センサーの設計図や仕様書、マニュアルなどのデータを外国の取引先の会社や個人へeメールに添付して送ったり、あるいはFAXで送っても、実は輸出規制の対象になる事があります。これらは技術的な資料、情報であり「外為令」が規制する技術に当たるからです。 |e-mailで輸出規制違反!?

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e-mailで輸出規制違反!?

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輸出規制というと、その代名詞なるものは「外国為替及び外国貿易法」略して「外為法」になります。更に、その外為法を実行するためのルールとなるのが外為法の政令「輸出貿易管理令」と「外国為替管理令」です。これらもそれぞれ略して、「輸出令」または「貿管令」、「外国為替令」または「外為令」と呼ばれています。「輸出令」は貨物への輸出規制、「外為令」は技術や役務への輸出規制です。

「輸出令」という法令があること、その法令が輸出規制として大事であって主なるものであることは、普段、輸出を行なっているメーカー等の企業に知られていても、「外為令」の方は意外にも知られておらず、ノーチェックだったりすることがあります。

「センサー」は、自動ドア、スマホ、家電、自動車、カメラ、照明器具や防犯機器など、いろんな所で身近なものに使われています。そのセンサーの設計図や仕様書、マニュアルなどのデータを外国の取引先の会社や個人へeメールに添付して送ったり、あるいはFAXで送っても、実は輸出規制の対象になる事があるんです。

何故なら、これら設計図、仕様書、マニュアル、プログラムなどは技術的な資料、情報であり、「外為令」が規制する技術に当たるからです。PDFなどのデータ(またはデータを保存したUSBメモリー等の記録媒体)でも、手書き、あるいは印刷やコピーされた紙でも設計図等の技術的資料や情報は「外為令」が規制する技術の対象になります。

「外為令」が規制するものに、もうひとつ、役務がありますが、役務とは、他人のために行う労働やサービスのことです。同じくセンサーを例にとると、センサーの製造方法や組み立て方、使い方などを外国へ行って人に教えたりすることなどが役務に当たります。そして「外為令」が規制する役務の対象になります。

外国へ向けて送ろうしている仕様データは何の仕様データ?外国で教えようとしている製造方法は何の製造方法?その「何」の部分、つまり技術や役務の対象物が「輸出令」(別表第1)で規制する対象物であるときに、「外為令」別表でも規制する対象物となるというわけです。

仕様データを送ろうとしている物品、製造方法を教えようとしている物品が、兵器や兵器に使用できる部品や材料にならないか、更に細かく言うと、国(経済産業省令)が定めた仕様(スペック)に当てはまらないか確認(該非判定)をする必要があり、当てはまる(該当)物品の時は経済産業省へ輸出許可申請をし、経済産業大臣の許可を得ないと、その物品のデータや情報をeメールやFAXで送ったり、外国で人に教えたりはできないのです。

更に注意しなければいけないのは、日本国内であっても、日本に住所を持たない人(非居住者)に製造方法等技術情報を教える場合には、前述の確認や申請、許可が必要になることもあるのです。

「輸出しているわけではないのに、なぜ輸出規制に引っかかるの?」と疑問に思われる人もいることでしょう。それは兵器や兵器の部品、材料、あるいはそれらに転用できる貨物(物品)を設計、製造、使用するための情報(データ)を教えてもらった人が住んでいる国へ帰国することで日本の国外へ出すことになるからです。

簡単にまとめると、このように国外へ出そうする、出すことになる「輸出令」(別表第1)の対象貨物を設計、製造、使用するための情報(あるいはデータ)は、「外為令」の対象になるということです。

カチッと「送信」をクリックする前に確認を!

2022/06/18
くらしと貿易と通関と
Kyō

陸の貿易港インランド・デポ

インランドデポの風景

輸出入、貿易が行われている場所というと、真っ先に海、港を思い浮かべないですか?

