、この新しい規制に合わせて、消費者がオンラインショップで直接VATを支払えるように「Import One-Stop Shop(IOSS)」を構築しています。

この新しい規制は、150ユーロ以下の商品にしか適用されません。この価格の壁を超えると、消費者はVATだけでなく関税も支払うことになります。このような事態を避けるためには、消費者が購入時にVATを支払うことができるサイトで買い物をすることが最善の方法だと、フィンランド郵便局の国際eコマース担当者は述べています。

実際に著者は、EU圏外のオンラインショップで22ユーロ以下に抑えられる買い物の場合は、そのサービスを利用していました。今後はこうした事態からなるべくEU圏内で利用するようにと考えています。

今回の新しい規制により、また著者のような行動変容によって、EUに拠点を置く企業の競争力は、EU圏外に拠点を置く企業に比べて向上することが、フィンランド財務省によって予測されています。

またこの規制によって約70%の注文でVATがオンラインショップに直接支払われるようになると予測されていますが、ショップ内のシステム移行期間にどれぐらいかかるか、さらには到着後の税関等のシステム移行や手続き進行にもどれぐらいかかるか、この点がフィンランド国内では焦点となっています。

というのも、今年の3月中旬からフィンランドの税関では各国からの通関電子データの送信義務化によって、現場のシステムがこの義務化に対応できておらず、EU圏外からのすべての荷物に遅れが出ています。実際に著者も日本の実家からEMS便が到着したにも関わらず、日本発送から半月以上経過しても税関検査に入ったまま未だに受け取りができていない状況です(通常ですと日本ーフィンランド間のEMS便は、ほぼ1週間ぐらいで受け取れます)。

こうした現状から、7月以降の新しい規制が導入されても現場は再び大混乱に陥る可能性が高いですし、それまでに現在の税関混雑が解消されればですが、その可能性も今は未知であります。

今回のコロナウィルスが弱毒化するまでにはあと1-2年かかるとも言われており、するとわたしたち人間の生活もこうした規制やシステムの変更を余儀なくされることが続くと予想されます。人だけではなく、モノの移動についても改めて考えさせられる状況であります。

参考記事
フィンランド郵便局(7月1日からの新規制について):
https://www.posti.fi/fi/henkiloille/paketit-ja-seuranta/lahetyksen-seuranta-ja-hakeminen/paketin-tullaus-ja-kasittelymaksu/tullaus-1-7-2021-alkaen

フィンランド税関(現在の税関混雑について):
https://tulli.fi/en/-/delay-in-customs-clearances-of-postal-packages-arriving-from-outside-the-eu

欧州議会(「IOSS」について):
https://ec.europa.eu/taxation_customs/business/vat/ioss_en

日本郵便(通関電子データ義務化について):
https://www.post.japanpost.jp/int/ead/index.html

2021/05/27

海外だより:フィンランドより一覧

フランスの住まい探しあれこれ

フランスで住まいを探す

フランスで住まいを探すのは、インターネットの普及により事前情報が素速くえられるようになりました。

パン屋さんの横に無料の不動産雑誌が置いてあることが多く、そこには地元の売り出し物件の広告が載っていてフランスパンとその無料冊子を持ち歩く人の姿もちらほら。地元の不動産会社の情報もわかりますし、販売物件の家の写真もでているので冷やかしで読むだけでも面白いものです。今回は、住まい探しをテーマにレポートいたします。

まず住みたい地区や、広さをキーワード検索して物件を探すのがまず第一歩です。家の写真もすでにサイトに掲載されているので便利になりました。次に気になる物件があれば、管理をしている不動産会社に連絡をいれて内見予約をお願いします。その時、自分が希望している条件を伝えておくと似たような条件の物件を内見の日に3か所ほど回れるようにアレンジをしてくれます。

面白いのは、まだ住人がすんでいる物件にお邪魔するパターンも多い点。全く知らない人の家に上がりこむのは不思議な感覚です。住人が不在の時でもインテリアや雰囲気である程度暮らしぶりが感覚としてわかることもあります。物があふれている家、モデルルームのようなすっきりとしたアパートなど様々です。

住人がいる時の見学は緊張するのですが、隣人や夜の騒音などの細かい点をヒアリングできる利点もあります。あらかじめ自分の望む暮らしや条件をできるだけイメージしておき、ノートに書き留めておくのがお勧めです。そうすると見学した物件の状態がどんなものであれ冷静に判断しやすくなります。空き物件だとニュートラルに判断できることでも、他人が住んでいる物件だと目に入る情報にとらわれがちになってしまうものです。

不動産屋の決まり文句にご用心!

見学したのち、お気に入りの物件をみつけたら次は交渉です。購入の場合は、値段交渉が可能な場合が多いです。買い手側が売値より低い価格を提案して交渉がスタートするわけですが、ここでも慌てず冷静に対応がポイントです。「この物件、他にも購入希望している人がいます。」と不動産会社からいわれるパターン。これを聞くと買い手は焦ってしまいがちですが、これは不動産屋の決まり文句のようなものなので鵜呑みにしないほうがいいでしょう。

最後に、住まいがかわるとそれにまつわる出費も多くなります。快適に暮らすために家具の買い足しや、内装を変えたりなどの費用が必ずでてくるので予算は余裕をもって組んでおくことをお勧めします。

またフランスの引っ越しシーズンは年末と新学期が始まる9月前です。いい物件をみつけたければこの引っ越しシーズンの3か月前に決めておくのがお勧めです。

2021/04/28

海外だより:フランスより一覧

トルコ朝食の定番オリーブ・オイルは日本にも輸出

トルコの朝食

トルコに来て、「お茶飲みにいかない」とか、「今度ご飯食べにおいでよ」という誘いをよく受けるようになり、人好きのするトルコ人らしいとありがたく思っていました。ただ、「朝ごはん食べにおいで」という誘いは、最初のころは、かなり不思議でした。

集合時間は9時とか10時とかで週末に誘われることが多く、行ってみると朝ごはんというよりはブランチという感じで、2時間3時間とゆっくりおしゃべりをしながら、いろいろなものを食べつつ、仲良しと時間を過ごすイベントのような位置づけな感じです。家だけでなく、カフェなどでも朝ごはんの提供があり、「朝ごはん18種類で30リラ、お茶は無制限」といった看板が店先に出ているところもあります。

朝ごはんは、トルコ語ではkahvaltı と言いますが、これはコーヒーを意味する kahveと下や元を意味するaltıから成る複合語です。コーヒーを飲む前にお腹に入れておくものという意味があります。実際に、朝ごはんを食べた後にはトルココーヒーを飲む習慣もあります。ただし、朝ごはんを食べるときにはコーヒーではなく、お茶を飲むのが一般的です。

トルコの朝ごはんに欠かせないのは、まずはお茶とパンにオリーブ、そして白チーズです。これに、ゆで卵やメネメンというトマトとピーマンの卵とじやオムレツといった卵料理がつきます。トマトやキュウリ、パセリやミントといった野菜、ジャム、バターも朝ごはんの定番です。さらに、クロテッドクリームと蜂蜜、大きな餃子の皮のようなユフカという皮の中にひき肉やチーズ、ホウレン草や長ネギなどを入れて焼いたボレキやギョズレメといったものも並びます。食事の中で一番好きなのは朝ごはん!という人も結構いるほど、朝ごはんは特別な食事になっています。

トルコ人の家の冷蔵庫には、オリーブと何らかのチーズが入っています。パンも主食なのでほぼ必ず常備されています。食事を作る時間がない、簡単にすませたい時には、朝ごはんの定番である、お茶とパンとオリーブとチーズを夕食代わりに食べて、「今晩はもう面倒くさいから朝ごはんですませたわ」ということもあります。朝に食べる食事だけではなく、朝ごはんとして食べられる定番のものを朝ごはんとひとくくりにしている面もあるようです。

トルコの朝食の定番オリーブ

朝ごはんの定番のオリーブは、マルマラ海、エーゲ海、地中海の沿岸地域で栽培されています。この地域に行くと、葉の裏が白っぽいオリーブの木が植わったオリーブ山が延々と続いていて壮観です。トルコでは、オリーブグリーンの実よりも、熟して黒くなったオリーブを塩漬けにしたものや若い実に傷をつけてあく抜きしてから塩漬けにしたものがよく食べられています。

オリーブの2019年-2020年の生産量を見ると、トルコは33万トンでエジプト、スペインに次いで世界3位となっています。消費量でもトルコはエジプトに次ぐ世界2位で、国内消費が多いためか輸出量は、84,000トンに留まっています。

オリーブオイルの生産では17万トンの生産量で、スペイン、イタリア、ギリシャ、チュニジアに次ぐ世界5位となっています。オイルは輸出量でも世界6位。ちなみに輸入量で世界8位となっている日本にも輸出されています。

実家の近くのスーパーでオリーブオイルを手に取ったら、原産国がトルコになっていてなんだか嬉しくなりました。

参考資料:
オリーブ・オリーブオイル業界レポート(トルコ輸出業協会)2020年6月版
https://tim.org.tr/files/downloads/Strateji_Raporlari/Zeytin_Zeytinyagi_Sektor_Raporu.pdf

2021/03/31
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! 電気自動車が急成長するフィンランド

フィンランドの電気自動車用充電ステーション

コロナ禍によって世界経済が停滞する中、気候変動対策とともに経済の立て直しをはかるフィンランドおよび欧州圏内ですが、今年に入り電気自動車が今後数年間で急成長すると予測が立てられました。今回はフィンランドや欧州全体における電気自動車関連の動向をお伝えします。

フィンランド自動車産業協会などの業界団体によると、今後数年間で新車の電動化が急速に進み、2025年までには充電式自動車のシェアが40%強に上昇すると予測しています。この背景には、まずフィンランドの国の目標として、2030年までに交通機関におけるCO2排出量を2005年比で50%削減が掲げられています。また電気自動車を2030年までに70万台を普及させることも掲げています。その先の2045年までにはゼロエミッションを国全体で達成することも掲げていることから、あらゆる面で電動化が進むと予測しています。

こうした予測とともに電気自動車の導入に関する税水準について、自動車産業協会の常務理事は「電気自動車の運転コストはすでに内燃機関搭載車よりも明らかに低い」と述べ、購入価格も内燃機関搭載車の価格に徐々に近づくだろう、と業界団体からも予測されています。

2020年の段階では、フィンランド国内において完全な電気自動車はまだ1万台に満たず、プラグインハイブリッド車は4万5千台強となっているようです。

一方、電気自動車の普及には充電ポイントなどのインフラ整備が不可欠です。公共の電気自動車充電インフラの拡大、一般住宅や職場への充電ステーションの設置支援、ガソリンスタンドへの充電ステーションの設置、ライドシェアリングスキームの奨励など、いくつかの目標と戦略が挙げられています。

EU(欧州連合)としては、公共の充電ポイントを2024年までに100万カ所、2029年までに300万カ所の設定を掲げています。この設置については、自動車メーカーをはじめ消費者団体のグループなどはEUに対し、EU加盟国ごとに「野心的な」目標を設定するよう呼びかけています。

さらには自動車業界だけでなく、グリッド運営者、再充電インフラ運営者、輸送会社にも大きな影響を与えることが見込まれ、それにより欧州全体で100万人の雇用を創出することも予測されています。もちろん気候変動目標を達成するのに一役買うことも期待されています。

このようなニュースが流れても、筆者が住んでいる集合住宅および住宅街には、現在、充電ポイントは一つもありません。これから急ピッチにインフラ整備が進められていくのかと静観するとともに、災害国日本に住んでいた人間からすると、すべて電動化することで災害時のリスクはどう捉えるのかと考えてしまいます。そもそも災害がほとんどないフィンランドなので、その必要はないとも言えますが・・・。

そんなことを考えながら、電気自動車が一般化される日はそう遠くもないということも実感しています。

参照記事:
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/car_industry_sees_brisk_growth_in_electric_vehicles_by_2025/11790635

写真出典元:
https://geomarketing.com/will-car-dealerships-survive-the-coming-tide-of-electric-vehicles

2021/3/10

海外だより:フィンランドより一覧

フランスの電子化への波、こんなものまで!?

電子化、ペーパーレスのイメージ

ここ数年前から非物質化という意味を含めるdématérialisationという言葉を頻繁に耳にするようになったフランスです。使われる意味としては電子化、ペーパーレスということになります。

電気やガスなどの請求書は、封書で届いていたのが徐々に「ペーパーレス化に伴い、アカウントとパスワードを使ってネット上で閲覧が可能になりました。」というお知らせがくるようになりました。オンラインで確認できることに便利さを感じる人もいれば、オンライン化に積極的に関わらない人もいるのでしょう。ネット環境に不慣れな年配の方には、スマホやパソコンでと言われても戸惑ってしまうようです。

ここ最近、日常生活で電子化が一歩進んできたと感じた出来事がありました。16歳から持てる個人の健康保険証作成のお知らせの手紙が届きました。フランスの健康保険証はカードタイプで顔写真も載せることになっています。内容は、どういう手順で申請を行うかが書かれていました。そこに、オンラインで申請も可能となっていました。身分証明の写真は、オンライン身分証明撮影のアプリで撮影可能とのことです。街中で見かけるセルフの証明写真のボックスや写真屋さんに行かずに自宅から照明写真が携帯で撮れることを知り驚きました。

早速試してみると、何度でも撮り直しが可能で大変便利でした。自分で撮影した写真で申請許可が受け付けてもらえるか少し不安でしたがきちんと申請を受け付けてもらえました。パスポートなどの身分証明書も有料ですが同じアプリを使ってスマホのカメラを使って同じく撮れるそうです。

洋服屋などに買い物にいくと、お会計の時の「レシートはメールにて送付しますのでアドレスをお願いします。」と言われることも多くなりました。新しく契約した携帯電話の会社などは、最初からすべてオンライン上での請求書しかない仕組みとなっています。

紙の書類は減ってきているといえますが、各契約に対して必ずアカウントとパスワードが必要になってきます。そちらをきちんと自己管理していくことが大切になってきました。私のアドレス帳は、半分は友人達の連絡先で後の半分は各サービスのアカウントとパスワードで埋め尽くされています。

フランスの郵便局の国際郵便のインボイスも以前は手書きで記入する紙をもらえたのですが廃止になりました。自宅で郵便局のサイトにアクセスしてインボイスを作成してプリントアウトしたものを持っていくか、もしくは郵便局にある自動販売機にて自分で作成をしたものしか受け付けないそうです。

これからもペーパーレス化はさらに加速していくと感じます。今現在は、通常通り書面でのサービスを希望すれば受けることが可能ですが、徐々にペーパーレスの選択肢のみに変わっていくように感じます。

企業側は郵送にかかる手間や紙の資源を節約できる利点もあるでしょう。消費者は、日常生活でお世話になっている水道、ガス、電気などのサービスの請求書等の電子化によって自己責任でしっかりアカウントの管理をしていくことが大切になってきています。

ビジネスや業務でのペーパーレス化は効率がよくなり、積極的に取り入れたいものですが、プライベートではもう少し情緒のある暮らしができればいいと思います。

2021/02/19

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドの2021年の展望はいかに?!

国際世論調査フィンランドとEUの比較

未曾有の2020年が終わり、2021年が始まりました。

年が明けて未だにコロナ禍の収束は見えず、むしろ感染拡大の方向にあります。これからの展望を語るにはまだまだ予測不可能な部分もありますが、やはり人々の行動や感情から国際社会の行末は気になるところ。ということで、今回は国際世論調査の結果やフィンランド国内の傾向を紹介したいと思います。

まずは2020年12月に実施されたGallup社による国際世論調査をみていきたいと思います。この調査内容は、20年と比較して21年はよくなるかどうかという質問に対してフィンランド人回答者の57%が良い年になると回答しています。これに対してフィンランド国外の回答者は43%、EU圏内の回答者になると35%と低い数値となっています。

この結果について、フィンランドのTaloustutkimus(エコノミックリサーチ社)のRahkonen氏は「フィンランド国内におけるコロナウィルスの感染被害について、他の国と比べて大きな被害を受けていないため、やや楽観的に考えているのではないか」と話しています。

被害の大きさなどは単純に国際比較はできませんが、前回の記事で紹介したようにフィンランド国内では比較的に抑制されている要因がいくつかあげられることで、こうした先々の展望が明るいのではないかと思います。

次にSitra(フィンランド政府研究開発基金)がフィンランド国内における「コロナ後の人々のライフスタイルはどうなるのか?」という調査を実施し、その結果報告書を発行しました。この報告書では、コロナ禍によって引き起こされた日常生活がダイナミックに変化していることを指摘しています。

その変化は、住宅、都市、労働(環境)、旅行、食生活の側面でまとめられています。例えば、
・住宅であればよりコンパクトな住まいが必要になってくる
・都市であれば15分圏内の通勤がより快適になること(移動に伴うCO2排出量削減や人々の「密」を回避)
・働き方では特にクリエイティビティな領域の労働環境の新たな定義が必要になってくること(主に対面労働領域の再定義)
・旅行であればバーチャルトリップの定着化
・食についてはより倫理的で持続可能な製造および消費が必要になってくる
などが浮き彫りになりました。

こうした変化はおそらく規模は違えども、日本をはじめ世界各地でも見られる現象ではないかと思います。

この世界規模の大惨事によって人々の行動変容に影響が及んだことは事実であり、そこからどう変わっていくのかが2021年以降の国際社会の議題であり、一人ひとりが住む地域の問題・課題でもあるでしょう。

一人ひとりができることは限られていますし、人間の行動変容はすぐには変えられません。しかし人の命・健康、そして地球環境の将来を考えるきっかけとして、引き続き感染に注意しながら考え、行動に移していくことが大切だと思います。

参照記事:
Gallup社
国際世論調査についての記事 (写真元も含む)
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/poll_finns_more_optimistic_than_most_about_2021/11714830

Sitra発行
「Lifestyles after lockdown」
https://www.sitra.fi/en/publications/lifestyles-after-lockdown/

2021/01/20

海外だより:フィンランドより一覧

繊維大国トルコはマスクも輸出大国に

トルコの友人が作ってくれたマスク

コロナウイルスが流行するまでのトルコでは、マスクをしていたら重篤な病気にかかっていると思われてきました。

日本人の友達がマスクをして空港に行ったら、チェックインカウンターで病気だと疑われ、かかりつけの医師から飛行機に乗っても問題ないという診断書を持ってくるようにと言われたことがあるほど、マスクをするのは特別なコトでした。

そんなトルコですが、今回のパンデミックに対する対応は意外と早かったように感じます。一般の人がマスクをするようになったという意味ではなく、マスクの生産という点でですが。

トルコは繊維大国で、綿花や羊毛の生産から始まって製糸、織布、縫製とどの段階も盛んです。その理由は次のようなことでしょうか。

1. ボタンやベルトなどのアクセサリー類も国内生産されているので、原材料のすべてを国内調達できること
2. ヨーロッパ連合と関税同盟が締結されているためヨーロッパへの輸出コストがおさえられること
3. 地勢的に、ロシア・中央アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパと5つの大きな市場に近いこと

1は、繊維産業に特化した理由ですが、2・3は、他の産業にも当てはまり、近年全方向への輸出が増えている傾向があります。

繊維産業に限って言えば、最近中国などに押されている状況はありますが、2019年度の繊維品の輸出額は99億ドル、総輸出額の約5%を占めています。(ITHIBイスタンブール繊維産業輸出協会)

こういった下地があったこともあり、まずは縫製技術を持っている繊維産業の企業がマスク生産に参入してきました。世界的にパンデミックが始まった2020年2月には、既にマスクの輸出が急速拡大しました。トルコ統計局のデータによると、2019年2月のマスク輸出額は98,000ドルでしたが、2020年の2月には2300万ドルで、236倍と爆発的に増えています。

トルコで最初の罹患者が見つかったのは3月に入ってからだったので、生産されたマスクは、2月には主に中国、ドイツなどに輸出されていました。3月に入ってトルコ国内でも罹患者が出始め、4月には外出時にマスクをつけることになってからは、トルコ国内でも品薄状態になっていました。

こういった中、トルコでも国がマスクの配布を始めました。トルコに居住している人は国民であるかどうかを問わず、申し込めば5枚ずつマスクをもらえました。マスク受け取りの通知が来たら、最寄りの薬局で見せるだけでもらえたので、受け取りも簡単でした。配布されたマスクは、国の機関が生産したものでした。

トルコでは、2020年の3月以降、民営企業に対するマスク生産奨励が実施されただけでなく、国の各機関もマスク生産を実施しています。
・「青年スポーツ省」管轄の青少年センター
・「国防省」管轄の縫製所
・「保健省」管轄化の病院付属機関院
・「法務省」管轄の刑務所
・「産業技術省」管轄の機械化学産業機構
など、多彩な機関でマスク生産がおこなわれ、「文部省」管轄の実業高校50校では、毎月200万枚のマスクを生産しています。

2020年9月には1,000以上の民営企業もマスクを生産しており、昨年までは年間生産業が5千枚前後だったところ、同じ量を毎週生産するようになっているといいます。夏以降、生産されたマスクの最大輸出国はドイツなどヨーロッパ諸国が占めています。2020年前半期の使い捨てマスクの輸出額は10億5100万ドルとなり、一大マスク輸出国の仲間入りを果たしました。

最近、トルコでもまた罹患者が増え、週末や夜間の外出制限が実施されています。外出時にマスクをしていないと罰金刑となっています。マスクの重要性が、健康面でも、経済面でも認識され始めているように感じるこの頃です。

記事出典元:
ITHIB (イスタンブール繊維産業輸出協会)
https://ithib.org.tr/tr/bilgi-merkezi-istatistik-aylik-ihracat-kayit-rakamlari-2019.html

Anadolu Ajansı(アナドル通信社)
マスク輸出状況ニュース記事
https://www.aa.com.tr/tr/ekonomi/turkiyenin-en-fazla-tek-kullanimlik-maske-sattigi-ulke-almanya-oldu/1947697

TRTHaber (TRTニュース)
https://www.trthaber.com/haber/koronavirus/turkiyede-haftada-50-milyon-maske-uretiliyor-514410.html

文部省
https://www.meb.gov.tr/cerrahi-maske-ureten-meslek-lisesi-sayisi-50ye-cikarildi-ayda-2-milyon-maske-uretilecek/haber/20574/tr

2021/01/11
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! フィンランドコロナ感染抑制の成功要因は?

フィンランドのコロナウィルス感染追跡アプリ 2020年も残すところあとわずか。今年はこんな年になると誰が予測したでしょうか?

新型コロナウィルスの感染状況は、夏から秋にかけては一旦収束していましたが、やはり11月に入ってから世界中で再び感染拡大が報道されています。

フィンランドにおいては国全体の感染拡大のスピードは相対的に遅かったのですが、11月からヘルシンキ市を中心とした首都圏内での感染者が増え始め、11月末から12月中旬ごろまでリモートワークや遠隔授業がほぼ要請されはじめ、イベントや会議も屋内外ともに10人未満という制限が発表されました。

来年も引き続きこのような状況が続くと見られますが、今回フィンランドは他のヨーロッパ諸国と比べてウィルス拡大の抑制がうまくいっているという見方があります。専門家の間で推測する範囲では7つの要因があるのではないかと話しています。そこで今回はその考えられる要因について紹介したいと思います。

フィンランドは人口10万人あたり342件の感染数が診断され、これはヨーロッパで最も少ない件数と言われています。そのため各国およびフィンランド国内の専門家がその要因を調査しました。その結果、フィンランドの国民性や社会システム、地理的な要因が浮かび上がりました。それでは簡単に見ていきましょう。

1. 国民の海外への渡航自粛
6~8月はフィンランドの夏休み。普段なら南欧やアジアなどへ旅行へ行く人が多いですが、さすがに今年は自粛し国内旅行へ切り替えた人たちが多かったとみられます。

2. 生活および経済圏がほぼ国内限定
1と関連する要因として、基本的には日本と同じようにフィンランドは、普段の生活および経済が国内で成り立つ社会です。ということは陸続きであるヨーロッパ大陸のように近隣諸国の国境を超えて日々仕事や買い物へ行くことはほぼなく、感染抑制につながっているということが考えられます。

3. 政府をはじめ医療機関への信頼
1の要因の根底には、政府や国立感染研究所が発表する日々の報道に対して、国民が信頼を寄せていたと考えられています。パンデミックの最中ではこうした専門機関が的確な情報を伝え、国民がその指示に従うことが最も重要なことと話しています。またメディアの伝え方も、例えば恐怖心を煽るような表現よりは、前向きに対処するような伝え方の方が国民は信頼を寄せ行動に移すと話しています。

4. 人口密度の低さ
フィンランドでは1平方kmあたり約18人が住んでいるのに対し、例えばベルギーでは約400人も住んでいます。すると必然的に個人的な空間や他人との距離感が保たれます。また家族(世帯)の規模や暮らし方も南欧などとは異なる現状から、感染率の低さにつながったのではないかとみています。

5. 欠勤日の補填制度
フィンランド社会保険庁は、ウィルス感染または蔓延を防ぐために欠勤を余儀なくされた従業員に対して、感染症による日当を支給しています。16歳未満の子どもが自宅待機などの状況で働くことができない場合も、この日当制度を受けることができます。こうした制度は他の国ではあまりみられず、収入のために働き続けるという悪循環に陥っていると話しています。

6. 追跡アプリの浸透(写真参照)
8月末に追跡アプリが導入され、導入初日には人口550万人中、100万人がダウンロードしたという発表がありました。クラスターを発見し、そこに居合わせた人々へ通知し検査へ行くような仕組みであるため、即座に蔓延を防いでおり、検査と追跡が成功要因の一つだと国立感染研究所の専門家は話しています。

7. 国民性によるリモートワーク・授業の定着化
最後はご存知の通りフィンランドのリモート社会が成功要因の一つだとも言われています。しかしフィンランドもすべての労働者がリモートワークが可能な状況ではありません。ただ社会学者などによると、フィンランドの国民性として自宅で仕事をすることは苦痛ではない、むしろ大歓迎という特徴があると指摘しています。

以上7つの要因が推測されていますが、果たして来年以降、これらの要因が引き続き功を奏するか見守る必要があります。

今年は異例な年となりましたが、皆さまにおいてはいかがでしたでしょうか?
来年もどうぞウィルス感染に注意してお過ごしください。

Onnellista Uutta Vuotta 2021!

記事参照元:
https://yle.fi/uutiset/3-11643963

画像参照元:
https://www.tyoterveyswellamo.fi/2020/09/02/thln-materiaalia-koronaviruksen-estamiseen-pyrkivasta-koronavilkku-sovelluksesta/

2020/12/15

海外だより:フィンランドより一覧

トルコ地震と命の三角形

pic_turkey20201109

震源地近くのエーゲ海 筆者撮影

日本でも報道されているように、2020年10月30日トルコ時間14:51にトルコ第3の都市イズミールの沖合で地震がありました。

イズミール地方は、1900年から現代までの120年間でマグニチュード4以上の地震が695回あり、1900年以前にも332回の大地震の記録があるところです。今回の地震があってすぐに安否を尋ねるために連絡を取った友人は、生まれも育ちもイズミールという60代の方です。

「自分は地震に慣れていると思っていたけれど、今回の地震は今までに体験してきたものとは全く違った、1分以上揺れが続いて、本当に怖かった。」とおっしゃっていました。彼女の住んでいる建物は破損もなく、棚なども倒れることなく被害はなかったというのが幸いです。

とはいえ、今回の地震は2020年に世界中で起こった地震の中で最も死者の多い地震となってしまいました。9日経った11月8日現在、死者数は115人、けがをした方は1035人で、23人が入院治療している状況です。

倒壊した建物からの救出作業はすべて終了し、建物の残骸を取り除く作業に入っていると、AFAD(トルコ内務省災害緊急事態対策庁)から発表されていますが、この9日間にマグニチュード4以上の大きさの余震が46回、微震も加えると2,846回の余震があったといい、まだ予断は許さない状況のようです。

今回も含めて、トルコで起きた地震の死傷者の多くは、建物の倒壊が原因となっています。そのため、地震が起きた際の最初の対応が異なっています。日本で生まれ育ち毎年地震の避難訓練を経験した私にとって、まず机の下に隠れるが常識でした。しかしトルコでは、地震が起きたらまず壊れなさそうな家具などの脇にうずくまるか横になるようにとアナウンスされています。

命の三角形のサイン

壁が倒れてきたり上から天井が落ちてきたりした際に、丈夫な家財の脇には三角形の隙間ができる可能性が高いからです。この三角形の隙間は「命の三角形」と呼ばれています。まず、そういったところに身を寄せて、揺れが収まったところで外に逃げるのがベストなのだそうです。

今回、倒壊した建物はすべて1999年以前に建てられたものだということでした。1999年は、死者1万7千人超というトルコ史上最大の被害が出たイズミット地震が起きた年です。この地震を境に、トルコでも地震対策が次々と出されてきました。建築基準も強化され、今回の地震でもこの新たな建築基準を満たしている建物はほとんど被害がなかったと言われています。

ただ、今回倒壊した建物の中にも、1階が商業施設になっている建物で柱が抜かれていたものがあったという報道があります。柱を抜いてしまったら、地震がなくても建物が倒壊する可能性があるというのはわかりきったことのように思いますが、毎年のようにこういった事件があるのは残念なことです。

地震対策については日本が非常に進んでいるという認識が、トルコでも浸透しています。地震学者の中には、日本の大学で学んだ方々も多く、耐震建築や緊急地震速報などをテーマとした、日本の技術を紹介するワークショップも実施されています。

政府レベルでも協働体制があり、2018年には、日本政府とトルコ政府の間で「防災協力に関する覚書」が調印されました。災害緊急時の対応をおこなうAFADで日本の国土交通省主催の防災に関するイベントが開催されることもあります。

イスタンブールの橋は陸橋なども含めて、ボスポラス海峡にかかる第2大橋を架けた日本のゼネコンが点検修理をおこなっていたのも、信頼の表れのように思います。実際私も、日本が架けた橋、日本が堀ったトンネルなら安心な気がしています。

参考サイト:
2020年11月8日付けの被害状況
https://www.nethaber.com/gundem/izmir-depreminde-olu-sayisi-115e-yukseldi-34958
https://www.milliyet.com.tr/gundem/afaddan-son-dakika-izmir-depremi-aciklamasi-6348916

イズミール地域の地震のデータ
http://www.koeri.boun.edu.tr/scripts/lst2.asp

AFAD
https://deprem.afad.gov.tr/downloadDocument?id=2064

2020/11/09
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

フランス、2度目の外出規制は?

フランスのカラフルなマスク
日本でもニュースなどで報道されていると思いますが、新型コロナウイルス感染者の増加を理由に再び外出規制がかかったフランス。今回は、どんな感じなのか?現地の様子をレポートいたします。

前回の規制では、
・学生はみな在宅でオンライン授業を受けて登校はなし
・公的機関も大幅な時間縮小で受付
・スーパー、薬局など以外のお店はほぼクローズ
という状態でした。よほどの理由がないと外出はできない状態でした。

今回の規制は結論からいうと3月の1度目にくらべると外出や移動に関しては自由度が少し高いといえます。
幾つかの例を挙げてみます。
・公的機関は通常通り
・幼稚園から高校までの学校は通常通り登校
・テレワークが強く推奨されていますが、どうしてもテレワークができない職種は雇用主が発行する証明書を持参で通勤可
・先延ばしにできない通院、介護が必要な身内のサポートなども可能
・生活必需品の買い物も可能

すべての外出には、許可書の所持が義務付けられています。これは簡単にスマホから許可書をダウンロードできるようになっています。
商店、レストラン、映画館などの商業施設はクローズとなっています。

結婚式なども6人までの集まりまでは可能ですが、それ以上の人数は禁止されています。外出規制の発表がされる数日前から、何となくざわついた雰囲気になっていたフランスです。メディアが先行して「また外出規制が出されるのでは?」という報道を繰り返ししていたこともあるかと思います。実際、規制発表がかかるまでの数日間のスーパーは、多くの人でにぎわっていました。

今回面白いと感じたのは、スーパーの入り口にすでに大量のトイレットペーパーや小麦粉など前回の規制で在庫不足に一時期なったものがアピールするごとく山積みにされていたことです。販売側もこの状況を予測して、かなりの量を仕入れていたのだと思います。前回の様なパニックに近い買い占めは今の所おきていないようです。

マスクを着用する習慣がなかったフランスですが、公的機関やスーパー、病院など建物に入る際のマスク着用が義務になりました。最初はマスク不足や慣れないマスクに抵抗する人たちも見受けましたが、ここ最近はやっとマスク着用にも慣れてきた様子です。ファションの1部となって洋服と色をコーディネートする女性もみかけるようになりました。また6歳からマスク着用が義務になり、子供向けのカラフルなマスクなども売られるようになりました。

感染者が多くみられる地域では、街中を歩く時もマスク着用が義務になっていますが今のところ、一部の地域のみとなっています。「仕事、勉強は続行してお楽しみの娯楽部分のみが禁止になっている。」という不満の声も聞こえてきます。確かに、コンサートや映画館、レストランに自由に行けないのは寂しいですが、動画などでバーチャルな芸術にふれることも可能です。

2020年の終わりまであと2か月をきりました。クリスマス、大みそかなどはフランス人達がプレゼントを買ったり、パーティーをしたりと華やかな時期です。大きく消費が動く時期ですので、ネット注文のシステムが整っていない販売業は厳しい商戦を強いられるかもしれません。

今年は、例年のような冬が送れるかはまだ今の段階ではわかりませんがこの状況からまた新しい形の楽しみ方を生み出す可能性に期待したいと思います。

2020/11/08

海外だより:フランスより一覧

Terve! メッツァ・パビリオンで存在感をアピール 

フィンランド大使館内のメッツァ・パビリオン
コロナで東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、東京を中心とした関連施設や関係者には大きな影響を受けていると思います。

そんな中フィンランドは、オリンピック開催と同時にオープン予定だったMetsä Pavilion(メッツァ・パビリオン)を、東京都港区にあるフィンランド大使館の敷地内に2020年10月上旬にオープンしました。今回はこのパビリオンに関連した情報をお伝えします。

Metsä Pavilion(メッツァ・パビリオン)は、Metsäはフィンランド語の「森」で、森の展示会場をイメージとしたコンセプトの建物です。南サヴォ州プンカハルジュで伐採された木材を使用したこの建物は、フィンランドで製造された後、東京に輸送され組み立てられました。この建物は解体、移動、組み立てが最大7回可能なリユースに適した設計が施されています。

冒頭でお伝えした通り、当初の目的は東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて「フィンランドの存在感を世界中にアピールしたい」とのことでした。しかしオリンピックが延期になったことで、この延期期間中にフィンランドの企業をはじめとし、フィンランド共和国をまるごとプロモートする場として利用することを目的としています。

フィンランドと日本の貿易関係については、EUと日本間で自由貿易協定が結ばれたことで、ここ近年は非常に迅速に強化されつつあります。フィンランドの輸出国第10位で、アジア諸国の中では中国に次ぐ第2位の日本の潜在的な可能性は計り知れないと、ビジネス・フィンランドのペッカ・ライティネン氏は話しています。

特に今日本では判子やファックス文化の終焉やヘルステックなどを推進している背景から、フィンランドのビジネス界隈では「われわれはその分野の先駆者であることは間違いない」とアピールした上で日本のデジタル化に注目しています。パビリオン・オープンの当日は、ノキア社による最新5G技術を使った3Dホログラム*で、フィンランド開発協力・外国貿易大臣やビジネス・フィンランドの CEOが登場し、会場を興奮の渦に巻いたようです。

パビリオンの中はすべてMade in Finlandで作られ、1階はフィンランド企業ブース、2階は催事場として利用されます。パビリオンの運営は、2021年末までの約15ヶ月間。その間、東京オリンピック・パラリンピックの開催予定のほか、特に2階の催事場ではさまざまなイベントが行われる予定だそうです。

コロナ禍による世界経済の実質経済成長率は、OECDによるとマイナス4.5%になると言われています。両国ともにほぼ平均値が予測されていますが、2021年以降のコロナ感染状況によっては、思わぬ方向や結果になることもあります。そうした観点からも、各国の強みなどを用いて可能な範囲で経済活動を行うことが、今わたしたちにできることかもしれません。

*3Dホログラムとは、平面映像(2D)を立体(3D)で記録してデータ化し、3Dで映し出す技術のこと。角度を変えてみると、前・側面・背面まで見ることができ、まるで目の前に本人や物体があるように見えるのが特徴。3Dメガネも不要で肉眼で見えることができます。

3Dホログラム参照元:
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/holographic_minister_unveils_finlands_largest_ever_japan_trade_mission/11585805

画像出典元:
https://www.businessfinland.fi/ja-jp/tokyo2020finland
(c) Helin & Co Architects

2020/11/02

海外だより:フィンランドより一覧

トルコでも身近な飲み物、薬草茶?

