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EXW vs. FOB: あなたに合うのはどっち?

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国際貿易に携わる企業にとって、適切な貿易用語を選択することは、円滑で収益性の高い取引を実現するために非常に重要です。最も一般的な貿易用語はEXWとFOBの2つですが、あなたのビジネスにはどちらが適しているのでしょうか?

EXWはEx Worksの略で、売り手の責任は工場や倉庫で終わり、買い手は輸送や保険の費用をすべて負担します。一方、FOBはFree on Boardの略で、売り手の責任で商品を船に積み込み、その後の輸送や保険はすべて買い手の責任で行います。どちらの用語にも長所と短所があり、間違った方を選ぶと、思わぬコストや遅れが発生することもあります。

国際貿易用語の理解

国際貿易用語(インコタームズ)とは、国際貿易取引における買い手と売り手の責任と義務を定義するために使用される、標準化された貿易用語のセットです。国際商業会議所(ICC)がインコタームズを発行しており、世界中で認知・使用されています。インコタームズは、引渡し場所、リスクの移転、買い手と売り手の間のコスト配分を指定するために使用されます。

EXWとは?

EXW/Ex Works(イーエックスワークス)は国際貿易用語で、売主の責任が工場または倉庫で終わることを意味します。買い手は、売り手の敷地から最終目的地までのすべての輸送費と保険料を負担することになります。言い換えれば、売り手は商品をその施設で利用できるようにする責任があり、買い手は商品の輸送を手配し、その費用を支払う責任があります。EXWは買い手に最も責任を負わせるものであり、買い手は収集地点から配達地点までのすべてを手配する責任を負うことになります。

EXWの利点は、売り手が商品を自分の工場で利用できるようにする以上の責任をほとんど負わないということです。つまり、売り手は商品の製造や生産に集中でき、輸送や保険の心配をする必要がありません。しかし、これは買い手にとっては、輸送や保険の費用をすべて手配して支払わなければならないというデメリットもあります。

FOBとは?

FOB(フリーオンボード)とは、国際貿易用語で、売り手が出荷港で商品を船に積み込む責任を負うことを意味します。買い手は、出荷港から最終目的地までの輸送費と保険料をすべて負担することになります。つまり、売り手は商品を船に積み込むまで責任を負い、それ以降はすべて買い手が責任を負うことになります。この用語は、売り手が商品を船に積み込む責任を負うため、売り手に多くの責任を負わせることになります。

FOBを使用する利点の1つは、売り手が商品を船に積み込む責任を負うことです。つまり、買い手は商品の積み込みを心配する必要がなく、輸送と保険費用の手配と支払いに集中することができます。ただし、売り手にとっては、商品が正しく時間通りに船に積み込まれるようにしなければならないため、デメリットにもなり得ます。

EXWとFOBの主な違い

EXWとFOBの主な違いは、売主の責任が終了し、買主の責任が開始される時点です。EXWの場合、売主の責任は売主の敷地内で終了しますが、FOBの場合、売主の責任は商品が船に積み込まれた時点で終了します。つまり、EXWの場合は、輸送や保険の費用をすべて手配して支払う必要があるため、買い手の責任が重くなります。一方、FOBの場合、売主の責任は、商品が正しく時間通りに船に積み込まれることを保証しなければならないので、より大きな責任があります。

EXWとFOBのもう一つの違いは、関係するリスクの度合いです。EXWでは、商品が売主の敷地から出た時点で、買主がすべてのリスクを引き受けることになります。つまり、輸送中に発生した損害や損失については、買い手が責任を負うことになります。FOBでは、商品が船に積み込まれるまで、売主がすべてのリスクを引き受けます。つまり、商品が船に積まれる前に発生した損害や損失については、売主が責任を負うことになります。

EXWを使用するメリットとデメリット

長所

- 売り手は、商品を自分の施設で利用できるようにする以上の責任をほとんど負わない。

- 売り手は商品の製造や生産に集中でき、輸送や保険について心配する必要がない。

- 買い手は、輸送や保険のコストをよりコントロールすることができます。

 短所

- 買い手は、輸送と保険の費用をすべて手配し、支払う必要があります。

- 買い手は、商品が売り手の敷地から離れた時点で、すべてのリスクを引き受けます。

- 買い手は、売り手の敷地から商品を引き取るための手配をしなければなりません。

FOBを利用するメリットとデメリット

 長所

- 売り手は、商品を船に積み込む責任があります。

- 買い手は商品の積み込みについて心配する必要がありません。

- 買い手は、商品が船に積まれた後の輸送費と保険料について、よりコントロールしやすくなります。

 短所

- 売り手は、商品が正しく時間通りに船に積まれることを保証しなければなりません。

- 売り手は、商品が船に積まれるまでのすべてのリスクを引き受けます。

- 買い手は、商品が船に積まれた後の輸送費と保険料をすべて手配し、支払う必要があります。

EXWを使用する場合の例

EXWは、買い手が売り手と同じ国にいる場合や、買い手が自分で輸送や保険の手配をしている場合によく使われます。例えば、アメリカの企業が中国のメーカーに商品を発注する場合、自社で輸送や保険を手配している場合は、EXWを選択することがあります。この場合、輸送と保険のコストを管理することができ、商品をメーカーから引き取る手配をすることができます。

FOBを使用する場合の例

FOBは、買い手が売り手と異なる国にいる場合や、商品を海外に発送する場合によく使われます。例えば、アメリカの会社が中国のメーカーに商品を発注し、その商品を船便で輸送する場合、FOBを選択することがあります。これにより、売り手は商品を船に積み込む責任を負い、買い手は商品を船に積み込んだ後の輸送費と保険料を手配することができます。

EXWとFOBの選び方

EXWとFOBのどちらを選ぶかについては、以下の要素を考慮することが重要です:

- 買い手と売り手の所在地

- 輸送と保険の手配

- 関係するリスクのレベル

- 各当事者が負うべき責任の度合い

買い手と売り手が同じ国にあり、買い手が独自の輸送と保険の手配をしている場合は、EXWが最良の選択となる可能性があります。しかし、買い手と売り手が異なる国にあり、商品が海外に発送される場合は、FOBが最良の選択となる可能性があります。

まとめ

円滑で有益な取引を行うためには、適切な貿易用語を選択することが重要です。EXWとFOBは最も一般的な貿易用語の2つで、それぞれにメリットとデメリットがあります。EXWとFOBのどちらかを選択する際には、買い手と売り手の所在地、輸送と保険の手配、各当事者が負うリスクと責任の度合いを考慮することが重要です。これらの要素を慎重に検討することで、企業は自社の取引に適した貿易用語を選択し、予期せぬコストや遅延を回避することができます。

OEMとは

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OEMは「Original Equipment Manufacturer」の略称です。製造業において製品をデザイン・開発し、製造する能力を持っている企業が他社のブランド名で製品を生産することを指します。

あらゆる製品で採用されている製造方法で、一例としてアパレル・コンピューター・スマートフォン・自動車・化粧品・食品が挙げられます。

OEMとODMとPBの違い

OEM、ODM、PBは、製造業における異なるビジネスモデルを指す用語です。

OEM(Original Equipment Manufacturer)

製品ブランド側が他の企業に製造を委託するモデルです。ブランド側は製品設計やマーケティングを担当し、製造プロセスを委託先メーカーに任せます。委託先はブランド側の要件に基づいて製品を生産、ブランド側のブランド名で販売されます。

ODM(Original Design Manufacturer)

委託先メーカーが製品設計と製造を製品ブランド側に対して提供するモデルです。委託先メーカーは製品設計を行い、ブランド側の要件に基づいて製品を生産します。製品はブランド側のブランド名で販売する場合も、委託先メーカーのブランド名で販売する場合もあります。

PB(Private Label)

製品ブランド側が他社の既製品を購入し自社ブランド名で販売するモデルです。ブランド側は自社ブランド名を製品に付けて販売しますが、製品設計や製造は他社が行っています。PBモデルでは、製品設計や製造に関与せず、既存の製品を選ぶことが特徴です。

まとめ

OEMは製品の製造を委託するモデルで、ODMは製品設計と製造を委託するモデルです。一方、PBは既存の製品を購入して自社ブランドで販売するモデルです。それぞれ企業戦略やビジネスニーズに応じて選択されます。

OEMの種類

大きく分けて2つの形態があります。

フルOEM(Full OEM)

ブランド側が製品のすべての設計や仕様を提供し、委託先がその要件に基づいて製品を生産する形態です。ブランド側は製品の外観、機能、パーツの選定、製造プロセスなどを指定し、委託先はそれに従って製品を製造します。フルOEMでは、ブランド側が製品に対する完全な制御を持ち、自社のブランドイメージや品質基準を保つことができます。

セミOEM(Semi OEM)/ファブリケーションOEM(Fabrication OEM)

ブランド側が一部の要素や部品の設計を提供し、委託先が残りの製造プロセスを担当する形態です。ブランド側は製品の部品など一部の要素の設計や製造を行い、それ以外の工程は委託先に任せます。セミOEMでは、ブランド側は製品の主要な要素を制御し、自社の技術や特許を活用しながら、効率的に製品を生産することができます。

これらの形態は、ブランド側と委託先の役割と責任の範囲を表しています。フルOEMでは、ブランド側が製品全体の設計と製造を管理し、セミOEMでは、ブランド側が一部の要素を制御し、委託先は残りの製造プロセスを担当します。

OEMのメリット

次のメリットが存在します。

コスト削減: OEM企業は既に製造ラインや設備を所有しており、大量生産において効率を上げている場合に自社で製造するよりもコストを抑えられる可能性があります。

専門的な知識と技術の利用: OEM企業は、特定の製品や部品の製造において専門的な知識と技術を持っているため、製品の品質や性能を確保することができます。

生産のスピードと柔軟性: OEM企業は生産のスピードが速く、大量生産に適した体制を整えています。製品の需要が急増した場合や市場の変化に対応する場合も迅速に対応でき、生産の柔軟性が高まります。

リスクの分散: 製品開発や製造には多くのリスクが伴います。自社で全ての製造プロセスを担当する場合、リスクを一手に負うことになりますが、OEM委託することで、製品のリスクをOEM企業と共有でき、新たな市場に参入する際や新製品を開発する際のリスクを低減できます。

ブランドの拡大と市場進出: OEM企業側は自社製品を他社ブランド名の信頼性や知名度を借りて提供することで、自社の製品が新市場に参入したり、新たな顧客層を獲得する機会を得て市場競争力を高めることができます。

OEMのデメリット

次のデメリットが存在します。

利益の一部減少: 自社で製品を開発・製造する場合と比較し、OEM委託することで委託先に製造費用や利益の一部が支払われ、利益率が低下する可能性があります。

技術情報の共有: OEM委託には、製品の設計や技術情報を委託先と共有する必要があり、情報の漏洩や知的財産の保護に関するリスクが存在します。

生産の柔軟性の制限: OEM委託先の生産能力やスケジュールに依存するため、生産の柔軟性が制限される場合があります。自社で直接製造する場合と比較し、納期変更や製品改良の対応が難しいことがあります。

これらを考慮しながら、各企業の戦略や業界の特性に応じて検討することが重要です。

OEM委託先選定のポイント

次のポイントに留意しましょう。

品質管理の評価: 品質は製品の信頼性や顧客満足度に直結します。委託先の品質管理体制や品質保証プロセスを評価し、品質基準に合致することを確認してください。品質管理の認証やISO認証などの証明を持つ企業を選ぶことも重要です。

技術能力と専門知識: 委託先の技術能力と専門知識が製品の要件と一致しているかの確認と製品の設計や製造に必要な技術的な要素や業界のベストプラクティスに精通しているかの評価をしましょう。

経験と実績: 委託先の経験と実績は、信頼性と信頼度を評価するための重要な指標です。長い期間製造業やOEM事業に携わってきた企業や、類似製品の製造実績を持つ企業を選ぶことが望ましいです。

リスク管理と契約条件: 委託先との契約条件やリスク管理に関する枠組みは明確にしておく必要があります。知的財産の保護、品質管理、納期管理、責任範囲などに関する契約条件を適切に設定し、リスクを最小限に抑えましょう。

慎重な評価と選定プロセスを経て、最適な委託先を選んでください。

中国輸入に役立つ物流コストの考え方

cost

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物流コストは、商品や物資の供給チェーン全体を管理し、商品を製造または供給元から最終的な消費者まで効率的に運送するために必要な費用の総称です。具体的には、次の要素が含まれます。

輸送費: 商品を出荷元から目的地まで輸送するための費用。輸送手段(船舶、航空機、トラックなど)や距離、輸送量によって異なります。

保管費: 商品を一時的に保管するための費用。倉庫の使用料や保管スペースの費用、在庫管理などが含まれます。

処理費: 商品の積み降ろし、梱包、ラベル付けなどの処理に関連する費用。

在庫管理費: 在庫の追跡、管理、再注文などに関連する費用。

保険料: 商品の損害や紛失に備えて、保険に加入するための費用。

関税や税金: 国や地域の税制に基づいて課される関税や消費税など。

手数料: 物流プロバイダーや関税申告代理人、通関業者などが提供するサービスに対する手数料。

物流コストは企業にとって重要な費用であり、効率的な物流戦略の立案と最適化が求められます。物流コストの削減や効率化は、競争力の向上や収益性の向上につながることがあります。

中国輸入にかかるコストは何?

