政府は「資産所得倍増プラン」なるものを打ち出しました。預貯金で保有されている資産を投資へシフトするプランです。日本は20年前から「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げていますが、家計における金融資産の構成比はこの20年間ほとんど変わっていません。|

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貯蓄から投資へマインドチェンジできる?

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皆さんは、ご自身の資産をどのような形態で保有していますか?預貯金、不動産、株式、投資信託、債券、生命保険?

日本は、20年前から「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げていますが、家計における金融資産の構成比は2021年末において、50%超が預貯金、約30%が年金・保険、株式や投資信託は約15%にとどまっています。この比率は、スローガンを掲げた20年前からほとんど変わっていません。

家計における金融資産額を20年前と比較すると、日本では1.4倍になりましたが、米国では3倍に増えていて大きな差となっています。日本と違い米国では、株や投資信託の保有率が現金・預金での保有率より高いため、投資から生み出される所得の効果が、金融資産額全体を押し上げているとみられています。

この20年の間に日本でも、投資への移行を促進すべく、譲渡益や配当金が非課税になるNISA制度や、税の面で優遇措置のあるiDeCoなどが構築され、投資のしやすい環境は多少なりとも整いました。

実際、NISAの口座開設数は、20代、30代の若い世代を中心に増加しており運用開始当初の約2倍になっていますし、iDeCoの加入者数も確実に増えています。

しかし、全体を見ると依然として現金や預貯金の保有率が高いことは変わっていません。そこで、政府は、預貯金で保有されている資産が多いことを逆にポテンシャルと捉え、この度「資産所得倍増プラン」なるものを打ち出しました。

資産所得とは、勤労所得の逆を意味するもので、金銭や有価証券、土地や建物などを運用することから得られる、利子所得、配当所得、賃貸料所得などをさします。

預貯金を投資へシフトすることで資産所得を増やそうというプランです。政府の意図するところ、理屈はわからなくもないですが、20年間にわたり、大きな行動変容が見られなかったものが、いわば看板を掛け変えただけで、貯蓄から投資へと人々はマインドチェンジできるのでしょうか。

個人的な見解ですが、次のような理由から投資へのシフトはいまだ険しい道のりと感じます。

【そもそも投資へ回す資金がない】
「投資」は、余裕資金があってこその話。例えば、若い世代では、NISAやiDeCoなどを活用して将来の自分に投資をしたいと考える人が増えていることは口座の開設数からも窺えますが、現実的には給与は増えず生活に余裕ができない、したがって、投資へシフトする余裕資金も持てないという現実があります。

30代以下の保有する金融資産は、全体の金融資産の10%に満たないことがわかっています。

【何から始めて良いかわからない】
金融について学ぶ機会が少なかった日本人は、マネーリテラシーが低いといわれています。「お金」は、生きていく上で必要不可欠なモノであるにもかかわらず、長きにわたり「お金」のことは家庭教育という状況であったため、多くの場合、親のリテラシーが子どもに引き継がれています。税金、社会保険のことを含め、金融に関する正しい知識を得る機会が少なかったことも、投資へ向かえない一因と考えられます。

お金を「貯める」ことはできても「増やす」ための知識の不足。「投資」と言われても、何から始めていいかわからないのはこのためかもしれません。

資産所得倍増プランでは、NISAやiDeCoの拡充などが検討されているようです。今後、仮に非課税投資枠が増えたり、要件が緩和されたりすれば、より多くの人が投資を行える環境は構築できるかもしれません。

しかし、環境や枠組みというハード面ばかりを整えても、肝心の投資できる余裕資金と知識というソフト面の充実がなければ、ここまでの20年と何も変わらないような気がしています。

貯蓄から投資へシフトするためには、給与の底上げと、人々のマネーリテラシーを高めることが必要ではないでしょうか。

この春から、学校の社会科や家庭科でようやく金融教育が始まりました。年齢に合った段階的な内容となっており、高校では投資についても学ぶ機会がありそうです。今の子どもたちが大人になる数年後から、日本人のお金についての考え方、投資や資産運用に対する意識も変わるかもしれません。

参考サイト:
日本証券業協会 NISA口座開設・利用状況調査結果 (2021年12月31日現在)
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/files/nisajoukyou/nisaall.pdf

イデコ公式サイト 加入者数
https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/number_of_members_R0403.pdf

2022/06/09
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

なぜ住宅ローン固定型と変動型に金利差が?

