センサーの設計図や仕様書、マニュアルなどのデータを外国の取引先の会社や個人へeメールに添付して送ったり、あるいはFAXで送っても、実は輸出規制の対象になる事があります。これらは技術的な資料、情報であり「外為令」が規制する技術に当たるからです。 |e-mailで輸出規制違反!?

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e-mailで輸出規制違反!?

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輸出規制というと、その代名詞なるものは「外国為替及び外国貿易法」略して「外為法」になります。更に、その外為法を実行するためのルールとなるのが外為法の政令「輸出貿易管理令」と「外国為替管理令」です。これらもそれぞれ略して、「輸出令」または「貿管令」、「外国為替令」または「外為令」と呼ばれています。「輸出令」は貨物への輸出規制、「外為令」は技術や役務への輸出規制です。

「輸出令」という法令があること、その法令が輸出規制として大事であって主なるものであることは、普段、輸出を行なっているメーカー等の企業に知られていても、「外為令」の方は意外にも知られておらず、ノーチェックだったりすることがあります。

「センサー」は、自動ドア、スマホ、家電、自動車、カメラ、照明器具や防犯機器など、いろんな所で身近なものに使われています。そのセンサーの設計図や仕様書、マニュアルなどのデータを外国の取引先の会社や個人へeメールに添付して送ったり、あるいはFAXで送っても、実は輸出規制の対象になる事があるんです。

何故なら、これら設計図、仕様書、マニュアル、プログラムなどは技術的な資料、情報であり、「外為令」が規制する技術に当たるからです。PDFなどのデータ(またはデータを保存したUSBメモリー等の記録媒体)でも、手書き、あるいは印刷やコピーされた紙でも設計図等の技術的資料や情報は「外為令」が規制する技術の対象になります。

「外為令」が規制するものに、もうひとつ、役務がありますが、役務とは、他人のために行う労働やサービスのことです。同じくセンサーを例にとると、センサーの製造方法や組み立て方、使い方などを外国へ行って人に教えたりすることなどが役務に当たります。そして「外為令」が規制する役務の対象になります。

外国へ向けて送ろうしている仕様データは何の仕様データ?外国で教えようとしている製造方法は何の製造方法?その「何」の部分、つまり技術や役務の対象物が「輸出令」(別表第1)で規制する対象物であるときに、「外為令」別表でも規制する対象物となるというわけです。

仕様データを送ろうとしている物品、製造方法を教えようとしている物品が、兵器や兵器に使用できる部品や材料にならないか、更に細かく言うと、国(経済産業省令)が定めた仕様(スペック)に当てはまらないか確認(該非判定)をする必要があり、当てはまる(該当)物品の時は経済産業省へ輸出許可申請をし、経済産業大臣の許可を得ないと、その物品のデータや情報をeメールやFAXで送ったり、外国で人に教えたりはできないのです。

更に注意しなければいけないのは、日本国内であっても、日本に住所を持たない人(非居住者)に製造方法等技術情報を教える場合には、前述の確認や申請、許可が必要になることもあるのです。

「輸出しているわけではないのに、なぜ輸出規制に引っかかるの?」と疑問に思われる人もいることでしょう。それは兵器や兵器の部品、材料、あるいはそれらに転用できる貨物(物品)を設計、製造、使用するための情報(データ)を教えてもらった人が住んでいる国へ帰国することで日本の国外へ出すことになるからです。

簡単にまとめると、このように国外へ出そうする、出すことになる「輸出令」(別表第1)の対象貨物を設計、製造、使用するための情報(あるいはデータ)は、「外為令」の対象になるということです。

カチッと「送信」をクリックする前に確認を!

2022/06/18
くらしと貿易と通関と
Kyō

貯蓄から投資へマインドチェンジできる?

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皆さんは、ご自身の資産をどのような形態で保有していますか?預貯金、不動産、株式、投資信託、債券、生命保険?

日本は、20年前から「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げていますが、家計における金融資産の構成比は2021年末において、50%超が預貯金、約30%が年金・保険、株式や投資信託は約15%にとどまっています。この比率は、スローガンを掲げた20年前からほとんど変わっていません。

家計における金融資産額を20年前と比較すると、日本では1.4倍になりましたが、米国では3倍に増えていて大きな差となっています。日本と違い米国では、株や投資信託の保有率が現金・預金での保有率より高いため、投資から生み出される所得の効果が、金融資産額全体を押し上げているとみられています。

この20年の間に日本でも、投資への移行を促進すべく、譲渡益や配当金が非課税になるNISA制度や、税の面で優遇措置のあるiDeCoなどが構築され、投資のしやすい環境は多少なりとも整いました。

実際、NISAの口座開設数は、20代、30代の若い世代を中心に増加しており運用開始当初の約2倍になっていますし、iDeCoの加入者数も確実に増えています。

しかし、全体を見ると依然として現金や預貯金の保有率が高いことは変わっていません。そこで、政府は、預貯金で保有されている資産が多いことを逆にポテンシャルと捉え、この度「資産所得倍増プラン」なるものを打ち出しました。

資産所得とは、勤労所得の逆を意味するもので、金銭や有価証券、土地や建物などを運用することから得られる、利子所得、配当所得、賃貸料所得などをさします。

預貯金を投資へシフトすることで資産所得を増やそうというプランです。政府の意図するところ、理屈はわからなくもないですが、20年間にわたり、大きな行動変容が見られなかったものが、いわば看板を掛け変えただけで、貯蓄から投資へと人々はマインドチェンジできるのでしょうか。

個人的な見解ですが、次のような理由から投資へのシフトはいまだ険しい道のりと感じます。

【そもそも投資へ回す資金がない】
「投資」は、余裕資金があってこその話。例えば、若い世代では、NISAやiDeCoなどを活用して将来の自分に投資をしたいと考える人が増えていることは口座の開設数からも窺えますが、現実的には給与は増えず生活に余裕ができない、したがって、投資へシフトする余裕資金も持てないという現実があります。

30代以下の保有する金融資産は、全体の金融資産の10%に満たないことがわかっています。

【何から始めて良いかわからない】
金融について学ぶ機会が少なかった日本人は、マネーリテラシーが低いといわれています。「お金」は、生きていく上で必要不可欠なモノであるにもかかわらず、長きにわたり「お金」のことは家庭教育という状況であったため、多くの場合、親のリテラシーが子どもに引き継がれています。税金、社会保険のことを含め、金融に関する正しい知識を得る機会が少なかったことも、投資へ向かえない一因と考えられます。

お金を「貯める」ことはできても「増やす」ための知識の不足。「投資」と言われても、何から始めていいかわからないのはこのためかもしれません。

資産所得倍増プランでは、NISAやiDeCoの拡充などが検討されているようです。今後、仮に非課税投資枠が増えたり、要件が緩和されたりすれば、より多くの人が投資を行える環境は構築できるかもしれません。

しかし、環境や枠組みというハード面ばかりを整えても、肝心の投資できる余裕資金と知識というソフト面の充実がなければ、ここまでの20年と何も変わらないような気がしています。

貯蓄から投資へシフトするためには、給与の底上げと、人々のマネーリテラシーを高めることが必要ではないでしょうか。

この春から、学校の社会科や家庭科でようやく金融教育が始まりました。年齢に合った段階的な内容となっており、高校では投資についても学ぶ機会がありそうです。今の子どもたちが大人になる数年後から、日本人のお金についての考え方、投資や資産運用に対する意識も変わるかもしれません。

参考サイト:
日本証券業協会 NISA口座開設・利用状況調査結果 (2021年12月31日現在)
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/files/nisajoukyou/nisaall.pdf

イデコ公式サイト 加入者数
https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/number_of_members_R0403.pdf

2022/06/09
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

陸の貿易港インランド・デポ

インランドデポの風景

輸出入、貿易が行われている場所というと、真っ先に海、港を思い浮かべないですか?

ところが、内陸でも貿易は行われています。内陸にある、例えば成田のような空港、いやいや、そこで確かに貿易は行われていますが、空港だけではありません。それ以外にも、内陸で輸出や輸入が行われている場所があるんです。それが内陸の港「インランド・デポ」です。

インランド・デポ:Inland Depotは直訳すると「内陸の倉庫」、荷積み荷下ろしのできる土地や輸出入貨物を入れる保税地域の倉庫(保税蔵置場)を有し、官民の第三セクター経営、あるいは倉庫、運送業等と通関業を兼業する民間企業経営による内陸地での輸出入通関機能をもつ物流拠点のことです。そして、その中に税関を誘致、あるいは近くに税関があることが多いです。

インランド・デポでは、貨物の積み下ろし、梱包、保管、通関、貨物の集荷、配送などが行なわれ、保税地域のため通関料や輸出通関後の貨物と輸入通関前の貨物に行った作業費等には消費税の税金がかかりません。保税地域の「保税」とは、「税の留保」、「税を徴収しない状態を保つ」という意味です。

インランド・デポを利用する場合、その内陸の保税地域という特徴から、輸入よりも輸出の方がメリットが多く生まれます。

輸出しようとする貨物をインランド・デポへ集約し、必要があれば、例えば段ボール詰めしたものをいくつかまとめてパレット梱包にするなど梱包作業をしてもらうこともでき、通関については税関検査になっても、税関指定の検査場へ貨物移動することなく、ほぼインランド・デポ内で対応でき、移動するための運送費や積み下ろし作業費などがカットでき、時間的にもコスト的にも速く安く済みます。通関後は、トラックあるいはコンテナに貨物を積み、貿易ができる空港や港(開港)へ運び、外国へ向けて航空機や船舶へ積み込むわけですが、その運送費に関しても保税運送になるため、運送費にかかる消費税がかかりません。

仮に1回の運送費が5万円だとします。普通であれば、その運送費にかかる消費税は2022年現在、10%ですから5千円ということになります。月に10回あれば月5万円、それが年間になれば60万円、節税になり消費税を負担しなくていいわけです。それを大きな効果、メリットと感じる、感じないかは、輸出を行っている企業次第かもしれませんが、どうでしょうか?

ところで、通関士試験の受験生をはじめ、通関業者に就転職を考えている皆さんも、就転職先となる通関業者は、空港や港の近くにしかないと考えている人もいると思います。確かに空港や港の近くには、いくつもの通関業者があります。しかし、比べればそれほど多くないにしても内陸にも通関業者があることを知っておくと就転職先の選択範囲が広がります。意外にも、今住んでいる市町村、あるいは近くにインランド・デポがあるかもしれません。

今、インランド・デポへの貨物の集荷、インランド・デポから空港、港への運送は、陸路中心でトラックやトレーラーヘッドによるコンテナけん引が主ですが、混雑、待機時間等が問題になっています。さほど多くない量の貨物であれば、大型ドローンで運ぶ時代は、そう遠くない未来かもしれません。

2022/05/30
くらしと貿易と通関と
Kyō

貿易になくてはならないHSコード

貿易に必要なHSコード

日本でも他の国々でも、私たちのくらしに必要なモノあるいはそのモノを作る為の原材料を輸出入するときには、必ず通関(税関へ申告し税関から許可を得ること)が行われます。その通関に最も重要で不可欠なのが「HSコード」です。

HSはHarmonized Commodity Description and Coding System(国際統一商品分類システム)のHarmonizedとSystemの頭文字で、このシステムで使用するコードがHSコードになります。「関税協力理事会」略称CCC(Customs Co-operation CounCil)が開発し、1994年以降は「世界税関機構」略称WCO(World Customs Organization)という組織となって管理しています。

HSコードは1988年発効となった「商品の名称及び分類 についての統一システムに関する国際条約」(通称HS条約)のもとに締約国の間で定められ、できてからまだ歴史は浅く2022年現在で30年余りです。それはモノのコード化や管理等を行う手段であるコンピュータの登場、普及の歴史と重なります。日本はWCOへ1964年加盟、2021年4月現在で締約国は160ヵ国・地域になり、それらの国・地域を含めHSコードを適用しているのは212ヵ国・地域になります。

英語が世界共通の国際語であるように、HSコードは貿易で流通するモノを表す輸出入共通、世界共通の6桁の国際数字です。日本では、その数字の上2桁を類、上4桁を項、全6桁=HSコードを号と呼び、HSコードの後に細分番号と呼ぶ3桁の数字を続け、更にその後に「NACCS」というシステムで税関へ輸出入申告を行うためにNACCS用の数字(アルファベット)を10桁目に続け、合計9桁あるいは10桁で種々のモノを表し、税関への輸出入申告書へ数量と共に記載することにより、月間、年間でどこへ、どこからどんなものをどれだけ輸出入したか額・量を統計をとるためのコードでもあります。

類は大きいグループ分け、項、号、細分番号(NACCS用番号)を含めた9桁(10桁)と順に桁数が増えるにつれ、より細かく小さなグループ分けという構成になっています。HSコードの後に続ける、日本で細分番号と呼んでいる3桁の数字は、それぞれ各締約国で決めてよいことになっているため、例え全く同じモノであっても、日本と一致する数字配列にはなりません。

一見、HS条約付属書をもとに作られたコード表(日本では輸出:「輸出統計品目表」、輸入:「実行関税率表」)から輸出、輸入するモノをHSコード(あるいは細分番号、NACCS用数字を含めた9桁・10桁の数字)に当てはめることは容易に見えます。確かに、そのモノがズバリHSコードになっていることもあります。しかし、一つのモノに対して一つのHSコードが対応しているわけではなく、モノというのは日本だけでも、ましてや世界中を見渡せば、いろいろなモノが数限りなく数多に溢れています。

それを6桁あるいは9、10桁の数字に当てはめることは商品知識や専門的知識・経験を要し、至難の業です。それに輸入するモノについては、コードにより関税率も違い、そのコードを誤ってしまうと、関税率が違うばかりか、有税のモノを無税のモノのコードにしてしまうと加算税徴収ということにもなりかねません。だから輸入者から委託されて税関へ申告する通関士は、慎重にも慎重を重ねて、コードを検討し、「関税率表解説」という他の資料などで裏付け(確認)し申告を行います。

HSコードはWCOにて5年に一度見直されるのですが、通関現場に身をおく者としては、日進月歩で技術が進化する中で新しい素材、新しいモノが次々と生まれているのに5年に一度の見直しではHSコードは追いついてないというのが実感です。

通関士は、輸入を行う顧客から輸入しようとするモノに関するHSコードとその関税率の問い合せをよく受けます。問合せは日本での販売やその価格などを検討するためです。その問合せに対して回答を導き出す労作は無償サービスが習慣のようになっています。HSコードを決める事は税関へ提出する申告書において最も重要で、難しく、神経を使う作業です。その労作がそれ相応に適切な評価を受けられないのは、長年に渡り通関士をやっていて異様で、正当に評価される時代が来ることを望まずにはいられません。

2022/05/18
くらしと貿易と通関と
Kyō

なぜ住宅ローン固定型と変動型に金利差が?

住宅ローン固定多型と変更型
今年に入り、住宅ローンの固定型の金利は上昇傾向が続いています。その一方で、変動型金利は低水準の状態が続いているため、固定型と変動型の金利差が拡大しています。

ご存じの通り、固定型は、その固定期間中は市中金利に左右されることなく返済額が同額ですが、変動型は、市中金利の影響を受けるため、場合によっては返済額が増えるリスクがあります。

今、固定型と変動型の金利差が拡大していることから、新規で契約する方はどちらを選ぶべきか悩ましいところでしょうし、既に住宅ローンを返済中の方も、固定型から変動型へ、逆に変動型から固定型へ借り換えを検討している方が増えているそうです。

固定型から変動型へ借り換えを検討している方は、この先も変動型は低金利が続くと予測してのことだと思いますし、逆に変動型から上昇傾向にある固定型にあえて変更を検討するのは、この先変動型金利が上昇する前に金利をFixしておきたいという意識からでしょう。変動型金利は、固定型金利の後追いで上がるというのが一般的です。

住宅ローン金利を、固定型とするのか、または変動型を選ぶのかは、いつの時代も永遠のテーマであり、正解は誰にもわかりませんし、またご家庭によって正解は異なると思います。

しかし、住宅ローンの金利が何から決められているのかを知っておくと、借り換えや新規で住宅ローンを契約する際の判断のヒントとなるかもしれません。固定型と変動型の金利を決める際には指標となる数値がありますが、両者はその元ネタとしているものが異なります。

固定型は、日本の新発10年物国債の流通利回りを指標としていて、それはアメリカの長期金利に連動しています。アメリカが利上げに動いていることが、昨今の固定型住宅ローン金利の上昇につながっています。

一方、変動型は、日本の景気の指標である短期金利に連動しているため、日本の金融緩和による低金利政策が変動型住宅ローンの低金利を招いています。

つまり、利上げに動いているアメリカ、金融緩和を続ける日本という昨今の日米の金融政策の違いが、固定型、変動型の住宅ローンの金利差となって表れているのです。

5月4日、アメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)は、これまで0.25%幅であった政策金利を6月から0.5%幅引き上げると発表しました。そうなると、住宅ローンの固定型金利が更に上昇するのかと心配になるところですが、そう直結した状況にはならないと思われます。

なぜなら、日本では現在、長期金利の上昇を抑制するために、0.25%という利回りを指定して日銀が国債を無制限に買い入れる「指値オペ」を行っているからです。これにより無制限にアメリカの利上げに引っ張られることはないため、住宅ローンの固定型金利が上がり続けるとは考えにくいでしょう。

それでは変動型の金利の今後はどう考えるべきでしょうか。

指標となる日本の短期金利が上昇するきっかけは、金融緩和政策を解除したとき、つまり、日本の景気が良くなったときと考えられます。金融緩和政策解除の目安は、消費者物価指数が安定的に2%を超えたときとされています。

実は、この3月まで7カ月連続で消費者物価指数は前年同月比を上回っています。一見、景気が上向きのようにも見えますが、その主な要因は円安とロシアのウクライナ侵攻による物価高とされていて、純粋な景気回復とはみなされていません。このことは、4月末に開催された金融政策決定会合で、この先も当面、現行の金融緩和政策を継続する意向を示したことからもわかります。

これらを勘案すると、変動型の金利がこの先すぐに上昇する要因は多くはないでしょう。

とはいえ、先のことは誰にもわかりませんし、予想を超えた何かが起こるかもしれません。最終的には自分自身で判断するしかありませんが、金利の変動要因の知識があることは、判断の一助になるのではないでしょうか。

今回は、昨今の日米の金利差が日本の住宅ローンの金利へも影響していることをお伝えしました。金利の話をしていると、どちらを選ぶのが得か損かという思考になりがちですが、実際には金利や返済額だけで選ぶのではなく、住宅ローンの返済額が家計に占める割合や、返済額が増えるリスクをどこまで許容できるかなど、ライフプランを立てて総合的に判断することをお勧めします。

なお、本コラムでお話した固定型、変動型の金利がどのような動きとなるかは、あくまで個人的見解です。考え方のひとつとしてお読みいただけると嬉しいです。

2022/05/11
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

物価高騰、家計の見直しはどうする?

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Withコロナ時代、新しい生活様式の下で、2年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークへ突入します。そして夏休みに向かって、まさしくこれからリベンジ消費による日本経済の回復を期待していたところですが、日米の金融政策の違いに起因する円安基調、ロシアのウクライナ侵攻などが重なり、モノやサービスの値段が高騰しています。せっかくの消費意欲に冷や水を浴びせられたような感があります。

「値上げの春」という言葉、毎年この時期に新聞の一面を賑わせますが、今年の春ほどそれを実感したことはありません。

円安による原材料やエネルギーの高騰により、この春、値上げに踏み切った食品メーカーは実に105社、加工食品、調味料、酒類、菓子類、乳製品を中心に、約6,000品目が値上げされたと聞いて実感として頷けます。

食品、日用品、ガソリンなど、生活必需品の価格がこれほどまでに上がっては、消費者の気持ちが「消費」より「節約」へと向かってしまうのも無理はありません。

「節約」は、いつの時代も生活者にとって永遠のテーマではありますが、今回ばかりは本気モードの「節約」を考えている方が多いようです。しかし、節約の方法を間違ってしまうと、QOL(生活の質)が下がる可能性があるばかりか、その効果もあまり得られないことがあります。

節約というと、手の付けやすい、食費や日用品費などの変動費を抑えることに向かってしまう方が多いのですが、実は変動費よりも、家計に占める割合の大きい固定費の見直しに着手したほうが、節約効果は断然高いのです。

固定費とは、住宅費、水道光熱費、通信費、車の維持費、生命保険料など、毎月必ずかかる費用のことです。サブスクリプションによる契約も固定費に含めます。

固定費を削減することのメリットは、その削減効果を一定期間持続できること。ポイントは削減額が大きくなりそうなところから見直すことです。

例えば住居費、住宅ローンがある場合は、ローンの繰り上げ返済や、借り換えなどを検討してみましょう。借入額が多い、又は返済の残存期間が長いほど、少しの金利差で大きな節約効果を生み出します。

通信費では、スマホの料金プランの見直しや、通信会社の乗り換え、格安SIMの検討。そして、自分のインターネット使用状況を改めて考えてみましょう。高速でのインターネット回線がそれ程必要ない場合は、モバイルWi-Fiルーターへの切り替えを検討。そもそも自宅でのインターネット利用頻度が少ないなら、スマホのデザリング機能で事足りるかもしれません。なんとなく払い続けてしまっているのが通信費ですので、見直し、削減の余地は一番高いかもしれません。

車の維持費としては、自動車税や保険代などが固定費としてあげられます。税金を節約することはできませんが、自動車保険に関しては、見直しの余地があるかもしれません。最初の加入時の条件のまま更新をしているケースも見受けられますので、年齢要件や補償内容の見直し、また、保険料は複数の自動車保険会社で比較するなど、再考の余地があります。

生命保険や医療保険について、一人が複数の保険に加入している場合は、補償内容が重複していないか確認し、本当に今その保障が必要かも検証してみましょう。

最後に、コロナ禍のおうち時間に加入したサブスク、利用してないのにそのままになってはいませんか。

固定費といわれるものは、最初に契約したものをそのまま継続している事が多く、口座からその費用の引き落としがされている場合が多いため、支払いの実感が得にくい項目です。しかし、家計を見直すのであれば固定費から、これが最も効果的な方法です。

春は就職や転勤、子どもの就学関係に変化がある時期です。家族構成や生活環境が変わったときは、お金の流れも変わります。家計の見直しを、年1回この時期にルーティン化すると、無駄のない家計管理ができると思います。おススメの方法です。

2022/04/26
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

輸出入通関現場からみた上海ロックダウン

ロックダウン中の上海

「世界最大のコンテナ取扱量がある上海港の機能低下は深刻(中略)上海港の取扱量は通常より40%減少しているとの試算」と2022年4月9日、読売新聞朝刊は報じました。

筆者が通関士として勤める輸入の通関現場では、これまで上海港からの輸入貨物は、貨物を積んだ船が予定より2~3日程度遅れ日本の港へ到着するというような傾向であったのが、4月2週目後半以降に中国から日本へ到着する貨物あたりから、いつもの輸入者のいつもの輸入貨物が上海港ではなく寧波(Ningbo)港から積まれてくるようになり、取扱件数も40%どころか、それ以上減少しています。

中国から原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品におよび輸入し難くなっており、日本から中国への輸出においても、日本で通関、輸出し、上海港まで着いたものの、そこから先どうなるか分からない状況です。

更には2022年1月1日より発効したRCEP(中国はじめ東南アジア諸国等14ヵ国との自由貿易協定)の「原産地証明書」発給も受けられず、原産地証明書なしの輸入申告という現象も生じています。特にRCEPにおいては、中国からの輸入品に関し4月1日より僅かながらも2段階目の関税引下げが行なわれたばかりで、早速その恩恵が受けられなくなってしまっています。

更に円安傾向も手伝い、日本にとって一番の貿易相手国である中国からの輸入品を安く仕入れることができなくなっています。そのことは一部のものにおいて値上がりが続出している昨今、更なる値上がりを引き起こす要因にもなり、まだ値上げをしていない物にまで値上がりを広げることにもなりかねません。

このままでは、一部のもので値上がり続出の日本では、物価を下げる要素が見つかりません。そしてこれらの動向は、日本のくらし、経済に大きなダメージを与えることは間違いありません。中国と貿易している他の国でも同様のことが言えます。ロックダウンしている上海港の機能低下を補うため、上海港に代わって、寧波等他の港や空港から輸出するような傾向がみられますが、その寧波等他の(空)港でも、コロナ感染者が出て増加すれば、いつどうなるか分からない状況です。

国際物流は、工場等から(空)港への、あるいは(空)港から目的地までの運搬、(空)港での荷役(船・航空機、コンテナ、トラックから、あるいは船・航空機、コンテナ、トラックへの貨物の積み下ろし)、(空)港施設での貨物の出し入れ、保管、梱包、通関、そして搬出入や在庫管理、伝票発行の事務処理など、どこが欠けても成り立ちません。

例えば通関業者や港の施設等が機能していて通関、荷役や保管などができても、コンテナを運ぶ運送会社が全て閉鎖されていたら物流はストップします。中国でのコロナ感染が収束するか、あるいは中国の「ゼロコロナ」政策が大きく方向転換されない限り、国際物流の不安定は続くことになります。しかし現状では、どちらも期待できません。そうであれば、すでに早い段階で対策している企業もありますが、中国と貿易を行なっている日本の企業が、輸入しようとするときに中国ではない他の国で調達先を探し、前述の原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品について1日でも早く物流の大幅な見直しをしなければなりません。

その見直しができるかできないかで、日本での生産・製造停止、更には業績悪化、ひどい場合は倒産、そしてますますの物価上昇、私たちのくらしにも大きな影響を与えるか否か決まってきます。

それほど、中国という国が、日本にとって、世界にとって、いまや強大な力を持つ、そして大きな影響を与える大国のひとつとなったということに改めて気付かされずにはいられません。

2022/04/13
くらしと貿易と通関と
Kyō

輸出入と「食の安全」

輸入食品の代表バナナ

輸入した食品を食べたら、病気になってしまったり、ときに命を落としてしまうことになったとしたらどうでしょう?それは誰が考えても嫌ですよね。だから、食品を外国から輸入しようとするとき、なんでもかんでも輸入できるわけではありません。

病気、ましてや命を落とすようなことにならないために、日本では輸入する食品を「食品衛生法」で規制し、出張所を含め各港や空港110ヶ所に検疫所を置き、目を光らせています。

規制の対象は、全ての飲食物、それらに使われる添加物、包装や容器、コップや箸などの器具、乳幼児向けのおもちゃです。これらを輸入するときには、それぞれのものに各々定めた有害物質(鉛やヒ素など)が、定めた試験法によりどのくらい溶け出すのか、どのくらい含まれるのか、溶け出した量などが基準値以下であることを証明する「試験成績書」等を提出のうえ、税関への輸入申告前あるいは輸入申告と同時進行で「食品等輸入届出(略称:食品届)」を検疫所へ行なう必要があります。検疫所は審査、場合によっては検査をし、問題ないと判断すれば「食品等輸入届出済証」を発行します。

本来なら食品届は輸入申告前に行ない、済証が発行されてから輸入申告を行なうのがベストです。というのは、検疫所の審査、検査の結果、有害物質が基準値を超えているということになると、済証は発行されないばかりか輸入できません。税関へ輸入申告してしまっていると、済証が発行されないので税関は輸入を許可せず、その申告は無駄になってしまうからです。

更に「食品届」を行なう前に、穀類、豆類、果物野菜などは病害虫の侵入を防ぐため「植物防疫法」という規制、肉や肉製品は伝染病侵入を防ぐため「家畜伝染病予防法」という規制があり、それぞれ植物防疫所、動物検疫所により審査、検査を受ける必要があります。病害虫、伝染病が発見されれば輸入できません。

こうして輸入に頼らざるを得ない島国・日本の食の安全は守られています。

一方、日本から外国へ食品を輸出しようとするときはどうでしょう。

「食品衛生法」による規制、加えて他の規制もなく税関へ輸出申告することができます。問題は、輸出先である相手国の規制です。日本が輸入するときに「食品衛生法」のような規制を設けているように、相手国でも外国から輸入するときには規制をかけ、食の安全を守っています。

輸出先相手国の規制に基づく求めに応じて、「輸出検疫証明書」、「産地証明書」、「放射性物質検査証明書」などが、輸出先相手国での輸入通関時に必要になります。どんな「証明書」が必要になるかは、相手国や輸出するものによりまちまちです。事前に何が必要か貿易相手等に確認しておかなければなりません。必要な「証明書」が分かったら「地方農政局」等(申請先も事前に調べておく必要あり)へ申請し「証明書」の発行を受け、税関へ提出・提示する必要はありませんが、日本での輸出通関前に用意しておく必要があります。

2011年3月11日の東日本大震災で起きた原発事故により、55の国・地域が、日本から輸出される食品に対し禁輸(輸入禁止)や輸入規制を設けました。およそ11年が経過した2022年2月21日、ようやく近隣国・台湾が福島をはじめ栃木、群馬、茨城、千葉5県の生産・加工食品の禁輸を解除しましたが、韓国、中国、香港、マカオの4ヵ国・地域が禁輸措置、インドネシア、EUなど9ヵ国・地域が条件付き限定規制をいまだに設けています。

11年経っても13の国・地域が禁輸あるいは輸入規制をかけているんです。これらの国・地域へ食品を輸出しようとするときは、「産地証明書」や「放射性物質検査証明書」が必要になります。禁輸といっても、日本の全食品が対象ではなく産地や品目によっては、これら「証明書」があれば輸出が可能です。

日本の食文化のひとつ、日本酒の輸出が好調で伸びています。1日もはやく、日本の「食の安全」が諸外国で認められ、これぞMADE IN JAPANという食品、食文化が世界へ向け発信され広まることを望むばかりです。

2022/04/09
くらしと貿易と通関と
Kyō

会社員の副業と税はどうなってる?

副業の所得税と住民税

コロナ禍は私たちの生活を一変させ、新たな価値観を生み出したように思います。その中のひとつが働き方の多様性ではないでしょうか。多くの方がリモートワークを経験し、オンラインでも会議が可能であることを知り、出社せずとも仕事ができることを体感したと思います。

このような状況下で、副業を始めた、または始めたいと考えている会社員が増えているそうです。パーソナル総合研究所の調査(*)によると副業に意欲的である正社員の割合が40%を超えていることがわかっています。

そこで、今回は会社員の副業と税をテーマにしてみました。

今はネット環境があれば、スキマ時間で誰でも比較的簡単に収入を得られるようになりました。フリマアプリやアフィリエイトからの収入、YouTubeの収益、執筆原稿料など、収入源となるツールは多種多様です。会社員がこのような形態で収入を得る場合も広義では副業にあたります。

所得税法上、所得は10の種類に区分されています。会社から支給される給料は「給与所得」に該当し、会社員が副業で得た収入は多くの場合、「雑所得」に区分されます。

【10の所得区分】
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

給与所得者である会社員の所得税と住民税は、会社が手続きを行っているため、自ら納税手続きをすることはほぼありません。

所得税は、会社が源泉徴収により予め給与から天引きし、年末調整にて徴収額の過不足を整理します。住民税は前年の所得に課税される仕組みで、年末調整後に会社が発行する「給与支払報告書」により市区町村が住民税額を決定します。このような形で、会社員の場合は、給与から天引きで所得税、住民税を払っています。

一方、源泉徴収のない副業収入は、納税の必要があれば自分で確定申告をします。具体的には、副業の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。なお、年間とは、毎年1月1日~12月31日までの期間をいい、20万円は「収入額」ではなく「所得額」です。所得とは、収入から必要経費を引いた金額となります。

つまり、会社員の方は、年末調整により一旦課税関係が終了していても、副業の所得が年間20万円以上あった場合は、確定申告をして所得税の支払いが必要になるわけです。この所謂「20万円ルール」は、副業ワーカーであればご存じの方も多いと思いますが、意外に盲点となっているのは住民税についてです。

確かに副業の所得が20万円以下なら、確定申告不要、つまり所得税はかからないわけですが、これはあくまで所得税のみに適用される規定です。住民税に「20万円ルール」の適用はなく、給与所得以外に副業などの所得がある場合は、その多寡にかかわらず、住民税の申告が必要になります。住民税の申告書は、居住地の市区町村窓口に提出します。

この場合の住民税の支払い方法は2つ。「特別徴収」と「普通徴収」のどちらかを選択します。「特別徴収」は会社の給与から天引き、「普通徴収」は納付書による支払いとなります。

なお、確定申告をする場合には、その情報が自動的に市区町村へ共有されますので、住民税だけを別途申告する必要はありません。

働き方の多様性、将来へのリスクヘッジの観点から、今後、副業や兼業など、収入源を複数確保するという働き方が増えるのではないでしょうか。副業収入に関しての税金の知識を備えておけば、副業を始めるハードルも下がるかもしれません。

今回は、副業の所得税、住民税をテーマにお話しました。税金の種類は国税、地方税、合わせて50種類もあるそうです。通関士時代の私は、税といえば「関税」「酒税」「消費税」の3本立て。「所得税」や「住民税」は給与から天引きされるものという認識しかなかった為、仕組みを考えたことすら無かったかもしれません。
現在の私は複業(あえて複と書きます)ワーカーです。自分事として改めて税について考えています。

今後も税のお話は、折を見て取り上げていきたいと考えています。

(*)参照サイト:パーソナル総合研究所、副業に関する調査結果(個人編)を発表
https://rc.persol-group.co.jp/news/202108131000.html

2022/03/26
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

「RCEP」コロナへの経済ワクチンになるか?!

地域的な包括的経済連携、RCEP

2022年1月1日午前0時。日本にとって20番目、最大、最強、最得のヒト・モノ・カネ・情報の流れを生み出す可能性を秘めた他国との協定スタート!その協定の名はThe Regional Comprehensive Economic Partnership(地域的な包括的経済連携)、その頭文字をとって「RCEP」。
 
まずは中国、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ブルネイ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドと日本の10ヵ国が、同年2月1日からは韓国が、3月18日からはマレーシアが、その後インドネシア、フィリピン、ミャンマー3カ国が参加、全15ヵ国の経済のつながりです。
 
これら15ヵ国の経済圏は、全世界の人口、GDP(国内総生産)、貿易総額(輸出)の約3割の規模です。日本の輸出貿易額の約4割、輸入貿易額の約5割が、他14ヵ国との貿易で成り立っています。ましてや、アメリカを抜き2007年から最大の貿易相手国となった中国、意外にも長い間3番目の貿易相手国をキープしている韓国との初めての経済協定です。それだけ、日本がRCEPの参加国の一員となったことは、日本の貿易、経済、くらしに良い方向で大きな影響を与えることになるでしょう。
 
参加国間では、すぐにも関税をなくすか、あるいは関税率を少しずつ下げ、最長でも21年目に関税をなくすことになります。但し、全てのモノに対し無条件に関税をなくすということではありません。各国とも関税をなくすと、なくしたモノに関しては輸入が増え、安価な為に、その国で作られ売られている同様のモノは売れなくなり、メーカーや販売の会社、個人にとっては、経営、生活が成り立たなくなることにもなりかねません。

そうした事態を避けるため、そうなっては困る一部のモノに関しては、関税をなくす品目から各国交渉して除外します。日本では、米、麦、牛・豚肉、乳製品、さとうきびなどの甘味資源作物の輸入5品目を除外していて、中国からの輸入品に関しては鶏肉加工品、たまねぎ、冷凍ブロッコリーなどの野菜等も除外しています。
 
日本の関税撤廃率(全品目に対する関税をなくす品目の割合)は、輸出83~100%、輸入81~88%です。つまり日本から輸出するモノには関税がなくなるか、かかりにくくなり、日本へ輸入するモノには一部関税をかけ続けられ、日本に有利で日本が最も得をする内容になっています。
 
関税が10%かかる1個1万円のモノを100個、全100万円で輸入するとします。その時、関税は10万円、1個あたり千円となり、輸入通関後、国内の販売価格は、当然、関税10万円を含め上乗せされた価格になります。つまり単純には、私たち消費者は、そのモノを1個買うと関税分千円を支払っているわけです。しかし、そのモノの関税が0になったらどうでしょう。輸入者は10%オフで輸入することができ、私たち消費者も1個買うのに、少なくとも千円安く買うことができます。
 
昨今、牛丼、小麦粉、パン、ジャム、醤油、チーズなどの乳製品、マヨネーズ、ドレッシング、ティッシュペーパーなどなど、値上げをメーカー等々が次々発表しています。
 
その中の一つ、牛丼を例にあげると、材料の牛肉を、日本は輸入に頼っていながらも関税削減・撤廃品から除外しています。更にコロナ感染が原因となり、輸入相手国では生産工場や運送会社の稼働低下、働き手、運転手がいない、少ないことによる品薄、物流ストップなどが起き、追い打ちをかけ、牛肉の値上がりを招いています。
 
こうした新型コロナがもたらした、一部のモノの値上がり、経済の停滞・不調に対して、関税削減・撤廃をもとに「RCEP」が、経済ワクチンとして、どれだけ多くのモノにわたり輸入品の価格を下げ、更には貿易、経済を活発、元気にできるのか、その効果に乞うご期待!!

2022/03/21
くらしと貿易と通関と
Kyō

貿易のクロコ

横浜税関クイーンの塔と横浜港

前回のコラムで「通関」という言葉、そしてその意味、知ってもらえたでしょうか?

「通関」:税「関」へ物を「通」す手続き、税関へ輸出や輸入の申告ができるのは、日本から海外へ物を出す(売る)、または海外から日本へ物を入れる(買う)当事者、つまり輸出者または輸入者である個人や法人(会社)です。

それと、輸出者または輸入者である個人や法人から代理申告を委ねられた通関業者に勤める「通関士」です。

輸出入者である個人が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「個人通関」といい、輸出入者である法人(会社)が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「自社通関」といいます。

輸出入の当事者自らが税関へ申告(申告書作成)できるのであれば、「通関業者」という代理人を立てることなく、通関手続きを行なうことは全く問題ありません。

ときに「通関業者」に勤める人、あるいは通関士であっても、税関へ輸出入申告できるのは「通関業者(通関士)」だけと思いこんでいる人がいますが、それは違います。以前勤めていた名の知られている通関業者の営業所長は、「嘘だろう!」と驚き、その事を知らないばかりか疑っていました。こちらの方が大いに驚きました。

では何故、輸出入者である個人、特に法人(会社)が、直接、税関へ輸出入申告しないのでしょうか?あるいはできないのでしょうか?

それは、税関へ提出する輸出入申告書に記入しなければならない「品目番号」(輸出・輸入する物をコード化したもの、その上6桁はHSコードという)を決めるための知識や技術、輸出入を規制する関税法をはじめとする数々の法令知識などを備えていないからです。

それから、輸出入しようとする物は、コンテナヤードなどの「保税地域」という場所に入れなければならないのですが、その「保税地域」への物の出し入れなどにかかる方法や手続きを知らない、トラックなどの運搬手段を持たないからです。

そこで輸出入者は、専門の知識、技術、手段などを持つ通関業者へ輸出入申告の代理を委ねることになります。そして委ねられた通関業者で税関への輸出入申告を行なうのが、その通関業者に勤める通関士です。

「通関士」とは、通関士試験に合格し、通関業者に勤め、その通関業者が税関へ申請し、通関業務の経験や資質などから通関士の職に就けても問題ないと税関から確認を受けた者をいいます。通関士試験に合格しただけでは「通関士」と名乗ることはできず、名刺などに「通関士」と記載もできません。「通関士有資格者」とすべきです。

全ての物を自給自足することができない島国・日本で、くらしに不可欠なモノは物流、ひいては国際物流に支えられ、今、そこに、あなたのそばにあります。

野菜や果物、飲料水、靴や衣服、洗剤などの生活必需品、プレハブ住宅、家具やインテリア、家電、自動車などなど、いろいろな物が輸入、輸出され、くらしが成り立っています。

その輸入や輸出には、必ず「通関」が行なわれています。

例えば千種類の違う商品を1回で輸入するのなら、通関士は各商品への輸入規制はあるか、規制のもとで輸入できる条件を満たしているか確認、更にひとつひとつの商品をコード化、つまり千の「品目番号」を探し充てがい、輸入申告書を作成します。

普通に作っていたら、たった1件の申告書なのに半日~1日がかりの大仕事です。しかし、そんなに時間をかけられないのが現実です。他にも申告すべきものが山ほどあるからです。

「通関」という言葉と同じく、広く人に知られることなく、表舞台に立つこともなく、コツコツと地道に、時間に追われながらも1件1件の申告書を作り、貿易の主役である輸出入者に代わり税関へ輸出入申告を行なっているのが、貿易のクロコ「通関士」です。

あなたが今調理に使っているイタリア産のオリーブオイル、あなたが今着ている中国産のシャツ。知って下さい、それはどこかの誰か、貿易のクロコ「通関士」が通関したモノに他ならないことを。

2022/03/01
くらしと貿易と通関と
Kyō

今さら聞けない!?リボ払いの仕組み

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今回は少しFPらしいお話をしたいと思います。

今やほとんどの決済がキャッシュレスで可能となり、実際に現金に触れる機会が極端に少なくなりました。先日、ある情報番組で、今の小学生(低学年)にはおつりの概念がないらしいという話をしていました。確かに給料は銀行振込、支払いはクレジットカードやスマホで完結しますので、納得できるところもあります。

キャッシュレスには利便性を感じる反面、お金の実態が見えないだけに、子どものみならず大人も改めて考えてみる必要があると感じました。

スマホ決済やクレジットカード決済は、支払いが後払いという気安さもあり、ついつい使いすぎてしまい後々請求額を見て真っ青になった、という経験をしたことはありませんか。請求額が思いがけず多額となった時に、カード会社のサイトからリボ払いを勧められることがあります。そこで、キャッシュレス時代の今だからこそもう一度リボ払いの仕組みについて整理してみましょう。

そもそもリボ払いとは?
リボルビング払いの略称で、決済金額にかかわらず、毎月の返済額を平準化する返済方法です。返済金額は自分のお財布事情に応じて設定できますので、表面的には使いやすい返済方法として知られています。

しかし、本体代金に対して利息が発生する通常のクレジットの分割払いに対し、リボ払いは前月末の残高に対して利息が発生する仕組みです。

では、リボ払いの利息を具体的な例でシミュレーションしてみましょう。

(具体例)
Sさんは、4月に20万円で家電を購入し、5月には旅行費用として10万円を支払いました。決済にはクレジットカードを使用し、返済額は毎月2万円のリボ払い、5月から返済開始です。

(リボ払い 返済条件)
・年利15%
・毎月返済額 20,000円

返済月 4月 5月 6月
費目 家電 旅行
購入金額 200,000 100,000
リボ払い返済額 20,000 20,000
利息 2,500(a) 3,531(e)
元金 17,500(b) 16,469(f)
月末残高 200,000 282,500(c) 266,031(g)

(a)4月末20万円の残高に対しての利息を計算します。年利15%なので月の利息は1/12です。
200,000x0.15÷12=2,500円 

(b)5月の返済額20,000円の内訳は、2,500円は利息なので、元金の返済額は
20,000-2,500=17,500円  
この時点の残高は200,000ー17,500=182,500円

(c)5月末残高は、(b)に旅行代金10万円が加算されますので、
200,000-17,500+100,000=282,500円

(e)5月末残高282,500円に対して利息がかかります。
282,500x0.15÷12=3,531円

(f)6月の返済額20,000円の内訳は、3,531円は利息なので、元金の返済額は
20,000‐3,531=16,469円

(g)よって、6月末残高
282,500-16,469=266,031円

このように残高に対して利息がかかるために、残高が増え続けることで、元金がなかなか減らないという現象が起こります。結果、延々と返済が続くという魔のループになりかねません。

少し細かい話となってしまいましたが、リボ払いは取っ付きやすいわりに分かりにくい仕組みかと思い、今回解説させて頂きました。

現金派でもキャッシュレス派でも、家計管理の基本は同じです。予算を決めてその範囲でお金を使う。キャッシュレスの場合は請求ベースではなく、支払ベースでお金を管理すれば、遅れてきたカードの請求額に惑わされることもないでしょう。

もはや、キャッシュレスという便利なツールを使わない手はありませんが、使っていいお金の上限額などマイルールを決めて、スマートにキャッシュレス時代を生きていきたいものです。

2022/02/24
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

日本の本当の購買力は?実質実効為替レートとは?