中国への輸入に関わるコストは、以下のような要素が含まれます。

仕入れ価格: 中国のサプライヤーや製造業者から商品を購入する際の価格。商品の種類や数量、品質などによって異なります。

輸送費: 商品を中国から目的地まで輸送するための費用。輸送手段(海上、航空、陸上)や距離、重量などによって変動します。

関税および税金: 輸入商品に課される関税や消費税などの税金。商品の分類や原産国によって異なる税率が適用されます。

保険料: 商品の輸送中に発生する損害や紛失に備えて、輸送保険に加入する場合の保険料。

港湾手数料および関連費用: 船舶または航空機を利用する場合に発生する港湾や空港の手数料、積み降ろし費用、保管料など。

カスタムクリアランス費用: 輸入商品の通関手続きや関連文書の作成に関連する費用。関税申告代理人や通関業者の手数料も含まれます。

付加価値税: 輸入商品を中国国内で販売する場合に課される付加価値税。

マーケティングおよび販売費用: 輸入商品を宣伝し、販売するための費用。広告費、販売員の給与、マーケティング活動に関連する費用など。

これらのコストは、商品の性質、数量、価値、輸送ルートなどによって異なります。正確なコスト見積もりを取得するためには、輸入業者や物流業者と協力し、関連する法規制や税制の変更にも注意する必要があります。

中国国内での物流コスト

中国輸入における中国国内での物流コストは、以下の要素によって構成されます。

輸送費用: 商品を中国国内の供給地や工場から港湾や空港へ輸送するための費用が含まれます。輸送手段(トラック、鉄道、船舶など)や距離、輸送量によって異なります。

荷役費用: 商品を倉庫やコンテナに積み込む作業や仕分け、保管などの荷役作業に関連する費用が含まれます。作業員の人件費や作業設備、倉庫の利用料などが含まれます。

通関費用: 商品の輸入手続きや関税の支払い、規制の遵守に関連する費用が含まれます。通関業者や関税代理店の手数料、税金、規制コンプライアンスに関連する費用が含まれます。

保険費用: 商品の輸送中や保管中に発生する損害やリスクに対する保険料が含まれます。輸送保険や在庫保険などの保険料が物流コストに影響します。

これらの物流コストは、商品の性質、数量、輸送距離、地域、物流プロバイダーなどによって異なります。正確なコスト見積もりを得るためには、物流企業や関連業者と協力し、具体的な要件と条件に基づいた見積もりを依頼する必要があります。また、中国国内の法規制や税制の変更にも注意が必要です。

中国から日本へ輸送するときの物流コスト

中国から日本への物流コストは、次の要素によって構成されます。

輸送費: 商品を中国から日本へ輸送するための費用です。輸送手段(海上、航空、陸上)や距離、輸送量によって異なります。海上輸送が一般的であり、コンテナの使用や貨物の重量、航路によって費用が変動します。

港湾および空港手数料: 商品の積み降ろしや保管に関連する港湾や空港の使用料、通関手数料、保管料などが含まれます。出荷港と到着港によって費用が異なります。

関税および税金: 輸入商品にかかる関税や消費税などの税金です。商品の分類や原産国によって異なる税率が適用されます。

カスタムクリアランス費用: 輸入商品の通関手続きや関連文書の作成に関連する費用です。通関業者や関税申告代理人の手数料も含まれます。

付加価値税: 輸入商品を日本国内で販売する場合に課される付加価値税です。

その他の費用: 特定の商品や需要によって異なる場合があります。例えば、特殊な取り扱いが必要な商品の場合、特定の許認可や検査の費用がかかる場合があります。

国際輸送費を計算する際に一般的に使われる容積重量という要素について説明します。

容積重量とは

容積重量(Volumetric Weight)は、物体や荷物のサイズ(容積)に基づいて計算される重量のことです。通常、運送業者や物流企業は、輸送にかかる費用を重量だけでなく、容積重量も考慮して計算します。

容積重量は、物体の実際の重量と比較して、大きさに応じて適用される重量です。大きくて軽い物体は、実際の重量よりも容積重量が大きくなる可能性があります。これは、物体の輸送時のスペースを適切に利用し、効率的な運送を促すための仕組みです。

一般的には、以下の数式を使って容積重量が計算されます:

容積重量(kg)= (長さ(cm)× 幅(cm)× 高さ(cm))/ 体積重量係数

例えば段ボールの縦横高さの合計が160センチ以下の箱に商品を詰めて15キロの場合、かならずしも15キロ分の送料が請求額とは限りません。

容積容量の設定がある場合は「実重量」と「容積重量」の重い方が請求額になります。

計算式は

箱のサイズ:70cm×50cm×40cm

計算式:70×50×40=140,000立方センチメートル

※6,000立方センチメートルを1kgで換算。

140,000÷6,000=23.3kg

15キロより23.3キロの方が重いため23.3キロの請求という考え方になります。

体積重量係数は、運送業者や物流企業によって異なる場合があります。この係数は、実際の重量と容積重量の比率を調整するために使用されます。荷物の種類や輸送手段によって異なる係数が適用される場合もあります。

容積重量は、物流業界において重要な要素となっています。特に大型かつ軽量な商品など、スペース効率が重要な場合には、容積重量が実際の重量よりも費用に影響を与えることがあります。したがって、物流プロセスや費用計算において、容積重量を考慮することが重要です。

商品が日本国内に到着した後の物流コスト

日本国内での物流コストとしては、国内送料と保管費用が主になります。

港湾費用: 日本の港湾における荷役や保管に関連する費用が含まれます。入港手数料、荷役作業員の給与、倉庫利用料などが物流コストに影響します。

通関費用: 輸入商品の日本国内での通関手続きや関税支払いに関連する費用が含まれます。通関業者の手数料、関税、税金、規制コンプライアンスに関する費用が発生します。

配送費用: 港湾から最終目的地までの輸送や配送に関連する費用が含まれます。トラックや鉄道、倉庫から店舗や顧客への配送に関する費用が発生します。

具体的な物流コストに関する正確な情報を得るためには、日本の物流業者やコンサルタントとの相談や調査を行うことがおすすめです。

いちばん得したいかたのために。物流コストのすすめ

国際物流コストを下げるためには、次の方法を検討することが重要です。

海上輸送の利用:中国からの輸入は海上輸送の使用がいちばん安く、通常到着までは早くて1か月から2か月ほどかかります。

航空便と料金比較をした場合:縦横高さの合計が160センチの箱が5箱から100箱までは混載便、配送先によって80箱から150箱までは20フィートのコンテナ、150箱から200箱を超える場合は40フィートの使用がふさわしいでしょう。

貿易合意の活用: 国際貿易における関税や規制の緩和を目的とした貿易合意を活用することで、輸送コストを削減できます。自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)などの取り組みを活用し、関税優遇措置や貿易手続きの簡素化を受けることができます。

リバースロジスティクスの最適化: 不良品や返品商品の処理や再利用を効率化することで、物流コストを削減できます。リバースロジスティクスプロセスの改善やリサイクル・リユースの取り組みを通じて、コスト削減とサステナビリティを両立させることができます。

グリーンロジスティクスの推進: 環境に配慮した物流活動を推進することで、物流コストを削減できます。エネルギー効率の向上、輸送手段の最適化、排出量の削減など、持続可能な物流プラクティスを導入することが重要です。

これらの方法は、国際物流コストの削減に向けた一般的なアプローチです。ただし、各企業や業界によって異なる要素が存在するため、具体的な状況に合わせて最適な戦略を検討することが重要です。

RORO船とは

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RORO(ローロ)は、"Roll-On/Roll-Off"の略で、船舶や貨物輸送において使用される特定の船舶タイプを指し自動車、トラック、建設機械、農業機械、バス、シャーシなどの自走式の貨物を船上に載せることができる船舶です。その特徴は、船舶に搭載されたランプやドアを使用して、貨物が自力で船に乗り込み(ロールオン)または船から下りる(ロールオフ)ことができることです。

船内に広い車両デッキを持ち、貨物を効率的に積み降ろしすることができます。また、船内の車両デッキは、必要に応じて仕切りを設置することができ、貨物をセグメント化することができます。これにより、異なる顧客や宛先の貨物を区別して運ぶことができます。また、船内には固定式のバラストタンクが設置されており、船の安定性を確保する役割を果たしています。

コンテナを積んだトラックやトレーラーをそのまま運べるため、着港後は目的地まで荷物やコンテナの積み降ろしがなく、ドア・ツー・ドアで届けることができます。高速フェリー船のRORO船など選択肢が増え、生鮮食品や小物、日用品の輸送にも活用されています。

RORO船の利点

効率的に作業が行え、時間と労力を節約することができます。

大型・重量貨物の輸送: RORO船は自走可能な大型貨物や重量物を輸送することに適した手段です。建設機械やトラックなどの重い貨物を簡単に船上に載せることができます。

簡便な輸送手続き: RORO船を利用する場合、通常はコンテナなどの荷役作業や詰め替え作業が不要であり、貨物の取り扱いが簡便です。

多目的な使用: RORO船は、平成12年10月の海上運送法の改正により、貨物輸送の他にも、旅客船やクルーズ船としても使用されることがあります。船舶内部の設備や施設が利用され、船舶を多目的に活用することができます。一部のRORO船は、旅客の乗船や船内での施設の提供が可能であり、貨物輸送だけでなく観光やレジャーなどの目的にも利用されます。

RORO船は、自動車輸送や商用車の輸送など、自走式の貨物を効率的かつ安全に海上で輸送するための船舶として広く利用されています。自動車メーカーや輸送業者、建設機械の製造業者など、さまざまな産業や業界で活用されています。

なお、自動車やトラックなどの自走式の貨物に特化しているため、コンテナや液体貨物の輸送には適していません。これらの貨物は、他の船舶タイプや輸送手段を使用することが一般的です。

RORO船を利用する際の注意点

貨物の保護: RORO船では貨物が露天で輸送されるため、気象条件や航海中の揺れなどによる貨物の損傷や汚れのリスクがあります。適切な貨物保護措置を講じることが重要であり、梱包や防水カバーの使用、固定装置の適切な使用などを行いましょう。

貨物のセキュリティ: RORO船では、貨物が船上で露天に晒されるため、盗難や不正なアクセスのリスクが存在します。貨物のセキュリティ対策を講じるために、貨物の監視や封印、セキュリティスタッフの配置などを考慮しましょう。

航海スケジュールの確認: RORO船は特定の航路やスケジュールに依存しており、船の出航時刻や到着予定時刻には変動が生じる場合があります。貨物の引き渡しや受け取りの計画を立てる際には、船舶のスケジュールを確認し、十分な余裕を持った日程を設定しましょう。

貨物の制限事項の確認: RORO船は貨物の形状や重量に制約があります。船舶の車両デッキの高さや重量制限を確認し、貨物の制限事項に合致しているかを確認しましょう。また、特殊な貨物や危険物の輸送については、船舶や関連規制の制約を把握し、必要な手続きを遵守しましょう。