ところが、内陸でも貿易は行われています。内陸にある、例えば成田のような空港、いやいや、そこで確かに貿易は行われていますが、空港だけではありません。それ以外にも、内陸で輸出や輸入が行われている場所があるんです。それが内陸の港「インランド・デポ」です。

インランド・デポ:Inland Depotは直訳すると「内陸の倉庫」、荷積み荷下ろしのできる土地や輸出入貨物を入れる保税地域の倉庫(保税蔵置場)を有し、官民の第三セクター経営、あるいは倉庫、運送業等と通関業を兼業する民間企業経営による内陸地での輸出入通関機能をもつ物流拠点のことです。そして、その中に税関を誘致、あるいは近くに税関があることが多いです。

インランド・デポでは、貨物の積み下ろし、梱包、保管、通関、貨物の集荷、配送などが行なわれ、保税地域のため通関料や輸出通関後の貨物と輸入通関前の貨物に行った作業費等には消費税の税金がかかりません。保税地域の「保税」とは、「税の留保」、「税を徴収しない状態を保つ」という意味です。

インランド・デポを利用する場合、その内陸の保税地域という特徴から、輸入よりも輸出の方がメリットが多く生まれます。

輸出しようとする貨物をインランド・デポへ集約し、必要があれば、例えば段ボール詰めしたものをいくつかまとめてパレット梱包にするなど梱包作業をしてもらうこともでき、通関については税関検査になっても、税関指定の検査場へ貨物移動することなく、ほぼインランド・デポ内で対応でき、移動するための運送費や積み下ろし作業費などがカットでき、時間的にもコスト的にも速く安く済みます。通関後は、トラックあるいはコンテナに貨物を積み、貿易ができる空港や港(開港)へ運び、外国へ向けて航空機や船舶へ積み込むわけですが、その運送費に関しても保税運送になるため、運送費にかかる消費税がかかりません。

仮に1回の運送費が5万円だとします。普通であれば、その運送費にかかる消費税は2022年現在、10%ですから5千円ということになります。月に10回あれば月5万円、それが年間になれば60万円、節税になり消費税を負担しなくていいわけです。それを大きな効果、メリットと感じる、感じないかは、輸出を行っている企業次第かもしれませんが、どうでしょうか?

ところで、通関士試験の受験生をはじめ、通関業者に就転職を考えている皆さんも、就転職先となる通関業者は、空港や港の近くにしかないと考えている人もいると思います。確かに空港や港の近くには、いくつもの通関業者があります。しかし、比べればそれほど多くないにしても内陸にも通関業者があることを知っておくと就転職先の選択範囲が広がります。意外にも、今住んでいる市町村、あるいは近くにインランド・デポがあるかもしれません。

今、インランド・デポへの貨物の集荷、インランド・デポから空港、港への運送は、陸路中心でトラックやトレーラーヘッドによるコンテナけん引が主ですが、混雑、待機時間等が問題になっています。さほど多くない量の貨物であれば、大型ドローンで運ぶ時代は、そう遠くない未来かもしれません。

2022/05/30
くらしと貿易と通関と
Kyō

貿易になくてはならないHSコード

貿易に必要なHSコード

日本でも他の国々でも、私たちのくらしに必要なモノあるいはそのモノを作る為の原材料を輸出入するときには、必ず通関(税関へ申告し税関から許可を得ること)が行われます。その通関に最も重要で不可欠なのが「HSコード」です。

HSはHarmonized Commodity Description and Coding System(国際統一商品分類システム)のHarmonizedとSystemの頭文字で、このシステムで使用するコードがHSコードになります。「関税協力理事会」略称CCC(Customs Co-operation CounCil)が開発し、1994年以降は「世界税関機構」略称WCO(World Customs Organization)という組織となって管理しています。

HSコードは1988年発効となった「商品の名称及び分類 についての統一システムに関する国際条約」(通称HS条約)のもとに締約国の間で定められ、できてからまだ歴史は浅く2022年現在で30年余りです。それはモノのコード化や管理等を行う手段であるコンピュータの登場、普及の歴史と重なります。日本はWCOへ1964年加盟、2021年4月現在で締約国は160ヵ国・地域になり、それらの国・地域を含めHSコードを適用しているのは212ヵ国・地域になります。

英語が世界共通の国際語であるように、HSコードは貿易で流通するモノを表す輸出入共通、世界共通の6桁の国際数字です。日本では、その数字の上2桁を類、上4桁を項、全6桁=HSコードを号と呼び、HSコードの後に細分番号と呼ぶ3桁の数字を続け、更にその後に「NACCS」というシステムで税関へ輸出入申告を行うためにNACCS用の数字(アルファベット)を10桁目に続け、合計9桁あるいは10桁で種々のモノを表し、税関への輸出入申告書へ数量と共に記載することにより、月間、年間でどこへ、どこからどんなものをどれだけ輸出入したか額・量を統計をとるためのコードでもあります。