実質実効為替レート:弱る円

為替レート(為替相場)について改めて考えてみました。昨年12月28日付朝日新聞の一面、「弱る円」という記事を読んだことがきっかけです。

外国為替相場(リアルタイムレート)を確認することは、私の毎朝のルーティンです。とはいうものの、最近はスマホを開いて数字をながめるだけで、その実、為替の変動に鈍感になっていました。最近は円安傾向が続いているなとか、今日は昨日より円高に振れている等、何となく思う程度です。

そんな時に目にした「弱る円」の一面見出し。
「日本の購買力は50年前の水準と同等である」という内容。なかなかインパクトのある見出しでしたので、読まれた方もいるかもしれません。

一般的に私たちが為替レートといっているものは、リアルタイムレートや、通関用の週間為替相場や、銀行で円を売買する際に適用するTTB、TTS等ですが、いずれも2種類の通貨を交換するためのレートです。
今日、1ドル=100円だったものが、明日、90円になれば円高、110円になれば円安といわれ、この場合、日本と米国の2つの通貨を比較して、どちらの通貨の価値が高いのか、安いのかを判断しています。

しかし、仮に円が米ドルに対して安い(円安)状態であったとしても、他の主要通貨、例えば、豪ドル、ユーロ、人民元などに対して、必ずしも円安であるとは限りません。

そこで、複数国の通貨をひっくるめて、通貨の国際的な競争力、総合的な実力(価値)を測るための指標が必要となってきます。その指標が「実質実効為替レート」です。

「実質実効為替レート」は、ある一つの通貨と他の複数の通貨とを比較して、相対的に高いのか、低いのかを判断します。数値が高ければ高いほど、その通貨の購買力が強いとされ、低ければ弱いということになります。実質実効為替レートの数値は、貿易相手国との為替レートを貿易額に応じて加重平均し、さらに物価変動を考慮して算出します。

物価変動を考慮するとは、貿易相手国の国内事情を名目上のレートに反映することです。例えば、アメリカで1ドルのジュースを買ったとします。為替レートが1ドル=100円であったなら、100円でジュースが買えたことになります。ところが、アメリカでインフレが起き、ジュースが2ドルになりました。そうなると、100円だったジュースは、日本円にすると200円払わないと買えません。つまり、名目上の為替レートに変動がなくても、実質は円安に振れたのと同じ状況になります。

このように通貨の真の購買力の指標となる「実質実効為替レート」ですが、その日本円の数値が、2021年11月に67.79まで落ち込んだとのこと。これはなんと約50年前(1970年)と同水準だそうです。因みに、日本の購買力が最も強かったのは、1995年の150.85(過去最高値)でした。(図表1参照)

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日本は、食料やエネルギーの多くを輸入に頼っていますので、円の購買力が下がると、段階を経て家計に影響が出てきます。最初に、企業の仕入れコストが上がり、そのコストアップを企業や小売りが吸収しきれなくなると、最終的には、消費者に転嫁されます。実際、昨年は様々な食料品、日用品に値上げの波が押し寄せました。

毎日見ていたリアルタイムレートからではわからなかった事が、実質実効為替レートから見えてきました。

今回は、実質実効為替レートからわかる「円の購買力」についてお伝えしました。
因みに、実質実効為替レートは毎月1回、BIS(国際決済銀行)が公表しています。

参考記事:朝日新聞 2021年12月28日 朝刊

図表出典元:三井住友DSアセットマネジメント
https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2022/01/irepo220113.pdf

2022/02/09
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

通関ということ

箱根の関所は今日の通関

「通関」という言葉、知っていますか?

もちろん、通関業者に勤めている人、商社のような貿易に携わっている人、輸出入を行っているメーカーや仕入れ・販売の会社に勤めている人は知っていることでしょう。しかし、これから輸出入を始めようとする人、ましてやその他の一般の人たちには、「通関」という言葉は、「それって何?」と思わず口にしてしまう馴染みのうすい、耳慣れない言葉でしょう。

昔の話ですが、とある通関業者へ就職し念願の通関士になって間もなく、倉庫の作業員の人から「税関士」と言われショックを受けたのを覚えています。実際、「通関」という言葉は、新聞などで貿易に関する報道があったときに、貿易の額や量の数字を示しているところに「通関ベース」などと、ひっそりとその言葉が添えられている程度です。ややもすると見逃してしまいます。

因みに「通関ベース」とは、通関業者などが税関へ輸入または輸出申告した申告価格や数量のデータを元にしているという意味で、それらのデータを財務省・関税局というところが輸出入別、国別、月別、年別にまとめ統計をとっています。

今となっては歴史上の言葉「関所」。その代表として箱根関所はとても有名ですね。街道の要所や国境に置かれ通行する人や荷物を調べ、通行料(税)をとり、江戸時代には「入鉄砲に出女」と言われたように、武器や幕府への反乱をふせぎ幕府を守るため人質として住まわせた西国大名の妻子が江戸から出ることを取り締まっていました。

「関所」と呼ばれる場所は現在ではなくなったものの、人が口に入れるもの・食の関所「検疫所」、ペットや畜産物、水産物の動物の関所「動物検疫所」、植物の関所「植物防疫所」という人や動植物、そしてそれらを含めた環境に有害な物質、病気や害虫などが海外から日本に入らないよう、日本から海外へ出ないよう、常に目を光らせ取り締まっている、「関所」という名前こそついてないですが、現代の関所があります。

そして、海外から物が入るとき「関税」をとり(実際には徴収されない物もありますが)、「黒いもの」(拳銃など)や「白いもの」(大麻、覚せい剤など)が海外から日本へ入らないよう、日本から海外へ出ないよう、関税など「税」を徴収し、武器などを取り締まる「関」所である「税関」があります。まさに「税関」は、江戸時代の「関所」のようです。

こうして、人や物が、海外から日本へ入るとき、日本から海外へ出るとき、通るのが現代の「関所」の役割をはたす税関です。

平たく言えば、人や物が税「関」を「通」る、人や物を税「関」に「通」すことが「通関」ということです。

海外旅行へ行くとき、海外旅行から帰ってきたとき、空港で税関に荷物チェック、ときにボディチェックを受け、「何か申告するものはありますか?」、「いいえ、ありません。」などとのやり取り、実はそれも「通関」です。しかし、ほとんどの人は、そうとは思っていないことでしょう。

海外から日本へ、日本から海外へ、物を入れ、物を出すときに税関へ輸入や輸出の申告をして、税関の審査や検査を経て(輸入のときは必要な関税や消費税などを支払い)、税関から許可を受けるまでを「通関」といいます。

今、あなたが飲んでいるビール、着ている服、乗っている自動車、外国製だったら、必ず「通関」されています。くらしに必要な物がそろい、安全にくらしていけるのも、検疫所などと合わせ「税関」という関所があって、そこで働く人たちが真剣に取り締まってくれているおかげです。そう思えば、海外旅行のとき空港で列をなして待たされるのも仕方ないと思いませんか?

2022/01/26
くらしと貿易と通関と
Kyō

結局、通関士資格は役に立っているのか?

ファインシャルプランナーのアドバス

私が通関士の資格を取得したのは約30年前です。まだNACCSの導入前であった為、通関書類をかかえて税関へ通う毎日。メールもインターネットも無い時代でしたので、フォワーダーや荷主との連絡はもっぱら電話とFAXという超アナログでの仕事ぶりでした。

貿易業界には6年半在籍し、そのうち通関士として通関業務に携わったのは2年程、最後の1年はNACCS導入時期と重なり、使い方の研修を受けたことを覚えています。一所懸命勉強して資格を取りましたが、通関士として仕事をした期間は長くはありません。

では、「通関士の資格は無駄となってしまったのか?」という本題に対する答えですが、決して無駄ではありませんでした。むしろ資格があったからこそ今があると思っています。

出産を機に一旦仕事を離れてから1年半後、次に就いた仕事は、総合電機メーカーでの輸出に関わる仕事です。通関士資格が必須の業務内容ではありませんでしたが、資格を保有していたことが採用の決め手となりました。

新しい職場は、25年前には既に現在のようなデジタル社会を見据えたモノ創りをしていた誰もが知っている企業でした。当時の私は、コンピューターといえば、オフコン(オフィスコンピューター)しか使用した経験がなかった為、いきなり未知の世界に放り込まれた気がして、たった1年半のブランクが10年位のブランクに感じられたものです。

そこでの9年間の経験はとても有意義なものでした。物事を俯瞰で見た効率的な仕事の進め方、数十年後の社会を鑑みた業務改革、また、何よりOJTにより英語力を鍛えられたことなど、私の職業人生において大きな財産となりました。

その後は、銀行でテラー、培った英語力を活かして自動車メーカーで海外法規事務など、その時々のライフスタイルに合わせて様々な仕事を経験することになります。前職が次の仕事へ、またその次の仕事へと繋がっていきました。

紆余曲折ありながら、現在はファイナンシャルプランナーとして、フリーランスで仕事をしています。FPを目指したのは、幾度かの転職により社会保険制度や税の仕組みに興味を持つようになったこと、仕事をしながら子育て、介護を経験する中で、お金に関する様々な制度の存在を知ったことなどが大きな要因です。

仕事や人生の節目には、金銭的な課題がついて回ることを、身を持って経験しました。知識がないことで不利益を被ることを実感したことも、自分の中で忘れかけていた知識欲に火を付けるきっかけになったかもしれません。こう順を追っていくと、通関士資格があったからこそ今に繋がっていると感じます。

FP資格を取るための久しぶりの勉強は、最初は硬くなった頭をほぐすことから始めなくてはなりませんでしたが、30年前に通関士資格を取得したという自信が、もう一度チャレンジするモチベーションになりました。

FPと通関士、一見何の関連性もない資格のように思えますが、私の中では繋がっています。何より、こちらのサイトでコラムを書かせていただけることがその証明のような気がしています。

今回は、通関士からFPへ転身した経緯を、自己紹介を兼ねて書かせていただきました。次回からは、FPとして、貿易業界で働く皆さんのために、様々なお役立ち情報をお伝えできればと考えています。

2022/1/14
山﨑裕佳子 元通関士・現FPのあれこれ話

貿易業務におけるテレワーク

テレワークで貿易業務を行う

世の中が「コロナ禍」と言われ始めた頃には新鮮に感じた「テレワーク」や「在宅勤務」といった言葉もすっかりおなじみとなりました。

私が会社勤めをしていたころには在宅勤務とは育児や介護で出社の難しい社員の為に設けられているような制度というイメージでしたが、現在では、社員の健康を守り感染拡大を予防もする、無くてはならないというか企業にとっては当たり前の制度となっています。このこと一つを取ってみても、世の中というのは何がどうなるのか先のことは全くわからないものだなぁと改めて感じます。

そんな、もはや世間の定番となったテレワークですが、貿易関連ではどのようにテレワークが行われているのでしょうか。私が現在お仕事で関わらせていただいている某フォワーダーでは、海上輸送における「shipping instruction」(以下、S/I)の作成をテレワークにて行っています。

S/IはBLやWaybillに記載される情報のベースとなる書類です。一般的にはフォワーダーが作成し、決まった様式はないものの主要項目はほぼ共通しており、どのフォワーダーも同じような書式で船社に提出しています。記載される項目は輸出入者名や船名、コンテナ本数など決まった項目が大半を占めていますので、bookingの際のコンファメーション書類などを見れば割と難なく作成できる書類です。そのため、システムをネットワークで繋ぎ、自宅でテレワークをしている従業員が送付されてきた書類の内容を確認してシステム上でS/Iを作成し、船社へ送付するという流れでスムーズに作業が進んでいるようです。

他には、船社へのBooking申請も、テレワークで作業しやすい業務内容であると思います。コンテナを予約する際には、希望する船社へ、希望する船名やコンテナ本数、輸出入者名やコンテナピックアップ日時などを連絡します。一昔前はFAXや電話、メールなどが主流でありましたが現在はほとんどの船社でインターネットによるBooking申請を受け付けています。IDとパスワードさえあれば各船社のホームページから予約できる場合が多く、テレワークでも何ら問題なく作業ができるでしょう。

これら以外にも考えてみますと、事務系作業ではコンテナのピックアップオーダー(港からいつコンテナを引っ張るかの予約)やトレース作業(船が現在どこにいるかの確認)、顧客対応系作業では発行されたB/Lのデータでの送付や現地へのシッピングアドバイス(どういう貨物がどの船でいつ到着するかの連絡)送付など、色々な作業が貿易業務においてもテレワークで出来ると思います。

元々が紙ベースで進められることの多い作業ですので、紙データを電子化することさえできれば、貿易業務は非常にテレワークと相性がよいと言えるのではないでしょうか。

2021/11/12
輸出入よもやま話一覧

日本のアイスクリーム、輸出が絶好調

日本のアイスクリーム輸出

この10年くらいで、日本のアイスクリームの輸出が絶好調とのことです。2020年はなんと輸出の金額も数量もどちらも過去最高を更新したそうです。2021年の上半期も前年同期を約四割上回ったそうですので、もしかしたら2021年は最高記録がまた更新される結果となるかもしれません。

アイスクリームの輸出が伸びていることの一つには、昨今の世界的な和食ブームがあります。2013年に和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に選ばれて以来、世界中で日本食がブームとなっているのです。特に、抹茶や小豆といった和の素材を使った商品が人気になりやすいようです。

アイスクリームには抹茶味や小豆入りなどの種類が数多く見られますので、外国の方の興味を引きやすいと思われます。今年は東京オリンピック・パラリンピックも開催されて日本食がさらに注目を浴びていましたね。オリンピック開催中に、外国の記者の方がコンビニアイスを食べてあまりの美味しさにSNSで絶賛していたことも話題になりました。より一層、日本のアイスクリームに注目が集まっていること間違いなしです。

そんな世界的な和食ブームに加えまして、日本からの輸出品に課される関税の削減が実現してきたことも要因の一つと考えられています。2018年8月に発行した環太平洋連携協定(TPP)では、アイスクリームや氷菓の関税がオーストラリアで即時撤廃されました。2021年1月発行の日米貿易協定でも、2024年までに20%から10%への引き下げが決まっているそうで、こうした背景によりアイスクリームの輸出は右肩上がりに伸びていくと予想されています。

アイスクリームを製造する各メーカーも、海外事業を本格化させたり、現地生産に乗り出したりと、海外市場の開拓を加速させているそうです。これからますます日本のアイスクリームが世界中に広まっていくことがとても楽しみです。

さてそんなアイスクリームですが輸出される際の統計品目番号は2105.00に分類されます。こちらには、ミルク又はクリームをもととして調整されたアイスクリーム及びその他の氷菓(シャーベット、アイスキャンディー等)が含まれます。

輸入統計品目表/関税率表
https://www.customs.go.jp/tariff/2020_4/data/j_21.htm

輸送にはもちろんリーファーコンテナが使われます。冷凍輸送が可能なコンテナを用いて決して溶けないように輸送されます。輸送中だけではなく港での保管中にも冷凍させておかなければならないので、冷凍倉庫のある港に搬入しなければなりません。

したがってアイスクリームの輸出は主要港からされることがほとんどです。倉庫からコンテナに移動される際にはコンテナが既に冷えている必要がありますのでコンテナ内部のプリクール(予冷)も必要となります。もちろん、そのコンテナを輸送するドレー車両も、MGシャーシと呼ばれる、発電機付きの車両を用意しなければなりません。

アイスクリームの輸出にはかなりの費用と手間がかかっています。世界中のどこでも日本のアイスクリームが同じ品質で食べられるのは、フォワーダーの努力があってこそと言えるかもしれませんね。

参考記事:
中日新聞 「あずき、大福…和製アイスが熱い和食ブームで輸出右肩上がり」
https://www.chunichi.co.jp/article/320843

2021/10/11
輸出入よもやま話一覧

税関検査となることは事前に分かる?

税関検査となりました

輸出入をされている方なら一度は言われたことがあるのが「こちらの貨物、申告しましたところ税関検査となってしまいました」というフォワーダーからのお知らせかと思います。

税関検査となったため、
・「納入がさらに1日遅れる」
・「船が一本後ろになってしまう」
・「検査料と立会い料で〇万円が追加で発生します」
など言われ、悲鳴を上げられたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

フォワーダーの立場として上記のようなことを輸出入者に伝えた際に時々言われるのが「税関検査になるかどうかって事前にわからないのですか?わかれば前もって日程に余裕を見ておけますし、料金の心構えもできるのですけど」ということです。結論から言えば事前に100%の確率でわかることはまずありません。その申告をした通関士も、実際に輸出(輸入)の申告を税関にかけてみて初めて、その結果が分かるのです。

どのように分かるのかというと、現在はほとんど全ての申告がNACCSにて行われていますので、NACCSから税関へ申告をかけると自動的に申告結果がフォワーダーのNACCSへ即時で返ってくるようになっています。そちらの結果が「区分1」となっており輸出(輸入)許可書が同時に届いていれば、書類審査も検査もなく許可が下りたということです。「区分2」となっていれば、税関職員による書類審査を受けなければならないので、NACCSを通して税関へ、申告に関連する書類(BLやインボイスなど)を提出することとなります。そして「区分3」となっていますと、税関検査になる可能性があるということです。

なぜ「検査になる可能性」なのかというと、この段階ではまだ100%で税関が検査をするということが決定していないのです。実はこの後に、取りやめになる可能性も十分にあります。ですので区分3となったらまずは区分2の書類審査と同様に、税関へ申告関連書類を提出します。そこから税関職員が書類内容をチェックし、必要であれば通関士や輸出入者へ聞き取り調査をし、やはり実物を見て検査をしなければならないと判断されると、そこで初めて税関検査となることが決定するのです。

逆に言えば、区分3となったとしても、書類をチェックした結果、税関検査の必要がないと認められれば検査は省略され、許可がおります。検査取り止め通知書と許可書がNACCSへと届けられます。これは通関業者にとっても喜ばしい瞬間です。

さらに逆を言えば、区分2となり書類審査のみで終わるはずだったのに、税関検査になってしまったということも往々にしてあります。書類審査の結果として税関検査が必要だと判断されれば区分2から区分3へと切り替わり、検査通知書が送付されてしまうのです。なので通関業者は区分2や区分3となった申告がある場合には、ずっと気がかりでモヤモヤとして、何度も何度もNACCSを確かめるという羽目に陥ることがしばしばあります。

税関検査とはこんな流れで税関より通知されるものですので、どの申告がどのタイミングで検査となるかは、通関業者には決して事前にわかることのないものだということがお分かりいただけたかと思います。

2021/09/26
輸出入よもやま話一覧

通関士の独立開業は現実的か?

通関士とは

通関士は「貿易に関する唯一の国家資格」と言われており、国際貿易の活発化と昨今の資格ブームの中で、老若男女問わず取得の人気が高まっている資格と言えます。しかしながら、そういった貿易や通関などに興味を持って調べた方でもない限り、「通関士」という資格は士業(「士(し)」と付く職業、つまり弁護士や公認会計士など)の中でも一般的な認知度は低いのではないかと思います。

それはなぜかと考えてみますと、理由の一つに、独立開業して仕事をする種類の資格ではないことがあげられます。例えば「山田太郎弁護士事務所」や「高橋税理士事務所」なんて事務所の名前は日本中どの地域に暮らしていても多少は見聞きするものですが、「鈴木花子通関士事務所」などは今まで生きてきた中で一度も聞いたことがないでしょう。通関士は、士業のなかでも、独立開業が非現実的な資格なのです。弁護士や税理士など知名度の高い資格に比べて、日常生活の中で見聞きする機会が圧倒的に少ないのです。

さらになぜ、独立開業が非現実的と考えてみますと、通関士という資格は保有しているだけで効力があるものではないことが理由と考えられます。通関業の許可を受けた企業に所属し、そこで「登録通関士」として税関に届出をして初めて通関士と名乗ることができ、通関士としての業務もできるようになるのです。

例えば私は確かに通関士試験に合格し資格を保有しておりますが、現在は企業に属しておらず通関士として税関に登録もされておりませんので、自分のことを「通関士です」と名乗ることはできません。もちろん通関士としての業務をすることもできません。もっと細かいことを言えば名刺に「通関士」と肩書をつけることも許されません。

どうしても通関士の資格を保有していることを名刺に記載したいのであれば、「通関士有資格者」や「元通関士」などとするしかないのです。(個人的意見ですが、「元通関士」というのは、何か悪いことをして通関士資格をはく奪されてしまった雰囲気がありますので、むしろ記載しない方が良いのではと思っています)。

それでももちろん、自分で通関業の会社を立ち上げ、そこで通関業の許可を通り、自らが通関士となって通関業務を行うことは禁止されてなどいません。実際、直接の知人ではないですが、そのように個人で許可を得て独立した通関士として営業されている方も存じ上げています。ただ、通関業の許可を得るためには厳しい条件をクリアしなければなりません。特に「経営の基盤が確実であること」という条件は個人事業主としてはかなり難しいものであるでしょう。

以前にもコラムで書かせていただきました通り、輸入通関では高額な関税消費税の立替が避けられません。そのような立替が発生したときに支払うことができず輸入が遅れるなどして輸入者が損害を被ることのないよう、十分な資金を保有していないことにはまず許可は下りないと考えられます。

こうして書いてみると、通関士とはせっかく頑張って取得しても独立開業もできず何だか夢のない国家資格のように思えてしまいますが決してそんなことを言いたいのではありません。通関業の許可を得るためには然るべき人数の通関士を有していることが必須ですし、それぞれの営業所にも必ず通関士を配置しなければならないことになっています。

これからの国際社会には必要不可欠な資格です。ぜひたくさんの方に通関士を目指していただき、日本の貿易を支えていただきたいと考えています。

2021/09/01
輸出入よもやま話一覧

同じ「SENDAI」でも大きな違い!

正しいSendaiはこちら

先日のネットニュースでとても興味深い記事を読みました。

米東部メーン州のポートランドでギョーザ販売店を営む夫婦が、中国からギョーザ製造機を取り寄せたところ、注文後のメールで届け先が約4,000キロも離れた西部オレゴン州のポートランドとなっていることに気付いたとのことです。

ご夫婦は通関代理店に連絡し、製造機を後日無事に受け取ることができたそうです。港の名前が同じ「ポートランド(Portland)」であったことから起きてしまった間違いなのですが、実は私も日本国内で同じような事態に遭遇したことがあるのです。

もう10年ほど前になるある日、某家具メーカーの輸入者より、「ヨーロッパから家具を輸入しますが納入先が仙台のお客様なので仙台港に着けます」とご依頼がありました。なるほど仙台か、東北の代理店に手配をお願いしなくてはと考え、東北へ連絡を取り納入日など確認して準備万端に到着を待っておりました。

間もなく日本へ到着という頃、輸入者よりアライバルノーティス(以下A/N)を入手したと連絡があり転送いただいたのですが、そのA/Nが東北ではなく九州の船舶代理店から発行されたものでした。あれ、東北に到着するはずなのにおかしいなと違和感を抱き、とりあえずA/Nに記載されている電話番号に電話をかけて問合せをしてみました。するとオペレーターさんから驚くようなことを言われたのです。

「はい、こちらのコンテナ、確かにセンダイ港に到着ですが、お客様が仰っている宮城県の『仙台(せんだい)』港ではなく、鹿児島県の『川内(せんだい)』港に到着となっております」。なんと、同じ「せんだい(SENDAI)」読みだったために、輸出者が間違って鹿児島の川内港行きの船に乗せてしまっていたのです!

私たちにとっては幸い(?)なことに、そのコンテナはCIF契約であり日本到着までの責任は輸出者側にありましたので手配ミスを責められることこそなかったものの、鹿児島県に到着してしまった貨物を宮城県へ運ぶという大仕事の対応が必要となりました。

海上輸送は叶わなかったので陸揚げし、数日かけてドレージ車両にて運送したのですが、高額なドレージ費用が余計にかかることになったのは言うまでもありません(もちろん、輸出者の負担となりましたが)。何とか無事に納入できたものの、輸入者にも輸出者にもフォワーダーにも、かなりの手間と負担がかかってしまいました。

アメリカのポートランド間ほどの距離ではないものの、この「せんだい」間の距離も1,700キロほどあり、軽微なミスはとても言えないものです。どうすれば防ぐことができたかと言えば、やはり輸出者側で、不慣れな場所への到着や納入をリクエストされたら、一度地図上で住所や港の位置を確認するべきだったかと思います。自分がブッキングをした川内港の位置と、輸入者が指示する仙台市内の住所をネットの地図で調べれば、それらがあまりにかけ離れていることは一目瞭然に判明したでしょう。

長年貿易業務に携わっておりますが、ほんのちょっとした気の緩みや見落としで、大きなミスにつながってしまうことが往々にしてあります。冒頭のポートランド誤りのニュースを読んでこの川内(仙台)誤りのことを思い出し、どこで落とし穴が待ち受けているかわからないので今後も気を引き締めて業務を遂行しようと、改めて思いました。

参考記事:
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210706/for2107060006-n1.html

2021/08/05
輸出入よもやま話一覧

女性通関士支援事業って何?

PCを使って在宅勤務

日本通関業連合会では現在、「女性通関士支援事業」という取り組みが行われていることを前回のコラムでお話させていただきました。それでは、具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。

最近ではコロナ禍のために開催が見送られていることもあると思いますが、連合会では定期的に「全国女性通関士会議」という場が設けられています。全国から女性通関士が数十名参加し、通関業連合会の会長などと意見交換や討議が行われているそうです。私も現役通関士だったらぜひ参加してみたいものです。

その会議の中では例えば通関士の「働き方改革」について話合われています。人材不足や荷主ファースト主義、このコラムでも以前にお話しました慢性的なドレージ不足により長時間労働が通関業界でも発生してしまっており、これが女性通関士の活躍を妨げる要因の一つとなっています。

その是正に向けて、データをシステム化する、休みやすい状況を整える、フレックスタイム制や在宅勤務制度を整えるといった対策の意見交換を女性通関士同士でされています。

会議の終了後には、懇親会も開催されています。関税局の方も参加され、リラックスモードで関税局、通関業連合会、女性通関士の方々が懇親を深めているようです。同じ通関士と言っても他社の通関士とはなかなか交流を持つ機会もありません。

管理職になれば税関などを交えた保税地域での会議などに出席することもありますが前回述べましたように管理職をしている女性通関士はまだまだ少ないので、そういった会議に出席されている女性通関士も少ないことでしょう。ですのでこのような懇親の場が女性通関士の為に用意されているのはとても喜ばしいことだと思います。

そのような場での交流が刺激となり、最近では女性通関士のネットワークの構築や女性の会の設置が行われたり、連合会ではSNSが立ち上げられたりと、成果も出ているとのことです。男性目線だけでは浮かばなかったアイデアが女性通関士の活発な交流のおかげで生み出されたということでしょう。

会議の中で取り上げられたテーマとして、私が注目したいのは在宅勤務の導入についてです。在宅勤務が通関業界でもっと広まれば、家庭との両立も今以上に容易となり、女性通関士の活躍の場も増えることでしょう。申告まで在宅で行うとセキュリティの問題が出てくるといった課題や障害は山積みですが、まずは、申告までの業務を在宅でもできるように環境を整えることから始め、最終的には在宅勤務用に切り分けられた仕事をするのではなく会社でしているいつもの通関業務を在宅でできるようになれば理想的です。

実際、在宅によるリモートワーク専任の通関士を契約社員として採用を始めた会社もあると聞きます。このような動きが活発になれば、育児や介護などで一線を退いてしまった元女性通関士の人たちも、また以前のように登録通関士として輝けることができると思います。

いつの日か、名実ともに女性通関士が男性と同等に活躍している通関業界が実現される日を心から楽しみにしています。そのためにはこれからも、通関業連合会が主体となっての「女性通関士支援事業」をぜひとも継続していただきたいです。

参考記事:
http://www.tsukangyo.or.jp/files/NO154.pdf

関連記事:女性通関士、どれくらい活躍している?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/boueki_jitsumu_jirei/2021-06-29

2021/07/25
輸出入よもやま話一覧

女性通関士、どれくらい活躍している?

マウスを操作する女性通関

日本通関業連合会では現在、「女性通関士支援事業」という取り組みが行われています。女性通関士の活躍と登用を促進するとともに、優秀な人材を毎年採用し、キャリアアップをあきらめることなく活躍できる業界にしていくということを目標としています。

通関業界では、従業員に占める女性の割合が増えて来ていると言われています。確かに、私が就職活動をしていた20年近く前は、まだまだ通関(物流)業界は男社会というイメージが強く、「物流会社に就職することにしたよ」と報告した友人に「え!あんな男社会の会社に飛び込んで働くの!?」驚かれたことを覚えています。今では信じられないことですが女性は一般職でしか採用しないと明言していた物流会社も数多くありました。

それから20年近くが過ぎた現在、物流会社や通関業界に対する男社会のイメージはかなり薄れて来ていると感じます。もちろん日本全体においてそういった男女差別的な職場をなくそうとしている動きがある事の影響も大きいですが、昨今の資格ブームの中で、「通関士」というどこかインテリジェンスを感じさせる名前の国家資格に惹かれて取得を目指す女性も多いのでしょう。

では現場では実際にどれくらいの女性が活躍しているのでしょうか。私の経験を元にしますと、通関部署の中で、女性の占める割合は50%くらいでした。その女性のうち半数位が派遣社員であり、その中で通関士の資格を取得している方はさらに半数位といった割合です。

社員は基本的に社内で通関士を取得している人が配属されることが多いですし、取得していない社員は仕事の合間に勉強をして1年~2年の内に合格することがほとんどでしたので、ほぼ全員の社員が通関士資格を取得しているという状況でした。

と、人数の割合だけで見ますと女性通関士が男性通関士と同等に仕事をしているように思えますが、実際はそれほど同等とは見えませんでした。なぜならいわゆる「管理職」という立場の通関士は全員が男性だったからです。

なぜ女性通関士かつ管理職という立場の人がいなかったか、それはやはり職場環境にあったと思います。通関部署は水商売とよく言われますが理由は自分たちで仕事の量をコントロールできないことにあります。その日に通関しなければならない書類は何時になろうと仕上げなければなりません。

今日が暇だからと言って明日は忙しくなるとは限らず、逆に今日は目が回る忙しさなのに翌日は余裕たっぷり、なんてこともざらにあります。その、仕事量の読めなさゆえに、管理職という立場になると家庭との両立が難しいという現実があるのでしょう。

また、検査の立会いなど力仕事的な業務も多いですし、管理職ともなれば何かあった際に税関への謝罪なども対応しなければならないといったことが、家庭との両立を目指す妨げになっていたと思います。

ですので、通関業連合会という大きな組織が主体となって女性通関士の支援に積極的に動いていただけることは、元女性通関士の一人としてとても喜ばしいことです。具体的にどのような支援があるのか、また別の機会にお話できたらと思います。

参考記事:
https://www.fujibuturyu.co.jp/headlines/210301/03.html

2021/06/29
輸出入よもやま話一覧

関税消費税の立替はフォワーダーには負担大

フォワーダーにとっては資金繰りの悪化

前回のコラムで、輸入者自身で関税消費税を直接支払う方法は多少の手間がかかるためか、フォワーダーに立替を依頼することが現在でも主流です。しかしながら、多くの顧客の関税消費税を立て替えることはフォワーダーにとっては大きな負担とリスクになることをお話いたしました。

それでは実際、フォワーダーにとってどれほどの負担になっているのか、具体的に考えてみましょう。程度の差はありますが輸入通関というのは週明けの月曜日が最も件数が多くなる傾向にあります。週末の土日に到着した貨物はメーカーや工場が休みで納入できないため、週の明けた月曜日に通関して納入することが多いからです。

ここからは私の経験を元にしたお話となります。以前、某国際物流会社のとある空港支店にて航空輸入通関を通関士として担当しておりました。当時は通常の土日明けは300件近く、3連休となり稼働が火曜日となると400件以上の輸入通関をするのが通常でした。

航空輸送されるものは物量では海上輸送と比べてかなり少なくなりますが、迅速な輸送ができるという利点から高価な貨物を運ばれることも多く(PC関連機器、精密機械、航空機部品など)必然的にインボイス価格も高くなり、税関に収める関税や消費税も高額となります。

1日での立替金額が1000万円を超えることも全く珍しくありませんでした。一箇所の支店だけでそれだけの金額を立て替えているのですから、全社で考えると1日で1億円近くの金額を輸入者の代理として支払っていたと言っても過言ではないでしょう。たった1日でこの金額ですので、1週間、1ヶ月と期間を延ばして考えるとその額は途方もないものとなります。

これだけの金額を立て替えるというのはどんなに大きい会社であってもキャッシュフロー的には悪くなります。そしてもちろんリスクもあります。輸入通関して貨物を引き渡した後に輸入者の資金繰りが悪化して倒産となり、輸入通関料などはもちろん高額の立替金も回収不能となった、などという事態が起こり得るからです。実際、私が勤めていた頃にも、年に一度くらいはこういった回収不能問題が発生していました。

当然、通関業者側も対策はしています。
・取引実績がなく支払いに不安のある輸入者には先にざっと見積もった立替金額の請求書を発行して入金の確認が取れてから通関をかけたり
・取引先の信用状況をこまめにチェックして立て替えられる金額の上限を定めたり
・できる限り輸入者自身でのリアルタイム口座の開設や納期限延長制度の使用を検討していただいたり

など、色々な方法で関税消費税の立替金未収リスクを減らすよう努力しています。

しかしながら通関業者も一企業ですので、顧客から「面倒だからそちらで立て替えて下さい。他の通関業者さんは何も言わずに立て替えてくれていますよ」なんて言われたら断りにくいものです。通関業者の努力だけではままならない部分も多々あります。

ですので前回のコラムでもチラッと出ましたが、クレジットカードなどで簡単に支払えたり、面倒な手続きなく顧客の口座から引き落としたりできるような輸入通関システムが開発されたらいいのにな、と元輸入通関士の立場からは思っています。もちろん、安全安心に使え悪用されないシステムであることが前提ではありますが。

2021/06/16
輸出入よもやま話一覧

関税消費税をどのように支払うか?

関税消費税の支払い方法

輸出入のアドバイザーのようなお仕事をしている関係上、フォワーダーを通しての本格的な輸入をするのが初めてだという方とお話をさせていただく機会も度々あります。

輸入者さんのニーズに合わせてフォワーダーを選定し、場合によってはその後の実務的な作業も代行しています。実際に輸入実務が始まった際に必ず決めなければならないことの一つが「関税消費税はどのように支払うか」です。

こちらをストレートに輸入者さんにお聞きすると「じゃあクレジットカードで払いますね!」と答えられることがあります。クレジットカードで支払いできたら確かに便利ですよね、と思いつつ

「申し訳ございません、関税消費税はカード払いができず、銀行からの引き落としがメインでして。。。」と説明を始めると「だったらこちらの銀行口座を教えますのでそちらから引き落として下さい!」なんて回答をいただくこともしばしばあります。

そうですよね、簡単に自分の口座から引き落としてもらえればとても楽ですよね、と激しく同意をしつつも「いえ、引き落としができるのは税関にあらかじめ申請をしてある口座のみであり、申請完了までは2~3週間かかりまして。。。」

とお話しますと「それではどうしたらいいんですか!?」と困惑の面持ちで尋ねられますので「一般的にはフォワーダーの口座から一旦引き落としてもらって立替してもらい、後日、通関料などと一緒にお支払いする流れとなります。」とご説明し、納得していただけることが多々あります。

確かに、税関への関税消費税の支払い方法は、普段輸入者をされていない方にとってはピンと来ない事柄かと思います。基本的には先ほども申し上げましたように、予め税関へ申請してある銀行口座、いわゆる『リアルタイム口座』からの引き落としとなります。この申請には手間はもちろん、2~3週間と時間もかかるためか、リアルタイム口座を保有されている輸入者さんは個人も企業も含めてそれほど多くなく、ほとんどがフォワーダーのリアルタイム口座から引き落としとなっている印象です。

他の納税方法として納期限の延長、いわゆる『延納』もあります。個別や包括など色々な種類がありますが基本的には輸入者があらかじめ税関に対して税額に相当する担保を提供したときにその納期限の延長が認められる制度です。

これはリアルタイム口座の解説よりもさらに手間がかかりますし包括の納期限延長になりますとかなりの額の担保を提供しなければならないので、利用されている輸入者さんは限られています。担保の提供に耐えうる資本をもつ、大企業さんが多いイメージです。

このように輸入者自身で関税消費税を直接支払う方法は多少の手間がかかるためか、フォワーダーに立替を依頼することが現在でも主流の流れとなっています。しかしながら、多くの顧客の関税消費税を立て替えることはフォワーダーにとっては大きな負担とリスクになります。

冒頭の話に戻りますが、関税消費税をクレジットカードなどでサッと払え、且つ安心して利用できるシステムがあれば、輸入者にとってもフォワーダーにとってもメリットがあるのかもしれません。

参考サイト:リアルタイム口座
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/mpn/mpn_direct.htm

2021/06/06
輸出入よもやま話一覧

深刻な海上コンテナ不足。解決の手立ては?

不足している海上輸送用コンテナ

前回のコラムでは、新型コロナウィルスの影響もあり、昨今では世界中で海上輸送コンテナ不足が叫ばれていることを述べさせていただきました。

コンテナが不足すると、輸送に遅れが生じてしまうだけではなく、コンテナ運賃の上昇につながりかねません。結果、上昇した海上運賃が商品の価格に転嫁される可能性も十分にあり、私たちの生活にも密接に関係している問題です。そんな、世界経済にも影響を与え得るコンテナ不足ですが、解決する手立てはないのでしょうか。

コンテナ不足の解消方法として、まず思いついたのが「コンテナが足りないのであれば作ればよいのでは?」ということです。足りない分を増やせば当然ですが需要は満たされます。しかし調べてみると簡単なことではないようです。

海上輸送コンテナは、現状では9割が中国で製造されています。その中国では、現在のように新型コロナウィルスによる国際輸送量の増加が起こる前は、米中貿易摩擦の影響で輸送量は逆に減少していたそうなのです。それにより中国のコンテナメーカーはコンテナ生産を大幅に減らしていたようで、結果として新しいコンテナが思うように増えていないのです。かといって今、増産体制が取られているということもなく、こういった突発的な需要によるコンテナ不足がいつまで続くかわからないという中、生産を大きく増やす計画はない見通しのようです。

一方で、明るい兆しはあります。ベトナムの大手鉄鋼会社が、コンテナの需給ひっ迫に対応するため、2022年夏にコンテナの生産を始める計画と立てているとのことです。計画が実現すれば、コンテナ不足解消の大きな一歩となるでしょう。

それでもコンテナ増産までにはまだまだ年月がかかります。それまでにできることを考えてみますと、海上輸送がダメなら航空輸送に切り替えればよいのでは?ということも思いつきます。しかし、航空輸送も、新型コロナウィルスにより海外旅行客が激減している影響で便数を大きく減らしており、航空運賃は高止まりしスペースも確保しにくい状況が続いています。海上輸送から航空輸送に切り替えてもあまりメリットはないと言えるでしょう。
 
視点を変えて船社では、コンテナ不足解消に対してどういった対策をされているのでしょうか。大手海運会社では、空コンテナ在庫の適正化のため、大手IT企業とタッグを組み、ビッグデータとアナリティクスを活用して、「どの拠点にどの程度の在庫を持つか」「コンテナ在庫をいかに効率的に管理するか」といった情報収集・分析の迅速化に努めているそうです。また、別の船社では、6週より先のブッキングを受け付けない予約制限措置を取ることで、コンテナ在庫の適正化と最適化を図っているとのことです。

こういった事柄から、輸出者側で出来ることが見えてきます。輸出をする際によくあるのが、コンテナが足りないといけないので多めにブッキングを入れておいて、直前で本数が決まったらキャンセルすればよい、という考えです。こういった動きにより、空コンテナの無駄な輸送が生じ、コンテナ不足に繋がってしまうこともあるでしょう。できる限り、実際に近い本数で初めから予約を入れることが、小さなことですがコンテナ不足解消の一因となります。

ここまで深刻なコンテナ不足は、一朝一夕に解決するものではありません。船社、輸出者、コンテナメーカー、それぞれの努力によって少しずつでも改善されていくよう、努力が求められていると思います。

参照記事:
NHKサクサク経済Q&A
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20210205.html

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0252Z0S1A300C2000000/

関連サイト:
海上輸送コンテナ不足が深刻に。その原因は?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/boueki_jitsumu_jirei/2021-05-05

2021/05/16
輸出入よもやま話一覧

海上輸送コンテナ不足が深刻に。その原因は?