住宅ローン固定多型と変更型
今年に入り、住宅ローンの固定型の金利は上昇傾向が続いています。その一方で、変動型金利は低水準の状態が続いているため、固定型と変動型の金利差が拡大しています。

ご存じの通り、固定型は、その固定期間中は市中金利に左右されることなく返済額が同額ですが、変動型は、市中金利の影響を受けるため、場合によっては返済額が増えるリスクがあります。

今、固定型と変動型の金利差が拡大していることから、新規で契約する方はどちらを選ぶべきか悩ましいところでしょうし、既に住宅ローンを返済中の方も、固定型から変動型へ、逆に変動型から固定型へ借り換えを検討している方が増えているそうです。

固定型から変動型へ借り換えを検討している方は、この先も変動型は低金利が続くと予測してのことだと思いますし、逆に変動型から上昇傾向にある固定型にあえて変更を検討するのは、この先変動型金利が上昇する前に金利をFixしておきたいという意識からでしょう。変動型金利は、固定型金利の後追いで上がるというのが一般的です。

住宅ローン金利を、固定型とするのか、または変動型を選ぶのかは、いつの時代も永遠のテーマであり、正解は誰にもわかりませんし、またご家庭によって正解は異なると思います。

しかし、住宅ローンの金利が何から決められているのかを知っておくと、借り換えや新規で住宅ローンを契約する際の判断のヒントとなるかもしれません。固定型と変動型の金利を決める際には指標となる数値がありますが、両者はその元ネタとしているものが異なります。

固定型は、日本の新発10年物国債の流通利回りを指標としていて、それはアメリカの長期金利に連動しています。アメリカが利上げに動いていることが、昨今の固定型住宅ローン金利の上昇につながっています。

一方、変動型は、日本の景気の指標である短期金利に連動しているため、日本の金融緩和による低金利政策が変動型住宅ローンの低金利を招いています。

つまり、利上げに動いているアメリカ、金融緩和を続ける日本という昨今の日米の金融政策の違いが、固定型、変動型の住宅ローンの金利差となって表れているのです。

5月4日、アメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)は、これまで0.25%幅であった政策金利を6月から0.5%幅引き上げると発表しました。そうなると、住宅ローンの固定型金利が更に上昇するのかと心配になるところですが、そう直結した状況にはならないと思われます。

なぜなら、日本では現在、長期金利の上昇を抑制するために、0.25%という利回りを指定して日銀が国債を無制限に買い入れる「指値オペ」を行っているからです。これにより無制限にアメリカの利上げに引っ張られることはないため、住宅ローンの固定型金利が上がり続けるとは考えにくいでしょう。

それでは変動型の金利の今後はどう考えるべきでしょうか。

指標となる日本の短期金利が上昇するきっかけは、金融緩和政策を解除したとき、つまり、日本の景気が良くなったときと考えられます。金融緩和政策解除の目安は、消費者物価指数が安定的に2%を超えたときとされています。

実は、この3月まで7カ月連続で消費者物価指数は前年同月比を上回っています。一見、景気が上向きのようにも見えますが、その主な要因は円安とロシアのウクライナ侵攻による物価高とされていて、純粋な景気回復とはみなされていません。このことは、4月末に開催された金融政策決定会合で、この先も当面、現行の金融緩和政策を継続する意向を示したことからもわかります。

これらを勘案すると、変動型の金利がこの先すぐに上昇する要因は多くはないでしょう。

とはいえ、先のことは誰にもわかりませんし、予想を超えた何かが起こるかもしれません。最終的には自分自身で判断するしかありませんが、金利の変動要因の知識があることは、判断の一助になるのではないでしょうか。

今回は、昨今の日米の金利差が日本の住宅ローンの金利へも影響していることをお伝えしました。金利の話をしていると、どちらを選ぶのが得か損かという思考になりがちですが、実際には金利や返済額だけで選ぶのではなく、住宅ローンの返済額が家計に占める割合や、返済額が増えるリスクをどこまで許容できるかなど、ライフプランを立てて総合的に判断することをお勧めします。

なお、本コラムでお話した固定型、変動型の金利がどのような動きとなるかは、あくまで個人的見解です。考え方のひとつとしてお読みいただけると嬉しいです。

2022/05/11
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

物価高騰、家計の見直しはどうする?