RORO船は、貨物輸送の効率性と便利さを追求する際に重要な役割を果たしています。多くの港湾や海運業者がROROサービスを提供しており、需要がある場合には輸送オプションとして考慮する価値があります。

RORO船を利用する際のデメリット

依存度とスケジュール制約: RORO船は特定の航路やスケジュールに依存しているため、航路や出航スケジュールに制約がある場合があります。貨物の受け渡しや輸送の計画を立てる際に、この制約を考慮する必要があります。

露天運搬と気象条件: RORO船は、貨物が露天で輸送されるため、気象条件による影響を受ける可能性があります。悪天候や荒天時には、貨物の安全性や遅延のリスクが存在します。

貨物保護の課題: RORO船では、貨物が船上で露天に晒されるため、適切な貨物保護が重要です。自走式の貨物は風や水の影響を受ける可能性があり、塗装の傷や環境要因による損傷のリスクがあります。したがって、貨物の保護や梱包には注意が必要です。

航行制約と貨物容量: RORO船は、車両デッキ上のスペースを利用するため、高さや重量制限があります。大型貨物や特殊な形状の貨物に対して制約がある場合があります。また、船舶の貨物容量も限られているため、需要が高い場合には予約が困難な場合があります。

フォークリフトなどを使うコンテナ船に比べて早く、簡単、安全に荷役ができますがシャーシごと船に載せるため、積載効率の点ではコンテナ船に劣ります。

セキュリティと保険: RORO船では、貨物が露天で輸送されるため、盗難や損傷のリスクが存在します。貨物のセキュリティ対策や適切な保険の確保が重要です。

これらのメリットとデメリットを考慮し、貨物の性質や輸送ニーズに応じてRORO船の利用を検討することが重要です。他の輸送手段と比較し、貨物の特性や緊急性、コスト効率などを考慮して最適な選択肢を判断する必要があります。

コンテナ海上運賃相場

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海上運賃相場が決まる要因

海上運賃の相場は、様々な要素によって影響を受けますが、次の要素が最大の影響を与える要因とされています。

1.需要と供給: 海上輸送の需要と供給のバランスは、海上運賃に直接的な影響を与えます。需要が供給を上回る場合、運賃は高まります。逆に、供給が需要を上回る場合、運賃は低下します。

2.燃料価格: 燃料費は輸送費に大きな影響を与えます。燃料価格の変動は公式運賃に直接影響を及ぼし、運送会社はこれに応じて価格を調整する必要があります。

3.航路の距離と船舶の稼働率: 航路の距離は運賃に影響を与えます。長距離航路では運賃が高くなる傾向があります。また、船舶の稼働率も重要な要素です。船舶の稼働率が高いほど、運賃は低くなる可能性があります。

4.船舶の種類と容量: 船舶の種類や容量は、海上運賃に影響を与えます。大型のコンテナ船やタンカーなどの容量の大きい船舶は、一度に多くの貨物を運べるため、運賃を低く抑えることができます。

5.貨物の性質と需要の変動: 貨物の性質や需要の変動も海上運賃に影響を与えます。特定の貨物の需要が急増した場合、運賃が上昇することがあります。

これらの要素は相互に関連し合い、海上運賃の相場を形成しています。また、市場の競争状況や政府の規制、天候条件なども海上運賃に影響を及ぼす要素として考慮されます。

海上運賃の構成について

海上運賃は、さまざまな要素から構成されています。一般的な海上運賃の構成要素を紹介します。

基本運賃(Basic Freight Rate): 貨物の種類やルートに応じて設定される基本的な運賃です。通常、トン(重量)またはTEU(20フィート換算)単位で表されます。

燃料サーチャージ(Fuel Surcharge): 燃料費の変動による影響を補償するために課される追加料金です。燃料価格の変動に応じて調整されることがあります。

通関手数料(Customs Clearance Fee): 貨物の通関手続きに関連する手数料です。関税や税金、規制上の手続きなどが含まれる場合があります。

港湾施設使用料(Terminal Handling Charge): 貨物を船から陸上に積み降ろす際に発生する港湾施設の使用料です。貨物の取り扱いや保管に関連するコストが含まれます。

船内積載保険料(Marine Insurance Premium): 貨物の航海中の損害や災害に対する保険料です。保険の種類や保険金額に応じて変動します。

その他の追加料金(Additional Charges): 特定のサービスや要件に応じて課される追加料金が存在する場合があります。例えば、特別な取り扱いや急ぎの配送などに関連する料金です。

基本運賃(BASE RATE)について

これらの要素は、海上運賃の構成要素の一部であり、具体的な運賃の構成については、関係する運送業者や航運会社に問い合わせることが重要です。

基本運賃(Base Rate)は、海上輸送における基本的な貨物運賃の単位です。貨物の種類、ルート、船舶のタイプ、市場の需要と供給などの要素に基づいて設定されます。

基本運賃は、通常、トン(重量)またはTEU(20フィート換算)単位で表されます。輸送される貨物の種類や特性によって異なる基本運賃が適用される場合があります。例えば、一般貨物、コンテナ貨物、液体貨物など貨物カテゴリーに対して異なる基本運賃が設定されることがあります。

基本運賃は、船舶所有者や運送業者によって設定され、貨物の重量や体積に応じて料金が計算されます。他の要素(燃料サーチャージ、通関手数料、保険料など)と組み合わせて、実際の運賃が決定されます。

重要な点として、基本運賃は市場や需要と供給の変動によって影響を受ける場合があります。需要が高まると基本運賃も上昇することがあり、需要が低下すると基本運賃も下がることがあります。

割増料金(Surcharge)について

割増料金(Surcharge)は、海上運賃に追加される料金のことを指します。

燃料サーチャージ(Fuel Surcharge): 燃料価格の変動に対応するために課される追加料金です。燃料価格の上昇によって運送業者の燃料費が増加する場合、顧客に請求されることがあります。

通関手数料(Customs Clearance Fee): 貨物の通関手続きに関連する追加料金です。関税や税金、規制上の手続きなどに対応するために発生する費用が含まれます。

港湾施設使用料(Terminal Handling Charge): 貨物を船から陸上に積み降ろす際に発生する港湾施設の使用料です。貨物の取り扱いや保管に関連する追加費用が含まれます。

船内積載保険料(Marine Insurance Premium): 貨物の航海中の損害や災害に備えるための保険料です。貨物の価値やリスクに応じて、追加の保険料が課されることがあります。

緊急配送料金(Emergency Surcharges): 緊急で迅速な配送が必要な場合に課される追加料金です。通常、特定の状況や要件に応じて設定され、急ぎの対応や優先的な取り扱いを提供します。

これらの割増料金は、通常、基本運賃に加算されて総合的な運賃が計算されます。

その他の費用

海上運賃には、基本運賃と割増料金以外に次のような費用が含まれることがあります。

ドック料金(Dockage Fee): 船舶が港湾施設に停泊する際に課される料金です。停泊期間や使用するスペースの大きさに応じて料金が設定されます。

ターミナル使用料(Terminal Usage Fee): 港湾ターミナルや貨物集積場などの施設を使用するために課される料金です。貨物の取り扱いや保管、荷役などに関連する費用が含まれます。

倉庫使用料(Warehouse Storage Fee): 貨物が倉庫や保管施設に保管される場合に課される料金です。貨物の保管期間や使用するスペースの大きさによって料金が決定されます。

検査料金(Inspection Fee): 貨物の品質や安全性の検査を行うために課される料金です。公的機関や民間の検査機関が行う検査に関連する費用が含まれます。

通関手数料(Customs Brokerage Fee): 貨物の通関手続きを行うために課される手数料です。関税や税金の計算や支払い、関連書類の処理などを担当する通関業者に支払われます。

保険料(Insurance Premium): 貨物の輸送中の損害や災害に備えるための保険料です。貨物の価値やリスクに応じて料金が設定されます。

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コンテナ船とは

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コンテナ船は、海上輸送において主にコンテナを積載するために設計された船舶で貨物を効率的かつ安全に大量に輸送するための船です。

船体の上部に複数のデッキを持ち、それぞれのデッキ上にコンテナを積載するスペースが配置されています。コンテナは20フィート(約6メートル)または40フィート(約12メートル)の長さで使用されます。コンテナはクレーンやフォークリフトなどの荷役装置を使用して船上で積み降ろしできます。

コンテナ船の利点

効率的な積替:コンテナ同士が互いに密接に結合されるため、荷役時間の短縮や輸送効率の向上が実現されます。

多様な貨物の取扱:食品、衣料品、電化製品、自動車など様々な産業部門の貨物を大量に輸送することができます。

安定した航海性能:コンテナ船は貨物の安定性を確保し、荒天や波浪の影響を受けにくい構造となっています。

コンテナ船は、国際的な貿易において重要な役割を果たしています。大量の貨物を経済的かつ効率的に世界中に輸送するために使用され、国際貿易の成長とグローバルな供給チェーンの発展に寄与しています。

コンテナ船の分類

さまざまな規模や特徴に基づいて船舶所有者や運航会社に選択されるコンテナ船の分類例を紹介します。

サイズによる分類

フィーダー船: 主に港湾間の短距離輸送に使用される小型のコンテナ船です。

パナマックス船: パナマ運河を通過する最大サイズの船で、通常は5,000〜14,000 TEUのコンテナを積載します。

ウルトララージコンテナ船: 14,000 TEU以上の大型のコンテナ船で、大型港湾に対応する能力を持っています。

積載能力による分類

フルコンテナ船: 全ての貨物がコンテナに詰められ、コンテナのみを積載する船です。

マルチパーパス船: コンテナ以外の貨物やバルク貨物を積載することができる多目的船です。

特徴による分類

ローロー船: 車両やトラックなどの輪転貨物を船上で積み降ろしすることができる船です。一部のローロー船はコンテナも積載することができます。

コンテナフィーダー船: 大型の母船から貨物を受け取り、主要な港湾や地域へ配送するために使用される小型のコンテナ船です。

コンテナ船はさまざまなタイプやサイズが存在し航行ルート、貨物の需要、港湾の設備などに応じて、船舶所有者や運航会社は適切なコンテナ船を選択します。

コンテナ船の設計上特色

コンテナ船の航路は、船舶会社や輸送需要によって異なります。一般的には、主要な航路や貿易ルートに沿って運航されます。次にいくつかの主要な航路を挙げます。

アジア - ヨーロッパ航路(遠東航路):中国、日本、韓国、台湾、シンガポールなどのアジアの主要港と、オランダ、ドイツ、イギリスなどのヨーロッパの主要港を結ぶものです。主要な港としては、上海、香港、ロッテルダム、ハンブルク、フェリックスストウなどがあります。

アジア - 北米航路(太平洋航路):アジアの港と主にアメリカ西海岸の港を結ぶものです。主要な港としては、ロサンゼルス、ロングビーチ、オークランド、東京、横浜、釜山などがあります。

アジア - 南米航路(太平洋航路):アジアの港と南米の主要港を結ぶものです。主要な港としては、バルパライソ、リオデジャネイロ、サンパウロ、上海、香港などがあります。

ヨーロッパ - 北米航路(大西洋航路):ヨーロッパの主要港と主にアメリカ東海岸の港を結ぶものです。主要な港としては、ニューヨーク、ニュージャージー、ロッテルダム、アントワープ、ブレーメンなどがあります。

アフリカ - ヨーロッパ航路:アフリカの主要港とヨーロッパの主要港を結ぶものです。主要な港としては、ダーバン、カイロ、トリポリ、ロッテルダム、ジェノバなどがあります。

これらは一般的な航路の一部であり、実際の船舶輸送の航路はさまざまな要素によって決まります。航路は、需要・供給の変動、政治的な要因、天候条件、航行制約などによって変わります。

コンテナ船の設計上の特徴は、貨物の効率的な積み替えと安定した航行性能を確保することにあります。コンテナ船の主な設計上の特徴をいくつか説明します。

コンテナスロット:船体の上部にコンテナスロットと呼ばれる積載スペースを持っています。これらのスロットにはコンテナがフィットするように設計されており、貨物の効率的な積み替えと固定が可能です。