類は大きいグループ分け、項、号、細分番号(NACCS用番号)を含めた9桁(10桁)と順に桁数が増えるにつれ、より細かく小さなグループ分けという構成になっています。HSコードの後に続ける、日本で細分番号と呼んでいる3桁の数字は、それぞれ各締約国で決めてよいことになっているため、例え全く同じモノであっても、日本と一致する数字配列にはなりません。

一見、HS条約付属書をもとに作られたコード表(日本では輸出:「輸出統計品目表」、輸入:「実行関税率表」)から輸出、輸入するモノをHSコード(あるいは細分番号、NACCS用数字を含めた9桁・10桁の数字)に当てはめることは容易に見えます。確かに、そのモノがズバリHSコードになっていることもあります。しかし、一つのモノに対して一つのHSコードが対応しているわけではなく、モノというのは日本だけでも、ましてや世界中を見渡せば、いろいろなモノが数限りなく数多に溢れています。

それを6桁あるいは9、10桁の数字に当てはめることは商品知識や専門的知識・経験を要し、至難の業です。それに輸入するモノについては、コードにより関税率も違い、そのコードを誤ってしまうと、関税率が違うばかりか、有税のモノを無税のモノのコードにしてしまうと加算税徴収ということにもなりかねません。だから輸入者から委託されて税関へ申告する通関士は、慎重にも慎重を重ねて、コードを検討し、「関税率表解説」という他の資料などで裏付け(確認)し申告を行います。

HSコードはWCOにて5年に一度見直されるのですが、通関現場に身をおく者としては、日進月歩で技術が進化する中で新しい素材、新しいモノが次々と生まれているのに5年に一度の見直しではHSコードは追いついてないというのが実感です。

通関士は、輸入を行う顧客から輸入しようとするモノに関するHSコードとその関税率の問い合せをよく受けます。問合せは日本での販売やその価格などを検討するためです。その問合せに対して回答を導き出す労作は無償サービスが習慣のようになっています。HSコードを決める事は税関へ提出する申告書において最も重要で、難しく、神経を使う作業です。その労作がそれ相応に適切な評価を受けられないのは、長年に渡り通関士をやっていて異様で、正当に評価される時代が来ることを望まずにはいられません。

2022/05/18
くらしと貿易と通関と
Kyō

輸出入通関現場からみた上海ロックダウン

ロックダウン中の上海

「世界最大のコンテナ取扱量がある上海港の機能低下は深刻(中略)上海港の取扱量は通常より40%減少しているとの試算」と2022年4月9日、読売新聞朝刊は報じました。

筆者が通関士として勤める輸入の通関現場では、これまで上海港からの輸入貨物は、貨物を積んだ船が予定より2~3日程度遅れ日本の港へ到着するというような傾向であったのが、4月2週目後半以降に中国から日本へ到着する貨物あたりから、いつもの輸入者のいつもの輸入貨物が上海港ではなく寧波(Ningbo)港から積まれてくるようになり、取扱件数も40%どころか、それ以上減少しています。

中国から原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品におよび輸入し難くなっており、日本から中国への輸出においても、日本で通関、輸出し、上海港まで着いたものの、そこから先どうなるか分からない状況です。

更には2022年1月1日より発効したRCEP(中国はじめ東南アジア諸国等14ヵ国との自由貿易協定)の「原産地証明書」発給も受けられず、原産地証明書なしの輸入申告という現象も生じています。特にRCEPにおいては、中国からの輸入品に関し4月1日より僅かながらも2段階目の関税引下げが行なわれたばかりで、早速その恩恵が受けられなくなってしまっています。

更に円安傾向も手伝い、日本にとって一番の貿易相手国である中国からの輸入品を安く仕入れることができなくなっています。そのことは一部のものにおいて値上がりが続出している昨今、更なる値上がりを引き起こす要因にもなり、まだ値上げをしていない物にまで値上がりを広げることにもなりかねません。

