通関士は「貿易に関する唯一の国家資格」と言われています。国際貿易の活発化と昨今の資格ブーム取得の人気が高まっている資格と言えます。しかし貿易などに興味を持って調べた方でもない限り、通関士は士業の中でも認知度は低いのではないかと思います。 |通関士の独立開業は現実的か?

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公開日:2021.09.01  / 最終更新日:2022.01.27

通関士の独立開業は現実的か?

通関士とは

通関士は「貿易に関する唯一の国家資格」と言われており、国際貿易の活発化と昨今の資格ブームの中で、老若男女問わず取得の人気が高まっている資格と言えます。しかしながら、そういった貿易や通関などに興味を持って調べた方でもない限り、「通関士」という資格は士業(「士(し)」と付く職業、つまり弁護士や公認会計士など)の中でも一般的な認知度は低いのではないかと思います。

それはなぜかと考えてみますと、理由の一つに、独立開業して仕事をする種類の資格ではないことがあげられます。例えば「山田太郎弁護士事務所」や「高橋税理士事務所」なんて事務所の名前は日本中どの地域に暮らしていても多少は見聞きするものですが、「鈴木花子通関士事務所」などは今まで生きてきた中で一度も聞いたことがないでしょう。通関士は、士業のなかでも、独立開業が非現実的な資格なのです。弁護士や税理士など知名度の高い資格に比べて、日常生活の中で見聞きする機会が圧倒的に少ないのです。

さらになぜ、独立開業が非現実的と考えてみますと、通関士という資格は保有しているだけで効力があるものではないことが理由と考えられます。通関業の許可を受けた企業に所属し、そこで「登録通関士」として税関に届出をして初めて通関士と名乗ることができ、通関士としての業務もできるようになるのです。

例えば私は確かに通関士試験に合格し資格を保有しておりますが、現在は企業に属しておらず通関士として税関に登録もされておりませんので、自分のことを「通関士です」と名乗ることはできません。もちろん通関士としての業務をすることもできません。もっと細かいことを言えば名刺に「通関士」と肩書をつけることも許されません。

どうしても通関士の資格を保有していることを名刺に記載したいのであれば、「通関士有資格者」や「元通関士」などとするしかないのです。(個人的意見ですが、「元通関士」というのは、何か悪いことをして通関士資格をはく奪されてしまった雰囲気がありますので、むしろ記載しない方が良いのではと思っています)。

それでももちろん、自分で通関業の会社を立ち上げ、そこで通関業の許可を通り、自らが通関士となって通関業務を行うことは禁止されてなどいません。実際、直接の知人ではないですが、そのように個人で許可を得て独立した通関士として営業されている方も存じ上げています。ただ、通関業の許可を得るためには厳しい条件をクリアしなければなりません。特に「経営の基盤が確実であること」という条件は個人事業主としてはかなり難しいものであるでしょう。

以前にもコラムで書かせていただきました通り、輸入通関では高額な関税消費税の立替が避けられません。そのような立替が発生したときに支払うことができず輸入が遅れるなどして輸入者が損害を被ることのないよう、十分な資金を保有していないことにはまず許可は下りないと考えられます。

こうして書いてみると、通関士とはせっかく頑張って取得しても独立開業もできず何だか夢のない国家資格のように思えてしまいますが決してそんなことを言いたいのではありません。通関業の許可を得るためには然るべき人数の通関士を有していることが必須ですし、それぞれの営業所にも必ず通関士を配置しなければならないことになっています。

これからの国際社会には必要不可欠な資格です。ぜひたくさんの方に通関士を目指していただき、日本の貿易を支えていただきたいと考えています。

2021/09/01
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