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日本にもどくだみ茶や柿の葉茶など薬効があるとされているお茶がありますよね。お茶とは言わないものの寒い日に生姜湯を飲んで温まることもあるのではないでしょうか。

トルコでも、身近にあるものを乾燥させてお茶として飲むということがよくあります。例えば、のどが痛いというと、「アダチャユを飲め」、「いやいやレモンミントがおすすめ」、「生姜湯にはちみつを入れたのに勝るものはなし」、「リンデン茶、村で集めてきたのがあるけどあげようか」などと次から次へとおすすめが飛んできます。

リンデン茶は、リンデンの花と苞を乾燥させたものをお茶の葉のように熱湯に入れて飲みます。リンデンは日本語で言うと菩提樹、樹齢を重ねたものは、樹高5~6mもの大木になります。トルコでは、5月頃に花が咲きます。2週間くらい、甘い香りが漂うので、リンデンの樹がどこにあるのかすぐわかります。金木犀の香りほどではないですが、優しい甘い香りです。花が咲き始めたくらいの頃に集めて乾かしたものが最上級、少し集める時期が遅れた実になったものがその次、苞ばかりのものはちょっと下のランクで売られています。イスタンブールの公園などにも植わっていて、あちらこちらで見られる木なので、シーズンになると集めている人たちもいます。

お茶としてよく飲まれているものは、身近にある植物が多く、自家製?ともいえるものがポピュラーなんです。季節ごとにお茶になる花や葉っぱなどを集めて、乾かしておいて必要な時に飲む感じでしょうか。こちらは、家に常備している「お茶」です。

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写真の左から
1. ウフラムル(リンデン茶)
2. アダチャユ(セージ茶)
3. カラバシュ(フレンチラベンダー)
4. ラバンタ(ラベンダー)
5. キラズサプ(さくらんぼうの茎)

【リンデン茶】
お茶にすると、ちょっとぬめっとした触感になります。咲いている時ほどではないものの、ふわっと甘い香りがします。鎮静作用があると言われていますが、はちみつを入れて飲むとのどの痛みが和らぐ感じがします。

【セージ茶】
抗菌・抗ウイルス作用があると言われています。風邪気味かなという時に飲んだり、うがいをしたりしています。鋭い香りがあり、少し苦みがありますが、体に良い感じがします。

【フレンチラベンダー】
血をサラサラにしてくれる効果があると言われています。脂肪を溶かしてくれるという噂もありますが、効果のほどはわかりません。香りはそれほどきつくないですが、味はラベンダーのお茶を少しまろやかにした感じです。

【ラベンダー】
6月頃に花盛りになります。水道局や大学など公共の施設の庭に一面に咲いているのをよく見かけます。ちょっといただいていいですか?ときくと、大抵、どんどん持ってけと言ってもらえるので集めて使っています。お茶にするなら、茎についたまま乾かして2・3本をマグカップに入れて使うのがおすすめです。飲んだ後に処分するのが簡単なので。ラベンダー茶は、リラックス効果があると言われているので、夜寝る前に飲むことが多いです。茎から外れてバラバラになったものは、小さな布袋に入れてガードローブに入れておくと防虫効果があるとか。

【さくらんぼうの茎】
むくみを取る効果があると言われています。トルコでは、5月~6月にかけてがさくらんぼうの旬になります。市場に行くと、1キロが3.5リラ、60円くらいです。大粒でジューシーで甘くてとてもおいしい上に安いので、思いきり食べられます。実をどんどん食べながら、茎は取っておいて、洗って乾かしておきます。1リットルくらいの熱湯に10本くらい入れて、少し置いておくときれいなピンク色になります。味は癖がなく、飲みやすいです。

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これら以外にも、カモミールやミントなどもよく飲まれています。ミントは、生のままそのまま食べたり、お水に入れて飲んだり、乾かして粉状にしたものを調味料としてお料理に使ったりもします。身近なものをいろいろな形で使えるので楽しいです。

お茶としてよく飲まれているものは、乾物屋さんやスーパーなどで乾燥したものが売られています。ティーバックになったものも売られているので、お土産に持って帰っても喜ばれます。

2020/10/12
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! 差別と向き合うフィンランドの食品メーカー

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チョコレート、アイスクリームなどの名前に国や地域由来の名前を施していることで、現代社会においては人種差別と捉えられる商品が少なくありません。フィンランドの老舗お菓子メーカー「ファッツェル」を筆頭にこうした差別に向き合う企業があります。今回はそのような企業の取り組みを紹介します。

食品会社ネスレ社と英国のアイスクリームメーカーR&R社が50%出資するグローバル合併会社Froneri Finlandによると、フィンランドでは1968年からエスキモーブランドのアイスクリームスナックが販売されています。

しかしエスキモー商標を所有し人種や文化的差別に取り組む米国のドライヤーズ・グランド・アイスクリーム社では、このブランドは不適切であると述べています。

アラスカ先住民言語センターによると「エスキモー」という名称は、イヌイット族やユピック族が先住する米国アラスカ州では使われているが、他の地域では イヌイット族以外の人々がつけたもので『生肉を食べる』という意味で使われているといいます。

また言語学者によれば、この言葉は「スノーシューに網をかける」という意味のオジブワ語に由来すると考えています。

こうした米国の動きは、ジョージ・フロイド事件をきっかけに昨今活発な動きになってきているため、フィンランドにおいても商品名を慎重に検討する動きがみられます。

先述のFroneri Finland社は、私たちにとって「平等」は非常に重要な問題として認識しており、現在、調査などを進めているところであると述べています。

またフィンランドの老舗菓子メーカーのFazer(ファッツェル)社では、「Geisha」チョコレートの商品名の変更を検討していると発表しています。

「Geisha」チョコレートは1962年から販売されており、発売当初は西洋文化からみればエキゾチックで興味深いものとして捉えられていたようですが、今日の国際社会では不適切であると指摘を受けています。

SNSなどから賛否両論のフィードバックを受け取り、その中で人種差別をはじめ、文化的所有権と女性の平等に関する問題についての指摘も受け取ったと話しています。

さらに乳製品メーカーのValio(ヴァリオ)社は、文化的な固定観念に基づいたブランディングを行っているとして、パッケージに描かれた、つばのない円筒形の帽子フェズを着用したトルコ男性のステレオタイプなイメージについてSNSでの議論を受けて、ヨーグルト容器を変更する意向を発表しました。

同社は、マーケティングにおいて差別を助長しないようにするために1年前に方針を更新。この議論が発生する前にヨーグルトのリブランディングを計画していたが、迅速に対応できていなかったと認めています。

このような企業の取り組みは、今後一層活発になっていくと思われます。フィンランドは平等の精神が社会に浸透していることもあり、人種や文化的な差別については迅速にかつ慎重に検討を行う必要があることを認識しています。

ところ変われば発祥地の概念はきちんと理解されず、逆に差別的な意味を持ってしまう難しさは否めません。そうした伝統的な文化に対する尊敬の念を持つことも、これからは個人にもより一層求められてくると思います。

写真出典元:
https://www.fazer.com/products/our-international-brand-selection/geisha/geisha-milk-chocolate-since-1960s/

2020/09/09

海外だより:フィンランドより一覧

効果的に伝わる!フランス風クレームの入れ方

クレームを入れるフランス人

フランスで受けたサービス、または仕事上の取引などで納得がいかない場合クレームをいれなければいけない場面もでてくると思います。

怒りの感情を爆発させるやり方は、クレームをつける側も精神的にエネルギーを消耗しますし相手の理解を得ることも容易ではありません。今回は、どんな風に伝えればこちらの不満や要求を理解してもらえるか幾つかの事例をあげてレポートいたします。

お店で受けたサービスに対するクレームのいれ方

フランスに観光やビジネスで訪れた場合、サービスの質がよくなくがっかりした経験があるかもしれません。日本のサービスの質はとても高いのでそれに比べるとどうしても劣ってしまうかもしれませんが、ある程度は寛容な心で対応するのがいいでしょう。それでも、納得いかないサービスを受けて一言どうしても言っておきたいという場合もあります。

そういう時は、その場のマネージャークラスの責任者を呼んでもらいます。そこで落ち着いてクレームをつけるのがいいでしょう。責任者クラスの人は、サービス向上に対して責任感がありますし、彼らもお客さんの意見は参考になるのでしっかり聞いてくれることがほとんどです。ミスに対してフォローの権限も持っていますので、真摯に対応してくれる確率が高いでしょう。

取引相手に対するクレームの伝え方

フランス人は、相手の気持ちを接するということはもちろんしますが、やはり言葉で表現するコミュニケーションを大切にします。取引相手の場合、最初に「今回の取引またはサービスに対して不満があります」ということを伝えることがいいと思います。最初に伝えるということが大切です。

そこで相手は、クレームだということを踏まえて話をきいてきます。不満な点を幾つかあげて、最後にこちらの要求を伝えてみましょう。
100%要求を受け入れてくれることは、難しい場合もあるかもしれませんが交渉を重ねてお互いが納得いくポイントまでもっていくことは十分可能です。

困った時に使えるお助け簡単フレーズ

フランスで、しつこい勧誘にあうことは日本に比べるとあまりありません。勧誘を断ってもわりと簡単に引き下がってくれるのも有難いです。しかし、時によくわからないアンケートなどの電話がかかってくることもあります。その手の勧誘とわかったら相手がお決まりの話を始める前に一言こういいます。

「あなた近いうちに罰金払う事になりますよ。では。」

弁護士や裁判という言葉も、使えなくはないですが罰金のほうが心理的にグサリとくるようです。相手がドキッとすることを言い返すことがポイントです。このフレーズは、日本のキャッチセールスなどの対応にも使えるのではないでしょうか。

最後に覚えておきたい事は、フランスでは謝罪の言葉を聞くことがあまりありません。そこは、「なんで謝らないんだ!」と思うのではなく、そういう文化であるという風に理解するほうがいいと思います。

2020/08/19

海外だより:フランスより一覧

トルコ輸出産業の基幹は代々伝わる家庭の知恵!

バザールで売られているドライフルーツ

トルコは実は食料自給率100%を超える農業大国。

夏休みになると実家がある田舎に帰って、旬のものを加工して保存食を作るという人たちもいます。子供たちは田舎でのびのびと遊べて、親に孫たちを会わせることもでき、大変な農作業を手伝うこともできて、作った保存食を持って帰って冬場に食べられるという「一石四鳥」なのです。

田舎に住んでいる親や親せきが、都会に住む人たちの分も作って送ってくれるということもあるようです。最近トルコでも食の安全を気にする人たちが増えています。誰が作ったか、どのように作ったかがはっきりわかる自家製のモノを売っている市場や専門店も増えてきています。

保存食を作る方法は、大雑把に3つ。
1. 干す:果物やナッツ、野菜など。
2. 漬け込む:野菜やオリーブの塩漬けやオイル漬け、酢漬けなど
3. 煮込んで瓶詰:果物のジャム類やサルチャ

1. 乾燥食品
果物やナッツを乾燥させたものは、街中のお店や市場でも山盛り状態で売られています。1キロいくらで売られていて、凝縮した旨味があって、お土産にしても喜ばれます。

村に行くと、杏やイチジク、スモモやリンゴなどの木が自宅にあることも多く、シーズンになるとあちらこちらの庭や屋根の上に干されています。カッパドキアなどがあるトルコ中央部は高原地帯のため、夏場はほとんど雨も降らず乾燥しているので、アンズやトマトなどもしっかり乾物になります。クルミやアーモンド、ピスタチオなどは外側の果実の部分を剥ぎ、中の種の部分を干します。

トルコでは豆料理もよく食べられています。ひよこ豆やインゲン豆、そら豆やうずら豆、レンズ豆など、豆類も乾燥されたものが年中出回っています。最近、日本で売られているヘーゼルナッツや干しイチジクの原産地を見るとトルコ産となっているものが見られるようになりました。

ヘーゼルナッツの生産量でトルコは世界一を誇ります。ピスタチオ、クルミ、アーモンド、ヒマワリの種といった種実類の2019年の輸出量は60万トン、27億5千万ドルを超える額で、重要な輸出産物となっています。

2. 漬物
キャベツやキュウリを塩漬けにした漬物もポピュラーですが、トルコ人にとってとても重要なのがオリーブです。特に朝ごはんにはオリーブが欠かせません。オリーブは、熟れ始めは緑色をしていますが、完熟すると黒くなります。緑色のオリーブの方があくが強く、一つ一つ切れ目を入れてから、何度か水を変えながらつけ置く作業をする必要があります。その後、塩漬けにします。

黒いオリーブは、塩漬けにするだけで大丈夫です。特に輸出されているものは、傷まないようしっかり塩漬けになっていてしょっぱすぎることがありますが、その場合は一晩真水につけておくと塩気が抜けておいしく食べられます。

家庭で作られるジャム

3.煮込んで
イチゴや杏、バラやイチジクのジャム、オレンジやベルガモットのマーマレードなど、旬の果物を砂糖で煮込んで瓶詰にしたジャムは、作り方が割と簡単なこともあり、家庭でもよく作られています。お母さんの作ったジャムというのをお裾分けでいただくこともあります。

煮込み系の保存食で最もポピュラーなのがサルチャです。サルチャはトマトやパプリカを煮込んだペーストです。トルコの南東部では辛いパプリカのサルチャ、中央部ではしっかり煮込んだサルチャ、エーゲ海地方では天日で干しながら作るサルチャ、と地域色があるのも面白いです。

自家製のサルチャは、塩の量が違ったりニンニクなどの香辛料が入っていたりとその家の味わいがあります。旬のトマトを薪でじっくり煮込んで作ったサルチャは、トマトの旨味が凝縮されていてそれだけでも美味です。煮込み系のトルコ料理のほとんどはサルチャを味付けに使っているので、日本のお醤油かお味噌のような使い方のように思えます。

2時間ほど煮込むと水分が出てくるので、一度火からおろして挽いて皮などを取り除きます。さらに2時間近くペースト状になるまで煮込み、塩などで味付けして出来上がり。熱いうちに瓶詰にすると真空にできるので保存がききます。

サルチャのメインはトマトを原料としたもので、2018年には103か国に輸出されています。日本にはトマトピューレやダイストマトの缶詰などが1980年代から輸出されてきました。

2020/07/08
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

Terve! 在宅勤務率が高いフィンランドの課題とは?

フィンランドの在宅勤務

コロナ禍になってから在宅勤務へ移行する企業が世界各国で見受けられます。フィンランドももちろんその状況下にありますが、EU機関の調査によると、フィンランドはEU加盟国の中で在宅勤務への移行率が最も高かったという結果がありました。

今回はEUをはじめとするフィンランドの在宅勤務事情についてお伝えします。

平時から在宅勤務が推奨されているフィンランド企業。今回のコロナ禍でも大きな問題もなくスムーズに在宅勤務へ移行した人たちが大勢います。そうした状況の中、欧州生活労働条件改善財団の調査結果によると、EU加盟国の中でフィンランドは、約60%の従業員が在宅勤務に移行できたと回答しています。移行率が50%を超えたのはルクセンブルク、オランダ、ベルギー、デンマークの4ヵ国でした。

一方、在宅勤務へ移行した後、労働時間が以前と変わっていないと回答した労働者の割合が最も高かったのはスウェーデンとフィンランド(それぞれ52%、49%)でした。

こうした在宅勤務へ移行および実施するにあたっての影響は、さまざまなところで見受けられます。日本でも課題となっているワークライフバランスの問題がEU諸国でも深刻化しています。例えば、12歳未満の子どもと暮らす労働者5人に1人にあたる22%が仕事に集中できないと回答しています。反対に子どものいない世帯ではわずか5%、12~17歳の子どもがいる世帯では7%という結果です。

フィンランドの在宅勤務率がEU諸国の中で最も高い理由としては、ワークライフバランスの実施と遠距離通勤を避けるために、政府がテレワークを長年推進してきたことが大きな理由として挙げられています。

ワークライフバランスを実施してきたといえども、在宅勤務への移行の影響は物理的にも精神的にもますます境目がなくなってきています。住環境(日常生活を営む空間と仕事をする空間との境目)、介護・育児の関わり方、さまざまな家族支援ネットワークの欠如などの問題を抱えている人が多いと指摘しています。さらにすべての企業や世帯、地域が在宅勤務に適切なインフラが整備されていない点も指摘しています。

また、同僚たちとの交流が少なくなっていることが不満という結果があります。仕事の中断がなくなったことは効率的に業務が進められる一方で、やはり社会的な交流などの機会が少なくなるのは精神的に寂しいという状況がみられます。

コロナ禍が収束するころ、またはこれからの労働環境のあり方として例えば一つの会議でも会社に出社して参加する従業員と、リモートで参加する従業員のハイブリッドモデルになるのではないかと予測しています。

コロナのような見えないウイルス、そしていつまで続くかわからない不安定な日常生活。こうした状況がしばらく続くことを前提に、仕事と家庭のバランスをどう取るのかが一層問われ始めています。

記事参照元:
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/study_finland_quickest_in_eu_to_shift_to_teleworking_in_corona_era/11344924

画像提供元:
https://ahjocomms.fi/etatyo-toi-aitouden-tyoelamaan/

2020/05/25

海外だより:フィンランドより一覧

トルコの病院意外と進んでいるけど

トルコの病院の様子

トルコで病院にかかる際に、まず気にしなくてはいけないのが、自分のかけている保険でどの病院にかかれるのかということです。

大きく3つに分けられます。

1. トルコ国籍があるかトルコで労働許可証を持っている人たちが加入している社会保険

SSK(社会保険機構)が管理している社会保険は、トルコにある企業で働いていたり、個人事業主も含めて会社を経営していたりする方々が必ず加入している保険です。

トルコ人の多くも、この保険に入っています。社会保険があれば、国公立病院や各地域にある診療所に無料でかかることができます。医師の処方箋があれば、薬も無料になります。国と提携している私立の病院に一部自己負担でかかることもできます。

トルコ国籍があって収入が少ない世帯は、イェシルカード(緑のカード)という低所得層が医療措置を受けられるカードを申請し、病院にかかります。多くの人が加入しているため、国公立病院は非常に混んでいることが多く、医師に診てもらうために何時間も待つことになりかねません。最近は、インターネットや電話で予約が取れるようになっていますが、イスタンブールやアンカラといった大都市では、やはり混雑しています。

感染症の場合は、国が指定する病院に行くことになります。この病院は、ほとんどの場合国公立病院が指定されます。トルコでは、狂犬病や破傷風の危険があるため、旅行に来られた方でもよだれを垂らした猫に引っかかれたり、犬にかまれた場合には予防接種を受けることが勧められています。狂犬病の予防接種は、一定期間をあけて通常4回受ける必要がありますが、イスタンブールではHaseki HastanesiかEtfar Hastanesi でなら4回どれでも受けられます。

2. トルコでイキャメット(居住許可)をとる際に要求される保険

外国人は、1の社会保険に入っていなければ、居住許可をとるためにこの保険に入る必要があります。トルコ政府の補助も出ているため私立の保険とはいえかなりリーズナブルな掛け金に抑えられている保険ですが、使えるのはその保険が認めている提携病院に限られます。交通事故などの突発的な事故の場合は、100%の保障がありますが、病気に関しては、付帯条件にある免責事項が非常に多く、実際に病院に行った際には使えないこともままある保険です。

私は、2019年にリンパ系の原因不明の病気にかかり、この保険を使って病院にかかりました。提携している私立病院であれば7割を保険が負担することになっていましたが、最初の診察料は負担してもらえたもののエコーの代金は、最初は支払われず、2回目のチェックは支払ってもらえて、3回目はまた支払われず、と不思議な制度でした。

3. 日本でかけてくる海外旅行保険

ほとんどの場合、トルコの最も良い私立病院もカバーしているので、安心して医療措置を受けられます。トルコの病院の医療水準は、費用と比例する部分があります。お金をかけることができれば、非常に高い水準の医療を享受することができます。日本で2010年に厚生労働省の承認が出たBKPという治療法があります。脊椎の骨折を医療セメントによって復元する手術で、短期間で快癒し、患者さんの負担も小さいため非常に有効な治療法です。

2010年に、カッパドキアの気球事故で腰椎を骨折した日本人の旅行者の方が、イスタンブールの私立病院でこの手術を受けられました。下手をすると半身不随になりかねない事態でしたが、早急に適切な治療を受けられたことで短期間の入院で済み、無事に日本に帰国されました。ただし、この手術は当時500万円を超える料金で、保険をかけていなければ、大変なことだったかもしれません。

トルコで生活する場合、駐在の方はトルコの社会保険を掛ける必要がありますが、企業として、あるいは個人で日本から保険をかけてこられる方が多いようです。やはり、万が一の場合を考えると、その形式が一番安心かもしれません。

画像出典元:
https://www.aa.com.tr/tr/saglik/ozel-hastane-yonetmeliginde-degisiklik-yapildi/1596677

2020/05/04
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

拍手でコミュニケーション?フランス人の表現法

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外出規制が全国的にかかっているフランスで毎日行われていることがあります。

夜の8時になると窓をあけて拍手をする拍手運動です。

これは厳しい状況の中でも活動を続けている医療関係の仕事についている方や食品販売などを支えてくれる方達に向けての周りからの応援の拍手です。5分程度の時間ですが毎日自主的に行われています。

私がフランスに住んで間もない頃、この拍手に救われたエピソードがあります。

子供用のスキーウエアを買いに子供2人を連れてスキークラブ主催のガレージセールに行ったときのことです。体育館ぐらいの広さの会場に、スキーウエア、スキーの板や靴などがぎっしりと並べられていました。私は、片手で幼い長女の手をつなぎ、もう片手は抱っこ紐でつないでいた次女を支えていました。

沢山あるウエアを物色し始めたら夢中になってしまい、私は気がつくと長女の手を放していました。すると隣で「ガッシャ―ン!!」とすごい物が倒れる音が響いてきたのです。ドミノ倒しのように次々と倒れるスキー板たちの横に、おびえる長女の姿がありました。どうやら長女が触ったスキー板が倒れ、並んでいたスキー板が崩れ去ったようです。会場が、一瞬シーンとなりました。私は顔面真っ青です。

数秒の沈黙の後、大きな拍手が送られました。「圧巻なドミノ倒しだったね。ブラボー!」

私はてっきり怒られると思っていたのでびっくり。皆に華麗なドミノ倒しを賞賛されて長女もほっとした様子で会場はあたたかな雰囲気に包まれました。この時の拍手の場面は今でもありありと思い出せます。機転を利かせて拍手をしてくださった会場の方には今でも感謝しかありません。

拍手なら言葉が通じなくても手があればできる簡単な事です。結婚式やコンサート会場でなくても普段の生活の中で拍手を上手にコミュニケーションのツールとして使っているフランス人達。今回の夜8時の拍手運動も周りへの感謝の心と自分たちを励ます役割を担っている気がします。

拍手は祝福の気持ちだけでなく、ねぎらいや賞賛など様々な意味合いで使える表現法の1つなのだということを再確認しました。

ビジネスシーンでの最初の挨拶は握手から始まることも多いフランス。一瞬の手の触れ合いから受ける印象というものも大きいと感じています。「握手をしたとき、まったく力が入ってない人は信用できないわ」といっていた女性社長がいました。手のコミュニケーション、意識してみると面白い発見があるかもしれません。

2020/04/20

海外だより:フランスより一覧

Terve! ひきこもりが得意なフィンランド人は今

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新型コロナウィルスの影響で自宅で過ごす時間がぐんと増えました。もともと寒冷気候であるフィンランドでは、暗くて寒い時期を屋内で過ごすことが一般的です。その甲斐あってか、今回の自粛モードでも楽しみながら過ごしている様子が伺えます。

今回はそんなフィンランドの国民性を反映した過ごし方をご紹介します。

屋外の大規模イベントやスポーツ観戦がキャンセルとなり、また図書館などの公共施設から、カフェ・レストランまでもが閉鎖(テイクアウトとデリバリーのみ営業)。さらにはヘルシンキ周辺の首都圏内もロックダウン。こんな行き場の失ったフィンランド人がまず真っ先に向かう先は、森です。

ヘルシンキのような都市であっても、中心地から数分歩けば森や公園があります。普段からこうした場所で散歩やジョギングをしている人たちを見かけますが、この時期はさらに増えています。森に人だかりが出来ては意味がないので、各森林管理局が「複数人で群れないように」と警告しています。それでも別の森や公園へ散らばれば、人が少ないので自然界で行き場を失うことはなさそうです。

もう一つ、森とセットで過ごすのに最適な場所として、Mökki(モッキ)とよばれるコテージがあります。日本でコテージというと富裕層が所有しているイメージがありますが、フィンランドでは一般的にコテージを所有または賃貸して、そこで過ごすことを人生の楽しみの一つとしています。在宅勤務が義務となった人たちにとっては、コテージはうってつけの場所。サウナや森がセットの生活環境となれば、自粛モードはどこへやら。ただし、高齢者や感染の疑いがある人は、逆に病院近くの自宅などで過ごす必要があると言われています。

こうした生活環境に加えて、今やインターネットなしの生活は考えられない状況で生み出されているのは、オンラインでの娯楽です。昔でいう「チェーンメール」のような「5日連続で良いことがあったらSNSでアップして、別の友人を指名する」というような内容のものがいくつかまわってきています。3月に人気だったのが「若い頃の写真をアップする」でした。友人たちの若かりし頃の写真をみて自粛モードを吹き飛ばそうという意図があり、それぞれに楽しんでいました。

またフィンランドは普段からボードゲームの人気があります。カフェやバー、図書館などにボードゲームがいくつか置いてあり、飲みながら食べながら楽しむ習慣があります。そんな背景から今回のような状況下でボードゲームを購入して家族で楽しんでいる様子が伺えます。日本では馴染みの薄い北欧の文化や伝統をテーマにしたゲームもあり、個人的にはこれが一番楽しみでもあります。

最後に、フィンランドにおける自宅での過ごし方で忘れてはいけない、読書があります。世界一読書国民であり、図書館の利用率も世界一の国民にとってこのような状況下では、一層読書率が加速されます。図書館は閉鎖されていますが、e-ブックの貸し出しから、本屋さんでの本の売れ行きは好調のようです。

先が見えない世界的な感染症と向き合うために、自粛モードというよりかはこの時期をどう過ごすかによって、これからの暮らしや社会が見えてくるのではないでしょうか。そんな前向きに考えながら引き続き自宅で過ごしていきたいと思います。

*内容は、2020年3月31日現在のものです。

画像出展元:
https://www.hs.fi/kotimaa/art-2000006440605.html

2020/03/31

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注意!IDの携帯が常識のトルコ

pic_turkey20200307日本で住民票の移動。今回はトルコから少し長めの一時帰国になったため転入届を入れました。

本人確認ができるもの運転免許証、パスポート、個人番号カード、住基カードといったもののいずれかの提示が求められました。

日本では、公的機関が発行した写真付きのものであれば、IDとして使えるのだなと新鮮に感じました。

というのも、トルコでは、届を出しているすべての国民にIDが交付され、常にその携帯が義務付けられているからです。

このIDは、役場、水道局といった公的機関だけではありません。銀行、宅配便の受付窓口、空港や駅で切符を買うとき、飛行機に乗るときなど様々な場面で提示する必要があります。

チケットなどをオンラインで買う際には、IDに記載されているナンバーを書き込みます。ホテルの宿泊の際にもこのIDは必要です。長距離バスなどに乗って移動する際に、IDのチェックのために車両が止められることがありますが、その際にも提示しなくてはなりません。

本当によく使うために、IDを携帯することが義務でなくても携帯する必要があるのではないかと思います。

外国人はどうするかというと、短期滞在の方はパスポートが代用できます。長期滞在する場合にはIkamet(イキャメット)という居住許可をとります。イキャメットもカードの形で、外国人IDナンバーが記載されています。

トルコでワーキングビザを取って働いている場合には、労働許可証が出るのでそのカードをIDとして使うことができます。どちらかがないと、不法滞在になってしまうので、3か月以上トルコに滞在される予定の方はご注意ください。

イキャメットの申請は、移民局のサイトから予約をとって行います。

Ikamet(イキャメット)
https://e-ikamet.goc.gov.tr/

Kimlik(キムリック)というIDは、現在チップ付きのカードに代わっていますが、数年前までは紙のカードで男性はブルー、女性はピンク色をしていました。イスラム教徒が多いトルコではジェンダー問題に関して保守的な考え方をしている人が多いですが、制度的には臨機応変な部分があります。

外科手術などをして性別が変わった場合には、裁判所に申し入れてブルーのIDの代わりにピンク色のIDが発行されていたようで、女性になった歌手がピンクのIDをゲットしたという話をテレビで見たことがあります。もちろん、その場合女性としてのステータスになるので、男性との結婚も法的に問題なくできます。

IDは、個人を表しているもの。その人を特定できるものでなくてはならないため、あるがままを反映している必要があるようです。写真がまだなかった時代、18世紀に使われていた公務員台帳には、人物の特定のために
・身長、体重、お肌の色(トルコ人は3種類に分けて表現しています。)
・髪の毛の色、目の色、ひげの形
・出身地、父親の名前と母親の名前
が記載されていました。

このうち、父親の名前と母親の名前は今でもよく使われます。外国人がとらなくてはいけないイキャメットの申請の際にも、尋ねられます。母親の旧姓ではなく、名前の方なのでご注意ください。

トルコに出張したり、旅行する際に、常にパスポートを携帯するのは面倒くさいと思われるかもしれませんが、国内線であっても飛行機に乗るときや、列車に乗る際にも必要になります。

逆にチェックイン時にIDだけ提示すれば、購入したチケットを出す必要はないので、便利かもしれません。

2020/03/19
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

フランスでは現金?カード?電子マネー?

pic_france_20200307日本では、浸透してきている電子マネーやそれに付帯したポイントカードですがフランスではどのように流通しているのでしょうか。

現金を持ち歩かないフランス人。

フランスで暮らすなら現金より持っていたほうがいいものがあります。

それはカルトブルーという銀行口座に付帯したカードです。口座を開設すると貰えるカードでATMの引き出し機能とVISAのクレジット機能がついているものが一般的です。

フランス人は、買い物をする時の支払いは、ほとんどこのカードで済ませています。支払いをしたら2日以内に銀行口座から引き落とされるシステムになっています。

現金で支払う場合、100€以上の大きな金額のお札での支払いはお店が偽札か確認することも多く、時に断られる場合もあります。日本よりずっと前から、カードで支払いが一般化しているフランスです。

日本の様にチャージして使う電子マネーは今のところフランスでは一般化していません。すでにカルトブルーでの支払いが浸透しているのが大きな理由の一つだと思います。

カードで、ここ数年出てきた機能があります。支払いをするとき、4桁の暗証番号をいれないでカードをかざすだけで支払いを済ますことのできるサン コンタクトというものです。紛失した時の悪用を防ぐため限度額は20€など少額の買い物の時にのみ使用可能です。バゲットや一杯のコーヒーの支払いの時にはこの機能はわりと便利なのです。

現金よりもカードがないと買い物に困るフランスです。カード支払いに関連付けたポイントのサービスは行っていません。

またネットショッピングなどのカード決済時、携帯にSMSでワンパスワードが送られてきてそれを入力しないと決済できない時もあります。これも第三者の悪用を防ぐために作られたセキュリティ機能です。

フランス人のカバンの中身は、カルトブルーと小銭入れだけという事も多く日本のように、長財布を持っている人をあまり見かけせん。

国が違うとカードや現金の流通の仕方も違ってくるのは面白い発見です。日本もカードでの支払いが一般的になる日も近いのかもしれません。

2020/03/07

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドの小包ロッカー(コレクションポイント)革命

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ECサイト市場が拡大する中、フィンランドでは消費者が注文した商品をピックアップできるコレクションポイントに、少し変わったコンセプトを取り入れたサービスが導入されました。

今回はこのコレクションポイントについて紹介します。

フィンランドの郵便局「Posti(ポスティ)」は、こうした市場を睨みながらヘルシンキ市内に商品ピックアップポイントまたは配送スペースやロッカーの設置を拡大する必要があると考えていました。

ただし今までのような「小包ロッカー」ではなく、オンラインショッピングの消費者向けに新しいセルフサービスとなるようなものを取り入れたいと提案しました。

そこで提案を受けたデザイン会社Fyra社とMotley社は、商品を購入した消費者が受け取り直後に、例えば洋服の試着がすぐできる試着室やインテリア商品を開けてみて、その場で飾ってみたりできるスペースを考えてみました。このような消費者(ユーザー)の視点のサービスコンセプトを用いた「Box」というコレクションポイントができあがりました。