このままでは、一部のもので値上がり続出の日本では、物価を下げる要素が見つかりません。そしてこれらの動向は、日本のくらし、経済に大きなダメージを与えることは間違いありません。中国と貿易している他の国でも同様のことが言えます。ロックダウンしている上海港の機能低下を補うため、上海港に代わって、寧波等他の港や空港から輸出するような傾向がみられますが、その寧波等他の(空)港でも、コロナ感染者が出て増加すれば、いつどうなるか分からない状況です。

国際物流は、工場等から(空)港への、あるいは(空)港から目的地までの運搬、(空)港での荷役(船・航空機、コンテナ、トラックから、あるいは船・航空機、コンテナ、トラックへの貨物の積み下ろし)、(空)港施設での貨物の出し入れ、保管、梱包、通関、そして搬出入や在庫管理、伝票発行の事務処理など、どこが欠けても成り立ちません。

例えば通関業者や港の施設等が機能していて通関、荷役や保管などができても、コンテナを運ぶ運送会社が全て閉鎖されていたら物流はストップします。中国でのコロナ感染が収束するか、あるいは中国の「ゼロコロナ」政策が大きく方向転換されない限り、国際物流の不安定は続くことになります。しかし現状では、どちらも期待できません。そうであれば、すでに早い段階で対策している企業もありますが、中国と貿易を行なっている日本の企業が、輸入しようとするときに中国ではない他の国で調達先を探し、前述の原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品について1日でも早く物流の大幅な見直しをしなければなりません。

その見直しができるかできないかで、日本での生産・製造停止、更には業績悪化、ひどい場合は倒産、そしてますますの物価上昇、私たちのくらしにも大きな影響を与えるか否か決まってきます。

それほど、中国という国が、日本にとって、世界にとって、いまや強大な力を持つ、そして大きな影響を与える大国のひとつとなったということに改めて気付かされずにはいられません。

2022/04/13
くらしと貿易と通関と
Kyō

輸出入と「食の安全」

輸入食品の代表バナナ

輸入した食品を食べたら、病気になってしまったり、ときに命を落としてしまうことになったとしたらどうでしょう?それは誰が考えても嫌ですよね。だから、食品を外国から輸入しようとするとき、なんでもかんでも輸入できるわけではありません。

病気、ましてや命を落とすようなことにならないために、日本では輸入する食品を「食品衛生法」で規制し、出張所を含め各港や空港110ヶ所に検疫所を置き、目を光らせています。

規制の対象は、全ての飲食物、それらに使われる添加物、包装や容器、コップや箸などの器具、乳幼児向けのおもちゃです。これらを輸入するときには、それぞれのものに各々定めた有害物質(鉛やヒ素など)が、定めた試験法によりどのくらい溶け出すのか、どのくらい含まれるのか、溶け出した量などが基準値以下であることを証明する「試験成績書」等を提出のうえ、税関への輸入申告前あるいは輸入申告と同時進行で「食品等輸入届出(略称:食品届)」を検疫所へ行なう必要があります。検疫所は審査、場合によっては検査をし、問題ないと判断すれば「食品等輸入届出済証」を発行します。

本来なら食品届は輸入申告前に行ない、済証が発行されてから輸入申告を行なうのがベストです。というのは、検疫所の審査、検査の結果、有害物質が基準値を超えているということになると、済証は発行されないばかりか輸入できません。税関へ輸入申告してしまっていると、済証が発行されないので税関は輸入を許可せず、その申告は無駄になってしまうからです。

更に「食品届」を行なう前に、穀類、豆類、果物野菜などは病害虫の侵入を防ぐため「植物防疫法」という規制、肉や肉製品は伝染病侵入を防ぐため「家畜伝染病予防法」という規制があり、それぞれ植物防疫所、動物検疫所により審査、検査を受ける必要があります。病害虫、伝染病が発見されれば輸入できません。

こうして輸入に頼らざるを得ない島国・日本の食の安全は守られています。

一方、日本から外国へ食品を輸出しようとするときはどうでしょう。

「食品衛生法」による規制、加えて他の規制もなく税関へ輸出申告することができます。問題は、輸出先である相手国の規制です。日本が輸入するときに「食品衛生法」のような規制を設けているように、相手国でも外国から輸入するときには規制をかけ、食の安全を守っています。