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Withコロナ時代、新しい生活様式の下で、2年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークへ突入します。そして夏休みに向かって、まさしくこれからリベンジ消費による日本経済の回復を期待していたところですが、日米の金融政策の違いに起因する円安基調、ロシアのウクライナ侵攻などが重なり、モノやサービスの値段が高騰しています。せっかくの消費意欲に冷や水を浴びせられたような感があります。

「値上げの春」という言葉、毎年この時期に新聞の一面を賑わせますが、今年の春ほどそれを実感したことはありません。

円安による原材料やエネルギーの高騰により、この春、値上げに踏み切った食品メーカーは実に105社、加工食品、調味料、酒類、菓子類、乳製品を中心に、約6,000品目が値上げされたと聞いて実感として頷けます。

食品、日用品、ガソリンなど、生活必需品の価格がこれほどまでに上がっては、消費者の気持ちが「消費」より「節約」へと向かってしまうのも無理はありません。

「節約」は、いつの時代も生活者にとって永遠のテーマではありますが、今回ばかりは本気モードの「節約」を考えている方が多いようです。しかし、節約の方法を間違ってしまうと、QOL(生活の質)が下がる可能性があるばかりか、その効果もあまり得られないことがあります。

節約というと、手の付けやすい、食費や日用品費などの変動費を抑えることに向かってしまう方が多いのですが、実は変動費よりも、家計に占める割合の大きい固定費の見直しに着手したほうが、節約効果は断然高いのです。

固定費とは、住宅費、水道光熱費、通信費、車の維持費、生命保険料など、毎月必ずかかる費用のことです。サブスクリプションによる契約も固定費に含めます。

固定費を削減することのメリットは、その削減効果を一定期間持続できること。ポイントは削減額が大きくなりそうなところから見直すことです。

例えば住居費、住宅ローンがある場合は、ローンの繰り上げ返済や、借り換えなどを検討してみましょう。借入額が多い、又は返済の残存期間が長いほど、少しの金利差で大きな節約効果を生み出します。

通信費では、スマホの料金プランの見直しや、通信会社の乗り換え、格安SIMの検討。そして、自分のインターネット使用状況を改めて考えてみましょう。高速でのインターネット回線がそれ程必要ない場合は、モバイルWi-Fiルーターへの切り替えを検討。そもそも自宅でのインターネット利用頻度が少ないなら、スマホのデザリング機能で事足りるかもしれません。なんとなく払い続けてしまっているのが通信費ですので、見直し、削減の余地は一番高いかもしれません。

車の維持費としては、自動車税や保険代などが固定費としてあげられます。税金を節約することはできませんが、自動車保険に関しては、見直しの余地があるかもしれません。最初の加入時の条件のまま更新をしているケースも見受けられますので、年齢要件や補償内容の見直し、また、保険料は複数の自動車保険会社で比較するなど、再考の余地があります。

生命保険や医療保険について、一人が複数の保険に加入している場合は、補償内容が重複していないか確認し、本当に今その保障が必要かも検証してみましょう。

最後に、コロナ禍のおうち時間に加入したサブスク、利用してないのにそのままになってはいませんか。

固定費といわれるものは、最初に契約したものをそのまま継続している事が多く、口座からその費用の引き落としがされている場合が多いため、支払いの実感が得にくい項目です。しかし、家計を見直すのであれば固定費から、これが最も効果的な方法です。

春は就職や転勤、子どもの就学関係に変化がある時期です。家族構成や生活環境が変わったときは、お金の流れも変わります。家計の見直しを、年1回この時期にルーティン化すると、無駄のない家計管理ができると思います。おススメの方法です。

2022/04/26
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

会社員の副業と税はどうなってる?

副業の所得税と住民税

コロナ禍は私たちの生活を一変させ、新たな価値観を生み出したように思います。その中のひとつが働き方の多様性ではないでしょうか。多くの方がリモートワークを経験し、オンラインでも会議が可能であることを知り、出社せずとも仕事ができることを体感したと思います。

このような状況下で、副業を始めた、または始めたいと考えている会社員が増えているそうです。パーソナル総合研究所の調査(*)によると副業に意欲的である正社員の割合が40%を超えていることがわかっています。

そこで、今回は会社員の副業と税をテーマにしてみました。

今はネット環境があれば、スキマ時間で誰でも比較的簡単に収入を得られるようになりました。フリマアプリやアフィリエイトからの収入、YouTubeの収益、執筆原稿料など、収入源となるツールは多種多様です。会社員がこのような形態で収入を得る場合も広義では副業にあたります。