提案通り、試着室や商品を開けてみる充分なスペースに加えて、返送の場合でも対応できるようにリサイクルパッケージを設置したり、返品配送サービスを導入したりしました。

さらには、例えばオンライン業者が商品などを紹介できる展示スペース「スポットライト」を設けて、ちょっとしたイベントを開催できるようにソファーを設置したりコーヒーなどの飲み物も用意したりしました。従来のようなただ商品を受け取ったり送ったりする機能だけではなく、新しいサービスの体験をこの場所でできるよう、Postiは新しい取り組みに挑んでいます。

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こうしたPostiの取り組みの背景には、もともとの人的資源の少なさに加えて日本と同じく高齢化社会による介護サービスの導入(このPostiの事業のひとつとして実施しています)や、AIなどのテクノロジーの導入が盛んに叫ばれているからだと専門家たちは話しています。

そうしたことから、単に効率重視のロッカーやコレクションポイントをつくるのではなく、もっと消費者自身が楽しめるような、そしてここを利用する価値が感じられるようなサービスをこれからは考えていかなくてはならないと、Postiや協働したデザイン会社は話しています。

今回の「Box」は、ヘルシンキ市内限定ではありますが、将来フィンランド全土にわたってこうしたコレクションポイントができたら、その土地の特徴を生かしたサービスなどが考えられると思います。

例えば北部の都市ロバニエミのコレクションポイントだったら、サンタクロースやログハウス風、オーロラのイメージを用いたデザインコンセプトや、遠隔地同士をつなげるサービスなどを導入すると、フィンランドの新しい観光スポットになりそうな予感がします。

画像出典元:
https://www.fyra.fi/en/references/posti/

2020/02/20

海外だより:フィンランドより一覧

Terve! フィンランドに世界最年少の女性首相誕生

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2019年の終わりに差し掛かった12月初旬。フィンランド共和国の首相が交代しました。

新しい首相となったのは、社会民主党の党員で運輸通信大臣のSanna Marin(サンナ・マリン)氏、34歳です。

今回はこの新首相誕生について紹介します。

首相辞任となった背景には、2019年11月に郵便局員の給与に対するストライキのスキャンダルがありました。

ストライキは、局員の給与を50%減という案に対するものでした。

しかし、国有企業の担当大臣がストライキを決行する以前の8月に、郵便局(Posti)が局員の給与を低額へ移行する計画を知っていたとし辞任。そして首相もこの計画を知っていたとして不信任とされ辞任しました。

突如の辞任で同じ社会民主党内で以前より次期首相と言われていたマリン氏に注目が集まり、党内投票で当確して首相となりました。

34歳の世界最年少の女性首相、ということで世界から注目を浴びていますが、本人は「年齢や性別については気にしたことはない。生まれながら人間はすべて平等」と話しています。

そのマリン氏。どんな人生を歩んできたのか。簡単に過去の歴史をみてみましょう。

1985年ヘルシンキ生まれ。マリン氏の幼少時代に父親のアルコール中毒で両親が離婚。その後、母親と同性パートナーと3人暮らしで育ち、自身の家族を「レインボー(同性)・ファミリー」と呼んでいます。

高校を卒業したあと、タンペレ大学にて行政学の修士号を取得。2012年の地方選挙でタンペレ市議会の議員に選ばれ、27歳で政治家デビューとなります。

2014年には社会民主党の副議長に選ばれ、翌年にはフィンランド議会に選出されました。今年2019年には引き続きフィンランド議会に再選出され、運輸通信大臣へ。元首相が病欠で2ヶ月ほど休職している最中に、副議長として党内をとりまとめた功績が今回の就任に至りました。

マリン氏のスタンスや周囲からの評価ですが、経営者より労働者目線。主義主張が明確でカリスマ性があり、メディアパフォーマンスやスピーチ能力に長けています。掲げる政策の重要項目は、社会的公正、平等及び気候変動と環境問題と、次世代のリーダーらしさがあると評されています。

そして偶然にも、社会民主党と連立を組んでいる他4党の党首たちもなんと女性。そのうち3党は、サンナ氏と同じく30代女性です。

その連立党は、左派同盟の党首で教育大臣の Li Andersson氏(32歳)、緑の党の党首で内務大臣の Maria Ohisalo氏(35歳)、中央党の党首で財務大臣のKatri Kulmuni氏(32歳)。もう1党は、スウェーデン人民党の党首でベテラン議員のAnna-Maja Henriksson氏(55歳)の女性党首5人による連立内閣です。

歴史的にも内閣メンバーの男女の構成比は同権という背景がありますが、2019年4月の選挙では200人中93人が女性で過去最多。女性首相は、今回で3人目です。

こう書くとフィンランドの政治におけるジェンダーギャップは少ないような印象があります。しかし現在、各政党とも伝統的な政治がうまくいかず、どうリニューアルするか模索している段階だといいます。

そのような背景の中、左派同盟を筆頭に高学歴の30-40歳代の女性をリーダーにすることで、伝統的な政治のイメージからヒューマニズムを重んじる政策へ転換しているところです。

過去にも30代の首相が登場していますが、今回は女性、しかも連立4党の党首すべてが女性ということで世界中からマリン氏内閣の手腕が注目されています。

首相自ら述べているように「年齢や性別は関係なく、政治家やリーダーになったら何をするか」が重要であります。

一時的な「女性首相の流行り」に留まらず、しっかりとした政策を打ち出し歴史に残る実績を作ってもらいたいと、いち市民として願っています。

画像出展元:
https://twitter.com/TNiskakangas/status/1203729511658995713

2019/12/23

海外だより:フィンランドより一覧

フランス企業と上手に付き合っていくコツは?

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「長期休暇に出てしまった担当者と連絡が取れない。」「納品に問題があっても対応が遅い。」

というため息交じりの意見を漏らすのはフランス企業と取引のある日本企業の人たちです。

会社の規模や形態にもよりますが、なかなか物事がスムーズに進まないのがフランスなので日本人が愚痴りたくなる気持ちはよくわかります。

有給休暇も年間30日取得できるフランスですので日本人からみるとよく休む国民だと思われても仕方ありません。

フランスに住んでいると、仕事場以外にも銀行との付き合い、保険会社とのやり取りなどで小さなミスで物事の進捗がおくれることがよくあります。

例えば、「事前に注意しておいたのに届いた商品の梱包に破損があった。」「オーダーしたものと別の物が送られてきた。」「担当者がバカンスで、連絡が取れないために仕事が進まない。」

こういう問題を避けるには、事前にきちんとコミュニケーションをとっておくのがいいのですが、それでもやはりスムーズにいかないこともあります。問題が起きるたびに怒っていたら体がもちません。

「転ばぬ先の杖」のように、事前準備を入念にしておくのは日本人の好むやり方だと感じています。

フランス人は、「問題が起きたらその場で対処しても間に合う。」という観念をもっています。ですので、何か行き違いがあったとしてもわりとおおらかに構えています。そして、ミスをすることにそれほど罪悪感を持っていません。そして、日本の様に簡単に謝罪をいれません。もし謝罪の言葉をいうとしたら個人の謝罪ではなく企業が謝罪するというスタンスを取ります。

減点主義ではないので他人のミスを責めるということはあまりせず、その場で一緒にそれをフォローすることをします。私も職場で、ミスをしたことがありますが同僚が迅速に一緒になって対応してくれた経験がありとても心強く感じました。

今では、同僚がミスをしても慌てずに「大丈夫だよ。」言えるまでになりました。そして、何か評価したいことがあると誉め言葉を相手にきちんと伝えてくれるフランスのいい所も見えてくるようになりました。

フランス企業との取引においてリスクを避ける事前準備はしたに越したことはありません。しかし、行き違いのミスを全くなくすことはとても難しいです。ミスが起きた時はまずはっきりとクレームをいれることが大切です。

クレームは、遠回しに伝えるのではなくきちんとサービスや取引に不満があることを伝えましょう。そして慌てず、一つ一つ解決していく辛抱強さと包容力をもつ事が大切です。問題が思いのほかスムーズに解決して信頼関係を強くする良いきっかけになることもあります。

2019/11/30

海外だより:フランスより一覧

Terve! 世界初のCaaS都市をめざすヘルシンキ

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突然ですが、CaaSという言葉を聞いたことはありますか?

これは”City as a Service”の略語で、ざっくり言うと「サービスとして構想された都市」です。

フィンランドの首都ヘルシンキ市では、世界初のCaaS都市として、テック人材向けにデモ・プロジェクトを立ち上げました。

今回はその内容についてお伝えします。

「サービスとして構想された都市」と聞いてもあまりピンと来ないかもしれません。

都市における交通機関や各種サービスなどの重要要素を包括的なサービスとして繋げている都市、というイメージでしょうか。昨今の”MaaS”(Mobility as a Service)を参考にしてみると、CaaSは、都市にあるあらゆるモノやサービス・手段などをITで統合した次世代のサービスといえるでしょう。

ちなみにこの”MaaS”についてもヘルシンキ市では、”Whim”(ウィム)というアプリサービスをすでに導入しています。

さて今回ヘルシンキにこのデモ・プロジェクトが立ち上がった背景には、フィンランドは「世界一幸せな国である」「世界一ワーク・ライフバランスがとれている国である」「世界一公共デジタルサービスが提供されている国である」・・・そうです「世界一」がいくつもあるからだそうです。

こうした外部からの評価に加え、人口や自然資源が少ない国土のため、新たな取り組みや実証実験を行うにはもってこいの国家サイズ。そして何よりも今ヨーロッパ各地では、プログラマーなどの技術系の人材が不足していることがあります。

では実際にどのようなデモ・プロジェクトなのか、内容をみていきましょう。

・無償教育を体験する
・健康的なワークライフバランスを体験する
・ヘルスケアシステムを体験する
・どこでもスムーズにいける公共交通機関を体験する
・サウナ文化を体験する
・機能的なスマートシティで時間を有効に使う

ここまでが無償のプロジェクトです。

有料プロジェクトでは、
・地元のテック人材と交流する
・スタートアップイベント「Slush」を見学する

などを予定しています。

テック人材を集める、という視点でいうと、私が住む南西部トゥルク市でもつい先日、”Talent Call Turku”というキャンペーンを実施していました。

ヘルシンキ市ほど大規模で”CaaS”とは謳っていませんが、世界各地の優秀なテック人材を募り、その家族を招いて地元の企業や観光スポットを中心に訪問する内容でした。

こうした都市のあり方を考えながら、そこにどんな人々が住み、集うのか。このような未来の都市国家の実践ができるのは、小国家ならではだとつくづく感じます。

画像出典元:
https://www.networkworld.com/article/3257664/iot-sensor-as-a-service-run-by-blockchain-is-coming.html

2019/10/25

海外だより:フィンランドより一覧

日本旅行好きなフランス人達が望むサービスとは?

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2020年開催予定の東京オリンピックに向けて海外からの旅行者が日本に集まることが予想されています。

フランス人にとっても日本への旅行はブームの1つと言われるくらい人気になっています。

日本に1度でも旅行で訪れたことがあるフランス人はみな「とても快適だったし、人も親切でまた行きたい!」という感想を伝えてきます。

日本風のおもてなしや治安の良さは、初めての日本を訪問する旅行者にとって安心して旅ができる大切な要素です。

リピーターとしてまた日本に行きたいフランス人達に「長期で手頃な価格で滞在できる宿泊施設はないの?」とよく聞かれます。

彼らは、最低でも2週間は滞在したいと考えているので宿泊費は旅行予算の中で大きなウエイトを占めるのです。初めての日本旅行では、駅から近い手軽なゲストハウスを利用するフランス人が多いです。しかし、部屋の狭さやプライベートな空間が少ないことからリピーターはまた利用したいとは思わないようです。

ホテルは、長期滞在だと割高になるので利用のハードルが高くなります。民泊を利用した感想を聞いてもホストとの交流がなく思ったよりも良くなかったという反応が返ってきました。

「フランスの家と日本の家を一時的に交換できるシステムとかないのかな?」と聞かれ、私も調べてみましたがほとんどオファーがない状態です。

「日本人はフランス人の様に長期の休暇をとって2週間も旅行へいく人はほとんどいないのですよ。ホテルは、週末利用客に狙ったサービスが多いので長期滞在には向かないのかもしれません。」と説明しても腑に落ちていない様子です。

フランスだと、バックパッカー向けの安い宿から、ホテル、キッチン付きのアパートホテル、キャンプ場、登録制の家の交換システム、もしくは知り合いの家の泊めてもらうという方法もあるので自分の予算に合わせて選べる余地があるのです。

今後海外からの観光客が、納得いく価格で長期滞在ができる宿泊施設ができれば日本の観光産業もさらに伸びるのではないかと思います。

2019/09/05

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Terve! シェア電動キックボードが大流行のフィンランド

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最近巷でシェア電動キックボードが大人気です。

首都ヘルシンキをはじめ、地方都市でも導入が開始され、至るところで見かけます。

ということで今回は、日本でも実証実験がはじまるシェア電動キックボードについて紹介します。

ちょっと歩くには遠いけど、車で行くまでのところではないー。

こんな微妙な距離を移動するのに最適な乗り物として登場したのが、電動キックボード。

自転車のシェアリングと同じようにこちらもシェアリング事業との親和性が高いため、今のところフィンランドでは、シェアサービスとして提供されています。

フィンランドに最初に導入されたのが、隣のスウェーデン企業が提供するキックボード。その後、フィンランド地元のスタートアップ企業でもサービスが立ち上がり、現在ヘルシンキと地方都市タンペレの企業が導入しています。

使い方は簡単。まず提供するサービスのスマホアプリをダウンロードします。キックボードがある場所が見つかったら、キックボードのロックを解除します。必要事項を登録したら、キックボードに乗ります。キックボードには、アクセルレバーとブレーキレバー(またはフットブレーキ)が付いていますので、これを使って走行します。アプリで表示される指定の返却場所または目的地に着いたら、そこでキックボードを止めてアプリを終了します。利用料金は、平均的に1分15セント(約18円)ですから、1時間あたり1000円です。

このように非常に簡単で誰でも使えて利便性は高い乗り物ですが、メリットとデメリットがあり今あらゆるところで議論が展開されています。

メリットは、利便性のほかに環境配慮型設計により、リサイクル・リユースなどが可能なこと。部品とバッテリーは1-2年の耐久性があるといわれています。また自転車と同様に、CO2排出の削減や車の駐車場問題などの解決にも貢献します。

デメリットは、なんといってもスピードの出し過ぎや乗り捨て、二人乗りなどが問題になっています。特にスピードについては、最近スウェーデンやフランスで規制に乗り出しています。フィンランドは小型電動自動車の規制に則っていますが、地方都市のタンペレ市では、指定の返却場所と速度に関する独自のガイドラインを設けています。

指定の返却場所については、ほとんど設けていない会社が多いですが、最近立ち上がったヘルシンキのスタートアップ企業はこの場所を設けており、ここに返却すると返却料金が安くなるという仕組みになっています。さらにこの会社は、地域における制限速度も導入する予定です。 たとえば、繁華街では20km/hでの走行禁止などという規制を設けるようです。

個人的にまだ乗っていませんが、やはり人が少ない自転車歩道では気持ちよく乗れそうですね。導入して間もないためデメリットの方が目につきますが、Maas(Mobility as a service)の一貫としてまだまだ改善の余地があり、新たな移動の概念として注目が予想されます。

画像出典元:
https://www.v2.fi/artikkelit/viihde/2519/Koeajossa-Tier-sahkopotkulauta--kiitamista-vuokrasahkolla/

2019/08/17

海外だより:フィンランドより一覧

意外と知らない、フランスでの接待会食のマナー

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フランスに出張した際、取引先との会食の席が設けられることも多いと思います。

フランスで接待で受ける食事会のマナーの中でこれを知っておけば余裕をもって楽しむことができるポイントを幾つか紹介します。

フランスの接待の食事会は、昼のランチタイムに開かれることがとても多いです。夜は、プライベートな時間という意識が強いフランス人は昼の勤務中に接待の食事会を企画します。

例えばフランス料理のお店に行った場合、食事と一緒にワインを勧められる事があります。

フランス人は昼からビールやワインは1杯程度なら飲む習慣があります。日本人に馴染みのあるビールは、食事前の1杯として飲むのが一般的で食事中のお酒はワインがメインとなります。

多くの確率で、接待相手の外国人にも自国の美味しいワインを勧めてきます。ワインやお酒が好きな人ならば是非味わって頂きたいものです。食事のお供にワインの美味しさを実感できるいいチャンスです。ワインから話が弾むこともあります。

もし、飲みたくない場合は、2パターンの答え方をマスターしましょう。

1つ目は、一応受け入れて実際はワイングラスに口をあまりつけない。もし飲み残してもワインはフランスではそれほど高価なものではないので問題はありません。一緒に乾杯をして一口だけ飲んであとは残しておけばいいのです。

2つ目は、最初からグラスを断るパターン。これは一見失礼にみえるかもしれませんが理由を伝えれば大丈夫です。「昼間にお酒は飲まない習慣です。」や「お酒は好きではありません。」など明確に理由があれば無理強いはしません。あいまいに断るとそれが遠慮なのか嫌いなのかフランス人には理解できなく勧めてくるのではっきりと理由を添えて伝えましょう。

現在フランスでは、飲食店内での喫煙は禁止されています。どのタイミングでたばこを吸えばいいのでしょうか。店内は禁煙ですので、当然喫煙したい方は外にでることになります。メインの食事が終わりデザートを待つ間、もしくはデザートとコーヒーの間なら席を外しても問題ありません。

またフランス人は、食事の時は意外と足並みを揃えたがる傾向にあります。メインデッシュはみな一斉にサーブされるので、一人だけ前菜をとるなどは控え同じタイミングで食事がとれるようにしましょう。

接待の食事会でも、ポイントを押さえればそんなに難しいことはありません。フランス人も日本人も食べることが大好きな共通項があります。食事を楽しみながら先方との距離を縮めるチャンスにもなるでしょう。

2019/06/13

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Terve! 政権交代となったフィンランドの総選挙

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4年に一度行われるフィンランドの総選挙が、2019年4月に行われました。

今回は、以前より推し進めてきた抜本的な社会福祉政策を中止した中央党が、大きく議席を減らし政権交代となりました。

第1党となったのは、社会民主党。そのわずか1議席でEU懐疑派で反移民を唱える真のフィンランド人党という結果になりました。

今回は、フィンランドの選挙についてご紹介します。

★社会民主党とポピュリスト政党で連立政権となるか?

フィンランド共和国は、4年任期制の一院制議会です。全国を14ブロックにわけて、各ブロックから6〜33人選出します。

フィンランドの政党は、主に中央党、国民連合党、社会民主党、スウェーデン人民党、キリスト教民党、左翼同盟、緑の同盟、真のフィンランド人党です。

今回の選挙の焦点は、以前よりSOTE(Sosiaali ja Terveydenhuollon uudistus)と呼ばれる社会福祉と医療サービスの抜本改革を推し進めてきた中央党と、それを批判する野党との対立と予想されていました。ところが先月、中央党の現首相が突如この改革を中止すると発表。それを受けて、野党とポピュリストの代名詞である真のフィンランド人党の勢力が強まり政権交代となりました。

連立政権をつくることが多いフィンランド議会にとって、どの政党と組むかが次の焦点となっています。高税の支持者により公共支出を増やすことを躊躇しない第1党の社会民主党と、「国境のための投票」と呼びかけて、今後フィンランドが受け入れる難民を「ほぼゼロにする」と反移民・難民政策を打ち出している第2党の真のフィンランド人党との協議は、かなり難航すると予想されています。

★平均年齢46歳、半数近くが女性議員

さて、今回の選挙結果の概要をみていきますと、投票率は前回より2%増え72%となりました。当選した議員は、男性54%、女性46%。女性の議員数は、2011年の85人から92人と増加しました。当確議員が120名中、83名が新人議員。年齢をみると、一番多いのが、40〜45歳の35人、次いで35〜40歳の30人、55〜60歳の28人と続き、平均年齢が46歳となりました。ちなみに最年少は20〜25歳の1人、最年長は65〜70歳の3人でした。
さらに外国人候補者が60人ということで、こうした状況をみると、日本の議会と大きく異なることがわかります。

★有権者とコーヒーで交流

こうした結果に至るまでのフィンランドにおける選挙活動について少しご紹介します。
選挙活動は、主にメディアを通じて行われますが、日本のように街頭演説や車でアピールするという活動は行いません。街頭演説に似たような活動としては、ショッピングセンターなどの商業施設に各党のブースを設置して有権者を招いて政策の説明をします。特徴的なことは、その説明会の際に、有権者と直接交流できるようにコーヒーやお茶菓子、ソーセージなどが振舞われます。

また投票した後に、このサービスはVaaliKahvi(ヴァーリカフィビ)と呼ばれ、「民主主義の選挙に参政し、良い選挙結果でありますように」と有権者の権利を確認するとともに、投票が問題なく反映され、公平な結果が出ることを願う場があります。

このような光景は、民主主義国家としてのフィンランドらしい一面であり、歴史的に選挙活動の重要な行いでもあります。

経済不況が脱却し始めたフィンランド。しかしここへきて、福祉政策や税金問題、移民・難民問題に気候変動の問題と各党がそれぞれに掲げる政策をどうまとめ上げるのか。16年ぶりに政権を握る社会民主党の手腕にEU各国が注目しています。

2019/05/23

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フランス人は日本のこんな部分に注目している!

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フランス人と会話していていると日本についての話題が出てくる場合があります。

いったい彼らが日本のどんな事に興味をもっているのでしょうか。

今回は生活、価値観、働き方について3つの例を紹介します。

1番目は、生活についてです。

日本の国土の6倍の広さをもつフランス。郊外や地方にいくと広い庭がある家に住む暮らしをしているフランス人が多くいます。

そんな彼らが日本に行って驚くのは家のスペースです。狭い、コンパクトな作りに「ミニチュアの家のようだ。」なんて表現した人もいました。

フランス人が感心しているのは、このスペースをとても有効的に使っている日本人のライフスタイルです。布団は、昼間は押し入れにしまえば部屋は別の目的に使えます。隙間収納の家具などもフランスにはあまり見かけないものです。

フランスは、ガレージや屋根裏というもの置きスペースがあるので、その部分にものをため込みがちになってしまいます。狭い住まいというと一見マイナスなイメージを持つかもしれませんが、その限定された空間を機能的に使う日本人の生活の知恵はフランス人が高く評価している部分でもあるのです。

2番目は、日本人の持つ価値観についてです。

最近は、詐欺など高齢者を狙った犯罪などもよく耳にするようになりました。しかし、「年配の人を敬う」という精神性は日本人には自然と根付いているものだと感じます。フランスでは、お年寄りはどちらかというと古いというイメージがあり、あまりリスペクトされない風潮にあるそうです。

フランス人と話していると「日本人は年配者に対して敬意を持っているのがいいわよね。」と言われることが何度かありました。フランス人と話をしていると確かに年配者に対して経験を積んだ人生の先輩という見方というよりは、古いという概念でとらえているのが伝わってきます。

3番目は、日本人の働き方です。

「日本人って仕事の後にまた2番目の仕事をしているって本当?」と驚きの印象で聞かれました。

これは、日本の子供が学校の後に通う塾の事を話した時と同じ反応です。彼らにとって「副業なんて一体どこまで仕事が好きなの?どうしてそんなに仕事をしなければならないの?」という感覚のようです。日本人はあまり休暇を取らないという事はフランス人も知っていますが、副業となると理解に困るようです。

副業をやっている方は、もちろん自分で決めてそこに楽しみを見出してやっているという事を説明してみるのですが、フランス人は「休暇が少なく、1つの仕事だけでは生活できないハードな労働環境だね。」と同情されてしまいます。

他にも色々なジャンルで日本の話題になりますが、今回はその中の3つを紹介してみました。物の視点が違うとまた別なものが見えてきて面白いですね。

2019/03/22

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Terve! 日欧EPA締結でフィンランド貿易に拍車

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2019年2月1日に日本と欧州のEPA(経済連携協定)が発効されました。これによりフィンランドの対日輸出が大幅に増加することが見込まれます。

フィンランドにおける対日輸出は、アジア諸国の中では中国に次ぐ第2位の貿易相手国。

2017年統計では、フィンランドから日本への輸出額は13億ユーロ。

日本からフィンランドへの輸入額は7.16億ユーロで、日本から見るとフィンランドからの輸入超過となっています。

今回の協定締結により、関税撤廃の対象品目がぐっと増えました。欧州から日本への関税撤廃率は約94%。

例えば、フィンランドから日本への輸出既存品目である木材コルクや非鉄金属に加えて、プラスチックや化学薬品、そして食品の輸出が予想されます。

フィンランドは現在、サーキュラーエコノミー (循環経済)政策の促進中。プラスチックや食品に特に注目しており、日本のこうした市場への参入が見込まれています。

反対に日本においても対フィンランド輸出にも拍車がかかると予想されます。日本からフィンランドへの関税撤廃率は99%となり、牛肉、お茶、そして日本酒の輸入規制が撤廃されました。フィンランドで日本産のお酒を見る日が待ち遠しいです。

さて、フィンランド技術庁(Tekes)とフィンランドへの企業誘致を実施するフィンプロが統合された組織「ビジネスフィンランド」では、早速フード・イノベーションと題したセミナーが開催されました。近年、世界中からフィンランドの食に注目が高まる中、今後、中小企業を中心に食の経済として25%の成長を目指しています。このような背景をもとに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会における「フィンランド・パビリオン」に出展予定で、フィンランドの食の普及に力を入れています。

以前このコラムで紹介したフィンランドの昆虫食についても、世界へ進出することを見込んでいる企業もあり、もしかしたら日本で昆虫食がお目見えするかもしれません。

また、食品包装業界とのパートナーシップにも重点をおいています。サーキュラーエコノミー政策の一つであるプラスチック戦略に対応するために、食品包装のプラスチックごみ問題の解決に取り組んでいきます。

長年フィンランドの主要産業である森林産業においても、環境に配慮したバイオ燃料が注目を浴びていますので、バイオ関連の品目も日本へ進出していく可能性があります。

2019年は、フィンランドと日本の外交関係樹立100周年。このような年に経済連携協定が締結されたのは、歴史的な出来事です。両国の経済がますます発展していくよう、フィンランドから見守りたいと思います。

参考コラム:
Terve!フィンランドで未来の食が出現?!
https://www.rakuraku-boeki.jp/finland-dayori/2018-10-06

2019/02/13

海外だより:フィンランドより一覧

Terve! 101周年目のフィンランドの独立記念日

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2017年、フィンランドはロシア帝国から独立して100周年目を迎えました。

昨年は新たな100年を目指して新時代に入ったような雰囲気の一年でした。

その一年を振り返るかのように毎年12月6日の独立記念日には、一年間に活躍した人々が一同に会す機会があります。

それは独立記念日の祝賀会です。

大統領夫妻が、その年に活躍した各界の著名人を招いて、およそ2時間かけて握手会を行います。握手会のトップバッターは、退役軍人の方々が入場します。独立100周年を迎えられた退役軍人の方々は非常に誇り高く、この会に招待されることが光栄とおっしゃっていました。

移民である私のような外国人から見ても、この国を支えてきた方々を間近に見れることは、歴史を感じる瞬間でもあります。この他にもこの祝賀会が開かれる夕方以前には、戦争映画が放映されています。

祝賀会には、毎年テーマが設けられています。2018年は「環境」。

フィンランドは、豊富な森林に恵まれた国土のため、自然資源を利用して循環経済(サーキュラーエコノミー )の世界リーダーになると宣言しました。その取り組みが、前回のコラムでも紹介したようにスタートアップ企業を中心に展開され、2018年は経済界のさまざまな分野での目覚ましい活躍がありました。

テーマに沿った祝賀会会場のインテリアやお料理、そしてなんといっても毎年の目玉は、招待客の衣装です。特に女性のイブニングドレスにはちょっとした品評会があるほど。今年はスマホアプリで、どの著名人の衣装が気に入ったかと投票できるシステムまでできるほどの盛り上がりになりました。

イブニングドレスのトップバッターとして、やはりファーストレディーのドレスが気になります。今年のテーマに沿って、なんと白樺の木から作られた純白なドレスをお召しになっていました。白樺の木からとれたセルロースを溶解して繊維を生成。そこから縫製したドレスでした。デザインは、アアルト大学の学生が作ったそうです。

このほかにもプラスチック代替の素材を提供する会社の社長夫妻が招待され、彼らが着ていたイブニングドレスやクラッチバックの素材はすべてそのプラスチック代替の素材を使っていました。

こうした祝賀会を家族揃ってテレビの前で見ていると、日本の紅白歌合戦を思い出させるような光景でもありました。

しかしこの祝賀会に対する抗議デモが行われています。移民や人種差別、貧困層などからの抗議は毎年行われ、死傷者が出ないまでも、祝賀会の間のニュースとして放映されています。表の舞台と裏の舞台は、どこの社会でも存在するものであります。

次の100年に向けてあゆみだしたフィンランド共和国。今年2019年は、日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を迎えます。1919年に日本がフィンランドを国家として承認。その結果、両国が外交関係を樹立することになりました。

私自身、この100年の最後の数年間に、架け橋的な立場になりました。次の100年の最初のステージでは両国に少しでも貢献できるよう、今年はいろいろ活動していきたいと思います。

2019/01/05

海外だより:フィンランドより一覧

フランスの雇用と働き方、実際のところは?

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フランスのニュースで定期的に発信される情報が失業率についてです。

今回は、フランスの雇用システムとその実情についてレポートします。

フランスの雇用形態は、数種類あります。
・終身雇用契約のCDI
・期間限定雇用契約のCDDを中心に
・季節限定の労働契約であるSAISONNIER
・派遣雇用のINTERIMが主なものです

どの雇用形態にしろ、必ず契約書を交わされるのがフランスの雇用形態の特徴です。例えば、1日のみ通訳をするとしてもフランスの会社側から契約書が発行されます。申告をきちんとしていれば、事故などのアクシデントにあった時、保険でカバーできるのでお互い安心して仕事をするためには大切な書類といえます。

フランスの給与明細をみると、基本給与、残業手当などの後に20項目近く税金として差し引かれることが明記されています。失業保険、家族手当、老後手当などをはじめ最後の方は一体何に使われているのかわからない位です。

各項目の差引額は、自分の給与をベースに20%前後のものを引いているのですが項目も多くなると塵も積もれば状態になります。最後の手取りの金額をみると半分近くが税金として差し引かれています。

こんなに国に税金を払っているのだから、何か納得いかないことがあればフランス人はストライキや組合運動を起こして訴えています。税金をしっかり納めている意識が高いので、国の政策や政治にも敏感に反応するのです。

しかし、有給休暇などはきちんと消化できるシステムになっているので働きやすい面もあります。

「人件費がフランスは高い。雇用者を1人増やすごとにまた税金を払わなければいけない。」

これはよく経営者の方が口にしている言葉です。

そして、フランスの会社経営者を悩ませるものはスタッフの管理です。フランスでよく耳にするのが「病欠」です。身体的な病気から、精神的な病気まで事情は様々ですが、病欠で一定期間仕事に従事できない状況がわりと頻繁におきるのがフランス。

お店を経営している知り合いは、
「朝、スタッフがきちんと全員そろうか不安になる時がある。」
と言っていました。

少数派ですが、
「私のかかりつけの医者は、簡単に病欠の証明書を発行してくれるので有り難い。」
なんて言葉も聞こえてきます。

一定期間の働いていた証明があれば失業保険をはじめ、病欠などでも国から最低限の保証がでる仕組みはありがたい一方、それを頼りにして仕事への意欲が下がってしまうケースも作り出しているのがフランスの現状です。

またフランス人は、
「仕事は生活のためにしているもので仕事のために生活をしているのではない。」
という考え方をしているので仕事はやるけれど組織に対する忠誠心の様なものはあまりないのかもしれません。

失業率の高さがニュースで頻繁に取り上げられるフランスですが、地域によってある程度の差はある ものの、雇用市場はきちんとあります。「仕事をしたいけれど仕事がない。」という状況ではありません。

「仕事をしても、税金でかなり持っていかれるし、自分の時間もなくなる。とりあえず失業保険がもらえるからその恩恵を受けて焦らず探そう。」というスタンスがスローな雇用市場を作り上げているのかもしれません。

仕事に対する意欲は、あまり感じられないフランス。しかし、ワークバランスの点からみると税金は高いけれど働きやすい状況は整っているように感じます。

2018/12/22

海外だより:フランスより一覧

人生の大切なパートナーフランスの犬事情

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家庭の半数以上が、ペットを飼っているという統計がでているフランス。

今回はその中の犬にスポットを当てたいと思います。

パリで街を歩く時は要注意!

美しい建築物に気をとられていると足元に変な感触が!!!なんてことに。

気を付けないと犬の糞を踏んでしまい、それをとるのに一苦労します。

市が設置したエチケット袋もあるのですがフランス人は飼い犬の糞の始末は自分でしたがらないようです。毎朝、清掃作業が行われるのでそこにお任せの様子。カフェや地下鉄まで人間と同じように同伴しているフランスの犬たち。地下鉄で床に3匹ほど大型犬が寝そべっていることもあり、乗客も彼らのしっぽを踏まぬように気を付けているくらいです。助手席に同伴させているタクシー運転手、そして物乞いをしている人も大型犬を連れて歩いています。彼らにとって犬は、自分を守ってくれるパートナーなのかもしれません。

田舎では、犬は番犬の役割をしっかり担っています。人の気配がするとしっかり吠えて飼い主に報告しています。スーパーの駐車場で、車中でお留守番している犬を見かけることも。

そして驚くのは、リードを付けずに自由にお散歩している犬が多いことです。過去に実家で飼っていたわが犬は、リードがないと暴走してしまうタイプで本当にハラハラしたものでした。フランスの犬たちをみていると自立していて躾が行き届いているなぁと感心するばかりです。

そんな犬達が社会の一員として受け入れられている反面、動物放棄の問題も存在しています。バカンスなどで長期の旅行に連れていけない理由から、飼育放棄をしてしまうという無責任な行為が実際に多数あります。毎年、夏の終わりのニュースで放棄された動物の数が読み上げられます。

SPAという動物保護協会がこのような飼い主を失った動物たちを保護しています。またドーベルマンやボクサーなどの特定犬は口輪を付けることが義務付けられています。これは、子供が特定犬に襲われケガをする事件が起こったことから法律で定められました。

生活を共にするメンバーとして認知されている犬に関するビジネスはどんなものがあるのでしょうか。犬を売買するブリーダー、動物病院、ペット専用の任意保険などがあげられます。

犬が健康な状態ならワクチン以外に動物病院に連れて行くのは数年に1度の歯石とりくらいだそうです。任意保険は、月の掛け金が10€以下で高くはないのですが周りに加入しているという話は聞きません。日本のようにペットホテルのようなものは流行っていないようです。長期不在の際は、知り合いや親戚に犬の世話を頼む人が多いからでしょう。

犬を個人のブリーダーから買うことが多いフランス。以前紹介しましたフランスの売買のサイトBON COIN (ボン コワン)でブリーダーを見つける場合が多いそうです。または飼い主を失った犬たちを保護しているSPAでも見つけることができます。

動物の為の指圧ケアが存在しているので今後は予防医療の分野で発展していく可能性がありそうです。家族や社会の一員として自然体に振る舞っているのが印象的で、媚びないところがフランスの犬らしさなのかもしれません。

2018/11/07

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Terve!フィンランドで未来の食が出現?!