輸出先相手国の規制に基づく求めに応じて、「輸出検疫証明書」、「産地証明書」、「放射性物質検査証明書」などが、輸出先相手国での輸入通関時に必要になります。どんな「証明書」が必要になるかは、相手国や輸出するものによりまちまちです。事前に何が必要か貿易相手等に確認しておかなければなりません。必要な「証明書」が分かったら「地方農政局」等(申請先も事前に調べておく必要あり)へ申請し「証明書」の発行を受け、税関へ提出・提示する必要はありませんが、日本での輸出通関前に用意しておく必要があります。

2011年3月11日の東日本大震災で起きた原発事故により、55の国・地域が、日本から輸出される食品に対し禁輸(輸入禁止)や輸入規制を設けました。およそ11年が経過した2022年2月21日、ようやく近隣国・台湾が福島をはじめ栃木、群馬、茨城、千葉5県の生産・加工食品の禁輸を解除しましたが、韓国、中国、香港、マカオの4ヵ国・地域が禁輸措置、インドネシア、EUなど9ヵ国・地域が条件付き限定規制をいまだに設けています。

11年経っても13の国・地域が禁輸あるいは輸入規制をかけているんです。これらの国・地域へ食品を輸出しようとするときは、「産地証明書」や「放射性物質検査証明書」が必要になります。禁輸といっても、日本の全食品が対象ではなく産地や品目によっては、これら「証明書」があれば輸出が可能です。

日本の食文化のひとつ、日本酒の輸出が好調で伸びています。1日もはやく、日本の「食の安全」が諸外国で認められ、これぞMADE IN JAPANという食品、食文化が世界へ向け発信され広まることを望むばかりです。

2022/04/09
くらしと貿易と通関と
Kyō

「RCEP」コロナへの経済ワクチンになるか?!

地域的な包括的経済連携、RCEP

2022年1月1日午前0時。日本にとって20番目、最大、最強、最得のヒト・モノ・カネ・情報の流れを生み出す可能性を秘めた他国との協定スタート!その協定の名はThe Regional Comprehensive Economic Partnership(地域的な包括的経済連携)、その頭文字をとって「RCEP」。
 
まずは中国、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ブルネイ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドと日本の10ヵ国が、同年2月1日からは韓国が、3月18日からはマレーシアが、その後インドネシア、フィリピン、ミャンマー3カ国が参加、全15ヵ国の経済のつながりです。
 
これら15ヵ国の経済圏は、全世界の人口、GDP(国内総生産)、貿易総額(輸出)の約3割の規模です。日本の輸出貿易額の約4割、輸入貿易額の約5割が、他14ヵ国との貿易で成り立っています。ましてや、アメリカを抜き2007年から最大の貿易相手国となった中国、意外にも長い間3番目の貿易相手国をキープしている韓国との初めての経済協定です。それだけ、日本がRCEPの参加国の一員となったことは、日本の貿易、経済、くらしに良い方向で大きな影響を与えることになるでしょう。
 
参加国間では、すぐにも関税をなくすか、あるいは関税率を少しずつ下げ、最長でも21年目に関税をなくすことになります。但し、全てのモノに対し無条件に関税をなくすということではありません。各国とも関税をなくすと、なくしたモノに関しては輸入が増え、安価な為に、その国で作られ売られている同様のモノは売れなくなり、メーカーや販売の会社、個人にとっては、経営、生活が成り立たなくなることにもなりかねません。

そうした事態を避けるため、そうなっては困る一部のモノに関しては、関税をなくす品目から各国交渉して除外します。日本では、米、麦、牛・豚肉、乳製品、さとうきびなどの甘味資源作物の輸入5品目を除外していて、中国からの輸入品に関しては鶏肉加工品、たまねぎ、冷凍ブロッコリーなどの野菜等も除外しています。
 
日本の関税撤廃率(全品目に対する関税をなくす品目の割合)は、輸出83~100%、輸入81~88%です。つまり日本から輸出するモノには関税がなくなるか、かかりにくくなり、日本へ輸入するモノには一部関税をかけ続けられ、日本に有利で日本が最も得をする内容になっています。
 
関税が10%かかる1個1万円のモノを100個、全100万円で輸入するとします。その時、関税は10万円、1個あたり千円となり、輸入通関後、国内の販売価格は、当然、関税10万円を含め上乗せされた価格になります。つまり単純には、私たち消費者は、そのモノを1個買うと関税分千円を支払っているわけです。しかし、そのモノの関税が0になったらどうでしょう。輸入者は10%オフで輸入することができ、私たち消費者も1個買うのに、少なくとも千円安く買うことができます。
 