所得税法上、所得は10の種類に区分されています。会社から支給される給料は「給与所得」に該当し、会社員が副業で得た収入は多くの場合、「雑所得」に区分されます。

【10の所得区分】
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

給与所得者である会社員の所得税と住民税は、会社が手続きを行っているため、自ら納税手続きをすることはほぼありません。

所得税は、会社が源泉徴収により予め給与から天引きし、年末調整にて徴収額の過不足を整理します。住民税は前年の所得に課税される仕組みで、年末調整後に会社が発行する「給与支払報告書」により市区町村が住民税額を決定します。このような形で、会社員の場合は、給与から天引きで所得税、住民税を払っています。

一方、源泉徴収のない副業収入は、納税の必要があれば自分で確定申告をします。具体的には、副業の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。なお、年間とは、毎年1月1日~12月31日までの期間をいい、20万円は「収入額」ではなく「所得額」です。所得とは、収入から必要経費を引いた金額となります。

つまり、会社員の方は、年末調整により一旦課税関係が終了していても、副業の所得が年間20万円以上あった場合は、確定申告をして所得税の支払いが必要になるわけです。この所謂「20万円ルール」は、副業ワーカーであればご存じの方も多いと思いますが、意外に盲点となっているのは住民税についてです。

確かに副業の所得が20万円以下なら、確定申告不要、つまり所得税はかからないわけですが、これはあくまで所得税のみに適用される規定です。住民税に「20万円ルール」の適用はなく、給与所得以外に副業などの所得がある場合は、その多寡にかかわらず、住民税の申告が必要になります。住民税の申告書は、居住地の市区町村窓口に提出します。

この場合の住民税の支払い方法は2つ。「特別徴収」と「普通徴収」のどちらかを選択します。「特別徴収」は会社の給与から天引き、「普通徴収」は納付書による支払いとなります。

なお、確定申告をする場合には、その情報が自動的に市区町村へ共有されますので、住民税だけを別途申告する必要はありません。

働き方の多様性、将来へのリスクヘッジの観点から、今後、副業や兼業など、収入源を複数確保するという働き方が増えるのではないでしょうか。副業収入に関しての税金の知識を備えておけば、副業を始めるハードルも下がるかもしれません。

今回は、副業の所得税、住民税をテーマにお話しました。税金の種類は国税、地方税、合わせて50種類もあるそうです。通関士時代の私は、税といえば「関税」「酒税」「消費税」の3本立て。「所得税」や「住民税」は給与から天引きされるものという認識しかなかった為、仕組みを考えたことすら無かったかもしれません。
現在の私は複業(あえて複と書きます)ワーカーです。自分事として改めて税について考えています。

今後も税のお話は、折を見て取り上げていきたいと考えています。

(*)参照サイト:パーソナル総合研究所、副業に関する調査結果(個人編)を発表
https://rc.persol-group.co.jp/news/202108131000.html

2022/03/26
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

今さら聞けない!?リボ払いの仕組み

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今回は少しFPらしいお話をしたいと思います。

今やほとんどの決済がキャッシュレスで可能となり、実際に現金に触れる機会が極端に少なくなりました。先日、ある情報番組で、今の小学生(低学年)にはおつりの概念がないらしいという話をしていました。確かに給料は銀行振込、支払いはクレジットカードやスマホで完結しますので、納得できるところもあります。

キャッシュレスには利便性を感じる反面、お金の実態が見えないだけに、子どものみならず大人も改めて考えてみる必要があると感じました。

スマホ決済やクレジットカード決済は、支払いが後払いという気安さもあり、ついつい使いすぎてしまい後々請求額を見て真っ青になった、という経験をしたことはありませんか。請求額が思いがけず多額となった時に、カード会社のサイトからリボ払いを勧められることがあります。そこで、キャッシュレス時代の今だからこそもう一度リボ払いの仕組みについて整理してみましょう。

そもそもリボ払いとは?
リボルビング払いの略称で、決済金額にかかわらず、毎月の返済額を平準化する返済方法です。返済金額は自分のお財布事情に応じて設定できますので、表面的には使いやすい返済方法として知られています。

しかし、本体代金に対して利息が発生する通常のクレジットの分割払いに対し、リボ払いは前月末の残高に対して利息が発生する仕組みです。

では、リボ払いの利息を具体的な例でシミュレーションしてみましょう。

(具体例)
Sさんは、4月に20万円で家電を購入し、5月には旅行費用として10万円を支払いました。決済にはクレジットカードを使用し、返済額は毎月2万円のリボ払い、5月から返済開始です。