クレーンや荷役装置:貨物を船上で積み降ろしするためのクレーンや荷役装置が装備されています。これにより、コンテナの効率的な取り扱いと荷役作業の迅速化が可能となります。

船体の強度と安定性:大量の貨物を輸送するために高い船体の強度と安定性が求められます。特に重ね積みされたコンテナによる重量と風や波浪の影響に耐えるため、船体の強度や安定性を考慮した設計が行われています。

ボールストンク: ボールストンクは、船の安定性と浮力を調整するための水密区画です。ボールストンクは船体内に配置されており、船の積荷や航行条件に応じて、必要に応じて水を注入または排水することでバランスを調整します。

エネルギー効率と環境配慮:近年は、エネルギー効率と環境への配慮を重視した設計が進んでいます。船体の形状や船尾の設計、省エネルギーの推進システム、排出物の管理など、より環境に優しい船舶設計が採用されています。

まとめ

コンテナ船の設計上の特徴は、効率的な貨物輸送と安定した航行だけでなく、環境への配慮や持続可能性への取り組みも含まれています。コンテナ船業界の未来はさらに進化し続けることでしょう。

国際物流とは

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国際物流とは、国境を越えた物流活動のことを指します。つまり、ある国から他の国に向けて、商品や物品を運搬する際に必要な一連のプロセスや活動を指します。

国際物流には、次のような活動が含まれます。

  • 輸出入手続きの準備
  • 輸出入の通関手続き
  • 船舶やトラック、飛行機などの輸送手段の選択
  • 荷物の梱包や保管、積み込み・降ろしなどの物流作業
  • 船舶やトラック、飛行機などのスケジュールの調整
  • 関税や税金の計算や支払いの処理
  • 貨物保険の手配

国際物流は、世界中で行われるビジネスにとって必要不可欠な要素であり、グローバルビジネスの拡大に寄与しています。

物流過程のブラックボックス化

物流過程のブラックボックス化とは、物流プロセスの一部または全体が透明性を欠き、不明瞭である状態のことを指します。

物流過程において、商品が供給地から需要地まで運ばれるまでの一連の流れがありますが、それらの流れが外部に対して不明確であるため、適切な情報を把握することができず、物流プロセスがブラックボックス化されていると考えられます。

物流過程のブラックボックス化は、次のような問題を引き起こすことがあります。

  • 顧客に正確な納期が伝えられず、配送遅延が発生する可能性がある
  • 輸送コストや在庫管理において、最適な意思決定ができない
  • 物流企業や顧客間での信頼関係が低下し、業務の円滑な進行に悪影響を与える

物流過程のブラックボックス化を解消するためには、透明性を高めるための情報共有プラットフォームやシステムを導入し、物流プロセスの可視化を実現することが必要です。また、物流企業や顧客間での信頼関係を構築し、情報共有やコミュニケーションを行うことも重要です。

在庫の余剰化とは、需要量を超えた在庫が発生してしまうことを指します。需要量を見積もり誤ったり、需要予測が外れた場合などに発生することがあります。

国際物流における在庫管理は、次の点に注意する必要があります。

需要予測の正確性:需要予測が正確でない場合、在庫量が不足したり、過剰になったりすることがあります。これにより、販売機会を逃したり、在庫コストがかさんだりする可能性があります。正確な需要予測を行い、その上で在庫レベルを決定することが重要です。

在庫保有コスト:在庫保有コストは、在庫の購入、保管、管理、保険、廃棄などにかかるコストです。これらのコストは、在庫レベルに応じて変動するため、在庫レベルを最適化することが重要です。

リードタイム:リードタイムは、注文から在庫が到着するまでの時間です。国際物流では、輸送時間や通関時間などがリードタイムに影響するため、リードタイムを正確に把握し、在庫レベルを決定することが重要です。

サプライチェーンの可視性:サプライチェーンの可視性を高めることで、在庫レベルを適切に管理することができます。サプライチェーンの各段階において、在庫レベル、生産計画、配送スケジュールなどの情報を共有することで、在庫レベルを最適化することができます。

リスク管理:在庫レベルを最適化するためには、リスク管理が重要です。輸送の遅延、品質不良、天候不良、災害などによって在庫に影響を与えるリスクを考慮し、在庫レベルを調整することが必要です。

以上の点に注意しながら、正確な需要予測と在庫レベルの最適化、サプライチェーンの可視性の向上、リスク管理の実施などを行い、国際物流における在庫管理を適切に行うことが重要です。

情報の可視化が課題解決の糸口

情報の可視化は、課題解決において非常に重要な糸口となることがあります。情報の可視化とは、膨大な情報をグラフや表などの視覚的な形式で表示することで、情報を理解しやすくする手法です。

課題解決においては、問題点を明確に把握し、問題点を解決するための方策を考えることが必要です。しかし、問題点が複雑である場合や、膨大な情報を扱う場合は、情報を正確に理解することが困難となることがあります。

このような場合には、情報の可視化が有効です。情報をグラフや表などの視覚的な形式で表示することで、情報を理解しやすくなります。例えば、在庫管理においては、在庫の状況や動向をグラフや表で可視化することで、在庫の余剰化や不足を把握しやすくなります。

また、情報の可視化は、問題点を発見するためにも有効です。例えば、顧客の購買履歴を可視化することで、購買傾向や需要の変化を把握しやすくなります。このような情報を基に、新たな商品の企画や販売戦略の改善を行うことができます。

情報の可視化は、ビジネスだけでなく、医療や教育などの様々な分野においても活用されています。情報を正確に理解し、課題解決につなげるために、情報の可視化を活用することが重要です。

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乙仲(おつなか)とは? 通関業者とフォワーダーとの違いを徹底比較

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乙仲(おつなか)とは? 通関業者とフォワーダーとの違いを徹底比較

「乙仲」とは

乙仲は「海運貨物取扱業者」を意味します。海運のみを取り扱う専門業者で航空貨物の取扱はありません。「港湾運送事業法」と呼ばれる法律にのっとり海運貨物を港湾地区において手続きや積荷、倉庫内での管理など、幅広い業務を担う事業者です。

乙仲という通称の由来

1947年に廃止された海運組合法で定期船貨物の取次をする仲介業者を乙種仲立業を乙仲とし、不定期船貨物の取次ぎをする仲介業者を甲種仲立業を甲仲とした分類を使用していた経緯があります。海運組合法が廃止された現在も使われています。

乙仲とフォワーダー・通関業者の違い

フォワーダー(Forwarder)

フォワーダーは、「貨物利用運送事業法」に定められている規制を受け、国際輸送において貨物の輸送手配や物流サービスを提供する企業や個人を指します。彼らは貨物の受け入れから出荷までの一連の流通手続きを担当し、船舶・航空便・陸上輸送などの適切な輸送手段を選択します。フォワーダーは輸送の効率化と顧客の利益を最大化するために、貨物の集荷、積み替え、梱包、保険手続き、関税手続き、輸送書類の作成など、多岐にわたる業務を行います。

通関業者(Customs Broker)

通関業者は、「通関法」という法律の規定にのっとり国境を越える貨物の通関手続きを専門的に行う企業や個人です。彼らは輸入貨物が関税や規制に従って適切に処理されるようにし、関税の支払いや輸入許可書の取得など、通関手続き全般を代行します。通関業者は法的な規制に詳しく、輸入業者と通関申告書類の作成や提出、関連書類の準備、税金の計算や支払い、通関検査の調整などを行います。

乙仲は海上貨物輸送に関する国際輸送や物流サービスを提供する業者であり、フォワーダーは海上貨物と航空貨物も含めた貨物の国際輸送や物流サービスを提供する業者です。通関業者は財務大臣の許可を受けた業者で輸入貨物の通関手続きを専門的に代行する企業です。貨物に合ったサービスを組み合わせることで効率的かつ円滑な輸送が実現できます。

乙仲とフォワーダー・通関業者の選び方

乙仲業者とフォワーダーの選び方

乙仲が港湾内で陸と船舶の間だけの取引を行うのに対し、フォワーダー荷物の集荷から配達までも行うことが多いとされていますが近年各々が業務の範囲を広げており違いが減っています。選び方のポイントは次になります。

ライセンスと認可: 適切なライセンスや認可を持っているかを確認しましょう。国際輸送では、特定の国や地域での法的要件を満たすことが求められます。適切なライセンスや認可を持つ乙仲とフォワーダーは、信頼性と信用性が高いと言えます。

経験と専門知識: 湾岸での手続きや運送業務、国際物流において経験と専門知識を持っていることが重要です。業界での実績を確認し、目的地や貨物の種類に特化した専門知識を持つ乙仲とフォワーダーを選ぶと良いでしょう。

サービスの幅とカスタマイズ: 業者が提供するサービスの幅やカスタマイズの柔軟性も考慮すべきポイントです。物流業務においては、複数のサービス(貨物輸送、保険、関税手続きなど)をトータルで提供している乙仲やフォワーダーが便利です。また、特定のニーズや要件に対応できるカスタマイズサービスを提供しているかも確認しましょう。

費用対効果と透明性: フォワーダーの提供するサービスの費用対効果を比較しましょう。ただし、最も安いオプションが常に最適な選択肢とは限りません。代わりに、価格とサービス品質のバランスを考慮し、透明性のある料金体系や契約条件を持つフォワーダーを選ぶことが重要です。

これらのポイントを考慮して、複数のフォワーダーを比較し、自身のニーズや要件に最も適した選択肢を見つけることが重要です。また、業界の専門家や他の顧客の意見を参考にすることも役立ちます。

通関業者の選び方

輸入通関手続きを代行する通関業者の選び方のポイントは次になります。

専門知識と経験:通関業務は専門的な知識と経験を必要とするため、信頼性の高い通関業者を選ぶことが重要です。業者の専門的な知識や経験を確認し、実績や評判を調べることが重要です。

免許や認定:通関業者が適切な免許や認定を持っていることも重要です。国や地域によっては、通関業者は特定の免許や認定を取得する必要があります。業者が適切な資格を持っているかを確認しましょう。

カスタマーサービス:通関業者とのコミュニケーションやカスタマーサービスの質も重要です。迅速な対応や情報提供、問題解決能力などを考慮して選ぶことが大切です。

コストとコスト透明性:通関業者のサービス料金や費用体系を明確に理解し、コスト透明性を確保することも重要です。複数の業者の料金や提供されるサービスを比較し、適切なコストとバランスの取れたサービスを提供している業者を選ぶことが望ましいです。

信頼性と信用:業者の信頼性や信用度も重要な要素です。業者の信頼性を確認するために、過去の取引や顧客のフィードバックを調査することが役立ちます。

これらの要素を考慮しながら、輸入業者のニーズや要件に合った信頼性の高い通関業者を選ぶことが重要です。事前の調査や比較を行い、複数の業者との面談やコミュニケーションを通じて適切な業者を選ぶことをお勧めします。

梱包や倉庫業は、輸送や貨物保管に欠かせない重要な業種です。

梱包業は、貨物を輸送するために必要な適切な包装を提供する業界です。梱包業者は、貨物の性質や目的に応じて、最適な包装材料を選択し、貨物を丁寧に包装します。また、輸送中の振動や衝撃に対する保護、荷崩れ防止などの梱包技術も提供します。

倉庫業は、貨物の保管・管理・荷役を行う業界です。倉庫業者は、貨物の受け取りから保管、出荷までの一連の作業を行います。倉庫業者は、貨物の管理・保管方法に関する専門的な知識や技術を持ち、貨物の種類に応じて、適切な保管環境や保管方法を提供します。また、貨物の受け渡しや荷役作業も行います。

梱包業や倉庫業は、輸送や貨物保管において欠かせない業種であり、貨物の安全性や品質を確保するために重要な役割を担っています。貨物の取り扱いには専門的な知識と技術が必要であり、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

外為取引、営業店長の専決権限について

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外為取引先の社長や経理担当役員との話で一回は話題になるのが、営業店での支店長の専決権限です。

あからさまに「いくらまでOK?」。こんな質問は流石にありませんが、具体的な案件でどこまでだったら営業店長が専決できるのか。この手の質問は多かった記憶があります。今回はこの営業店長の専決権限(以下店長権限)のお話しをします。

