フィンランドでもとうとうテロ事件が発生してしまいました。中心地にあるマーケット市場で、外国人の風貌をした男性が、通りがかりの人々をナイフで無差別に殺傷したのです。|フィンランド独立100周年目の悲劇

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公開日:2017.09.27  / 最終更新日:2022.10.20

Terve! フィンランド独立100周年目の悲劇

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2017年8月18日の夕方、我が家でくつろいでいるところ、夫から「ちょっと」という声が。

夫のそばへいってみると、タブレット片手に神妙な顔で「今、中心地で発砲が確認されたというニュースが入ってきた。しばらくニュースを追っていく」と。

最初は何事が起きたのかわかりませんでしたが、フィンランドでもとうとうテロ事件が発生してしまいました。

当初入ってきたニュースによると、中心地にあるマーケット市場で、外国人の風貌をした男性が、通りがかりの人々をナイフで無差別に殺傷し、2人が死亡、8人が重軽傷を負ったというものでした。

容疑者は、警察への通報からたった3分で駆けつけた警官により、足を射撃されその場で拘束。この他にも4人が拘束されました。

捜査が進み事件の真相が明らかになると、容疑者は昨年フィンランドに入国した難民申請者。フィンランドに来る前は、ドイツで不法滞在であったこと、そしてフィンランドでも滞在許可が下りないことがわかり始めた最中の出来事だったということがわかりました。またテロ組織とは関係のない、「無差別殺傷事件」として扱われ始めています。しかし各方面の取り調べから、容疑者本人が過激な思想に傾倒しているなどの情報も出始めています。

まさかフィンランドの地方都市、人口わずか19万人のトゥルクの街でテロが起きるとは、思っていませんでした。ヘルシンキなどの首都や空港などの警備は、近年、厳しく規制され始めていましたが、地方都市への警戒はあまりなかったことが、今回の事件発生につながったのかもしれないという見方もあります。

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テロから1ヶ月が過ぎました。事件現場には、事件後2週間ほど花束やローソクが手向けられていましたが、今は大きな鉢に入ったリンゴの木が置かれています。事件直後には、難民受け入れ反対デモとそのデモに反対するデモ(難民受け入れ賛成者や人権保護団体など)の衝突があり、やや不穏な雰囲気がありましたが、現在は落ち着き始めています。

しかしフィンランド国内では、滞在許可が下りるのを待ちわびている各地の難民申請者たちのうっぷんが溜まりはじめ、滞在許可を求めて隣国スウェーデンへ渡る人々も出てきているなどの変化がみられます。

この事件を受けてフィンランド政府は、国籍や外国人に関連する国籍法の条項を見直そうという動きが始まりました。国家安全保障上、居住許可の取り消しや、入国禁止などの処置を取ることを検討しています。

人口がもともと少なく、EU諸国の中では高齢化社会の先進国と言われるフィンランド。これからは以前にも増してより移民・難民者の受け入れを実施していかなかくてはならない状況です。難民者が自活できるような支援は充実しており、語学学校をはじめ、職業訓練学校や難民向けの起業サポートなども整備されています。

それでもやはりすべての人が納得し満足いくものではありません。受け入れ側の体制を考えると同時に、なぜ難民が発生するのかという根本的な問題を、我々先進国側が真剣に考える時がきていると思います。

今年はフィンランドの独立100周年目。哀しくもそんな年にこのような悲劇が起こってしまったことは、私のような移民をはじめフィンランドの国民にも深く心に残ることでしょう。

2017/09/27

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