(リボ払い 返済条件)
・年利15%
・毎月返済額 20,000円

返済月 4月 5月 6月
費目 家電 旅行
購入金額 200,000 100,000
リボ払い返済額 20,000 20,000
利息 2,500(a) 3,531(e)
元金 17,500(b) 16,469(f)
月末残高 200,000 282,500(c) 266,031(g)

(a)4月末20万円の残高に対しての利息を計算します。年利15%なので月の利息は1/12です。
200,000x0.15÷12=2,500円 

(b)5月の返済額20,000円の内訳は、2,500円は利息なので、元金の返済額は
20,000-2,500=17,500円  
この時点の残高は200,000ー17,500=182,500円

(c)5月末残高は、(b)に旅行代金10万円が加算されますので、
200,000-17,500+100,000=282,500円

(e)5月末残高282,500円に対して利息がかかります。
282,500x0.15÷12=3,531円

(f)6月の返済額20,000円の内訳は、3,531円は利息なので、元金の返済額は
20,000‐3,531=16,469円

(g)よって、6月末残高
282,500-16,469=266,031円

このように残高に対して利息がかかるために、残高が増え続けることで、元金がなかなか減らないという現象が起こります。結果、延々と返済が続くという魔のループになりかねません。

少し細かい話となってしまいましたが、リボ払いは取っ付きやすいわりに分かりにくい仕組みかと思い、今回解説させて頂きました。

現金派でもキャッシュレス派でも、家計管理の基本は同じです。予算を決めてその範囲でお金を使う。キャッシュレスの場合は請求ベースではなく、支払ベースでお金を管理すれば、遅れてきたカードの請求額に惑わされることもないでしょう。

もはや、キャッシュレスという便利なツールを使わない手はありませんが、使っていいお金の上限額などマイルールを決めて、スマートにキャッシュレス時代を生きていきたいものです。

2022/02/24
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

日本の本当の購買力は?実質実効為替レートとは?

実質実効為替レート:弱る円

為替レート(為替相場)について改めて考えてみました。昨年12月28日付朝日新聞の一面、「弱る円」という記事を読んだことがきっかけです。

外国為替相場(リアルタイムレート)を確認することは、私の毎朝のルーティンです。とはいうものの、最近はスマホを開いて数字をながめるだけで、その実、為替の変動に鈍感になっていました。最近は円安傾向が続いているなとか、今日は昨日より円高に振れている等、何となく思う程度です。

そんな時に目にした「弱る円」の一面見出し。
「日本の購買力は50年前の水準と同等である」という内容。なかなかインパクトのある見出しでしたので、読まれた方もいるかもしれません。

一般的に私たちが為替レートといっているものは、リアルタイムレートや、通関用の週間為替相場や、銀行で円を売買する際に適用するTTB、TTS等ですが、いずれも2種類の通貨を交換するためのレートです。
今日、1ドル=100円だったものが、明日、90円になれば円高、110円になれば円安といわれ、この場合、日本と米国の2つの通貨を比較して、どちらの通貨の価値が高いのか、安いのかを判断しています。

しかし、仮に円が米ドルに対して安い(円安)状態であったとしても、他の主要通貨、例えば、豪ドル、ユーロ、人民元などに対して、必ずしも円安であるとは限りません。

そこで、複数国の通貨をひっくるめて、通貨の国際的な競争力、総合的な実力(価値)を測るための指標が必要となってきます。その指標が「実質実効為替レート」です。

「実質実効為替レート」は、ある一つの通貨と他の複数の通貨とを比較して、相対的に高いのか、低いのかを判断します。数値が高ければ高いほど、その通貨の購買力が強いとされ、低ければ弱いということになります。実質実効為替レートの数値は、貿易相手国との為替レートを貿易額に応じて加重平均し、さらに物価変動を考慮して算出します。

物価変動を考慮するとは、貿易相手国の国内事情を名目上のレートに反映することです。例えば、アメリカで1ドルのジュースを買ったとします。為替レートが1ドル=100円であったなら、100円でジュースが買えたことになります。ところが、アメリカでインフレが起き、ジュースが2ドルになりました。そうなると、100円だったジュースは、日本円にすると200円払わないと買えません。つまり、名目上の為替レートに変動がなくても、実質は円安に振れたのと同じ状況になります。