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都市に新しいレストランができるとどの国でも話題になります。

フィンランドの首都ヘルシンキにも毎年さまざまなレストランがオープンしています。

でも最近オープンしたレストラン、ちょっと風変わりな食材をネタにしているので話題になっています。

その食材とは・・・。食用コオロギです。

欧州委員会(EU)が今年2018年1月に食材に用いる「昆虫食」を「食品」と認可したため、食用の昆虫食の飼育や販売が可能になりました。昆虫は、他の飼育動物に比べて大規模な設備投資が要らず、コストを抑えて飼育できること。飼育の過程における環境に対する負荷が低いこと。さらには昆虫に含まれるタンパク質やビタミン類が豊富ということで、経営面、環境面そして栄養面でも「食」の未来のカギを握る「スーパーフード」として注目を集めています。

そのレストランでは、「コオロギ」の素揚げタルトが話題を呼んでいます。食を提供するだけではなく、店内でそのコオロギを飼育しているのも興味深いです。

しかし、なぜ欧州連合やそのレストランはそこまでして昆虫食にこだわるのでしょうか。その背景には、EUが新たな経済モデルとして提言している「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」の存在があります。これは、日本でおなじみの「リサイクル」「リユース」「リデュース」の3Rを製品ライフサイクル全体の中で実現し、あらゆる原材料、製品、廃棄物を最大限に活用することで、環境面および経済面の双方に利益を生み出すことを目的としています。

フィンランドにおいては、「サーキュラー・エコノミー・ロードマップ2025」が策定され、その中で「持続可能な食料システム」として、食に関わる環境負荷を低減し、新たな市場や雇用を生み出すことを掲げています。

この昆虫食はまさにその目的に沿った新しい取り組み。レストラン以外でも、菓子製造会社ではパンやクッキー、チョコレートに練りこんだものを開発して販売しています。そのおかげか、最近では、フィンランド国内にコオロギ工場が増えているといいます。

実際、著者が住む地元のスタートアップ企業の一つが、コオロギを製品開発してスムージーやチョコレートに商品化して販売をはじめ、数カ所に工場を建てています。

昆虫食というと、日本ではイナゴの佃煮が有名かと思います。中国やタイなどでも日常的に昆虫を食べる地域があるとか。でもやはり口にするには、まだまだ抵抗があると感じるのは、私だけでしょうか。

じゃがいもやトマトがその昔、魔物の食べ物だと言われた時代があったように、あと100年後ぐらいには「昔は、コオロギは食べ物じゃなかったんだよ」「え〜!こんな美味しいのに?」という会話が交わされて一般化しているのでしょうか。

2018/10/06

海外だより:フィンランドより一覧

フランスワインやチーズが安くなる未来とは?

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一度は交渉が滞っていたEPA・EUと日本の経済連携協定がようやく合意にいたりました。

消費者にとっては、関税が下がることは価格が手ごろになるにつながるので嬉しいニュースといえるでしょう。

日本側はチーズ、ワイン、チョコレートやパスタの関税を段階的に引き下げることになり、EU側は日本から入ってくる自動車の関税を下げていく方針になっています。

15年かけてということで少し長い期間にも思えますが段階的にというのは生産業者にしては必要な歳月なのかもしれません。

日本に帰国するときお土産にリクエストされるのが、やはりワイン、チーズ、チョコレート。日本でも最近は、どこのスーパーでもチーズコーナーを設置しておりその充実ぶりに驚きます。そして売られているチーズがフランスに比べるとかなりのミニサイズなのにもびっくりします。フランスで「ご試食どうぞ」と置いてあるサイズとほぼ一緒です。

ワインに関しては、日本はすでにフランスワイン購買のお得意様なので関税の引き下げは販売者と消費者にとってはうれしい限りです。フランスのワイナリーの方と話すと「日本のお客さんは、品質を評価して買ってくれるので嬉しい」ということを聞いたことがあります。こう書くと、日本のワイナリー生産者が苦しい立場になってしまうでしょうか。

私は、ワイン好きのフランス人達がひそかに日本旅行の時に日本のワインを買って持って帰るのを知っています。日本だけでなくマーケットを広げるチャンスになるのではと期待しています。

チョコレートは、有名パティシエのお店がデパートや都心にはオープンしていますがまだまだ日本人にとっては贈り物向けという印象を受けます。フランスでは、クリスマス、4月のイースターでチョコレートを贈ったり買ったりする習慣があり
寒い冬はチョコレートでエネルギー補給をはかるくらいチョコレート消費国民です。材料が良質なのとチョコレートの歴史があることもあり味はお墨付きです。

関税引き下げで日本人のEU産チョコレート購買率がアップするでしょうから日本の生産者は味や質の改善をしていかないと難しいのではと感じています。

日本側の譲歩が嗜好品なのに対して、EU側は自動車。ヨーロッパは車で移動が基本とても多いので環境に配慮したハイブリット車など日本車の流通の拡大を一気に広めるチャンスといえると思います。

物の流通のハードルが徐々に下がっていくのはうれしいことですがそこには必ず人が介入します。今後さらにお互いの文化やバックグラウンドを理解してビジネスを進めていくことが大切だと思っています。

2018/09/02

海外だより:フランスより一覧

Terve! 何もしないで充電するフィンランドの夏休み

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今年も半分が過ぎたところで、夏休みが始まりました。

毎年どんな休みにしようかとあれこれ考えますが、フィンランドの夏休みは「何もしない」ことが一般的です。

今回は季節行事とともに、フィンランドの夏休みについてご紹介します。

◆一日でも長く太陽の光を

毎年、夏至の直後の週末は、Juhannus(ユハンヌス)といって、北欧諸国に昔から伝わる夏至祭が開かれます。これは、キリスト教の洗礼者ヨハネの誕生日とされる6月24日が祝日となり、ちょうどイエス・キリストが生まれたクリスマスの半年前の誕生日であるため、夏のクリスマスとも言われます。近年は、6月20日〜26日の間の土曜日を祝日とする移動祝祭日として、その前日はユハンヌス・イブになり、この日から祝日モードになります。

夏至は太陽が頂点に達し、それ以降、冬至に向かって徐々に日が短くなるため、北欧諸国では、一日でも長く太陽の光が地上に届くようにと、太陽に力を与えるといわれるKokko(コッコ)と呼ばれる焚き火を湖畔近くで燃やします。
ユハンヌス・イブにこの焚き火を燃やし、天気が良ければ外でBBQをしたり、サウナに入ったりして夏至祭を祝います。

昔から夏至の夜は、神秘的で超自然的なものと結びついていると言われています。薬草を朝露が下りる前に摘んで枕の下にしいて寝ると、ご加護や未婚の女性であれば未来の夫が夢に出てくるなどと言われたり、またこの時期に咲く草花などで冠を作って1年間の健康を祈り、夏至祭のあとにこの冠を川に流して将来を占うなどとも言われています。

◆パスワードを忘れるほど遊べ

さてこのユハンヌスを境に、夏休みに入る人が多くなります。その夏休みは、だいたい3~4週間。学生は6月から夏休みが始まっていて、親御さんたちはそれに合わせて1ヶ月近くの休暇に入ります。国外に旅行する人もいれば、Kesämökki(ケサモッキ)と呼ばれるサマーコテージに滞在する人もいます。後者が典型的なフィンランドの夏休みの過ごし方。ユハンヌス直前は、荷物をどっさり詰めた車が高速道路を走り抜けていく姿が見受けられます。

するとビジネスマンたちは、普段の忙しさからこの時期ばかりはゆっくりとコテージで過ごすため、仕事は一切しません。1ヶ月近く休暇を取ると、職場はどうなるかというと、もちろん代わりの人がバックアップします。それでも何人もの人が一度に休んでしまうと手が足りなくなるところもあります。

そのような職業や業種については、学生たちのサマージョブ(夏休みのアルバイト)のボジションが与えられます。これですべて賄いきれるわけではないので、この時期はフィンランド全国どこでも夏休みモードと割り切り、窓口や接客対応は通常よりも遅くなる、という認識が浸透しています。特に6月から8月にかけては、業務がほぼストップすることを前提に、それ以前に仕事を終わらせるなどの工夫が必要です。

それほど夏休みを取るということは、フィンランド人にとって大切なもの。この夏休みにゆっくり休み、仕事や勉強をなど何もしないことが重要です。何もせずに、ひたすら遊び家族や友人と過ごすことが、休み明けの仕事への活力となると言われています。休暇に入るときに、上司や同僚から「PCのパスワードを忘れるほど休みなさい」と半分冗談で言われるようです。

◆夏は家族行事が目白押し

そんなわけでゆっくり休み何もしない夏休みですが、この時期に引越しや結婚式など人生におけるちょっとした行事を行う家庭が多いです。そもそもフィンランドの秋や冬は暗くて寒くて雪が多いため、こうした行事がなかなかできない(またはあまりふさわしくない)などの理由があります。1ヶ月ぐらい夏休みがあると、毎週誰かの結婚式や新築パーティ、宗教的な儀式などがあり、親戚一同集まることが多いので、日本人の私にとっては「お盆」のような感覚です。

フィンランドは8月中旬ごろから新学期がはじまるので、特に大学1年目にあたる学生にとっては、家族と離れて新しい生活が始まる学生寮への引っ越しなどがあります。またビジネスマンにとっても、転職などで勤務先が変わることもこの時期多く、夏休みにリフレッシュして新天地に向かう人もいます。

新緑や太陽の光が眩しい5月から8月の季節。この季節が一日でも長く続きますように、という願いとともに、自然の恵みを受けて身体の休養を行うフィンランド国民。北欧の気候ならではの過ごし方ですが、しっかり休んで充電することはどこの国にいてもやはり大切なことだと実感しています。

2018/07/27

海外だより:フィンランドより一覧

フランス人にとって大切なもの。それは

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どの国の人でも共通に持っているもので、フランス人がとても大切にしているものがあるとしたら何を想像するでしょうか?

他の国の事情は分かりませんがフランスでは、日本と比べるとこの事に格別の思いを抱いていることは確かです。

この事にはっきりと気がついたのは、留学生として滞在していた時期ではなく、家庭を持ってこちらに生活するようになってからです。子供の出産を機に、徐々にわかり始めました。

それは、誕生日です。子供が生まれてから毎年の誕生日に親戚を呼んでお祝いするようになりました。
お誕生日会などは、子供の時だけするものかと思っていたのですが、大人になっても年をとってもお誕生日会が頻繁に行われているフランス。

大人になると60歳、70歳などの節目の年には、親戚や知人達を招待し盛大にお祝いをする人たちも多くいます。
留学生時代、様々な国籍の友人たちとおしゃべりで盛り上がっていたとき、各自の国のバースデーソングを披露しあう流れになりました。その時、初めて各国にその国の言葉できちんとバースデーソングが存在していることを知りました。また友人たちは、日本に独自の歌がないことに驚いていました。

小さいころは、楽しく待ち遠しかったお誕生日も歳を重ねるにつれて手放しで喜ぶ感じではなくなっているのが現在の私です。

しかし、お誕生日になると義理の家族や友人からはお祝いの電話、メールやプレゼントが毎年きっちりと届くのです。他のことには、割と大らかな国民なのですが、お誕生日の日はきちんと忘れずにお祝いする礼儀正しさに驚く私です。

フランスのお誕生日会の例をいくつか紹介したいと思います。

まず、子供のお誕生日はクラスのお友達を週末の午後などに自宅に招いて一緒に遊ぶのが基本パターン。各自、プレゼントを持参でやってきます。ここでのプレゼントの相場は、ほんとうに決まりがなくて様々です。

小学校5年生の娘のお誕生日会でいただいたプレゼントでフランスらしいと思ったのが香水でした。住んでいる地域によってスタイルは様々です。都市部に住んでいる人は、公園などに連れて行って野外でお誕生日会を開くこともあります。スケートやボーリング、プールに連れていく家庭も多いです。

大人のお誕生日会は、招かれた人たちがお金を出しあって大きなプレゼントを贈る場合もあります。また皆でレストランに行ってごちそうすることもよくあります。この場合、レストランに事前に事情を話してバースデーケーキ持参で来ることもあります。

レストランで食事をしている時も、他の方のお誕生日会に出くわすことも。そういう時は、店内にいる皆が拍手をして見知らぬ人のお誕生日を祝う形となり面白いものです。職場でも、自分の誕生日にケーキを焼いて持参してくる人もみかけます。そういう時は、みなで「おめでとう!」と言ってそのケーキを一緒に食べたりします。

フランス人とビジネスやプライベートでコンタクトがある方、ぜひ気軽にお誕生日にお祝いメッセージを送ってみてください。彼らにとっては歳を重ねてもとても大切な日です。きっと喜んでくれると思います。ここで大切なのは、物を贈る事よりその日にお祝いの言葉を伝えることです。お金もかからず、信頼関係を深めるのにとっておきのお勧めの方法です。ぜひお試しを。

2018/06/14

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドのアルコールあれこれ

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週末の朝、近くの小さなスーパーへ行きビールを買おうとしたら、

「まだ8時だから販売できないよ」

と店員に言われてしまいました。

フィンランドでのお酒の販売時間は、朝9時から夜21時までと法律で決められています。

今回はフィンランドのアルコールにまつわるあれこれをご紹介します。

日本より厳しいアルコール規制

冒頭のようにアルコールの販売規制は日本と比べて厳しいです。販売時間をはじめ、アルコール度数4.7パーセント以下であれば、スーパーや小さな店舗でも販売していますが、4.7パーセント以上であるワインやウォッカ、リキュール系などは、フィンランドで全国展開しているAlko(アルコ)というお酒専門店へ行かなければなりません。

Alkoでは、フィンランド国産のビールやウォッカをはじめ世界的なブランドはほぼ100%販売されており、中には日本酒や日本のビールも販売している店舗もあります。

最近、アルコール度数の規制が改訂され、4.7パーセントから5.5パーセントへ引き上げられました。近年のAlkoの人員削減や、アルコールをもっと身近に購入できるように、などの背景があるようです。

Alkoの販売時間も、ある程度は店舗によりますが、基本的には平日朝9時から夜20時まで。土曜日は朝9時から夜18時。日曜日は休業です。最近では夜22時まで開店しているスーパーがありますが、21時を過ぎると、お酒コーナーにシャッターが降ろされます。

また購入する人の年齢制限は、アルコール度数22パーセント未満だと、18歳以上。22パーセント以上は20歳以上、と決められています。

この年齢制限で、見た目が若く見られがちなアジア人(日本人も含め)は、よく身分証明書の
提示が求められます。周りのアジア人の友人たちは「また若く見られちゃった〜」と苦笑しながらお店でアルコールを買ったり、バーやクラブで飲んでいるという話しをよく聞きます。

こうした厳しい規制は、アルコール中毒者の増加や未成年者の飲酒などの社会問題を背景として取り締まられています。

北国ならではの楽しみ方

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アルコール規制が厳しい一方、フィンランドをはじめとする北欧諸国では家庭でライ麦を使って自家製ビールをつくる伝統があります。フィンランドのスーパーでは、手頃に作れるビール作りキットが売っています。

自家製ビールは「KotiKalja」(Koti =家、Kalja=ライトビール)と言われ、ライ麦の麦芽だけのものや、酵母とシロップがセットで売っているものもあります。ビールを入れる容器や貯蔵する瓶なども合わせて購入できます。作り方は簡単。そのセットをお湯に入れて溶かし、室温で放置すること24時間。瓶詰めをしてさらに2-3日置くとビールらしく落ち着いた味わいになってきます。

アルコール度数はほぼゼロで、ノンアルコール・ビールといったところでしょうか。食事の飲み物としてレストランのランチや大学のカフェでも飲むことができます。

暗くて長い冬の一つの楽しみとしてビール作りは人気のようで、知人や友人たちもその昔楽しんでいたとか。アルコール度数が低いビール作りに熱中するなら良いですが、社会問題となっているアルコール依存症にならない程度のたしなみは、世界のどこにいても身に付けたいものです。

2018/05/28

海外だより:フィンランドより一覧

Terve! サウナはフィンランドのアイデンティティ

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突然ですが、みなさんサウナは好きですか?

日本でもスーパー銭湯や温泉施設があちこちにお目見えし、サウナや岩盤浴を楽しむ機会が増えてきましたね。

ここフィンランドはサウナの発祥地として日常において、そしてビジネスシーンにおいても欠かせない大切なものとされています。

その証拠に人口およそ550万人に対しておよそ330万のサウナ風呂があるといわれています。

神聖で清潔な場所

その昔、サウナは身体を洗う場所だけでなく、お産をし新生児を洗いその後1週間ほどの仮住まいの場所とされていました。そして家族の誰かが他界すると、遺体を洗う場所にもなっていました。今ではこのような神聖な儀式はなくなりつつありますが、フィンランドの夏至祭やクリスマス前夜には、心身を清める場所として必ず利用されています。

フィンランドのサウナには、薪でたくサウナと電気ストーブ式のサウナがあります。前者は、一軒家やコテージのサウナに多く、後者は集合住宅や学生寮などにあります。集合住宅には一世帯ずつあり、学生寮や、やや古い集合住宅では共同サウナとして備え付けられているので、事前に予約して利用できます。

ビジネス会議はサウナ室で?!

自宅にサウナが場合は、公衆サウナを利用できます。日本の銭湯と同じ感覚でいつでも利用できます。他にも、ホテルや国会議事堂、そして民間企業のオフィスの中にもあります。フィンランドのビジネスシーンではサウナで会議が行われることがあります。かつてサウナ外交を推奨していたといわれる元首相で大統領のウルフ・ケッコネン氏が、国際会議の後に各国のリーダーや官公使たちをサウナに誘い、裸の付き合いをしながら議論し続けたというエピソードがあります。それに倣ってか、今でも会議で凝り固まった脳をほぐすためにサウナに入り、相手とじっくり向き合い共に汗を流して議論を続けるビジネス文化が受け継がれています。

会議以外でも、忘年会や慰労会など社内レクリエーションとしてサウナパーティーを開催する会社もあります。サウナが温まるまでの間、参加者たちは飲食しながらくつろぎ、サウナが温まればサウナでリラックスし、サウナの途中ではタオルを巻いて外に出て涼みながらまた飲食したりおしゃべりしたり。身体を一気に冷やしたいなら夏なら海へ、冬なら凍湖へ入る人もいたり。日頃の疲れを癒しながら同僚や上司たちとの交流を深める場として利用されています。

こうした公共の場でのサウナは、男女別のところもあれば混浴のところもあります。混浴の場合はタオルや水着を着用することになっています。

サウナはフィンランドの「おもてなし」

私が初めて義家族に会った日、義父に「サウナができているからどうぞ」と言われました。当時はただ、サウナの準備ができたよ、と知らせてくれたという理解でしたが、ここに住んでみるとこの意味は「人をもてなす」行為であることがわかりました。

サウナに一人で入ることもありますが、基本的にフィンランドでは家族や友人、そして職場の同僚などと入ることで相手との距離を縮めながら共にくつろぐ時間を共有しています。その貴重な時間に価値を置いているため、そのような場所(サウナ)をもてなすことがフィンランド人にとってのホスピタリティになります。

もし観光でフィンランドへ訪れたりフィンランド人と交渉する機会があったら、躊躇することなくサウナに入ることをオススメします。人々との交流はもちろんのこと、ビジネスでの交渉がまとまらないとサウナから出してもらえず帰国することが許されないかもしれませんよ。

2018/04/04

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フランス生活で鍛えられる語学力以外の3つの力

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留学や海外赴任、国際結婚などで一定の期間、日本を離れると日々が新体験の毎日になります。

フランス生活ではいったいどんなスキルが鍛えられるでしょうか。

まず1つ目は、許容力。大らかさともいえます。

多くの日本人が最初にうまくフランス語でコミュニケーションがとれないことに絶望を感じます。

「もっと日本で勉強すればよかった。」
「私には語学センスがないのだ。」

など自分を責める方向に向きがちです。

皆の話している言葉がとても早口に聞こえるのもこの時期。文法も発音も日本語と全然違う構成になっているフランス語は確かに簡単にマスターできるものではないかもしれません。

最初は、相手の言っていることがわからない、自分のいいたいことがうまく伝わらないというもどかしさの中で苦しむわけですが、不思議なことに少しずつ「わからない自分」を許容して肩の力が抜けるようになります。また、アフリカ系、マグレブ系、アジア系などルーツが異なる人たちが沢山いるフランス。そういう面でも物事をおおらかに受け入れるという力が身についてきます。

2つ目は、持久力です。
日常生活の中で、待たされることの多いフランス。「早い、スピーディー」という日本のサービス業がお得意としている部分は欠落しています。

スーパーに関しては、レジ係のおしゃべりで待たされることもしばしば。ここ数年、この迅速対応に明るい兆しがみえているものの、すべての対応がゆっくりです。フランス生活をしていると結婚式、お誕生日、クリスマスなど人の集まるパーティーに参加する機会がでてくるのですが、日本人にとっては長すぎることがほとんど。知り合いの結婚パーティーに出席した時の事。教会での式は、午後3時から始まり、簡単なカクテルまで6時。テーブルについて始まった晩餐会は夜8時スタート。

夜中の2時の時点でようやくウエディングケーキが登場。睡魔との闘い、持久力なくしてこれは乗り換えられません。仕事となると勤務時間きっちりで帰宅するフランス人も遊びになるとすごい持久力を発揮します。長いバカンスがいい例でしょう。

3つ目は、交渉力です。
この交渉力があるとフランスでの生活がぐっと面白くなってきます。

暮らしてみてわかったのですが、フランス人との会話の中で「今回は特別に」というフレーズを耳にすることがよくあるのです。どうやら、決まりはあるのだけど交渉次第では、対応が変わるということだと思います。

私も過去に交渉しなければいけない場面に遭遇しました。車の事故、不動産の売買、取引先との交渉など。最初は、「交渉なんてできない!」と緊張していたものですが、今ではもっとゆったり構えることができるようになっています。語学力があったに越したことはないですがなくてもうまく交渉できる場合もあります。

まず冷静に状況を判断する。感情が高ぶっていてはいい話し合いができないので一呼吸置いた状況で物事をみます。物事によっては、一人で判断が難しいようなら応援を頼むのも手です。そして、自分が困っている状況を説明して、改善策を求めるか提案をするという流れです。すんなり、うまくいく場合もありますし、色々と反論されることもあります。フランス人は議論好きなので話し合いが長くなることもしばしば。議論を通して、お互いの誤解をといていくプロセスにもなるので許容力と持久力を使いながら焦らず進めていくことがポイントです。

いかがでしたでしょうか?この3つのスキルはきっと日本でも違う状況で身につくものだと思います。

最後に、元外交官で作家の佐藤優氏の著書「交渉術」は、海外と関係のあるお仕事をされている方には、読み応えるある本となっています。プロの外交の交渉術の手の内も明かされていますので一読をお勧めします。

2018/03/18

海外だより:フランスより一覧

Mama Africa! Kenya便り: ケニアに住んで生活して

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ケニアからの海外だよりも最後となりました。ケニアでの生活を総括してお届けします。

日本に一時帰国をすると「ケニアってどんなところ?」と、よく聞かれます。

一言でケニアの良さをまとめるのはとても難しいのですが、あえて表現するならば「住みやすい」だと思います。

今回は、長年住む中で感じたことをまとめてみます。

住みよいと感じる第一の理由は、年間の平均気温が18°Cと年中を通して快適な気候です。雨季、乾季はありますが、雨が降っても湿度は低く、長引くこともありません。乾季の間も30°Cを超えることは珍しく暑いと感じることも少ないです。ケニアの気候は日本へ帰国された方からもっとも聞くケニアの素晴らしいところです。

次に、身の回りのお手伝いがとても簡単に雇えることです。単身者であっても、日本に比べて家も広く埃っぽいので、
お手伝いさんは非常に助かります。外国人のほとんどが、お手伝い、ドライバー、ナニーなどのスタッフを雇用しています。特に小さな子供をもつ家庭は、簡単に祖国から家族のサポートも得られないので、ナニーがとても頼りになります。

また、とても気さくな国民であることもケニアの良さです。例えばスーパーやレストランなどで働くスタッフ、オフィス内で出会う人など、色々な場面で、たとえその場で出会った人だとしても気軽に挨拶や声を掛け合う姿をみると、その人懐っこさも魅力に感じます。

特に子供に対して非常に寛容な心で接してくれるため、子供を持つ親としては、子育てがし易い環境だと思います。気軽に声を掛けてくれるのはもちろん、荷物を持っていれば手伝って貰うことも多く、レストランではスタッフ達が子供を遊んでくれることも。子供の泣き声や多少の悪ふざけにも寛大に対応してくれるところがケニア人の懐の深さを感じます。

そして長年生活してみると、価値観の変化にも気づきます。ケニアでの住み始める前と今では、生活を豊かにする物差しが変わった気がします。収入格差が激しいケニアで、富裕層と低所得者層との凄まじい生活の格差を日常的に目の当たりにすることは大きなインパクトになりました。

物が限られているからこそ生まれるシンプルな豊かさがあるのかもしれません。生活は新しいものでありふれている日本とは違い、セカンドハンド、サードハンドもごく当たり前です。日本人が帰任、帰国する際はムービングセールと言って、使っていた家具、家電、雑貨などが日本人コミュニティー内で回ります。日本にしかないようなものや、日本の食料品は特に重宝されます。良質なものや日本のものがなかなか手に入りにくいため、物を大事にする意識が自然とついていきます。

それはなにも売るだけではなく、寄付という形もごく当たり前にあります。孤児院や養護施設はナイロビには特に沢山あるため、それら施設に無償で提供する、またはボランティア活動を行いマンパワーでサポートする、基金を設立し金銭的支援をする方々も多くいらっしゃいます。

ケニアの首都ナイロビは、世界中から駐在者が集まる都市でもあり、ダイバーシティーなところも魅力かもしれません。学校、会社、団体、クラブなど属するところの多くが多国籍です。国際化を進めるケニアで、外国人を受け入れるケニア人の姿勢も私達が住みやすいと感じる一つの理由かもしれません。

ケニアは日本から非常に遠い国であり、実際に住むまではなかなかイメージできない国でしょう。確かに生活環境は日本と比べるとかなり違うなと感じますが、実際にケニアに住んでみて感じるこの住みやすさは、ケニアの素晴らしさを伝える大切な要素ではないかと思います。

2018/2/19 E W Africa, Schema Corporation

フランスの医療事情、日本とはずいぶん違う!

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健康に楽しく生活するうえで、医療機関との関わりはとても大切です。寒くなり、風邪やインフルエンザなどで病院に行く機会も増えるこの季節。

今回は、フランスの医療事情を私の経験も交えてお話ししたいと思います。

最初に、フランスは病院というと国立病院や私立病院のことを意味します。

このタイプは、日本と同じく大きな建物に受付があり、各専門の医療施設が整っています。検査および、入院などはこの病院が受け持ちます。

風邪などの内科にかかりたい場合は、どうするのでしょうか?

まず、近所の内科医に電話で予約を取らなければいけません。いざ診察してもらうときにいくのはその内科医の診察室。マンションの一室に自分の診察室を構える場合がほとんどです。看護師さんはいなく、白衣も着ていないお医者さんが多く最初は驚きました。先生の書斎を挟んで問診を受けた後、診察台で診療してもらいます。そして、処方箋を書いてもらいその場でお会計です。

とりあえず、診療代をいったん全額自己負担で払い、後から自分の銀行口座に還付してもらう仕組みになっています。フランスでは、国の管轄の健康保険が7割をカバー、そして残り分は各自が加入している互助保険から還付される仕組みになっています。還付の割合は、内科なら7割ですが眼科や歯科など内容によって変わってきます。

処方された薬は、薬局に探しにいきます。薬剤師さんは、なぜか皆さん白衣をきています。しかし、渡される薬は服用分だけ処方されるのではなく薬の箱を丸ごと渡されます。薬剤師さんは白衣を着ているのに、薬を調合しているのではなく陳列された薬を渡すのが仕事のようです。日本のドラッグストアのイメージを想像していただければいいかと思います。お医者さんの処方箋には、4日間服用と書いてありますが、もらう薬は箱ごとなので当然余ってしまいます。こうして、家には気が付くと大量の薬がたまってしまうことになります。

そして、フランスで困るのが専門医にかかるのには何か月もまたないとダメだということです。眼科医は6か月まち、皮膚科なら4か月まちなどざらで今こそ受け入れることができますが、最初のころは予約の電話口で毎回驚きの連続でした。

「今、辛いのになぜ診てもらえないの?」

という無念さがこみあげてきたことも。

本当につらい場合は、国立病院に行けば予約なしでもみてもらうことは可能です。しかし、かなりの待ち時間を覚悟しないといけません。

こちらの医療制度の良いところでいうとフランスは、傷病が大きい人ほど自己負担が少なくなるシステムとなっています。たとえば、癌患者さんの治療費の自己負担額はほとんどないということです。また継続的な傷の手当などが必要な場合、出張で看護師さんが自宅まで定期的に訪問し手当をしてくれます。これも保険でカバーしている場合がほとんどです。また失業者など、所得がない人たちでも申請手続きをすれば無料で診察を受けることができるカードをもらうことも可能です。

最後に私の入院エピソードをいくつか紹介します。入院中の食事で朝食の飲み物なら「紅茶、ココア、コーヒー、ハーブティーどれがいいですか?」と必ず前日に聞きに来てくれたことです。また食事もいくつか選択肢があり、前菜、メイン、デザートと選ばせてくれたのには「美食の国だわ」と感動しました。

しかし、食事に関しては実際運ばれてきたものは私が注文したものとは全然違う内容でびっくり。これもちょっと抜けているフランスっぽい一面だと思います。また、入院中の主治医は白衣を着ているものの、足元はビーチサンダルでした。また、日本で耳にするお世話になった先生や看護師さん達へお礼などはないようです。

安心できる医療システムがあるといえ、予約がすぐに取れないフランスではやはり自己管理で健康に過ごすことが大切です。

2017/12/25

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドの税と物価

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「フィンランド人のおよそ8割が高税を払うことに納得している」

先日、フィンランド税務局が実施した調査結果がニュースで報道されました。

調査結果によると、国民が教育や福祉などの公的サービスが受けられることを重要視しており、税金の使途が明文化されているため、多くの人々が高い税金を支払うことに理解を示していると分析しています。

■公的サービスの恩恵

この分析の通り、高率税金国家で知られるフィンランドでは、教育をはじめ医療や福祉分野においては、費用がほぼかからずに利用できます。実際私も移住してすぐに産休および育児制度を利用し、出産にかかった費用は入院費のみ。また手術などの大掛かりな治療の場合も入院費のみで利用できます。

医療と同じく費用がかからない教育制度。現在は2015年から義務化になったプレスクール(小学校に入学する前の一年間に通学する学校)から、小中高、大学、そして大学院まで費用がかかりません。未就学児童が通う保育園や幼稚園は、一世帯あたりの収入により月額費用が算定されます。

この他に、日本と異なり費用がかからない公的サービスとして、高速道路や大小さまざまな島を結ぶ各地のフェリーの利用料、国営放送の受信料などがあります。また街中から住宅街、集合住宅の至るところにある公園や運動器具の数の多さや質の良さ、そしてこれからの季節に大活躍する、夜間を含めた除雪作業などのサービスも充実しています。

■物品ごとに異なる付加価値税

このような公的サービスが受けられる基盤となる主な消費税をご紹介しましょう。フィンランドでは、物品ごとに税率が異なります。

・24%:一般消費税
・14%:食料品(ただし酒、タバコを除く)、飲食店
・10%:書籍、新聞や週刊誌などの購読料金、医薬品、宿泊施設、旅客輸送、映画館や遊園地などの入場料など
・0%: 輸出業

お酒は29.9%、タバコは81.3%の税率です。お酒は、アルコール度数4.7%を境に、それ以下であればスーパーや小規模な店舗でも扱っていますが、これ以上になるとお酒の専門店のみの販売となります。

この他に教会の信者の場合は、所得額の1-2%の教会税がかかります。

一方、税金免除の対象分野は、先に紹介した教育や医療、社会保障に関するサービスの他に、公的な葬祭業やアーティストの報酬などがあります。

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■食品は安い。でも外食は高い?!

ではフィンランドの物価はどれぐらいでしょうか。主に普段の生活に必要な食品をみていきましょう。

・飲料水(ガス抜き、500ml)
 1ユーロ
・その他のペットボトル飲料
 2.5ユーロ前後から
・卵(1kg)
 2.5~3.5ユーロ前後
・牛乳(1L)
 0.5~1.2ユーロ前後
・ビール缶(500ml)
 2.0~2.5ユーロ前後
・バナナ(1kg)
 1.0~1.5ユーロ前後
・じゃがいも(1kg)
 0.5~0.8ユーロ前後
・サラダ菜(1パック)
 0.8~1.6ユーロ前後
・鶏、豚、牛肉(500g)
 4.0~6.0ユーロ前後

*ペットボトル、瓶、缶はデポジット制なので、10~20セントのリサイクル還元金を含む値段です

外食になると、ファーストフードのミールセットで5~6ユーロ。中級レストランのランチで9~10ユーロ、夜は前菜だけで10ユーロ近くなるところが多いです。バーで飲むビールやワインはグラス1杯4.5~6ユーロぐらい。

以上の商品やサービスの金額表示は、税込み価格の額が表示されています。また飲食店でのサービス料やチップを上乗せするシステムはありません。

移住して暫くはこの高税率な生活に慣れなくやや不満を抱いていた私も、出産育児の費用や子どもの教育費がすべて無料の恩恵を受けて、ようやく納得できるレベルになってきました。

周りのフィンランド人たちが「税金?絶対に払うでしょ!」と嫌な顔一つせずに収めている姿も見て、冒頭の調査結果にも納得です。

*ユーロ換算:1ユーロ131円。換算率を含めここで紹介した金額は、すべて2017年11月現在のものです
*税金免除とされる教育や医療などの詳しい内容は、社会保険庁(KELA)にて確認できます

2017/12/18

海外だより:フィンランドより一覧

Mama Africa! Kenya便り: ケニアの不動産事情って?

