日経に「海外送金の時間短縮」との記事が出ていました。ひとつは3メガバンクがSWIFTの新システムに参加する。もう一つはフィンテック勢が急成長しているです。新システムにより、中継銀行手数料の開示や即時処理ルールが制定されます。中継銀行の都合で手数料が発生したり、不自然な送金遅延が発生したりと、外為担当者が頭を悩ましていました。|日経新聞記事の「海外送金の時間短縮」について

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公開日:2018.10.04

日経新聞記事の「海外送金の時間短縮」について

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8月下旬の日経に、「海外送金の時間短縮」との記事が出ていました。

金融経済欄の大部分が使われていたので、目にされた方も多かったのではないでしょうか。

このようなタイトルが掲げてあると中身が気になるのですが、読んでみるとスクープとか観測気球ものではなく、極めて常識的な内容のものでした。(良い意味での期待外れ)

しかし、専門外の人が見ても一読では理解困難と思い、解説を兼ねて今回のテーマとしてみました。

記事の内容は大きく分けて二つです。
一番目は3メガバンクが、SWIFTの新システムに参加する。二番目はフィンテック勢が急成長しているのです。

大部分はSWIFT新システムへの参加についてでしたが、この記事が皆さんにどう影響するかと言えば、間接的なものに留まる。
これが結論だなと思いました。

理由はこうです。記事によるとこの新システムにより、中継銀行手数料の開示や、即時処理ルールが制定されるようです。実はこれらの点。私が担当者の頃から送金側ではどうにもならず、頭を悩ましていた事柄です。中継銀行の都合で思いもよらぬ手数料が発生したり、不自然な送金遅延が発生したりで、よく顧客クレームになりました。新システムの導入により改善されるのなら、大いに歓迎すべきことです。

しかしこれらをやったとしても、やがて来る大きな波に対する、抜本的解決策たり得ない。正直そう思います。となると、この記事の筆者も実は言いたかったのは、控えめに書かれた、二番目の話題だったのかもしれません。そんな目でこの記事を読んでみました。

フィンテック勢は安さ、早さを武器に急成長している。こう書いてあります。たしかに私が調べた範囲でも、安さは圧倒的です。また早さも相当なものがあります。しかしこれらは、ある程度関係者には周知の事実です。むしろ書きぶりは大変控えめであり、強いものは伝わってきません。

どちらかと言えば淡々として、事実を説明している。こんな印象です。外為畑の人間から見ると、安さと早さ以上に重要なのは、犯罪収益の移転防止であり、不法・脱法の収益移転防止です。銀行ではこれらに対して、相当の人員・システム・費用を投じています。この点、言及がなかったのはやむを得ませんが、正直物足りないものを感じました。

現行規制の枠組みを逸脱できない以上、守るべき事に対しても、資源を投入せざるを得ません。顧客は自らの利便性向上を先ず念頭に置きますが、銀行に取ってはどちらも大事です。この双方を満足させ続けるのは、本当に難しいものだと思いました。

2018/10/04

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