このように通貨の真の購買力の指標となる「実質実効為替レート」ですが、その日本円の数値が、2021年11月に67.79まで落ち込んだとのこと。これはなんと約50年前(1970年)と同水準だそうです。因みに、日本の購買力が最も強かったのは、1995年の150.85(過去最高値)でした。(図表1参照)

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日本は、食料やエネルギーの多くを輸入に頼っていますので、円の購買力が下がると、段階を経て家計に影響が出てきます。最初に、企業の仕入れコストが上がり、そのコストアップを企業や小売りが吸収しきれなくなると、最終的には、消費者に転嫁されます。実際、昨年は様々な食料品、日用品に値上げの波が押し寄せました。

毎日見ていたリアルタイムレートからではわからなかった事が、実質実効為替レートから見えてきました。

今回は、実質実効為替レートからわかる「円の購買力」についてお伝えしました。
因みに、実質実効為替レートは毎月1回、BIS(国際決済銀行)が公表しています。

参考記事:朝日新聞 2021年12月28日 朝刊

図表出典元:三井住友DSアセットマネジメント
https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2022/01/irepo220113.pdf

2022/02/09
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

結局、通関士資格は役に立っているのか?

ファインシャルプランナーのアドバス

私が通関士の資格を取得したのは約30年前です。まだNACCSの導入前であった為、通関書類をかかえて税関へ通う毎日。メールもインターネットも無い時代でしたので、フォワーダーや荷主との連絡はもっぱら電話とFAXという超アナログでの仕事ぶりでした。

貿易業界には6年半在籍し、そのうち通関士として通関業務に携わったのは2年程、最後の1年はNACCS導入時期と重なり、使い方の研修を受けたことを覚えています。一所懸命勉強して資格を取りましたが、通関士として仕事をした期間は長くはありません。

では、「通関士の資格は無駄となってしまったのか?」という本題に対する答えですが、決して無駄ではありませんでした。むしろ資格があったからこそ今があると思っています。

出産を機に一旦仕事を離れてから1年半後、次に就いた仕事は、総合電機メーカーでの輸出に関わる仕事です。通関士資格が必須の業務内容ではありませんでしたが、資格を保有していたことが採用の決め手となりました。

新しい職場は、25年前には既に現在のようなデジタル社会を見据えたモノ創りをしていた誰もが知っている企業でした。当時の私は、コンピューターといえば、オフコン(オフィスコンピューター)しか使用した経験がなかった為、いきなり未知の世界に放り込まれた気がして、たった1年半のブランクが10年位のブランクに感じられたものです。

そこでの9年間の経験はとても有意義なものでした。物事を俯瞰で見た効率的な仕事の進め方、数十年後の社会を鑑みた業務改革、また、何よりOJTにより英語力を鍛えられたことなど、私の職業人生において大きな財産となりました。

その後は、銀行でテラー、培った英語力を活かして自動車メーカーで海外法規事務など、その時々のライフスタイルに合わせて様々な仕事を経験することになります。前職が次の仕事へ、またその次の仕事へと繋がっていきました。

紆余曲折ありながら、現在はファイナンシャルプランナーとして、フリーランスで仕事をしています。FPを目指したのは、幾度かの転職により社会保険制度や税の仕組みに興味を持つようになったこと、仕事をしながら子育て、介護を経験する中で、お金に関する様々な制度の存在を知ったことなどが大きな要因です。

仕事や人生の節目には、金銭的な課題がついて回ることを、身を持って経験しました。知識がないことで不利益を被ることを実感したことも、自分の中で忘れかけていた知識欲に火を付けるきっかけになったかもしれません。こう順を追っていくと、通関士資格があったからこそ今に繋がっていると感じます。

FP資格を取るための久しぶりの勉強は、最初は硬くなった頭をほぐすことから始めなくてはなりませんでしたが、30年前に通関士資格を取得したという自信が、もう一度チャレンジするモチベーションになりました。

FPと通関士、一見何の関連性もない資格のように思えますが、私の中では繋がっています。何より、こちらのサイトでコラムを書かせていただけることがその証明のような気がしています。

今回は、通関士からFPへ転身した経緯を、自己紹介を兼ねて書かせていただきました。次回からは、FPとして、貿易業界で働く皆さんのために、様々なお役立ち情報をお伝えできればと考えています。

2022/1/14
山﨑裕佳子 元通関士・現FPのあれこれ話