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こんにちは。最近のナイロビは各所で建設中の建物が目立ちます。ケニアの不動産は好景気で建設ラッシュです。なんと地価上昇率は2007年から2015年にかけて535%も上がっていると言われているほど。

特にマンション(こちらではアパートメント)を中心とした住宅とタワーオフィスビルが多く建てられています。

将来的な経済発展を見込み、海外からの投資家も注目しています。

今回はこれら建物について、特徴や問題についてご紹介していきたいと思います。

まずその特徴について、日本との一番の違いは、ほとんどの建物には塀と門がり、その中にたくさんのスタッフが従事していることです。主な理由は治安対策ですが、建物には門番、大きな敷地内では警備員がいます。彼らは24時間シフト勤務が多く、一つの建物に複数のスタッフがつきます。

そして彼らと同様に必ずいるのが清掃員です。その他に、建物の管理スタッフや受付、大きい建物にはガス、電気、水、大工士などの整備士が常駐している場合もあります。

オフィスビルや住宅が続々と建設されることはケニアの雇用創出に大きく貢献します。

建物の中身についてですが、オフィスビルは日本と比べてさほど変わりがないように感じますが、住宅は日本と少々異なります。それは内装です。ケニアは土地が十分にあるせいか、間取りにゆとりがあるように感じられます。特に日本の都市部と違うのは一人暮らし用にあるワンルームはなく、2LDKから、5LDKや6LDKのような日本では珍しい物件もあります。

作りは西洋式が多く、マスタールーム(主寝室)の中にトイレ、化粧台、シャワー室やお風呂まであることも。トイレはゲスト用やお手伝いさん用にも用意されていることが多く、時には家族の人数よりも多かったりします。

その他、玄関がなく玄関口からそのまま部屋の中へと繫がるので靴箱はありません。また、網戸がないので生活に少々困ることも。それは、緑豊かなため虫や蚊が多くどこからともなく虫や蚊が入ってくるのは厄介です。古い建物の場合、窓は開閉式なので自分で網戸も備え付けられないのです。

この土地が広いという恩恵は間取りだけではなく、ほとんどの建物の周辺には、木、植物、花が植えられ、大きい建物では中庭もあります。敷地内にプールやジムがある所も多く、外出が自由にできないが故に敷地内を充実させることを重視しているようです。

最近ではモダンな建物がたくさん建てられていますが、それでも古い物件が好まれたりもすることもあります。その理由は、前の住人がいたことは欠陥の少ない住宅であることを証明できるからです。

外観はとてもおしゃれでも、実際に住んでみると欠陥だらけ、故障頻発といったことをよく耳にします。
よく聞くのが、
・トイレが流れない
・換気扇が付けられていてもダクトがなく吸引されない
・ダクトが家の中に繋がり換気されも家の中で排出される
・水やガス漏れなど配管が十分に整備されていない

など、どれも日本では珍しい話だと思います。

さらに修理はオーナー次第なところがあり、なかなか直してもらえないことも。管理会社が入っている場合、そのオフィスが同じ敷地内にあれば1日2日で修理に来てもらえますが、離れていれば1週間後ものによっては修理完了まで1ヶ月はかかることもあります。

建物が増えたことで技術者の数が足りず、更に時間がかかってしまいます。気を長くして待つ、根気よく連絡をとる辛抱強さも大事になります。

今後ケニアの地価も上がると見込まれ、この建設ラッシュは続くと言われております。将来のケニアがどのような外観をみせるのか楽しみです。

次回は、ケニア総括編です。

2017/12/01 E W Africa, Schema Corporation

フランスに住む日本人のコミュニティ

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フランスに住んでいる日本人は現在3万人と発表されています。

フランスで生活を送っている日本人がどのように日本人コミュニティとつながっているかを紹介したいと思います。

在仏日本人の半分以上は、首都のパリを中心に暮らしています。

パリは、駐在として赴任されている方を中心にその家族、様々な分野で活躍する日本人、留学生、または国際結婚の日仏家庭などバラエティに富んでいます。

フランスの地方になると、駐在家族の割合はぐっと減り、日仏の家族、留学生、大学があれば研究者の方などです。パリには日本人向け無料情報誌「オヴニ―」などはじめ、日仏文化会館、日本食レストランなどがあるので、そこで催し物やコミュニティの情報を得ることが可能です。

「海外に住む日本人ってどうなの?」という質問を日本人にされる時があります。

そのどうなのにはちょっとした不安のニュアンスが含まれていると感じます。キツイ印象を持たれているのかもしれません。「色々な人がいるけれど、結構助け合いの心がある人が多いよ。」と答えます。私も過去に色々と日本人には助けてもらいました。それは物質的な部分より精神面での助けが大きいのかもしれません。

日本人に限らず、同じ言葉を話し、バックグラウンドをもつ人との付き合いは気持ちが和むものです。他の外国人の方も同じように暮らしているようです。それは、異国で暮らす日本人という枠ですでに、分かり合えるものがあるからかもしれません。日々、小さなことで「ここは日本じゃないのね。」と思い知らされます。

例をあげると鍵です。まわし方が反対だったり、少し押さないと開かなかったりなどドアの前で格闘して、最後に通りがかりの人に助けてもらうという経験はよく聞く話です。皆さん、色々な経験をされてフランスで暮らしている事情はわかるのでそこである意味同志の気持ちが芽生えてきます。

「どうやってあなたたち知り合ったの?」これはフランス人からよく受ける質問です。特に地方都市は車移動が多くなるので人に会う機会があまりない状況です。

日本人ネットワークは、今はソーシャルメディアの発達でそこから知り合うパターンも多くなってきていますが、フランスには沢山の日仏協会というアソシエーションが存在しています。各場所によって、活動内容などは異なります。会員が日本人中心のところもあれば、逆に日本に興味をもつフランス人が大半を占めることもあります。また日本大使館の公的機関も情報の提供や問題が起きたとき相談できる心強い存在だといえます。

日本人ネットワークとの付き合い方は、人それぞれなので一概には言えない部分も多いのですが、多かれ少なからずフランスに住んでいる日本人の方は、日本人とのつながりをいい距離をもちながら大切にしているという印象をうけます。

面白いと思うのは、日本人という大きい枠組みでとらえるので知り合う年齢層が広くなります。同世代とだけ付き合うのではなく、年上の方とよく一緒にお茶を飲んだり、留学で来ている学生さんと話す機会が持てたりと様々です。あと、フランス人の影響をうけて物事をはっきりいう場合もあれば、砕けたオープンな方もいます。

様々なルーツをもつ人が集まる移民国家フランスなので「人と違ってあたり前」。そのような考え方を持ち始めると人をコントロールせずにそのまま受け入れることができます。特に日本人は日本の生活習慣と比べてしまうとサービスの悪さやいい加減な態度をとられると「どうして?なんで?」と腹を立てることになりかねません。

上手に海外の日本人社会と付き合うには、あまりそこにかっちりとした日本人さを求めず「お互い様」の意識をもっていくことが大切だと思います。

2017/10/22

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランド独立100周年目の悲劇

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2017年8月18日の夕方、我が家でくつろいでいるところ、夫から「ちょっと」という声が。

夫のそばへいってみると、タブレット片手に神妙な顔で「今、中心地で発砲が確認されたというニュースが入ってきた。しばらくニュースを追っていく」と。

最初は何事が起きたのかわかりませんでしたが、フィンランドでもとうとうテロ事件が発生してしまいました。

当初入ってきたニュースによると、中心地にあるマーケット市場で、外国人の風貌をした男性が、通りがかりの人々をナイフで無差別に殺傷し、2人が死亡、8人が重軽傷を負ったというものでした。

容疑者は、警察への通報からたった3分で駆けつけた警官により、足を射撃されその場で拘束。この他にも4人が拘束されました。

捜査が進み事件の真相が明らかになると、容疑者は昨年フィンランドに入国した難民申請者。フィンランドに来る前は、ドイツで不法滞在であったこと、そしてフィンランドでも滞在許可が下りないことがわかり始めた最中の出来事だったということがわかりました。またテロ組織とは関係のない、「無差別殺傷事件」として扱われ始めています。しかし各方面の取り調べから、容疑者本人が過激な思想に傾倒しているなどの情報も出始めています。

まさかフィンランドの地方都市、人口わずか19万人のトゥルクの街でテロが起きるとは、思っていませんでした。ヘルシンキなどの首都や空港などの警備は、近年、厳しく規制され始めていましたが、地方都市への警戒はあまりなかったことが、今回の事件発生につながったのかもしれないという見方もあります。

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テロから1ヶ月が過ぎました。事件現場には、事件後2週間ほど花束やローソクが手向けられていましたが、今は大きな鉢に入ったリンゴの木が置かれています。事件直後には、難民受け入れ反対デモとそのデモに反対するデモ(難民受け入れ賛成者や人権保護団体など)の衝突があり、やや不穏な雰囲気がありましたが、現在は落ち着き始めています。

しかしフィンランド国内では、滞在許可が下りるのを待ちわびている各地の難民申請者たちのうっぷんが溜まりはじめ、滞在許可を求めて隣国スウェーデンへ渡る人々も出てきているなどの変化がみられます。

この事件を受けてフィンランド政府は、国籍や外国人に関連する国籍法の条項を見直そうという動きが始まりました。国家安全保障上、居住許可の取り消しや、入国禁止などの処置を取ることを検討しています。

人口がもともと少なく、EU諸国の中では高齢化社会の先進国と言われるフィンランド。これからは以前にも増してより移民・難民者の受け入れを実施していかなかくてはならない状況です。難民者が自活できるような支援は充実しており、語学学校をはじめ、職業訓練学校や難民向けの起業サポートなども整備されています。

それでもやはりすべての人が納得し満足いくものではありません。受け入れ側の体制を考えると同時に、なぜ難民が発生するのかという根本的な問題を、我々先進国側が真剣に考える時がきていると思います。

今年はフィンランドの独立100周年目。哀しくもそんな年にこのような悲劇が起こってしまったことは、私のような移民をはじめフィンランドの国民にも深く心に残ることでしょう。

2017/09/27

海外だより:フィンランドより一覧

Mama Africa! Kenya便り: ケニアの水事情は?

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こんにちは。日本では「水道水を飲んでも大丈夫」と言われるほど水処理インフラは整えられ、上下水道の配給、排水システムも整備されています。

人間が生活する上で欠かせない「水」ですが、今回は実際に生活している中で感じるケニアの水事情についてお届けしたいと思います。

一般的に、家庭用の水は飲料用水と生活用水に分けられると思います。上下水道設備ついては、私達外国人が住む様な地域ではある程度整備されていますが、ナイロビ及びケニア全土では全くと言っていいほど整備されていません。

もちろん、水道水をそのまま飲むことは出来ません。処理が不十分なために色、匂い、味が残り、一般家庭の人が飲む場合は一度沸騰をさせなければ腹痛になると聞きます。特に雨が降った後の水は茶色く濁り、お風呂でさえ控えてしまう程です。

ケニアは3~5月と11~12月が雨季と言われていますが、近年では地球温暖化のせいか安定せず、雨季には国土を潤す十分な雨が降りません。また雨が降ったとしても上下水道インフラが未整備の為、適切に貯水されず、告知もなしに水道水が長時間、時には長期間に渡り断水されることもあります。

日常生活で私達が心がけることは、降るはずの雨が降らないなと思うと浴槽などにお水を貯めて万が一に備えます。しかしその水も枯渇した場合は電話で給水車を呼びます。そうすると「Clean Water」と大きく書かれたタンクローリーのようなトラックが水を運んでくれます。但し、Clean Waterと記載されていますが、飲料水としてはお勧めしません。

またトラックではなく人が水を運ぶ水汲みの仕事もナイロビでも未だに存在しています。実際利用した経験はありませんが、どこで汲んできたのか分からないような水が入った大きなバケツを頭にのせて運んで来てくれるそうです。

日本ではお目にかかれない光景ですが、ケニアでは各建物の屋根にWater Tank(貯水槽)がよく設置されています。普段から雨水を溜めるため、または大型の住居地では地下に大きな井戸があるのでその井戸水を補完し供給するために設置されています。

一方飲料水についてですが、ウォーターサーバーや家庭用浄水タンク(Water purifying tank)を常備しています。特にウォーターサーバーは家庭だけではなく、オフィスや病院など公共施設の様々なところに設置されています。最近日本でも良く見かけるようになりましたが、ボトルは簡単にスーパーや量販店などで購入することが出来ます。

メーカーは数種類程度、5Lや18L入りのボトルが陳列されています。値段は各店でばらつきがあり、各店の在庫数や需要率も値段に影響します。特に乾期で水が不足している場合、各店舗を周って探し求めますが、全体的に値上がりしているのが実感できます。

またウォーターサーバーを使っていない場合でも、常備時用で各家庭に数本は確保されています。我が家でもウォーターサーバーを設置していますが、水道水を直接料理に活用することができず、18Lのウォーターサーバーがすぐになくなってしまいます。

家庭用浄水タンクは、水道水をタンクに入れ、何層ものフィルターを通り水がろ過されるものです。フィルターはとてもしっかりしていて、通常飲めない水道水もしっかりろ過されるので安心して飲むことが出来ます。タンクは一人用の2ドアタイプの冷蔵庫のサイズです。浄水タンクはウォーターサーバーよりも経済的と言われているので、こちらの方が一般的かもしれません。

私達外国人の多くは幸いにも比較的容易に一定の品質の水を得ることが出来ています。とは言っても、久しぶりに日本に帰国すると、簡単に蛇口から綺麗な水が出て来ることがとても嬉しく、有難く感じます。

次回はケニアの住宅についてお届けいたします。

2017/09/23 E W Africa, Schema Corporation

バカンス大国フランスで人気なもの

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年間5週間の休暇が法律で義務づけられているフランス。

私もフランス企業に務めていたころ、毎月2,5日の有給休暇が蓄積されるシステムでした。これを1年貯めると30日間の有給休暇になります。

ほとんど人は、夏に3週間、冬と春に1週間ずつ振り分けてきっちり消化しています。

休暇を買い取ってくれる企業は少なく、お金よりも自分の時間の確保を優先するフランス人が多いからかもしれません。

フランス人の人生の楽しみは、バカンス。この休暇のために日々の仕事を頑張るわけです。余暇を楽しむためのレジャービジネスは、日本に比べて多様性に富んでいます。

今回は、フランスのレジャービジネスを幾つか紹介したいと思います。

まず、アウトドア、スポーツ用品の品ぞろえが豊富な大型店舗「デカトロン」はフランス全土でチェーン展開しています。ここに来ると、スキー用品からキャンプ道具や釣り道具まで全てそろいます。国内に約300店舗、海外も含めると1,000店舗以上あります。

日本の市場には、オンラインストアで参入です。夏のシーズンは、キャンプのテントが沢山展示してあります。家族連れやカップルが、登山靴を選んでいたり、自転車を物色したりといつも人でにぎわっています。

お次は、バカンスの宿泊施設。有名なのはクラブメッドです。食事、アクティビティも宿泊パック料金にすべて組み込まれているお任せ型。滞在客は、お財布の存在を気にすることなく存分に休暇を楽しめるシステムです。リゾートバカンスにはもってこいです。

宿泊施設も様々です。ホテル、キャンプ場、キャンピングカー、ヨット、貸し別荘、レンタルアパートなど、それらを仲介するサイトは沢山あります。自分の希望する予算や期間で選んでいきます。フランスでは、夏休みに家族や親戚が集まって時間を過ごすという人もかなりいます。そういう時は、部屋数のある一軒家を借りたり、キャンプ場で集合したりと様々です。

私が利用して気に入っているのは、レンタルアパートです。ホテルよりも広くて、自炊もできるので自分のペースで滞在したい人にはお勧めです。サイトを通して家主とコンタクトを取り、到着の日に鍵をもらいます。地元の情報なども教えてくれるので心強いです。

旅行に出かけない人に人気はホームセンター。沢山の大型店舗がチェーン展開して至る所にあります。まとまった休みを利用して、住まいを自分好みにリフォーム。日本では、プロの業者にすべて頼むことが多いですがこちらでは、プロに頼みつつ、壁塗りなどは自分でやる人が圧倒的です。

家庭菜園やプランターなど園芸に親しむ人も多いフランス。日々の生活を自分好みにクリエイトすることが大好きな国民だから自分たちでやることを楽しんでいる様子。人を家に気軽に招く習慣があることもあり住まいづくりは個性の見せどころといえるでしょう。

生活を自分らしく工夫することが大好きなフランス人達。長期の休みが取得できる制度だからこそ繁盛しているのかもしれませんが人生を楽しむための投資は惜しまないのかもしれません。

2017/09/02

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Mama Africa! Kenya便り: ケニア大統領選挙2017を目前にして

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ケニア大統領選挙の8月8日が迫ってきました。

ケニアの大統領選挙は、全国民のほとんどが関心を寄せる重大なイベントで、なんと負傷者や死者が出るほど血の気の多い、国内紛争といっても過言ではありません。

今年も電子投票システムの責任者の男性が拷問を受け殺害される事件がおきました。

特に独立後最大にして最悪と言われているのが、10年前の大統領選挙です。実際はその直後に選挙結果を不服とする人達による抗議活動が暴動し、そしてその暴動が部族闘争に発展し、最終的に国連(前々事務総長コフィ・アナン氏ら)による数度の仲介により暴動が鎮静化する始末となりました。

特に部族意識が強いケニア人にとって大統領選挙は誰が自分の声を聞いてくれるか(どの政治家に賛同が出来るか)だけではなく、同じ部族出身者をより応援する傾向にあるため、大統領選挙は部族意識をさらに高めさせるものだと言えます。

大統領選挙は、まず各党で候補者選出に向け集会が行われてきました。爆音と共に選挙カー動き出し、4月におこなわれた選抜ではナイロビの各所で討論から暴動となり、警察が出る騒ぎも多数起こりました。

最も警戒しなければならないのは、8月8日の大統領選挙以降です。毎度、投票結果を不服とする人たちが各地で再選を巡って大きな暴動が起こることが予想されています。特に今回はこの10年前の選挙と同じ緊張感があるとも言われ、私達は注意しなくてはなりません。

私たちが取る心構えとは、まずどこでデモや暴動が起こっているのか情報を把握し、指定されたエリアや道路を使わないことです。私たちが最も利用する情報源は大使館から送られるメールや緊急速報のSMSですが、会社や他の大使館でもアラートが流れます。それらはまるで速報の様に各コミュニティーの中で行き渡るため、大いに活用し、使う道や行動範囲を決めていきます。

デモや暴動の発端は、各党の事務所周辺だけではなく、とても些細なところから発生することがほとんどです。よく起こるのがマタツ(乗り合いバス)の停車場で、乗客同士のささいな政治に関する会話から人がどんどん加わっていくのです。

気兼ねない所でも政治について討論が出来るというのは関心ですが、それにより道路は一時通行止め、暴行や強盗被害も多発し警察沙汰になってしまいます。

もちろん、最良なのは外出を避けることです。ただ、選挙による治安悪化は長期化になるため、外出が思う様に出来なくなれば、その期間の生活維持に困ります。更に流通が滞るため、生活品の買いだめも必要になってきます。

特に飲料水、食料、製紙類が不足するので早くから品薄になり、物品が補給されればコミュニティーの間で直ぐに情報が回り、またたくまになくなってしまいます。

大統領選挙の影響はそれだけではありません。企業によっては自宅待機や国へ一時帰国させる、学校は一時閉鎖を決めるところもあります。外出が出来なくなるため、特に子供がいるご家庭では彼らが退屈しないように工夫するのが大変になります。

そうなるとこの緊張もさらに長引くことになり、日本の生活が時に恋しくなることもあります。

次回はケニアの水事情についてお届けいたします。

2017/08/05 E W Africa, Schema Corporation

Terve! フィンランドのキャッスレスの今

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隣の国スウェーデンではキャッシュレス決済が100%近くとなり、新通貨はほぼ製造されていないようです。

フィンランドはまだそこまでいきませんが、日本と比べたら圧倒的なキャッスレス社会です。

今回は一般的な買い物など消費にかかわる決済についてお伝えします。

■ 青空市場と有料公衆トイレのみ現金払い

移住間もなく、ユーロ現金を持ってATMで入金しようとしたところ、入金操作機能がないことに気がつきました。幸い一緒にいた夫に聞いてみると、「あ、この機械は入金できないから、別のATMもしくは銀行に行かなくちゃならないね」と返ってきました。

現在、フィンランドの現金利用率はおよそ4割程度。自分の銀行口座からの現金引き落としはどのATMでもできますが、入金は専用機械または銀行窓口で行います。専用機械は街の中心地や大型ショッピングセンターなどにありますが、台数はかなり制限されています。

現金の主な利用場所は、一部の青空市場(露店)と有料公衆トイレ。昔はその青空市場や露店でも現金のみの取り扱いだったのが、最近ではカード利用がOKのお店も増えてきました。スーパー、カフェやレストラン、商業施設、交通機関は現金とクレジットカードおよびデビットカードの両方利用できます。小型スーパーでの飲み物や切手などの少額決済もカード決済が可能です。病院の医療費をはじめ光熱費や公共機関の利用料の一部などは、利用日以降や月末に請求書が届き、オンラインバンキングから支払いを行うシステムとなっています。

■ キャッシュレス社会のゆくえ

スウェーデンに代表されるように北欧諸国はキャッシュレス化に向けてものすごいスピードで加速しています。それもそのはず。スウェーデン、デンマークはユーロ通貨を導入していないため、「現金清算の義務」を一部で廃止するという法案を施行。これにより半強制的にキャッシュレス決済を促しているようです。フィンランドはユーロ通貨を導入しているためここまでの勢いはありませんが、フィンランド銀行は遅くとも2029年までには国内における現金使用が終了すると推計しています。

2013年以降、25ユーロ以下のカード支払い時には、暗証番号ではなくカードをかざすだけで支払いが可能となり、一段と使い勝手がよくなってきました。将来我が子に「現金って何?」と質問されたら現物を見せて説明しようと、今からコインや紙幣を保管し始めています。

2017/07/25

海外だより:フィンランドより一覧

フランス流「トヨティズム」はこんな感じ

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公共の交通機関が日本ほど発達していないフランスでは、都心部を除き車で移動する場合がほとんどです。

日本の面積の6倍もあるフランス、車は重要な移動手段になっています。地方都市に暮らし始めて最初にマスターしなければいけないのが車の運転でした。

こちらは、左ハンドルでマニュアル車がほとんどです。道路も日本と反対に右側走行ですので慣れるまでは大変です。

しかし、一度車を手に入れてしまうと車で隣のイタリアやスイスなどにも行ける面白さもあるのです。

フランスの大手自動車メーカーではルノー、プジョー、シトロエンなどがあげられます。実際、フランス国産メーカーの車はよく見かけます。つい最近私は、乗っていたルノーの車を手放しトヨタのハイブリット車に変えました。幾つかのメーカーを試乗してトヨタに決定しました。

試乗の時、トヨタの営業の方(フランス人)と色いろと話をしたのですが「トヨティズム」という言葉を何度も口にしていたのが印象に残っています。彼曰く「きめ細やかなサービスや心遣いを徹底しているのです。」という事を言いたかったのかもしれません。確かに、顧客満足サービスという概念が徹底していないフランスの中ではトヨタの対応は丁寧で印象もいいものでした。

納車の日、お店に車を取りにいったのですが私の車は真紅のカバーにかけられて待っていました。目の前で、それを厳かに取り外してくれる様子は一種のセレモニーのようです。待合室には、カラフルなフルーツの盛り合わせやコーヒーメーカーなどがおいてあり、くつろぎながらお待ちくださいといった感じです。

鍵を受け取り、受領書類にサインをしたときに渡された顧客満足シート。ニコニコのスマイルマークが10個描かれていました。10個塗りつぶせば満点のサービスのようです。

その場で記入してほしいといわれ7個塗りつぶしました。対応は良かったのですが、4時に営業マンと約束していたのに30分待たされたのが7個の評価です。私は遅れてはまずいと思い高速を使って時間通りに来たのに!その7個の評価をみた営業マンの顔が急に悲しそうな顔になりました。「8個以上のスマイルが付かないと0と同じ評価になってしまうのです。」と泣きついてきたのです。仕方ないので8個スマイルを塗りつぶして渡しました。フランスなのだから時間通りにと期待した私がばかでした。

無事、車が手に入りやれやれと思っていたのですがトヨタから顧客満足アンケートが定期的にメールや電話で届くように。徹底した顧客満足を目指しているようです。ルノーを乗っていたときに比べると付帯サービスの良さは感じます。

例えば、車のタイヤがパンクしてしまったとき。そういう時は、以前だとすぐに通りすがりの人にお願いして臨時のタイヤの付け替えを手伝ってもらいそのあとは自力で修理工場まで運転してという具合でした。自分の非力さを思い知り、助けてくれた通りすがりの紳士のやさしさに感謝です。

フランスは、困っているとみな気軽に手を貸してくれる人が多くいつもそのさりげなさに感心しています。トヨタになってからカスタマーセンターに電話を一本いれれば30分以内に車を取りにきてくれて工場までもっていってくれるようになりました。ただ、修理の請求額は平均より高めです。

私にとっては、なじみのあるトヨタ車。フランス人にとっては外車にあたるので思い入れも違うのかもしれません。トヨタ車を乗っているフランス人の知り合いたちからの評判は上々でリピーターも多いようです。運転のしやすさ、サービスの良さでトヨタの車は、丁寧なサービスを評価するフランスの購買者層に認知されはじめていると感じています。

今年話題になったアメリカの映画「ララランド」でも主人公の女性の愛車がトヨタでした。映画の中でパーティーの帰りに自分の車を探そうとしたらトヨタの車だらけで自分の車を探すのに手間取るシーンがありました。品質の良さがアメリカでも評価されているのかもしれません。

2017/07/04

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドの核シェルター人口の7割をカバー

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世界で比較的安全な国と言われるフィンランド。その理由の一つに550万人の人口の約7割が隠れられる核シェルターがあります。

フィンランドの核シェルターとは、どんなものなのでしょうか。

■ 72時間分の備蓄完備

フィンランドの防災法では、建物の所有者に核シェルターの設置が求められています。条件として、建物内の床面積が1200平方メートルの住居、または1500平方メートルの工業、生産、貯蔵用の建物であること。

その建物の地下または1階に72時間分の備蓄を完備した部屋を設置すること。この部屋は放射線をはじめ、有毒物質や建物の崩壊などから逃れられるような設備が求められています。

放射計からドライトイレ、水タンク、救急箱などの備蓄品が用意してあり、最低3日間の避難所としての役割を果たす機能が必要です。

都市部の商業施設や公共機関の建物にも設置されているので、有事の際には市民用シェルターとしての活用が推奨されています。例えば首都ヘルシンキには50ヶ所のシェルターがあり、そのうちの1カ所はなんと6000人も収容できるとか。通常は、スポーツ施設や子どもの遊び場として利用可能だそうです。

ちなみに我が家の建物の地下にも、写真のようなオレンジ色の案内板とともにシェルターが設置されています。

■ 自己防衛の歴史

ではなぜフィンランドでは防災法で核シェルターの設置が求められているのでしょうか。歴史を遡ること、旧ソ連軍がフィンランドに侵入した冬戦争当時、国内には2万ほどのシェルターがありました。1958年には現在の防災法の基本となる法律が施行。その後1986年にチェルノブイリ原発事故がウクライナで発生。それにより1991年にフィンランド全国を対象とした現在の防災法が施行されました。

旧ソ連軍による侵入やさらに1100〜1800年初期に遡れば、反対側のスウェーデン王国からの支配も受けていたフィンランド。常に近隣からの脅威にさらされていたためか、自己防衛の役割が大きいと言われています。

加えてフィンランドは原子力発電所を2基保有しています。放射性廃棄物の最終処分場の建設が進められ、有事に備えて避難する施設が必要であります。

フィンランドは日本のような災害国ではありませんが、過去の歴史に学び法規制を行い、少人口を守る義務を果たしていると言えます。「備えあれば憂いなし」。でも核シェルターが本来の目的で使われることが一度もないよう、心から願っています。

2017/06/02

海外だより:フィンランドより一覧

銀行とお金の付合い方フランスではどう違う?

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日々の暮らしの中で生活に欠かせないのがお金の管理です。給与の振り込みから光熱費の支払いなど銀行は生活に切り離せない存在です。

今回は、フランスの銀行について書こうと思います。国が違うとシステムもだいぶ違います。

「日本の銀行は午後3時に窓口が閉まる」という話をしたら私の担当銀行員は驚いていました。

フランスの銀行は、8時半から6時まで窓口が空いていますが、受付の方が1人で取り仕切っています。

お休みは、土曜日の午後、日曜日、月曜日です。銀行に足を踏み入れると何となく緊張した雰囲気があるフランス。

日本の銀行は大勢の行員の方が働いているのが見えますが、こちらは受付の方以外は、各自の個室でお仕事をしています。何か、用事があるときはその個室に通されて話を聞くというスタイルです。

銀行口座を開くとカルトブルーと呼ばれるクレジット兼キャッシュカードと小切手がもらえます。フランス人は、日常の買い物はほぼこの翌日決済のカルトブルーで行っています。通帳はなく、毎月の明細が自宅に郵送で送られてくるシステムです。

口座は必要書類が整っていれば簡単に作れますが、注意したいのは口座管理料というお金がかかることです。作るカードの種類や保険などの内容にもよりますが、毎月1,000円ほどのお金が管理料として差し引かれています。

日本は、無料で作れるので幾つかの銀行口座を持つ場合が多いですが有料となると複数もつのも躊躇してしまうものです。しかし、うれしいことも。定期預金の利息がおおよそ3パーセントと日本に比べるとかなりお得感があります。そしてATMの引き出しは24時間自分の銀行なら無料です。他銀行への送金も手数料はかかりません。

日本の銀行は、定期預金を開設すると粗品などの贈呈、ポイントが貯まるなどの付加価値を付けていますがフランスはほとんどそういう話を聞いたことがありません。何かお金に関する相談がある場合は前もって、担当者とアポをとる必要があります。

こう書いてみると日本の銀行の方が、気軽に利用できるような身近な印象をもちます。私は小さいころ親に連れられて銀行にいくともらえるシールが楽しみだった記憶があります。親しみやすい印象はないフランスの銀行ですが、ローンの返済利率の値下げの交渉などに応じてくれることもあり融通が利く一面もあるのです。

「お子さんの誕生をきっかけにお子さん名義の口座をひらきませんか?今なら10€を差し上げます。」
「10歳になられたお子さん、定期預金を開設すると今だけ特別利息の4パーセント!」

このようなDMは定期的に届きます。子供の口座については無料で作れます。その代わり、キャッシュカードと小切手はもらえずお金を引き出すには、親の所有している口座に移し替えてとなり将来にむけての貯蓄口座として存在しています。なかなか一度口座を開いてしまうと銀行を変えるきっかけがないフランス。小さい子供こそ見込み客なのでしょう。

私も今ではすっかりカード利用者です。そして、よく最近耳にするフランス人のボヤキです。
「日本を旅行した時に海外のカードで現金を下ろせるATMが少なくて困ったよ。どうして現金で決済したがるの?」
フランスでは、現金を持ち歩いている人は少数派です。現金で一番流通しているのは5€札、10€札などの少額のお札です。100€のお札なんぞで払おうものならスーパーでもすぐ偽札判定マシーンで本物のお札かの確認が始まります。きれいなピカピカの小銭を受け取ったら偽コインの可能性がありです。

日本では、新札が喜ばれるのにこちらでは新品だと怪しまれてしまいます。なんだか文化の違いは面白いものです。旅行で、フランスにいらっしゃる際は、小さい額のお札を持ってくることをお勧めします。

そして、おつりでもらうコインの裏側のデザインにも気を付けてみてください。ユーロ通貨を取り入れている各国でデザインがちがうので見比べてみるもの面白いです。

2017/05/23

海外だより:フランスより一覧

Mama Africa! Kenya便り: ケニアに広がるSNSコミュニティー

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こんにちは。

今回はケニアで広がるSNSコミュニティーについてお届けします。

世界には多種多様なコミュニティーが存在しますが、ケニアに来て驚いたのがSNSを使ったコミュニティーがとても発達していることです。

ここでのSNSコミュニティーとは、携帯アプリなどを活用したクラウドコミュニティで大きく2つのカテゴリーに分類できます。

一つは、同じ趣向を持つ個人の集合体と、個人またはお店や企業が提供するコミュニティーに個人が集合するものです。このSNSコミュニティーが発達した理由は、携帯電話の高い普及率と情報を提供するインフラ不足が考えられます。発展途上国でありながらも携帯電話の普及率は2015年に84%で、携帯アプリ等を活用した利便性の高い機能がコミュニティー形成を促進したと考えられます。

それだけではなく、他媒体からの情報量と供給量がとても少ないことも普及した背景だと考えられます。例えばナイロビには多くのお店が分厚い鉄門越しにあるものの、セキュリティや経費削減の為、表に看板や街頭広告がほとんど出ていないのが普通です。その為、私達は口コミを頼りにするわけですが、それには限りがあり代わりにSNSコミュニケーションを活用するのです。

ケニアで普及しているSNSコミュニティーについてですが、最初のコミュニティーで使われているのがWhatsAppという携帯アプリケーションです。これは日本で普及しているLINEによく似ており、グループチャット機能を活用したコミュニティーが存在します。

何がどこにあるのか、長く住んでいる私でもなかなか見つけることが難しいナイロビで、この情報共有は非常に有難いものです。また実際にメンバーと集れることも楽しみな要素です。ゲートコミュニティー(隔たれたコミュニティー)と言われる程、何かに所属していない限り外部との繋がりが難しいケニアでは、この新しい「出会い」はとても貴重です。

そして次のコミュニティーによく使われているのが、Facebookです。お店側は無料で沢山の情報を載せることができるため
私達外国人がいく様なお店ではFacebookが広告またホームページとしてよく使われています。またFacebookはお店だけではなく、個人が情報提供するプラットフォームでもあります。

例えば、「Nairobi Expat Community」という名を持つ様々なコミュニティーが個人により展開されており、その中には、
・引越しセール
・物品取引
・お手伝いさんやナニーさんの紹介
などケニアに住む外国人にとって必要とされる情報がやり取りされています 。

中でも面白いなと感じるのが、家具の取引です。ケニアで家具を買う場合の選択肢は、道端などで売られている手作りのものを購入するか、または海外メーカーの輸入品を購入するかです。

手作りはそれぞれに味があり、デザインは私達外国人にはとても興味深いものですが、品質もまちまちで良品を見つけるのに一苦労します。一方、輸入品は高価な割に品質が必ずしも価格に比例するものでもありません。その為、欧米人は個人用に母国から持ってきた家具を引越しなどのタイミングで元の同金額かそれ以上の値段で販売し、実際に売れていくという奇妙な事象が発生します。それらがたとえ中古であっても人気なのは、欧米文化が根強い影響力をもつケニアならではだと思います。

ケニアのSNSコミュニティーは人との繋がりを作る場だけではなく、生活の知恵を共有しお互いが豊かに生活するための場でもあると感じます。

次回はケニア選挙に向けた私達の心得についてお届けいたします。

2017/05/20 E W Africa, Schema Corporation

Terve! ビジネス会議必須の2アイテムといえば

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仕事柄、会議やセミナーへよく足を運びます。フィンランドのビジネス会議事情として、フィンランドらしい点を二つほど発見したので、今回はそれをご紹介します。

■IT先進国の強み

フィンランドはノキアに代表されるIT先進国。比較的どこでも無料Wifiの環境が整っていることから、常時ノートパソコンなどのスマホ以外のデバイスを持ち歩く人を多く見かけます。

主要観光地をはじめ、図書館や博物館、また商業施設内でも無制限の無料Wifiに接続することができます。電車や長距離バス、さらにフェリーの駅やターミナル、そして車中でもフリー接続できます。

私がよく利用する高速バスには電源まで付いているので、ノートパソコン一式持参して、移動中の車内で仕事することがあります(機密情報などには配慮しています)。

こうした環境が整備されていることから、ビジネス会議でもフリー接続のところが多いです。

国際会議の開催数の多さが理由の一つだと思いますが、国内外の大小さまざまな会場には、必ずと言っていいほど無料Wifi環境が提供されています。受付の際にネットワーク名とパスワードが書かれたIDが渡されたり、会場内に両方が記載された案内板があるので、会場に到着したら必ずチェックすることが習慣となりました。

国際会議や街中の貸会議室はもちろんのこと、大学や企業のちょっとしたセミナーでもフリー接続が提供されます。地方の小さな会場でのWifi環境となると少し疑問符がつきますが、都心部の会場では問題なくスムーズに行えます。

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■極夜対策で世界一の消費量

会議場のWifiと同じくほぼ提供されるのが、コーヒー。
フィンランド人は、実は世界の中でもコーヒの消費量が1、2位を争うほどのコーヒー党。もちろん紅茶党の人もいますが、国民一人あたりの年間消費量は12.2kg。日本は3.54kgで約4倍の消費量。1日あたり平均3〜5杯、これは4.5dlに相当し、この中に含まれるカフェインはおよそ400mg(1dlに平均90mgのカフェイン)。

1日で400mgのカフェインを摂取している理由は、気候。特に秋から冬にかけて太陽がほぼ昇らないこの時期に、カフェインなど刺激物を摂取して仕事や勉強に励む人が多いといいます。実際私の家族や仕事仲間もちょっとした息抜きには必ず「コーヒー飲む?」が合言葉です。

ビジネス界では「Kahvi Tauko」(Kahvi =コーヒー、Tauko=休憩)と呼ばれ、会議のアジェンダにはこの言葉があり、終日会議だと午前一回、午後一回の必ず1日二回設けられています。こちらも大学や企業のちょっとしたセミナーでもサイドテーブルにお茶菓子とともにコーヒーポットが用意されているので、時間がなく昼食を食べ損ねたりしてもこれで空腹が多少満たされ会議に集中できます。

フィンランドのビジネスアワーは、午前8時から午後4時まで。余程のことや管理職でない限り、残業とはほぼ無縁。そのためこの8時間に集中して仕事を片付けることが必須なため、みんなコーヒー片手にパソコンに向かっています。

ちなみにお茶菓子の他に、午前8時や9時開始の朝一会議では、簡単な朝食が用意されています。ホテル内ではなく、ビジネス会議場や貸会議室で、です。これには驚き、会議担当者へ会員限定や有料ではないかと何度も尋ねましたが、どこも無料で提供。本当にありがたいです。

Wifiとコーヒは今や世界中では当たり前の風景。フィンランドの一般的な会議でもこの2つが提供されているビジネス習慣に慣れ始め、どこの会議場のコーヒーや朝食が好評かしら、と会議に参加する楽しみが増えている今日この頃です。

2017/04/04

海外だより:フィンランドより一覧

フランスの中古品売買サイトならleboncoin

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皆さんは、ネットオークションやフリーマーケットは利用されたことがありますか?