海上輸送のコンテナ

この半年から1年くらいは、フォワーダーや海貨業者の方とお話をすると、世界中でコンテナ不足が起きているということを実感させられます。

フォワーダーから輸出入輸送の見積もりをいただいても、コンテナ不足により海上運賃が急激に変化しやすく先の見通しが立たないということで、見積もりの有効期限が短く設定されていることがほとんどです。

どうやら海上コンテナだけではなく航空機の貨物スペースもひっ迫しているようですが、こちらの理由は何となく想像できます。新型コロナウィルスの影響で世界的に旅行客、特に海外旅行客が大きく減少しており必然的に航空便のスケジュールも減便しているため、貨物の積載スペースも少なくなってしまうのでしょう。

それではなぜ、海上輸送のコンテナ不足が昨今で叫ばれているのでしょうか。

調べてみましたところ、海上コンテナの不足も新型コロナウィルスが大きく影響を与えていることがわかりました。感染拡大により在宅勤務や自宅時間が増えたことにより、いわゆる「巣ごもり需要」が増えたことが要因であると言われています。在宅勤務での仕事環境を整えるために、昨年はPC関連機器の販売数が伸びたことはニュースなどでも度々報道されていました。それらのPC関連機器の輸送のために通常より多くのコンテナが予約され、船に積載されました。

もちろんそれ以外にも、自宅時間を快適に過ごすための家具や、子どもたちを楽しませるための玩具などが、今まで以上に色々な国へ運ばれたことでしょう。特に北米へ向かう航路ではコンテナ船の物量が昨年度と比較して25%も増えた月もあったそうです。

それだけ多くの船が北米へ向かえば、今まで以上のパフォーマンスでコンテナの積み降ろしなどをしないとどんどん港に滞留されてしまいます。ところが、北米の港では、外出自粛やロックダウンなどの影響もあり、港湾労働者や長距離ドライバーの数が不足しているため、むしろコンテナの取扱い作業量は減ってしまっている状況のようです。

そのため、コンテナを船から降ろしてもらうために(そして新たに輸出されるコンテナを積んでもらうために)北米の港でたくさんの貨物船が行列を作って待っている状況が発生してしまっていたのです。

海上コンテナは一つの航路だけで使われているわけではなく、世界中の港で共通して使われています。北米の港を出た後にアジアを回る航路を組んでいる船も多いでしょう。ですので北米でコンテナが滞留してしまえば、それが他の国でのコンテナ不足にも繋がってしまいます。こうして、今の深刻な世界規模でのコンテナ不足の事態へと陥っていました。

コンテナ不足が続いてしまうと、輸送の遅れはもちろんですが、海上運賃の値上げも避けられません。私自身、ここ最近のフォワーダーからの見積もりを見ていますと、数年前と比べて本当に高くなったと感じることばかりです。海上運賃の値上げは商品価格の値上げに直結しますので、私たちの生活に与える影響は少なくありません。

コンテナ不足は輸出入に関わる方々だけの問題ではないのです。一朝一夕には解決できない難しい問題ではありますが、何とか解消する手立てはないのでしょうか。また別の機会に、考えてみたいと思います。

参照記事: NHKサクサク経済Q&A
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20210205.html

関連サイト:
海上輸送コンテナ不足が深刻に。その原因は?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/boueki_jitsumu_jirei/2021-05-16

2021/05/05
輸出入よもやま話一覧

意外と身近にある輸入許可前引取制度

輸入マグロの水揚げ

「輸入許可前引取り」という単語を聞いたことがある方も多いかと思います。私は初めてその言葉を聞いたときには何だか違和感を抱いてしまいました。

貨物は輸入許可を受けなければ引き取ることができないはずなのにどういうこと?と、とても不思議な言葉のように感じたのです。しかしながら制度をしっかり理解すれば何ら不思議ではありませんでした。今回はそんな、輸入許可前引取についてお話したいと思います。

「輸入許可前引取り承認制度」は通称「BP申告」と呼ばれています。「Before Permit」の頭文字を取ってBPです。ある条件下にある貨物について、輸入の許可前に貨物を直ちに引き取ることができる制度のことです。

先ほども申し上げましたように、原則、輸入貨物は輸入の許可を受けなければ国内に引き取ることはできません。しかし、貨物を保税地域に長期留置させることにより、輸入者の商取引上の商機を逃すことにつながってしまい、適当でない場合などが世の中には存在します。このため、こういった制度が導入されているのです。

この輸入許可前引取制度を利用できる例として次のようなものがあります。
1. 引き取りを急ぐもの(貴重品や危険物、変質・損傷の恐れがある場合など)
2. 時間的制約がある場合(展示会等へ出品するものなど)
3. 特恵税率又は経済連携協定に基づく税率の適用のため必要とされる原産地証明書の提出が遅れる場合
4. 税関側の事情により輸入許可が遅延する場合
5. 申告者側の事情により、課税標準の決定に時間を要するため輸入許可が遅延する場合
といった例が挙げられますが、文字で読んでもなかなかわかりづらいものなので、5番目の例を元に身近なもので具体的にお話したいと思います。

5番目の例に該当する、皆さんにもお馴染みのものとして、海外から輸入する「マグロ」があります。

とある水産会社が、定期的にオーストラリアからマグロを輸入していました。もちろん切り身などではなく、丸々一匹です。そのマグロの価格は、日本国内において市場で競りにかけられることによって確定します。

インボイスはあくまで仮の金額であり、日本に到着したばかりの段階ではまだこのマグロが一体いくらになるのか全く未知数なのです。これでは、正しい輸入申告及び納税をすることができません。
そこで用いられるのがこの輸入許可前引取制度です。

輸入者は一旦、仮の金額で輸入許可前引取承認申請をします。あらかじめ担保を設定して仮の納税を行い、マグロを引き取ります。そして市場での競りが終わりマグロの値段が確定しましたら、改めて正しい金額にて輸入申告を行い、正しい金額の納税を行うという流れで輸入をされていました。

もちろん、この制度の適用を受けられるのは、特定の条件に合ったものに限られますので何でもかんでも輸入許可前に引き取ることができるというわけではありません。

でも私たちが普段何気なく食べているマグロにもこういった制度が活用されていることを知ると、私のように今まで何となくしっくりこなかった方でも、意外と身近な制度であることがお分かりいただけたかと思います。

2021/04/20
輸出入よもやま話一覧

大型コンテナ船が座礁!その時フォワーダーでは?

スエズ運河を航海する大型コンテナ船

スエズ運河で大型コンテナ船「エバーギブン」が座礁し、スエズ運河が航行不能となってしまっていた事故は連日ニュースでも報道されていましたね。世界最大級とも言われる超大型船が運河を遮るようにして座礁している映像はあまりにも衝撃的でした。

この座礁事故により起こり得る損失や賠償といった話題は新聞やネットで盛んに取り上げられているようです。では、このような事故が起きたときにフォワーダーでは何が起こっているのでしょうか? 一般的な流れとしてお話したいと思います。

まずは事故の一報が入ると、社内全体に通知が入ります。メールなどで全社員に周知させ、事故の詳細が判明する度に情報が更新されていきます。それと並行して、事故の起きた船舶に自社の手配したコンテナが積載されていないかを確認します。マニフェストや自社のブッキングシステムなどを調べて、早急に対応します。ここで運悪く自社手配のコンテナが積載されていたとなると、一刻も早く顧客へ連絡をするとともにさらに詳細な事故の状況の入手をすることになります。

幸運にも該当の船には自社手配のコンテナが積載されていないと判明すれば、次は、同じスエズ運河を今後通行する船舶には積載されていないかを調べます。事故の影響で運航スケジュールに大幅な変更が発生する事が必至だからです。

欧州方面で現在動いている船を調べ、自社手配コンテナの有無を確認し、該当があれば関係部署に連絡を入れ顧客に情報を提供します。この辺りの作業はスケジュールを確認する側も顧客に連絡を入れる側も非常に骨の折れるものとなり、「何でこんな事故が起こったんだ。。。」と恨み節を唱えることになります。スエズ運河で事故が起きたからといってアジアや北米方面の物流が止まるわけではないので、通常業務と並行しながら対処しなければなりません。

そういった情報収集と伝達をしている間にも、顧客からの問い合わせが入ります。事故の起きた欧州方面での輸出入がある顧客からは、自分たちの貨物にどれくらいの影響があるのかという相談への対応に追われます。また、あまり直接的な関係がなさそうな他方面への輸出入をされている顧客からも、影響がないか確認してほしいという依頼が入ったりもします。

大手企業などですと、「影響の有無を上長に報告しなければいけないので書面でまとめて提出してほしい」などとお願いされることもあります。もちろんお断りをするわけにもいきませんので、緊急業務の合間を縫って必死に報告書を仕上げることになります。

ざっと書いただけでこれくらいの作業が発生しますので、コンテナ船の事故というのはフォワーダーにとっても本当に起こってほしくないものです。今回はさらに、日本において一年で最も業務が集中する年度末に起きてしまいましたので、輪をかけた忙しさであったことは想像に難くありません。

事故が起きて大変なのはもちろんフォワーダーと顧客だけではなく、船会社や運河の管理会社などたくさんの方に影響があります。今後はこのような事故が起きないよう、安全で安心な運航がされることを願うばかりです。

2021/04/04
輸出入よもやま話一覧

個人事業主でもフォワーダーと取引できる?

個人事業主とフォワーダー

輸出入のアドバイスをさせていただいて良く聞かれるのが、「個人事業主ですがフォワーダーを使っての輸送はできるのでしょうか?」ということです。

近年はチャットやスカイプなどのツールが発達し海外と気軽にやり取りできるようになったことや、アマゾンやメルカリなど販売のプラットフォームも多く存在していることで、個人事業として輸出入による物販をされている方も非常に増えたようです。

個人事業として輸出入物販を始める最初の理由は「ファッションが好き」「得意の英語を活かしたい」「会社員としてではなく自分で商売をしてお金を稼ぎたい」など色々あると想像できますが、「輸出入の仕組みに詳しかったので」という方は少ないのでしょうか、皆さんお話してみると意外に国際輸送に関する知識はさほど持ち合わせていらっしゃらないことも多いです。

『興味を持って輸出入を個人で始めてみたが輸送に関する知識はあまりないのでメーカーなど取引先に任せっぱなし->落ち着いてきたころ合いで利益率を見てみると意外に輸送費がかさんでいる?!->輸送費削減をしたいけれど何をしたらよいかさっぱりわからない、フォワーダーという業者があるようだけれど個人でも取引してもらえるのかもわからない->輸出入に詳しい人に聞いてみよう!』というような流れで私のところにたどり着いていただき、ご相談をいただく機会が最近チラホラとございました。

結論から申し上げますと、個人事業主でもフォワーダーと取引することは十分可能です。法人ではないからと言ってお断りをしてくるフォワーダーばかりではありません。ただし、大手のフォワーダー、つまり日本のフォワーダーランキングでベスト5くらいに入ってくるようなフォワーダーは反応が芳しくありません。丁重なお断りメールを返してくれる会社もありますが、お問合せメールを送信しても無視をされることもあるのが現実です。

その代わりと言ってはなんですが、中小のフォワーダーは割と反応が良いです。もちろん、タイミングや諸事情でお断りをされるところもありますが、多くの会社は誠意を持って対応して下さいますし、良い値段のお見積りもきちんと出していただけます。個人事業主だからと言ってないがしろにされるようなこともありませんので、もし個人でフォワーダーをお探しの方であれば、臆せずに見積もり依頼をかけてみて欲しいと思います。

問い合わせの仕方ですが基本的にはホームページにあるお問合せフォームからで問題ありません。メールアドレスか電話番号を正しく入力しておけば、お返事をいただける会社がほとんどです。ここで何一つ返信をしてくれないような会社は、こちらから願い下げだというくらいの気持ちでいればよいでしょう。

時々質問されるのが、「個人事業主だからと言って、料金を吹っ掛けられたりしないでしょうか?」ということなのですが、私は今までにそのようなフォワーダーは聞いたことがありません。まず心配いらないとは思いますが、対策として10社程度から見積もりを取ることをおススメします。そうすればあまりに高い値段のフォワーダーは一目瞭然でわかりますので、その会社とは取引しないようにすればよいのです。

自分で選んだフォワーダーを使うことによって、輸送費の削減が叶ったり、手配がスムーズに進んだりとメリットもたくさん考えられます。個人事業主で輸出入をされている方はぜひ、積極的にフォワーダーを利用してみて欲しいと思います。

2021/03/18
輸出入よもやま話一覧

船の低温輸送ならリーファーコンテナ

リーファーキャリアの冷凍船とコンテナ

新型コロナウィルスのワクチンが続々と海外から到着しましたね。厳重に梱包されたワクチンが飛行機から荷卸される映像は、何だか救世主がやってきたかのように見えて思わず見入ってしまいました。

今まで輸入されているワクチンは全てが航空輸送されていました。これは緊急性が高いことはもちろんですが、新型コロナウィルスワクチンが超低温を保たなければいけない構造である事も一つの理由と考えられます。航空輸送の際には大量の保冷剤とともに梱包されていたようですね。

それでは海上輸送では低温輸送はできないのかというとそんなことはありません。今回の新型コロナウィルスワクチンのような緊急性の高いものはそもそも輸送日数の面から考えて、低温輸送可否に関わらず海上輸送が選ばれることは当分ないでしょうが、そうではなく日数が多少かかってもよいものは海上でも低温で運ぶことができます。それが「リーファーコンテナ」と呼ばれるコンテナです。

リーファーコンテナは冷凍や冷蔵の貨物の輸送に使われる特殊コンテナです。それに対して温度管理のできない普通のコンテナは「ドライコンテナ」と呼ばれるのが一般的です。リーファーコンテナは冷却装置を内蔵し壁の内部に断熱材が入っており、温度を一定に保つことができるため冷凍や冷蔵の貨物を輸送することが可能になっています。

低温で輸送しなければならないものというとまず食品が思い浮かびますが、リーファーコンテナは食品以外にも様々な用途に使用されています。例えば生花なども温度管理が必要になりますのでリーファーコンテナが選ばれます。

また夏場はオンデッキのドライコンテナ内部はかなり高温になりますので、高温下での品質劣化が懸念される精密機器なども、季節限定でリーファーコンテナにより運ばれることもあります。医薬品ももちろん含まれていて、新型コロナウィルスのような緊急性が高いわけではないワクチンは途上国向けにリーファーコンテナで輸送されていたりもします。

リーファーコンテナ手配の際の注意点としてはまず料金面の問題があります。コンテナ自体が特殊に製造されたものですし、港に搬入された後も低温を保つために電源に繋がれる必要があり、電気代もかかります。そのためリーファーコンテナの料金はドライコンテナの倍以上、航路によっては数倍かかることもあります。

また、コンテナの運搬の際にも、電源付きのMGシャーシという特殊車両を手配しなければなりません。こちらももちろん料金が高くなりますがそれより問題となるのが予約の取りにくさです。どのドレー会社でもたくさん保有しているわけではなく台数に限りがありますので、夏場のMGシャーシは取り合いといった様相となることもあります。

そんな、通常より手間とお金のかかるリーファーコンテナではありますが、大量に輸送するときにはやはり航空輸送よりも料金面でのメリットは大きいでしょう。

いつの日か、新型コロナウィルスワクチンがリーファーコンテナで輸送されているのが見られれば、その時は本当にこのコロナ禍が落ち着いて世の中が元通りになったと言えるのかもしれませんね。急いで運ぶ必要がなくなったということですから。

2021/03/05
輸出入よもやま話一覧

時には輸入貨物の中に・・・。

ナイフ・スプーンなどの洋食器

輸入申告は輸出申告に比べて貨物検査となる割合がとても多いです。やはり、日本から出ていくものよりも日本に入ってくるものの方が取り締まりの必要性が高いということなのでしょう。

貨物が検査されるのなんて怪しそうな会社だけですよね、と思わてれる方もいるかもしれません。でも輸入では、時に輸入者の意図しない貨物が入っていることもあるのです。そのため頻度や確率の違いこそあれ、検査は全ての輸入者を対象に実施されます。今回は私が以前直面した、思いがけない貨物が入っていた事例を2件ご紹介します。

その1. 社長へのプレゼント?!
とあるメーカーの貨物が検査になったときのことです。東南アジアからの輸入パレットにはインボイスの品目通り、工具類、ボルトやナットなどの部品類が積みつけられていました。が、1箱、明らかに見た目が工具類や部品類の箱とは違う、ポップでオシャレな箱があったのです!もちろん税関職員がそちらに目をつけないわけはありません。その箱を取り出し、開梱するようにと指示を出されました。

果たして箱の中から出てきましたのは、素敵なデザインの洋食器セットでした。インボイスには記載されておらず、税関職員からの指示で顧客へ確認するも「そんな商品は注文もしていない、わけがわからない」との回答です。そんな説明で納得してもらえるはずもなく急いで現地輸出者へ確認してもらいました。そして得られました回答が「それは社長へのプレゼントだよ!いつもお世話になっているからね」。

プレゼントで売買取引の対象ではないとしても、輸入許可を受けるためにはきちんと輸入申告をする必要があり、そのためには当然ですがインボイスに商品名や価格などを記載する必要があります。輸入者は「今後はそのようなものを勝手に一緒に入れないよう、輸出者へしっかりと伝達するように」という注意を税関職員から受けた後に、インボイスを差し替え、輸入申告を訂正して無事に許可を得られました。

その2. 日本人はブランド物が好きだから?!
こちらも同じく東南アジアから、雑貨などを輸入されていたとあるショップさんのお話です。この時は財布などの革製品を輸入されていました。元々雑貨などは税関の検査対象になりやすいこともあり、貨物のうち数箱を税関の検査場へ持ってくるようにという検査指示が出ました。

開梱してみますと申告通り財布などが出てきましたが、チェックを進めていくうちになんと、一部の革製品に某ブランドの名前がいくつか刻印がされているではありませんか!

インボイスにはブランド品であるなどと一言も書かれていません。これは商標権を侵害する物品、いわゆる偽ブランド品なのか・・・?と税関職員の間にも緊張が走りました。しかし、刻印をよく見てみるとブランド名が簡単に刻まれているだけで、そのブランドを模倣しているような様子は一切見られません。何か違和感があるなという気持ちを抱きつつも輸入者に緊急で確認を取りました。

輸入者もいたって普通の革製品を輸入しているつもりでしたので驚き、すぐに輸出者に確認したところ、回答は「あれはサービスで入れたんだよ!日本人はブランド品が好きなんでしょ?」

偽ブランド品を作っている意図がなかったとしても、勝手にブランドの名前を刻むことは当然許されるものではありません。商標権侵害の恐れがあることから、これらの製品は全て滅却処分となりました。

この2件の事例からもわかるように、思いもよらない貨物が入っていることは往々にしてあります。だから輸入貨物の検査はどんなに信用のある大手企業だとしても決して無くなることはないのです。

2021/02/15
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原産地証明書のオンライン申請・発給はじまる

原産地証明書のオンライン申請

貿易業務をしていると何度も見聞きするのが「原産地証明書」という書類です。原産地証明書とはその名の通り、取引の対象となっている物品が特定の国・地域で生産又は加工をされたことを証明する書類のことです。貿易では主に輸入側での関税を軽減するために取得されることが多いです。

貿易で使用する原産地証明書は輸出者が手配します。輸入の場合であれば輸出者から原本を入手するだけで基本的にはOKですので、取得は主に輸出者に関係する作業となります。

原産地証明書は、輸出者又はその代理人が各地にある商工会議所に出向いて申請し発給を受ける必要があります。

申請者が証明書記載事項を、予め購入しておいた商工会議所指定の用紙に印刷をして原産地証明書を作成します。そちらを持参して商工会議所窓口で、作成した原産地証明書とインボイスを提出して申請します。商工会議所は紙ベースで審査をし、認証されれば申請者は現金などで所定の手数料を支払い、書面で証明書が発給されるという流れです。

窓口へ出向くという一連の流れは長らく続いており、基本的に郵送やメールでの申請も受け付けられておらず、原産地証明書はマニュアル申請するというのが常識です。ところが、世の中全般のデジタル化の波に乗るかのように、日本商工会議所が「貿易関係証明発給システム」を構築しました。そして12ヵ所の商工会議所で非特恵原産地証明書のオンライン発給を始めました。(2021年1月8日現在)。

出典元:
商工会議所貿易関係証明広報サイト
https://www.jcci.or.jp/boeki/

オンライン発給はどのような流れかというと、申請者はまず商工会議所の新しいシステムを使ってインボイス情報等をPC画面に入力し送信します。商工会議所はPC画面上で審査し、認証されると申請者はオンラインで手数料を支払います。その後、申請者は証明書発給の連絡を受理すると証明書を白紙にカラー印刷することで原産地証明書として使用できるようになります。

これにより、申請者は自社からの発給申請が可能となり、窓口へ出向く時間と手間の節約できます。新型コロナウイルス感染予防の面からも商工会議所側にも大きなメリットがあると言えるでしょう。用紙の購入が不要になりますので経費の削減も期待できますし、保管場所も不要なので在宅勤務の従業員でも発給手続きができるなどの利点もあります。オンライン支払によりクレジットカードの使用が可能となりますし、申請履歴もシステムに保存されますので、過去の履歴を繰り返し使用することで入力の手間が省けるなど利便性も向上しています。

もちろん、輸出者の代行でオンライン申請を行うことはまだ対応されていないなどの改善点はまだまだあります。これからも改良を重ね、他の商工会議所でも順次対応が始まり、申請側にも発給者側にも使い勝手のよいシステムとなることを期待しています。

2021/01/26
輸出入よもやま話一覧

海上事故の共同海損とは?いつ宣言される?

コンテナ船ONE APUSの共同海損

昨年末のニュースで衝撃的だったのがコンテナ船「ONE APUS」の映像。皆さん覚えていらっしゃいますか?

デッキ上で崩れながらもギリギリ段積みされたコンテナの数々。どういう原理で落ちずに耐えているのか分からない状態のものや、潰れてコンテナ内部の荷物が露出したものまでありました。物流に携わる方なら、この後の膨大な処理や調整、作業を思うと頭を捻って抱えたことではないでしょうか。

ONE APUSは中国から北米に向けて航行中、12月1日に激しい荒天に見舞われ、デッキ上のコンテナが倒壊。64本の危険物(DG)を含む1816本ものコンテナが海中に流出しました。そして安全確保のため、航路を変更。避難港として神戸港に12月8日寄港し、その後荷卸し作業を開始しました。

残ったコンテナの陸揚げ及び積み替え作業は1カ月以上を要するのではないでしょうか。この原稿を書いている1月はじめ、SNSの現地ウォッチャーによれば、6割程進んだところのようです。

さて今日は、今回のような海難事故により予想される「共同海損」についてお話ししたいと思います。(現時点ではプレスリリース等で共同海損の宣言がされていません。)

参考サイト:ONE APUS Information Centre
https://www.one-line.com/ja/news/media-statement-one-apus

■ 共同海損とは
船舶が座礁や火災、浸水、衝突、故障などの海上危険にさらされたとき、船長判断で緊急処置を取ることがあります。その費用や損害を、船主や荷主ら関係者で按分して負担する制度です。

共同海損が宣言されるには4つ要件があり、これら全てを満たさなければなりません。
・船舶、積荷、運賃の共同の危険であること。
・危険が生じたため安全を確保するための行為であること。
・船長による「故意」で「合理的」な行為であること。
・「異常な」費用が支出されたこと。

認められる損害、費用には以下などがあります。
・任意座礁
・投荷
・燃料不足
・船火事の消火による水濡れ損害
・避難港での荷卸しなどで生じた損害
・曳船料など避難港入港にかかる費用
・仮陸揚げや保管、再積込等の費用
・救助費用
・乗組員の給食料など船費
・代船輸送費

事故の連絡を受けた船会社は保険会社とともに、共同海損を宣言するかを検討します。

上記ONE APUSの場合、コンテナの流出自体は悪天候による倒壊であり、故意に行われたものではないとみられ、単独海損になると思われます。単独海損とは荷主や船舶が単独で損害を負担するものです。避難港である神戸港へ寄港や入港に要する費用や荷役料などが共同海損の対象になるでしょう。

費用負担の精算はとても複雑で専門性を要するため、専門の共同海損清算人が行います。関係者の調整に時間もかかるため、事故後解決まで数年を要したという事例もあります。

近年はコンテナ船の大型化が進み、コンテナ荷動き量も年々増加しています。デッキ上にコンテナを10段以上段積みすることもあり、海事災害のリスクが高くなっています。貨物の適切な積み込み、固定が求められる中、昨今はCOVID-19の大流行と中国の急激な経済回復という状況にあります。ONE APUSの件では、乗組員の交代制限など人員や時間の制限の中、貨物の適切な積み込みに問題がなかったか、調査が進められていくでしょう。

共同海損の分担金は貨物海上保険の補償対象です。貨物に付保してあれば、荷主が予定外の支出に慌てることはないでしょう。共同海損が宣言されれば、保険会社に連絡すると、その後の手続きを代行して対応してくれます。貨物が無事なら、分担金の支払い後、引き取りができます。

貨物が安価であれ、思わぬリスクをさけるためにはやはり、海上保険をかけることをおすすめします。

2021/01/06
simalu 元通関士の実践コラム

コンテナドレージの稼働はどうなる?

コンテナドレージ

年末も差し迫ってきましたね。師走とはよく言ったもので、この時期は公私ともにバタバタとされている方も多いかと思います。 世間では「年末進行」なんて言葉をよく耳にしますが、年末にかけての業務が慌ただしいものになるのは貿易業務も例外ではありません。

貿易関係はその業務の特性上、ゴールデンウイーク・お盆休暇・年末年始休暇の前後がとにかく多忙になりがちです。「休暇期間中に発行されたBLをどう処理するのか」「顧客の休み明けまで貨物を保管してもらうと保管料はいくらかかるのか」「船(飛行機)が運休となったが違うスケジュールで輸送可能か」など考えなければならないことが次から次へと発生します。

その中でもかなり頭を悩ませるのが「輸送車両の確保」です。ここでの輸送車両とは、日本国内で輸出入貨物を、輸出者(輸入者)と港(空港)の間で輸送する車両、つまり「大型トラック」や「コンテナドレージ」のことを指します。連続休暇の前後は輸送車両の確保がとても難しくなります。トラックはまだ確保に余裕が感じられることもありますが、コンテナドレージは昨今まさにひっ迫という単語が違和感ない状況となっており、慢性的に不足に陥っています。ただでさえ普段から不足気味ですので、特に年末年始は危機的状況になると言っても過言ではありません。

ドレージ車両がそのように常に不足した状況となってしまっているのには
・輸出入量の増加
・慢性的なドライバー不足
・コンテナターミナルの混雑による稼働率悪化
と主に3つの要因が考えられます。

今年こそ新型コロナウィルスの影響で輸出入量は減少気味でしたが、それまでは世界経済の活発化により輸出入量は年々増加していました。それにより必然的にコンテナターミナルの混雑も激しくなり、ドレージ業者が効率よく車両を回せなくなっていました。

そこに追い打ちをかけているのが、ドライバー不足です。少子化、長時間労働や肉体労働を避ける若者の傾向、またここ数年ではオリンピック開催に向けての建設ラッシュで労働力が建設業に回っていたこともあり、日本国内は深刻なドライバー不足が続いています。コンテナドレージ業者は、車両はあるのに人手がないのです。

これらにより、コンテナドレージの予約は普段から早め早めに行うことが必須とされています。毎週のように輸出入貨物のある大手メーカーさんなどは、確保できなくなって慌てることがないよう月単位でまとまった本数を抑えています。それゆえスポット貨物は予約が取りにくくなりますので、輸出入の予定が決まったら仮でもいいのでとにかく予約を入れておくことが貿易業務の常識となりつつあります。

普段からそんな状況ですので、貨物が集中する上に稼働日の限られる年末年始前後は文字通りコンテナドレージの取り合いとなります。1か月前で既に予約がいっぱいなんてことはざらで、キャンセルが出るのを祈るような気持ちで待つこともあります。同じ会社の中で確保台数やキャンセルの情報を共有して、ドレージ会社にキャンセルの連絡をする前に社内で融通しあうのも見慣れた光景です。

どうしてもコンテナドレージの予約が取れないが納期を遅らせるわけにもいかず、最終手段として年末が差し迫った日の午前6時からコンテナ詰め作業を開始したり、ヤードが休暇に入った29日に無理を言ってコンテナを搬入させてもらう手配をしたりと、あの手この手で毎年何とか乗り切ってきたものでした。

今年はさらに、新型コロナウィルスの影響で、コンテナドレージの予約状況が一層悪化しているという情報も耳にします。今後少しずつでも良いので状況が改善していくことを願うばかりです。

2020/12/25
輸出入よもやま話一覧

広いアメリカへの海上輸出はどうする?

パナマ運河を通るコンテナ船

アメリカ大統領選挙では得票状況を示すアメリカ全土の地図を、テレビやネットの画面を通じて何度も見かけました。その都度、「移動や物流も大変だろうな~」と国土の広さをあらためて感じていました。なんせ西海岸と東海岸では4,000キロほどの距離があり、加えて3時間の時差まであります。ちなみに札幌と那覇が直線距離で2,300キロほどです。

今回はそんな広いアメリカへの物流を、日本からの海上輸出という見方を通してお話しします。

日本から船で輸出する際には同じアメリカでも西海岸の港は割と近く感じます。しかし、東海岸の港となると地図で見るよりはるかに遠くなります。と言いますのも、東海岸まで全て船で向かおうとするとパナマ運河を通らなければ行けないからです。パナマ運河は南北のアメリカ大陸をつなげるかのように横たわるパナマ共和国の中央部にあります。パナマ地峡を開削して造られた大西洋と太平洋を結ぶ全長80kmの運河です。

このパナマ運河を通るルートは貿易用語で「All Water(オールウォーター)」と呼ばれます。全て水の上(海の上)で運ばれるという意味です。言うまでもまく時間はかかります。

All Waterに対するように存在するのが、西海岸のロサンゼルスやロングビーチ、タコマなどの港で一旦陸揚げし、後はコンテナを鉄道へ積み替えて大陸を横断して陸上輸送をするという方法です。こちらはミニ・ランド・ブリッジ(MLB)や、内陸都市止まりの場合はインテリア・ポイント・インターモーダル(IPI)と呼ばれます。

MLBサービスはAll Waterに比べて4日~9日ほど輸送日数が短くなりますのでスピード面で優位です。また、西海岸への航路を持つ船社も多く、高頻度で運航されていますので、スペース予約が取りやすい面でも荷主利便性が高いです。しかしながら、鉄道に積み替えて輸送することになりますので海上運賃はAll Waterよりも高くなります。また、積み替えの際や鉄道の揺れによるダメージリスクもありますので、精密機器の輸送などでは選択を避ける傾向もあります。

フォワーダーはアメリカへの輸出依頼を受けますと、荷主の意向を聞き取り最適なルートを考えます。多少コストがかかってもリードタイムを短くしたいのであればMLB、とにかく安くすませたいのであれば予約の取りにくいことを承知でAll Water、などと各荷主に合わせてプランを立てます。

私の個人的な経験から言いますとAll Waterの船は本当に予約が取りにくく、繁忙期には1ヶ月以上先の船まで待つこともありました。思うようなタイミングで船の予約が取れないことは円滑な物流業務に支障をきたしますので、MLBを選択される荷主が多かった印象です。

アメリカにはまだまだ、日本ではありえないようなダイナミックな物流事情が数多く存在します。自分が実際にアメリカへ輸出するという気持ちで、「シカゴに輸出したいけれどどういうルートがあるんだろう?」なんて仮定をして、アメリカの地図を眺めながら調べてみるのも面白いかもしれませんね。

2020/12/08
輸出入よもやま話一覧

注目の昆虫食、輸入するなら税番や法規制は?

昆虫食を食べる男性

昆虫食といえば、一部地域の食文化として根付いているものの、現代の日本では珍しく、拒否感やマイナスイメージの方がしっくりきます。

しかし、昆虫食に対するイメージが徐々に変わってきたと感じます。それは、無印良品がコオロギせんべいを発売し、入荷と同時に売り切れていることや、昆虫を食品や飼料として扱うスタートアップ企業の注目度から感じられます。

EUでは新規食品(ノベルフード)に昆虫が追加され、EU全域での流通が可能です。フィンランドなど北欧でパンやクッキー、スナックなどに加工され自然食品店で売られています。

そもそも世界では1900種以上の昆虫が食べられています。内訳は甲虫31%、芋虫18%、ハチ及びアリ14%、イナゴなど13%となっています。少なくとも20億人の伝統食の一部なのです。

昆虫は環境負荷の低さ、栄養価の高さ、SDGsの観点からも注目されています。国際連合食糧農業機関(FAO)の2013年食品及び飼料における昆虫類の役割に注目する報告書によれば、ヒトの食料、畜産物の飼料としての可能性を指摘しています。

そのメリットは、
・栄養豊富。高脂肪、高たんぱく、食物繊維、ミネラル豊富。ただし、昆虫は種類が多く栄養価もバラバラ
・動物の飼料としての可能性。人工的に飼育しやすく、近年の飼料コスト上昇に対応できる
・採集であれ、養殖であれ、小規模な企業や社会的弱者でも取り組みやすい
・飼育時の環境負荷が家畜に比べて少ない
・廃棄物を食べて育つ種の場合、資源の有効活用ができる

デメリットは、
・日本などまだまだ法規制のない国が多く、安全性の問題点。自然由来であれば、寄生虫や細菌汚染の可能性が考えられる
・生態系に与える影響
・甲虫はエビやカニに近いことから、甲殻類アレルギーを発症する恐れ

流通に法規制や規格がないとはいえ、輸入の際は一般の食品や動植物同様の法規制を受けます。

◇生きた昆虫を輸入
税番:0106.19-000 基本税率無税

法令:「ワシントン条約」「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「植物防疫法」「家畜伝染病予防法」

これらの法律に抵触しないか、必要であれば検査や許可が要ります。一緒に輸入される植物物についても植物防疫法による検疫対象となります。

また、輸入禁止地域から発送又は経由して輸入される特定の植物、昆虫、ダニ、細菌等の有害動植物、及び土又は土の付着した植物等は、試験研究の目的等で農林水産大臣の許可を受けた場合以外は輸入してはならないと定められています。

外来生物法飼育等手続きフローチャート
http://www.env.go.jp/nature/intro/1law/shiyou/flow.html
特定外来生物
http://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html

◇乾燥や冷凍したもの、死んだ昆虫で食用のものを輸入
税番:0410.00-200 基本税率15% WTO協定9% 特恵4.5% 特別特恵/FTA無税

法令:「食品衛生法」

◇水煮や調製品を輸入
税番:2106.90-

穀物の含有量によって下3桁が変わります。「食品衛生法」のほか、「輸入割当」や貿易管理令の「輸入承認」、「指定乳製品等輸入業務委託証明書等」などが必要なものもあります。

◇飼料用の調製品なら
税番:2309.90-

こちらも、貿易管理令の「輸入承認」、「指定乳製品等輸入業務委託証明書等」「輸入検疫証明書等」などが必要なものもあります。

フィッシュミールの代わりに昆虫ミールを家畜用飼料にすることで、コスト減と魚のヒトへの供給量増加に期待ができます。コオロギやイエバエ幼虫を養魚飼料原料にし販売している企業もあります。

昆虫食はまだまだ世界中で食べられているものではありません。農産物にとっては害虫ですし、見た目やイメージで抵抗感があるのもわかります。(私もまだ未体験ゾーンです。)

しかし、はちみつやロイヤルゼリーなどは蜂が吐き出したもので出来上がるのです。漢方薬の原料には虫も含まれます。そう考えると、意外に身近だったのね、という気がします。

食文化のポテンシャルがある国を含め、タンパク資源の選択肢の一つとして、世界中に広く普及する日は遠くないように思います。

参考記事:Terve!フィンランドで未来の食が出現?!
https://www.rakuraku-boeki.jp/finland-dayori/2018-10-06

2020/11/30
simalu 元通関士の実践コラム

通関業務はテレワークで!?

PCによるTELEWORK

前回のコラムではテレワーク拡大によるPC需要の増加により中国の輸出額が増加していることをお伝えしました。ではそのテレワークは貿易業務、特に通関業務ではどれくらい浸透しているのでしょうか。

通関業務のテレワーク自体は、2017年10月8日の通関業法基本通達改正によって新たに可能となっています。しかしながらコロナ以前にはほとんど浸透していませんでした。大阪通関業会の昨年のアンケートでは通関業務の在宅勤務の導入状況は「導入している」が2%、「導入について検討中」が3%とわずかな数字にとどまっています。

それではコロナ以後はどうでしょうか。財務省関税局は3月上旬から、コロナ感染対策としての通関業務の在宅勤務等の開始について、税関への申請に必要な就業規則や社内管理規定を急に準備するのが難しいことから、これらの要件を緩和する決定をしました。自宅のみではなくサテライトオフィスについても申請を認めており、これを機に申請数は増加し10月1日時点で4,045人について申請が行われているそうです。

それでも、あくまで申請に過ぎない数字ですので、どの程度の人数が実際に在宅勤務にて通関業務を行ったのかはわかりません。私が日ごろ付き合いのある通関業者の数社に聞いてみましたところ、恒常的に通関士の在宅勤務を実施しているという会社はありませんでした。あくまで、今後またコロナ感染が拡大して通関士の出勤が不可能になった場合の対策として申請をしているという、保険的な意味合いでの申請が多いようです。

何が通関士の在宅勤務を妨げているのでしょうか。いくつか考えられますがまずは機密保持の難しさです。通関業務はインボイスなどの船積書類を確認しながら通関に必要な申告書を作成し、それを通関士が審査することによって行われます。会社で業務をしていればそれらすべてを印刷して作業することが可能でしょうが、顧客の機密保持対策として自宅での業務関連書類の印刷を認めていない会社が多いのでテレワークでは画面上で書類の確認や作成をすることになります。

申告書を作成したあと画面上でのみチェックし、それをまた通関士が画面上でのみ審査をするのでは、誤った輸出入申告につながりかねません。申告の誤謬は通関業者の信用失墜になりますので、それを避けるためにも通関業務は社内でしかさせない会社が多いと思われます。

あとは申告書作成に必要な資料の存在です。例えば輸入の際の税番を決めるのに必須である実行関税率表は厚さが10センチほどあるノートよりも二回りくらい大きな冊子です。これを在宅勤務のために自宅に持ち帰り、また出社の際に会社へ持って行くのは想像しただけで気が重くなります。自宅用にもう1冊購入するという方法もありますが1冊は3万円弱と高額であり、通関業務従事者全員に購入するとそれなりの負担になってしまいます。

実行関税率表以外にも関税率法解説や分類例規など、申告書を作成するには数多くの参考書籍を頼りとしています。そのような書類は社内に置いてあるものです。もちろんwebでも見られますが、社内で共有している参考書籍は付箋が貼ってあったり重要事項にマーカーが引いてあったりと、それぞれの会社で必要な情報が蓄積されており作成の上で大変助けになります。それらを一切利用せずに自分の知識と経験だけで申告書の作成と審査をするのは現状難しいと言えるでしょう。

とはいえ今後も色々な業種でテレワークは広がりを見せると思います。通関業務でも、従事者の皆様が知恵を絞ってテレワークの充実を実現させ、どんな世の中になっても迅速かつ正確で安心な輸出入通関が行われる社会になることを期待しています。

2020/11/11
輸出入よもやま話一覧

テレワークが中国のPC輸出をけん引

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新型コロナウィルスの感染拡大は世界各国・地域の経済に連鎖的にショックを与えました。感染から身を守るためや感染による災禍のため、生産や消費が大幅に停滞したのは皆さまご存じの通りです。

結果、2020年は全世界的に輸出入の量が落ち込み、減少傾向が続いているのが現状です。この輸出入の落ち込みはしばらく続くと思われていましたが最近になって明るい兆しの見えるニュースが入ってきました。

中国の貿易が力強い回復を見せています。中国税関が10月13に発表した貿易統計データによりますと、2020年9月の中国の輸出額(ドル建て)が前年同月比9.9%増の2,397億6000万ドル(約25兆2800億円)と、伸び率が8月より0.4ポイント上昇して今年の最高値を更新したのとのことです。同様に輸入額も同13.2%増の2,027億6000万ドル(約21兆3800億円)と二桁の伸びを示しました。

この好調の背景には、マスクや医療機器、医薬品などの新型コロナウィルス対策の医療用物資に加えて、テレワークやオンライン授業などWeb関連の世界的な広がりに伴うパソコンやタブレットの需要急増があるといいます。ここ日本でもコロナ以後、在宅勤務やWeb会議、オンラインフィットネスと言った単語を昨年とは比べ物にならない頻度で見聞きするようになりました。

多くの企業でテレワークが推奨されたり、大学や予備校などでオンライン授業化が進んだりしたことで、パソコンやタブレット端末の買い替えや買い増しを検討された方も多いでしょう。また、新型コロナウイルス感染症対策を目的にテレワークへの取組を行う中小企業事業主を支援する助成金などを政府や自治体が発表したことにより、企業が主体となって新しいパソコンなどの機器を導入したことも需要急増の一因となっていると考えます。

パソコンは中国で数多く生産されています。中国の重慶市は2019年、世界のノートパソコンの約40%を生産し、6年連続で世界首位となっています。中国中西部で唯一の直轄市である同市は、通信キャリアやブランド企業、OEM(相手先ブランドによる生産)企業、関連会社などを一体化したスマート端末産業チェーンを形成しているのが強みであり、携帯電話の生産額も1,000億元(約1兆5000億円)を超え、生産台数は世界の約一割を占めています。それだけの生産数を誇る中国ですので、世界中の人々がテレワークやオンライン授業を利用するようになり買い替え需要が増えたことによって、輸出額が飛躍的に伸びたことも何ら不思議ではありません。

これから冬のボーナス商戦に入ることもあり、PC関連機器やスマートフォンなどの買い替えはますます増え、中国の輸出額も右肩上がりに回復していくことが予想されます。中国市場が世界経済を牽引して、近いうちに世界的に経済活動が復活し今までのように活気ある輸出入市場に戻ってくれることを願うばかりです。

2020/10/26
輸出入よもやま話一覧

コロナ禍で輸入増!キャンプ用品の税番・関税は?

