お店の外での営業も立派な銀行業務です。外為新規のお客さんも中々取れるものではありません。対象先がテリトリー内にそんなにありません。街中を歩き回っているたある日、目に入ったのが貿易協会の看板。自分は貿易業者でないとスルーしていました。あるときフラッと入ると貿易協会の会報ファイルが目にとまったのです。 |外為営業の要諦は、貿易協会にあった!?

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公開日:2020.03.29  / 最終更新日:2022.10.20

外為営業の要諦は、貿易協会にあった!?

pic_bank_20200329銀行業務といえば窓口業務を頭に浮かべます。しかしお店の外での営業も立派な銀行業務です。

貸付などはジッと中にいたのでは、ろくな事がありません。時には一日中融資できそうもない人の相手をさせられます。

これでは大口案件や優良案件など夢の又夢です。翻って我が外為も、貸付に比べ事務比率が高いとは言え、やはり外に出なければ商売になりません。

そこで上席は若手に「外で新規を取ってこい!」こう檄を飛ばします。

ここで言う新規とは、外為取引を新しく始めてくれるお客様のことです。預金であれば口座新規、貸付であれば融資新規とも言います。

さてこの外為新規ですが、実は中々取れません。(当たり前お話しですが)先ず対象先が、テリトリー内にそんなにありません。20~30社あれば上々でした。しかしこれらの先も諸先輩アタック済であったり、他行がっちりガード済みで、お客様からけんもほろろ。

更に僚店も訪問中でバッティングしてしまい、「同じ銀行から何度も来るな!」「事前に交通整理してこい!」。
こんなお怒りを受けてしまい、新規どころではない事も何回もありました。要は散々な目に遭っていたのです。

かくてはならじと、街中を歩き回っているたある日、目に入ったのが貿易協会の看板。

貿易協会は勿論知っていましたが、自分は貿易業者でないと、スルーしていました。しかし溺れる者はなんとやらです。ふらふらと中に入ってみると、いろいろな情報が取れそうな貿易関連資料や、貿易セミナーや貿易研修のお知らせがあります。

なんか無いかなぁーとひとりごちていると、貿易協会の会報ファイルが目にとまりました。全ての号ではなかったのですがいくつかの号に、新規会員紹介という欄がありました。そこには新設の会社や転入してきた会社が載っています。これは他では手に入らない良質材料です。思わず「これはイケる!」そう思ってこの欄を必死にメモして店に戻りました。

メモをした各社を銀行オンラインで照会すると、そのうちの1社が当行取引ありと表示されました。(取引なしは純粋に新規です)どこの店かなと見れば、なんと自分の店が取引店です。しかし現実には外為持込はないので、この会社は預金か何かあって、外為はない状態です。

このパターンは他のどの場合よりも新規につながります。はやる心を抑えて、もう少し調べることにしました。調べると預金は有ります。しかし貸付はありません。これは訪問する価値大いにありです。既にお取引頂いているのですから、門前払いの心配もありません。

照会したペーパーを鞄に入れて、早速その会社へと向かいました。幸い社長がおられたので、今までのお取引のお礼を申し上げつつ、直貿の有無を尋ねます。すると商売は豪州ワインの輸入。決済条件は前払いの送金。持込は信用金庫(出資金払込先)。運転資金もその信用金庫から。ここまで分りました。小粒ですが良質案件です。

早速店に戻って上席に概略報告。その場で信用金庫からの取引肩代わり交渉の了解を得ます。ここからはスピードが命です。再度会社に飛び込んで、社長と膝詰めで交渉開始です。社長としては会社立ち上げ時の恩は感じるものの、海外送金が直接ではなくメガバンク経由の発信である点、手数料がやや高い点、処理に時間が掛っている点。これらにご不満をお持ちでした。

そこでこれらのご不満を解消する提案を差し上げたところ、目に見える改善になると大変喜ばれました。そこからバタバタと1ヶ月で、目出度く外為新規獲得となりました。

この会社とはその後も仲良くさせて頂いたので、めでたしめでたしなのですが、「柳の下にいつもドジョウはいない」とはよく言ったもので、それ以降なんど貿易協会に行っても、こんな話には出会えませんでした。

今回のお話しは、タイトルの末尾は!?ではなく?が正解のようです。

参考サイト:
横浜貿易協会
http://www.yfta.jp/ 
神戸貿易協会
http://www.kobe-fta.or.jp

2020/03/29

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