フリーマーケットはちょっとしたお祭りのような雰囲気で眺めるだけでも楽しいものです。

フランスでは、春先や秋の季節に至る所でフリーマーケットが開催されます。バカンスの費用を捻出するために使用期間が限られているベビー用品や子供のおもちゃ、洋服などはこういった中古品を上手に利用しています。

「自分の不要なものを売りたい。」「新品でなくてもいいのでなるべく安く買いたい。」という場合、思い立ったらすぐでき便利なのがネットオークションです。

今回は、フランス人に一番愛されている中古品売買サイトを紹介したいと思います。その名は、「le bon coin(ル ボン コワン)」。

個人もプロの人も無料で売り出しのお知らせができます。サイトのトップページにはフランスの地図が載っているシンプルな作りです。全国規模で売買のお知らせをみるか地域限定かは自分で選択ができます。扱っている商品は、子供の洋服一枚から車、家、ベビーシッターなどのサービスまで売り出し中です。

大手のヤフーなどの売買の場合、売る人の過去の評価やプロフィールなどが公表されています。買い手は参考にして信頼性を見極めていきます。しかし、このサイトはそういうことが一切ありません。サイトに会員登録すれば売主としてデビューできますし、買う側なら登録も不要です。現在は、金銭のやり取りが発生するサイトには、色んな記入項目をクリアしないといけない時代に逆をいっています。

このシンプルさが逆にフランス人に支持されているのかもしれません。私も、過去にこのサイトを通してヤマハのピアノ、スキーウエア、畳などを購入。

まず購入者の場合は、お知らせにのっている連絡先にメールか電話でコンタクトを取ります。携帯電話の番号を載せている売主も多く、直接連絡も可能です。商品の状態を確認したり、値段の交渉も可能です。うまく取引が成立した場合は郵送可能なものは、郵送費を含めた金額をあらかじめ小切手で売主に送り、そのあと荷物を送ってもらいます。

先ほどもいいましたように売主の過去の評価など一切ありませんから情報はほとんどないです。やはり不安はつきまといます。特にピアノなどの高額で大物なものは現物を見てからでないと購入できないので売主のところへ出向いていかないといけません。

びっくりするくらい豪邸にたどりついたり、いざ試しに鍵盤を押したら音がでないなどという事も。大物は、どうしても売主の家に行くことが多く不安と期待をもちつつ毎回アポを取ります。全くシステム化されていないこの泥臭いやり取りを通過して購入にいたるわけです。しかし、この面倒なやり取りを通して相手が信用できるかわかるので最終的には納得のいく買い物ができます。

売る側としてブランドのバッグを出品した時は「ペイパルで払うからいますぐ送ってくれ」と言われたことがありました。しかしやり取りの途中で不信感が募り調べてみたら詐欺だったこともありました。このボンコワンというサイトでは、カード払い、ペイパルなど便利と思われているツールは使えない場合がほとんどで、現金払い、振り込み、小切手の支払いがほとんどです。

中古品を買う場合、信頼性を高めることに常に努力している大手のオークションサイトよりフランス人はやっぱりこちらのサイトを利用しているのはどうしてでしょうか?

手続きのシンプルさ、頻繁に出品の更新されていること、そして無料というのが大きなポイントだと思います。他人の評価などのツールは信用せずに自分の責任で判断して購入するという考え方なのかもしれません。最近は、「笑える出品物とお知らせ集」などの本も出版されており、完全に市民権を得ているこのサイトです。

もし、海外のオークションサイトで何か購入を検討される場合、フランスならとりあえず一度このボンコワンで値段の相場をみてから検討することをお勧めします。

leboncoinのサイトはこちらです。
https://www.leboncoin.fr/

2017/03/25

海外だより:フランスより一覧

Terve! フィンランドが生んだ世界初の破氷船とは

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冬季の海は氷が張り船の航行をスムーズにするために砕氷船は欠かせないもの。

フィンランド周辺のバルト海でも砕氷船は大活躍中ですが、今年フィンランドの独立100周年を記念して、世界初のLNG(液化天然ガス)を動力源とする砕氷船が初航海しました。

■環境にやさしいディーゼル電気砕氷船

フィンランドの砕氷船の運行サービス等を手がけるArctia社が造船した「ポラリス号」。世界で初めて液化天然ガスを動力とし、燃料に低硫黄ディーゼルもあわせて使用することで、運行中の二酸化炭素量および汚染物質量を削減できる環境に配慮した砕氷船。

氷の摩擦抵抗を最小限に抑え、砕氷能力を最大限に引き出す特別な船体形状と推進装置も備わっています。「フィンランドの貿易は、この砕氷船なくしては成り立ちません。記念すべき年にわれわれが今まで培ってきた設計や建造などのノウハウを集結した砕氷船を航行することができ、とても光栄です」と担当者は語っています。

■長きにわたる高評価の砕氷技術

フィンランドの砕氷技術は、世界中で高く評価されています。北極海と北海航路では、環境規制が厳しくなる中で海上交通が活発化し、高度な砕氷船や氷海を航行するコンテナ船の需要が高まってきています。そのような背景の下、氷技術を専門とするフィンランドのエンジニアリング会社Aker Arctic Technology(AARC)は、高度な北極船や海上ソリューション開発において世界的なリーダーとして活躍してきました。

「あらゆるインフラから遠く離れたマイナス30度以下の気候環境下で活動するためには、高度な技術が求められています」と担当者は話しています。こうしたパートナーと専門知識を共有することで、50年以上にもわたる砕氷船の技術と経験を積んできました。

造船所は世界で最も多く砕氷船を造船しているといわれるヘルシンキ造船所。さまざまな分野のベテランや専門家たちがこのポラリス号に関わりました。

ちなみにヨーロッパ初の砕氷船は、フィンランド湾内のクロンシュタット港で造船された砕氷型の船首を備えた蒸気機関を動力とする曳航船だったとか。

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■冬のバルト海で活躍

ポラリス号の主な任務はバルト海での砕氷。冬期にバルト海に入出港する船舶を支援します。また一年を通じて外洋での油流出対応作業や緊急時の曳航および救助作業も支援します。

凍結はまず10月末から11月初旬にかけて、フィンランドとスウェーデンの間のボスニア湾に始まり、1月末から2月にかけてはフィンランド南部のフィンランド湾に達します。まさに今がポラリス号の活躍時です。

そのバルト海は、氷河期の反動で地盤が隆起している(アイソスタシー現象)との科学的な証拠があり、現在でも数ミリメートル単位で隆起が続いているとのこと。特に今のところ航行には影響はないようですが、興味深いですね。

実際にポラリス号を目にすることはありませんが、海上交通における縁の下の力持ちとして今後大活躍することでしょう。

2017/3/6

海外だより:フィンランドより一覧

Mama Africa! Kenya便り: 快適なケニアでの子育て

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こんにちは。

今回はケニアが子育てについてご紹介します。安全な国とは決して言えないケニアで、「子育てが出来るか不安」との質問を頂戴することがありますが、個人的には日本よりも快適に出来るかもしれないと感じています。

なぜそう思えるのか、自分自身の経験も踏まえてご紹介します。

ケニアが子育てのしやすい環境である最大の理由は、お手伝いさんがいることです。

外国人である私達やケニア人の中流階級以上のほとんどの家庭ではお手伝いさんがいます。雇い主に子供ができれば、そのお手伝いさんはナニーとしても働いてもらえます。なかには別にナニーを雇用している家庭や、平日と週末でナニーを複数人雇いナニーが常駐している家庭もあります。

ナニー達のほとんどはその職務の教育を受けているわけではありません。しかし彼女達自身小さい頃から兄妹の子守をし、甥や姪の世話を手伝い、そして母親となり、孫を複数人持つおばあちゃんでもあります。自分の子供、兄弟の子供、子供の面倒を親戚も含め家族がお互い協力して面倒をみるのが当たり前な彼女達は、若いお手伝いさんでも非常に子育てが上手なのです。

近年、私達のような外国人の駐在者が増える中、お手伝いさんの需要とは別にナニーの専門的知識を持った人材の需要が高まっていると聞きます。

私の住んでいる地域も含め各所でナニー養成スクールができ始めました。スクールでは知育遊びや応急手当てなど、彼女達の普段の子育てにはない専門知識を学べるのが特徴的です。単に仕事の延長線上にあるナニーではなく、ナニーとしての役割や知識やマナーなどが習えるようです。特に雇い主側からの要望により仕事の合間や短期集中で通うお手伝いさんが多いようです。それはケニアでは当たり前の子育て方法や子供の扱い方が、文化的な違いから外国人である私達には受け入れられないものもあるためです。

「ナニーに何を求めるか」は各家庭によって違いますが、おおむね
・遊び相手
・食事
・子守
・寝かし付け
・オムツ替え
・お風呂/シャワー
などが主な仕事です。

我が子に関わる時間が長い程、雇い主である親は、ナニーの専門知識を求めるそうです。このようにケニアにいればナニーが当たり前になり、出掛け先や旅行先にまで彼女達を連れている外国人の光景を良く見かけます。

子育てに恵まれた環境だと思うのは外出先でも感じます。例えば子連れで並んでいれば優先的に通してもらうこともあり、子連れでレストランなどお店へ入ると、スタッフは気さくに子供に話しかけ遊び相手になってくれることもあります。

またレストラン内に子供が遊べる遊具を設備しているところや、お庭がある施設が多いのは助かります。老若男女問わず気兼ねなく子供に接してくれる環境があるのも子供に優しく、とても寛大であるケニア人の気質のおかげだと私は思います。

また赤ちゃんの泣き声や子供の騒ぎ声に対しても寛大で、赤ちゃんは泣くのが仕事で子供は遊ぶのが仕事だとよく言われます。外国人も多いケニアですが年中通して温暖な気候のせいか彼らも寛大なような気がします。

一方、ケニアで子育てをする中で苦労するのは、子供のアイテムが充実していないことです。日本では当たり前の便利グッツなど気の利いたものは見つからず、必要最低限のものしか手に入りません。加えてほとんどが輸入のため割高です。消費の多い紙オムツも、紙が貴重なケニアでは割高なアイテムの一つです。

また驚いたのは、子供を抱く抱っこ紐がケニアでなかなか見つからないことです。ケニアでは一枚の布で子供を抱く習慣がもともとあり馴染まないのかもしれません。

物質的欲求は満たされにくいとは言えますが、ケニアの子育ては想像以上に快適でお手伝いさんの力とケニアの人達の人柄によって助けられているといえます。

次回はコミュニティーについてお届けします。

2017/03/02 E W Africa, Schema Corporation

贈り物を自由に楽しむフランス

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プレゼントを贈るというのは、相手との距離を縮めるのに大いに役だつ方法だと思います。
贈り物をする機会というのは、フランスではどんな時でしょうか?

フランス人の贈り物合戦がヒートアップするのはクリスマス。日本人の私から見ると少し滑稽に見えるくらい彼らはプレゼントに熱心です。

フランス人にとって一年で一番大切な日であるクリスマスは、家族や親戚が集まってごちそうを食べてプレゼントを交換しあう大切な日。力が入ってしまうのも仕方ないのかもしれません。

毎年贈るプレゼントは、珍しい物をとみな物色している状態です。この時期は、クリスマス市が各地で行われています。こういう時は、日本の小物などは大変便利で素敵にラッピングをしてあげると貴重なプレゼントに早変わりです。人気があるのは置物などのオブジェです。以前、可愛い娘姿のこけしを贈ったらとても喜ばれました。

日本にはきっちりとしたお歳暮やお中元という習慣が根付いていますが、フランスで友人やお世話になった人に贈り物を毎年届けるということはありません。ただ年度末になると会社が従業員をねぎらう意味をこめて贈り物をすることはよくあります。会社が主催のコンサートなどに従業員家族を招待する、商品券、チョコレートの詰め合わせを送るなどです。取引先にシャンパンを送る会社もあります。

日々生活していくうえで、クリスマスのプレゼントに限らず、お誕生日や結婚式のお祝いなど贈り物をする機会は多くあります。「金額はどれくらい?送って失礼なものは?」など暮らし始めた頃は知り合いに質問してみたものです。

そしてこちらの暮らしも長くなり得た答えは「特に決まりはないらしい、気持ちが大切。」という事でした。また結婚式や子供の誕生などには当人からほしい物のリストが提示されその中で自分の出せる金額のものを各自だし、共同で贈り物を送るという合理的なシステムが存在することもわかりました。そしてプレゼントを頂いてもお返しはする義務もないことも。

参考にフランス人が喜ぶプレゼントの一例をあげておきます。個別のプレゼントで女性に人気のあるものは香水やオードトワレ。男性は、お酒が好きな方なら少しランクが上のアルコールが喜ばれます。またチョコレートの詰め合わせは絶対にはずれのないプレゼントといえるでしょう。ワインが飲めない、チーズが食べられないという人は割といますがフランス人でチョコレートが嫌いという人に今のところ出会ったことがありません。

「お返しをしなければいけない。いつまでに送らなければいけない。」などの決まりごとが緩やかなフランス。義務感がなくなると相手がどんなものを好きかいろいろと考えて贈り物を選ぶ作業は日常の楽しみになります。

あえてポイントを一つ挙げるとしたらプレゼントを開ける瞬間のわくわくとした気持ちを演出するためにラッピングはきちんとすることでしょうか。お店でのラッピングの有料化が進んでいるフランス。最近は、紙袋に品物を入れるだけのお店も多くなりました。色のきれいなラッピングペーパーにカールリボンを付けるだけでも印象は十分変わります。

日本の包装技術は素晴らしく、フランス人女性は日本の菓子箱の美しさ、包装紙のデザインセンスに感激する人も多くいます。気持ちを届けたり、受け取ったりする贈り物、もっと日常生活やビジネスで楽しんで取り入れたいものです。

2017/02/03

海外だより:フランスより一覧

Terve! 北欧の物流網の変革に一役買うフィンランド

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2017年が始まりました。今年はフィンランドがロシア帝国から独立を宣言して100年目を迎えます。

歴史にはじまり、シベリウス音楽やアールト建築などの文化、サウナに雪の城、そしてオーロラや自然環境ツアーなどフィンランドらしい記念イベントがずらり。国民が一緒になって建国に携わってきたことから、イベントのテーマは「みんなで一緒に祝おう!”Yhdessä”」。

国内外の人々みんなで祝うために他国でもイベントが開催されています。もちろん日本でも開催予定ですので、ご興味のある方は大使館を中心にぜひご参加ください。

■未来の通勤カプセル

さて「欧州の玄関口」といわれるフィンランド・ヘルシンキ。ここに1000km/hを超えるスピードで走行するカプセルおよび磁気駆動型の低気圧チューブ「ハイパー・ループ」の建設が予定されています。アメリカのHyperloop One 社がドバイなどに建設中のこのハイパー・ループを、今度はフィンランドに建設し、隣国スウェーデンの首都ストックホルムと30分でつなぐことを計画しています。

2028年ごろ開業を目標に投資額およそ190億ユーロ。ヘルシンキからストックホルムまでのおよそ500km区間を1200km/hで運行予定です。

私が住んでいる南西部のトゥルク市もこのループが開通する予定で、そうなると今までバスで2時間、電車でおよそ1時間かけてヘルシンキへ行っていたのが、わずか10分ほどに。ストックホルムまでは飛行機でおよそ1時間、船でおよそ9時間のところ、わずか20分ほどに。カプセルに乗車し隣国へ通勤通学することも夢じゃなくなるようです。

■バルト海沿岸の物流網が変わるか?

このハイパー・ループとは別にフィンランド政府は、ヘルシンキとエストニアの首都タリンとの海底トンネル開通の検討を進めています。現在の調査では、タリン側の土壌が柔らかく、地下水に問題があるため難航中です。さらにトンネル建設と鉄道開業コストの40%以上がEUの資金でカバーする必要があり、この予算額についても再検討される予定です。

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こちらの投資額はおよそ130億ユーロ。現在4月から10月まで期間限定での船の運行でおよそ2時間かかるところが、開通すればこちらも30分。片道36ユーロで年間1100万人以上の輸送を見込んでいます。

さらにタリンと陸続きになるとその先のポーランドや中欧諸国にまで物流網が伸び、輸送距離がぐんと長くなります。結果、トラックなどの基準や規定は欧州仕様となるため、このトンネル建設にはEUからの資金をなんとしてでも確保しなければならないと、各関係者は口を揃えて言います。

何よりもフィンランドからロシア域内を通らず直接欧州大陸とつながることで、物流全体に変化が起きる可能性をすでに示唆している業界があります。デンマーク、オランダ、ドイツ、スウェーデンの海運会社です。彼らはすでにフィンランド企業などと連携して物流事業の拡大を狙っています。

ハイパー・ループはあと12年。海底トンネルは難航中なので目標2030年には間に合わないようですが、どちらにせよ、あと20年もすれば北欧と欧州大陸間の物流網が変わってくるでしょう。フィンランドは次の100年をめざして小国家としての意義を見出せるか。非常に楽しみです。

2017/01/16

海外だより:フィンランドより一覧

Mama Africa! Kenya便り: ケニアの休暇の過ごし方

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皆さま こんにちは。
冬休み休暇はいかがでしたでしょうか。

今回はケニアで暮らす私たち外国人の休暇の過ごし方について、お届けしたいと思います。

特に冬休みについて、ケニアでは冬休みをクリスマスと正月を含めて言います。日本のお盆が終わる9月頃から、日本人も含め多くの外国人は冬休みの準備を始め、話に花を咲かせるようになります。

早い人は去年の休暇から次の予定を組み始める人もいます。

西洋人の場合、冬休みは私たち日本人よりも長く、旅行先でゆっくり過ごす為、何ヶ月も前から予約をすることで旅費も抑えられるそうです。

またケニアは日本と違って祝日がとても少ないので休暇は貴重なもの。そしてケニア人にとっては大きなイベントです。キリスト教信者が多い彼らはこの時期に故郷に帰り、家族や親戚同士で集まるので、この休暇は特別なものなのです。

この休暇ではクリスマスイブが大切な日になり、お祝いをするために多くの人達が買い物をします。お店ではクリスマスセールやクリスマスパッケージで大量消費を狙います。この時期になると沢山のクリスマス商品が目に付きます。スーパーやモールでは特にクリスマスデコレーションがたくさん売られ、路面店や道路に立っている売り子もクリスマスツリーや飾り物を持っているほど。気候のせいか、モミの木などにつける雪の飾りがないのは面白い日本との違いです。そして日本とは違い、ケニアではクリスマスイブの夜からクリスマスにかけて、お店や施設がお休みになります。

しかし、この時期、特にスーパーなど、開店はしていてもサプライヤーが休むなど体制が整っていないため供給が間に合わないこともしばしば。クリスマス後には品数が少なくなり、特にお水や物によっては食料品がおおよそ正月明けまでなくなってしまうこともあります。またクリスマス前の大量販売も影響しているため、お店が全体的に寂しくなっています。その為、12月になるとストックも含めて消費が多くなります。

この期間中、多くの日本人はと言えば、日本に帰国したり近いヨーロッパへ旅行にいきます。またこの土地にいるからこそ日本からはあまり訪れる機会がない国や、ケニアや近隣国でアフリカを満喫したりと、それぞれの様です。

ケニア内で休暇を過ごす場合、マサイマラ等のサファリを楽しみながら、正月には広大な大地から来光を拝むのも一つです。ケニアはサファリだけではなく、ケニア山やナイバシャ湖周辺でゆっくりとサイクリングやヒポツアーなどを楽しむことができます。

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またあまり知られていませんが、ケニアには白い砂浜の綺麗なビーチが広がるディアニがあり、そこでゆっくりと時間を過ごすこともケニアで休暇を楽しむ一つです。

アフリアの中で休暇を取る場合、近隣国は治安や衛生面での懸念が多く、沢山国があるアフリカでも実際に旅行が出来る国には限りがあります。その中でも
・野生のゴリラに会えるルワンダ・ウガンダ
・世界三大瀑布の一つであるビクトリアの滝があるザンビア
・サレンゲティ国立公園やリゾート地であるザンジバルなどがあるタンザニア
などが人気の旅行先です。

さらに少し離れれば、南アフリカやガラパゴス、セイシェルが比較的簡単に行けるため、ここに住む日本人にも人気の旅行先です。

日本のようなお正月の雰囲気はケニアにはありませんが、貴重な冬休みを思い思いに過ごしています。

次回はケニアでの子育てについてお届けします。

2017/01/14 E W Africa, Schema Corporation

Terve! フィンランドの郵便配達不景気でサービス低下

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移住後のある日のこと。

夫「船便が届いたみたいだから、郵便局に取りに行こう」
私「え?自宅まで届けてくれないの?」
夫「そうだよ。フィンランドではEMS便以外の荷物は自分で取りに行くんだよ」
私「えーーっ?!40箱以上の荷物を毎回取りに行くのーー?!」

という会話が我が家で交わされたのを皮切りに、フィンランドの郵便にまつわる話は後を絶たないほど、郵便サービスは日本と異なります。

夫の返答の通りフィンランドに入ってくる郵便物は、EMSと封書サイズ以外は、「アライバル・ノーティス」が自宅ポストに投函され、それを持って郵便局へ荷物を引き取りに行きます。移住の際には40箱の段ボールを船便で送り、約3ヶ月かけてフィンランドに到着。順次アライバルノーティスが送られてくるたびに、トレーラーを牽引して郵便局まで引き取りに行きました。

■不景気で郵便サービスが低下

”Posti”と呼ばれるフィンランドの郵便局は、郵便局と大手スーパーやコンビニサイズの店舗のサービスカウンターが郵便サービスを担っています。フィンランドには日本のような宅配サービス業者がありませんので、すべてこのPostiのサービスを利用します。最近の不景気でPostiの従業員を大幅に解雇したこともあり、ここ数年の郵便サービスは低下しています。

昨年の11月ごろから年末にかけては、従業員が削減された原因で配達に手が回らず、主にSAL便の荷物が2-3ヶ月間空港に放置されるという事態が発生しました。今年に入ってからは、郵便局が次々と閉鎖され大手スーパーのサービスカウンターへ集約。また郵便料金も値上げされ、例えば日本までの料金はEMS便の2kg以下でなんと90ユーロ!およそ1万1千円!従業員もさることながら、われわれ利用者も不満が募っています。

■便利な自動預かり郵便ロッカー

とは言っても人口およそ550万人。もともと人的資源が少ないため、効率よく郵便物を受配達するために自動預かりロッカーサービスがあります。その名の通りロッカーに荷物を入れておくと、そこから荷物を引き取りに来て配達し、逆に荷物が到着するとロッカーに荷物を入れておいてくれるので引き取りに行きます。

荷物はすべてネットやスマホのアプリで追跡できるので、非常に便利です。今のところフィンランド国内とエストニア間のみのサービスですが、いつの日か利用してみたいと思います。

■手紙や荷物を出す楽しみ

インターネットが普及した現在でも、日本から遠く離れた国に住んでいると、手紙や荷物を送ったり届いたりするのは嬉しいものです。カードをはじめ荷物のパッケージのバリエーションが豊富なのは郵便サービスの目玉です。日本ほどではありませんが、季節や年によってデザインが変わるたびにそれを目当てに郵便局へ足を運んでいました。残念ながら最近では前述の通りサービスの低下でデザインの豊富さがなくなり、スーパーにサービスを集約されたところはそのような商品が一切なくなりました。

この季節のクリスマスは西欧文化にとっては一大イベント。クリスマスカードや切手の種類は例年通りに出揃いました。郵便料金が値上げされたり、デザインの豊富さがなくなっても、年中行事に参加するのはやはり楽しいものです。

そしてフィンランドといえば、サンタクロースですね。サンタさんへの手紙やサンタさんからのプレゼントは世界中の子どもたちへ無事に届けられているでしょうか。

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さて今年も残すところあとわずか。毎月お読みいただきありがとうございました。来年2017年はフィンランドの独立100周年の年です。不景気から脱出するためにビジネスにおいては重要な年になりそうです。

それでは皆さま、よいお年を!
Hyvää joulua ja Onnellista uutta vuotta!

2016/12/25

海外だより:フィンランドより一覧

フランス人がもつ日本の会社のイメージとは?

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フランスと日本をつなぐビジネスというと何を想像するでしょうか?

日常生活でお目にかかるのは、ワイン。実際にボジョレーヌーボーを大量に輸入してくれている日本人はフランスのワイナリーのエージェントにとっては大切な顧客です。

フランスが日本から輸入しているものは、自動車や電化製品などがあげられます。実際は他分野にわたり取引が行われているフランスと日本。

フランス人の目には日本とのビジネスはどう映っているのでしょうか?

ある一冊の本がフランスで大ヒット

ベルギー人作家アメリーノートンが書いた「畏れ慄いて」という小説が16年前に、フランスで大ヒットしました。これは、彼女の実体験をベースにして書かれた小説で日本企業の様子が描かれています。多くのフランス人には、この小説によって日本の会社というものを知ることになりました。

内容は、通訳として入社した作者本人は仕事へのやる気がみなぎっています。しかし、実際に与えられる仕事はお茶くみやコピーとりなどの単調な仕事ばかり。彼女が何をやってもだめだしする上司たち。理解者の立場を取っていた美しき女性同僚 フブキさんにも裏の顔が。。。この簡単なあらすじを読んで頂いただけでもすでにあまり優しい感じの話でないことは感じていただけると思います。

日本人として、この本を読んでみると「ここまでひどくないよ!」と怒りながらもどこかで見たことある風景であるため、痛いところを突かれた印象をもちます。確かに誇張されている部分はあるものの、日本の会社のゆがみを主人公の目を通して描かれています。この本の話題をする人が未だにフランスにいる程、彼らにとって印象が強いものだったといえるでしょう。

実際に日本と取引をしているフランス人ビジネスマンの声

先ほどの本は、かなりステレオタイプの日本の会社の印象を与えてしまっていますが、実際に日本と取引しているフランス人のビジネスマンはどう感じているのでしょうか?

彼らと話してみると日本人は、規律正しいという印象を持っています。信頼度でいえば良好な関係が築けているようです。品質も安定しているので、日本ブランドに対する安心感はあります。例えば改善を常に実践しているトヨタ自動車などは、その企業理念は高く評価されています。

取引のやり取りでは、案件の決済のスピードが遅いという声をよく聞きます。そういうフランス人は早いのかと聞かれればバカンスが多いので時期によっては、業務連絡がうまく取れないという点はあります。

休みも少なく、仕事に頑張る日本企業の案件のスピードの点を指摘されてしまうのはなぜでしょうか?それは、案件担当者が、上司に承諾をもらい、またその上司が自分の上司から許可をもらうという日本独特のシステムによるものではないかと思います。

「畏れ慄いて」の小説の中にも同じような下りが描かれています。フランスでは、プロジェクトの規模にもよりますが案件担当者に決済の権利がある場合も多く一旦商談にはいると決断までのスピードはあっという間の場合もあるのです。

コミュニケーションにおいては、フランスと日本、母国語ではない英語でのやり取りが中心。日本人の英語のレベルを指摘する声はありませんでした。例えば日本人2人の取引相手を接待したフランス人によると日本人上司は、英語が話せなかったため、部下の日本人の英語ができる方を通しての会話。会話では、かなり日本人上司がいろいろと日本語で話していたような印象を受けたけれど部下の通訳はごく簡単に「He appreciate it」とされたことに驚いたようです。これも文化の違いからきたものかもしれません。

フランス人は具体的な説明を好む傾向にあります。貿易の仕事をされている皆さんは、日々業務の中で色いろと文化の違いを感じられることも多いと思います。時には、もどかしいこともあるかもしれませんが世界とビジネスを通して繋がることは視野が広がるきっかけになります。

これからも日本とフランスのビジネスが良好に発展してくれることを期待します。

2016/12/09

海外だより:フランスより一覧

Mama Africa! Kenya便り:ケニアでの外国人の娯楽や休日

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ナイロビはだんだん暖かくなり過ごしやすくなってきました。この時期になると日中はプールで遊ぶ子供達も増え、大人も外で楽しむ時間が増えていきます。

今回、私たち外国人の娯楽や休日の過ごし方についてご紹介したいと思います。

ケニアでは日本で暮らしていた時と比べ、一人、単独で過ごす時間が極めて少ないように感じます。例えば、家族でケニアにいらっしゃる方は家族揃って外食に出掛ける人をよく見かけます。日本と違い、デパ地下もなければお惣菜など便利なものもないので、毎日家で料理をするパートナーの負担を少しでも軽くするためにと特に週末は外食をする方が多いそうです。

また、友人、他の家族、親戚を招待してのホームパーティもよく行われています。中には集合住宅内で住人同士が集まり、敷地内には多目的広場が設置されているところもあります。

家族同士の付き合いに続き、「外出」で多いのはショッピングではないでしょうか。ケニアの大型スーパーはホームセンターと合体しているのが特徴で、週末ともなるとカートに大量の食材などを買う人達をよく見ます。最近ではモール内におしゃれなショップも増えてきましたが、ファッションにおいては日本人に馴染みのあるブランドはなく洋服をケニアで買ったことがない方も少なくありません。

しかし、ここの楽しみはケニアらしい小物を見つけることです。日本では珍しくておしゃれなものもあります。さらにクリスマスシーズンになるとナイロビでは休日にクリスマスバザーが各地で催され、ケニアらしい小物だけではなく、ヨーロッパテイストの小物からオーガニックの食品など、多彩なものが並びこの時期の楽しみの一つになっています。

特に週末は安全面に注意する必要がありますが、日本と違って自由が少ないだけに集まり、出掛けたりして週末を大いに楽しむのではないでしょうか。

その「外出」先を決める際は、口コミ、モールなどの掲示板、無料の情報誌やSNSなどが役に立ちます。日本と違い、雑誌やテレビなどでトレンドが紹介されることはありません。特に口コミで新しいスポットを紹介してもらい、掲示板や情報誌でコンサート、クラブ活動(料理教室、アート教室、乗馬など)、ボランティア活動などのイベントを知ります。

ボランティア活動の中でケニアらしいと思うのが象の里親です。象牙などの密猟で親を亡くした子象の里親になるものです。里親になると象に名前をつけて、餌やりや触れることも可能です。定期的に訪れると成長を感じることが出来るそうです。

ケニアでアウトドアも忘れてはいけません。安全管理上、広範囲では個々の活動は難しくなんらかの施設、またはある程度の人が集まるところでの行動が現状ですが、ナイロビにはスポーツが楽しめる施設や広大な森林地域があります。
セキュリティー管理がされている為基本入場料が必要ですが、敷地内では散歩やサイクリング、ランニング、サッカーなど、外に出歩くことが制限されているナイロビでも野外活動が安心して楽しめます。

そして、アウトドアはナイロビの外でも可能です。車で3〜4時間もあればナイロビを離れることが出来るので、日本ではなかなか見かけない大きな車でクライミング、マウンテンバイクでサイクリングやツーリングなど、休日を更にアクティブに過ごす人もいます。その他にも紅茶農園、温泉、赤道直下など小旅行も出来ます。

日本に比べて娯楽の数も場所も限られていますが、少ないながらも皆さん趣向をこらしてケニア生活を大いに満喫しているように見えます。

次回は、休暇の過ごし方について届けします。

2016/11/23 E W Africa, Schema Corporation

Terve! 英語も公用語に近いフィンランドの言語事情

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昔船会社で働いていたときに英語が公用語であるにもかかわらず、現地語で書かれたメールが来た時には、驚きながらも興味のある言語は辞書を片手に調べていました。

一番多かったのはスペイン語。簡単な現地語で返信すると、「Amigo!」(おぉ、友よ!)なんて返事が来て、トラブルシューティングを手伝ってくれた記憶があります。

さて現在私が住んでいるフィンランド。何語が公用語だと思いますか?
答えは、フィンランド語とスウェーデン語。

過去にスウェーデン王国に支配されていた歴史から、人口のおよそ5.5%のスウェーデン系フィンランド人が、スウェーデン語を原語として暮らしています。首都や地方都市の街中の標識はこの二言語で、上段がフィンランド語が表示されます。また、おなじみムーミンの生みの親であるトーヴェ・ヤンソン氏も、スウェーデン系フィンランド人です。

【世界一難解な言語】

ではフィンランド語と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
インド・ヨーロッパ言語である英語と異なるウラル語族に属し、フィンランド以外では、エストニアやロシア西部などの地域でも話されている言語です。

実際にフィンランド語とはどのようなものでしょうか?