キャンプ用品
秋本番!日中も過ごしやすく、アウトドアが楽しい季節になってきましたね。ここ数年、キャンプが大ブームです。SNSやYouTubeで芸能人やインフルエンサーが自身のキャンプの様子を紹介し、人気投稿となっています。また、アウトドア用品も多様化。機能性の充実に加え、見た目のオシャレなものが増えました。

今年はさらに、コロナ禍がブームを後押ししています。外出が制限される中、ベランダや室内でもキャンプ気分を楽しむなど、まるで雨で中止になったキャンプの埋め合わせのような様相ですが、困難な状況の中で様々なアイデアが受け入れられています。

場所、用途、価格も多様化することで、本格的なものからお手軽なものまで選択の幅が増えました。90年代にオートキャンプブームがあり、当時子どもだった世代が親になり、第2次ブームを起こしている面もあります。

そんな背景もあり、テント、タープなどキャンプ用品の輸入が好調です。8割近くは中国製。次いで、ベトナム製、他の国と続きます。

そこで今回は主なキャンプ用品の税番を紹介したいと思います。

【テント】
材質はナイロン、ポリエステルなど合成繊維製が主流です。軽量で耐久性に優れており、防水性を高めるためにポリウレタンコーティングを施したものもあります。テントとセットで日よけサンシェードも追加したいアイテムです。テントと一体になっているものもあります。

6306 ターポリン及び日よけ、テント、帆(ボート用、セールボード用又はランドクラフト用のものに限る。)並びにキャンプ用品
ターポリン及び日よけ
6306.12 000 合成繊維のもの
6306.19 その他の紡織用繊維製のもの
100 1 綿製のもの
900 2 その他のもの
テント
6306.22 000 合成繊維製のもの
6306.29 その他の紡織用繊維製のもの
100 1 綿製のもの
900 2 その他のもの

税率は、
・綿製のものが基本税率6.7%、WTO協定5.6%、特恵FREE、各種EPA/FTAではFREE。
・それ以外が基本税率4.8%、WTO協定4%、特恵FREE、各種EPA/FTAではFREEです。

【寝袋・シュラフ】
形は主にマミー型、封筒型があります。マミー型は蓑虫のような形状で、身体にフィットし高い保温性が特徴です。封筒型は連結できたり、フルオープンにすると掛布団にすることも可能です。

形、表生地、中綿の種類を問わず、税番は1つです。ただし、防災グッズにあるようなアルミ蒸着したPEシートのもの(39類)は含まれません。

9404 寝具その他これに類する物品(例えば、マットレス、布団、羽根布団、クッション、プフ及びまくら。スプリング付きのもの、何らかの材料を詰物とし又は内部に入れたもの及びセルラーラバー製又は多泡性プラスチック製のものに限るものとし、被覆してあるかないかを問わない。)及びマットレスサポート
9404.30 000 寝袋

基本税率4.6% 、 協定3.8% 、 特恵FREE、各種EPA/FTAではFREEです。

【テーブル、椅子】
材質や大きさ、機能性、携帯性、価格ともに種類が豊富です。携帯性の高いものから、家で使えるものもあります。特に椅子は普段からベランダや庭に置いたり、スポーツ観戦など使用頻度の高いアイテムです。フレーム、座面の素材によって税番が決まります。

アップホルスターとは座面に詰め物などして座り心地をよくしたものです。

9401 腰掛け(寝台として兼用することができるものであるかないかを問わないものとし、第94.02項のものを除く。)及びその部分品
その他の腰掛け(木製フレームのものに限る。)
9401.60 アップホルスターのもの
010 - 革張りのもの
020 - その他のもの
9401.69 000 その他のもの
その他の腰掛け(金属製フレームのものに限る。)
9401.71 アップホルスターのもの
010 1 革張りのもの
090 2 その他のもの
9401.79 その他のもの
010 1 革張りのもの
090 2 その他のもの
9401.80 その他の腰掛け
010 1 革張りのもの
090 2 その他のもの

革張りのもの(基本3.8%)以外は基本税率FREEです。

テーブルはその他の家具になります。材質に関わらず全て基本税率FREEです。

9403 その他の家具及びその部分品
9403.20 000 その他の金属製家具
9403.60 その他の木製家具
190 -- その他のもの
9403.70 000 プラスチック製家具
その他の材料(とう、オージア、竹その他これらに類する材料を含む。)製の家具
9403.82 000 竹製のもの
9403.83 000 とう製のもの
9403.89 000 その他のもの

【ランプ】
LEDランタンのように電池式のものと、灯油式、ガス式のものがあります。

8513 携帯用電気ランプ(内蔵したエネルギー源(例えば、電池及び磁石発電機)により機能するように設計したものに限るものとし、第85.12項の照明用機器を除く。)
8513 000 ランプ

9405.50 000 非電気式のランプその他の照明器具

いずれも基本税率FREEです。

2020/10/06
simalu 元通関士の実践コラム

デバンニングレポートって?リマークの意味は?

海上コンテナの混載輸送でデバンニングを待っている
海上コンテナ輸送を利用する際、コンテナ1本に複数荷主の貨物を合積みする方法があります。これをLCL(混載輸送)と呼びますが、LCLの場合、輸入地の保税地域でコンテナから荷卸し(デバンニング)する時に、貨物の状態をチェックし、検数業者がデバンニングレポートを発行します。

今回は、このデバンニングレポートに書かれた文言のうちリマーク欄について解説していきたいと思います。

リマークとはいわば注意書き。リマーク欄はデバンした時の貨物の状態を示す大切な項目です。貨物の外装に破れや濡れなど損傷が何もなければ空欄です。しかし、大なり小なり何らかの損傷は起こります。リマーク欄が空欄のことはむしろ少ないのかもしれません。

事故の程度を表す言葉と事故内容で構成されており、英語で表記されていますが、文言は大体決まっています。

【事故の程度】
・SLIGHTLY(少々=貨物全体の概ね30%以下のもの)
・PARTLY(一部=貨物全体の概ね30%~80%未満のもの)
・ALL(全て=貨物全体の概ね80%以上のもの)

【事故内容】
・BANDS OFF:バンドル切れ
・BROKEN:破損
・BROKEN&REPAIRED CONT'S OK:破損したものを修理、中身異常なし
・BROKEN&REPAIRED :破損したものを修理
・BURST:破裂
・CASE BROKEN CONTENTS UNKNOWN:箱傷み中身不明
・CHAFED:こすれ
・CRUSHED:押しつぶれ
・COVER TORN:外装やぶれ、袋切れ
・DEAD:動物の死
・DEFORM:変形
・DENTED:へこみ
・DIRTY:汚れ
・EDGE CUT:端切れ
・EMPTY:中身が空
・HINMEI:品名違い
・MISSING:入り不足
・NO MARK:マークなし
・SCRATCHED:ひっかき傷
・STAINED:色付き又は汚れ
・WET:濡れ

上記は全てではありません。比較的よく見るリマークを抜粋しました。「SLIGHTLY BROKEN」や「SLIGHTLY COVER TORN」などはよくあることで、輸入者に確認はしますが、それほど大きな問題にはなりません。外装上だけの問題で、中身の貨物には問題がないことがほとんどだからです。

一方、「ALL WET」や「CRUSHED」といった重大事故の可能性のあるものは、通関もストップさせて貨物状態の確認を急ぎます。保険求償になったり、関税定率法10条の「変質、損傷等の場合の減税又は戻し税等」を適用するかもしれないからです。状態によっては輸入通関をせず、積戻しにしたり、保税倉庫内で補修作業後、輸入通関することもあります。

品名違いや中身が空の場合、パッキングリストやインボイスとの整合性が取れないので、荷主に確認をします。内容点検後、貨物現物に合わせてパッキングリスト、インボイスを差し替えることもあります。まれに荷主がインボイスを送り間違えていた、ということもあります。

デバン作業は人の手による手作業が大部分のため、夏の時期は熱中症の危険と隣り合わせの過酷な仕事です。特に近年の酷暑!倒れる人も少なくないそうです。コンテナ内は換気も悪いため、熱気が溜まりやすい環境です。大型扇風機を使ってコンテナ内に風を送ったり、スポットクーラーと扇風機の併用をしたりと、工夫して対策を行っているそうです。暑い中作業されている方々には、本当に感謝の言葉しかありません。

いかがでしたでしょうか。リマークはデバンニングレポートだけでなく、BLやEIR(機器受渡証)でも使われています。同じような文言が使われていますので、ぜひ注意してみてください。

2020/09/28
simalu 元通関士の実践コラム

小説から考える「緩衝材」の歴史

広告媒体の役割をしていた浮世絵

『たゆたえども沈まず』という小説をご存知ですか。

ファン・ゴッホとその弟テオ、当時ヨーロッパのジャポニズムを支えたパリの日本人画商林忠正を題材にしたフィクションです。3人の関係性や繰り広げられるパリでの出来事はフィクションですが、史実を踏まえていて、当時のパリや美術界について垣間見ることができます。

この小説の中に、林忠正の部下で画商見習いの重吉が、日本から輸入した美術工芸品の木箱を開けるシーンがあります。重吉は送り状を確認しながら中身を検品するのですが、陶芸品の箱を開けると籾殻が舞い上がり、くしゃみをしてしまいます。

壊れやすい陶芸品を守るために詰められた籾殻。日本から遠く離れたフランスで籾殻を目にした重吉がそのミスマッチに苦笑する場面ですが、現代に置き換えれば、植物防疫が!!虫が!!と無粋なことを思ってしまいます。

小説で登場したのは籾殻ですが、江戸時代の緩衝材といえば、浮世絵です。鎖国下で唯一外交関係を保っていたオランダを介して、海外に漆器や陶磁器が輸出されていました。その包み紙に使われていたのが浮世絵です。

当時、浮世絵は折り込み広告や役者のブロマイドのような役割を果たしました。風景画は旅行雑誌のような一面もあったそうです。広告媒体として機能した浮世絵は広く庶民に普及しており、特別な美術品ではありませんでした。

包み紙として利用されヨーロッパに伝わった浮世絵。19世紀半ばに美しい包み紙が注目され、ジャポニズムの流行やモネやマネ、ゴッホら印象派の画家に大きな影響を与えました。

海上輸送の梱包資材にシロツメクサが使われていた時期もあります。浮世絵の包み紙と同じ江戸末期、シロツメクサを乾燥させたものがガラス容器の緩衝材に使われていました。「ツメクサ」とは「詰め物の草」。世界各地に種子も運ばれ、かつての海運網拠点で茂っています。

現在の緩衝材は様々な種類があります。気泡緩衝材、いわゆるプチプチはエアーパッキンとも呼ばれます。軽くてクッション性があり、陶器やガラスなど壊れやすいものを包むのに便利です。プチプチの突起を内側にしても外側にしても、緩衝性は変わらないそうです。

袋に空気を充填したエアークッション、エアーピローは保護というより、隙間を埋めて箱の中のものを固定するために使われます。発泡スチロールも固定機能に優れていますが、形を専用に加工する必要があります。

バラ緩衝材は粒上の緩衝材で、隙間を埋める目的で使われますが、物の固定には向いていません。

ポリスチレンやポリエチレンなど合成樹脂製の緩衝材が主流ですが、環境負荷の大きさが問題視されています。そこでそれらに代わって、トウモロコシでんぷんなど植物を原料にした緩衝材が使われることもあります。これは燃やしてもCO2発生量が少なく、土に埋めた場合でも微生物の働きにより水と二酸化炭素に分解されます。静電気がおこりにくく、石油系独特のにおいもありません。

昔と今ではかなり素材や形状に違いがあります。ですが、いつの時代も貨物を安全に届けるため様々な知恵が絞られ、工夫がなされていることが分かります。今は様々な緩衝材があり、最適な緩衝材を選べば、製品の品質低下や破損リスクを避けることができます。これからはさらに、環境負荷も考えた緩衝材選びが求められるのかもしれません。

2020/08/28
simalu 元通関士の実践コラム

マツタケが絶滅危惧種に。もう食べられない!?

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秋の味覚の高級食材の一つ、マツタケがレッドリストの絶滅危惧種に指定されました。

日本ではすでにかなり数が減っていて、国産マツタケというと超高級品!スーパーで売られているマツタケは韓国産や中国産、アメリカ産など外国産です。

日本国内では減少しているものの、世界ではまだ十分な量が生育しているかと思いきや、世界中で減少していたようです。

天ぷら、炊き込みご飯、土瓶蒸し・・・もう食べられなくなるの?と心配になりますが、どうやら絶滅危惧種に指定されたからといって、市場から消えてなくなるわけではなさそうです。

レッドリストとは?

IUCN(国際自然保護連合)が作成する、「絶滅の恐れのある野生動植物の種のリスト」です。ICNUは国、政府機関、NGOからなる国際的な自然保護機関で、レッドリストの作成、自然を守り価値を高める活動、地球課題に対する解決策の模索、国際機関との連携といった活動をしています。

レッドリストは、動物、植物、菌類の地球規模での保全状況に関する世界で最も包括的な情報源となっています。実際の絶滅危機を客観的・s詳細に評価しています。それぞれの種の置かれた環境や個体数など様々な観点から評価を行い、9つのカテゴリーに分類しています。

【EX】Extinct/絶滅
【EW】Extinct in the Wild/野生絶滅
【CR】Critically Endangered/深刻な危機
【EN】Endangered/危機
【VU】Vulnerable/危急
【NT】Near Threatened/準絶滅危惧
【LC】Least Concern/低懸念
【DD】Data Deficient/データ不足
【NE】Not Evaluated/未評価

上に行くにつれて絶滅リスクが高まります。絶滅危惧のカテゴリーは「深刻な危機」「危機」「危急」の3つです。野生での高い絶滅リスクに直面している種が指定されます。有効な保全対策をしなければ、絶滅が予測されるカテゴリーです。

マツタケの場合、VU「危急」に分類されました。減少した理由の一つは、生育に適した環境の減少です。マツタケは松の根に菌糸を伸ばして育ちます。単純に松林が減少しているだけでなく、マツタケは落ち葉や枯れ枝が取り除かれた貧栄養状態の松林を好むため、人間が山に入らなくなり、マツタケ好みの環境が減少したことが背景にあります。また、マツクイムシによって多くの松が枯れてしまったことも原因のようです。

レッドリストには法的拘束力はありません。しかし、法的拘束力のあるワシントン条約(CITES)やラムサール条約などを改正するためのガイドとしても用いられています。ワシントン条約は野生動植物の国際取引を制限する法的拘束力があります。附属書によって管理されています。附属書は3段階に分類されており、それぞれに取引の内容が決められています。ワシントン条約は国際法なので、これに紐づく国内法が「種の保存法」です。

参考コラム:「お土産にもワシントン条約が!?」
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-04-01

IUCNのレッドリストは全世界での評価を行っていますが、日本国内での評価は環境省が行っています。それぞれ独自に評価していますが、環境省レッドリストはIUCNの評価基準に準拠しています。また、都道府県等自治体で独自に評価を行っている場合があります。

レッドリストに指定されても、すぐに食卓から消えてしまったり、商取引ができなくなるわけではありません。しかし、このまま減少し続ければ、マツタケだけでなく、すでに指定されているウナギやクロマグロも食べられなくなります。

2020/08/05
simalu 元通関士の実践コラム

食品用容器包装のポジティブリスト制度って?

食品用の様々な容器

新型コロナウイルスの影響で、飲食店の料理をテイクアウトしたり、Uber Eatsのような宅配の利用機会が増えた、という人は多いのではないでしょうか。

私も、自粛期間中は特にテイクアウトやスーパーのお惣菜を利用することが増えました。

そうなると、いつも以上にプラスチック容器の使用が増えます。この容器、食品衛生法に関係する・・・食品の容器はどのような規制があるの?ということで、今回は食品用容器包装についてまとめました。

2018年6月に食品衛生法が改正され、2020年6月、食品用器具・容器包装に使用できる合成樹脂について、従来のネガティブリスト制度からポジティブリスト制度に変更になることが、施行されました。

【ポジティブリスト制度とは?】
ポジティブリスト制度とは、原則としてすべての物質を禁止し、安全性を評価した物質のみ原材料に使用可能にする、という制度です。

え、じゃあ今までは安全性が評価されていなくても使用していたの?と気になるところですよね。従来は、ネガティブリスト制度を採用していました。これは、毒性が強く健康に被害を及ぼす恐れのある物質をリスト化し規制する、という考え方です。原則としてすべての物質の使用を許可したうえで、危険な物質について規制します。

しかし、海外で使用が禁止または規制された物質について、個別に規格基準を定めない限り日本では規制できない、という短所があります。実は、法律の下ではネガティブリスト制度を採用していますが、業界団体による自主規制でポジティブリストを作成し規制しており、両方を合わせると、欧米と同等の規制で安全性が確保されています。

ただし、輸入品の多くが業界団体の自主規制外です。また、自主規制はあくまで任意ですので、強制力がなく、規制がすべてに及ぶわけではありません。そこで、自主規制を包括し、さらなる安全性確保、欧米等との国際整合性を確保するため、などの理由から、食品衛生法でのポジティブリスト制度が導入されることになりました。

改正法でポジティブリスト制度の対象となるのは合成樹脂(プラスチック)製の器具・容器包装のみです。ゴムや金属、木、陶磁器やガラスなどは対象ではありません。ただし、これら合成樹脂以外の材質が主成分であっても、食品との接触面に合成樹脂の層が形成されている場合は対象となります。例えば、牛乳やジュースの紙パックなどです。

また、食品と接触しない非接触面に使用されている合成樹脂や、主成分が合成樹脂以外で食品接触面に合成樹脂層が形成されていなければ、制度対象外となります。例えばおはしの持ち手や食品製造用機械の外装などです。

2018年6月の法改正から今年の施行日までの間に、業界団体や企業から情報提供を受け、ポジティブリストが公布されました。令和7年5月31日までの5年間を経過措置期間とし、リスト(別表第1)に収載されていないものでも、施行日より前に製造または輸入されている器具・容器包装と同様のものはポジティブリスト適合とみなし、使用されていた範囲内での使用が可能です。収載可能であれば、リストに追加されます。

また、施行前から使用実態があるのにリストに掲載されていない場合、または使用条件等を満たしてない場合には、必要な情報を厚生労働省医薬・食品生活局基準審査課に提出します。経過措置後もリストに収載されていなければ使用できなくなります。新規の物質については、追加の収載要請があれば、リスク評価を行い、告示改正されます。リスト収載までの間、販売するための製造又は輸入はできません。

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000635338.pdf

別表第1
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000625490.pdf

ポジティブリスト制度Q&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000637342.pdf

海外から輸入される食品用器具・容器包装に対して、以前から実施されている材質試験や溶出試験に変更はありません。ただし、輸入通関時に検疫所からポジティブリスト適合性証明書またはリスト適合の確認ができる書類の提出を要求されることがあります。ですので、輸入者はあらかじめリスト適合を確認できる書類を入手することが必要です。

2020/07/17
simalu 元通関士の実践コラム

コーヒーの関税率は?豆とインスタントでは違う?

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最近は、コーヒーの淹れ方も様々なバリエーションがありますね。本格的なドリップコーヒーを朝から淹れると、とても優雅な気分になります。インスタントコーヒーは手軽に本格的な味が楽しめる代表格。砂糖や香料の入ったスティックタイプや濃縮エキスの入ったポーションタイプはどんどん新商品が発売されていて人気です。

さらにカフェインレスの豆やインスタントタイプもあります。妊娠授乳中など、コーヒー習慣があるのにカフェインを摂ってはいけないときにありがたいです。

話題の「ダルゴナコーヒー」も粉末状のインスタントコーヒーで作れます。もともと韓国でじわじわ流行していたそうですが、昨今のコロナ禍でカフェに行けない状況も手伝って、少ない材料で作れてインスタ映えするうちカフェドリンクとして、日本でもじわじわ人気です。

そんな「コーヒー」。形態にバリエーションがありますが、HSコードは大きく2種類に分かれます。

一つはドリップして淹れるタイプのコーヒー。豆、砕いたもの、粉末状が含まれます。
関税率表【第9類 コーヒー、茶、マテオ及び香辛料】
https://www.customs.go.jp/tariff/2020_4/data/j_09.htm

コーヒー(いったものを除く)
 0901.11-000 カフェインを除いてないもの 
 0901.12-000 カフェインを除いたもの 
基本税率が無税ですので、どこから輸入しても関税フリーです。

コーヒー(いったものに限る)
 0901.21-000 カフェインを除いてないもの 
 0901.22-000 カフェインを除いたもの 
こちらは基本税率20%、WTO協定税率12%、特恵税率10%、特別特恵無税、各EPA税率があります。メキシコ、フィリピン、TPP11、EUなどとのEPA、日米貿易協定を利用すれば、無税で輸入できます。

その他
 0901.90-200 コーヒーを含有するコーヒー代用物 
こちらも基本税率が無税です。コーヒー代用物とはたんぽぽの根や大麦コーヒーなどがありますが、この項に含まれるのは「コーヒーを含有するコーヒー代用物」であることに注意が必要です。

一方、コーヒー殻の出ないインスタントコーヒーは21類になります。
関税率表【第21類 各種の調整食料品】
https://www.customs.go.jp/tariff/2020_4/data/j_21.htm

コーヒーから抽出したエキス、エッセンスの濃縮物と、それらをもとにした調製品とに分けられ、さらにそれぞれ砂糖を加えたものとその他のもの、砂糖の含有量などで細分されます。

例えば最も一般的な無糖のインスタントコーヒーは、2101.11-210です。基本税率12.3%、WTO協定税率8.8%、各EPA税率は無税~となっています。

インスタントコーヒーや粉乳、砂糖などを混ぜたコーヒーエキス調製品は2101.12-11です。こちらは基本税率24%、特恵税率15%。TPP11、日EUEPAでは関税割当数量以内で無税です。

コーヒーのエキス、エッセンスにはカフェインの有無が問われず、またコーヒー代用物を含んでいても構いません。形状は液状や粉末状があります。砂糖とミルク、コーヒーが個別包装されセットにされたものもありますが、商品に特性を与えているものがコーヒーなら、9類または21類に分類されます(関税率表の解釈に関する通則3(b))。

輸入の際には食品衛生法、植物防疫法が関わります。こちらも忘れず届出、合格が必要です。

2020/06/29 更新
simalu 元通関士の実践コラム

通関士がやってしまう「あるある」とは?

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どんな職業にも職業病というか、これ日常でやってしまうよね、という職業別「あるある」が存在します。

そこで今回は私が思う、「通関士あるある」を紹介します。私自身は通関業者を離れて長いですが、それでも染みついた癖・・・。

きっと現役通関士の方は大いにうなずいてくれるのではないでしょうか。

◆買い物に行くとついついHS番号を考えてしまう

まずはタグをチェックし原材料確認から。洋服なら織物(62類)なのか、編物(61類)なのか、刺繍の有無や用途などから考えて、番号を絞り込みます。バッグは大きさでハンドバッグなのかその他のバッグか気になりますし、革製品なら関税率高いなーと思いながら見ます。

イマドキのおしゃれ用語もHSで考えるので、材質や用途でばっさり品目分類。

新商品を見たときなど、もはやイメージトレーニングです。実際に通関することを想定して商品を観察してしまいます。

他法令許可もぬかりなく。昨今マスクのニュースでにぎわっていますが、マスクは薬機法に抵触しません。

同業の友達と買い物に行ってHS談義しはじめると、買い物どころではなくなってしまいます。

◆原産地が気になる

とにかくタグは絶対にチェック。Made in ○○が気になります。原産地によっては、EPA制度を使って輸入したのだろうか、特恵適用国であるか、などと考えてしまいます。原産地にもトレンドがあって、経済発展中の国を感じられます。

また、マイナーな国からの輸入品ですと、商流を思い浮かべたり。結構楽しいです。

◆取引のある業者の商品を見つけるとなんかテンションが上がる

さらに自分が通関したことのある商品だと、買う予定はなくても商品を手に取って観察します。普段書類でしかお目にかからないので、現物を見ると手に取りたくなるのです。周りの人間は何を熱くなっているのかと、ぽかんとしています。

◆仕事内容を一般に理解されにくい

通関士はメジャーな仕事ではありません。せいぜい「税関の人?」くらいのリアクションです。ちょっと違うよなーと思いながら、「貿易関係です」というと、「英語できるの?すごい」と言われたりしますが、通関士は国内手続きをする人なので英語は話せません。

語学に関して言えば、特に必要もありません。インボイスやBLなどの書類は英語で書かれていますが、文言はほぼ決まっていて、それを覚えれば事足ります。たださすがに、全然できません、は困ります。英語なら義務教育レベルくらいは必要でしょうか。

ちなみに、似て非なる貿易事務の方は語学が必須。また、フォワーダーの営業部門や駐在員も語学が求められます。あくまで通関部門は語学ができなくても問題ない、という話です。

◆3桁のローマ字(大文字)が並んでいると空港コードや都市コードに見える

重症でしょうか・・・。3桁や4桁のローマ字はもはやNACCSコードです。

◆街中でコンテナを見ると、どこの船社のコンテナなのかチェックしてしまう

港湾地区に行くとテンションがあがります。コンテナトレーラーに当然目が行きます。カラフルなコンテナ満載の船も好きです。ガントリークレーンもかっこいいですよね!空港では子供並みに貨物の牽引車を観察します。

いかがでしたでしょうか?
個人的な見解ですが、思い当たる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

通関士の方は勉強熱心で、なんだかんだ文句を言いながらも仕事に愛のある方が多いように感じます。だから普段の生活でもついつい仕事目線で見てしまうのかもしれません。

この仕事でなければ感じられなかった、と思うと「職業病」も悪くないですよ。

2020/05/29
simalu 元通関士の実践コラム

DDP、DPU、DAPってどんな貿易条件?

DDP・DPU・DAPなどの貿易条件

らくらく貿易のサイトでは400語以上の貿易用語を解説しています。

その中でも検索数の多い用語ベスト9をピックアップしてトップページに掲載しています。トップ9常連はインコタームズ!そこで今回はD型と言われるDDP、DPU、DAPについて、解説したいと思います。

インコタームズとは、国際商業会議所が制定した貿易条件の解釈です。世界で利用されている国際貿易取引条件で、制定前は国ごと、商習慣ごとに貿易取引条件がばらばらで、トラブルになることもしばしば。制定後は共通ルールが明確になったことで、共通認識のもと貿易取引ができるようになりました。

10年に一度見直され、今年は改訂年。これまでのインコタームズ2010からインコタームズ2020が発効しました。D型と呼ばれるものは、過去に使用されていたものも含めると、DAF、DES、DEQ、DDU、DAT、DAP、DDP、DPUがあります。かなり多いですが、2020に残ったものはDPU、DAP、DDPです。

【DAP】Delivered at Place/仕向地持込渡し
危険・費用負担は買手が指定する場所で売手から買手に移転。荷卸しは買手負担。

【DPU】Delivered at Place Unloaded/荷卸込持込渡し
危険・費用負担は買手が指定する場所での荷卸し後に売手から買手に移転。荷卸しは売手負担。インコタームズ2010のDATが廃止され代わりに新設されたのがDAP。貨物の引き渡し場所をターミナルに限らず荷主指定場所にできるようになりました。

【DDP】Delivered Duty Paid/関税込持込渡し
危険・費用負担は買手が指定する場所で売手から買手に移転。荷卸しは買手負担。通関や関税等も売手負担。

上記3つ以外のD型条件はもう使えないかというとそうではありません。例えばあえてDATを使うなら、インコタームズ2010に拠ることを明記します。

買手にとって最大のメリットを享受できるのがDDP条件です。輸入地での通関や関税消費税の負担も含め、買手の指定場所までの費用負担、リスク負担を売手が負います。税関検査費用やターミナルでの保管料など追加で費用が生じた場合でも、買手にそれらの追加費用が請求されることはありません。買手は売手との契約価格にしたがって支払います。ただし、独自に追加ルールを設ける場合はその限りではありません。

また、注意すべき点はDDPが関税・消費税や輸入港から指定場所までの国内運送費用を含んでいるということです。輸入申告の課税標準価格というのはあくまで輸入港到着までの価格です。DDP価格で申告してしまうと、申告価格が高くなってしまい、本来払わなくていい関税・消費税までかかってしまいます。

そこで実務的にはインボイスにCIF価格と関税・消費税、国内運送費等の内訳を記載します。内訳が分からなければ、インボイス価格=DDP価格が申告価格になります。DDP条件の真逆の概念がEXW(Ex Work/工場渡し)です。EXWは工場から出荷した時点で買手に全ての負担が移転します。

インコタームズは危険負担、費用負担の線引きをどこまでするかが明確に示されています。トラブル回避に一役買っていますが、強制力はありません。また、貿易条件の共通認識ではありますが、契約の際はお互いに再確認は必要です。

2020/05/07
simalu 元通関士の実践コラム

貿易関連資格取得で「おうち時間」を有意義に!

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外出自粛、リモートワークなどでお家で過ごす時間が増えた、という方も多いのではないでしょうか。

顧客の機密情報を扱う物流業界ではリモートワークが難しいのでは、と思われていましたが、徐々に在宅対応している会社も増えています。

実は、通関士は在宅勤務ができます。

2017年の通関業法改正で、
「通関業者の通関業務に従事する通関士その他の通関業務従業者が情報通信機器を活用して、労働時間の全部又は一部において、自宅で業務に従事する勤務形態(以下「在宅勤務」という。)を導入する場合においては、当該勤務場所(自宅)を当該従業者の所属する営業所の一部とみなす」とあり、法律上は在宅勤務が可能です。

事前に関税局への申請が必要ですが、認定には柔軟に対応することも発表されています。

さて、自宅で過ごす時間が増えた今、せっかくなので資格の勉強などしてみてはいかがでしょうか。

貿易関係の資格といえば、
・「貿易実務検定」
・「通関士」
・「AIBA認定貿易アドバイザー」
・「国際航空貨物取扱士(IATAディプロマ)」
などがあります。

【貿易実務検定】
下位級から順にC級、B級、A級があります。
貿易業界で飛び交う様々な専門用語、銀行や保険会社との取引の流れ、貿易実務英語などが出題されます。C級は基礎知識レベル。A級は難易度が高く、実務経験と英語力がないと合格が難しいレベルです。

【通関士】
言わずと知れた?貿易関連唯一の国家資格。
輸出入をするうえで基本的な規則を網羅しています。合格率は10%前後と低いですが、貿易業界で働く人にとって付加価値の高い資格です。

【国際航空貨物取扱士(IATAディプロマ)】
航空貨物運送で必要な知識とスキルを認定する資格です。基礎(Ⅰ)コースと危険物(M2)コースがあり、危険物(M2)コースは2年ごと資格更新試験があります。全て英語で出題。受験料も5万円以上と高額ですが、世界で通用する国際資格です。

また、「TOEIC」や「日商ビジネス英語検定」など英語の資格も貿易実務に役立ちます。ビジネス英検は貿易実務に関する問題も出題されます。

今年新たに始まった資格が「EPAビジネス実務検定」です。

【EPAビジネス実務検定】
現在、ベーシック(C級)とアドバンスト(B級)の区分がありますが、今年2月に実施された第1回ではC級のみが開催されました。EPAに関する実務知識や周辺知識を問われます。第1回の合格率はなんと91.1%!!

実は私も次回6月7日に実施される試験を受けてみようと思い、テキストを入手しました。

EPAは締約国ごとにルールが微妙に違います。しかし、どのEPAも骨格は似ており、一つのEPAを理解していれば、それを基軸に相違点を考えると理解しやすくなります。

テキストでは、日EU・EPAをベースにして解説しています。譲許表、原産地規則、運送基準だけでなく、通関や関税実務についても問われるので、まったくの知識ゼロでは難しいかと思います。

普段実務をされている方向けに感じますが、かといって、ベーシックではEPAについて深く掘り下げている印象はありません。B級ではもう少し詳しい実務知識が必要と思われます。

普段は目の前の業務にのみ目が行きがちで、全体の流れについてはふわっとした知識でやり過ごしてしまいがちです。試験勉強すると、あいまいな事柄も体系立てて知ることができます。

通勤に時間を取られることがなくなり、飲み会もだらだらした会議もなくなった今、時間を有意義に使うなら自分をブラッシュアップ!「おうち時間」に資格試験勉強、おすすめですよ。

2020/04/16
simalu 元通関士の実践コラム

農薬の輸入に規制はある?

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多くの農家さんにとって農薬は、害虫を駆除したり、農作物の発育を良くしたり、生産効率を上げる助けになるものです。

しかし一方で、農薬は人の健康や生活環境、生態系に悪い影響もあります。使用した農薬は残留農薬として農作物に残り、長期間にわたって採り続けると中毒や障害を引き起こします。

そこで、農薬取締法という法律で農薬について販売と使用の規制を行っています。これまで、農薬の安全で適切な使用とは「ヒト」への影響に重点が置かれていました。

しかし、世界では昆虫や鳥など、農作物に近い環境で暮らす生き物への影響を懸念し、農薬に対する規制が厳しくなっています。EU(欧州連合)では虫などの神経に作用する農薬の使用を禁止しました。

世界の動きや消費者の関心に呼応し、日本でも、2018年6月に農薬取締法が改正されました。

改正法では、農薬の再評価制度を導入。定期的に最新の科学的根拠に照らして安全性等の再評価を行うこととしています。また、ジェネリック農薬については登録申請が簡素化されます。これらは2018年12月1日より施行されています。

そして、2020年4月1日より、農薬使用者に対する影響評価と動植物に対する影響評価の充実等に関する改正規定が施行されます。

農薬取締法の平成30年改正
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaisei/h300615/index.html

では、農薬取締法の改正は農薬の輸入にどのような影響があるのでしょうか?

【農薬の輸入手続き】

農薬について、一部を除き、農林水産大臣の登録を受けなければ輸入してはなりません。(農薬取締法第3条第1項又は第34条第1項の登録を受けている農薬)

税関に提出・提示する書類等、および輸入通関の際におけるその取扱いは以下のパターンがあります。

1.登録を受けた農薬
登録票の原本又は原本と相違ないことについて証明された登録票の写しを提出又は提示。これにより許可承認等証明とする。

2.登録を要しない農薬
◇試験研究目的の輸入
◇植物防疫法の規定による防除のために使用する農薬の輸入
予め農薬輸入願を農林水産省消費・安全局農産安全管理課長に提出。輸入確認済み印を押印された農薬輸入願又はその写しを税関に提出又は提示。

3.農林水産省消費・安全局長作成の「農薬輸入リスト」に収載された農薬原体
通関の際に、農薬輸入リストを提示。輸入する農薬原体がリスト収載されている旨の書面を提出。

4.農薬輸入リストに収載されていない農薬原体の輸入
あらかじめ届出書を農林水産省消費安全局農産安全管理課長に提出。

農薬の輸出入について
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/export_import.html

【農薬取締法における農薬の定義】
◇農作物を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、草、その他の動植物又はウイルス(病害虫)の防除に用いられる殺虫剤、除草剤、その他の薬剤

◇農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤(肥料取締法第2条第1項に規定する肥料を除く)

◇病害虫の防除のために利用される天敵

*農薬と同様の有効成分を有する薬剤であっても、駐車場等に用いる除草剤など、農作物等使用でなければ法における農薬に該当しません。

法の改正に伴い、農薬登録を行うもの、つまり輸入者または登録外国製造業者は期限までに試験成績を提出して再評価を受けなければなりません。

再評価を行った際、安全性が確認できないとなれば、登録の内容の変更又は登録の取り消しもあります。再評価にあたって、その申請時点でのガイドラインに対応する必要があります。ガイドラインはOECDガイドラインに合わせ随時更新されるので、前回登録時と使用基準等が変わってしまうこともあります。

農作物の輸出を促進するためには、安全性の高い農薬使用が必要です。また、改正法は人や生態系にとって喜ぶべきことですが、再評価制度は輸入者や農薬メーカーにとって負担になることは否めないでしょう。

2020/04/07
simalu 元通関士の実践コラム

消毒液はどこで製造?輸入手続きは?

pic_tsuukan20200316まだまだ収束しない新型コロナウイルス。みなさん、対策はどうされているでしょうか?

マスク、手洗い、うがい、手指の消毒、人ごみを避ける、などできることはやっていますが、一気に日本中いや世界中でマスクなど感染症予防品の消費量が増えたため、手に入り辛い状況が続いています。

我が家ではマスクは何とか買えましたが、使い捨てマスクを使い捨てずにリサイクルしながらしのいでいます。自己責任です。ただ、手指の消毒液のほうは間に合わず。買いそびれたまま、ドラッグストアに行くたび、空っぽの棚を眺めています。

そこで、気になる手指の消毒液の製造場所や輸入手続きなどについてまとめてみました。

【消毒液はどこで製造?】
手指の消毒液に使われるのは主に消毒用エタノールです。エタノールはアルコールの一種で細菌を殺す性質があります。

化学的に合成されたものと、サトウキビやトウモロコシなど穀物原料から作られた粗留アルコールから精製するものがあります。

日本で消費される消毒液はその多くが国産ですが、原料である粗留アルコールはブラジルやアメリカから輸入されています。

粗留アルコールを大量に輸入してきて、日本で不純物を取り除き、精製されたのち、除菌消臭スプレーや手指消毒剤などの製品になります。

エタノールにイソプロパノールや保湿成分を添加した製品もあります。家庭用消毒液はほとんどがこちらのタイプです。エタノールと水だけでできた製品は医薬品で、酒税がかかります。

ちなみに、容器などは中国製のことも。現在、消毒液自体は製造できていても、容器の製造が間に合っていない、ともいわれています。しかし、これも中国国内の物流が回復すれば、解消すると思われます。

【消毒液の輸入方法は?】
製品化した殺菌消毒液は医薬部外品または医薬品です。輸入する場合、通常の輸入通関手続きに加え、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」通称「薬機法」の規制を受けます。

薬機法では、医薬品・医薬部外品を輸入販売するためには、それぞれの種類に応じた
・製造販売業許可
・製造業許可
を取得しなければなりません。

海外の製造所については、
・外国製造業者認定

また、製造販売業者は、医薬部外品について
・品目ごとの製造販売承認の取得
承認不要な医薬部外品の場合は、
・品目ごとに製造販売届書の提出が必要です。
これらの許可、承認等をそれぞれ指定の申請先から取得したのち、輸入手続きに入ります。

輸入通関の都度、税関に医薬部外品外国製造業者認定証の写しと輸入する品目の医薬部外品製造販売承認書、医薬部外品製造販売届書のいずれかの写しを提示する必要があります。

医薬品医療機器当方の対象となる品目の輸入・販売手続き
https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vi2-att/pdf_publications_0098ngb.pdf

医薬部外品には「殺菌」や「消毒」という言葉を表示することが認められています。性能や効能が想像できる表現をパッケージに表示できます。逆に言うと、実際に殺菌消毒効果があっても、医薬品や医薬部外品の承認がなければ、効能を示す言葉は使えません。

例えば、次亜塩素酸水なども殺菌効果がありますが、医薬部外品の承認を受けていなければ、「殺菌」「消毒」とは表示されていません。

一方、「除菌」「消臭」「抗菌」という言葉は医薬部外品等でなくても表示できます。ただし、明らかに殺菌するのに、「除菌」といった言葉で製品のイメージを和らげる表現を使用することも、薬機法に反します。

除菌グッズであれば、薬機法の規制の対象とならず、「雑品」として輸入できます。マスクやウェットシートなどが該当します。義務表示ではありませんが、日本衛生材料工業連合会による業界自主基準に基づく表示が定められています。

2020/03/16
simalu 元通関士の実践コラム

クルーズ船はどこの国の法律が適用?

pic_tsuukan20200215_2新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船が、港に停泊中。連日ニュースで報じられていますね。

豪華客船での楽しい旅行が一転、不安な日々を過ごすことになった方々のことを思うと、本当に気の毒としか言いようがありません。

他にも入港拒否され、アジアの海上をさまようクルーズ船もあります。

今回このような不測の事態が起こってしまい、マイナスイメージを持った方もいるかもしれませんが、本来クルーズ船旅行は楽しいもの。

充実のエンターテインメント、豪華な食事、寄港先での観光など、楽しさに溢れた憧れの存在です。

数か国に渡って寄港するクルーズ船。船内はどの国の法律が適用されるのでしょう?