昨今、牛丼、小麦粉、パン、ジャム、醤油、チーズなどの乳製品、マヨネーズ、ドレッシング、ティッシュペーパーなどなど、値上げをメーカー等々が次々発表しています。
 
その中の一つ、牛丼を例にあげると、材料の牛肉を、日本は輸入に頼っていながらも関税削減・撤廃品から除外しています。更にコロナ感染が原因となり、輸入相手国では生産工場や運送会社の稼働低下、働き手、運転手がいない、少ないことによる品薄、物流ストップなどが起き、追い打ちをかけ、牛肉の値上がりを招いています。
 
こうした新型コロナがもたらした、一部のモノの値上がり、経済の停滞・不調に対して、関税削減・撤廃をもとに「RCEP」が、経済ワクチンとして、どれだけ多くのモノにわたり輸入品の価格を下げ、更には貿易、経済を活発、元気にできるのか、その効果に乞うご期待!!

2022/03/21
くらしと貿易と通関と
Kyō

貿易のクロコ

横浜税関クイーンの塔と横浜港

前回のコラムで「通関」という言葉、そしてその意味、知ってもらえたでしょうか?

「通関」:税「関」へ物を「通」す手続き、税関へ輸出や輸入の申告ができるのは、日本から海外へ物を出す(売る)、または海外から日本へ物を入れる(買う)当事者、つまり輸出者または輸入者である個人や法人(会社)です。

それと、輸出者または輸入者である個人や法人から代理申告を委ねられた通関業者に勤める「通関士」です。

輸出入者である個人が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「個人通関」といい、輸出入者である法人(会社)が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「自社通関」といいます。

輸出入の当事者自らが税関へ申告(申告書作成)できるのであれば、「通関業者」という代理人を立てることなく、通関手続きを行なうことは全く問題ありません。

ときに「通関業者」に勤める人、あるいは通関士であっても、税関へ輸出入申告できるのは「通関業者(通関士)」だけと思いこんでいる人がいますが、それは違います。以前勤めていた名の知られている通関業者の営業所長は、「嘘だろう!」と驚き、その事を知らないばかりか疑っていました。こちらの方が大いに驚きました。

では何故、輸出入者である個人、特に法人(会社)が、直接、税関へ輸出入申告しないのでしょうか?あるいはできないのでしょうか?

それは、税関へ提出する輸出入申告書に記入しなければならない「品目番号」(輸出・輸入する物をコード化したもの、その上6桁はHSコードという)を決めるための知識や技術、輸出入を規制する関税法をはじめとする数々の法令知識などを備えていないからです。

それから、輸出入しようとする物は、コンテナヤードなどの「保税地域」という場所に入れなければならないのですが、その「保税地域」への物の出し入れなどにかかる方法や手続きを知らない、トラックなどの運搬手段を持たないからです。

そこで輸出入者は、専門の知識、技術、手段などを持つ通関業者へ輸出入申告の代理を委ねることになります。そして委ねられた通関業者で税関への輸出入申告を行なうのが、その通関業者に勤める通関士です。

「通関士」とは、通関士試験に合格し、通関業者に勤め、その通関業者が税関へ申請し、通関業務の経験や資質などから通関士の職に就けても問題ないと税関から確認を受けた者をいいます。通関士試験に合格しただけでは「通関士」と名乗ることはできず、名刺などに「通関士」と記載もできません。「通関士有資格者」とすべきです。

全ての物を自給自足することができない島国・日本で、くらしに不可欠なモノは物流、ひいては国際物流に支えられ、今、そこに、あなたのそばにあります。

野菜や果物、飲料水、靴や衣服、洗剤などの生活必需品、プレハブ住宅、家具やインテリア、家電、自動車などなど、いろいろな物が輸入、輸出され、くらしが成り立っています。

その輸入や輸出には、必ず「通関」が行なわれています。

例えば千種類の違う商品を1回で輸入するのなら、通関士は各商品への輸入規制はあるか、規制のもとで輸入できる条件を満たしているか確認、更にひとつひとつの商品をコード化、つまり千の「品目番号」を探し充てがい、輸入申告書を作成します。