店長権限というと我々を含めてほぼ全員が融資を連想しますが、勿論外為取引にも店長権限は多く含まれています。しかし先ず外為に入る前に、預金取引について触れてみたいと思います。預金は国内円、外貨を問わず銀行本部が発表している一定のレートが、全ての取引に適用されている印象があります。我々も対外的にはそう表現していました。が、例外もあります。

それは定期預金金利です。上乗せが出来るのです。例えば新規獲得とか他行防衛、保全強化、総合採算向上。こういう理由があれば個別に金利上乗せが俎上に上がりました。実は預金は本支店間で仕切りレートが決まっています。

顧客金利は仕切りレートより低いところにあります。つまり両者の差部分が支店収益となってくるわけです。
金利上乗せとはこの差部分を狭くすることです。早い話が支店収益を削る。これを営業店長が認めるわけです。営業店長としては成績の足を自分で引っ張るようなものですから、他でメリットが無いと首は縦に振りません。なのでキャンペーンでも無い限り、余り表には出て来ないのです。

次に外為取引についてですが、店長権限は輸出にも輸入にもあります。

まず輸出です。輸出の分野で注目に値するのは、金額制限の無い店長権限項目がある点です。金額は1億円でも1百万米ドルでも(場合によってはそれ以上でも)本部に稟議申請をせずに営業店限りで処理できるのです。

これは何か言うと「特に指定された信用状付の買取」です。予め信用力が有ると評価された銀行発行の信用状であれば、それに基づく買取は書類上の不備が無ければ青天井で認める。かみ砕けばそうなります。(これは恐らく他の銀行にもある制度です)

実際私も年商一億程度の会社から三億円の買取が持ち込まれ、書類上の不備が無かったので平気な顔をして買取を実行しましたが、内心では決済迄の一週間。毎日ドキドキハラハラだった経験があります。

では他の輸出・輸入取引はどうかと言えば、基本的には国内融資に準じていました。つまりその営業店のステイタスによって金額が決まるということです。大雑把なくくりですが小型店では外為・国内含めて30百万円程度、中型店では50百万円程度。大型店では1億円程度が上限でした。この金額は無担保扱いの金額であり、担保があれば更に金額の上乗せがありました。

この点から言うと大型店の方が大きな金額まで取引出来るので、即決を期待して大型店での取引が吉。こうなりそうです。しかし大型店では自社よりも厚遇される顧客は多数存在します。何かと比較されて良い扱いが受けられない可能性もあります。どうも上限額だけでは判断できそうもありません。(鶏口と牛後の関係とも言えましょうか。)

結論から言えば、過度に店長権限額を気にする必要は無いと思います。いざとなれば銀行側も本部稟議をしてでも対応するはずですから。ただ個人的には自分の会社がその小型店でトップの顧客になって、自社も小型店も一緒に大きくなれればそれば一番と考えています。

2022/07/14

貿易と銀行実務いろは一覧

輸出手形保険を整理する

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今回は知識の整理を兼ねて、輸出手形保険をお勧めする理由をお話しします。既にこのコラムでも何回かお話ししたように、輸出手形保険はNEXI(日本貿易保険:政府全額出資法人)が取り扱う貿易保険の一つになります。

他の貿易保険はほぼほぼ銀行は関係ないのですが、輸出手形保険はどっぷりと銀行と関係があります。では早速概要から見てみたいと思います。

1.被保険者は実は「銀行」
一般に保険と言えば保険料を支払って保険契約する人が、被保険者という位置付けになります。しかしこの保険で被保険者は、当該輸出為替の買取銀行なのです。この銀行が被保険者と言うのは結構重い意味を持ちます。万一保険事故が発生したとき銀行自身が当事者となります。輸出者にしてみれば銀行が自分のために動いてくれるのです。

2.「非常危険」だけでなく「信用危険」もカバーしてくれる。
「非常危険」とは為替取引制限・禁止や戦争・内乱・革命、自然災害、当事者の責めによらない事態のことです。「信用危険」は「非常危険」以外の事由による物です。このカバー範囲の広さによって、輸出者自身の責任でなければ、殆ど全ての保険事故に対してカバーしてくれる事になります。これは心強い話と言えます。

3.付保率(カバー率)が95%ある。
100%面倒を見てくれないのかと声が上がりそうですが、輸出者が振り出した荷為替手形金額の95%ですから、コスト、諸経費、儲け込み込みに対する95%です。それなりに評価できる水準と言えるのではないでしょうか。

4.付保付輸出為替は銀行に取って担保付与信
銀行によって少し対応が違うのですが、輸出手形保険付は無付保(輸出手形保険なし)の買取に比べ、与信判定上有利な扱いを受けることになります。多くの場合手形金額全体が担保付与信と判定されるようです。更に5%部分を預金で担保提供すると、更にそのステイタスが上がる。こんな銀行もありました。これは無信用状(D/P・D/A)に限らず信用状付でも可能な話です。

5.保険事故発生!でもサービサー制度を頼める
不幸にして保険事故が発生したときには、買取銀行がNEXIに対して損失発生通知書を提出します。その後NEXIから保険金が支払われるのですが、そこで一件落着とはなりません。買取銀行(輸出者も含む)には代金回収義務が残っています。つまり輸入者から輸出代金を回収しなければならないのです。じつはこれが大変な面倒でサービサー制度が出来るまでは、買取銀行は半年に一度現状報告をしなければなりませんでした。

勿論銀行だけでは駄目なので輸出者にも動いて貰います。現状を把握して回収の可能性。これを報告していました。これが終了認定をおりるまで続く事になります。転勤で引き継ぎを受ける時、この手の引き継ぎが一番厄介でした。本当に面倒で今までの経緯を一読するだけでげっそりしてました。

しかし2003年10月以降はサービサー制度が導入されました。完全に手が離れるわけではありませんが、殆どの部分をサービサーが行ってくれるので、本当に楽になりました。これは大きなポイントです。以上簡単に眺めてきたのですがもし興味がお有りなら、NEXIのHPを一度ご参照下さい。直接電話等での相談も受けてもらえます。

参考サイト:NEXI
https://www.nexi.go.jp/

2022/06/23

貿易と銀行実務いろは一覧

e-mailで輸出規制違反!?

マウスをクリックする瞬間

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輸出規制というと、その代名詞なるものは「外国為替及び外国貿易法」略して「外為法」になります。更に、その外為法を実行するためのルールとなるのが外為法の政令「輸出貿易管理令」と「外国為替管理令」です。これらもそれぞれ略して、「輸出令」または「貿管令」、「外国為替令」または「外為令」と呼ばれています。「輸出令」は貨物への輸出規制、「外為令」は技術や役務への輸出規制です。

「輸出令」という法令があること、その法令が輸出規制として大事であって主なるものであることは、普段、輸出を行なっているメーカー等の企業に知られていても、「外為令」の方は意外にも知られておらず、ノーチェックだったりすることがあります。

「センサー」は、自動ドア、スマホ、家電、自動車、カメラ、照明器具や防犯機器など、いろんな所で身近なものに使われています。そのセンサーの設計図や仕様書、マニュアルなどのデータを外国の取引先の会社や個人へeメールに添付して送ったり、あるいはFAXで送っても、実は輸出規制の対象になる事があるんです。

何故なら、これら設計図、仕様書、マニュアル、プログラムなどは技術的な資料、情報であり、「外為令」が規制する技術に当たるからです。PDFなどのデータ(またはデータを保存したUSBメモリー等の記録媒体)でも、手書き、あるいは印刷やコピーされた紙でも設計図等の技術的資料や情報は「外為令」が規制する技術の対象になります。

「外為令」が規制するものに、もうひとつ、役務がありますが、役務とは、他人のために行う労働やサービスのことです。同じくセンサーを例にとると、センサーの製造方法や組み立て方、使い方などを外国へ行って人に教えたりすることなどが役務に当たります。そして「外為令」が規制する役務の対象になります。

外国へ向けて送ろうしている仕様データは何の仕様データ?外国で教えようとしている製造方法は何の製造方法?その「何」の部分、つまり技術や役務の対象物が「輸出令」(別表第1)で規制する対象物であるときに、「外為令」別表でも規制する対象物となるというわけです。

仕様データを送ろうとしている物品、製造方法を教えようとしている物品が、兵器や兵器に使用できる部品や材料にならないか、更に細かく言うと、国(経済産業省令)が定めた仕様(スペック)に当てはまらないか確認(該非判定)をする必要があり、当てはまる(該当)物品の時は経済産業省へ輸出許可申請をし、経済産業大臣の許可を得ないと、その物品のデータや情報をeメールやFAXで送ったり、外国で人に教えたりはできないのです。

更に注意しなければいけないのは、日本国内であっても、日本に住所を持たない人(非居住者)に製造方法等技術情報を教える場合には、前述の確認や申請、許可が必要になることもあるのです。

「輸出しているわけではないのに、なぜ輸出規制に引っかかるの?」と疑問に思われる人もいることでしょう。それは兵器や兵器の部品、材料、あるいはそれらに転用できる貨物(物品)を設計、製造、使用するための情報(データ)を教えてもらった人が住んでいる国へ帰国することで日本の国外へ出すことになるからです。

簡単にまとめると、このように国外へ出そうする、出すことになる「輸出令」(別表第1)の対象貨物を設計、製造、使用するための情報(あるいはデータ)は、「外為令」の対象になるということです。

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2022/06/18
くらしと貿易と通関と
Kyō

貯蓄から投資へマインドチェンジできる?

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皆さんは、ご自身の資産をどのような形態で保有していますか?預貯金、不動産、株式、投資信託、債券、生命保険?

日本は、20年前から「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げていますが、家計における金融資産の構成比は2021年末において、50%超が預貯金、約30%が年金・保険、株式や投資信託は約15%にとどまっています。この比率は、スローガンを掲げた20年前からほとんど変わっていません。

家計における金融資産額を20年前と比較すると、日本では1.4倍になりましたが、米国では3倍に増えていて大きな差となっています。日本と違い米国では、株や投資信託の保有率が現金・預金での保有率より高いため、投資から生み出される所得の効果が、金融資産額全体を押し上げているとみられています。

この20年の間に日本でも、投資への移行を促進すべく、譲渡益や配当金が非課税になるNISA制度や、税の面で優遇措置のあるiDeCoなどが構築され、投資のしやすい環境は多少なりとも整いました。

実際、NISAの口座開設数は、20代、30代の若い世代を中心に増加しており運用開始当初の約2倍になっていますし、iDeCoの加入者数も確実に増えています。

しかし、全体を見ると依然として現金や預貯金の保有率が高いことは変わっていません。そこで、政府は、預貯金で保有されている資産が多いことを逆にポテンシャルと捉え、この度「資産所得倍増プラン」なるものを打ち出しました。

資産所得とは、勤労所得の逆を意味するもので、金銭や有価証券、土地や建物などを運用することから得られる、利子所得、配当所得、賃貸料所得などをさします。

預貯金を投資へシフトすることで資産所得を増やそうというプランです。政府の意図するところ、理屈はわからなくもないですが、20年間にわたり、大きな行動変容が見られなかったものが、いわば看板を掛け変えただけで、貯蓄から投資へと人々はマインドチェンジできるのでしょうか。

個人的な見解ですが、次のような理由から投資へのシフトはいまだ険しい道のりと感じます。

【そもそも投資へ回す資金がない】
「投資」は、余裕資金があってこその話。例えば、若い世代では、NISAやiDeCoなどを活用して将来の自分に投資をしたいと考える人が増えていることは口座の開設数からも窺えますが、現実的には給与は増えず生活に余裕ができない、したがって、投資へシフトする余裕資金も持てないという現実があります。

30代以下の保有する金融資産は、全体の金融資産の10%に満たないことがわかっています。

【何から始めて良いかわからない】
金融について学ぶ機会が少なかった日本人は、マネーリテラシーが低いといわれています。「お金」は、生きていく上で必要不可欠なモノであるにもかかわらず、長きにわたり「お金」のことは家庭教育という状況であったため、多くの場合、親のリテラシーが子どもに引き継がれています。税金、社会保険のことを含め、金融に関する正しい知識を得る機会が少なかったことも、投資へ向かえない一因と考えられます。