船内の法律は、その船が登録されている国(旗国)と、沿岸国が関係しています。公海上(陸地から12海里(約22km)以上離れた海上)では旗国の法律が適用されます。12海里以内は領海ですが、領海内であっても航海中は沿岸国に危害を及ぼさない限り(無害通航権)、船内では旗国の法律が適用されます。

港に停泊中や湾内では無害通航権の適用範囲外となり、その国の法律が適用されます。ちなみに、船長が警察権を持っています。

寄港先で観光する場合、船を降りるときに検疫など入国審査が行われます。日本では近年クルーズ船の寄港回数が増えました。そのため、寄港地での滞在時間をなるべく長くしてもらおうと、簡易な手続きで入国できます。

カジノができるクルーズ船もあります。
日本籍船だと、日本の法律が適用されるので、チップを換金することはできません。カジノ風ゲーム施設はあるかもしれませんが・・・。

カジノが合法な国が船籍のクルーズ船ならカジノもOK、換金もできます。ただし、カジノができるのは、船が日本から公海上に出てから。

また、公海上に出ると、船内は保税区域の扱いとなります。免税品が買え、消費税もかかりません。

大規模な宿泊設備を備えることから、宿泊需要の対応策に活用することも可能です。クルーズ船を一定期間にわたって、ホテルとして活用することを「ホテルシップ」といいます。

近年のオリンピックパラリンピックやワールドカップなどでは、ホテルシップに4~5隻の客船が使われているそうです。

東京オリンピックパラリンピックでもホテルシップの停泊が計画されています。しかし、当初名乗りを上げていた船社はキャンセル。現時点でJTBのチャーター船サン・プリンセス(バミューダ)とコスタクルーズ(イタリア)のみのようです。

政府はホテルシップを活用するためのガイドラインを作成したのですが、これが許可の嵐で、外国船籍は断念する気持ちもわかる、というものでした。例えば、プールやお風呂の営業は各都道府県等の確認。理容・美容サービスの提供には都道府県知事への届け出。クリーニング業にまで許可が必要。

日本籍船の場合は、日本の法律の下運航しているので、もともと許可を受けています。しかし、外国籍船の場合、通常のクルーズ運航・停泊において、国内での営業とみなされず、個々のサービスについて営業許可の取得等は求められていません。

ホテルシップ期間中のみ、数々の営業許可や安全措置を講じるのは労力に見合わない、と判断されたのかもしれません。

さて、新型コロナの余波ですが、クルーズ船市場にも大打撃。まさか寄港先が見つからず洋上でさまようリスクがある、なんて誰も想像しなかったのではないでしょうか。どの国が船に対して責任を負うのか、国際ルール作りが急がれます。

安心してクルーズ船を楽しめるようになるには、しばらく時間がかかりそうです。

2020/02/15
simalu 元通関士の実践コラム

フリマアプリで売った商品が危険物だった!

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皆さん、メルカリなどのフリマアプリは利用しますか?

私は売る方も買う方も、メルカリにお世話になっています。

取引商品は本や子供服、おもちゃが中心です。

先日も子供がずいぶん前に卒業した仮面ライダーのベルト類を出品しました。

無事に買手が見つかり、梱包を済ませてコンビニから発送した後、配送業者から電話がかかってきました。

その内容は、「電池入っていませんか?」との問い合わせ。
電池・・・入っていました(汗)
ベルトや付属のアイテムは電池で動くもの。動作確認もして、入れっぱなしで送っていたのです。

幸い、アルカリ乾電池だったため、特に配送方法を変更することもなかったのですが、これがリチウムイオン電池だったら、ちょっと面倒だったかもしれません。

というのも、電池の場合種類によっては航空法で「危険物」に指定されているからです。

危険物とは、航空機や空港施設、そこで働く人々などに危険を及ぼす恐れがあるものとして、航空法で指定されたものをいいます。

航空法施行規則第194条
【輸送禁止の物質】

第1号 火薬類
第2号 高圧ガス(引火性ガス、毒性ガス、その他のガス)
第3号 引火性液体
第4号 可燃性物質類(可燃性物質、自然発火性物質、水反応可燃性物質)
第5号 酸化性物質類(酸化性物質、有機過酸化物)
第6号 毒物類(毒物、病毒を移しやすい物質)
第7号 放射性物質等
第8号 腐食性物質
第9号 その他の有害物件
第10号 凶器

航空法施行規則
http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000055.html

上記のものは輸送を禁止された危険物ですが、「航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示」にあるものは、航空機での輸送が可能です。

航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示
http://www.mlit.go.jp/common/001110763.pdf

告示では、輸送許容物質、許容量、輸送容器の形状や物質などが定められています。

航空法で危険物とされるものには、これが危険物?と意外なものもあるので、注意が必要です。

例えば、アルコール飲料。
アルコール度数70度を超えれば危険物です。アブサンやバルカン176など、世界にはとんでもなく高アルコール度数のお酒があります。

女性には身近な除光液やアロマオイル、化粧品も要注意。これらは引火性のある液体ですので、危険物として規制対象です。

危険物を航空便で場合は、輸送ルールに従います。
・危険物申告書の作成
・適切なラベルの添付
・品名ごとに定められた梱包方法
・品名ごとに定められた許容質量又は容量

航空機に積載禁止のもの、旅客機では送れないもの、機内持ち込みは可能なもの、貨物機なら送れる量など、告示には細かく定められています。

JALやANAなど航空会社のHPでは危険物申告書やラベルのダウンロードも可能です。

適切な梱包や申告がなければ、事故につながり大変危険ですので、危険物でないかの確認、危険物であった場合は輸送ルールを守って送りましょう。

2020/02/06
simalu 元通関士の実践コラム

日米貿易協定が発効。どんな物品が対象?

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日米貿易協定が2020年1月1日に発効しました。いつの間にか発効していたという印象ですが、皆さんどう感じましたか。

TPPの範囲内での関税撤廃、削減であるためか、二国間の協議の期間も国内での審議も短かったように感じます。

この度の日米貿易協定は、以前の記事でもふれたように、現時点では物品部分だけに限られた協定です。TPP11や日豪EPAなどのように人の移動やサービス面を含めた経済連携協定(EPA)ではありません。

TAGって何?FTAとどう違う?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2018-11-12

これまでも多くの国とEPAを締結し、運用していますが、近年になって原産品を証明する方法は自己申告が主流になっています。

日米貿易協定でも、輸入者による自己申告制度のみが採用されています。輸入者の代理人による作成は可能。輸出者・生産者による申告は不可、原産地証明書は不要です。

*TPP11、日EU・EPAでは輸出者または生産者による申告も可。

具体的な原産品申告書等の作成方法は、こちら。
https://www.customs.go.jp/roo/procedure/riyou_us.pdf

輸入者が日本語又は英語により作成します。製造工程表や材料一覧表など、原産性を確認できる書類も同時に提出しなればなりません。
また、税関は輸入者に対し、輸入された産品の原産性を確認するため情報提供要請を行うことがあります。

もし、企業秘密保持などの理由から輸入者が輸出者から手に入れることができない情報がある場合は、輸入者を介さずに輸出者・生産者から情報を直接送付することも可能です。

関税の撤廃、削減範囲は、協定の附属書Ⅰ(日本国)と附属書Ⅱ(米国)に規定されています。附属書Ⅱは英文のみ。

では、どの物品が協定の対象品目なのか?

日米それぞれに譲許範囲が異なっており、

日本側:010121.290~382370.000
米国側:06023000~96121090

が対象です。HS2017を適用。
HSコードは前半が肉類や農水産品なので、日本側は多くが肉類や農水産品、米国側は農水産品から機械類まで幅広く対象であることが分かります。

ただし、機械類はそもそもほとんどが無税で日本に輸入できるので、日本側が少ないじゃないか、とはなりません。

輸入したい、輸出したい物品の6桁までのHSコードが分かれば、原産地規則を確認します。

税関の品目別原産地規則検索を使えば、品目別の原産地規則が分かります。
https://www.customs.go.jp/searchro/jrosv001.jsp

原産地規則とは、輸入貨物の原産国を決定するためのルールで、品目や各EPAによって異なります。原材料からすべて1か国で生産・加工された貨物であれば完全生産品として間違いなくA国原産の貨物ですが、たとえば原材料はB国、実質的な加工をして製品にしたのがA国となれば、A国が原産国となります。
しかし、EPAや品目によってはその原材料に関してEPA協定税率を適用できないルールが存在することがあります。

それを確認するのに便利なのが、上記の品目別原産地規則検索ページです。

小さな部品など複数国の原材料を使用している場合など、調べてみても分からない場合は、税関の事前教示制度を利用することも可能です。
また、過去の事前教示もとても参考になります。税関HPから照会できますので、利用してみてください。

2020/01/21

輸入品が欠陥品!損害賠償は輸入者負担って本当?

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購入した製品の欠陥によって、ケガをしたり、火事になったり持ち物が壊れるなど、消費者が損害を被った場合に消費者を守る法律の一つに、PL法があります。

PL法は、製造物責任法のことで、1995年に施行されました。

「製品の欠陥によって生命、身体または財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者が製造会社などに対して損害賠償を求めることができる」法律です。

製品の欠陥が消費者の受けた損害の原因である場合に、製造業者等が賠償責任を負います。

「製造者が賠償責任を負う」とありますが、輸入品の場合、その製品を輸入した輸入者がその責任を負います。

そこで今回は、製造者ではない輸入者が気をつけるべき「PL法」と、そのリスク回避のために有効な「PL保険」について紹介しようと思います。

【PL法とは】
PL法では、製造者に「過失」がなくても、
・損害があったこと
・製品に欠陥があったこと
・欠陥によって被害が生じたこと
を証明すれば、被害者(消費者)は製造者等に賠償責任を求めることができます。

賠償責任は製造者にあるので、日本国内で製造されたものであれば、日本の製造者に賠償請求します。また、製品回収(リコール)も製造者が行います。

被害者は国内製造者には直接訴えることができると考えられている一方で、輸入品は被害者が海外の製造者に直接責任を問うことが困難と考えられています。

また、輸入業者が日本国内における流通の最初の事業者です。そのため、輸入者がその責任を負うこととなっています。
 
ただし、個人輸入代行や通関代行など単に名目的な輸入者である場合は全責任を問われないこともあります。

ですので、輸入業者は欠陥のない安全な製品を輸入する責任があります。PL法以外の数々の国内法(食品衛生法や消費生活用製品安全法など)についても、輸入者が責任を負います。

本来であれば、製造者が負うべき賠償責任です。被害者を救済するため、便宜上、製造者に代わって責任を負っているので、事故発生時には輸入者から海外製造者に損害賠償を求めることができます。

ただし、事前の費用負担割合の取り決めや賠償責任についての契約がないと、責任を逃れられてしまいます。

そこで、契約の際には以下のことを確認することが有効です。
・取扱説明書等、消費者が製品を使用するうえで必要な情報の表示や警告がされているか
・輸入者、輸出者、製造業者がPL法の知識を持っているか
・輸出者または製造者に日本を含む海外PL保険に加入してもらう
・製品の欠陥による損害賠償を製造業者に請求する旨の条項を契約に盛り込む
・輸入者は製造業者と製品の安全性の評価を行う(そもそも安全性の確認できない商品は輸入しない!)

【PL保険】
PL保険は、日本国内で請求された損害賠償を補償する保険です。
損害賠償金、弁護士費用等訴訟費用、被害の拡大防止のために支出した費用などが補償されます。

製造者のほか飲食業や工事業、販売業などが加入できる保険で、輸入業は販売業にあたります。

リコール費用補償も特約で付保できます。

PL保険の保険料は、年間売上高や業種、支払い限度額などによって決まります。例えば個人輸入のような比較的小規模なビジネスの場合、年間保険料は1万円未満。大企業で売上高も多ければ年間数十万円になります。

全国の商工会議所が提供する中小企業PL保険や、楽天市場店舗限定経営者向けPL保険などは、団体保険なので保険料が安いという特徴があります。ただし、先に会員になる必要があります。

そのほか、三井住友海上や各保険会社が提供するPL保険があります。

輸入した製品に万が一事故が起こった場合には本当に大きな負担額になりますので、PL保険加入は必須のリスクヘッジです。

2020/01/14

手荷物は電子申告でスマート入国

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楽しい海外旅行から帰国。早く家に帰ってホッとしたい。

でも、空港の入国カウンターは長蛇の列・・・。

入国カウンターをやっとのことで通過したら、次は預けた荷物が回ってくる黒いベルトをぼーっと眺め。

やっと回収したスーツケースを引きずり、今度は通関カウンターの列へ並び・・・。

いつになったら空港から出られるの!!

外国人観光客が増える中、この「日本に帰国したのになかなか空港から出られない問題」は相当ストレスですよね。到着が夜なら電車やバスの終了時間が気になります。外国人観光客なら、その日のうちに次の移動や観光をしたいですよね。

そこで政府は日本に入国する人がスムーズに、かつ旅具通関はきっちり行うために、携帯品・別送品の申告がない人は自動カウンターで出国できるようなシステムを導入しています。それが、税関検査場電子申告ゲートです。

こちらはまだ、成田空港第3ターミナルだけの運用ですが、2020年春には成田空港第1・第2ターミナル、羽田空港や関西空港など全国の主要な国際空港で運用開始予定です。

税関HP:税関検査場電子申告ゲートの運用開始
http://www.customs.go.jp/kaigairyoko/egate.htm

【利用方法】
1.電子申告ゲートの利用にはスマホやタブレットに税関申告アプリをダウンロードします。(スマホ持ってないよ、という方はゴメンナサイ)

2.アプリをダウンロードし、案内に従って必要事項を入力していくと、「携帯品・別送品申告書」情報の含まれたQRコードが作成されます。

3.電子申告端末に、税関申告アプリで作成したQRコードとパスポートを読み取らせます。この端末は顔撮影も行い、パスポートの顔画像と照合して本人確認を行います。電子申告端末は税関検査場に設置されています。機内預け手荷物が流れてくるターンテーブルの近くにあります。

4.手荷物を受け取ったら、電子申告ゲートを通り、無事日本に入国です。
ただし、電子申告ゲートは非課税者対象です。課税対象者にはゲート出口が開きません。

【注意点】
・電子申告端末は顔の撮影を行います。機器の都合上、身長100㎝以上の人のみ利用できます。

・家族でも、一人ずつ手続きを行わなければなりません。紙の申告書の場合、家族が同時に検査を受ける場合は、代表者で構いません。家族旅行で、特に子供がいる場合は、従来通り紙の申告書で行う方がよさそうです。

・課税申告の携帯品がある場合、税関に申告しなければなりません。その場合、有人カウンターに行く必要があります。

・海外からの引っ越しなどで別送品がある場合は、申告書に入国印をもらう必要があるので、有人カウンターに行きます。

・颯爽と電子申告ゲートに向かっていても、税関職員に検査カウンターに誘導されれば、荷物を開示しなければなりません。また、税関管轄の電子申告端末は、出入国審査を行う顔認証端末とは別物です。所管官庁が違うので仕方ないのかもしれませんが、一緒にできなかったのかな、とも思います。

顔認証システムが実用化され、セルフでの搭乗手続きも計画されています。混雑回避のためにどんどん新しいシステムが運用され、出国時も入国時も、空港滞在時間のさらなる短縮が見込まれます。

税関:YouTube「スムーズで快適な旅を ~税関検査場電子申告ゲート~」(15秒)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=gBl7k2xk_OI&feature=emb_logo

2019/12/10

今年も盛況!中国の「双十一」独身の日は何が売れる?

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11月11日と言えば、記念日が乱立する日。

漢数字にすると十一がプラス極とマイナス極に見えることから「電池の日」。1が並んでいるので、その見た目から「ポッキー&プリッツの日」や「立ち飲みの日」「チンアナゴの日」、「美しいまつ毛の日」といったものまであります。

一方、お隣の国中国では「独身の日」です。

もともとは南京大学の学生が考えた記念日ですが、その記念日を近年盛り上げているのが、「タオバオ(陶宝)」や「Tモール(天猫)」などECサイトで実施される大規模なセールです。

2009年にアリババが始めた独身の日のセールは「双十一(シュアンシーイー)」と言います。今ではアリババグループだけでなく、他のECモールもセールを実施しています。

毎年売上高を更新しており、セール開始何分で取引額がいくらに達したかという速報が、さらにセールを盛り上げています。今年も「天猫」だけでセール開始1分36秒で約100億元(1元=15.5円)を達成。総取引額は2684億元だったようです。

中国経済は減速したとはいえ、動くお金は日本とは桁違いですね。開始数分で取引額がはね上がるのには、ちょっとしたカラクリがあります。実は10月中旬から予約販売が始まり、デポジットを払うことで11日に注文が成立。消費者はセール価格で取引でき、売手は1カ月以上販売期間を担保できるというわけです。

取引額上位はスマホや電化製品で、APPLE、小米、HUAWEIやハイアール、LENOVO等のメーカー品がよく売れています。中国人はAPPLEが大好き。米中貿易戦争どこ吹く風といった様相です。

他にも、NIKEやadidas、ZARAの旗艦店が取引額上位にいます。日本ブランドではユニクロやパナソニック、資生堂、花王などがよく売れます。特にユニクロは売上ランキングTOP10入り。日本ブランドも含め、輸入商品は全体の1割ほどで、海外ブランド大好きな中国人の消費を底上げしたと言えます。

日本製品など海外製品を取り扱っているのは「天猫国際(Tmall Global)」や「海dun全球(JD Worldwide)」(京東集団)が大手です。こららのECモールでの買い物は個人輸入に近く、越境ECと呼ばれます。天猫国際は中国に現地法人を持たなくても出店できます。

毎年日本の製品でよく売れているものの一つが、おむつやおしりふきといったベビー用品です。(「独身の日」はもはや関係ありません)しかも人気があるのは「メイド・イン・ジャパン」のものです。

日本メーカーのおむつであっても、中国で製造されたものは評価が下がるようです。この価値観、日本とは逆ですね。中国人は自国製品に対する不信感が強く、特に子供には少々高くてもいいものを使いたい、という気持ちが強いです。

また、実店舗で売っているものには偽物が混ざっている可能性もあるので、メーカーのECモールの旗艦店で購入することを選ぶ傾向があります。前述のおむつを例にとると、ユニ・チャーム(ムーニー)は現地工場で生産する地産地消のスタイル。実店舗も構えましたが、EC市場が席巻していく中で、伸びが鈍化してしまいました。

一方、中国進出後発組の花王(メリーズ)は、メイド・イン・ジャパン。EC対応も成功し、急速にシェアを伸ばしています。

日本製おむつの人気に火が付いたのは2012年頃です。中国の転売業者が日本のドラッグストアでおむつを買い占め、中国に転売。日本のドラッグストアからおむつが消え、騒がれました。

その後、2019年1月に中国で電子商取引法(EC法)が施行され、転売ビジネスの取り締まりを強化。転売業者も含めた爆買いは落ち着き、それまで爆買いの恩恵を受けていた小売業者やメーカーは売り上げを落としました。

※参考サイト:「中国爆買いが終えん、トレンドは越境ECへ?」
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-06-07

転売が横行すると、価格の高騰やブームが去った後の安売りなど、メーカー側の価格やブランドイメージのコントロールが効かないというリスクがあります。

EC法では、それまで野放し状態であった転売を目的とした小規模事業者も「EC事業者」としての登録と納税の義務が課されています。プラットフォーマーの義務や責任も明確になりました。あいまいで無責任な個人を含む転売業者を締め出すことで、一般消費者にとって、ECサイトが購入しやすい環境に整ったと言えます。

そもそも、転売業者頼みのインバウンド消費が、ねじれた状態だったのかもしれません。花王のように、敏感にEC対応した企業が、生き残っていくのだと思います。

2019/11/21

個人輸入なら増税の影響を受けない!?

pic_tsuukan2019111010月からの増税、やはり家計を直撃しているようです。

軽減税率が適用される食料品や新聞などでも、仕入れに消費税が関わるので最終的な小売価格は上がります。

特に、女性の場合はメイクやスキンケア用品の増税が痛い! 食料品と同じで、毎日消耗するものです。

買い控えるのも、品質をグレードダウンすることも難しいジャンルです。(年齢とスキンケア用品の価格は比例しますorz)

ドラッグストアで売っているプチプラコスメはともかく、百貨店のブランド海外コスメはやや高額。高額商品ほど増税分が大きく家計に響きますから、できるだけ安く手に入れられたらうれしい。

そこで、増税の影響を受けない方法は?!

それは、個人輸入です。
「個人輸入」とは一般的に、「外国の製品を個人で使用することを目的として、海外の通信販売会社、小売店、メーカーなどから、個人が直接購入すること」といわれています。

では、個人輸入なら消費税免税で増税の影響を受けないのか、というと、これにはいくつか条件があります。

◆免税条件その1
転売など販売目的ではないこと。自分用に買って自分で使うものです。他人にプレゼントするものも原則OK。
販売目的で輸入すると「商業輸入」となり、様々な輸入規制を受けます。

◆免税条件その2
1インボイスの課税合計価格が1万円以下であること。
個人輸入の場合、課税価格とは海外の小売価格に0.6掛けした金額です。

一方、商業輸入では運賃、保険を含めたCIF価格が課税価格となります。
郵便物の重量制限などにより分割して梱包されている場合、その合計金額が課税価格となります。

◆免税条件その3
革製のバッグ、パンスト・タイツ、手袋・履物、スキー靴、ニット製衣類等の「関税を免除しない物品」として定められた物品でないこと。

免税の範囲は消費税だけでなく、関税も含みますが、たばこ税・たばこ特別消費税および酒税は免税になりません。

医薬品・化粧品等の個人輸入の場合、原則として地方厚生局に輸入報告書等を提出して、当該貨物の輸入が「販売・貸与・授与」でないことの確認を受けなければなりません。(いわゆる「薬監証明」の取得)

ただし、「既定の数量」以内であれば薬監証明は必要ありません。
例えば、化粧品であれば標準サイズで一品目につき24個以内です。これら数量は厚生労働省省HP等で公表されています。

※参照サイト:厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/0104/tp0401-1.html

海外から個人輸入する場合、説明書やパッケージが日本で販売されているものと違っていたり、販売地の言語表記だけだったりします。そのため、用法や容量を間違ったり、トラブルがあった場合の対処方法が分からなかったり、というリスクがあります。

また、日本で販売されているものであれば、品質や有効性、安全性の確認がされており、それでも健康被害が生じれば救済制度があります。

しかし、海外から個人輸入したものの品質や安全性は日本国内では確認されておらず、リスクに対する救済制度もありません。ですので、厚労省で公表されている健康被害が生じた製品情報を、随時確認しましょう。

ワシントン条約で規制されている植物などを含む製品や指定薬物など、輸入が禁止されているものの輸入もできません。

リスクがあることを十分踏まえたうえで、信頼できる通販サイトなどを利用しましょう。今までよりお得にお買い物ができるかもしれませんよ。

※参照サイト:厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html

2019/11/10

ワールドカップの通関はどうなってるの?

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ラグビーワールドカップ、盛り上がっていますね。

今回は自国開催ということもあり、ラグビーを応援する人がとても増えましたね。

連日の熱戦に大興奮。しかも日本は8強に入る大健闘をしました。

残念ながら、準々決勝で南アフリカに惨敗したものの、ONE TEAMで戦う姿は観る人を魅了し大きな感動を与えてくれました。

来年には東京でオリンピック・パラリンピックも開催されます。

ワールドカップやオリンピックのような国際大会では、使用する競技用品や選手の手荷物など、様々な物品が国をまたいで行き来します。

これらの物品、文化や学術振興のために使用されるものとして再輸出免税の対象であり、輸入時には関税・消費税が免税で輸入することができます(関税定率法17条)。

また、関税定率法17条で規定されている再輸出免税の対象は以下の通りです。

(1)加工される貨物又は加工材料となる貨物
(2)輸入貨物の容器
(3)輸出貨物の容器
(4)修繕される貨物
(5)学術研究用品
(6)試験品
(7)輸出入貨物の試験機器
(8)注文の取り集め又は製作のための見本等
(9)国際的な運動競技会及び国際会議等の使用物品
(10)巡回興行用物品および映画撮影機械等
(11)博覧会、展覧会、共進会、品評会等への出品物品
(12)一時入国者が携帯又は別送して輸入する自動車等
(13)条約の規定により免税される再輸出貨物

これらは輸入の許可の日から1年以内に輸出されるものについて、その関税が免除されます。

(1)の加工材料とは、
  彫刻、塗装、印刷、めっきなどを施すために輸入する製品
  糸や織物の漂白、プリントなど
  フィルムの現像等
です。これは、日本の加工貿易の振興のための免税措置です。

(2)・(3)の輸出入貨物の容器とは、シリンダー、コンテナ、糸巻などで、貨物の運送のために反復使用されるものです。

(9)は審判機器や記録の集計に使う機械など。会議場で使用される同時通訳装置や標本、フィルムなども含まれます。

(10)は演劇や音楽などのステージで使用する機材などです。

(13)の条約とは、ATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)などです。ATA条約でも、商品見本や展示物品の免税扱いでの一時輸入通関について規定しています。

何か国にもわたって行き来する物品では、ATA条約下での通関を利用するのが一般的です。

再輸出免税を適用して輸入した物品は、再輸出される際に輸入時と同一品であることを証明しなければなりません。

この証明ができない、又は一年を超えても再輸出されない場合、関税を徴収されます。また、必要に応じて担保の提供を求められます。

ちなみに、大きな国際大会では、スムーズで円滑な通関手続きができるよう、公式スポンサーが選出されています。東京2020組織委員会の公式荷物輸送スポンサーは、ヤマトホールディングスとなっています。

税関HP:再輸出免税貨物の手続き
http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1610_jr.htm

らくらく貿易用語集:カルネ
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/c009-2

2019/10/22

二つの意味がある?「シップバック」に注意!

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貿易の現場で、しばしば使われる「シップバック(Ship back)」という言葉、場合によって指している意味が若干異なります。

あ、そういえば・・・と思い当たる人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、改めてシップバックの2つの意味を整理してみたいと思います。

輸入通関前の保税地域での内容点検時に、しばしば貨物が契約内容と違う違約品であることがあります。

この場合の選択肢として、「積戻し」をするか、一旦輸入して「再輸出」をするかでしょう。

この時、「積戻し」にしても「再輸出」にしても、貿易現場ではざっくり「シップバック」と呼んでいることが多いようです。

ですが、関税法上はこの二つには、輸入許可前か後かという違いがあります。

【シップバック=「積戻し」を指すパターン】
関税法上の「積戻し」とは、外国貨物を日本から外国に向けて送り出すことです。外国貨物とは輸入申告許可前の貨物です。

外国貨物のままですが、税関に対して積戻し申告を行わなければなりません。実質的には輸出となり、輸出申告に準じた手続きが必要です。

インボイスやパッキングリストなどは輸出者と輸入者が逆になるわけですから、改めて買主(積戻し申告上の輸出者)が作成します。

必要に応じて書類審査や貨物検査になることも。積戻し許可後は通常の輸出と同様の手順で船積みします。

【シップバック=「再輸出」を指すパターン】
「再輸出」とは、輸入許可を受けた内国貨物を日本から再度外国に向けて送り出すことです。
保税地域で違約品等であることに気づかず、輸入者の手元に貨物が渡った後に、貨物を送り返す場合に再輸出となります。

違約品等の再輸出は、納付した関税等の払い戻しを受けることができます。ただし、貨物の形状・性質に変更を加えないこと、当該貨物が輸入許可の日から原則6カ月以内に保税地域に搬入されること、が要件です。

再輸出のために貨物を保税地域に搬入後、「違約品等保税地域搬入届」を提出。搬入が確認されると「違約品等保税地域搬入届受領書」が交付されます。

その後、通常の輸出手続きを行います。関税等を払い戻してもらうには、「違約品等の輸出に係る関税払戻し(減額・控除)申請書」2通と以下の添付書類を税関に提出します。

添付書類
1.「輸入許可書」またはこれに代わる税関の証明書
2.「違約品等保税地域搬入届受領書」
3.違約品であることを証明する書類

シップバックは売主が送り返された貨物を引き取ってくれなければ成立しません。契約時には、万が一シップバックする場合の費用負担や現地の輸入規制などを確認しておきましょう。

参考 貿易用語集:シップバック
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/s012

2019/10/07

輸入申告時ロイヤルティは課税価格に加算?

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輸入貨物のインボイス価格は輸出者(売手)と輸入者(買手)の契約によって決まります。

そのため、その価格は加工費の場合や、日本や第三国から供給された材料費、金型の使用料、運賃・保険料などが含まれていないことがほとんどです。

輸入申告時の申告価格を算出するには、運賃や保険料、インボイス価格に含まれていない材料費などを加算する必要があります。

これら、インボイス価格以外の加算要素には、意匠権や商標権、特許権などロイヤルティも含まれます。

そこで今回は、申告価格(課税価格)におけるロイヤルティの取り扱いについてお話ししたいと思います。

関税定率法第4条第1項第4号:

「当該輸入貨物に係る特許権、意匠権、商標権その他これらに類するもの(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く。)で政令で定めるものの使用に伴う対価で、当該輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により直接又は間接に支払われるもの」

関税定率法第4条には、上記の価格を課税価格に加算しなければならないことが明記されています。

ロイヤルティは、ほとんどの場合、売手と買手の間でやり取りするインボイス価格に含まれません。ですので、加算しなければならないにも係わらず、見落とされて申告されているケースも多いのです。

そのため、事後調査で追徴課税になることも多いそうです。

ただし、全てのロイヤルティが課税価格に含まれるわけではありません。

加算要素となるロイヤルティは、
・輸入貨物に係るもので
・輸入貨物の輸入取引をするために
・買手により直接または間接に支払われるもの
です。

以上3つの条件がそろったものが加算要素になります。

通達では、「買手が当該対価を特許権者等に支払わなければ、実質的に当該輸入貨物に係る輸入取引を行うことができないこととなる又は行われないこととなるもの」と規定されています。

ライセンサーは売手や輸出者と同一であっても第三者であっても関係ありません。また、ライセンサーの所在(国)にも関係しません。関係者に特殊関係が存在してもしなくても、です。

加算するかどうかの判断は売買契約やライセンス契約の内容、取引実態などから行います。

例えば、
・商標権者はA社。A社の子会社である売手からA商標の付された商品を輸入。買手はA社とライセンス契約を締結。A社にロイヤルティを支払う場合
・買手は商標権者である売手とライセンス契約を結んでおり、貨物代金とは別にロイヤルティを売手に支払う場合
・商標権者である売手と買手はライセンス契約を締結。売手から貨物を輸入。輸入後に商標を付す場合
・売手の持つ特許製法を使用した材料を使用した商品を輸入。買手がロイヤルティを支払わなければ特許製法で製造した材料を含む商品を輸入することができないことになっている場合

上記のような場合はロイヤルティを課税価格に加算します。

反対に、ロイヤルティを輸入貨物の課税価格に加算しない場合もあります。

例えば、輸入取引に際し、ライセンサーと製造者の関係性が認められず、ライセンス契約に関して製造者に直接行使することができない場合などです。

この場合、ロイヤルティの支払いが売手と買手の輸入取引に影響しないため、課税価格に加算しません。

2019/09/27

韓国向け輸出管理が見直されました

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中国と米国の米中貿易戦争が長引いていると思っていたら、今度は日本と韓国で貿易をめぐる争いが始まってしまいました。

内容は、韓国を「ホワイト国」から外すこと。そして韓国へ輸出する特定貨物及び技術提供の規制です。

日本は韓国が安全保障上信頼できる国ではない、として、今まで与えていた輸出の優遇措置を止め(非ホワイト国)、輸出管理の厳格な制度運用を行うことにしました。

そこで今回は、輸出貿易でポイントとなる「輸出貿易管理」について簡単に解説します。

商品の輸出は相手さえいれば誰でも簡単にできます。しかし、何でもかんでもどこへ向けても輸出できるか、というとそうではありません。外為法に基づき、大量破壊兵器や通常兵器の開発・製造につながる貨物と技術の管理を実施しています。

外為法で規制されている貨物や技術を輸出しようとするものは、原則として経済産業大臣の許可を受けなければなりません。規制を受ける仕向地や貨物は輸出貿易管理令に定められています。

いやいや、兵器の開発や製造につながるものなんて輸出しないよ、といっても、製造者が思う用途と使用者の思う用途が違う場合があります。武器開発に使うことができるものを輸出管理しなければなりません。これは輸出者が思いもよらない軍事転用へ加担してしまうことを防ぐためでもあります。

具体的な運用は
「リスト規制」と「キャッチオール規制」により行われます。

◆リスト規制とは

貨物や技術の機能や性能(スペック)に着目した規制です。輸出貿易管理令別表第1の1から15の項に該当する品目が対象です。技術は外為法別表に規定。スペックや機能は経済産業省令で具体的に定められています。

スペックを満たした規制に該当する貨物(技術)を輸出する場合、原則、経済産業大臣の許可が必要です。

品目が同じでも、省令で定めるスペックに満たない場合、リスト規制対象外になります。この場合、経済産業大臣の許可は不要ですが、リスト規制に該当しないことを証明する書類等(非該当証明書、項目別対比表、パラメーターシート等)を税関に提出しなければなりません。

リスト規制対象地域は全地域です。特に国際的な懸念のある地域として、イラン、イラク、北朝鮮が指定されています。

◆キャッチオール規制とは

需要者や用途に着目した規制です。リスト規制に該当しない品目を補完的に規制しています。A.大量破壊兵器キャッチオール規制とB.通常兵器キャッチオール規制があります。

輸出貿易管理令別表第1の16の項に掲げられています。兵器開発と関係ないと考えられる食品や木材以外のすべての品目(技術)が対象です。

A. 大量破壊兵器キャッチオール規制

許可申請が必要なのは「客観要件」に該当する貨物です。客観要件には用途要件と需要者要件があります。当該輸出に関する契約書や文書より、用途が兵器開発に該当する(用途要件)、輸出する貨物が経済産業省の公表する「外国ユーザーリスト」掲載の企業(需要者要件)である場合、許可申請が必要です。ただし、需要者要因では兵器開発使用でないことが「明らかなとき」を除きます。

また、経済産業大臣が輸出者に輸出許可・役務取引許可の申請をすべき旨の通知をする場合があります。これを「インフォーム要件」といいます。

規制対象地域は「ホワイト国」以外の全地域です。
ホワイト国は輸出管理に関する国際条約及びレジームに参加しており、キャッチオール規制を厳格に実施している国です。

27か国がホワイト国に指定されていましたが、韓国は8月中旬をもって外されることになっています。

B. 通常兵器キャッチオール規制

仕向地により許可申請の要件が異なります。用途要件、またはインフォーム要件により判断されます。

また、日本を経由しない仲買貿易取引も規制対象です。
無許可で該当貨物(技術)を輸出・取引したものには厳しい罰則が科されています。

輸出貿易管理令及び外為法は毎年国際情勢を鑑みて改正が行われています。でも、いまだかつてこんなにこれらの改正が注目されたことはありません。韓国がらみのことは、それだけ各方面に影響があり、一般の人にも響く事柄だった、ということでしょう。

輸出管理の話は過去コラムや貿易用語集にとても詳しく書かれていますので、ぜひ一読してみてください。

貿易コンプライアンス
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/t080-2

ホワイト国
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/w032-2

ワッセナーアレンジメント
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/w024-2

2019/09/13

消費税増税でどうなる輸入申告?

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令和元年10月1日から消費税が8%から10%に増税する予定です。

消費税増税に伴い、輸入貨物に係る消費税も増税となります。

ご存知の通り、今回の増税では「飲食料品」に軽減税率が適用されます。標準税率が10%、軽減税率が8%です。

「飲食料品」とは、食品表示法に規定する「食品」のことを指し、「人の飲用又は食用に供されるもの」を指します。

ただし、酒税法に規定する「酒類」、医薬品医療機器等法上の「医薬品」「医薬部外品」「再生医療等製品」は除きます。

「人の飲用または食用に供されるもの」とありますが、輸入申告の際にどういう用途で輸入されるかがポイントになります。例えば、塩や重曹、クエン酸などは食用と工業用、どちらの用途にも使えます。食用に供する場合は軽減税率で、それ以外の用途は標準税率を適用します。

また、輸入申告時に人の飲用または食用として軽減税率を適用したものの、国内で飲食用以外のものとして販売又は使用されても、遡及して差額税を求められることはありません。

包装材料や包装容器も飲食料品に含みますが、別々に提示されるものは認められません。

飲食店で食事をする場合、飲食代には標準税率が適用されます。しかし、飲食店がその食事を提供するために輸入する食材については、「飲食料品」の輸入になり、軽減税率が適用されます。

食玩はどういう扱いになるのでしょうか?スーパーではお菓子売り場に陳列してある食玩。プラスチックやゴム製のおもちゃに少しばかりのラムネやガムなどのお菓子が入っています。

こういったセットで販売されるもので、課税価格が分けられていないもののうち、関税率表の適用上の所属の一の区分に属する物品を「一体貨物」や「一体資産」と呼びます。

一体貨物のうち
・一体貨物に係る消費税の課税価格が1万円以下で
・一体貨物の価格のうち、食品に係る部分の価格の割合が2/3以上
のものは、軽減税率が適用されます。

上記以外の一体貨物については標準税率が適用されます。

セットで販売されるものでも、関税率表において税番を分けて申告しなければならないものは一体貨物とみなされません。その場合、それぞれの課税価格を算出し、飲食料品とそれ以外に分けて申告します。飲食料品部分にのみ軽減税率が適用されます。

上記の食玩の場合ですが、例えばプラスチック製の人形にラムネが一粒入ったセットだと、9503.00-000が該当します。この項には少量のお菓子も含みます。ですから、「関税率表の適用上の所属の一の区分に属する物品」であり、「一体貨物」に該当します。

しかし、少量のお菓子は課税価格の2/3以上ではありません。したがって標準税率が適用されます。

NACCSは2種類の消費税に対応するため、仕様変更します。新たに「内国消費税等種別コード」が設けられ、一つの輸入申告で複数の消費税率の入力が可能になります。

2019/08/27

マネーだけじゃない!鰻のロンダリングって?

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今年も暑い夏が真っ盛りですね。

暑くなると食べたくなるのが鰻ではないでしょうか。

しかし、近年不漁続き。養殖ウナギはウナギの稚魚を採捕して養殖池で大きく育てたものです。そのウナギの稚魚であるシラスウナギがどんどん捕れなくなっているのです。

これはメディアでも報道されている通りで、価格もどんどん値上がりしています。あまりにも急に捕れなくなり、個体数が激減していることから、絶滅危惧IB種に指定されているくらいです。

本来ならパンダやトキのように、日本はじめ生息地域の国々が協力して種を保存するための保全活動を行うべきなのですが、ウナギについては保全が進んでいないのが現状です。

養殖するために捕るシラスウナギは日本、台湾、韓国、中国などに生息しています。昔は日本の河口でもたくさん捕れ、国産の養殖分は賄えていました。

しかし、足りない分、というか「土用の丑の日」に間に合うように育てることができるシラスウナギは台湾の漁期に捕れるもの。ところが台湾はシラスウナギの輸出を禁止しています。

日本に輸入されてくるシラスウナギの出どころは全てが香港からです。ですが、香港ではシラスウナギ漁がおこなわれていません。どうやら台湾や中国本土から香港に密輸されたものらしいのです。台湾から香港に密輸、香港から日本に合法的に輸出、これがウナギロンダリングです。

また、輸入分以外は国内採捕で賄っています。こちらも正式なルートではなく、無許可で行う密漁や、許可を受けた採捕者が過少報告(無報告漁獲)し無報告分を密売するなどの違法行為による流通分が6~7割程を占めるのだそうです。これらは反社会的勢力の資金源にもなっています。

出所が違法であっても、日本の養鰻場に入れられ大きくなった鰻は「日本産」鰻です。販売時にはどこから来たのか問われません。

ブロックチェーン技術などを利用して、流通をトレースできるようにすれば、適切な取引によるものだけを流通させることが可能です。しかし、利害関係が固定化し、利益を得ている個人や組織がルールの変更に反対しています。

また、小売業者や生協は違法行為による流通がまかり通っていることを認識しながら、販売に対しては特に行動を起こしていませんでした。

日本政府にしても、好ましくないとしながら強く取り締まっていません。まあ、「いろいろ」あるのでしょうね。

しかし先日、イオンが新商品「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」の販売を発表しました。こちらの商品の特徴は「シラスウナギの産地までトレースできる」こと。

大手の小売業者からこのような取り組みがされたことは大きな意義があります。他の小売業者や生協に対するインセンティブとなります。

イオンはこのほか、インドネシアで「持続可能なウナギ養殖」のプロジェクトを進めています。このような取り組みがこの先先細っていくであろう資源の持続的利用のモデルになれば、と思います。

養殖池で育てた魚の卵を稚魚に、稚魚から成魚に育てる完全養殖技術が確立されれば、ウナギ不足やさらには絶滅という危機に陥る状況は避けられます。しかし、ウナギは謎多き回遊魚。エサの開発や水槽で育てるとなぜか全てオスになるなど、難しいのだそうです。

消費者としてどういう行動するか、それは究極的にはトレースできない食品は買わないことです。安全性も高く、何か問題があった場合に改善策や対応がしやすい、「産地までトレースできる食品」を選ぶといいのではないでしょうか。

2019/08/06

物流xブロックチェーン技術は相性抜群!?