”Hyvää Huomenta”
「おはようございます」
”Mitä kuulu?” 
「お元気ですか?」
”Menen toimistoon jokapäiväistä”
「私は毎日会社へ行きます」

英語に親しんでいる方々からすると、発音や文法のイメージが全く湧かないと思います。私自身もそうでした。

以前、語学学校に通っている時に、イギリス人やスペイン人が口を揃えて「フィンランド語は世界一難しい言葉だ」と連呼していました。それを裏付けるかのように、特に英語話者には習得に時間がかかる言語という調査結果が出ています。

【習得に時間がかかる、つまり難しいとされる理由は】

・インド・ヨーロッパ言語との共通点がない(日本人にとっては、発音はカタカナ読み、主語なし、語順が自由、冠詞がない、というやや共通点があります)
・15個の格変化があり、語尾の違いによって意味が変わる
・男女の性別を指す「彼」「彼女」がなく、”Hän”だけで第三者を示す

特に15個の格変化は、フィンランド語習得者にとって非常に高い壁。私自身も語尾の変化にはいつも格闘し、ときにその部分だけ小声になる状況です。

【英語を巧みに操るフィンランド人】

さてフィンランド語の話者の数は、単純に数えてフィンランド人口のおよそ550万人。これに他国の習得者などを含めても1000万人に満たないでしょう。よって国際社会で生きていくためには、国際的な公用語である英語を身につけることが必須であり、小学校から英語教育が始まります。

教育といっても、娯楽や身の回りのものを使って楽しく学ぶといったものです。映画や漫画などの輸入ものは英語原語のままで放映され、字幕としてフィンランド語が流れます。英語の本も本屋や図書館にかなりの数が揃っているため、英語は身近な存在。実際、英語の習得方法で一番多かったのは、テレビや音楽といった娯楽ものでした。

そのような環境下で育ったビジネスマンにおいては、普段の仕事の中で母国語と同じように英語を使っています。近隣諸国の小国家の参加者たちが集う会議は、もちろん英語。私のような外国人が来ると今までフィンランド語で話していたところ、すぐに英語へ切り替えますし、書類やプレゼン資料を英語で作成しても母国語でスピーチしたり(この逆も然り)と、彼らの英語の操り具合は見事なものです。

医師や教師などは当然英語を話しますし、公的機関はビジネス関係だと英語で対応してくれるところもあります。商業施設でもちょっとフィンランド語がわからなくなると、英語へ切り替えてくれるスタッフも多いです。実際、全年齢層の50% 以上はほどほどに英語ができるという調査結果もあります。

ちなみにスウェーデン語については、小学校に入学すると、国語としてフィンランド語かスウェーデン語のいずれかを学ぶことになっています。

そんなわけで、フィンランドでのコミュニケーションは英語でも十分通じますが、現地語でコミュニケーションを取るとさらにその土地や現地人のことを理解できるのは、語学習得者の醍醐味。冒頭の過去の出来事を回想しながら、フィンランド語習得のモチベーションを高めている今日この頃です。

2016/11/4

海外だより:フィンランドより一覧

仕事を持つフランス女性の家庭と仕事管理術

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失業率が日本より高いフランスですが、ほとんどの女性は仕事を持っています。
日本と変わらず、仕事を持つ女性はいつも時間がない状態です。一体どうやってやりくりしているのでしょうか?

私はフルタイムで、フランス企業に勤めていたことがありました。そのときに感じたのは「仕事より、仕事と家庭の両立が大変だ」という事でした。

各企業が集まるミーティングで出会った女性と話したとき彼女がいいました。
「ねぇ、ハウスクリーニングの人、いい人知っているから紹介しましょうか?」フランスでは週に1回から2回契約をきめて定期的にお掃除にきてくれることをハウスクリーニングといいます。お手伝いさんを派遣してもらう感覚です。あらかじめ、やってもらうことは取り決めておく必要がありますがお掃除に限らず、お料理の下ごしらえなども頼めるのです。

私も一時期利用していたことがあります。依頼内容は、家のお掃除、長女の幼稚園のお迎え、料理の下準備です。週に1回で2時間の契約でした。派遣されてきたのは若い女性でしたが、お願いしたことはきちんとやってくれたので満足でした。しかしフランスですので定期的にバカンスをとるのです。そのときは、代理の人を頼めるのですが全く頼んだことをしてくれない人もいたりとやはり信頼関係が大切だと痛感したものです。他人に家に入られるのは、わりと日本より抵抗がないフランスだからこそ浸透しているサービスなのかもしれません。

次に、女性が働くときの子供の預け先です。フランスには、幼稚園に入る前の子供の受け入れ先は、託児所か保育ママです。どちらも行政がかかわる認可になります。日本と違うのは、保育ママ利用率がかなり多いことです。おそらく、職種によっては時間の融通がきくからかもしれません。私も長男が赤ちゃんの頃は保育ママにお願いし、そののちに託児所にお願いしていました。保育ママも相性がありますので、自分の教育方針にあった方にあえたらラッキーです。ただ、保育ママの場合、こちらが雇用主となって毎月給与明細を渡さなければなりません。保険や社会保障などを計算しながら、書類を作成するのは慣れていないとそちらにエネルギーをとられることになってしまいます。

毎日の家事は、どうなっているのでしょうか?
フランスには、冷凍食品だけを専門にしているスーパーが全国展開であります。そこには、インゲンだけなど素材だけのものや、ミートソースなどもう調理されているものなどありとあらゆる種類のものが売られています。美味しそうなデザートも種類が豊富です。品質もしっかりしています。忙しくて買い物に行く時間がない!というときは、こういうストック冷凍の野菜を付け合わせれば何とか食事のバランスもとれるという訳です。家庭では、食洗器、衣類乾燥機の設備はあたり前です。大型冷凍庫をもつ家庭も多いのにはびっくりです。

ここまでそろってくるとかなり家事の負担は減っていきます。しかし、私が一番大変だったと感じていたのは子供の発熱などの呼び出しでした。フランスでは、子供の病気などの理由で休暇が何日かとれるシステムがあります。それを使っても、子供が数人いればその休暇だけでは間に合わない状況も出てくるわけです。職場と預け先の距離が遠いとすぐには迎えにいけない状態です。

「こればっかりはね。。。」と思っていた私に、こんな風に切り抜けるのよと教えてくれたのが義理妹夫婦でした。彼らは、共働きで小さい子が2人います。職場は、車で1時間もかかります。彼らは、保育ママを家に雇い入れました。朝、家に保育ママにきてもらい家で一日中子供をみてもらうのです。一人は、幼稚園に通う年齢なのでその送り迎えも仕事の1つです。これなら、急な呼び出しにも対応できるわけです。信頼できる人を見つけたらしく子供達もとてもなついているとのことです。

いかがでしたでしょうか?フランス女性は合理的に時間を使います。こうして外注にお願いして生み出した時間は何に使われているのでしょうか?一番は、子供や家族との時間です。遠足の付き添いなども仕事をもっていようがみな積極的に参加します。もちろん、自分の時間も大切にしています。習い事をしている方も多いです。夫婦だけで出かけることも頻繁にあります。

「頼めることは周りにお願いしてもいい」を前提に動いているフランス式。参考になればと思います。

2017/10/27

海外だより:フランスより一覧

Mama Africa! Kenya便り:ケニアの医療制度について

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こんにちは。
今回はケニアの「医療」についてお届けします。

医療制度について、日本と先進国でも違いがあるようにケニアと日本でも異なります。

最も異なるのは「医療費の支払」でしょう。
ケニアはアメリカと良く似ていて、日本のように国からの保障はなく、自身や会社がかける保険、もしくは全額自己負担によって治療を受けることが出来ます。

経済的に恵まれた人や大手企業に所属する人はそれなりの医療を受けることが出来、また彼らは欧米やインドに高度な医療を求めて渡航治療を受ける人も多く存在します。
その一方で、低所得者層や貧困層の人達は、国境のなき医師団や赤十字などの支援により治療を受けることもできますが、十分な医療を受ける機会は非常に限られているのが現状です。

一般的に私達のような外国人の場合、その多くは企業や団体から派遣された赴任者ですが、所属企業や団体が保険に入っているためケニアで十分な治療を受けることが出来ます。そして、指定される病院はある一定の基準以上の病院なので、治療に対する心配はほとんどありません。

しかしそのような支援がない場合、当然のことながら現地人と同じ条件です。ケニアの物価は日本と変わらない水準なので、医療費の全額負担はかなりの出費で注意が必要です。

費用の支払いについては、基本現金のみで一部医療機関を除いて前払い(診療より先に支払い)です。治療を受ける前に基本医療費を支払い、その後それぞれの担当医が診察します。レントゲンや注射、点滴などを使用する場合にも、それらの費用を前払いすることが一般的です。救急医療や救急車も支払わずしては利用できません。

医療に大きな心配はないものの、この救急医療には不安が残ります。ケニアの慢性的な交通渋滞から救急車が遅れ、救急医療に対応する病院の数も少なく、また従事するスタッフの迅速な対応への意識の低さや医療技術(質)のばらつきなど、不安を挙げればキリがありません。

郷に入っては郷に従わざるを得ず、限られた環境の中で適当な病院を探すわけですが、恐らく多くの富裕、中間層が利用しているのは総合病院です。

よく聞く病院で「Aga Kahn University Hospital Nairobi」があります。
イスラムの大富豪の財団が設立したナイロビでは非常に大きな病院です。さらに同じ敷地内には多分野の開業医もオフィスを構えているのは日本と違った点ではないでしょうか。

ケニアはアフリカの中でも医療技術や質は高く、近隣国から治療を受けに来る人もいます。ただ総合病院とはいえ、ケニアでは1つの病院で全ての検査に対応出来ていないため、隣接する病院に患者自らが行き、検査や治療を受ける点も日本と異なるところです。

視点を変え、子供の医療についても触れたいと思います。

子供帯同の外国人にとって気になるのは子供への医療の充実さです。多くの方々が先ほどの総合病院や専門病院を利用し、定期検診や突然の症状にもすぐに対応してもらえます。また日本人医師による訪問診断もあり、多くの日本人が助けられています。

その他、開業医による専門院もケニアには点在します。ほとんどの病院では看板がないため口コミによって皆さん病院を選んでいます。

ケニアの医療は、制度など日本と比べて違う点が多いですが、決して心配する程ではないと言えます。しかしながら、医療格差是正や質の向上など課題は山積みです。

ケニアが国際国家として認められるには、医療インフラの発展も一つの鍵となるでしょう。

次回はケニアの娯楽と休日の過ごし方についてお届けします。

2016/10/12 E W Africa, Schema Corporation

Terve! 北国の小国家フィンランドとは?

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出典元:http://vuodenajatvalokuvin.blogspot.jp/2010/09/soutaja.ht.

はじめまして。フィンランドに在住の藤原斗希子と申します。
今回からフィンランドのビジネスにまつわるコラムをお届けします。どうぞよろしくお願いします。

フィンランドは、日本における近年の「北欧ブーム」で、身近な国となってきたと思います。

実際、日本からの直行便で約10時間。日本に最も近い欧州と言われ、大帝国ロシアを挟んで日本とフィンランドは「ご近所さん」なんて言われることもあります。

国土面積はほぼ日本と同じですが(およそ34万km2)、人口は日本のおよそ20分の1の550万人。北海道の気候と人口が日本全国に広がっている、とイメージすると現実に少し近いかもしれません。

国土のおよそ3分の1が北極圏であることから、北部では夏の間は日が沈まない「白夜」や、冬の間は逆に日が昇らない「極夜」が訪れます。現在はサマータイム期間ですが、10月の最終日曜日を境に冬時間へと変わります。その後は弱々しい太陽が数時間だけ顔出すだけの暗黒の世界となり、ビタミンD不足などでうつ病にかかる人が多くなります。国民的な病気と言われているため、こうした気候条件の中で生活していくのはかなり厳しいものだと実感しています。

このような気候条件下の小国家ですが、先進国の中での存在感は大きいです。

OECDなど諸々の指標ではトップクラスにランクインしています。「世界一の教育大国」「世界一幸せなお母さん」「生活の満足度の高さ」など、福祉国家に対する評価が表れています。

■ビジネスは「イノベーション」と「テクノロジー」が鍵

ビジネスにおいては「ノキア」を代表する「革命的そして革新的な」ビジネスが強みです。テクノロジーは彼らが最も得意とするところで、この二つを組み合わせて「スタート・アップ」を巻き起こすのが最近の主流。

ヘルシンキ発のスタートアップ「Slush」が世界的に知られてきているように、ベンチャー・ビジネスの文化が浸透しています。

しかしここ5,6年は経済不況の真っ只中。失業対策を打って出るも、これといった解決策にはならず。2015年に約3万人の難民を受け入れた際には、「自国民の失業問題を先に解決しろ」と難民受け入れの反対デモが繰り広げられるほど、深刻な問題となっています。

夏のサマージョブで一時的に失業率は下がりましたが(7.8%:2016年7月統計)、今年の平均失業率はおよそ9%。特に高学歴の若者の失業率は高く、また地域によっては数年間全く雇用がないところもあります。小国家の生き残りをかけた景気回復には、あと数年かかると言われています。

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出典元:http://www.mannlines.ee/309eng.html

■海運事業で不況を脱出できるか?

さて、私が住む南西部の古都トゥルク市は、港湾都市です。客船ターミナルと老舗の造船会社「Meyer Turku社」があり、ここでも「イノベーション」と「テクノロジー」をキーワードに次世代のクルーズを提供しています。

それを象徴するかのように、つい先日、「グリーン・クルーズ」をテーマにした大型LNG客船2隻の建設を受注し、多数の雇用を生み出すというニュースが飛び込んできました。

リリース予定は2020年から2022年。今後数年間の雇用がここで確保できると、地元ならず国内の海運業界では高調でした。

フィンランドの港湾といえば、ヘルシンキ港の国際ターミナルが世界的に知られていますが、実はこのトゥルク港や欧州主要港の接続港としてのコトゥカ港も、重要な港湾都市として栄えています。人的資源や自然資源が乏しいため、バルト海を中心とした貿易が昔から盛んで、南部を中心に海運事業が発達しています。

ということで、今回はフィンランドの概略を簡単にご紹介しました。
次回以降は、フィンランドの基本情報とともに具体的なビジネスにまつわる話しをお伝えしていきます。

2016/09/21

海外だより:フィンランドより一覧

発見!フランス女性と日本女性の共通項

フランスに住んでいる日本人にとって、日本への里帰りは楽しみの1つです。フランスでの生活は楽しいのですがやはり時間がたつと日本が恋しくなります。

毎年帰れるという訳ではないので帰れる時はなおさら心が浮き立ってしまいます。
フランス人の話題でよく出てくるのが「バカンスをどう過ごすか?またはどこへ行ったか?」
働いている人でも夏には3週間は有給休暇をとれるお国柄です。

夏に入る前は、ウキウキしながら夏休みの計画に花を咲かせます。

私も「今年は日本に帰るんです!」とニコニコ顔でフランス人の友人に話していました。そして日本の友人達には「日本に里帰りします!是非会いましょう!」などと計画を練っていました。

日本へ出発する前に知人のシャンタルから頼まれものをされました。シャンタルは50代のスラリとしたマダムです。いつもきちんと髪をお団子にまとめ私に「元気?調子はどう?」と声をかける時も優しく背中に手を置いてくれる温かい人柄の女性です。

「ねぇ これをできたら買ってきてくれないかしら?フランスでは買えないのよ」と渡されたコピーは日本の通販で販売しているスキンケア商品。

調べてみたら最近話題になってきている泡洗顔のソープを売っている会社でした。フランスは鉱水が多いので、顔を水で洗いすぎると皺になるといわれています。洗顔はふき取りローションかクレンジングミルクがメインです。

数日たち、今度は日本側からお土産と買ってきてほしい物のリクエストが届きました。こちらは、フランスのメーカーのナイトクリームやら美容オイルなどでした。

デパートなどで手に入る大手メーカーのものではなく通販のほうが買いやすいクオリティ重視のフランスのスキンケアメーカーです。日本人は、化粧水は好きだけれどオイルやクリームはべたつくから積極的に使わない方が多いように思います。依頼主は、好奇心旺盛でいつも明るい60代の私の知人女性です。

どうやってこんなメーカーのものを知ったのかと不思議に思っていたら「以前、フランスで化粧品を買い物をしたときにもらった試供品なのよ。」と彼女。美を追求する人は、どんな小さいことも見逃さないのです。

フランス人女性はどうやら日本に美のイメージを当てはめているのだと感じました。確かに日本と全くゆかりのないスキンケアラインも日本風の名前が付けられたりしていますし、イメージも舞妓さんの白さだったりしています。そして日本の製品は品質がよいというイメージもあるのかもしれません。

また日本女性もフランスは、香水の国、有名な化粧品メーカーがあることから美容の国というイメージを持っているようです。フランスのテレビを見ていると香水のCMはかなりの頻度でながれてきています。フランス女性は香水が大好きです。日本では無香料を好む傾向がありますが、アロマオイルなどは完全に日本の市場に参入できているいい例ではないでしょうか?

フランスと日本、女性はいつまでも美しくありたいという欲望と効果がありそうなものにアンテナをたてる好奇心は共通なのだと実感しました。今後、化粧品に限らず美容に関する製品は注目されていくかしらと女性としては大いに期待しています。

2016/08/22

海外だより:フランスより一覧

Mama Africa! Kenya便り:ケニアにある日本の食べ物って?

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今回はケニアにある日本の食べ物についてご紹介したいと思います。

現地に住むとより恋しくなる日本食ですが、ケニアの首都・ナイロビでも日本食レストランは5店舗以上存在します。

客層は、日本人だけではなく欧米人やケニア人など幅広いです。レストランだけでなく日本飲料や調味料、食材は、品目に限りはありますが、現地スーパーマーケットで見つけることが出来ます。

小規模ながら楽しまれている日本食ですが、近年の世界各地で広まっている日本食ブームとは裏腹に、残念ながらケニアではまだまだマイナーという印象です。

植民地の歴史を振り返ると当然ですが、古くから欧米やインドがカルチャーからプロダクツまで幅広くケニアに浸透しているのに対し、日本食は現地人の舌にはまだまだ馴染まないようです。

例えば先に紹介した日本食のレストランですが、最近になって日本人シェフが料理するお店も出店されましたが、それまでは韓国人によるジャパニーズコリアンレストランでした。日本料理と韓国料理が一緒に楽しめるのが嬉しいところですが、韓国人が知る日本食の味である為、私たち日本人にとっては物足りないものです。

日本食材もようやく日本人が携わるお店がオープンしました。主に日本のお惣菜や練り物、甘味ものなどを取り扱う食材屋さんです。以前は韓国人やケニアンインディアンが経営する個人経営のスーパーから求める日本食材を探し回って買っていました。

一方で、韓国人と日本人は求める“食”は似ているようで、今年に入る頃から韓国人経営によるパン屋さんが出来ました。もちろんケニアにもパン屋さんはありますが、日本のパン屋さんとは異なり、食パンやフランスパンなどの食事パンしかありません。菓子パンや調理パンなどがある日本のパン屋さんがケニアにも出来たと日本人の間でも話題になりました。

また現地に馴染の薄い日本食ですが、面白い取組もあります。日清食品ホールディングスは既存の商品を輸入するのではなく、ケニア人向けにブランド展開をしています。

現地の人の舌に合わせたケニア版インスタントヌードル「Nissin Noodles」を手掛け各スーパーや路面店で簡単に購入することができます。広く浸透している商品ですが、日本の様なスープと具材が入っているものと全く違い、どちらかというとスープはなく焼きそばのようなものです。

そのぶんヌードルにしっかり味が付いて、味はトマト味、チキン味の他にマサラ(香辛料が効いたカレー風味)味やニャマチョマ(ケニアのBBQ)味などケニア人にターゲットを合わせています。

さらに冒頭に日本の飲料や調味料が手に入ると書きましたが、そのもの自体は日本のものでもケニアではほとんどが他国メーカーにより販売されています。

一部調味料は日本メーカーが直接製造販売しているものがあるようですが、大多数は日本のパッケージでありながらラベルには他国のメーカーまたは貿易企業が印字されているのです。

例えば、最近までスーパーでよく見かけていたのが、韓国版の“かっぱえびせん”です。パッケージも味もよく似ていますが、カルビー社の名前はどこにも載っていません。

このように在留邦人の増加も一因し、ケニアでも日本食に触れることは出来るようになったものの、私たち日本人が求める日本食にはまだまだ及びません。

ケニアにも徐々に進出している日本食をどう現地の人に楽しんでもらうか、今後の情宣も含めて将来が楽しみです。

次回はケニアの医療についてです。

2016/9/2 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り: ケニアのお肉って?

今回は最近のケニアで食べられるお肉の嗜好から、
精肉を求めた様々な入手方法についてお伝えします。

ケニアでは定番のお肉から、珍味と言われるお肉など
色んなお肉が食べられます。

例えば、観光スポットとして有名なカーニバルという
レストランがナイロビにあります。

そこでは日常食べる鶏・豚・牛・羊の他に、
なんとワニ・カエル・ヤギ・ラクダなど
日本ではおそらく食べないような
バラエティー豊かなお肉が食べられます。

サファリが広がるだけに、
いろいろなお肉を食べることが出来ますが、
ケニアで昔から最も食べられているのは牛肉です。
ナイロビから少し離れれば、牛の放牧を
各地で見ることが出来ます。

しかし最近では鶏肉がよく食べられるようになったと
実感しています。高所得者の健康思考や品質向上が
主な理由だと考えられます。

地元のKienyajiチキンというブランドも根付いており、
ただ「食べる」という発想から
高品質で安全な美味しい食べ物を求めるようになり、
鶏肉は他のお肉よりも少し割高ですが、急速に普及しています。

また、養鶏場経営は家畜の中でも比較的狭い面積で
かつ低コストで出来ることから質の管理がしやすい為、
美味しい鶏肉がたくさん作れるそうです。

需要の増加に伴い、養鶏所経営はミリオネアになれると
新聞で取り上げられる程、ビジネスとしても注目が集まっています。

鶏肉が需要に拍車をかけたのは、
外資系外食産業の参入と考えられます。
代表的なのはケンタッキーフライドチキンで、
ナイロビに現在4店舗で続々と増えています。

驚きなのは、この国では先進国のファストフードが
高級食として受け入れられていることです。
近年の経済成長で増えた中間層が外国の味(外食)を
楽しめるようになったことで、
外食文化の歴史が浅いケニア人の心を掴んだと思われます。

外食という点では、日本のファストフードも人気です。

丸亀製麺を運営するトリドール社がナイロビで
テリヤキジャパンというお店を出店し、
そのメイン料理になっているのが鶏の照り焼きです。
こちらは外国人やケニア人中流層の間で特に人気のメニューです。

一方、昔から親しまれた牛肉は、良質になってきた鶏肉に対し、
個人的に少し味が落ちてしまうと感じています。

実際、鶏肉を扱うケンタッキーフライドチキンは
ケニアに進出していますが、世界最大級のファストフードである
マクドナルドはケニアにありません。

理由は、ケニア国内で調達できる牛肉の質が
マクドナルドの求める基準値以下であること、
牛肉の輸入規制があることから、
国内外から基準を満たす牛肉の入手が
困難だからと言われています。

私たち日本人を含めた外国人は、満足できる牛肉を求めて
買い物のやり方を工夫しています。

精肉店によって質が変わるため、
利用する精肉店をいくつか掛け持ちをしています。
従業員とコミュニケーションを日頃からとることで
新鮮な牛肉がいつ店頭に並ぶかを教えてもらいます。

毎日精肉が入れ替わるわけではなく、
保管技術が優れているわけでもないので、
新鮮なお肉を一度に沢山購入し
自宅で冷凍保管しています。

その他にもナイロビ大学などの大学で
研究目的に飼育されている牛を研究後解体し、
欲しい部位を精肉にして販売してもらうという
日本では聞かないお肉の購入方法もありました。

さらに、最近では団体や個人企業で
牛肉の品質向上に取り組む動きもみられます。

例えば、日本人や外国人の方々がこぞって注文する
デリバリーサービスがあります。

これは日本人を含め複数の外国人が協力し、
ケニア人の牧場を管理し生産から精肉、販売まで
一貫して行っているものです。

新鮮だけではなく、生産者が見えて、
どのように飼育されているかが分かるので
安心して食べられると人気があります。

経済発展と共に国民の所得が向上し
在留外国人も増加したことから、
ケニア人における「食」は、明日生きる為の「食料」から
「食料の質と安全」へと変化しています。

普段の生活からもケニアの著しい発展を肌で感じる毎日です。

次回はケニアにある日本モノについてお届けいたします。

2016/7/27 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:人種のるつぼケニア

今回はケニアに影響を与える人種についてお伝えしていきます。

ケニアは多人種国家の国で、
アフリカン
アラビック
ヨーロピアン
アジアン
と、大きく分けて4つの人種が存在します。

正式な数字は出ていませんが、
アフリカンは民族も含めれば約70種類。

人口率でも圧倒的にアフリカ系の人種が多く、
その割合は99%と言われています。

ケニアだけにアフリカンが占めていますが、
ケニアに影響を与えるのは
残りの1%であるノンアフリカンで、
彼らは政治経済面で圧倒的な存在感を見せています。

このノンアフリカンの中には
祖先がケニアに移り住み、
ケニア生まれケニア育ちの人達がいます。

彼・彼女らは祖先から
ケニアの政治経済の発展に大きな影響を与え、
特にケニアンブリティッシュとケニアンインディアンは
今なおケニアを支配していると言っても
過言ではありません。

そして、その影響力はケニアの植民地時代に遡ります。
植民地として国を統治していたイギリス人は
ケニアの政治経済を動かしました。

今ではその人口も約5,000人に減りましたが、
民間企業、国際団体、国際企業、宣教師などの
トップの多くはケニアンブリティッシュです。

また、ケニアンブリティッシュはケニアの大地主でもあります。
植民地時代に肥沃な土地を
先住民であるアフリカンから強制的に収用したことで、
今でも肥沃で広大な土地に
英国様式の豪邸や農地を所有しています。

一方、最近では搾取されたと感じているケニア政府が、
ケニアンブリティッシュのもつ企業の事業権を認めない、
または地主の土地を引き剥がそうとする
活動も行われています。

そして当時のイギリス人とインド人の関係は、
雇い主と従業員の関係でした。

イギリス植民地時代の1986年から1901年に行われた
ケニア-ウガンダ鉄道の建設に、
当時イギリス領であったインドから
沢山のインド人が雇われ
ケニアに連れてこられました。

彼・彼女らの役割は力仕事と
奴隷であったケニア人労働者を
監視・指揮と言われています。

その鉄道建設以降、インド人は
そのままケニアに定住し
ケニアンインディアンとなります。

イギリス植民地時代の中、
ケニアンブリティッシュの次に
力を持ったと言われています。

後に小売業・商業・貿易で特に大きく飛躍し、
ケニアの雇用はケニアンインディアンが生み出す
とも言われ、実際私たちが日常的に利用している
スーパー、商業施設、飲食店などの多くは
ケニアンインディアンがオーナーです。

世界的にみてもインド人は商売上手
と言われていますが、それはケニアでも同じです。

さらに近年では、ごく少数派だった
ケニアンチャイニーズが
中国本土からやってくる中国人と共に
影響力を見せ始めています。

昨今ケニアでは高速道路や鉄道網が
急速に広がっていますが、
建設資金の貸付から建設工事まで
多くを中国企業が手掛けています。

この建設に際し、数多くの中国人が
本土から渡ってきています。
ケニアンチャイニーズはこの本土からやってきた
中国人と共に、これからのケニア経済に
大きく影響を与えると言われ、
既に各商業・貿易で中国名企業を
頻繁に聞くようになりました。

ケニアに住み始めた頃、人種が混在し
ノンアフリカンがケニアを支配していることに
驚きましたが、ケニア人は今母国を
自分たち手で発展させようと本気で取り組んでいます。

事実、海外で実力をつけたケニア人が帰国し、
政府、企業の重役に就いています。
将来、アフリカンがケニアを牽引する時代がくるのか楽しみです。

次は、ケニアの肉事情についてお届けします。

2016/7/7 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニアでは温かい紅茶

こんにちは。

今回はケニア人の飲料習慣についてお届けします。

ケニアに住み始めた当初、
年中暖かい気候であれば、ケニア人の嗜好は
きっと冷たい物だろうと思っていました。

実際、特に飲み物においては、
彼らが冷たい物を飲むことはとても稀なのです。

温かい飲み物を好み、
日本人なら冷たく冷やす飲み物でも
常温で飲む習慣がケニア人の中にあります。

そんな彼らが好む温かい飲み物についてご紹介します。

まず彼らが好んで飲む
代表的な温かい飲み物は何と言っても紅茶です。

近年は海外文化の影響を受け
様々な飲みものが持ち込まれているため、
特に若者には嗜好変化があるようです。

それでも相変わらずよく飲まれているのが温かい紅茶です。
朝はこの紅茶とパン
仕事の休憩時にいただくのも紅茶
人をもてなす際も紅茶
ケニア人の生活に温かい紅茶は深く根付いています。

ケニアの紅茶は、水を入れず
たっぷりの温かいミルクと沢山の砂糖で作られ、
入れ方もインドのチャイと同じで
名前もチャイと呼んでいます。

昔からケニア人は好んでこの味の濃いチャイを飲み、
ミルクと砂糖を沢山入れることで
豊かさや裕福さを見せると言われています。

そもそも紅茶がよく飲まれる理由は、
イギリスによる植民地時代にさかのぼります。

イギリス指導のもと紅茶の生産が盛んになり、
良質な茶葉はイギリスへ、残った質の悪いダストティーを
ケニア人が飲んでいました。

このダストティーを何とか美味しく飲もうとして
考えられたのが今のチャイだと言われています。

日本ではケニア産の飲み物だと、コーヒーに馴染みがある
かもしれません。
が、実はケニアの茶葉はとても良質で、
コーヒーよりも以前から生産され飲まれていた飲み物なのです。

かつてイギリスで売られていた
茶葉のほとんどはケニアとインドの茶葉を
混ぜたものだそうです。

その割合は
インドの茶葉が7割に対して
ケニアの茶葉を3割に抑え、
利益を上げていたと言われている程です。

そもそも彼らが常温で飲む理由としては、
経済的環境にあると言われています。

今でも冷蔵庫がある家庭は一般市民のごくわずかです。
ナイロビに住むケニア人の多くはスラムに住んでいます。
電気もまともに通っていないため、
冷蔵庫が各家庭にありません。

その為、自然と飲み物は常温で飲む習慣がつき、
その習慣が嗜好になりました。

彼らが温かい飲み物を好むことから、
殆どの飲食店では
同じ飲み物の冷たいものと常温のものを
選ぶことが出来ます。

また私たちが冷たくして飲むものでも
常温で飲む傾向があります。
その中でも驚いたのがビールです。

私たちが冷たいビールを飲む時はその喉ごしを
楽しむものですが、彼らにとって
それは喉ごしを楽しむとは言わないそうです。

近所のケニア人を家に招いた際、
私は良かれと思い冷たい
ビールを出したことがあります。

彼らがビールをなかなか飲もうとしないため
たずねてみると

「喉に冷たいものが入ると飲み込めず、
 まるで喉が取れた様な感覚になるから
 飲むことが出来ない」

と言われたことがあります。
まさに育った環境によって
嗜好が違うことを実感した出来事です。

温かい飲み物は
飲料だけではなく、
彼らが服用する薬にも温かいものがあります。

例えば、風邪をひいた時に飲まれる
ダワという昔ながらの薬があります。

ダワは沸騰したお湯に
すりおろしたニンニクと生姜に
お好みで蜂蜜を入れて飲む、
とっても身体が温まる飲み物です。

ケニアの気候から
なかなか温かい飲み物を好むケニア人を
想像するのは難しいかもしれません。

でも眼下に広がる美しい草原を見ながら
温かい飲み物を飲むと格別の至福を味わえるのも事実です。

次回は、人種のるつぼのケニアをお届けいたします。

2016/6/16 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニアで日常的なチャイ賄賂

こんにちは。

皆さんはケニアの政治がどのように世界から評価されているか
ご存じでしょうか。

その判断材料の一つとして、
Transparency International社が毎年公表している
腐敗認識指数というものがあります。

この指数は、順位が低いほど腐敗していることを示します。
今年1月、2015年度ランキングが発表され、
ケニアは世界168カ国の中で第139位でした。

ちなみに、1位はデンマーク、日本は18位、最下位は
北朝鮮とソマリア。
同位に複数国が含まれる場合もあります。
なお、アフリカの中では54カ国中36位です。

腐敗指数からわかるように、
ケニアでは政治家との賄賂は切っても切れないとも
言われていますが、実は政治家だけはなく私たちの
日常生活でもチャイ(賄賂)が行われています。