お金を「貯める」ことはできても「増やす」ための知識の不足。「投資」と言われても、何から始めていいかわからないのはこのためかもしれません。

資産所得倍増プランでは、NISAやiDeCoの拡充などが検討されているようです。今後、仮に非課税投資枠が増えたり、要件が緩和されたりすれば、より多くの人が投資を行える環境は構築できるかもしれません。

しかし、環境や枠組みというハード面ばかりを整えても、肝心の投資できる余裕資金と知識というソフト面の充実がなければ、ここまでの20年と何も変わらないような気がしています。

貯蓄から投資へシフトするためには、給与の底上げと、人々のマネーリテラシーを高めることが必要ではないでしょうか。

この春から、学校の社会科や家庭科でようやく金融教育が始まりました。年齢に合った段階的な内容となっており、高校では投資についても学ぶ機会がありそうです。今の子どもたちが大人になる数年後から、日本人のお金についての考え方、投資や資産運用に対する意識も変わるかもしれません。

参考サイト:
日本証券業協会 NISA口座開設・利用状況調査結果 (2021年12月31日現在)
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/files/nisajoukyou/nisaall.pdf

イデコ公式サイト 加入者数
https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/number_of_members_R0403.pdf

2022/06/09
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

Terve! フィンランドのスタートアップ企業の今

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フィンランドのゲーム「アングリバード」のRovio社や「クラッシュ・オブ・クラン」のSupercell社、最近ではフード・デリバリーのWolts社をはじめとするスタートアップ企業の成功は、フィンランド経済と起業家精神を刷新してきました。またスタートアップイベント「Slush」も2018年には東京でも開催され、世界の起業家たちの間では常に注目のイベントとされています。

コロナ禍やウクライナ侵攻によりこのスタートアップ業界にも大きな影響を及ぼしています。今回はそんなフィンランドのスタートアップ業界の今をお届けいたします。

フィンランドのスタートアップ起業は、革新的な現象とみなされているようですが、そのルーツは1990年代に遡ります。当時は、急成長するテクノロジーに関心のある人々を集めたデモシーンという位置付けぐらいだったものが、建築やデザインで有名なアアルト大学の学生の運営による非営利団体のスタートアップコミュニティが誕生。今では経済成長を生み出す革新的で高いスキルを持った活動とみなされ、イノベーションによって経済成長を生み出すという考え方の一つにまでなっています。

この成長の影には、老舗企業ノキア社の崩壊後のフィンランド経済に新しい方向性として、このスタートアップ起業が提示されたことにあります。

その提示により企業家精神として情熱と自己実現、そしてチームワークを鼓舞することが定着してきました。

現在フィンランド・スタートアップ・コミュニティ(FSC)団体が立ち上がり、100以上のさまざまな段階の異業種が集まって活動をしています。

最近このFSCによる初のスタートアップ・バロメーターが実施されました。四半期ごとに、スタートアップエコシステムで活動する企業や投資家が、自社や周囲の経済状況についてどのような見解を持っているかをマッピングしました。

バロメーターによると、スタートアップ企業は自らの成長の可能性に強い信頼を寄せているとの回答が多くみられました。しかし、周囲の経済状況については同様の信頼を見出すことはできないとの回答も多くみられました。ロシアによって引き起こされた周辺国としての治安悪化の懸念も、企業にとっては大きな懸念材料です。

回答したスタートアップ企業は、ここ数年で大幅に人員を増やしている傾向がみられる一方、なかなか適切な人材が確保できない状況であることも明らかになりました。

その半数以上は、熟練労働者の不足が事業成長の最大の障壁であると回答しています。「市場における熟練・専門家の競争は激しく、彼らを惹きつけるには、さまざまな手段に基づいて行わなければならない」とSupermetrics社のCEOであるThuneberg氏は話しています。

そして先月にはFSC主導の新しい目標を発表しました。この目標は、フィンランドの成長企業をはじめ、アーリーステージ(初段階)のスタートアップ企業を含む、コミュニティ内の約130社のメンバー企業から生まれました。

「私たちの最大の目標は、フィンランドを最高の人材が集まる世界一の場所にすること、そしてフィンランドがスタートアップ企業を立ち上げ成長させて、フィンランド経済を支える新しい中心的な存在に成長し、雇用と税収をもたらすことを目指しています」とFSCのCEOであるPakarinen氏は述べています。

目標の具体的な中身は、コンピテンスと研究開発、気候変動やヘルスケアへの技術による課題解決、プラットフォーム・エコノミーやブロックチェーンなどの法規制、税制上の優遇措置などありとあらゆる方面の目標が掲げられました。「2030年までに、フィンランドのスタートアップや成長企業が、輸出やGDPとの関係においても、森林や金属産業などの基幹産業と並ぶ国の新しい経済の柱となり、フィンランドの最重要な経済部門の一つになると考えています」とFSCの理事長であるAhopelto氏も述べていました。

世界中の経済や秩序がガラリと変わり始めた2022年。間もなくその半分が過ぎようとしています。

ウクライナ侵攻によって歴史的転換であるNATO加盟に至った小国家フィンランド。この国の生き残りをかけた経済構造の変化の一つに、スタートアップ業界が引き続き一躍を担うことは間違いなさそうです。

参照記事:
https://www.helsinkitimes.fi/business/21490-the-first-ever-finnish-startup-barometer-the-talent-shortage-is-getting-worse-but-confidence-in-growth-remains-strong.html

https://www.helsinkitimes.fi/business/21411-finnish-startup-community-s-goals-for-the-next-governmental-program-crypto-legislation-platform-economy-and-climate-startups.html

写真出典元:
https://businesstampere.com/tamperes-startup-community-the-power-of-input-and-output/

2022/06/05

海外だより:フィンランドより一覧

陸の貿易港インランド・デポ

インランドデポの風景

輸出入、貿易が行われている場所というと、真っ先に海、港を思い浮かべないですか?

ところが、内陸でも貿易は行われています。内陸にある、例えば成田のような空港、いやいや、そこで確かに貿易は行われていますが、空港だけではありません。それ以外にも、内陸で輸出や輸入が行われている場所があるんです。それが内陸の港「インランド・デポ」です。

インランド・デポ:Inland Depotは直訳すると「内陸の倉庫」、荷積み荷下ろしのできる土地や輸出入貨物を入れる保税地域の倉庫(保税蔵置場)を有し、官民の第三セクター経営、あるいは倉庫、運送業等と通関業を兼業する民間企業経営による内陸地での輸出入通関機能をもつ物流拠点のことです。そして、その中に税関を誘致、あるいは近くに税関があることが多いです。

インランド・デポでは、貨物の積み下ろし、梱包、保管、通関、貨物の集荷、配送などが行なわれ、保税地域のため通関料や輸出通関後の貨物と輸入通関前の貨物に行った作業費等には消費税の税金がかかりません。保税地域の「保税」とは、「税の留保」、「税を徴収しない状態を保つ」という意味です。

インランド・デポを利用する場合、その内陸の保税地域という特徴から、輸入よりも輸出の方がメリットが多く生まれます。

輸出しようとする貨物をインランド・デポへ集約し、必要があれば、例えば段ボール詰めしたものをいくつかまとめてパレット梱包にするなど梱包作業をしてもらうこともでき、通関については税関検査になっても、税関指定の検査場へ貨物移動することなく、ほぼインランド・デポ内で対応でき、移動するための運送費や積み下ろし作業費などがカットでき、時間的にもコスト的にも速く安く済みます。通関後は、トラックあるいはコンテナに貨物を積み、貿易ができる空港や港(開港)へ運び、外国へ向けて航空機や船舶へ積み込むわけですが、その運送費に関しても保税運送になるため、運送費にかかる消費税がかかりません。

仮に1回の運送費が5万円だとします。普通であれば、その運送費にかかる消費税は2022年現在、10%ですから5千円ということになります。月に10回あれば月5万円、それが年間になれば60万円、節税になり消費税を負担しなくていいわけです。それを大きな効果、メリットと感じる、感じないかは、輸出を行っている企業次第かもしれませんが、どうでしょうか?

ところで、通関士試験の受験生をはじめ、通関業者に就転職を考えている皆さんも、就転職先となる通関業者は、空港や港の近くにしかないと考えている人もいると思います。確かに空港や港の近くには、いくつもの通関業者があります。しかし、比べればそれほど多くないにしても内陸にも通関業者があることを知っておくと就転職先の選択範囲が広がります。意外にも、今住んでいる市町村、あるいは近くにインランド・デポがあるかもしれません。

今、インランド・デポへの貨物の集荷、インランド・デポから空港、港への運送は、陸路中心でトラックやトレーラーヘッドによるコンテナけん引が主ですが、混雑、待機時間等が問題になっています。さほど多くない量の貨物であれば、大型ドローンで運ぶ時代は、そう遠くない未来かもしれません。

2022/05/30
くらしと貿易と通関と
Kyō

クレームの一撃。銀行を走らす!

銀行、クレームの電話

どんな銀行にもついて回るお客様からのクレーム。お金が絡むだけにひとたび発生すると本当に大変です。今回はそんなクレームが発生した時の、銀行対応についてお話しします。

お客様からのクレームの形態は様々ですが共通しているのは、お客様の望むように銀行が対応していない。これに尽きます。対応していない(or出来ない)理由はいくつかあります。法律の定めや当局からの指導がある場合。これは土台無理筋です。しかしこれらの場合は出来ない理由を銀行も開示しますので、お客様も納得せざるを得ないと思います。

それに対して銀行の内部手続きによる場合は、出来ない理由を銀行はハッキリ言ってくれません。と言って具体的な善後策も余り提案してくれません。このような時、クレームがヒートアップして解決困難になります。それでも殆どの場合は営業店の中で対応できています。場合によっては支店幹部が説明謝罪する場面もあります。しかしお客さまに納得できない部分が残っていれば、いくら銀行が対応しても一件落着にはほど遠いと言えます。

そんな時どうすれば良いか。皆さんにお勧めしたいのが銀行本部への電話です。これが本当に効果的です。どう効果的かは以下に述べたいと思います。参考までに3メガでの専用窓口をご紹介します。三菱UFJ銀行は「お客さまホットライン」、三井住友銀行は「ご意見・ご要望窓口」、みずほ銀行は「ご意見・苦情の専用窓口」となっています。それぞれビミョーです。意図するところの違いが垣間見られますね。

それはともかく、窓口に直接架電した場合の流れを見てみましょう。これらのセクションにはダイレクトに電話がつながります。つながった段階で思うところをバンバン言って下さい。それでOKです。遠慮する必要は全くありません。但し文句だけを言っても問題の解決にはなりません。ここは一つ冷静に、なんでクレームしているのか(事実の提示)、何をして欲しいのか(要求の顕在化)をする必要があります。

皆さんが申し立てている間、銀行側は完全に聞き手に回ります。よってこの二点は明確に強く言い込む必要があります。さて多くの場合この様なクレームに対して銀行の反応はこうです。「お話しの趣旨は分りました。至急事実を確認してご回答致します。」こうなると思います。これで後は銀行の回答を待てば良いのですが、ポイントは必ずいつまで待てば良いかを確認することです。これは途中経過であっても状況確認が必要ですし、時限を切る要求は非常に厳しい銀行へのプレッシャーになるからです。

さてこの後ですがこの一撃は銀行に間違いなく激震を走らせます。間髪を入れずに現場の部長(席)や支店長(席)に、本部からの内線電話の着信音が鳴り響きます。(外為はホットラインからもありでした)この手の指示は問答無用です。最優先対応になります。既に当該事案について本部に一報済なら良いのですが、未連絡だとその点についても釈明が必要になります。

そしてここからの一挙手一投足は全て記録する必要があります。不祥事発生時に記録が残っていないと釈明する人がいますが、銀行に関してはどんな小さいことでもクレーム・トラブルは、記録に残っていると断言できます。なので本部からの電話に激震が走るのです。今回はクレームの一撃。銀行を走らす!でした。