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仮想通貨ビットコインが世間を賑わせた頃、「ブロックチェーン」という言葉を初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか?

物流業界にもブロックチェーン技術を活用すると様々なメリットがあり、実用化が期待されています。

海運会社最大手のMaersk(マースク)とIBMは合弁会社「TradeLens」(トレードレンズ)を設立しました。

トレードレンズが提供するのは、参加するすべての企業や公的機関が、海上コンテナ輸送で発生するすべての荷動きと関係書類をリアルタイムに共有できるシステムです。

欧米を中心に世界に広いネットワークを持つMaerskはアメリカ、EU圏だけでなく、シンガポール、ペルー、オーストラリア、サウジアラビアなどの国や地域と連携しています。

2019年に入ってからは、サウジアラビア政府の協力を得て実証実験を行っています。サウジ政府と民間を結ぶ貿易シプラットフォーム「FASAH」にトレードレンズがインテグレーション(統合)し試験運用されています。

また、韓国のSamsung SDSは韓国税関サービス(KCS)及び48社の海運会社や保険会社、政府機関が参加するコンソーシアムと連携してブロックチェーンを利用した自動輸出通関システムの開発を進めています。

日本では、NTTデータが中心となり船会社、銀行、保険、物流、輸出入者など貿易業界に関係する代表13社でコンソーシアムを発足。貿易情報連携基盤の実用化に向け、各セクションで実証実験を行っています。

では、ブロックチェーン技術の活用は物流分野にどのようなメリットがあるのでしょう?

■複雑で非効率的な貿易のプロセスを自動化することでスピードアップ。
契約書やインボイスなど大量の紙に依存するやり取りを即座に共有できるようになり、事務作業は大幅に効率化します。
情報改ざんリスクも低いことから、正確にデータ管理できます。

■参加者全員が安全に情報の共有・監視ができる。

■商品の現在地情報を記録することで、過去も含めどこにあるかが追跡できる。
在庫管理も容易になります。サプライチェーンに乗せれば余剰在庫削減につながります。商品紛失のリスクも減ります。万が一商品が紛失した際にはどこでなくなったかが分かるため、誰の責任かはっきりします。

また、従来の中央集権型のシステムでは一つの企業のサーバーに管理されるため、規模が大きくなればなるほど大きなサーバーが必要になり、費用も膨大になります。そして管理を一企業に頼れば、貴重なデータがブラックボックス化するリスクが指摘されていました。

ブロックチェーンの特徴は一つのサーバーで管理しなくていいことです。取引履歴等の情報を「ブロック」にまとめて、鎖のように繋げ、データを分散管理するのがブロックチェーンです。
ネットワークでつながった参加者全員に情報が分散され、しかも各ブロックは改ざんすれば異常値が検出され、不正がとても困難です。透明性が高まり、信用も確保されます。

なんだかいいことづくしですが、果たしてスムーズに進むのでしょうか?海貨業界は長年にわたってIT化が今一つ進んでいません。そこをどう切り開いていくのか、今後も注目していきたいと思います。

2019/07/11

予備申告で輸入通関の時間を短縮!

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外国から貨物を輸入する場合、輸入者は税関に対し輸入申告をしますが、輸入申告のタイミングは貨物が保税地域に搬入されてから、と決まっています。

搬入の確認が取れると、輸入申告→税関審査・検査→輸入許可→搬出、が通常の流れです。

税関審査中は貨物を動かせないので保税地域で待機することになります。

しかし、輸入申告前に税関審査を終わらせて輸入許可までの時間を短縮する方法があります。

それは、予備申告です。

今回は貨物搬入から搬出までのリードタイムを短縮できる「予備申告」についてのお話です。

予備申告は、輸入申告(本申告)の予定日の外国為替相場(課税価格換算レート)が公示され、かつ予備申告貨物の船荷証券(航空貨物はAir Way Bill)が発行された日以降にできます。

換算レートは、申告日の属する週の前々週の実勢外国為替相場の週間平均値です。こう書くと難しそうですが、自分で計算する必要はありません。毎週税関長により公示されています。税関HPで見ることができ、過去分も掲載されているので、修正申告などするときもレートを確認します。

通常の輸入申告同様に申告しますが、その際予備申告コードを入力します。申告すると、審査区分がわかります。
区分1=簡易申告扱い。書類審査・検査なし。
区分2=書類審査扱い。まれに審査後に検査扱いに変更になることがある。
区分3=貨物検査扱い。書類審査+貨物検査。

区分2は税関で書類審査を受けなければなりません。ですが、貨物到着前に申告書類を税関に提出でき、審査を済ませることができます。審査終了すれば、貨物到着後即輸入許可となりますので、搬出までスムーズです。

区分3になると、貨物検査ですので、到着後すぐに輸入許可、搬出というわけにはいきませんが、検査の手配など事前の準備ができます。検査が混みあう日など、X線の順番待ちになることもあります。予備申告で検査予定の場合は検査場やX線装置の予約ができるので、早く検査を済ませて搬出できます。

他法令手続きが必要な貨物は税関手続きと並行して進めることができます。NACCSでは他法令の許可番号や承認番号とも連動しています。予備申告時に本申告するタイミングを貨物の搬入や到着確認後に自動起動するように指定することができます。手動も可。他法令の許可等必要な場合はNACCSで証明されている場合に限り自動申告が使用できます。

予備申告はすべての輸入貨物でできます。通関業者は一般的に、納期の余裕など見て必要と思えば予備申告を利用しています。輸入者が予備申告の指定をしなくても、通関業者の判断で予備申告していることも多いのですが、事前に書類審査や検査の要否を知りたい場合、予備申告を指示し、申告結果を聞くのもいいでしょう。

そして、さらに早く貨物を引き取りたい、という場合はホットデリバリーを依頼しておくといいです。ホットデリバリーとは個別搬入のことです。

本船が港に到着後、貨物(コンテナ)は船から下ろされます。船からコンテナをすべて下ろし終えた後に、搬入情報を入力します。これを一括搬入といいます。一方、ホットデリバリーは、コンテナ毎に搬入情報を入力します。

一括搬入に比べて、個別搬入のほうがより早く申告を行うことができます。予備申告とホットデリバリーの組み合わせで輸入許可までの時間の大幅な短縮が可能になるのです。コンテナ貨物なら入港日当日に搬出までも済ますことができます。

外国為替相場(財務省HP)
http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/kawase/index.htm

2019/06/24

輸入ベビー用品の安全基準とは?

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ベビー用品、今は様々な種類、用途、便利な機能がついたものがありますよね。

子育てを経験された方なら実感があると思いますが、子供、特に赤ちゃん時代は本当に大変です。

赤ちゃんは寝る、泣く、ミルク、排せつを一日に短いサイクルで昼夜関係なく何周もします。

その間、世話する人は家事や自分のこともしますので、とにかく忙しい!

最近のベビー用品はそんな忙しい母親が楽になって、さらに赤ちゃんも快適な製品が多くあります。

先日、問題になったフィッシャープライス社のベビーバウンサーも便利なベビー用品の一つです。

こちらの製品、四角い、いわゆる「ベッド」型のものではなく、ハンモックやバウンサーのように丸みのあるもので、自動で揺れる機能もついています。抱っこされているようなホールド感とスイング機能が支持されていました。

しかし、死亡事故が相次いでいるとしてリコールを発表。同社は日本で販売していないとしていますが、インターネットなどを通して並行輸入品が販売されていたようです。現在、日本での同商品の事故報告はないそうです。

現在インターネットで検索しても検索結果がエラー表示され、見ることができません。また、以前に同製品を販売していたサイトでは製品の回収を呼び掛けています。

ここで気になるのが、ベビー用品など乳幼児が使用する製品の安全基準です。

日本では「消費生活用製品安全法」により特定製品の製造・輸入が規制されています。「特定製品」とは、生活用製品で一般消費者の生命または身体に危害を及ぼす恐れのある製品です。また、特定製品のうち安全性確保が不十分な事業者がいると認められる製品を「特別特定製品」といいます。

特定製品、特別特定製品を製造・輸入する事業者は経済産業省に届け出が必要です。輸入事業者は「特定製品輸入事業届出書」を管轄の経済産業局長(事業所が複数地域にわたる場合は経済産業大臣)に提出し、指定検査機関(日本文化用品安全試験所)による適合検査が義務付けられています。

また、販売者は製品にPSCマークを表示して販売しなければなりません。例えば二次的に販売するリサイクル業者であってもPSCマークのあるものしか販売できません。

輸入通関時にはPSCマーク表示を確認しませんが、販売時には必ず必要です。ベビー用品のうち特定製品に当たるのはベビーベッドで、「特別特定製品」です。ベビーベッドのうち、揺動型は除く、とありますので、件のベビー用品は「特定特別製品」ではなかったことがわかります。

では、所謂柵の付いたベビーベッド以外の安全基準はどうなっているのでしょう?日本では製品安全協会が発行するSGマークがあります。ベビーカー、ベビーチェアなどベビー用品が対象品目です。しかし、SGマークの表示は任意であり、表示するかは事業者に任されています。

SGマークは協会が定めた必要基準に適合した製品に付されます。SGマーク製品は欠陥により事故が起きた場合に一定金額範囲内の対人補償保険がついています。

また、アメリカのASTM、欧州のCEも安全基準規格ですので、製品にこれらの表示があることが製品選びの目安になります。

ちなみに、せっかくなので乳児用ベッドのHSコードを調べてみました。
ベッドは家具ですので第94類です。
PSCマーク表示が必要な、揺動型でないベビーベッドは、
木枠のものなら9403.50-000
金属枠のものなら9403.20-000となります。

また、ハイローチェアやバウンサーは使用目的としては赤ちゃんを寝かせる場所でもありますが、関税分類上は椅子になります。リクライニングやスイング装置、音楽装置が付いたりします。
「その他の腰掛け(金属製フレーム)-アップホルスターのもの」で、9401.71-090です。(アップホルスターとは何らかの詰め物をしたものやスプリングの入ったものことです)

94類の家具は革張りのもの以外は税率無税です。

経済産業省「消費生活用製品安全法のご紹介」
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/contents/psc-leaflet.pdf

貿易統計/分類例規
http://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/data2/94r.pdf

2019/05/25

海外旅行で持ち帰れない食べ物系お土産は?

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旅行に行ったらお土産を必ず買いますよね。現地の名産品やお菓子など、食べ物は特に人気です。

私は海外旅行に行ったら現地のスーパーマーケットやコンビニに立ち寄るのですが、その理由は2つあります。

一つ目の理由は、日本とは違った雰囲気の食品売り場です。

日本のスーパーでは野菜や果物の多くは袋売りされています。

しかし、海外では量り売りがメジャーです。また、日本ではあまり見かけない果物や野菜の数々・・・。ビッグサイズの飲み物やその土地の人が大好きな加工食品など、ただ見ているだけでワクワクします。

もう一つの理由は手ごろな価格でお土産をゲットできる、ということです。免税店や観光地の土産物売り場もいいのですが、ちょっと高額すぎたり、そもそも国によってはお土産文化がないこともあります。

しかし、スーパーでは当然普通に売っていても、日本に持ち帰れないものがたくさんあるので、お土産選びには注意をしなくてはいけません。何も知らずに美味しそうだからとか名物だからといって買うと、日本の空港で没収されてしまう恐れがあります。

そこで日本に持ち込みNGな食べ物を紹介したいと思います。

【肉、肉製品】
生肉だけでなく、ソーセージ、ハム、ベーコン、ジャーキーなども持ち込みNGです。豚や羊など、鶏やアヒルなど家きん類、卵もダメです。チーズはOK。

缶詰・ビン詰で常温保存可能で未開封、賞味期限が長いもの、常温保存可能なレトルトパウチなども同じ扱いです。持ち込みNGです。ただし、輸出国政府機関発行の検査証明書があり、指定の国・地域のものであればOK。動物検疫に立ち寄り証明書を提出してください。以前は大丈夫だったようですが、最近になって厳しくなったようです。

これらは動物の感染症を未然に防ぐための防止策です。動物感染症とは、豚コレラ、口蹄疫、鳥インフルエンザなどがあります。昨年から日本でも豚コレラの発生が確認されています。鳥インフルエンザも近年度々確認されています。鳥インフルエンザは低病原性と高病原性のものがありますが、特に高病原性のもので人へ感染するウイルスもあります。

人へ感染するリスクは特定の鳥インフルエンザ以外、今のところはありません。しかし、豚コレラや口蹄疫、鳥インフルなど指定の感染症は動物間で強い感染力があり、致死率も高いものです。口蹄疫以外は有効なワクチンや治療法がないため、いったん日本にウイルスが上陸、まん延すれば、感染した家畜を飼う畜産農家のみならず、その畜産業界全体へ影響します。

テレビで殺処分されたとの報道を聞きますが、まん延防止にはすばやく感染源をなくすこと、消毒することが大切だからです。ちなみに、殺処分した畜産農家にはちゃんと補償制度があります。そうでなければ、迅速に適切な処置をしない可能性があるからです。

なお、輸出検査証明が添付された肉製品は持ち帰れます。ただし、ハワイやオーストラリアなど一部地域でのみ対応しています。ややこしいのは免税店で売られているものです。免税店で売っていても検査証明がなければ、街で売っているものと変わりありません。

【生の果物、野菜、香辛料など】
植物防疫法施行規則第九条及び別表一、二には輸入禁止地域及び輸入禁止植物、有害動物が指定されています。輸入禁止植物以外は持ち込めますが、禁止植物が多いのと、一般的に判別が難しいので、とにかく持って帰らない方が無難です。(こういうことを言うと身も蓋もないのですが・・・。)

どうしてもお土産として持ち帰りたい、という方はきちんと法律を調べて持って帰れるかを確認してから買ってください。
「アーモンド、カシューナッツ、ココやし、こしよう、ピスタシオノキ、ぺるしやぐるみ及びマカダミアナッツの乾燥した種子」は大丈夫です。また、冷凍果物、ドライフルーツは輸入禁止植物ではありませんが、空港カウンターで検査を受ける必要があります。病害虫が付着していなければOKです。

先日、台湾に旅行にいったのですが、空港の到着ロビーには靴を消毒するためのマットがありました。また、旅行中に動物に触れた人、農場や市場に行った人は自己申告で検疫カウンターに行くように何度もアナウンスされていました。検疫カウンターで携帯品の消毒を行ってもらうそうです。

肉製品や生の果物などの輸入禁止品は、日本に持ち込むことができないだけで、現地や飛行機の中で消費してしまうのであれば問題ありません。関空を利用した際に見かけたのですが、免税店で高級イチゴを買ったアジア人家族が出発ロビーで飛行機を待つ間にそのイチゴを食べていました。もしかしたら輸出証明付きイチゴだったのかもしれませんが、食べてしまえば帰国時に届け出る必要はなくなります。

2019/05/07

EUの関税率を調べるならTARICを使おう!

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日本とEUのEPAが発効しましたね。発効に伴い、多くの品目で関税が即時撤廃になりました。

今回はEUから日本への輸入ではなく、逆パターン、輸出について考えてみようと思います。

EUに輸入される際、関税がかかる品目があります。しかし、そもそも一般の輸入関税が無税の品目もあるわけです。

事前にEPA特恵税率と一般税率を比べてEPA特恵税率の方が優位であれば、EPAを適用するための書類作成を行います。

EPA税率適用には原産地規則を満たす必要があり、証明書類など事前の用意が必要で、手間もかかります。EPAを適用してもしなくても変わらないなら、手間は省きたいですよね。

EUの関税率を調べるにはTARICのサイトを使います。

「Goods code」に品目コードを、「County of origin/destination」にJapanを選択します。ここで、品目コードがわからない、という方は、日本の実行関税率表を見てください。

品目コードは6桁までは世界共通です。日本の関税分類を参考に6桁まで品目コードを調べることができたら、TARICに入力。あとは細則部分を確認しながらクリックし、8桁まで表示されたところで検索ボタンを押します。結果では、関税率だけでなく、規制なども確認できます。

「ERGA OMNES」とはすべての当事者という意味で、WTO加盟国からの輸入に一般的に適用される税率、「実行最恵国(MFN)税率」が確認できます。指定した国及び地域はその下に表示されますので、Japanのところを確認します。

国及び地域を指定していなくても、検索結果にはMFN税率と、国ごとのEPA特恵税率が表示されます。

当然ですが、英語です。Google翻訳などを使えば、それほど英語が得意でなくてもなんとかたどり着けます。ただし、不確実な場合は現地輸入者や通関業者に再確認しましょう。

また、ジェトロとFedexが日本居住者向けに提供しているデータベース(ワールドタリフ)でも、品目コード及び関税率を確認することができます。登録が必要ですが、日本の居住者ならだれでも無料で利用でき、世界各国の関税率を見ることができます。

EUだけでなく、世界約175か国のHSコードと税率が検索できるので、何となく見ているだけでも面白いです。

EUでは日本で言うところの事前教示制度もあります。商品がどの税番なのか、あらかじめお伺いを立てて当局から保証してもらう仕組みです。拘束的関税分類情報(BTI:Binding Tariff Information)といい、BTIデータベースに登録されると、EU諸国全てに適用が可能になります。有効期間は原則3年間です。

現時点では有税品目でも、将来的に減税または免税になる場合があります。それらについては、スケジュール(譲許表)で確認することができます。

EU統合関税率TARIC(Integrated Tariff of the European Communities)
https://ec.europa.eu/taxation_customs/dds2/taric/taric_consultation.jsp?Lang=en

WorldTariffオンライン登録
https://ftn.fedex.com/wtonline/Registration/RegFrame.jsp?nageName=Jetro/JetroReg.jsp

BTIデータベース
https://ec.europa.eu/taxation_customs/dds2/ebti/ebti_home.jsp?Lang=en

EU側譲許表
http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2018/august/tradoc_157229.pdf#page=5

2019/04/12

拒否できない税関検査、内容や費用はどうなる?

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最近、空港での税関職員による貨物検査の模様を放送するテレビ番組が増えましたね。

密輸防止キャンペーンでもしているのかな?とか、旅行者が増えて一般の人の関心が高まっているのかな?とか感じます。

テレビではよく、税関の検査に素直に従わない人の姿も放送されていますが、実際拒むことはできるのでしょうか?

答えは「NO」です!

関税法では「税関職員の質問に対して答弁せず、もしくは偽りの陳述をし、又はその職務の執行を拒み、妨げ、もしくは忌避した者に対しては一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」とあります。抵抗すると罰せられる、ということです。

では、旅行者にとってだけでなく、輸入者にとっても気になる税関検査、内容や費用はどうなっている?ということでまとめてみました。

【検査の意義】
・麻薬や覚せい剤、コピー商品など輸入禁止品が入っていないか
・輸入(納税)申告が正しくされているか、申告外貨物が入っていないか
・正しく原産地表示されているか
・食品衛生法や動植物検疫法、輸出管理令などの規制貨物が正しい手続きがとられているか

上記の確認を行うため検査を行います。

輸入が初めて、または輸入実績の少ない輸入者は高確率で検査になります。また、過去の輸入検査で不備があった場合も、しばらくの期間は検査になる確率が高いです。それ以外は一定割合でランダムに検査対象を抽出します。

優秀な輸入者は大抵の場合申告後即許可になりますが、たまには検査になります。ここでもし申告外貨物などが出てきたら、せっかく積み上げてきた税関との信頼関係がくずれ、再び検査が続くことになります。

【検査方法】
・X線検査
コンテナ輸入の場合、多くは税関の検査場にある大型X線装置を使って検査します。コンテナまるごと入る大きな装置で、小屋のようです。小型X線装置はカートンを調べます。X線を通して不審な影が写っていたり、申告内容に異議があったりする場合には、さらにコンテナまたはカートンを開けて(開披)、検査します。

・見本検査、抜き取り検査
税関に指定された貨物を検査します。カートンNo.を指定される場合や「どれでも1カートン」と言われることもあります。
一般的には税関の検査場にて検査します(検査場検査)。数量が多い場合など、蔵置している場所から動かすことが難しい場合は、税関職員が出向いて検査します(現場検査)

・全量検査
言葉通り貨物の全部を検査します。

検査場所はその他、小麦や木材などの輸入に対し、艀や本船上で行うこともあります。

これらの検査は食品検査や動物検疫とは別です。混同しないようご注意ください。

【検査料金】
税関に支払う検査料というのはありません。ですが、通関業者から検査費用を請求されます。これは検査によって生じる様々な作業費用です。

税関職員は貨物の内容確認のために検査をしますが、指定貨物を探し出したりコンテナを検査場まで移動させたりといった諸々の作業をするのは、トラックの運転手や税関での開梱を許された上屋の作業員です。税関職員は貨物が目の前に差し出されるまで何もしませんし、検査後の片付けもしません。

これらのトラックの手配やコンテナの移動費(横持費、ドレー費用などという)、開梱に掛かる作業費用、検査立ち合い料などが、手配を行う通関業者からまとめて請求されています。

いかがでしたでしょうか。輸入実績の少ない輸入者は特に検査確率が高くなりますので、検査に掛かる費用を考慮しなくてはなりません。ですが、毎回どういった検査になるかはわからず、費用も上下することだけはご理解ください。

2019/3/25

TPP11、日EU・EPAに必要な原産品申告書は?

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昨年末の12月30日よりTPP11(CPTPP)が発効されました。

2019年2月1日より日EU・EPAも発効され、いよいよ多国間経済協定時代の到来です。

EPAでは協定国を原産地とする産品を低税率、又は無税で輸入することができます。

EPA税率を適用して輸入するには、通常の輸入申告書類に加えて、貨物が協定国の原産品であることを証明するための書類が必要です。

従来のEPAでは輸出国の発給当局による第三者証明制度が採用されています。日本からの輸出であれば、商工会議所に申請して「特定原産地証明書」を発行してもらい、輸入国税関に提出します。

日豪EPAでは上記の第三者証明に加え、輸入者、輸出者又は生産者による自己申告制度が採用されています。しかし、TPP11、日EU・EPAではこの、自己申告制度のみ採用されています。(第三者証明制度は採用されません。)自己申告制度では輸入者、輸出者又は生産者自らが原産品であることを証明する「原産品申告書」を作成しなければなりません。

そこで今回は、TPP11と日EU・EPAの「原産品申告書」について紹介したいと思います。

「原産品申告書」とは、貨物がEPA上の原産品であることを証明する書類です。

【作成者】
輸入者、輸出者または生産者。輸入者から依頼を受けた通関業者。ただし、輸出者または生産者は締約国に所在する者でなければなりません。第三国の輸出者は原産品申告書を作成できません。また、訂正は作成者のみが行えます。

◆必要的記載事項
1. 証明者 2. 輸出者 3. 生産者 4. 輸入者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレス
5. 産品の品名及び統一システムの関税分類(HSコード)
6. 原産性の基準
7. 証明者の署名及び日付等
8. 誓約文(既定の文言あり)

【様式】
◆TPP11
協定上規定の様式はないが、必要的記載事項を記載した任意の様式。日本への輸入の場合は税関様式C第5292号-3を使用。英語又は輸入国の言語で作成。

◆日EU・EPA
輸入者が作成する場合、協定上既定の様式はなく、必要的記載事項を記載した任意の様式。日本への輸入の場合は税関様式C第5292号-3を使用。輸出者又は生産者が作成する場合、協定で規定の記載様式に沿った原産地に関する申告文をインボイス等に記載します。

◆提出期限・有効期限
原則として輸入申告の際。有効期限は作成日から1年。

「原産地申告書」とともに、「原産品申告明細書」、契約書や価格表、総部品表、製造工程表など明細書に記載された事項を確認する書類も必要です。原産品申告明細書は商品ごとに作成します。

ただし、
1.文書による税関の事前教示を取得し、輸入申告書にその事前教示登録番号を記載している場合。(迅速な輸入通関確保の観点から事前教示を勧めています。)
2.締約国内で完全生産される一次産品であって、インボイス等通関関係書類によりそのことが確認できる場合。
3.課税価格の総額が20万円以下。(原産品申告書の提出も省略可)
上記の場合は、原産品申告明細書の作成不要です。

提出した書類は許可の翌日からTPP11で5年間、日EU・EPAで4年間保存することが求められています。

自己申告制度では、輸入国税関が輸入者に対する検証や、輸出国税関を通じて輸出者・生産者に対する検証を行うことができます。輸入者、輸出者又は生産者が原産品であることの十分な情報提供と説明ができない場合、EPA税率の適用が認められませんので、事前の準備は万全にしましょう。

なお、現在発効されているEPAの原産品申告書、原産品明細書は税関のHPでダウンロードできますので、ぜひご利用ください。

原産地証明手続き(税関HP)
http://www.customs.go.jp/roo/procedure/index.htm

「自己申告制度」利用の手引き
http://www.customs.go.jp/roo/procedure/riyou.pdf

2019/03/01

福島原発事故の影響が続く食品輸出

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昨年末、中国は新潟県産コメの輸入を許可することを発表しました。

これは、2011年の福島原発事故以来続けてきた輸入規制を一部緩和する行動で、今後も規制緩和の動きが活発になるのでは、と期待されています。

原発事故後に、日本産食品に関して安全を確認するため輸入規制措置をとった国は、54か国・地域にのぼります。

日本政府はそれらの国々や地域との交渉を続け、徐々に規制措置が緩和・撤廃されてきています。

しかし、中国、韓国、台湾、シンガポール、米国、マカオなど29の国と地域では原発事故による輸入規制措置を継続しています。

主な措置は
1. 特定の都県につき、すべての又は一部の食品につき輸入停止。特定の都県以外は産地証明書、放射性物質検査証明等が必要
例:韓国、中国、シンガポールなど

2. すべての又は特定の食品に対し産地証明書や放射性物質検査証明書を要求
例:インドネシア、ブルネイ、オマーンなど

3. 輸出先国での検査強化
イスラエル

規制品目や求められる証明書などは国・地域ごとに異なりますが、主に要求されるのは日付証明、産地証明、放射性物質検査証明です。水産物は水産庁及び一部の都道府県に、酒類は国税庁(地方国税局)に、それ以外の食品・飼料は農政局に輸出証明書発行を申請します。産地証明など必要な証明区分を選択します。

輸出証明書発給システムを利用するほか、NACCSからの証明書申請手続きが可能です。酒類はNACCSのほか、製造場等の所在地を所管する国税局酒税課に申請します。申請者は輸出者または輸出者の委任を受けた者です。申請後、証明書を郵送又は受領拠点で受け取ります。

【産地証明】
都道府県の「産地」を証明するものです。申請には商品ラベルのコピーや写真等、生産・加工施設の名称・所在地が確認できる書類が必要です。

ここで注意したいのが、産地証明書と原産地証明書の違いです。「産地証明書」は「産地」を証明するものです。一方、商工会議所が発行する「原産地証明書」は貨物の「国籍」を証明するもので、どこの都道府県で生産されたかの証明にはなりません。

【放射性物質検査証明】
検査機関が発行する放射性物質検査結果報告書を提出。国・地域によって認められた検査機関が異なるので、注意しましょう。製造ロット番号がわかる書類と検体の採取状況も添付します。

【日付証明】
生産加工年月日を確認するものです。商品ラベルのコピーや写真、生産製造記録にかかる書類などにより確認します。

各種証明には共通してB/L・AWB・インボイス番号、出発地名など貨物情報も必要ですので、インボイスやパッキングリストなどを提出します。

各国・地域で対応が全く異なりますし、随時更新されているので、輸出前には相手国の規制をよく確認することが大切です。原発事故から8年近くたった今でも、放射能物質による汚染の恐れを理由に輸出が制限されています。改めて、悲惨で各方面に影響の大きな事故であったことを感じます。

農林水産省HP:食品等に係る諸外国への輸出に関する証明書発行について
http://www.maff.go.jp/j/export/e_shoumei/index.html#qanda

諸外国・地域の規制措置(平成30年11月30日現在)
http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/kisei_all_1811.pdf

2019/02/07

関税割当制度で得しちゃう!

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輸入者にとって関税は悩みの種ではないでしょうか?

関税が少しでも安くなる制度があるなら利用したいですよね。

そこで今回は関税が無税又は低税率で輸入できる、「関税割当制度」についてお話しします。

関税割当制度は、輸入数量にある一定の枠を設け、その枠内は無税又は低税率(一次税率)、枠を超えた輸入に対しては高税率(二次税率)をかけるという制度です。

これは、一次税率で消費者など需要者を保護し、二次税率で生産者を保護する目的を満たすものです。

一定数量以内の輸入しか認めない「輸入割当制度」とは異なり、「関税割当制度」では一定数量以上は高い税率が適用されるものの、量的制限は受けません。

しかし、すべての品目で適用されるわけではありません。

対象品目は、

農林水産省所轄品目:
とうもろこし、ナチュラルチーズ、麦芽、糖みつ、無糖ココア調製品、トマトピューレー及びトマトペースト、パイナップル缶詰、その他の乳製品、脱脂粉乳、無糖練乳、ホエイ等、バター及びバターオイル、雑豆、でん粉、イヌリン及びでん粉調製品、落花生、こんにゃく芋、調整食用脂、繭及び生糸(17品目24枠)

経済産業省所轄品目:
皮革、革靴(2品目4枠)

一次税率適用枠は政令で定められています。農林水産省所轄品目の数量枠は、年に一回定められるものと、半期ごとに定めるものとがあります。経済産業省所轄品目は割当枠の総量を年度枠、保留枠、再割当に分けて設定しています。

それぞれ、関税割当を受けるためには品目を所轄する省に申請します。申請すると関税割当証明書が交付され、割当を受ける輸入の際に税関に証明書を提出し、裏落としで輸入数量を管理します。

割当の数量枠や申請要件などは、所轄省の公表を見れば知ることができます。それぞれ要件が異なるため、輸入を予定している事業者は事前に公表で確認しなければなりません。

例えば、経済産業省では例年3月上旬から中旬ごろに次年度分の割当を公表しています。年度枠、保留枠いずれか一回のみ申請でき、再割当分は条件を満たす場合のみ割当が解放されます。また、皮革、革靴の割当要件には、前年度の輸入実績などが反映されるため、これから輸入を始める事業者は割当を受けることができません。

以上が一般の関税割当制度ですが、これとは別にTPPなど経済連携協定(EPA)による関税割当があります。それぞれのEPAごと、品目ごとに違うので、こちらも公表を確認する必要があります。

割当の管理方法も各EPAにより違います。輸出国管理方式の場合、輸入者が割当申請し、輸出国の発給する証明書に基づき先着で割り当て、所轄省が証明書を発給します。輸入者の事前審査が比較的緩やかです。輸入国管理方式の場合、通常の関税割当と同様に、事前に割当を行います。こちらは輸入者の事前審査があります。

いかがでしたでしょうか。関税割当制度を利用して輸入すると、大幅に関税が安くなります。事前の確認や揃える書類が必要など手間はかかりますが、とても便利な制度ではあります。また、無事に割当を受けることができたら、通関業者に証明書を取得していることを必ず伝えましょう。輸入者の自己申告がなければ、通関業者が割当があることに気づかないからです。

農林水産省HP(関税割当関係情報)
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/boueki/triff/t_kanwari/index.html

経済産業省HP(関税割当 皮革・革靴)
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/01_kanwari/kanwari.html

2019/01/19

アパレル業界は「新素材」ブーム!税番は?

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ここ数年、ヨーロッパを中心に脱石油原料ブームです。

マイクロプラスチックが海に蓄積され、クジラの体内から大量に発見されるなど、石油を原料としたプラスチックが環境に悪影響であることが取り沙汰されています。

そんな流れを受けて、各アパレルメーカーは脱石油原料、脱プラスチック素材の開発が進んでいます。

東レでは植物由来の原料を使った人工皮革を開発したと発表しました。またH&Mでは、2030年までに持続可能な資源由来の材料やリサイクルされた材料の比率を100%にすると打ち出しています。

アパレル業界では、デザイン性+着心地・機能性ブームがあり、さらに環境への配慮という要素が加わった流れが来ているようです。

そこで今回は新素材の一つ、植物由来の再生繊維に着目して税番解説をしてみたいと思います。

植物由来の再生繊維は木材パルプや天然繊維に含ませるセルロース(炭水化物の一種)を取り出して化学薬品で溶かした後、細長い繊維にしたものです。代表的なものにレーヨンやキュプラがあります。

原料が木材パルプや綿など植物性なので、
「第14類・植物性の組み物材料および他の類に該当しない植物性生産品」
「第47類・木材パルプ、繊維素繊維を原料とするその他のパルプ及び古紙」
「第52類・綿及び綿織物」
「第53類・その他の植物性紡織用繊維及びその織物並びに紙糸及びその織物」
などが分類の候補に挙げられるでしょう。

14類、47類の解説を見ると、紡織用の物は第11部に属する、とあるため、植物性の繊維は52類もしくは53類があたります。

ここで注目しなければならないのが、繊維の製造工程です。天然繊維をそのまま撚って紡織用にしたものと、繊維から化学的に抽出して製造したものとでは分類が分かれます。

レーヨンやキュプラなどの植物系再生繊維は繊維から抽出したセルロースやでんぷんなどの天然有機重合体を化学的に処理して製造したものです。

これは、「人造繊維」であり、人造繊維の長繊維及び短繊維に分類されます(54類、55類)。人造繊維はポリアミドやポリエルテル、ポリウレタンなど石油系が「合成繊維」、植物系が「再生繊維又は半合成繊維」に分けられます。(石油系、植物系、と乱暴な言い方をしているのはご容赦ください。)

ペットボトルなどをリサイクルした石油系リサイクル繊維は「合成繊維」に分類されます。

「再生繊維」というと、何かの原料を再生させたものかな、と思うでしょう。しかし、貿易世界の品目分類上は、天然原料を化学処理して抽出された有機重合体を原料とするものが再生繊維や半合成繊維です。

そして、衣類など最終製品になった場合の品目分類は、上記の分類をもとに細分化されています。

植物性の新素材は、商品の廃棄時においても燃焼時の燃焼熱が低いことや、生分解性などの特長あります。意外な原料から生まれる新素材、今後も注目したいと思います。

2018/12/27

CLM三国のラオス・ミャンマーがLDCを卒業!

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ASEAN諸国内でも後発組に属するカンボジア、ラオス、ミャンマーはCLM諸国と呼ばれています。

これらの国々は、チャイナ・プラス・ワン、タイ・プラス・ワンの受け皿として、近年関心を集めてきました。

CLM三国はASEAN内でも経済発展の遅れた低所得国に属し、2018年現在は特別特恵受益国として認められた「後発開発途上国(LDC)」です。

LDCであることは、国としてのステータスが低いというデメリットはありますが、関税の優遇措置があることやODAが受けやすいことなど、メリットも多くあります。企業の進出や外国からの支援に対し、敷居を低くし、経済発展を促しています。

ラオス、ミャンマーはこれらの恩恵も受けつつ、目覚ましい経済発展を遂げ、LDCからの卒業要件を満たすことになりました。

LDCは世界に47か国(2018年現在)あります。LDCに認定されると関税の優遇措置やODAを受けやすくなります。

LDC認定基準は以下の3つで、一定値に満たない国がLDCに認定されます。

1.1人当たり国民総所得(GNI、3年平均)
2.人的資源開発の程度を表すための指標(HAI)
3.外的ショックからの経済的脆弱(ぜいじゃく)性を表すための指標(EVI)

そして、その一定値を2項目以上上回れば、LDCを卒業となります。

ただし、一度卒業要件を満たしたからといって、すぐに変わるわけではありません。3年後の2021年に再度要件を満たせば、2024年にLDC卒業となります。

では、LDC卒業後、2国が関わる貿易にどのような影響があるかを考えましょう。

LDC国には関税の優遇措置が与えられており、特別特恵関税(GSP-LDC)が適用されるため、ほとんどの製品を無税で輸入できます。しかし、LDC卒業後は一般の特恵関税制度が適用されるため、関税無税の品目が大幅に減ります。

特にミャンマーは縫製品の委託加工が多く、対日輸出が伸びている国です。GSP-LDCが使えなくなれば、縫製品はTシャツで7.4%など、7~10%以上の関税がかかります。

日本との自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結していれば、FTA・EPA特恵税率が適用できますが、現在のところ締結していません。ただし、2国はASEAN加盟国ですので、AJCEP(日ASEAN包括的経済連携協定)を利用することができます。原産地規則を満たし、原産地証明書を取得、直送条件を満たせばEPA特恵税率を適用できます。

なお、ASEAN加盟国ではありませんが、バングラデシュもLDC卒業要件を満たしています。ミャンマー、ラオスとともに2024年LDC終了となる見込みです。また、カンボジアも近年GDP成長率が7%台と好況ですので、数年内のLDC卒業が予想されています。

関連コラム:知っておきたい特恵関税制度と特恵卒業
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-02-22

外務省HP:後発開発途上国
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.html

2018/12/08

ベトナムってどんな国?関税制度は?

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なかなか終わらない、というよりいよいよ本格化・長期化してきた米中貿易戦争を受け、大手メーカーは一部部品の生産拠点を中国からタイやベトナム、マレーシアなど東南アジアやメキシコに移し始めました。

自動車、ロボット、半導体、プラスチック、家電や衣料品に至るまで、あらゆるものの中国から米国への輸出に、制裁として高関税が課されるからです。

これは、中国は人件費が高くなってきたので、もっと安い人件費を求める企業にとっては、生産国移転の計画を前倒しや加速させる形となりました。

そこで、そんな移転先の一つで、中国に替わる「世界の工場」になりつつあるベトナムに注目してみたいと思います。

【ベトナムの基本情報】
国名:ベトナム社会主義共和国
人口:約9,270万人
面積:約329,241?(日本より少し小さい)
首都:ハノイ
主な都市:ハノイ、ホーチミン
言語:ベトナム語
特徴:北は中国、西はラオス、カンボジアと国境を接する。南北に細長く、南部は熱帯性気候で雨季と乾季があるが、北部は四季がはっきりしており、気候が全く違う。人の気質も違い、北部は「忍耐強い、勤勉」。南部は「おおらか、その日暮らし」とも。フランス領時代の趣を残す建物も多く、観光地としても人気。また、華僑が多かったことから、漢字が併記された看板が見られたり、中国語から派生した言葉も多い。

ベトナムは社会主義国ですが、1986年にドイモイ政策を採用し、中国同様に市場経済を取り入れています。中国などから一次産品を輸入し、工業品に加工し米国に輸出する、三角貿易で発展してきました。

一次産品や衣類、履物といった付加価値率の低い製品の輸出が多く、機械などの耐久消費財は中国などからの輸入に頼っていたため、2000年代までは貿易赤字国でした。しかし、近年はスマホなど機械品の輸出が増え、また、日本や中国のメーカーが工場移転を進めていることもあり、2018年上半期は過去最高の貿易黒字となっています。

実は天然資源が豊富な国で、国土の40%以上を占める森林資源は家具や、紙・パルプ、燃料として利用されています。また、鉱物資源の埋蔵量が豊富で、中部地域では油田開発が重点的に行われています。

【関税制度】
FOB価格を課税標準とする輸出関税あり。
輸入関税は、標準関税率、優遇関税率、特別優遇関税率の3種類。課税標準はCIF価格。

標準関税率:優遇関税率、特別優遇関税率を適用できない物品に適用。
優遇関税率:ベトナムと最恵国待遇関係にある国からの輸入に適用。協定税率(MFN)がこれにあたる。
特別優遇関税率:FTA税率やEPA税率

日本とは最恵国待遇関係にあり、EPAも発効しているため、優遇関税率(MFN)またはEPAスケジュールに基づいた関税率が適用されます。日ASEAN包括的経済連携もあります。プラスチック、機械設備、電子製品や関連部品など3234品目で関税撤廃されていますが、免税適用には日本からの直接輸出であることや特定原産地証明書があることなど条件を満たす必要があります。

また、ASEAN加盟国であり、HSコードの商品の名称および分類をASEANとそれ以外の国とで使い分けています。

日本との関係性は、良好といえるでしょう。安定した友好関係を築いており、親日感情も強い国です。また、日本はベトナムODAの最大の供与国でもあり、経済的パートナーとして大きな存在です。

GDP成長率が7%と経済成長率が高く、平均年齢が28歳ととても若いことから、マーケットとしても注目されています。共働き世帯を中心に購買意欲も旺盛です。魅力的な要素が多い一方で不安要素も。

法整備は進んでいるものの、依然として不透明で、手続きが煩雑です。役所での対応も人によって異なるとか。また、役人への金銭の提供といった不正リスクや在庫の盗難など治安面のリスクもあります。

いかがでしたでしょうか?個人的には、食べ物もおいしいですし、活気のある都市部と、まだまだ悠久の時間が流れているような農村部の対比がベトナムの魅力だと思います。ただし、ベトナム語をマスターするのは至難の業です。声調が6つもあり、舌や息の使い方が難しい。ご愛敬の片言ベトナム語でお茶を濁すくらいにしましょう。

2018/12/1

TAGって何?FTAとどう違う?

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最近、新聞やネットニュースで見かけるTAGという言葉、初めて聞いた、という方も多いのではないでしょうか?