普通に作っていたら、たった1件の申告書なのに半日~1日がかりの大仕事です。しかし、そんなに時間をかけられないのが現実です。他にも申告すべきものが山ほどあるからです。

「通関」という言葉と同じく、広く人に知られることなく、表舞台に立つこともなく、コツコツと地道に、時間に追われながらも1件1件の申告書を作り、貿易の主役である輸出入者に代わり税関へ輸出入申告を行なっているのが、貿易のクロコ「通関士」です。

あなたが今調理に使っているイタリア産のオリーブオイル、あなたが今着ている中国産のシャツ。知って下さい、それはどこかの誰か、貿易のクロコ「通関士」が通関したモノに他ならないことを。

2022/03/01
くらしと貿易と通関と
Kyō

通関ということ

箱根の関所は今日の通関

「通関」という言葉、知っていますか?

もちろん、通関業者に勤めている人、商社のような貿易に携わっている人、輸出入を行っているメーカーや仕入れ・販売の会社に勤めている人は知っていることでしょう。しかし、これから輸出入を始めようとする人、ましてやその他の一般の人たちには、「通関」という言葉は、「それって何?」と思わず口にしてしまう馴染みのうすい、耳慣れない言葉でしょう。

昔の話ですが、とある通関業者へ就職し念願の通関士になって間もなく、倉庫の作業員の人から「税関士」と言われショックを受けたのを覚えています。実際、「通関」という言葉は、新聞などで貿易に関する報道があったときに、貿易の額や量の数字を示しているところに「通関ベース」などと、ひっそりとその言葉が添えられている程度です。ややもすると見逃してしまいます。

因みに「通関ベース」とは、通関業者などが税関へ輸入または輸出申告した申告価格や数量のデータを元にしているという意味で、それらのデータを財務省・関税局というところが輸出入別、国別、月別、年別にまとめ統計をとっています。

今となっては歴史上の言葉「関所」。その代表として箱根関所はとても有名ですね。街道の要所や国境に置かれ通行する人や荷物を調べ、通行料(税)をとり、江戸時代には「入鉄砲に出女」と言われたように、武器や幕府への反乱をふせぎ幕府を守るため人質として住まわせた西国大名の妻子が江戸から出ることを取り締まっていました。

「関所」と呼ばれる場所は現在ではなくなったものの、人が口に入れるもの・食の関所「検疫所」、ペットや畜産物、水産物の動物の関所「動物検疫所」、植物の関所「植物防疫所」という人や動植物、そしてそれらを含めた環境に有害な物質、病気や害虫などが海外から日本に入らないよう、日本から海外へ出ないよう、常に目を光らせ取り締まっている、「関所」という名前こそついてないですが、現代の関所があります。

そして、海外から物が入るとき「関税」をとり(実際には徴収されない物もありますが)、「黒いもの」(拳銃など)や「白いもの」(大麻、覚せい剤など)が海外から日本へ入らないよう、日本から海外へ出ないよう、関税など「税」を徴収し、武器などを取り締まる「関」所である「税関」があります。まさに「税関」は、江戸時代の「関所」のようです。

こうして、人や物が、海外から日本へ入るとき、日本から海外へ出るとき、通るのが現代の「関所」の役割をはたす税関です。

平たく言えば、人や物が税「関」を「通」る、人や物を税「関」に「通」すことが「通関」ということです。

海外旅行へ行くとき、海外旅行から帰ってきたとき、空港で税関に荷物チェック、ときにボディチェックを受け、「何か申告するものはありますか?」、「いいえ、ありません。」などとのやり取り、実はそれも「通関」です。しかし、ほとんどの人は、そうとは思っていないことでしょう。

海外から日本へ、日本から海外へ、物を入れ、物を出すときに税関へ輸入や輸出の申告をして、税関の審査や検査を経て(輸入のときは必要な関税や消費税などを支払い)、税関から許可を受けるまでを「通関」といいます。

今、あなたが飲んでいるビール、着ている服、乗っている自動車、外国製だったら、必ず「通関」されています。くらしに必要な物がそろい、安全にくらしていけるのも、検疫所などと合わせ「税関」という関所があって、そこで働く人たちが真剣に取り締まってくれているおかげです。そう思えば、海外旅行のとき空港で列をなして待たされるのも仕方ないと思いませんか?

2022/01/26
くらしと貿易と通関と
Kyō