参考サイト
三菱UFJ銀行:ご意見・苦情
https://www.bk.mufg.jp/voice/index.html

三井住友銀行:ご意見・ご要望窓口
https://www.smbc.co.jp/cs/support/

みずほ銀行:ご意見・苦情(個人のお客さま)
https://www.mizuhobank.co.jp/retail/help/goiken/index.html

2022/05/24

貿易と銀行実務いろは一覧

貿易になくてはならないHSコード

貿易に必要なHSコード

日本でも他の国々でも、私たちのくらしに必要なモノあるいはそのモノを作る為の原材料を輸出入するときには、必ず通関(税関へ申告し税関から許可を得ること)が行われます。その通関に最も重要で不可欠なのが「HSコード」です。

HSはHarmonized Commodity Description and Coding System(国際統一商品分類システム)のHarmonizedとSystemの頭文字で、このシステムで使用するコードがHSコードになります。「関税協力理事会」略称CCC(Customs Co-operation CounCil)が開発し、1994年以降は「世界税関機構」略称WCO(World Customs Organization)という組織となって管理しています。

HSコードは1988年発効となった「商品の名称及び分類 についての統一システムに関する国際条約」(通称HS条約)のもとに締約国の間で定められ、できてからまだ歴史は浅く2022年現在で30年余りです。それはモノのコード化や管理等を行う手段であるコンピュータの登場、普及の歴史と重なります。日本はWCOへ1964年加盟、2021年4月現在で締約国は160ヵ国・地域になり、それらの国・地域を含めHSコードを適用しているのは212ヵ国・地域になります。

英語が世界共通の国際語であるように、HSコードは貿易で流通するモノを表す輸出入共通、世界共通の6桁の国際数字です。日本では、その数字の上2桁を類、上4桁を項、全6桁=HSコードを号と呼び、HSコードの後に細分番号と呼ぶ3桁の数字を続け、更にその後に「NACCS」というシステムで税関へ輸出入申告を行うためにNACCS用の数字(アルファベット)を10桁目に続け、合計9桁あるいは10桁で種々のモノを表し、税関への輸出入申告書へ数量と共に記載することにより、月間、年間でどこへ、どこからどんなものをどれだけ輸出入したか額・量を統計をとるためのコードでもあります。

類は大きいグループ分け、項、号、細分番号(NACCS用番号)を含めた9桁(10桁)と順に桁数が増えるにつれ、より細かく小さなグループ分けという構成になっています。HSコードの後に続ける、日本で細分番号と呼んでいる3桁の数字は、それぞれ各締約国で決めてよいことになっているため、例え全く同じモノであっても、日本と一致する数字配列にはなりません。

一見、HS条約付属書をもとに作られたコード表(日本では輸出:「輸出統計品目表」、輸入:「実行関税率表」)から輸出、輸入するモノをHSコード(あるいは細分番号、NACCS用数字を含めた9桁・10桁の数字)に当てはめることは容易に見えます。確かに、そのモノがズバリHSコードになっていることもあります。しかし、一つのモノに対して一つのHSコードが対応しているわけではなく、モノというのは日本だけでも、ましてや世界中を見渡せば、いろいろなモノが数限りなく数多に溢れています。

それを6桁あるいは9、10桁の数字に当てはめることは商品知識や専門的知識・経験を要し、至難の業です。それに輸入するモノについては、コードにより関税率も違い、そのコードを誤ってしまうと、関税率が違うばかりか、有税のモノを無税のモノのコードにしてしまうと加算税徴収ということにもなりかねません。だから輸入者から委託されて税関へ申告する通関士は、慎重にも慎重を重ねて、コードを検討し、「関税率表解説」という他の資料などで裏付け(確認)し申告を行います。

HSコードはWCOにて5年に一度見直されるのですが、通関現場に身をおく者としては、日進月歩で技術が進化する中で新しい素材、新しいモノが次々と生まれているのに5年に一度の見直しではHSコードは追いついてないというのが実感です。

通関士は、輸入を行う顧客から輸入しようとするモノに関するHSコードとその関税率の問い合せをよく受けます。問合せは日本での販売やその価格などを検討するためです。その問合せに対して回答を導き出す労作は無償サービスが習慣のようになっています。HSコードを決める事は税関へ提出する申告書において最も重要で、難しく、神経を使う作業です。その労作がそれ相応に適切な評価を受けられないのは、長年に渡り通関士をやっていて異様で、正当に評価される時代が来ることを望まずにはいられません。

2022/05/18
くらしと貿易と通関と
Kyō

なぜ住宅ローン固定型と変動型に金利差が?

住宅ローン固定多型と変更型
今年に入り、住宅ローンの固定型の金利は上昇傾向が続いています。その一方で、変動型金利は低水準の状態が続いているため、固定型と変動型の金利差が拡大しています。

ご存じの通り、固定型は、その固定期間中は市中金利に左右されることなく返済額が同額ですが、変動型は、市中金利の影響を受けるため、場合によっては返済額が増えるリスクがあります。

今、固定型と変動型の金利差が拡大していることから、新規で契約する方はどちらを選ぶべきか悩ましいところでしょうし、既に住宅ローンを返済中の方も、固定型から変動型へ、逆に変動型から固定型へ借り換えを検討している方が増えているそうです。

固定型から変動型へ借り換えを検討している方は、この先も変動型は低金利が続くと予測してのことだと思いますし、逆に変動型から上昇傾向にある固定型にあえて変更を検討するのは、この先変動型金利が上昇する前に金利をFixしておきたいという意識からでしょう。変動型金利は、固定型金利の後追いで上がるというのが一般的です。

住宅ローン金利を、固定型とするのか、または変動型を選ぶのかは、いつの時代も永遠のテーマであり、正解は誰にもわかりませんし、またご家庭によって正解は異なると思います。

しかし、住宅ローンの金利が何から決められているのかを知っておくと、借り換えや新規で住宅ローンを契約する際の判断のヒントとなるかもしれません。固定型と変動型の金利を決める際には指標となる数値がありますが、両者はその元ネタとしているものが異なります。

固定型は、日本の新発10年物国債の流通利回りを指標としていて、それはアメリカの長期金利に連動しています。アメリカが利上げに動いていることが、昨今の固定型住宅ローン金利の上昇につながっています。

一方、変動型は、日本の景気の指標である短期金利に連動しているため、日本の金融緩和による低金利政策が変動型住宅ローンの低金利を招いています。

つまり、利上げに動いているアメリカ、金融緩和を続ける日本という昨今の日米の金融政策の違いが、固定型、変動型の住宅ローンの金利差となって表れているのです。

5月4日、アメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)は、これまで0.25%幅であった政策金利を6月から0.5%幅引き上げると発表しました。そうなると、住宅ローンの固定型金利が更に上昇するのかと心配になるところですが、そう直結した状況にはならないと思われます。

なぜなら、日本では現在、長期金利の上昇を抑制するために、0.25%という利回りを指定して日銀が国債を無制限に買い入れる「指値オペ」を行っているからです。これにより無制限にアメリカの利上げに引っ張られることはないため、住宅ローンの固定型金利が上がり続けるとは考えにくいでしょう。

それでは変動型の金利の今後はどう考えるべきでしょうか。

指標となる日本の短期金利が上昇するきっかけは、金融緩和政策を解除したとき、つまり、日本の景気が良くなったときと考えられます。金融緩和政策解除の目安は、消費者物価指数が安定的に2%を超えたときとされています。

実は、この3月まで7カ月連続で消費者物価指数は前年同月比を上回っています。一見、景気が上向きのようにも見えますが、その主な要因は円安とロシアのウクライナ侵攻による物価高とされていて、純粋な景気回復とはみなされていません。このことは、4月末に開催された金融政策決定会合で、この先も当面、現行の金融緩和政策を継続する意向を示したことからもわかります。

これらを勘案すると、変動型の金利がこの先すぐに上昇する要因は多くはないでしょう。

とはいえ、先のことは誰にもわかりませんし、予想を超えた何かが起こるかもしれません。最終的には自分自身で判断するしかありませんが、金利の変動要因の知識があることは、判断の一助になるのではないでしょうか。

今回は、昨今の日米の金利差が日本の住宅ローンの金利へも影響していることをお伝えしました。金利の話をしていると、どちらを選ぶのが得か損かという思考になりがちですが、実際には金利や返済額だけで選ぶのではなく、住宅ローンの返済額が家計に占める割合や、返済額が増えるリスクをどこまで許容できるかなど、ライフプランを立てて総合的に判断することをお勧めします。

なお、本コラムでお話した固定型、変動型の金利がどのような動きとなるかは、あくまで個人的見解です。考え方のひとつとしてお読みいただけると嬉しいです。

2022/05/11
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

L/C条件に合わない買取書類が出てきた!

L/C Letter of Credit

貿易担当者にとってL/C(信用状)は頼もしい存在です。L/C条件通りの書類を作成し銀行に持ち込めば、銀行が買い取ってくれほぼ確実に決済資金が手に入ります。この仕組みは早期の資金回収には大変に有難い方法なのです。

しかしこの話が上手くいくためには前提があります。すなわちL/C条件通りの書類を作らなければならないのです。そんなの簡単じゃないか。そう思う人は多いと思います。たしかに多くの場合それで上手くいきます。しかし今回はそうはならない場合を一つご紹介します。更に併せてその解決策もお示ししたいと思います。

今回話題になったのは原産地証明書(Certificate of Origin)です。(以下C/Oと略します)C/Oとは簡単に言えば商品原産地を証明する書類です。余りに当たり前すぎて申し訳ありません。少し反省です。さて気を取り直して本題に入ります。

このC/OですがL/Cによっては、C/OにL/C番号の記載を要求するときがあります。誰が作っても良いC/Oであれば自分以外のであっても、作成者の了解を得てL/C番号を追記すればそれでお終いです。ところが商工会議所作成の場合は厄介です。通常は載せてくれません。そうなるとディスクレ状態の書類を銀行に持ち込むことになります。(ディスクレ状態とはL/C条件に不一致の状態を指します。このままでは最悪輸入側からの資金回収が不能になってしまいます。)

これでは困りますので何とか対策を講じる必要があります。では取引銀行にも輸入者側にも了解して貰える方法はあるのでしょうか。100%これだという解決方法はないのですが、結果これなら大丈夫ではと言う物は幾つかあります。これらを順にご紹介していきます。

その一 L/Cの必要書類から外して貰う。
そもそもL/C必要書類にリストアップされているから問題になるのです。ならばL/Cから外して貰えば問題自身が無くなる事になります。但し輸入者にしてみればC/Oが手に入らない可能性が出てきます。この作戦は輸入者との事前ネゴが欠かせないようです。

その二 L/C番号記載条件からC/Oを外してもらう。
これは「その一」ほど輸入者の抵抗は受けない気がします。実際のL/Cではこの条件となっているL/Cも見かけます。

その三 ケーブル・ネゴで了解を取り付ける。
今までの二策は何れも輸出書類を銀行に持込む前の対策です。しかし多くの場合銀行はこの状態(C/OにL/C番号無し)を、買取書類をチェックしていて気づきます。つまり遅すぎるのです。こうなったらL/C発行銀行にSWIFTを打って事前了解を取り付けます。これをケーブル・ネゴと呼んでいます。正式な手続きではないのですが、当事者間ではこれ一回限りのルール変更として認められています。(正直このパターンが一番多かったです。)

以上三つの対策をお話ししました。実はこれ以外にも、鉛筆で補記すれば良いのでは。こんな話もありました。しかしこれはいかにもいかにもの不味い話であり、検討の俎上には載せなかった事を最後に付記したいと思います。

2022/05/06

貿易と銀行実務いろは一覧

物価高騰、家計の見直しはどうする?