実は私もその一人。そこで、今回はTAGについてWTOやFTAなどと絡めて書きたいと思います。

TAGとは、日米間で交渉を開始することで合意した「日米物品貿易協定」のことで、「Trade Agreement on goods」の略称です。

日本政府は交渉の範囲を物品の輸出入に限る点で、サービスや投資の自由化に範囲が及ぶFTA(自由貿易協定)との違いを強調しています。

そもそも、世界の貿易ルールはWTOが先導していました。WTOでは全会一致が原則で、「すべての加盟国に対して等しく適応」しなければなりません。ある国とある国の有利な関税条件は他の国にも適応してくださいね、というものです。これを最恵国待遇の原則、といいます。

しかし、とある2国間交渉で成立した条件をすべての国に適応させるのは難しいことです。それぞれの国の事情があるので、困る国もあります。より自由な2国間交渉の場を設け、世界全体の自由貿易を活性化させるためには例外も必要です。

それが、WTOで最恵国待遇原則の例外として認められている、FTAです。近年はよりスピーディーな貿易交渉としてFTAが好まれる傾向にあります。ですので、交渉を物品に限るTAGも、WTOルールでいうところのFTAでなければ最恵国待遇の例外としては認められないことになります。

日本政府が国内向けにTAGはFTAとは違うと言っていても、WTOからすればやりたいことはFTAなんでしょ?という話です。

今のところ投資やサービス分野は協議の範囲外ですが、結局サービス分野も含めたFTAに持っていかれるであろうということは、多くのメディアでも言われています。

実際アメリカ側は、まずは物品交渉から始めて、合意を得られれば、次はサービスや投資分野などの「重要分野」に進める、といっています。

いずれ物品以外の分野の交渉に移るとアメリカ側が言っているにもかかわらず、日本政府がTAGという言葉を使い、「包括的なFTAとは違う」と主張していることに対し、FTAを警戒する農家への目くらましだの、ねつ造だのという批判もあるようです。

交渉が本格化するのは年明け以降になるとみられています。共同声明では「過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限」と明記していますが、それではトランプ大統領がTPPを離脱して日米交渉をする意味がなくなってしまいます。

日本はどこまで踏みとどまれるのか、不利な条件を突きつけられても押し返すことができるのか、今後の動きが気になるばかりです。

2018/11/12

輸入貨物が被災した!減税額の計算方法は?

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前回は台風や地震など、災害で貨物が被災し、変質・損傷した場合の減税の適用時期についてお話ししました。

今回は、具体的な減税額の計算方法と手続きについてお話ししたいと思います。

まず、減税額の計算方法について。

算出方法は2パターンあります。

(1)価格の低下率を基準とする方法
変質・損傷により低下した価格分に対応する関税額を減税額とします。

例えば、課税価格が100万円、関税率5%の貨物が、変質・損傷で価値が下がり、課税価格が60万円になったとします。

100万円×5%=5万円(関税額)
100万円-60万円=40万円(価格の低下率40%)
低下した価格分だけ関税が減額されるので、5万円の40%が減税額となります。
5万円×40%=2万円(減税額)

(2)変質・損傷後の性質及び数量を基準とする方法
変質・損傷したことで貨物の性質が変わり、適用税率が変わる場合があります。この場合、税率変更後の関税額を控除した額が減税額となります。

例えば、課税価格が100万円、税率5%の貨物が、変質・損傷で課税価格60万円、適用税率が3%に変わったとします。

100万円×5%=5万円(当初関税額)
60万円×3%=1.8万円(変更後関税額)
差額の3.2万円が減税額となります
5万円-1.8万円=3.2万円(減税額)

以上の2つの計算方法から導き出された金額を比較し、多い方が減税額になります。上記の場合ですと、2万円<3.2万円なので、3.2万円が減税額になります。

変質・損傷で関税が無税になった場合は全額減税されます。また、税率の変更を伴わない場合は(1)の方法により計算します。

従量税品についても同様に計算しますが、変質・損傷が課税物件確定前に生じた場合、低下分を算出するための基礎となる価格は、関税定率法第4条から第4条4までに定める課税価格決定方法に基づいて算出した価格とします。ややこしい書き方ですが、普通に考えて入港時の当初CIF価格だと思ってください。

輸入許可後で、「引き続き輸入許可を受けた時の蔵置場に置かれている場合」に災害等により変質・損傷した場合、戻し税が適用されます。減税額の算出方法に準じます。滅失した場合は全額払い戻されます。

では、減税や戻し税の手続きは?
輸入申告書に、「変質・損傷減税明細書(様式T-1010)」を添付して税関に提出します。この明細書には、変質・損傷の原因や程度、減税計算の根拠を示します。

輸入申告後で許可前に変質・損傷した場合は「更正の請求」の手続きをとります。

輸入許可後、引き続き輸入許可を受けた時の蔵置場に置かれている場合に、災害等で変質・損傷した場合、災害等のやんだ後速やかに、滅失又は変質・損傷した貨物の記号、番号、品名や輸入許可番号などを記載した届出書を、輸入を許可した税関長に提出します。税関長は確認書を交付します。
関税の払い戻しを受けようとする者は、災害等のやんだ日から3か月以内に、払い戻しの申請書、上記の確認書、輸入許可所または税関の証明書を添付し、輸入を許可した税関長に提出します。

災害時には少しでも救済措置があるとありがたいですよね。このような制度があることを事前に知っておくことで対応も違ってくると思います。

また、通関士試験では減税適用のタイミングなどは出題が常連のようです。試験を受ける方はしっかり理解しておきましょう。

関連コラム:輸入貨物が被災した!関税は減税されるの?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2018-09-28

2018/10/31

輸入貨物が被災した!関税は減税されるの?

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今年の夏は本当に多くの災害が起こりました。特に台風21号は近畿地方に大きな爪痕を残しました。

関西空港の滑走路、駐機場はほぼ全域の冠水。

港湾地区では
・コンテナの流出や転倒
・火災の発生
・ガントリークレーンの倒壊
・上屋の屋根の損壊
など、関西地区の空港・港湾の被害はとても大きなものになりました。

通常、台風前後にはヤードを閉鎖し、コンテナの固定など台風対策を行います。
もちろん、台風21号に対しても対策を行っていたのですが、高潮による影響が大きく、ヤードの冠水やコンテナ流出が相次いでしまったのです。

当然、貨物も大きな被害を受けています。水濡れや横転により変質したり、電化製品は壊れたり、流出で貨物そのものが無くなる場合もあります。このような被害を受けた貨物に対しては、その関税が減税又は払い戻しされます。

変質、損傷の場合の減税は、その貨物が従価税品なのか、従量税品なのか、または従価従量税品なのかによって減税の適用時期が異なります。

1.従価税品
・輸入申告から輸入許可(輸入許可前引取り貨物についてはその承認時)までの間に、貨物が変質、損傷した場合
・保税蔵置中の変質、損傷により適用税率が変更した場合
以上の場合に減税が適用されます。

輸入申告前の貨物については、価値の減少に基づいて課税価格(申告価格)を下げることで対応します。

2.従量税品
輸出港を出てから輸入許可の時までの変質・損傷に減税が適用。

3.従価従量税品
従価従量税品の税率は、従価税と従量税を複合したものと選択するものとがありますが、それぞれの要件に対応した方法を適用します。

また、保税地域にある貨物(輸入許可前)が「亡失」した場合、保税地域の許可を受けた者から徴収することになっています。しかし、災害などやむを得ない事情による場合、関税は徴収されないこととなっています。

*亡失とは、貨物が物理的に存在しなくなること。本来の性質、形状、商品価値等を失い、新たに製造する必要があると認められる状況にある場合のこと。

以上は輸入許可を受ける前の話です。輸入許可後の貨物は同時に納税もされていますので、減税ではなく、戻し税が適用されます。納期限を延長された貨物については、払い戻すべき額を減額します。

しかし、すべての被災貨物に戻し税が適用されるわけではありません。変質、損傷による戻し税が適用される要件は、「輸入許可後引き続き輸入許可を受けた時の蔵置場に置かれている場合」です。輸入許可時の蔵置場所から別の場所に搬出された貨物については、適用されません。

納付した関税の全部または一部の払い戻しを受けることができます。戻し税の要件はもう一つ、「災害その他やむを得ない理由による」ことです。輸入許可前の変質・損傷による減税が適用されるのはこの、「災害その他やむを得ない理由による」を要件としないのに対し、許可後の戻し税に対しては上記2つの要件を満たさなければなりません。

具体的な減税の計算方法と手続きについては、また次回以降にお話ししたいと思います。

関連コラム:海上輸送は天候の影響を受けやすい
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-09-22

2018/09/29

貨物船見学するなら夏がチャンス!

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先日、子供と一緒に、船舶の見学イベントに参加してきました。

多目的コンテナ船が港に寄港している間に見学するもので、夏休みの宿題のヒントにもぴったりなイベントです。

客船やフェリーなどのような旅客船に乗る機会はありますが、コンテナ船などの貨物船は港で外から見るくらいです。

実際に運航し現役で働いている貨物船に乗れる貴重な機会です。

他にも、タグボートや商船学校の実習船に体験乗船できるなど、夏は子供向けのイベントも充実しています。もちろん、大人の方もたくさん参加されています。

これらは、船員確保のための広報活動の一環です。一般社団法人日本船主協会が実施しています。

「船ってサイコ~2018」
https://www.jsanet.or.jp/event/event2018_summer.html

今年のイベント予定は募集終了してしまいましたが、毎年開催されています。

航海士の話を聞きながら、操舵室(ブリッジ)や機関室(エンジンルーム)、船長室などの見学をします。一方的に説明を聞くだけでなく、割と自由に質問できる時間がありました。興味のある人しか参加していない、ということもあり、活発に質問が飛び交っていました。

帰りには本や資料などたくさんのお土産をもらいました。息子はその資料などをもとに、自由研究の宿題を完成させました。

さて、「船員確保のための広報活動の一環」と書きましたが、実は日本人の船員はどんどん減っています。日本の外航海運企業が運航する船舶(日本商船隊)で働く船員のうち、日本人は約2,200人(2016年)です。1980年には38,000人を超えていたのですから、10分の1以下です。

なぜこんなに減ってしまったのか?

理由の一つに人件費削減があります。少ない人数で操船する船の開発が進んだことや、人件費の安い外国人(フィリピンやインドなどアジア地域出身者)を雇い入れることにシフトチェンジすることで、人件費を抑えたのです。

船会社が国際競争力を維持するためには、運賃の価格競争を勝ち抜かなければならず、日本の他の製造業と同じことが行われたのです。平成24年のデータでは日本商船隊で働く船員のうち98%がフィリピンなど東南アジア出身者となっています。

私たちが見学した船でも船長他、船員はすべてフィリピン人でした。船は日本籍船でしたので、日本で操船する資格をみなさん持っておられるそうです。

日本の船会社は質の高い船員を育てるため、アジア地域に教員派遣や支援、海運学校の運営などを行っています。しかし、同時に日本人の船員が減り続けることは安全保障上も問題があります。特に日本はエネルギーなど資源のない国であり、衣・食・住のほとんどを貿易、それも99%は船の物流に頼っている国です。この状況下で外国人に依存しすぎるのは有事において危険です。

そこで政府は日本籍船と日本人船員を増やすことにしました。これが上に述べた船主協会などの広報活動や、日本人船員を増やす取り組みをしている海運会社への税金優遇政策などです。同時に質の高い外国人船員の確保・育成のための活動も支援しています。

政府は日本人船員を10年で1.5倍程度に増やす目標を掲げていますが、いろいろ資料を見比べても増えていない状況です。特に、外航船では横這いか減少しています。

船員になることは、
・給料がいい
・しかも船上では衣食住のお金がかからないので貯金できる
・長期休暇がある
などのメリットがあります。

一方で
・長期間家に帰れない
・体質によって程度の差はあるが船酔いする
・船上ではネット環境がほぼなく娯楽が限られる
・航海中はずっと同じメンバー
などのデメリットもあります。

ネット環境を整えることも可能なそうですが、費用対効果を考えるとネット環境の整った船はまだまだ少ないそうです。船上生活ではコミュニケーションや同僚の様子をお互いに把握していることが重要ですが、ネットがあるとどうしても自室に籠りがちになり、仕事にも支障が出るのだそうです。

英語を使う職業に就きたい、という方にも船員はぴったりです。日本人メンバーだけが乗船することはないので、船上の公用語は英語です。

余談ですが、私の大叔父は船員でした。船長にまでなった人で、晩年は貨物船オーナーをしていて親族一のお金持ち。たまに会えば破格のお小遣いをくれたことが懐かしいです。いい時代に船員をしていた、ということもありますが、やはり給料はいい、という印象です。

今年の夏は終わろうとしていますが、今年逃した方は是非来年の夏こそは!

2018/09/05

シッピングマーク(荷印)?何を記載するの?

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輸出入される貨物の外装にはマークが記載されているのはご存知でしょうか?

貨物外装に書かれたマークのことをShipping Mark(シッピングマーク)やCase Mark(ケースマーク)、荷印と呼びます。

貨物の外装にシッピングマークを付する目的は、というと

・梱包された貨物の中身の判別
・貨物の仕分けを簡単にする
・中身に関する取扱い上の注意事項の明記
・容積・重量の判別
・複数の時に連番を付けることで個数と梱包の特定

これらのことがわかればよく、特に決まった様式があるわけではありません。

一般的には、

・主マーク(社名など)
・仕向け地
・注文番号(PO No.)
・ケースナンバー
・貨物の原産地表示(例:Made in Japan)
・取り扱い注意事項(例:DANGEROUS、This Side Upなど)
・総重量(Gross Weight)/純重量(Net Weight)/容積(Measurement)

などを記載します。

輸入者の指示を受け、輸出者が記載します。Shipping Instruction(船積指図書)の「Marks&Numbers」という欄がシッピングマークに当たります。輸出者はこの指示をもとに、プロの梱包会社や貨物の出荷元に依頼して貨物にマークを記載します。

シッピングマークは貨物本体の外装だけでなく、送り状(Invoice)、梱包明細書(Packing List)、船荷証券(B/L)または航空貨物運送状(AWB)、保険証券、原産地証明書、税関申告書類などに記載されます。

実際の貨物の判別材料となるので、記載マークは書類と合致しなければなりません。ミスタイプなどで貨物現物のマークが書類と異なる場合は、どちらかに合わせて一方を訂正します。余計な手間と費用が掛かってしまうので、事前にしっかり確認することが重要です。

貨物が複数あって連番になっているときは、インボイス等にC/No.1-UPやC/No.1-30などと記載します。欠番があるときは、例えば、No.1-5、No.8-10のようにすると、6と7はないことがわかります。また、貨物には1/10、2/10・・・というように記載されていると、全部で10カートンあることが、一目瞭然です。

例:
RAKURAKU
SHANGHAI
C/NO.1-UP
Made In Japan

また、実務においては書類に「Shipping Marks as per attached sheet」と記載し、船積書類では添付書類を共通使用する、という場合もあります。

特に小口貨物(混載便、LCL貨物)の場合、他の貨物とまぎれないよう、明確なマークが必要です。パレットに乗せてまとめてラッピングしている場合は、ラッピングの上からマークを貼付します。

一方、コンテナを丸々一本借り入れるFCL貨物の場合はカートンごとにシッピングマークを付する必要はありません。この場合、インボイス等書類にはN/M(No Mark)と記載します。

ただし、タイなど、国によってはシッピングマークの記載が義務となっているので、搬入先の国の規定に従います。

2018/08/29

カワウソなど人気の動物が密輸の対象に?

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最近、カワウソが人気ですね。

愛嬌のある表情や仕草、家で飼うことも可能、とのことから、テレビやSNSでブームを引き起こしています。

水族館や動物園ではカワウソの人気投票が行われたり、個人の方でカワウソを飼っている方のTwitterは大人気で多くの方にフォローされています。

しかし、人気のカワウソ、ブームの陰には悲しいニュースもあるのです。

実は、カワウソはワシントン条約で附属書Ⅱにも掲載されている絶滅危惧種でもあるのです。絶滅の危機に瀕しているのに、人気であることから、高額で取引されています。そして、その市場価値がゆえに、生息地である東南アジアで野生の状態で幼獣が捕獲され、その親カワウソは殺されたりしているのだそうです。

ではなぜ絶滅危惧種の動物がペットショップで売られているのか?それは、国内で人工的に繁殖されたものであれば「野生生物」にあたらず、商取引してもいいからです。

しかし、カワウソは人工繁殖がまだまだ難しく、流通量が少なく希少で価格も60万円以上します。一部のエキゾチックアニマルを扱う業者では販売されていますが、入荷は相当待たなければないそうです。ただし、実はその動物がどういった経路で入手されたものであるかはわからないといいます。密輸されてきた動物である可能性も否めないのです。

需要があるのに入手が困難なため、密輸の対象にもなっています。2015年から2017年に東南アジアで密輸されそうになった59頭の生きたカワウソのうち、少なくとも32頭は日本向けであったそうです。

密輸された動物は動物を保護する観点から良くないことだというだけでなく、感染症の危険性があることを理解しなければなりません。

通常、動物の輸入には煩雑な手続きが必要です。輸出国政府発行の衛生証明書を入手し、輸入申告、輸入検疫または届出、CITESの入手などをしなければなりません。動物の種類のよって手続きは異なります。

◆犬、猫、うさぎ、鳥類、水産動物、その他の動物(牛、やぎ、羊、豚、いのしし等、馬、ミツバチ)

農林水産省・動物検疫所での輸入検疫が必要です。種類により輸入手続きが異なります。犬、猫の場合、個体識別用のマイクロチップの埋め込みや狂犬病の予防接種(2回)、抗体検査、輸出前待機(抗体検査の採決日から180日以上)、事前届出(日本到着日の40日前まで)、輸出前検査、輸出証明書の取得が輸出国で必要です。これらに不備があれば、日本到着後に一定期間係留しなければならず、犬については証明書との照合ができないと返送になります。また最悪の場合殺処分になってしまいます。

◆動物検疫対象以外の陸生哺乳類、げっ歯類(フェレット、ハリネズミ、ハムスター、モルモット等)、鳥類(オウム、インコ、鳩、文鳥等)

厚生労働省・検疫所に輸入届出が必要です。輸出国政府発行の衛生証明書も必要ですが、げっ歯類の場合、保管施設が輸出国の指定を受けていることなど条件が厳しく、自宅やペットショップで飼育されていたものでも基本的に持ち帰ることが難しい状況です。

以上の輸入手続きは個人で飼っているペットであっても、商業目的の輸入でも同じ手続きが必要です。

また、プレーリードッグやサル、タヌキ、コウモリ、イタチアナグマ、ハクビシン、ヤワゲヌズミは輸入禁止動物です。これらの動物は感染症を人に感染される恐れの高い動物として輸入が禁止されています。

例えば狂犬病は病名に「犬」とあるため、犬のみが媒介する病気のように勘違いされる方もいますが、すべてのほ乳類が感染源となる可能性があります。密輸される動物は輸出国と輸入国での検疫を通っておらず、致死率の高い感染症を持っているかもしれません。しかも、これらの動物が無責任な飼い主によって飼育放棄されたら、と思うと恐ろしいですよね。

私自身は動物が好きで、動物を扱ったテレビやSNSの投稿も見るのですが、ブームの陰の部分を思うと複雑な心境です。

2018/08/11

WTOで定められた報復関税とは?

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今年3月、アメリカのトランプ大統領が、アメリカに輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す方針を示しました。

その理由は、現状の鉄鋼・アルミニウムの輸入量と世界的な過剰生産が、米国内の鉄鋼・アルミニウム生産施設の閉鎖を招いている。

そのために米国経済の弱体化や国家の非常事態時に必要な防衛上の需要を満たせない可能性があり、これは「米国の安全保障を損なう恐れ」であると言っています。

鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置は3月23日よる発動。これに対し各国が米国を非難。カナダ、EU、ロシア、メキシコ、中国などが、米国の輸入制限措置はWTO違反としWTOに提訴、報復関税を課す手続きをしています。(日本は今のところ対抗措置を留保しています。)

ということで、今日は何かと話題の「報復関税」についてお話しします。

「報復関税」とは、WTO(世界貿易機関)で定められている特殊関税の一つです。課税額は「報復」とあるように、報復する対象となる品目の価格以下を限度とします。例えば100億円分の輸入に対するなら、100億円以下の輸入に対して報復関税がかけられる、ということです。

日本においては関税定率法(第6条)に定められています。

1. WTO協定に基づいてわが国の利益を守り、その目的を達成するため必要があると認められる場合
2. ある国が、わが国の船舶、航空機、輸出貨物又は通過貨物に対して差別的に不利益な取扱いをしている場合などに、指定された物品の課税価格以下で課されます。原則として、WTOに提訴し、その承認を受けて、関税を課します。

過去には、米国の「バード修正条項」に関する報復措置として、2005年9月から2014年8月までベアリング(玉軸受)等の輸入に対し、報復関税を課しました。

「報復関税」のように、不公正な貿易取引や輸入急増などに対抗する措置として割増関税を課すことが認められています。これを、「特殊関税制度」と呼び、報復関税のほか、「相殺関税」「不当廉売関税(アンチ・ダンピング)」「緊急関税(セーフガード)」があります。

報復関税以外はその産業を代表する人が政府に対して課税を求めることができます。2018年7月現在、課税中のものは、中国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税など5件。調査中の貨物は中国産電解二酸化マンガンの不当廉売関税となっています。

関係法令・ガイドラインについては税関HPに詳しく掲載されています。
http://www.customs.go.jp/tokusyu/houreiguideline.htm

ただし、WTOでは特殊関税措置を認めながらも、その濫用を制限しています。

さて、話を現在の世界情勢に戻しますと、米国は中国に対して、知的財産権の侵害により膨大な不利益を被っている、として、中国からの輸入品に高関税をかけることを公表。第一弾として818品目340億ドルの自動車、情報通信機器などの輸入に対し、関税25%の上乗せを7月6日より発動しています。

この制裁を受けて、中国も報復措置をとりました。同規模の345品目340億ドルの農産品と自動車の輸入に対し、高関税をかける措置を同日発動しました。

応酬がここで止まるのであれば、世界経済に対する影響は限定的、との見方もあります。しかし、米国は中国が報復措置をとったことを受け、追加の輸入制限措置(2000億ドル分!)を発表しています。

米国から中国への輸入額は1,300億ドルなので、仮に中国が報復措置をとったとしても、金額は満たせません。そこで、お得意の米国製品の不買運動や旅行の制限、為替操作をすることが考えられます。中国内の米国企業が大打撃を受けることも考えられます。また、米国内の消費財は中国からの輸入品が多くを占めており、追加関税が課されれば、消費者の生活に直接影響が出てしまいます。

米中貿易戦争、どこに落としどころを持っていくのでしょう?いろいろな意見があるようですが、金正恩総書記と急に和解したように、来週あたり、トランプ大統領が習近平国家主席と何事もなかったように握手しているというオチなのではないでしょうか。

2018/07/17

VAT還付制度を賢くつかう海外での買い物

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夏本番となりました。
夏休みに海外旅行の計画を立てている、という方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、海外旅行で役に立つVAT(付加価値税)の還付についてお話ししたいと思います。

VATとは、Value Added Tax=付加価値税を指します。日本では消費税にあたります。

物品サービス税ともいい、物やサービスを購入した際に課せられる間接税のことです。

欧州やアジアの国々で導入されています。

VATは国内消費される物品にかかる税金です。輸出非課税の原則から、旅行者の購入品は輸出品とみなされ、免税または還付の措置が取られています。ヨーロッパではおおむね15~20%と高税率ですから、免税または還付されるなら、買い物がもっと楽しめますよね。しかし、それには条件と手続きが必要です。

◆すべてのお店、商品が対象ではない!
VATの免税や還付は国や機関が認めた店舗での買い物に限られます。日本でも「Tax Free」マークを見かけることが多くなりましたが、このマークのあるお店では免税書類(リファンドチェックやショッピングチェックと呼ぶ)を発行してもらえます。ただし、マークがなくても高級ブランド店などでは書類を発行できる場合がありますので、店員さんに確認しましょう。

また、食品や飲料などの消耗品は対象にならない場合があります。日本は消耗品も免税対象ですが、日本国内で開封してはいけないなど、一定のルールがあります。さらに、一般的に購入金額の下限と上限も設けられています。

◆すべての外国人が対象ではない!
入国後の滞在期間が一定期間以上(日本であれば6か月)を超える場合、適用されません。また、非居住者が対象者ですが、EU加盟国間の移動では還付されないので、EU圏の最終出国空港で手続きを行います。

日本人でも、海外在住者で6か月以内に出国する人は、免税対象者となります。ただし、消耗品は購入日から30日以内の輸出するものに限られるので、購入時期をよく考えましょう。

◆手続き方法は3パターンあり?
【1. 出国時に還付を受ける方法】
出国時に税関で購入品、レシート、パスポート、航空券または搭乗券を提示。お店で発行してもらった免税書類に輸出承認スタンプを押してもらいます。そして、リファンドオフィスや払い戻しカウンターでこれらを再度提示し、リファンド申請します。

【2. 出国時前に還付を受ける方法】
町中や大型店、アウトレットなどに設置されているリファンドオフィスで手続きすることで、還付を受けられます。

出国時には税関手続きが必要です。出国空港の税関で免税書類に輸出承認スタンプをもらい、期限内に書類を所定の住所に返送します。書類が期限以内に届かなければ、還付額と手数料の合計金額がクレジットカードに請求されてしまいます。

【3. 免税額で購入できる方法】
予めリファンド額を差し引いた金額で購入し、免税書類を発行してもらいます。出国前にリファンドオフィスで還付を受ける場合と同様に、出国時に税関手続き、書類の送付が必要です。

万が一税関が輸出承認スタンプを押し忘れると、免税が受けられません。また、購入品の確認を求められる場合があるので、機内持ち込みにするか、チェックインの際に手荷物引換証を発行してもらい、税関手続き後に荷物を税関職員に預けます。

払い戻しは現金かクレジットカード、小切手の自宅郵送の方法があります。リファンド率は手数料等を引かれるため、100%ではありません。

リファンド手続きを請け負っている会社はグローバルブルー、グローバルタックスフリーなど。払い戻しを受けられる主な国は、EU(イギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、スペイン、ドイツなど)、シンガポール、韓国、オーストラリア、カナダなどです。

ところで、どちらも免税店と訳されるTax Free ShopとDFS(Duty Free Shop)。違いはご存知でしょうか?

・Tax FreeはVATのみの免税
・DFSは消費税のみならず関税や酒税、たばこ税等の複数の税金が免税されます。

その国の非居住者が利用できますが、日本では例外的に「Tギャレリア沖縄」で沖縄県外から来た人であれば利用できます。つまり、日本人でもOK。免税額でお買い物できます。

税率や適用金額、リファンドの方法は国によってそれぞれ違うので、旅行前には事前に調べておくといいでしょう。

2018/07/13

意外と知らない台湾の基本情報

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皆さんは台湾に行ったことがありますか?

私は学生時代にバックパックを背負って、旅行したことがあります。

いわゆる貧乏旅行でしたが、屋台での小吃や、夜市でのマンゴージュースがとても美味しかったことを覚えています。

台湾は関空から直行便で3時間弱、LCCなら往復2万円以下で行くことができ、人気の旅行先です。

面積は九州よりやや小さいくらいなので、3泊4日で主要観光地を周遊することもできます。

日本から人気の旅行先である台湾ですが、それ以上に台湾から人気の旅行先が日本です。台湾は世界一の親日国と言われています。だからというか、単に距離が近いからか、訪日台湾人は2017年456万人です。台湾の人口が約2,357万人ですから、単純に計算して5人に1人は訪日経験があることになります。ちなみに、日本からの訪台者数が約190万人です。

日本が人気の旅行先に選ばれている理由の一つに、距離が近い、ということがあげられます。台湾は大型連休が少なく、あまり長期の旅行がしにくいという事情があります。そこで、2・3泊で行ける近隣国が人気です。

日本は四季がはっきりしていて、四季折々の景色や食べ物を楽しむことができます。台湾にも四季はありますが、基本的に沖縄のように年中温暖で、特に夏は非常に蒸し暑いです。ですから、冬はスキー、夏は涼しい北海道が年間通して人気です。

さて、「台湾」は国名だと思っている方はいませんか?
台湾とは、「中華民国」が実効支配している島の名前です。では、「中華民国」が台湾の国名?それもちょっと、違うのです。

少し台湾の歴史を紹介しますと、もともと先住民が住んでいた台湾に福建省や広東省など中国大陸沿岸部の人々が最初に移住してきたのが17世紀頃のことです。その後、清朝の支配下に置かれる時代や、日本統治時代を経て、第二次世界大戦後はそのころ中国大陸を統治していた中華民国政府が領有していました。(日本は台湾統治を放棄した、というだけで、どこに帰属するかは明確にしておらず、国際法上の領有権は未確定という見方もある。)

戦後、中国では中華民国政府VS人民解放軍(中国共産党)の内戦が激化します。中華民国政府は大陸での支配地域をどんどん奪われていき、最終的には台湾に政府機構を移転します。政府機構だけでなく、財産や文化財なども移転させており、台湾に故宮博物院があるのはこのためです。一方、人民解放軍は中華人民共和国の建国を宣言します。

その後、冷戦の文脈の中で国連が「中国代表権」を中華人民共和国に移し、アメリカをはじめ、各国が中華人民共和国を承認します。「中華人民共和国(中国)」と「中華民国」はどちらも自分が正統な政府機関である、と主張していましたから、片方を認める、ということは片方を認めない、ということです。中華民国は中華人民共和国と国交を結ぶ国々とは国交を結んでいないか、断交しています。

中国は「一つの中国」という原則を掲げており、台湾を取り戻すことが中国共産党の最終的勝利だ、としています。しかし、軍事力も経済力も大きな中国が、台湾に強力に手を出さないのは、アメリカが関係しています。過去に中国は台湾の基隆沖海域にミサイルを撃ち込むなどの威嚇行為を行いました。その際、アメリカ軍は台湾海峡に空母を派遣。「アメリカは必要な場合には、台湾を助けるために台湾に近づく」と中国に警告しています。

各国は台湾と正式な国交がなくても、非政府組織の窓口機関を通じて外交関係を続けています。WTO(世界貿易機関)は、領域を代表するもの、として台湾の加盟を認めています。中華民国という呼称を使いませんが。

日本は台湾との関係を「非政府間の実務関係」という立場をとっています。非政府とはいえ、事実上の大使館の役割を果たす「日本台湾交流協会」を設置していますし、当協会を通じて二国間協定も存在します。正常な国交を持つ国と何ら変わりありません。

中国と台湾の関係も変化しています。お互いに正式な政府とは認め合っていませんが、経済的・人的交流や貿易も盛んです。

外交や政治の世界は、白黒つけずに棚上げすることで各方面の均衡を保つという複雑なものです。日本との歴史的関係性や台湾のナショナリズムや政治の話など、あれこれ調べると奥が深いものです。皆さんも台湾を訪れる際は、予備知識をたくさん仕入れていくと、また違った旅行の楽しみ方ができるかもしれません。

2018/06/29

有害な廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約って?

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前回のコラムでは中国が廃プラスチックや古紙など、資源ゴミの輸入を禁止したことをお話ししましたが、中国に限らず、資源ゴミの輸出入は比較的多く行われています。

また、中古電化製品を輸出販売したり、廃基板などから金属などを取り出し資源として販売したりするビジネスもあります。

しかし、資源ごみや中古の電化製品には有害物質が含まれていたり、それらが付着したまま途上国に廃棄する悪質な事業者もいました。

有害物質は人の健康や自然環境を損ねる恐れがあります。1980年代には有害廃棄物による事件が多発しました。そこで、有害廃棄物の越境移動の国際的なルールとして、1992年にバーゼル条約(正式名称:「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制関するバーゼル条約」)が制定されました。日本は1993年に加入しています。

条約では、規制の対象となる有害廃棄物とその他の廃棄物を特定し、これらの廃棄物を輸出するには輸入国の同意が必要、としています。また、締約国は廃棄物を可能な限り自国で処分すること、不法取引の犯罪性を認め罰則を設けること、非締約国との廃棄物の輸出入を原則禁止とすること、廃棄物移動は移動書類を添付すること、などが規定されています。

*バーゼル条約締約国とは別にOECD加盟国間や2国間協定のある場合、これに基づく規制が適用されます。

条約で規制対象となるものは、最終処分又はリサイクルを行うために輸出入されるものであって、医療廃棄物や鉛蓄電池、廃油、めっき汚泥、廃石綿、シュレッダーダストなどです。原則規制対象外なのは、鉄くず、貴金属のくず、固形プラスチックくず、紙くず、繊維くず、ゴムくずなどです。

また、バーゼル条約の国内対応法として、バーゼル法と廃棄物処理法が施行されました。両法律でも規制対象物が示されています。バーゼル法はバーゼル条約を踏まえて規制対象物を決めており、有害性によって判断されます。廃棄物処理法では価値(無価物が規制対象)で規制対象かどうかを判断します。

国内法で規制対象のものを輸出入する際は経済産業省の承認・移動書類交付、環境大臣の輸出確認・輸入の許可が必要です。バーゼル法と廃棄物処理法は規制対象物が違うため、貨物によっては両方が適用となる場合もあります。また、条約に従い、輸出国への事前通告、輸入国・通過国の同意が必要です。

規制対象かどうかの該否判定は簡単ではありません。対象外リストに掲げられている貨物であっても、鉛やヒ素、ダイオキシン類など一定以上を含んでいれば有害廃棄物として規制対象になります。モーター、配電盤、基板など有害物質を含む可能性があるものは、分析を行い、バーゼル法の基準により判断します。そのほか、経済産業省・環境省では該否判断についての事前相談を行っています。

パソコンやテレビなど使用済み電化・電気機器をリユース目的で輸出する場合、輸出承認を得る必要はありませんが、梱包の仕方や破損・劣化等貨物の状態により、無価物とみなされます(無価物は廃棄物処理法で規制対象)。また、輸出先国で条約上の有害廃棄物と判断されたり、その国の規制で輸入禁止されていたりする場合は、不適正な輸出としてシップバックされる恐れがあります。

汚れや異物混入のないもの、破損しないような保護のされたもの、輸出先国の規制を理解すること、正常作動性を確認したものであることも輸出のポイントとなります。

経済産業省HP:バーゼル条約・バーゼル法の概要、仕組み、手続き等
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/10/bsimple_judgmentsys/outline.html

2018/06/05

中国が日本のゴミ輸入を禁止に

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昨年7月、日本の、いや世界の廃棄物事業者にとって衝撃的な発表がされました。

それが、中国の「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」です。

「計画」では外国ゴミの国内持ち込みを禁止し、国内で出される固形廃棄物の無害化、資源化再利用を促す、としています。

業種・種類ごとに輸入禁止のタイムテーブルを策定。

2017年末前に、環境への危険リスクが高く、人への健康被害が大きい固形廃棄物の輸入を全面禁止、2019年末までには国内の資源ごみで代替え可能な固形廃棄物の輸入を縮小していく予定です。

全面禁止となった固形廃棄物は、生活ごみとしてだされる廃プラスチック、未処理の古紙、皮革製品・繊維系の廃棄物、汚泥、医療廃棄物、バナジウムスラグなど。

中国は長年にわたり、世界各国から廃プラスチックや古紙など再生利用できる廃棄物を輸入してきました。その理由の一つは、中国国内の原料不足を補うためです。廃プラスチックは処理してペレットなど原料にし、中綿やプラスチック製品を作ります。石油原料からプラスチック製品を作るより、廃プラスチックを輸入してリサイクルした方が簡単。また輸出側も中国でリサイクルした方が安上り。双方の思惑が一致したこともあって、中国の廃プラスチック輸入量が膨大な量になりました。ピーク時(2012年)で888万トン、2016年では735万トンです。

国別にみると1位:香港24%、2位:日本12%、3位:米国9%です。日本は廃プラの50%を中国、32%を香港に輸出しています。日本から香港に輸出されたものが中国に輸出されるので、最終的にはほとんど中国行きです。

ではなぜ、長年の方針を転換して、廃棄物輸入禁止にかじを切ったのか?それは、関係各部門が環境リスクに配慮し、輸入管理してきましたが、汚染物質やその他のごみの混じった粗悪・悪質な貨物が大量に輸入されていること、その影響で環境汚染が深刻化していることなどがあげられます。公害対策が十分でない加工業者も多く、汚染物質が河川に垂れ流されているといいます。

さらに、中国国内のゴミ事情も関係しています。中国は経済発展とともに、ゴミの量も増え続けています。埋立地も満杯状態で、都市部郊外ではゴミの山が築かれています。ゴミ処理の技術や分別回収も進んでいない状況で、特に都市部の生活ごみ処理が深刻な問題となっています。

海外からリサイクルしやすい状態にした廃棄物を受け入れていたのでは、国内の分別リサイクルが進みません。また、国内廃棄物だけでも環境汚染がひどいのに、さらに海外の汚染物質付き廃棄物の買い取るなんてお断りだ、というのも本音ではないでしょうか。

さて、人体や環境に有害な廃棄物の輸出入を規制する国際的枠組みに、バーゼル条約(正式名称:有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)があります。有害な廃棄物などの国を越える移動を規制、廃棄物によるリスクから人の健康と環境を守る条約です。

バーゼル条約を実施するための日本の国内法はバーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の二つです。

バーゼル条約、バーゼル法、廃棄物処理法と輸出入の関係はまた、次回以降のコラムでお話ししたいとおもいます。

2018/05/18

原産地証明書識別コードが4桁になったために!

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税関への輸入申告などの通関業務や外国貨物の移動といった港湾関連業務は、NACCSというオンライン電子システムが利用されています。

NACCSについては以前、
「港湾業務の強~い味方!NACCS(ナックス)」
で詳しくお話ししました。

そちらでも触れているのですが、NACCSは昨年10月に更改され、現在は第6次NACCSが稼働しています。

さて、新NACCSになって約半年、通関業者を悩ませているのが原産地証明書識別コードの4桁化、です。

通関業務に従事していない方にとっては全く聞きなれない言葉ですよね。原産地証明識別コードとは、特恵税率の適用可否や原産地証明書の有無を示す記号です。原産国を示すコードとは別に存在します。

旧NACCSでは1桁で表し、28種類ありました。しかし近年、経済連携協定(EPA)が増え、どのEPAを適用しての申告なのか、また、原産地証明書(CO)だけでなく、認定輸出者による自己申告制度など、原産地を証明する方法も多種多様になってきました。

さらに、交渉中の経済連携協定があることや、環太平洋パートナーシップ(TPP)施行も控えています。近い将来、1桁ではコードが足りなくなることが予想されました。また、TPPでは、どの締約国から輸入されるかによって適用税率が異なるため、それぞれの国に対応するコードを割り当てたい。その方がわかりやすい、ということで、コード体系の見直しがされました。

4桁になった原産地証明書識別コードは以下3つの項目を組み合わせたものです。
原産地(申告)種別(2桁)+ 原産地証明書等区分(1桁)+ 貨物の種類(1桁)

「輸入申告事項登録(IDA)時における原産地コードの入力について」
https://bbs.naccscenter.com/naccs/dfw/web/qanda/docs/2017100700059/

例えば、中国から輸入するTシャツで、貨物やインボイスにMade in Chinaの記載がある場合、中国はWTO協定国なので「WK」、中国産Tシャツは特恵が適用できない品目なので原産地証明書(CO)は提出不要で「O」、貨物やインボイスに原産地表示があるので「R」。これを組み合わせて「WKOR」となります。

ベトナムから輸入するTシャツで、輸出国発給のCOがあり、日ベトナムEPA税率適用要件を満たす場合、「VNT4」となります。ベトナムはアセアン加盟国でもありますから、日アセアン包括EPAを利用した輸入なら「AST4」です。

より分かりやすいんだよ、と言われても、1桁から4桁へ増えることは実務に当たる人にとって、大きな負担になります。入力ミスは更改前から予想され、税関に柔軟な対応を求めてきたようですが、現実はなかなか厳しい。原産地証明書を提出しても入力を間違えていればEPA協定税率不可、という判断がされています。

通関業者の入力ミスであれば、輸入者には責任はありません。本来無税または低税率で輸入できるものが高関税を払うことになったら、すべて通関業者が負担しなければなりません。

通関業者にとってなんと緊張感のある更改。。。
輸出申告に比べ、輸入申告業務は本当に気を遣うお仕事だと、改めて感じる事案です。

参考記事:

「港湾業務の強~い味方!NACCS(ナックス)」
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-10-28

2018/05/08

輸入豚肉に課される差額関税制度って何?

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「差額関税」という言葉、初めて聞く、という方も多いのではないでしょうか?