今回はケニアに根強く残るこのチャイについてご紹介します。

何故「チャイ」と呼ぶか。

もともとチャイはケニアでも紅茶をさします。
インドチャイと同じく、たっぷりの砂糖とミルクが入った紅茶で、
ケニア人の日常の飲み物して親しまれています。

チャイはまた来客時の飲み物としても出され、
そこから「人に差し出す=融通を効いて貰う」為のものとして
賄賂を意味する隠語に使われるようになったと言われています。

言い換えれば、
ケニアでは融通を効いて貰わないと何も始まらない
と言っても過言ではありません。
事実、ケニアで生活をしていれば必ず実感することでもあります。

チャイは様々な日常生活の場面で求められます。

よく聞く話では、ケニア人の足である「マタツ」
というミニバス・バスで起こります。

マタツはナイロビ市内の移動手段、
そしてナイロビ郊外に住む人々の通勤手段にもなっています。

雨の日やラッシュアワー時には
通常だと何時間も待たないと乗ることが出来せんが、
特に外国人を見つけると各マタツの案内人が近寄ります。

チャイの交渉を持ち出し、その案内人と運転手にチャイを
渡せば先頭列の1番前で待たせてもらえるそうです。

また法や規則を元に取り締まる
行政・警察もチャイを要求することがあります。

特に、免許取得・更新やビザ取得、検問、交通の取り締まり
など公職人からまるで暗黙の了解の様にチャイを求められる
ことがあります。

手続きに通常1週間と言われたものが
1か月待っても音沙汰となく、
問い合わせてみると、「早く進めてほしいなら何かほしい」
といったダイレクトな要求もあります。

ドライバーが携帯電話を持っていただけでも運転中に使った
とみなされ、高額な罰金を払う代わりにチャイを要求される
こともあります。

日本では後部座席のシートベルト着用がまだ一般的では
ありませんが、ケニアでは着用が義務付けられており、
交通整備をしている警察官がシートベルト未着用に対して
刑務所に連れていく代わりに罰金(=チャイ)を請求し、
そのまま警察官の懐に収まることも良くある話です。

チャイは当たり前のようにケニアに根付いている一方、
現在ケニアでは国を挙げて汚職を一掃すべく
取り締まりを強化しています。

汚職撲滅はまだ始まったばかりですが、
ケニアならびにアフリカ諸国が国際社会の一員となる為には
必要不可欠な活動であり、一歩ずつですが、正しい方向に
進んでいると感じます。

現時点ではまだ、ケニアで生活・ビジネスをする際に
少なからず賄賂やチャイを要求されることがある様ですが、
常に私たちが正しい判断を心がけることも大事なのでしょう。

次回はケニアの飲料習慣についてお届けしたいと思います。

(参考サイト)
Global Noteの腐敗認識指数はこちらから

2016/4/6 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニアのフードデリバリー事情

こんにちは。

皆さんはケニアのフードデリバリーと聞いて
どの様なイメージをお持ちでしょうか。

私はケニアに住む前まで、発展途上国というだけで
そのようなサービスは存在しないだろうと思い込んでいました。

事実、地方にこそ存在しませんが、
ナイロビではその思い込みを覆すほど
便利なデリバリーサービスがあります。

今回はその仕組み、普及した理由、
そして将来性についてお届けします。

まずは、仕組み。
レストラン等の実店舗がデリバリーサービスも提供している
という点は、日本と変わりません。

一方、宣伝方法が日本と大きく異なり、紙の広告を使わない
ことが特徴です。
日本では、折り込みやポスト投函またオフィス周辺でのビラ配り等、
依然として紙広告が主流ですが、ケニアでは紙自体の価格が高い
という理由もあり、主にインターネットや口コミで紙広告は
ほとんど見かけません。

そのため、注文方法もインターネットが一般です。
SMSを含め、お店に直接電話注文する場合もありますが、
主流はオンライン注文で2つに分けられます。

1つは、インターネットからデリバリー専門サイトへアクセスし、
登録されたお店の中から注文するものと、
もう1つは、お店がテナントとなっているショッピングセンターが
運営するサイトから注文するものです。

このオンライン注文で驚きだったサービスは、
現在地から近隣のお店を検索出来るだけではなく、
食べたいものを選択すれば
近隣のお店を紹介、
メニューの一覧を閲覧、
デリバリーの所用時間、
また利用者の評価など、
日本となんら変わらない、注文には十分な情報があることです。

所用時間も、ケニアではとても珍しく大幅に遅れず、
注文をすると定期的にオペレーターやインターネットを通じて
デリバリーの現在地が随時連絡される仕組みになっています。

デリバリー代はとても安く、日本円にして約200円〜300円/回程度。
利用者の多くはまとめて注文をする人が多いためデリバリー費用は
ほとんど掛からないといってもいいでしょう。

デリバリーサービスが普及した理由は、
以前お届けした慢性的な交通渋滞と携帯電話の高い普及率が
大きく関係していると考えられます。

利用者の用途は主にオフィスで取るランチやホームパティーを
含め多彩な料理を注文する中流階級の家庭だと言われています。

日本のように簡単にランチを楽しむ場所が付近にあまりなく、
ゆっくり取りたがるケニア人にとっても都合がよく、
また社員が時間通りに仕事に戻ることにもつながり
非常に利点があります。

ホームパティーを好んで開く外国人や、治安の理由から
夜の外出がなかなか出来ない家族にとっては、
渋滞のひどいナイロビで何時間もかけてレストランを回るのは
とても非効率で、デリバリーが準備時間を大幅に省くことにもなります。

最後に将来性、それはサブ・サービスの拡充が
成長に必要と考えられます。
フードデリバリーの機能や利便性は整っていますが、
それ以外のサブ・サービスを充実させることが必要です。

日本では当たり前のポイントサービス、
食品以外の商品の取り扱いなどは現時点で存在しません。

例えば、携帯電話の電子マネーと連携してポイント制を導入する
ことやケニアではお花が安く綺麗な花が食卓を賑わすことも
多いことから、その食事に合った花を一緒に届ける
フラワーデリバリーも一つのアイデアではないでしょうか。

今後、安定的かつ更なる顧客獲得に向けた企業間の競争が進み、
そこにサブ・サービスのノウハウを有した日本企業がケニアに
参入するチャンスもあると思います。

次回はチャイ(賄賂)についてお届けしたいと思います。

2016/3/18 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニア人と仕事を上手くまわすポイントは

こんにちは。

前回は、「ケニア人との仕事で意識したいこと」と題して、
共に仕事をするためにこちらが臨機応変に対応することが
賢明だとお伝えしました。

今回はケニア人の仕事への取組み方を理解し、
どのように付き合うのが良いのか
また個人と企業の取り組みについてもご紹介します。

まずケニア人と共に仕事をする上で大事なことは、
とにかく伝え続けることです。

率直に言えば、彼らは
「仕事をせず、いかに楽をしてお金を得るか」が、
仕事に対する責任感や意欲よりも十分に勝ります。

「仕事をしない」言い訳は流暢で、
皮肉にも英語が公用語である彼・彼女らは、
言い訳がまるで筋の通ったプレゼンの様に聞こえてしまうのです。

日本人の常識(仕事への生真面目さ)と同じレベルを
期待するのはとても危険です。
まずは現地でケニア人とビジネスをする上で最初に
理解すべき点だと言えます。

この考え方の背景にはケニアの経済環境が
関係すると考えられます。

ケニアの高い経済成長率が注目を浴びる一方、
高いインフレ率や汚職による非効率な政治から、
末端の国民生活水準は一向に改善されていないのが現状です。

真面目に一生懸命働いても報われない生活環境から
「楽をしてお金を稼ぎたい」
と思うのは仕方のないことかもしれません。

それゆえ仕事を計画的に遂行させるためにも、
相手に根気強く言い続けてこちらの意思や要求を
伝えることが大切なのです。

「とにかく伝え続けること。
これがケニア人とうまく仕事をするためのコツ。」
と企業のトップに立つあるケニア人の友人が
私に教えてくれた言葉でもあります。

また、伝え続けると共に大切なのが「仕事をやらせること」です。
日本では「上司が部下に背中を見せて教える」ことは
よく見られる光景です。

しかしケニア人には全く通用せず、
むしろ「これは自分の仕事ではない」と判断され、
逆効果となることがほとんです。

伝え方として、
「私だったらこうするが、それは貴方の仕事である」、
「○○という結論がほしい」と
明確にとうとうと説明をするなど、
あくまでも行動を促すことがポイントです。

さらには、私達の管理能力を鍛えることも重要です。
日本では、仕事を任せるため相手を信頼し信用する
ことから始まるとも言われていますが、
残念ながらケニア人には全く通じません。

信頼していた現地スタッフが物を盗む、財産を持って
突然消える話は多かれ少なかれ耳にする話ですが、
ここでは逃げた相手より逃げられた側の管理能力を
問われることになります。

大事な仕事を一任するのではなく、
出来る限り自身の管理下に置くことが望ましいのです。

これらは対ケニア人個人のお話でしたが、
企業の中には組織で現地人材の有効活用に
取り組む企業もあります。

その一つの手法が、現地スタッフを多部族で構成することです。
部族間で健全な競争意識を芽生えさせることが企業成長にも
つながるという考えからです。

首都ナイロビはまるで多民族国家の様に
各地から様々な部族が集まりますので、
部族意識が高く同族同士のつながりも強いです。
生活や仕事面での助け合いや、現地企業の中にはトップと
同じ部族から候補者を採用する傾向もまだあります。

同族で固めればチームワークが生まれそうですが、
反面、馴れ合いや結託(共犯)する可能性も高くなります。

現地スタッフは多部族になるように採用し、
部族ごとで小チームを作り互いがリスクを軽減することもも
一つの方策と言えます。

「郷に入れば郷に従え」の言葉があるように、
ケニアで働くことはそれまでの「当たり前」が通用しない
ことを受け入れ、柔軟に対応していくことが大事だと思います。

次回は、フードデリバリーについてお届けします。

2016/2/29 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニア人との仕事で意識したいこと

こんにちは。

今回のテーマでは、ケニア人との仕事で意識したいことを
お届けします。

ケニアに進出する多くの外国企業や日系企業が現地スタッフを
雇用しています。

文化も考え方も何もかもが異なる中で、実際にその違いを
理解し受け入れ、貴重な労働力として現地スタッフをマネジメント
することは容易ではありません。

しかしながら、現地スタッフの有効活用こそ、ケニアで事業を
成功させるための最も重要な要素だとも言えるでしょう。

今回、ケニア人と仕事をしている現地日本人の方々とも
意見交換をしてみました。それらも踏まえながら現地スタッフと
仕事をするにあたり意識しておきたいことをいくつか
考えてみたいと思います。

まず感じているのが「ケニア人のプライドの高さ」です。

特に日系を含め外資系企業か現地大手企業に勤めるスタッフは
その傾向が強いように感じます。
彼・彼女らの多くはケニアの有名大学を卒業しているか、
海外留学の経験をもつ人がほとんどです。

自身の経歴を誇りにし自信を持っている人達も多く、
そのため現地スタッフにアドバイスをする際は特に人前で
しないように気をつけることが大切です。

何故かというと、人前での注意は全くの逆効果になるからです。
たとえ単純なことでも、また相手に良かれと思ったアドバイス
であっても、それが原因で時にはパフォーマンスが急に
下がることや、全く仕事をしなくなる場合もあります。

中には他のスタッフへ責任転換したり、突然会社を去ったりする
ケースもあります。

対策としては、まず人前では決してアドバイスを与えないことです。
一方的な注意ではなく、あくまで彼・彼女らに可能性があり
どれだけ期待をしているのかを伝えること。

あたりまえかもしれませんが、まさに叱るよりも褒めてやる気を
出させることが大事なようです。

次に、時間に対しての意識も日本人と全く違うことです。
ケニアでは時間通りに予定が進むことはとても珍しく、
集合時間に集まらないことや
予定時間に始まらないことが多々あります。

加えて時間までに仕事を終わらせる意識が日本人よりもはるかに
低いこともあげられます。
仕事を終わらせるために残業をするモチベーションも
高くはないため、これはケニア人と一緒に仕事を始めるときに
苦労する点だとも言えます。

対応方法としては、特に締め切りがある仕事については
口酸っぱく言って意識させるのは当然として、
計画は時間に余裕をもたせて組むことが重要です。

また複数の仮定を想定することや、
高い期待値を最初から設けないこともポイントです。

余談ですが、ケニアに20年以上も住むイギリス人の友人から、
時間に対するケニア人のある考え方を教えてもらいました。

それは
「We have all the time in the world. (時間ならいくらでもある)」
というものです。

彼女がケニアに来る前までは、1日がまさに
「Time is Money.(時は金なり)」だと、
いつも時間に追われて忙しく過ごしていたそうです。

がしかし、ケニアに移り住んでから時間への考え方が
大きく変ったそうです。

まさに日本人も時間に対する意識は
この「Time is money.」に近いのかもしれません。

次回は、仕事に対する意識の違いや、日系企業の取り組みに
ついてお届けします。

2016/2/10 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:なぜ電子マネーM-PESAが成功したか

こんにちは。

今回は、前回ご紹介したケニアの電子マネーM-PESAに
ついて後編をお届けします。

このケニア版電子マネーは、
携帯電話のSMS機能を使うことで、決済、送金、出金、
マイクロファイナンスなど様々な使途で使われていることを
お届けしました。

当初は、トライアルで貧困者向けの融資サービスを目的として
始まったM-PESAですが、後編はなぜケニアで成功したのか、
その理由と今後のビジネスチャンスについて現地にいる視点
から考えてみたいと思います。

M-PESAがケニアで成功した主な理由は、
ケニアで広く普及している携帯電話に着目したことや
競合相手となる銀行に対してM-PESAがケニアの
大多数である低所得者・貧困層のニーズに合致していたことです。

では、何故各銀行と比べていかに大衆のニーズを掴んだのか、
3つの成功理由を挙げてみたいと思います。

第一に、銀行よりも簡単に登録できる敷居の低さです。
銀行の口座開設のように面倒な手続きや審査はなく、
口座維持費など利用するサービス以外の手数料も発生しません。

一方、M-PESA手数料は取扱いの金額によって変動する
システムで、少額を日常的に取引したい低所得者・貧困層の
ニーズを捉えた便利なサービスと言えます。

第二に、ケニア人大衆の用途にマッチしていることも挙げられます。
前編でも触れましたが、ケニアでは都市部への出稼ぎ者が
非常に多く、仕送りのたびに帰省することは現実的ではありません。

また大金を持ち帰ることも、強盗やバスジャックが頻発するケニア
では非常に危険で、犯罪を誘発することにもなりかねません。
日常でも街中ではスリや強盗は頻繁するため、お金を携帯するより
安全かつ安心です。

最後に、M-PESA取扱店数の多さです。
実際のところ、取扱店数はSafaricomやVodafoneで管理・把握は
してはいないものの、路面店、スラム、農村部の至る所に
存在します。
農村部に住む家族は、送金された仕送りをすぐ近くの取扱店で
出金することが可能です。

現在、世界中にいるモバイルマネー利用者は約6,000万人と
言われていますが、そのうち3人に1人がケニア人とも言われ、
彼らがいかにM-PESAを利用しているかがわかります。

急速に普及したM-PESAですが、
今後このネットワークを使い以下のようなビジネス展開が
期待されています。

・公共料金やインターネットの支払い
・行政への各種登録と納税
・高度なサービス(医療など)が享受できない貧困層への情報提供サービスへの支払い
・顧客情報の管理

また、ケニアで普及しているM-PESAと日本で普及しつつある
LINE Payの相互連携なども期待できるかと思います。

便利なサービスである一方、詐欺や誤送金などへの
トラブル対策が個人に依存することも事実です。

実際に私も経験がありますが、SMSで入金の連絡が入り突然
そのSMSの番号から電話かもしくはメッセージが送られ、
間違って送金したから返金してくれとの連絡が入るのです。

誤送金をしてもキャンセル機能はないことを逆手に取った詐欺と
言えます。また、仮に他人に誤送金(日本の銀行のように送金先
情報が確認できるシステムはありません)しても返金されることは
ゼロに等しいので、現状個々人で注意するしか術がありません。

発展途上国にして携帯電話の普及と共に広がったケニアの
電子マネーM-PESA、今後のビジネスチャンスは計り知れません。

次回は、意識しておきたいケニアのビジネスマナーについて
お届けしたいと思います。

2016/1/29 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニアの電子マネーM-PESAって?

こんにちは。
日本はお正月気分も終わり日常のペースに戻った頃でしょうか。

今回はケニアの第二の通貨とも言われている電子マネー(前編)
についてお便りをしたいと思います。

まず電子マネーについて、日本とケニアでは少し定義が違います。

日本の電子マネーとは
電子決済サービスを意味し、
現金の代わりにあらかじめチャージされている
もしくはクレジットカード機能をもつ、
カードやスマートフォンなどで支払いが出来る電子通貨をさします。

ケニアでは電子マネーを「M-PESA」と呼んでいます。
Mは携帯の「Mobile」
PESAはスワヒリ語で「Money」
を意味するそうです。

M-PESAとは
携帯電話による決済サービス、
または送金、出金、預金、マイクロファイナンス
(主に貧困者向けの小口金融または小規模金融)を
提供するサービスをさします。

2007年に学生によりソフトウェアが開発された後、
世界大手携帯電話会社Vodafoneによりケニアでサービスが
開始されました。

現在は傘下であるケニア国内大手携帯電話会社
SafaricomとVodafoneで利用することが出来きます。

とりわけ、ケニアとタンザニアで広く普及し、
現在ではアフガニスタン、南アフリカ、インドでも展開。

2014年には東ヨーロッパでもサービスが開始されています。

私たちに馴染みのないこの電子マネーの仕組みは以下の通りです。

まずM-PESAの取扱店で携帯電話の無料登録を行います
(SIMが旧式であれば有料)。

登録の際は審査等もなく、携帯電話(SIMカード付)と身分証明書
などの簡単な書類で完了します。

登録後は、取扱店でお金をデポジットとして預けるだけで、
携帯電話のSMSを使って各種サービスを利用することが出来ます。

お金の管理は銀行と同じくPINナンバーで行いますが、
銀行口座のような維持管理費はなく、
取引額による変動手数料が発生します。

それゆえ、少額の取引であれば銀行と比べて安価と言われており、
ケニアでは多種多様な用途で広く普及しています。

当初の具体例として、都市部では所謂「出稼ぎ者」が多く、
稼いだお金を故郷に住む家族への送金手段として、

一方農村部ではその送られてきたお金の出金や
マイクロファイナンスの享受方法として用いられていました。

現在は決済にも多く使われ、
特に都市部では公共料金の支払い、
スーパーマーケットやショップでの買い物、
病院、ドラックストア、ガソリンスタンド、レストラン、花屋、路面店
での買い物、
オンラインショッピングなどあらゆる生活の場面でM-PESAが
利用されています。

余談ですが、当初M-PESAのサービスはマイクロファイナンスの
トライアルとして、銀行口座を持てない貧困者へ融資サービスを
提供し彼らの社会復帰を促す目的で始められたと言われています。

ちなみに上記の仕組みについて、日本ではLINE Payが類似した
サービスを開始していると聞いています。

それゆえ、LINE Payの普及について、M-PESAがケーススタディー
として使われることもあるそうです。

先進国でしか通用しないと思われる電子マネーのM-PESAが
なぜ発展途上国においてこれほど発達したのか、
後編にてその理由と
今後のビジネスチャンスについても考えてみたいと思います。

2016/1/18 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニア生活での安全意識・後編

前回はケニア生活での安全意識をテーマに、
過去に発生したテロ事件や紛争を踏まえてお伝えしました。

今回はその後編として、私たちが日常どのような安全対策を
おこなっているかについてお届けします。

実際に私たちが取っている対策を幾つかご紹介しますと
・例えば週末はあまり家族で外出をしない
・長時間の外出や同じ場所で長居をしない
・混雑時の外出は避ける
・西洋人が多く集まるところには出向かない
・建物に入ったら必ず非常口を確認する
ことなど。

これらはテロや事件に巻き込まれる確率を
最小限に防ぐためのものとして、
在ケニア日本国大使館より通達があった内容の一部抜粋です。

またそれ以外にも、当たり前のことではありますが、
荷物を置きっぱなしにしないことも大切で、
これは安全な国にいた日本人は特に忘れがちで
最近多くの被害が報告されています。

以前にもお話ししましたが、
・外には出歩かない
・金品を外で出さない
・車の窓は走行中でも開けない
のは銃を持った強盗やひったくり、
女性の場合なら強姦から身を守るためです。

市内の外を見渡せばとても活気に満ち溢れていますが、
外を歩いているのはケニア人ばかりで、
外国人の歩く姿はほとんど見かけません。

外国人の移動手段は彼らの脚ではなく車なのです。

そして、車の運転にも気をつけなければいけません。

ご自身で運転する人もいますが、
ケニアでは安全面を考慮して、外国人の多くはドライバーを
雇っているのが通常です。

ケニアの道路事情は日本とは比べものにならない程粗末で
危険だからと言うのが主な理由です。

信号機はナイロビ都市中心の数台しかありません。
ラウンドアバウト*が設けられているからなのですが、
特に混雑する都市ではランドアバウトも全く機能しません。

(*ランウドアバウトとは信号機のない環状交差点。
日本でも一部の都道府県で運用が始まっている)

一部の道路では警官の手旗信号で整理しているものの
ほとんどの道路では縦横に車が行き交っています。

歩行者用信号機も一部ナイロビ市内に設置されていますが、
歩行者からも運転手からも殆どが守られていないのが現状であり、
いつ人が道路に飛び込んでくるか分かりません。

しっかりと舗装されている道路はケニアでは少ないので、
車線ラインが消えて危険な割り込みをする車や、
一車線であっても歩道に乗り上げて割り込みをする車も
ごく日常で目の当たりにします。

交通事故は日常茶飯事で、一度事故が起これば大渋滞になり
30分の道のりが3時間にもなるのがケニアです。

交通事故を起こした場合、
ケニアでも車両保険は必須ですが、
お金がおりることは非常に稀で、
更に警察に通報すると金額も多額になると言われているので、
殆どの場合は当事者同士の話し合いで解決するそうです。

ケニアは右ハンドルなので、
日本人にとっては運転しやすいのですが、
その道は非常に険しいものです。

日本を離れると日本が本当に整備された
安全な国だと実感します。

ケニアに生活している以上、
一歩も外出しないわけにはいかないのですが、
安全な日本を誇りに思いつつ、
ひとたび日本を出れば外国で住むための
適度な警戒心を持って生活をしています。

次回は、ケニアの通貨についてお届けしたいと思います。

参考までに:
ケニアショッピングモール襲撃事件
ガリッサ大学襲撃事件
ケニア危機_(2007年-2008年)

2015/12/15 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニア生活での安全意識・前編

こんにちは。

ナイロビでは、今月末にバチカン市からローマ法王(Popeポープ)が
訪問するとあって、新聞でも大きくその警備体制や街の厳戒態勢に
ついて取り上げられています。

ケニアでは防犯設備や取り締まりの体制がしっかりしているとは
言い切れません。

そのため世界中からVIPが訪問する際は、その国のセキュリティーと
世界でトップレベルのセキュリティー組織と連携をして警備・護衛に
あたります。

先日の米オバマ大統領がケニア訪問の際は、
主要道路のほとんどが丸二日間閉鎖したため、
一部交通麻痺や帰宅できない人もいたそうです。

また、日常生活では危険地域に行かない限り、身の危険を感じるような
経験はありませんが、決して安全とは言い切れないのが現状です。
日中でも外を出歩くことは出来ませんし、夜の外出にも制限があります。

今回は日本とは違う、ケニア生活での安全意識(前編)について
お届けします。

日本を離れてみてよく思うのが、
日本より安全な国はないと実感することです。

私自身、ケニアに経つ際には、沢山の方々にケニアの安全面に
ついて懸念の声を頂きました。
実際に、地理的にみてもケニアはエチオピア・ウガンダ・南スーダン・
タンザニア・ソマリアに隣接しています。
ソマリアにはイスラム系過激派組織/アル・シャバブの活動拠点があり
同組織は日々ケニアへテロ攻撃を狙っています。

それ故に、ケニアは世界政治から見ても安全な国とは言えません。

事実、テロはケニアで度々勃発しており
直近では2013年に発生したナイロビ市内のショッピングモール
襲撃事件で68人が死亡し200人が負傷。

2015年にはナイロビ都市郊外ケニア東北地区のガリッサ大学が
襲撃され147人が死亡、79人が負傷しました。
いずれも日本でも報道されています。

またケニアでは、学生運動やケニアの選挙時にも注意が必要です。
特に選挙時には党派伐だけではなく民族・土地問題ともからむことから、
大きく暴動が起こる危険もあります。

2007-2008年に起きた政治危機とも言われるケニア危機では、
1,000人を超える死者を出し、建国以来最大の国内紛争にまで
発展しました。

これら過去に起こった事件から、
現在は警備体制も以前より大きく改善され、多くのビジネスオフィス、
スパーマーケットやショッピングモールでは警備員を増員しました。

車内のセキュリーチェックや、エントランスでは金属探知機による
ボディチェックと荷物検査が行われています。

それでも未だにテロ犯罪組織による爆発未遂事件や爆発物が
ショッピングモールで発見されるなど、度々事件は発生しています。

ケニアに住む在留邦人者達へは在ケニア日本国大使館からSMSが
発信されるため、事件を把握することが出来ます。

しかし、ナイロビでは頻繁に事件が起こっているせいか、
テロに関わる事件以外にも、複数の死者が出る大惨事にならない限り
新聞やニュース等には全く取り上げられていません。

いつ何度、何が起こるかわからないため、
安全面においては各自で注意し、行動する意識が求められています。

私たちが日常どのような安全対策を各自でおこなっているか、
ぜひ後編でお届けしたいと思います。

2015/11/27 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:ケニア人女性が持つ髪のこだわり

こんにちは。

こちらは暖かい日が続き、街中には今まで羽織っていた
ジャケットを腕にかけて歩く人が目立ってきました。

その中にはビジネススーツを身にまとい颯爽と歩く
女性の姿も少なくありません。

ケニアでは女性の就職率が高く、
労働力率は世界第48位(189カ国中)です。

ちなみに、これはケニア人男性の労働力率世界第109位を
はるかに上回る数字です。

ただその労働力率の大半が低賃金取得者
(日雇労働者、メイド、ナニーなど)であり、
民間企業や政府機関で働く女性の数は男性の数よりも
少ないのが現状で、民間企業のトップ層や政治家は圧倒的に
男性が占めています。

近年では、ケニア政府が国の経済成長と国際化を進めていることもあり、
ようやく女性の社会進出も増え、民間企業に就職する女性の数や
そのトップ層に就く女性の数も徐々に増加しています。

女性がどれほど活躍しているのか、
具体的な数字は公的組織等で発表はされてはいませんが、
政府機関などでも女性の平等、雇用、権限を向上する
組織、団体、基金も誕生し、今年の3月には
The Women in Parliaments Global Forumにてケニアが
An International Award for Promoting the Political
Advancement of Womenを獲得しました。

多くの女性が活躍することにより今注目されているのが、
女性との共働です。

それまで男社会で働いてきた男性社員にとって、
女性と共に働くことに少し違和感をもつ人も少なくないそうです。
男性同士のいわゆるコミュニケーションの取り方だけではなく、
女性と共に働くためにも、女性へのマナーも身につけることが
これからのケニアの多様な発展に必要だと感じます。

今回、その女性へのマナーの中でも特に興味深かったビジネスマナー、
女性の髪型に関わるマナーについてお届けしたいと思います。

そもそもケニア人の髪質は男女問わず剛毛そして縮毛です。
その為、地毛を伸ばしたりパーマをかけたりなど、
地毛をアレンジすることがなかなか難しいため、
地毛を編み込むかウィッグやエクステンションなどを使って女性は
オシャレを楽しんでいます。

また、ウィッグやエクステンションはスーパーなどで
気軽に購入ができバラエティーも豊富ですが、
ほとんどはストレートやパーマが掛かっているものが主流です。

ケニア人女性にとってサラサラのストレートヘアは憧れで、
日本人の髪質はとても羨ましがられます。
それだけ、ケニア人女性は髪に対するこだわりがとても強いです。

余談ですが、髪型によってその人のステータスや裕福さが
分かるともいわれています。

1番のステータスは縮毛で切れやすい地毛をストレートに
伸ばすことですが、維持費も含め一番お金が掛かります。

米オバマ大統領のファーストレディーであるミッチェル夫人の
髪型はまさに地毛をストレートにしたもので、
彼女達の髪型には日本人がファンションで飾るのとは
違う意味を持っています。

先週出席したとある会社のパーティーには、
様々な企業で働くケニア人女性も沢山出席していました。

彼女達の髪型は日本であればどれもビジネスアタイア
には不適格になるような、ドレッドヘア、エクステンション、
そしてウィッグなどバラエティー豊かです。

私たちが仕事に出かける際に服装やメイクを気にするように、
ケニア人女性は特に髪型こだわるようで、
彼女達の何気ない話を聞いていると、
髪型について褒め合う会話も聞こえたりします。

また、ビジネスミーティングでもアイスブレークとして女性への
身だしなみを褒めることも一つの適切なマナーとされています。

例えば、そのパーティーに出席していた得意先の女性が
新しいウィッグをつけているのを見た男性社員が、
「新しい髪型とても似合っています。」といったり

同僚が新しい髪型にした際は
「あなたの髪型おしゃれね」と言ったりすることも
ケニア人女性への一つの挨拶のようです。

これは普段の女性同士だけではなく、
普段男性が女性に対して言う言葉でもあるようです。

「元気?」と挨拶を交わすのと同じで、とてもカジュアルに言うそうです。

いかがでしたでしょうか。
日本人の私達には馴染みにくいお話ですが、
もしビジネスパートナーやお知り合いに
ケニア人のような同じ髪質を持っている方がいらっしゃれば一度、
彼女の髪型を褒めてみてはいかがでしょうか。

次回はケニアでの日々の安全意識についてお届けしたいと思います。

2015/11/6 E W Africa, Schema Corporation

Mama Africa! Kenya便り:民族を守る者と夢を追う者・後編

こんにちは。

今回は、前回お便りしたケニアの民族とスラムについての
後編をお送りいたします。

前編では、民族についてお届け致しました。
ケニアの民族数や彼らが話す民族語の数、
また民族ごとに住む地域がありその中に村が存在すること。

それぞれの村で文化と生活様式が異なり
お互いが助け合って主生業で生活をしていること。

またそんな彼らの生活がケニアの発展とともに少しずつ変化し、
主生業とは全く違う職種に就く者や、村でも普及している携帯電話を
使って商売を営む特に若者達がいること。

そしてこの携帯電話の普及をビジネスチャンスと捉え、
企業・団体なども各地域で活動していることに
ついてお届けいたしました。

後編では、それぞれの地域で生活をしていた彼らの多くが、
今度は遠く離れたナイロビ都市へ移動している現状について
お届けしたいと思います。

近年では、特にナイロビの都市化または
気候変動や自然災害の影響により、様々な民族出身の特に若者が、
村を離れナイロビ市内に集まっています。

地方から集まる彼らの中には
ナイロビ周辺に点在するスラムに住んでいる者もいます。

日本ではスラムという言葉はあまり耳慣れず、
ホームレス居住区のイメージですが、
ケニアのスラムは民間企業などで働くケニア人も住んでいて、
貧困・低・中所得者層が集まる居住区です。

ただ、スラムに住むほとんどは貧困・低所所得者層で、
ナイロビで人間の住居可能な土地5%に、
なんと60%(推定100万人)の貧困層が住んでいると言われています。

彼らがナイロビに集まる主な理由は、より多くの対価を得ることです。
民族衣装ではなくスーツを身にまとい、
携帯を片手にケニア人の足となっている
マタツ(バス/ミニバス)に乗り込んで、
毎日それぞれの勤務先へと出勤していきます。

例えば、外国人居住者・現地高所得者が雇っているメ
イドやドライバーなども、殆どはこのスラムから通勤していて、
彼らもそれぞれどこかの民族出身者です。


(仕事を終えて帰路につく人々)

またスラムも1つの村としてお互い助け合いますが、
そこでは商いが成り立っています。

スラムには野菜、肉、中古の日用品や服が売られている露店、
バーや喫茶店があります。

学校や孤児院もあり、スラムにいる人々の助け合いや
ボランティア活動によって成り立ち、日本人・団体もボランティア活動を
されています。

また、外国人向けにスラム観光をするツアー会社もあり、
例えばスラムが出来た理由や貧困問題を考えながら、
スラム内に護衛をつけて巡るものです。

ツアーについては人権侵害などと賛否両論ありますが、
収益の一部がスラムの環境改善に役立たれているものもあります。

現在、スラムが抱える問題は主に失業、衛生、格差で、
失業問題は36%〜40%と深刻です。

多くの人々は仕事先が見つからない状況ですが、
企業や団体の活動により雇用を創出するための様々な
取り組みも行われています。

例えば、スラムのトイレに着目したビジネスモデルです。
スラムではトイレの数が極めて少なくまた非常に不衛生であることから、
有料トイレを設置し、そこに警備員と清掃員を雇い賃金を渡すもの。

または有料のトイレ袋を作り、そこから肥料を作り農家に販売をするなど、
既にいくつかの企業や団体がトイレ事業に取り組んでいます。

まだ全てのビジネスモデルが円滑に行われてはいない様ですが、
雇用問題を解決することも、ケニアの経済発展の力になると思います。

スラム内での格差も深刻で、スラムに住む大半の人達はトタン屋根で
その日暮らしの生活や、1日の生活もままならない貧困・低所得者です。

数%の人達はコンクリート・ブロックの家に住み、
海外留学・大学進学を経て民間や国営企業、国連などの
国際機関、講師や医者として働いている人もいます。

ケニアでは、自然保護と同様、民族文化と価値の尊重と、
近代国家に向けたケニア人全体の生活向上に向け、
特に雇用問題・貧困問題の解決が重要になってくるかと思います。

次回は、女性の社会進出が進むケニアの、
現地女性に対してのビジネスマナーについてお届けしたいと思います。

参考サイト:
ウィキペディア

2015/10/12 E W Africa, Schema Corporation