貿易実務に従事する方でも一部の方しか知らない言葉かもしれません。

なぜなら、今現在では豚肉の輸入にしか適用されていない関税制度だからです。

食品輸入に関わる人なら知っている、でもちょっとグレーな匂いのする制度です。

そもそも、差額関税とは、外国からの輸入製品の急な価格高騰から消費者を守るため、そして低廉な輸入品増加から国内生産者を守るため、この2つの目的で設けられた制度です。一般に税率というのは1つの商品分類で1つの税率ですが、差額関税は基準輸入価格と課税価格の差額が関税になります。

具体的にみていきましょう。

現在、豚肉には課税価格によって3種類の税率が適用されています。

1.従量税適用限度価格(64.53円/㎏)を下回るもの・・・関税率482円/㎏
2.従量税適用限度価格以上、分岐点価格(524円/㎏)以下・・・1㎏あたり基準輸入価格(546.53円)と課税価格との差額
3.分岐点価格以上・・・4.3%

2が差額関税になります。例えば510円/㎏の冷蔵の部分肉なら、2なので、546.53円-510円=36.53円/㎏の従量税が課さるというわけです。100円/㎏であれば446.53円/㎏というように、輸入価格が安いと関税が高く、輸入価格が高いと関税が低くなります。

差額関税の最小関税額は、基準輸入価格546.53円と分岐点価格524円の差ですので、22.53円/㎏です。もしも分岐点価格に近い価格に調整すれば関税額は最小で済みます。そこで、価格の安い部位と高い部位を組み合わせて通関価格が分岐点価格付近になるよう調整して輸入することがほとんどなのだそうです。これをコンビネーション輸入といいます。事実、近年の平均課税価格は23円/㎏で推移しています。

コンビネーション輸入で節税、なら正当な方法と言えなくないですが、実際の価格は安いのに、あえて高い価格で通関する脱税行為も後を絶ちません。従量税が適用されると価格の高低は直接影響しなくなります。消費税は高くなりますが、それよりもうま味が大きいのでしょう。税関の事後調査で肉類の納付不足税額は常に上位です。

過去に大きな輸入豚肉関税脱税事件も起きています。かつて私の知り合いは、勤務先が関与していたそうで、頭を抱えていました。どうやら通関業者も高価申告であることを知っていたようで、悪質とされて業務停止命令を受けたそうです。

ちなみに、TPP、日欧EPAでは発行後10年目に従量税50円/㎏、従価税無税に削減、ただし差額関税は維持されコンビネーション輸入すればほぼ無税で輸入できることになります。11年目まではセーフガードの発効を確保しています。

関税額最小になるように調整されるのに、差額関税制度をなぜ維持し続けるか。これはコンビネーション輸入するためには高い部位も輸入しなければならず、安い部位だけが大量に輸入されることを抑制する効果を見込んでいるからです。

高い部位、安い部位がバランスよく輸入されることで、市場価格の混乱を避け、国内の畜産農家を守ることになる、と農水省は説明しています。

2018/04/12

UPOV(ユポフ条約)で農産物の優良品種を守ろう!

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まだ記憶に新しい平昌オリンピック、女子カーリングで競技の盛り上がりとともに話題になったのはハーフタイム、通称「もぐもぐタイム」でしたね。

その時に選手たちがよく食べていたのが、イチゴでした。彼女たちは「韓国のイチゴは甘くておいしい、お気に入りだ」と言っていました。

しかし、その後テレビやインターネット上で、この「韓国イチゴ」がやや訳ありだ、ということが報じられたことはご存知でしょうか?

何が問題なのか、というと、

韓国で栽培されるイチゴの多くは日本で開発された種苗が元となっており、その種苗は日本から無断で持ち出されたり、開発者の許可なく韓国国内で増殖されたりしたものだ、ということです。

一時期は「韓国産」のイチゴが日本に輸入されていましたが、さすがにこの事実を確認した日本政府が、韓国側に輸出禁止とロイヤリティの支払いを要求しました。しかし、このロイヤリティの支払いが高いことなどから、日本産イチゴから開発した新品種を韓国産イチゴとして品種登録しました。現在、韓国産イチゴは香港や東南アジアに輸出されており、高級フルーツとして人気だそうです。もし韓国に日本産イチゴの種苗が渡っておらず、日本から各国にイチゴを輸出していたら、として政府が出した試算では、5年間で最大220億円といいますから、相当の輸出機会が奪われてしまった、と感じてしまいます。

韓国のイチゴだけでなく、「紅ほっぺ」(イチゴ)や「シャインマスカット」(ぶどう)などの品種が中国や韓国で栽培され、輸出されていることが確認されています。過去には、北海道が権利者であるインゲン豆の一品種が無断で持ち出され、その収穫物が日本に輸入されようとしました。この時北海道は輸入差し止め手続きを取りました。その後、白あんなどの加工品にして輸入されても区別できるよう、DNA識別技術を開発しています。

農産物の優良品種の持ち出しや海外での無断増殖は、輸出マーケットの喪失やブランド力低下など、日本産農産物の輸出への影響が懸念されます。そこで政府は対策として、海外で品種登録(育成者権の取得)を呼び掛けています。

品種の育成者は、種苗法に従い品種登録を行うと、育成者権を取得できます。知的財産の一つである育成者権があれば、栽培や販売の差し止め、生産物回収や損害賠償請求などの対抗措置が可能です。

また、品種保護に関する国際的枠組みとして、「植物新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)」(ユポフ条約)があります。締約国は品種登録を行ったものに育成者権を与えること、またこれを保護する義務があります。

育成者権は国ごとに取得しなければならず、A国で育成者権を主張するには、A国で品種登録しなければなりません。また、その国での販売開始後4年(果樹など6年)以内に出願申請しなければなりません。国内での出願後、速やかに海外出願することが望ましいです。

ただ、申請料や手続きの負担感からか、品種登録してないものが多いそうです。そこで農林水産省では出願費用の一部補助や相談窓口を設置するなど、海外での品種登録出願を支援しています。

ぶどうやりんご、いちごなど日本から海外への輸出額はここ数年伸びています。特に香港や台湾、シンガポールへの輸出が多く、これらの国はフルーツを贈る文化があり、贈答用に「日本産」フルーツが人気だそうです。

フルーツだけでなく野菜や穀物の優良品種が多い日本。海外の生産者からすれば、自国で開発するより、すでにある優良品種を栽培したいと考えるのではないでしょうか?育成者権を使ってライセンス生産、ロイヤリティ収入を得ることや、日本と世界各地で栽培することで通年供給することも可能です。工業製品だけでなく、農作物にも知的財産対策・戦略を考えていかなければなりません。

2018/3/31

保税地域ってどんなところ?何ができるの?

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保税地域という言葉をご存知でしょうか?

保税地域とは、簡単に言うと、外国貨物を外国貨物のまま置くことができる場所です。

外国貨物とは、これから輸出しようという貨物であれば輸出許可後の貨物、輸入してきた貨物であれば輸入許可を受ける前の貨物のことです。

「保税」という言葉が示すように、関税・消費税など輸入の際に発生する税金を留保できる場所、という意味もあります。そして、原則として保税地域から貨物を引き取る時に関税などを払います。

保税地域には5つの種類があります。
1.指定保税地域
2.保税蔵置場
3.保税工場
4.保税展示場
5.総合保税地域

1と2は外国貨物の積みおろし、運搬、蔵置ができる場所です。特に指定保税地域は税関手続きのための蔵置場所で、税関所在地の近くにあります。国や都道府県など地方公共団体が管理・所有する土地で、財務大臣指定により設置されます。だれでも自由に安く利用してもらうため、長期間の蔵置が認められていません。一方、保税蔵置場は原則2年の蔵置が認められており、税関所在地近くに限らず、内陸地にもあります。

3は外国貨物の製造・加工ができる場所です。認められた期間(原則2年)内に製造・加工し、製品を外国に送ります(積戻し)。保税工場と保税蔵置場が併設されている場合もあります。食品や石油製品、機械など、日本でも様々な製品が製造・加工されています。飛行機内で提供される機内食は保税工場で加工されていたりします。原材料は外国貨物だけでなく、日本国産の原材料を使用することも認められています。これを内外貨混合使用と呼びますが、その場合も全量外国貨物とみなされます。

4は外国貨物を展示する場所です。国際展示会や博覧会などではこの制度を利用して行われることがあります。

5は2から4の機能をすべて併せ持つものとして指定された場所です。通常なら保税地域間の移動は保税運送という手続きが必要ですが、総合保税地域内では手続きなしでも外国貨物の移動ができます。もともと保税蔵置場や保税工場が集まった地域に対応する制度として創設されましたが、あまり多くはありません。

保税地域が設けられた目的は、「輸出入貨物を法の規制下に置くことにより、秩序ある貿易を維持し、関税などの徴収の確保を図るとともに、貿易の振興及び文化の交流などに役立てること」です。

「貿易の振興及び文化の交流」とあるように、文化交流のためにも保税地域は利用されています。例えば美術館や国際展示会などでは保税展示場の承認を得て美術品などが展示されています。保税展示場への搬入には展示等申告書を税関に提出して承認を受けます。私も旅行先の博物館で「保税展示場」と書かれた立て札の先にある清や唐の時代の陶器を鑑賞したことがあります。その時、これらの展示品は外国貨物でこのロープの先は保税地域なんだなぁと一人感慨にふけっていました。(何を興奮しているんだ?と家族には理解されずです。。。)

ちなみに、展示会に外国貨物のまま展示する方法はATAカルネを取得する方法や再輸出減免税で申告する方法もあります。この場合、展示会場が保税展示場の承認を受けていなくてもかまいません。

機内食の加工や美術品の展示など、「保税地域」を身近に感じられる場所もあります。港湾地区を走るトラックを見かけて外国貨物の保税運送中なのかな、などと考えてみるのもおもしろいかもしれませんね。

2018/03/27

カーリングのストーンって関税かかるの?

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平昌オリンピック、始まる前は政治的な問題もあり成功が不安視されていました。でも、はじまると日本選手の大活躍ぶりになんとも盛り上がりました。

私はやはり女子チームが気になり、スピードスケートとカーリングに釘付けになりました。

カーリングは見た目には淡々と進む頭脳系競技なのですが、エンドが近づくと1投1投にハラハラドキドキ。

そして笑顔でお互いをたたえあう彼女たちの姿にたくさんの感動をもらいました。

そこで気になったのがカーリングのストーン。テレビのワイドショーなんかでもストーンについて解説されていましたが、1個20㎏、10万円くらいするそうです。これを1チーム8個×2チームなので、1試合に16個用意しなくてはなりません。

ストーンは花こう岩でできており、特に強度と滑りやすさに優れた、スコットランドのアルサクレイグ島産のものが国際大会で使用されています。試合では会場にあるものを使うそうで、選手が揃える必要はありません。ストーンは耐久性が高く高額なため流通量が少なく、店頭で売られていることはないようです。

ただ、もし輸入するなら・・・、ということでカーリングのストーンの税番を調べてみました。

実行関税率表の見方も解説していきますので、ここから先は税関のHPから実行関税率表も開いて読んでいくとわかりやすいでしょう。

実行関税率表
http://www.customs.go.jp/tariff/2018_1/index.htm

まずは材質分類になるのか用途分類になるのかをチェックします。ストーンは石を加工してプラスチックの持ち手を付けたものです。石でできた製品は第68類「石、プラスター、セメント、石綿、雲母その他これらに類する材料の製品」に当てはまります。用途で考えると、第96類「がん具、遊戯用具及び運動用具並びにこれらの部分品及び附属品」が当てはまります。

では、どちらのほうに分類されるかを詳しく見ていくために、「類注」をチェックします。すると、68類注の除外物品に「第95類の物品(例えば、がん具、遊戯用具及び運動用具並びにこれらの部分品及び附属品)」とあります。ということは、カーリングのストーンは石でできていますが、運動用具なので、68類から除外され、95類に分類される、ということになります。

次に95類を見ると、9506-「身体トレーニング、体操、競技その他の運動(卓球を含む。)又は戸外遊戯に使用する物品(この類の他の項に該当するものを除く。)及び水泳用又は水遊び用のプール 」に当てはまります。9506-を下にスクロールしてぴったり当てはまるものを探していくと、9506.91-000「その他のもの-身体トレーニング用具、体操用具及び競技用具」が一番ふさわしい税番です。

さて、タイトルの答えですが、関税は無税です。

ちなみに、選手たちがはめているグローブ。手袋は95類注に「手袋、ミトン及びミットは構成する材料により該当する項に属する」、とあるため、表面の構成材料の面積が一番大きいものが何であるかで決まります。主要材料が革なら42類、合成皮革なら39類(プラスチック製品)か61類(ニット製品)、合成皮革以外の繊維製でも61類が当てはまるでしょう。

2018/03/08

並行輸入品の商標権侵害は3要件で決まる?

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先日、小学3年の息子が「これ買う」と言って指定してきたものは、ネットショップで売られている並行輸入品のおもちゃ(フィギュア)でした。

日本未発売品らしく、価格も妥当。でも、職業柄か、並行輸入って書いてあるけど大丈夫なの?

と思ったので、今回は「並行輸入」について、書きたいと思います。

「並行輸入」とは、日本の正規代理店を通さずに、別のルートで真正品を輸入することを指します。

一般的に有名ブランドの販売ルートは、商標権を持つ海外のメーカーまたは輸出者から日本の総代理店契約を結んだ輸入者が輸入し、一般消費者に販売しています。しかし、商標権者と正式の契約を結んでいない第三者により輸入販売されることがあります。これを「並行輸入」と呼びますが、権利者の許諾なしに輸入販売することは権利侵害行為ですので、本来なら輸入は差し止められます。しかし、過去の判例から真正品(ホンモノ)の並行輸入は一定の要件を満たせば商標権の侵害に当たらないとされています。

では、その要件とは?

1.適法性の要件
当該商品に付された商標が、外国の商標権者等により適法に付されていること。商標権者でないものが商標を付した商品は偽造品、ニセモノです。当然、輸入販売することはできません。

2.同一人性の要件
外国の商標権者と日本の商標権者が同一人、又は法律的・経済的に同一視できる関係であること(持ち株会社など)。ただし、同一視できる関係の範囲は個々の判例を見るしかありません。

3.品質管理性の要件
当該商品と日本の商標権者が扱う商品とが、品質において同等であること。しかし、実際の品質に差がなくても、日本の代理店が独自の宣伝広告などでグッドウィル(顧客牽引力)を築いている場合、並行輸入品とは品質に差異があるとして、違法とされました(1996年クロコダイル事件)。逆に、商標権者が厳格に品質管理を行っていることを前提に、海外ライセンシーと日本ライセンシーの商品に差異があったとしても、品質が保証されているとして違法ではないとされた場合もあります(1984年ラコステ事件)。

以上の要件を確認するためには、

1.当該商品の物品本体をホンモノと見比べること
2.権利者から輸出者の手に渡るまでの流れを書類で確認すること

が必要です。
この2点をクリアにしなければ、いざ商標権侵害を疑われたときに合法性を立証することが難しいでしょう。

また、商標権者が製造を委託したメーカーが横流しした品物を購入することも違法です。真正品ではありますが、知的財産権を侵害するコピー商品とみなされます。

税関が「水際取り締まり」を行っている知的財産は商標権のほか、特許権、実用新案権、意匠権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成権を侵害する物品、それと不正競争防止法違反物品です。権利の種類により、並行輸入として認められる要件も違うため、それぞれの法律と判例を確認して輸入しましょう。

さて、息子が買った「並行輸入品」。無事に我が家に届き、遊んでいます。日本語の説明書がなく、組み立てに苦労したそうですが、日本未発売品が買えた、というメリットは享受しているようです。

2018/02/12

日本酒、焼酎などの酒類を輸出するには?

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海外では日本食ブームと言われています。日本食レストランが世界各地で急増中。それに伴い酒類の輸出も増えています。

2016年の酒類の輸出金額は約430億円。これは、10年前に比べて3倍以上の伸びです。

輸出先国はアメリカ、韓国、台湾が多く、中国やタイ、ヨーロッパでも人気です。

日本の酒類といえば日本酒で、輸出額も1位です。次いで、ウイスキー、ビールが輸出額2位3位となっています。

世界で注目される日本のお酒、輸出するにはまず日本の「輸出酒類卸売業免許」を取得します。この免許は、申請時点ですでに輸出相手候補との取引見込みがあることが条件です。ですので、国内外で開催される見本市や商談会で取引相手を探したり、貿易商社を介すなどして輸出相手を見つけます。

国税庁の行った酒類輸出企業へのヒアリング調査によると、取引相手との信頼関係を築くことが輸出継続のポイントでもあるようです。実際に現地に何度も足を運び、一緒にマーケティングや販促を行うという企業もあります。

続いて、輸出先国の規制や法律への準備に関して。

各国で違いますが、ほぼ共通してクリアしなければならないのがラベル表示規則です。例えばアメリカですと、TTB(酒類・たばこ税貿易管理局)からラベルの表示内容について承認を受けなければなりません。酒の種類によってそれぞれ規定があり、日本酒であれば、ワインと同じ規定が用いられます。

そのほか、
・容器・容量に関する規制
・農薬・抗生物質・食品添加物に関する規制
・食品の衛生上の安全を確保するための法律による規制
・福島原発事故に関連した輸入規制
・輸入ライセンス
などがあります。

東日本大震災以降、日本からの食品輸出に規制がかけられており、輸出したい商品が規制対象でないかの確認が必要となりました。規制対象である場合、輸出できる産地や安全を証明する書類の提出が必要です。しかし、徐々に規制解除になってきているので、最新情報を確認することをおすすめします。

食品の衛生上の安全を確保する法律とは、日本でいうところの「食品衛生法」にあたります。輸入時に検疫機関で検査を受けるほか、アメリカや中国など生産過程で関わる施設や企業の登録が必要な国もあります。台湾では日本国内での検査証明があれば、書類審査のみとなります。

また、通常、日本国内での酒類の流通には酒税が徴収されますが、輸出する場合、酒税の輸出免税が適用されます。
適用要件は
・製造者自らが輸出する場合(通関業者に通関手続きを委託する場合を含む)
・製造者が、許可を受けた輸出業者の蔵置場に移出して輸出される場合(国内の輸出商社は1社のみ経由)
上記の場合であって、法定の期限までに外国に輸出されたことの明細を記載した書類を税務署に提出して免税されます。

酒類の日本国内での需要は、健康志向などを背景に縮小し続けています。一方で、海外では健康志向からの日本食ブームで日本からの酒類輸出が増加傾向といわれます。同じ文脈で結果が全然違うのは興味深いですが、世界中で日本食や日本のお酒が受け入れられているのはうれしいことです。

国税庁HP酒類輸出支援の取り組み
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/yushutsu/01.htm#a03

日本酒輸出ハンドブック
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/yushutsu/handbook/index.htm

2018/01/19

お酒の輸入、手続きや税金は?

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年末年始、ワインにビール、ウイスキーなどなど、いろいろな種類と生産国のお酒をたしなんだ方も多かったのではないでしょうか。

そこで、今回は、お酒の輸入に関する手続きや税金を紹介します。

お酒の輸入には用途によって必要な届出や免許が違います。

1.個人使用の場合(総量10㎏以下)
お土産で携帯や別送で持ち込む場合、760ml程度を3本までであれば関税、消費税、酒税の免税。

2.飲食店などの経営者が自身の店でお客さんに提供する場合
食品等輸入届出が必要。

3.販売目的の場合
食品等輸入届出に加え、酒類の販売業免許が必要です。
a. 輸入者が直接一般消費者に販売する場合、「一般酒類小売業免許」や「通信販売酒類小売業免許」
b. 輸入者が他の酒類小売免許を持った業者に卸す場合、「輸入酒類卸売業免許」
c. a、b両方する場合は両方の免許

輸入したお酒を保税地域から引き取ろうとする際には、容器の見やすいところに、輸入者名と住所、引取り先所在地、容器の容量と酒類の品目、そしてその品目に応じて法令で定められている事項をわかりやすく表示しなければなりません。表示方法は税関長への届け出が必要です。食品等輸入届出には原材料や製造工程表なども必要です。製造元に必要書類をそろえてもらいます。

さて、気になる酒類の酒税と関税は?

お酒は酒税法上、発泡性酒類(ビール、麦芽発泡酒、その他の発泡性酒類)、醸造酒類(清酒、ワイン等果実酒)、蒸留酒類(ウイスキー・ブランデー・スピリッツ)、混成酒類(リキュール・甘味果実酒、みりんなど)に分けられます。

それぞれ、kl(キロリットル=1kℓは1,000ℓ)当たりの税率、例えばビールだと220,000円/kl、ワインは80,000円/klの税率が課されます。さらに蒸留酒類などはアルコール度数が上がるごとに10,000円/klが加算されます。350mlの缶ビールで一本当たり77円です。これは一般小売価格の35%前後だそうです。アメリカの約12倍、ドイツの約20倍です。他の酒税の高い国でも25%といいますから、かなりの高税率です。

関税率はお酒の種類やアルコール度数に応じて定められた実行関税率表に従います。例えばビール(2203.00-000)はWTO税率無税、ワイン(2204.21-020)はWTO税率15%又は125円/1のうちいずれか低い税率ただしその税率が67円/1を下回る場合67円/1、です。チリやオーストラリアなど、FTA協定税率を適用すれば、もっと低い税率になります。

これらの税金は原則として消費税も含めて保税地域から引取るとき(輸入通関時)に納税します。納期限延長制度を利用することができますが、関税・消費税の手続きとは別に手続きが必要です。

財務省HP:酒税の税率
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/123.htm

関連コラム:食品輸入では忘れられない食品衛生法
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-11-06

2018/1/5

畜産物の輸入に求められる動物検疫

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前回前々回に続き、今回も食品輸入の手続きについてです。今回は食肉やその加工品など畜産物について。

畜産物は家畜伝染病予防法の規制を受けます。この法律は家畜の伝染病の侵入とまん延防止のために定められています。

これにより畜産物は輸入の際に動物検疫が必要とされています。

検疫対象となる指定検疫物は偶蹄類の動物(牛、豚、山羊、羊、鹿など)、馬、家きん(*)、犬、兎、みつばち由来もので、
1.肉・臓器(生、冷凍、加工調理済みなど形態問わず)
2.卵(卵殻含む)
3.骨、脂肪、血液、革、毛、羽、角、蹄、腱
4.生乳、精液、受精卵、未受精卵、ふん、尿
5. 乳製品(おみやげなど携帯品や容器充填後に加熱滅菌されたものなど除外品あり)
6.穀物のわら、飼料用の乾草
*家きん:鶏、うずら、きじ、だちょう、ほろほろ鳥及び七面鳥並びにあひる、がちょう、その他のかも目の鳥類

口蹄疫(BSE)や鳥インフルエンザなどの発生状況により輸入禁止地域が指定されています。しかし、輸入可能地域であっても伝染病の発生状況によって禁止地域になります。

指定検疫物を輸入しようとする者は、検疫物の日本到着後すぐ、船便の場合は検査希望日までに、「輸入検査申請書」を動物検疫所に提出します。NACCSでの申請も可能です。

申請書を受け取った防疫官はまず書類審査を行います。申請書には輸出国政府機関発行の「検査証明書」、必要に応じてインボイス、パッキングリスト、船荷証券、原材料表、加工工程表などを添付します。

審査の結果、
・検査省略となったもの
・または違反が見つかったもの
・先に消毒等処置が必要なもの
以外は現物検査が行われます。

無作為に抽出したもの、または全量を検査します。精密検査になることもあります。検査の結果、問題がなければ「輸入検疫証明書」が交付されます。処置が必要なものには消毒処置や、消毒を行っても輸入が認められないものは焼却か埋没か積戻しが命じられます。

無事に輸入検疫証明書が取得できれば、食品等輸入届出済証も取得し、通関手続きを進めます。

さて、農産物と同じく、畜産物は量の多少や個人・商業の使用目的にかかわらず、家畜伝染病予防法の規制対象です。つまり、個人消費のお土産も動物検疫を受けなければなりません。

海外旅行のお土産にビーフジャーキーや缶詰などの加工食品を買って帰る人がいますが、入国時に動物検疫が必要です。その際、生産国の動物検疫機関が発行する検査証明書が必要です。しかし、個人消費やおみやげ用のもので検査証明書を取得するのは難しいため、日本へ持ち込むことができません。勝手に持ち込むことは罰則の対象です。

ただし、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは、日本向けに検査証明書を添付して販売しているものもあります。検査証明書の添付された食肉製品なら日本に持ち込めます。入国時に動物検疫所で検査を受けますが、検査前に開封してしまうと持ち込めなくなるので注意しましょう。

2017/12/09

農産物(果物・野菜など)の輸入は植物防疫法

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前回のコラムでは、食品等の輸入は通関手続き前に検疫所に食品等輸入届出が必要なことを書きました。

今回は、食品のうち、果物や野菜などの農産物の輸入制度や手続きについてです。

農産物は植物防疫法の規制を受けます。

植物防疫法とは、植物に有害な動植物の駆除、有害動植物の蔓延防止、農業生産の安全及び助長を図ることを目的とする法律です。

有害動植物の駆除、蔓延防止策として実施されているのが、輸出時と輸入時に行われる植物検疫です。植物検疫は輸入量や商用・個人消費など用途に関わらず行わなければなりません。

農産物を輸入したい場合、まずは輸出国の植物検疫機関で植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)を発行してもらいます。そして、入港(着陸)後、検査申請書を植物検疫所(農林水産省)に提出して保税区内の検疫所にて検査が行われます。NACCSでオンライン申請できます。

このように、輸出国と輸入国でのダブルチェックが世界各国で採用されています。つまり、日本から輸出したい場合も植物検疫が行われ、相手国に検査証明書を提出することになります。

植物検疫の検査対象品目のうち食品は、果物、野菜、穀類、豆類、未焙煎のコーヒー豆、スパイス、ハーブ、菜種、ごま、植物性の漢方薬原料などが該当します。加工品で製茶などの高度に処理された植物や、ビン詰めされた香辛料、ドライフルーツなどは検査不要品にあたります。

しかし、検査の要不要は製造・加工工程で異なるので事前に検疫所で確認してください。また、輸入できるものと輸入できないもの(輸入禁止品)があります。

輸入禁止品は、植物防疫法で定められた植物、検疫対象となる生きた病害虫、土の付着したもの、これらの容器包装ですが、同じ種類の植物でも国や地域によって扱いが違います。どの産地の植物が輸入禁止品に該当するか、植物防疫所HPにある「輸入条件に関するデータベース」で確認することができます。

輸出入条件詳細情報
http://www.maff.go.jp/pps/j/search/detail.html

輸入条件に関するデータベース日本語版
http://www.pps.go.jp/eximlist/Pages/exp/condition.xhtml

輸入後、検査が行われ、病害虫の付着がなければ検査合格となります。合格証明書が発給され、通関手続きに入ることができます。食品等輸入届出も忘れずに。不合格であれば廃棄するか、消毒して合格証明書を発給してもらいます。

さて、どのように検査が行われているか気になりますよね。検査は全量検査もしくは抽出検査で行われます。植物の種類や荷口ごとに検査数量が定められています。検査は通常目視で行われます。必要とあれば顕微鏡でより詳しく検査を行います。

意外とアナログな検査方法ですが、このような検査が採用できる背景には、輸出国での検疫を経ていることや、どこの国でどのような病害虫が発生しているかの情報共有、リスク回避の方法を確立できているものだけが輸入できる、といったことがあります。適切な管理や措置ができないものについては輸入禁止となっています。

ただし、輸出国から輸入禁止解除の要請があれば、相手国と病害虫侵入リスク回避措置の科学的根拠が十分かどうか検討し、基準を満たせば輸入が解禁されます。輸入解禁に向けた進捗状況は農林水産省のホームページ上でも確認することができます。

2017/11/27

食品輸入では忘れられない食品衛生法

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「モノ」を輸入するためには、輸入申告などの通関手続き以外に、届出や申請など国内法に沿った手続きが必要です。

そのうちの一つ、食品等の輸入に必要な手続きについて紹介いたします。

販売、又は営業目的で使用する食品等を輸入する場合、食品衛生法の規制対象となり、厚生労働省に輸入届出義務が課されています。

具体的には、貨物を輸入する場所を管轄する厚生労働省検疫所食品監視課(以下、検疫所)に「食品等輸入届出書」正副2部を提出します。

食品監視支援システム(FAINS)にリンクしているNACCSを利用してオンラインで届け出ることも可能です。通常は輸入者に代わって通関業者等が行います。検疫所では届出をもとに、食品衛生法に適しているかどうかの審査をおこない、検査の必要性を判断します。

「食品等」とは、食品のほか、食品添加物、器具(調理器具や食品製造用機械、運搬用具など)、容器・包装、乳幼児用おもちゃです。直接もしくは間接的に口に入るものが対象と考えればわかりやすいでしょう。

輸入前に書類の準備をします。食品等輸入届出書、原材料及び製造工程に関する説明書、必要に応じて衛生証明書と試験成績書です。

以下、届出書提出からの基本的な流れです。

1.食品等輸入届出書の提出(NACCS届出可)

2.検疫所で審査
検査の必要がないとされれば、速やかに3.食品等輸入届出済証が発行されます。
要検査となれば、モニタリング検査もしくは命令検査・指導検査・行政検査が行われます。

モニタリング検査の場合、結果が出る前に輸入できますが、不合格であった場合は回収等何らかの措置が必要になります。

その他の検査は、合格なら届出済証が発行、不合格なら廃棄・積戻しとなります。
 
3.食品等輸入届出済証発行 

4.輸入通関手続き
輸入申告書に届出番号を記載します。

届出書には生産国、製造者・製造所、品目、原材料、添加物の使用の有無、製造方法等の記載が必要です。これらの内容をもとに、食品衛生法に違反していないか、添加物の使用基準や有害有毒物質の有無、製造者・所の過去実績などを審査します。

審査の結果、検査が必要とされるものについて、検査が行われます。検査は検疫所が行う場合と、輸入者が依頼して登録検査機関が行う場合とがあります。

特に、検査の優先度の高いものは、
・輸送中に衛生上問題が発生した食品等
・衛生上の理由によるクレームにより積み戻されたもの
・過去に同種の違反があったもの
・海外で問題があると認められたもの
・初めて輸入されるもの
・検査命令対象品目
・モニタリング検査の実施について通知される対象品目
・厚生労働省から検査指示のあったもの

本輸入の前に、サンプル品の輸入をすることもあるでしょう。サンプル品輸入は販売目的ではないため、食品等輸入届出は求められません。(ただし、販売目的ではなくても一般消費者に配布するためのサンプルについては要届出。)

そして、このサンプルで実施した検査の試験成績証明書は本輸入の輸入審査時に有効です。試験成績証明書をもとに品目登録番号を取得して届出書に記載する、もしくは試験成績書を届出書に添えて提出します。

また、認められた外国検査機関の検査結果の反映、同一食品等の継続的輸入は都度の検査省略、計画輸入に関し都度の届出不要など、手続きの簡素化・迅速化のための制度があります。

食品等は、食品衛生法以外の規制も受けます。農産物は植物防疫法の規制を受けるため、植物検疫証明書。肉類は家畜伝染病予防法の規制を受けるため、衛生証明書。いずれも輸出国政府機関が発行するものです。

これらについてはまた、次回以降にお話ししたいと思います。

2017/11/06

港湾業務の強~い味方!NACCS(ナックス)

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現在の港湾関連業務は、そのほとんどがNACCS(ナックス)というオンライン電子システムを利用して行われています。

NACCSは正式名称を輸出入・港湾関連情報処理システム(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)といいます。

船舶、航空機、輸出入貨物は税関や関係行政機関に対し、様々な手続きが必要です。また、一つの貨物に対して複数の業者がそれぞれの業務を行います。

たくさんの手続きや民間業者での関連業務をオンラインで処理できるのがNACCSです。

NACCSではどのようなことができるのでしょうか。

1.輸出関連業務・輸入関連業務
輸出入申告や、修正申告、出港前報告や保税運送申告などの貨物の搬出入に関する税関手続き。それらに対し、税関は申請の受理、許可・承認の通知を行う。

2.関税の納付手続きとそれに伴う業務
輸入申告の際、あらかじめ指定した口座番号から納税額が口座振替される。納期限延長する場合は担保を提供、まとめて関税等納付を行う。

3.食品等輸入届出、検疫手続き、輸出証明書の発給申請など、関係省庁への手続き

4.航空機・船舶の入出港関連業務

5.登録・申請・照会など
インボイス、パッキングリスト情報の登録、貨物情報照会など。

1978年にAir-NACCS、1991年にSea-NACCSが稼働開始、数度の更改を経て2010年にAir-NACCSとSea-NACCSは統合し稼働しています。更改ごとに港湾EDIシステムやJETRASなど関連省庁システムとも統合しており、2017年10月8日より稼働の「第6次NACCS」では対応業務数が約1,400業務になります。

NACCSがあることで、輸出入関連業者や港湾関係業者は大いに助かっています。まず、オンラインで申請や届け出、申告ができるため、書類を持ち込む時間が短縮できます。申請に必要な書類のPDF添付が認められている場合もあります。

また、情報が共有でき、各関係者に連絡しなくても照会が可能です。例えば、貨物管理番号(B/L番号)をNACCSに入力することで、貨物の場所や状況を確認することができます。民から官への申請・申告業務だけでなく、民と民の情報共有にも役立っているのです。

輸入申告ですと、関税や内国消費税などはHS番号等を入力すれば自動計算されます。これらの計算式は通関士試験の時以来使わなくなるので、忘れている人も多いとか。もし間違った番号や記号を入力すればエラー表示がされますし、金額に対して重量が釣り合わないなど、違和感のあるときはアラートコードが表示されます。

貿易量が多い国では、スムーズな通関システムが必要不可欠です。世界でも多くの国が、輸出入手続きを円滑に行うために、その国独自の電子情報システムを採用しています。日本では、NACCSが港湾関連業務・通関業務がスムーズに行われる一助となっているのです。

2017/10/28

国際海上輸送にありがちな事故と原因

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国際海上輸送にありがちな事故と原因を考えてみました。

国際海上輸送では、国内輸送と違って長い時間と距離を貨物が移動するため、事故の可能性が高いものです。

貨物外装の小さな破れやへこみは日常茶飯事といっても過言ではありません。

では、外装のダメージだけならともかく、商品にまで影響を及ぼす事故とその事故原因とはどのようなものがあるのでしょうか。

1.コンテナの劣化などによる損傷
コンテナは本船上で貨物の一番の外箱になるものです。長い航海中に海水や雨水にさらされるため、長期間の使用により劣化してしまいます。劣化部分から海水や雨水がしみ込み、水濡れやカビ・錆が生じます。冷凍・冷蔵コンテナは劣化による故障が商品の凍結・解凍、変質・劣化の原因になります。

コンテナの損傷・故障はバンニング前のコンテナ内の確認で事故を防止できます。通常、デバン後にコンテナ内の清掃や異常がないかの確認を行って返却を行いますが、バンニング前にも再確認することが重要になります。

2. 荷役作業中のラフ・ミスハンドリングによる破損
ラフ・ミスハンドリングとは、荷役時に乱暴に貨物を扱うことです。足で蹴って貨物を移動させたり、水のたまった路面に置いたり、コンテナや貨物を他の物と衝突させたりすることで、破損やへこみ、変形などが起こります。

3.積み付け・積載不良、固縛不十分
貨物の積み付けがコンテナ内で一方だけに偏っている、または、しっかり固定せずにコンテナ内で貨物が動く状態だと、輸送中の揺れや振動で荷崩れしてしまいます。また、カートン内に可動域があることでも商品が破損します。

梱包状態やラッシング(ロープなどでコンテナ内で貨物が動かないように固定すること)が悪くて貨物がダメージを受けても、保険請求できないので、注意しましょう。これは協会貨物約款I.C.C.でも、免責事項として定められています。

4.温度変化
基本的にドライコンテナは通気口などもないため、外気温の影響を受けやすく、コンテナ内が高温になります。高温になったコンテナと外気との温度差で結露が生じ、貨物に水滴がつき、そこからカビや錆が生じてしまいます。

そこで温度変化への対策が必要です。特に金属部品や電子機械など、水気や埃対策が必要な貨物には真空梱包が適しています。これは、商品を透明フィルムで多い、フィルム内の空気を抜いて真空状態にすることで、埃や湿気などの外気から守ることができます。

以上がよくある事故とその原因です。他にも機器の設定ミスや保管不良、船舶や車両などの不良、梱包不良など様々な原因があります。

ダメージを最小限にするために、梱包を頑丈にすればするほど安心ですが、手間とコストがかかります。また、貨物容積が大きくなり、輸送費も多くかかってしまいます。日本人は特に外装にこだわりがちで、カートンの小さな破れだけでもフォワーダーにクレームを入れることが多いそうです。

貨物には海上保険をかけることでリスクをある程度回避することができます。ただし、上述したように、梱包または梱包準備の不完全、コンテナ内への積み付け不良による事故は保険請求の免責事項となっています。事故が免責事項によるものでないことを証明するためにも、バンニング後は写真を撮るようにしましょう。

実際に保険請求となった場合は関係書類を提出し、損害の状態維持もしくは写真などで事故現場の記録を残します。請求額が20万円を超えるときは、保険会社のサーベイヤー(鑑定人・検査人)立ち合いの元、保険請求が妥当かどうか審査します。そして、保険会社は輸入者に保険金を支払ったあと、被保険者に代わり運送人に損害請求をしています。そうでなければ、運送人は貨物を安全確実に運ぶことを怠ってしまうからです。

2017/10/07

海上輸送は天候の影響を受けやすい

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貿易は物流部分で天候に大きく左右されます。

世界各地それぞれ気象条件が違い、様々な影響が考えられますが、日本は台風の影響が大きいところではないでしょうか。

では、夏から秋にかけての台風シーズン、どのようなことに留意すべきでしょう?

海上、航空ともに天候の影響を受けます。特に海上輸送は船の延着だけでなく、台風ではコンテナヤードが閉まってしまうことがあります。ヤードクローズ・・・ともなると、輸入許可が下りても貨物を出庫できないので配送ができません。輸出の場合はコンテナ搬入ができません。配送トラックを手配していた場合は、キャンセル料もかかることがあります。

コンテナヤードの状況や動船(入港スケジュール)は本船の船会社やオペレーターに確認します。早めに情報を入手したいところですが、台風は進路が分かりづらく、ヤードの状況は当日朝にならなければわからない、ということもしばしばです。

さて、クローズしてしまったコンテナヤード内では、どのような台風対策がとられているか、ご存知でしょうか。通常、コンテナは5段に積み重ねて置かれています。しかし、強風による横転を防ぐため、積み上げる段数を減らします。また、コンテナ同士を金具でつないで固定します。

これらの作業は台風が接近してから始めたのでは遅いので、接近前から通常の荷役作業はせずに、台風対策のための作業を行います。そのため、早い段階からヤードクローズとなってしまうことも。また、台風対策解除のための作業も必要ですので、台風が去ってもすぐに荷役再開というわけにはいきません。

そして、無事荷役が再開されると、搬入や引き取りのトラックでヤードは混み合います。もちろん、周辺道路も混みあって大渋滞です。トラックの手配替えやスケジュール変更など、臨機応変な対応が求められます。

台風とはちょっと違いますが、輸出入先国の気候にも注意したいものです。例えば東南アジアや南アジアでは雨季があります。雨季シーズンには貨物の水濡れ対策が欠かせません。ビニールや防水素材を使用した梱包で貨物の水濡れを防ぎます。近年は日本でも集中豪雨のようにとんでもない雨量で貨物がダメージを受けることも考えられます。

台風シーズン以外の近距離海上輸送は比較的スケジュール通りです。しかし、ヨーロッパや米大陸など遠距離海上輸送は、入港スケジュールが1週間など大幅に遅れることもあります。

これは、天候による影響もありますが、本船に日本向け貨物だけを積んでいるわけではなく、いくつかの国に寄港して積み下ろしを行うため、寄港先で遅れが生じれば、積もり積もって大幅な遅れになるのです。

2017/09/22

日欧EPA大枠合意、今後のスケジュールは?

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今年に入っての通商ニュースといえば、アメリカのTPP離脱と日欧EPA大枠合意ではないでしょうか。

バラバラになったものと、まとまったもの、両極端なニュースですが、保護か開放、どちらが自国の発展に優位になるのか、今後注目していきたいニュースだなぁと感じます。

アメリカの保護貿易とその他の国とは全然意味合いが違うのでしょうが。。。

ここ数年、世界ではEPA・FTA締結が盛んです。2000年代に入って急激に増え、世界には300近くのFTA・EPAが存在します。日本は発効済みEPAが15件あり、初めての多国間協定は日ASEAN包括的経済連携(AJSEP)です。

日欧EPAは2つ目の多国間協定となるわけですが、大枠合意を得て今後のスケジュールはどうなるのでしょうか?

*FTA:自由貿易協定 関税など貿易障壁を削減・撤廃することを目的とした協定
*EPA:経済連携協定 FTAにさらに知的財産や投資面でのルール整備など幅広い分野での経済連携を目的とした協定

多国間協定というのは、合意後それぞれの国で通告が行われれば効力が発生します。AJSEPの場合、協定大筋合意は2007年8月です。日本は2008年12月、ASEAN4か国と同時に発効、その後徐々にそれぞれの国で発効され、現在はインドネシアを除くすべての国で発効済みです。

日欧EPAはEUのユンケル欧州委員長が2019年の発効を目指すとしており、日本も足並みをそろえる予定です。ASEAN(10か国)に比べ加盟国数が圧倒的に多いEU(28か国)。発効は各国が自国の議会で承認を得なければなりませんから、すべての加盟国の承認を得るまでにはもう少し時間がかかるのではと予想されています。

とはいえ、長年協議してきた経緯を考えると、今更覆ったり、発効に数年かかることもないように思います。また、EUは韓国とEPA発効済みです。何となく韓国と日本、貿易の内容も似ているので、韓国OKで日本NGとはならないのではないでしょうか(素人的考えですが)。

無事に発効すれば、関税の撤廃や引下げが始まります。即時撤廃のものと、ある程度期間をかけて撤廃・引下げされるものとがあり、そのスケジュールは譲許表で確認できます。

毎年4月1日からその年の関税率が適用されるので、年度末の輸入申告は、4月1日をまたいだ方が関税率が低い可能性があります。また、農畜産物については関税割当やセーフガード措置の発動を確保しています。消費者が期待するチーズについては輸入量を「国産品の生産拡大と両立できる範囲」とあるので、価格低下に期待できるか疑問です。

*関税割当:一次関税(低税率)での一定枠を設け、輸入量が増えて枠を超えた分から二次関税(高税率)を適用すること
*セーフガード:緊急輸入制限のことで、輸入量が増え、「国内産業に甚大な被害があるとき」、国が関税率を引き上げることで輸入量を制限しようとするもの。

そして、EU向けでは工業製品の無税割合が約38%→約82%になります。自動車部品については貿易額ベースで約92%の即時撤廃で合意しています。これが韓国EUFTAを上回るため、韓国寄りの政党の反対を受けると言われています。

2017/08/21