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Withコロナ時代、新しい生活様式の下で、2年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークへ突入します。そして夏休みに向かって、まさしくこれからリベンジ消費による日本経済の回復を期待していたところですが、日米の金融政策の違いに起因する円安基調、ロシアのウクライナ侵攻などが重なり、モノやサービスの値段が高騰しています。せっかくの消費意欲に冷や水を浴びせられたような感があります。

「値上げの春」という言葉、毎年この時期に新聞の一面を賑わせますが、今年の春ほどそれを実感したことはありません。

円安による原材料やエネルギーの高騰により、この春、値上げに踏み切った食品メーカーは実に105社、加工食品、調味料、酒類、菓子類、乳製品を中心に、約6,000品目が値上げされたと聞いて実感として頷けます。

食品、日用品、ガソリンなど、生活必需品の価格がこれほどまでに上がっては、消費者の気持ちが「消費」より「節約」へと向かってしまうのも無理はありません。

「節約」は、いつの時代も生活者にとって永遠のテーマではありますが、今回ばかりは本気モードの「節約」を考えている方が多いようです。しかし、節約の方法を間違ってしまうと、QOL(生活の質)が下がる可能性があるばかりか、その効果もあまり得られないことがあります。

節約というと、手の付けやすい、食費や日用品費などの変動費を抑えることに向かってしまう方が多いのですが、実は変動費よりも、家計に占める割合の大きい固定費の見直しに着手したほうが、節約効果は断然高いのです。

固定費とは、住宅費、水道光熱費、通信費、車の維持費、生命保険料など、毎月必ずかかる費用のことです。サブスクリプションによる契約も固定費に含めます。

固定費を削減することのメリットは、その削減効果を一定期間持続できること。ポイントは削減額が大きくなりそうなところから見直すことです。

例えば住居費、住宅ローンがある場合は、ローンの繰り上げ返済や、借り換えなどを検討してみましょう。借入額が多い、又は返済の残存期間が長いほど、少しの金利差で大きな節約効果を生み出します。

通信費では、スマホの料金プランの見直しや、通信会社の乗り換え、格安SIMの検討。そして、自分のインターネット使用状況を改めて考えてみましょう。高速でのインターネット回線がそれ程必要ない場合は、モバイルWi-Fiルーターへの切り替えを検討。そもそも自宅でのインターネット利用頻度が少ないなら、スマホのデザリング機能で事足りるかもしれません。なんとなく払い続けてしまっているのが通信費ですので、見直し、削減の余地は一番高いかもしれません。

車の維持費としては、自動車税や保険代などが固定費としてあげられます。税金を節約することはできませんが、自動車保険に関しては、見直しの余地があるかもしれません。最初の加入時の条件のまま更新をしているケースも見受けられますので、年齢要件や補償内容の見直し、また、保険料は複数の自動車保険会社で比較するなど、再考の余地があります。

生命保険や医療保険について、一人が複数の保険に加入している場合は、補償内容が重複していないか確認し、本当に今その保障が必要かも検証してみましょう。

最後に、コロナ禍のおうち時間に加入したサブスク、利用してないのにそのままになってはいませんか。

固定費といわれるものは、最初に契約したものをそのまま継続している事が多く、口座からその費用の引き落としがされている場合が多いため、支払いの実感が得にくい項目です。しかし、家計を見直すのであれば固定費から、これが最も効果的な方法です。

春は就職や転勤、子どもの就学関係に変化がある時期です。家族構成や生活環境が変わったときは、お金の流れも変わります。家計の見直しを、年1回この時期にルーティン化すると、無駄のない家計管理ができると思います。おススメの方法です。

2022/04/26
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

Terve! ウクライナ人受入れに積極的なフィンランド

ウクライナ避難民を受け入れるフィンランド

前回のコラムから1ヶ月以上が経ちますが、ロシアによるウクライナ侵攻は過度な緊張を増しており、ウクライナ人が続々と隣国へ避難しています。フィンランドもその隣国のひとつとして、ウクライナ人の受け入れを積極的に進めています。移民局によると、今年中には最大8万人の避難民者がフィンランドに入国すると推計しています。

しかし、国が異なれば言語・文化すべてが異なります。そうした背景を基に、この混沌とした情勢の中、フィンランドはどのようにウクライナ人を受けて入れていくのでしょうか。今回は、現在進行中のその様子を簡単に見ていきたいと思います。

2月24日にウクライナ侵攻が始まって以来、4月4日の時点ですでに1万5千人のウクライナ人がフィンランドでの一時的な保護を申請しています。この一時的な保護はEUの一時的な保護指令に基づいており、居住申請が登録され、その後労働許可証を取得することになります。

フィンランドには、このウクライナ侵攻が始まる以前から一定数のウクライナ人が移住しており、その家族や親戚宛に入国してくる人たちが多いです。

今まで移民・難民を受け入れてきたフィンランドですが、過去と大きく異なるのは、彼らの属性です。ウクライナからくる避難民者は、約85%が女性、40%が18才未満の子どもです。この中には高等教育(学士以上)を受けた女性たちが一定数いると推定されています。過去の受け入れですと、例えばシリア難民などは家族一家で難民してくるケースが主に多く、また基礎教育を受けていない人たちもかなりの数がいました。

それと比較すると、入国後の対応は今までのような対応とは別の形で行わなければなりません。

フィンランド移民局は早速、雇用手続きの迅速化、例えば滞在許可証の取得を1週間から10日早めるなどの対応をはじめました。滞在許可が降りた後の社会・福祉サービスをはじめ、子どもの教育支援、そして就労支援へとトータルなサポートが必要となっています。

社会福祉サービスは、緊急のヘルスケアや基本的な公共サービスは迅速に対応できますが、戦争関連のトラウマに苦しむ人々に対応できるようなサービスや専門家の不足を指摘しています。

子どもの教育支援は、18歳までの義務教育は受けられますがウクライナ人にとって「義務」とはしないことを前提としています。各地の大学などでは、本来であれば非EU加盟国であるウクライナは授業料を支払う必要がありますが、これを免除する制度に変更しています。また編入やオープン講座などにも積極的に参加できるような仕組みを整備しています。

そして一番難しいのが、就労支援です。ただでさえフィンランドの外国人労働市場があまり良くない状況のところ、早急に就労が必要なウクライナ人が入国してきたということで、雇用局をはじめとする担当機関やボランティアグループは、今までの壁を打ち破る良い機会と捉えるようにしているようです。

「Terve! フィンランドにおける外国人の労働市場は今」
https://www.rakuraku-boeki.jp/kaigai-dayori/finland-dayori/2021-10-26

雇用局は「過去の難民者とは違い、入国してくるウクライナ人は大卒の女性で幼い子どもを抱えている。この状況は育児支援の必要性や就労の観点から人身売買のリスクの高さを表している。これをフィンランドの労働市場にうまく組み込ませることを、フィンランドの全政党にコンセンサス取らせるようにしなければならない」と指摘しています。

フィンランドとウクライナは、大国ロシアを隣国に持つ者同志という根本的な部分があるからか、この侵攻が始まった時には直ちに、支援団体の結成や募金支援、緊急医療や食糧支援などさまざまな形の支援が出来上がっていたのが印象的でした。

まったく先の見通しがつかないこの情勢の中、一旦は母国を去ったウクライナ人たちが一刻も早くフィンランドでの生活に慣れてくれるよう、同じ移民として関心を持ち続け、微力ながらの支援を行っていきたいと思います。

参照記事:
https://yle.fi/news/3-12406093

写真出典元:
https://www.ts.fi/uutiset/5619803

2022/4/22

海外だより:フィンランドより一覧

不寄港証明と銀行の対応

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「不寄港証明」をご存じでしょうか。私はこのごろ聞かなくなったなあ。そんな意識でいましたが、実は今でも使われているようです。と言うのも最近こんな話を耳にしたからです。

イスラエル向けの輸出で、L/C条件で不寄港証明を要求された。そこで船会社に相談したが船会社も知らないみたい。どうしよう。そもそも不寄港証明って何のことだろう。よく分らない???こんなお話しでした。さてこんな時銀行としてはどう対応すべきか。この点を今回はお話ししたいと思います。

今回は結論から言うと「L/C条件に不寄港証明は載せない」、これを第一にアドバイスしたいと思います。過去エジプトやヨルダンを除き多くのアラブ諸国が、イスラエルと断交していました。しかし2020年9月にUAE(アラブ首長国連邦)とバーレーンが、イスラエルと国交を正常化させました。その後スーダンやモロッコとも国交正常化に合意しています。輸出者としてイスラエル、アラブ諸国双方と取引可能性があるのなら、一方に与する対応は出来れば避けたいのが本音です。なのでL/c条件に載せない。これを第一にすべきと思います。

次善の策としてはイスラエル系の船会社を利用する手があります。Zim Line(本社:イスラエル・ハイファ)などが候補になります。これらの会社であればイスラエルの輸入者もクレームしないと思います。いずれにしても銀行としてはL/C条件に不寄港証明があれば、それがないと条件不一致とせざるを得ませんし、L/C条件にないのなら条件不一致の問題は起きません。なんとも要領を得ない話ですが、実際はそんなところです。

さてここまでお話しした不寄港証明ですが、実はアラブ側からも同様に要求される可能性があります。今回のお話しはイスラエル側からの要求でしたので、次善の策としてイスラエルに本社のある船会社をご紹介しましたが、アラブ側からの要求であれば当然使うことは出来ません。その点ご注意ください。

また不寄港証明が銀行で問題となるのは日本からの輸出です。(日本サイドの輸入であれば早く正確に到着すればそれでよしです)さらにその資金決済方法がL/Cベース(一部D/P D/Aもあり)の時です。送金ベースでは銀行はノータッチとなります。

最後になりましたが不寄港証明のひな形とその訳文をつけておきます。
ひな形
IN VIEW OF DANGER OF CONFISCATION, WARRANTED VESSEL NOT TO CALL AT PORTS AND NOT TO ENTER THE TERRITORIAL WATERS OF ANY ARAB COUNTRIES BELLIGERENT TO THE STATE OF ISRAEL AND/OR ACTIVELY SUPPORTING THE ARAB BOYCOTT, PRIOR TO UNLOADING AT PORT OF DESTINATION UNLESS IN DISTRESS OR SUBJECT TO FORCE MAJEURE

訳文(試訳)
没収の危険性を鑑みて、認められた船(本船)は目的地の港で(積み荷を)降ろす前は、海難又は不可抗力の対象にならない限り、イスラエル国に対し交戦中の或いはアラブボイコットを積極的に支援するアラブ諸国への寄港もしないし領海にも立ち入らない。

参考サイト:JETRO(本文とは異なりアラブ側からの要求によるものです)
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010811.html

2022/04/19

貿易と銀行実務いろは一覧

輸出入通関現場からみた上海ロックダウン

ロックダウン中の上海

「世界最大のコンテナ取扱量がある上海港の機能低下は深刻(中略)上海港の取扱量は通常より40%減少しているとの試算」と2022年4月9日、読売新聞朝刊は報じました。

筆者が通関士として勤める輸入の通関現場では、これまで上海港からの輸入貨物は、貨物を積んだ船が予定より2~3日程度遅れ日本の港へ到着するというような傾向であったのが、4月2週目後半以降に中国から日本へ到着する貨物あたりから、いつもの輸入者のいつもの輸入貨物が上海港ではなく寧波(Ningbo)港から積まれてくるようになり、取扱件数も40%どころか、それ以上減少しています。

中国から原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品におよび輸入し難くなっており、日本から中国への輸出においても、日本で通関、輸出し、上海港まで着いたものの、そこから先どうなるか分からない状況です。

更には2022年1月1日より発効したRCEP(中国はじめ東南アジア諸国等14ヵ国との自由貿易協定)の「原産地証明書」発給も受けられず、原産地証明書なしの輸入申告という現象も生じています。特にRCEPにおいては、中国からの輸入品に関し4月1日より僅かながらも2段階目の関税引下げが行なわれたばかりで、早速その恩恵が受けられなくなってしまっています。

更に円安傾向も手伝い、日本にとって一番の貿易相手国である中国からの輸入品を安く仕入れることができなくなっています。そのことは一部のものにおいて値上がりが続出している昨今、更なる値上がりを引き起こす要因にもなり、まだ値上げをしていない物にまで値上がりを広げることにもなりかねません。

このままでは、一部のもので値上がり続出の日本では、物価を下げる要素が見つかりません。そしてこれらの動向は、日本のくらし、経済に大きなダメージを与えることは間違いありません。中国と貿易している他の国でも同様のことが言えます。ロックダウンしている上海港の機能低下を補うため、上海港に代わって、寧波等他の港や空港から輸出するような傾向がみられますが、その寧波等他の(空)港でも、コロナ感染者が出て増加すれば、いつどうなるか分からない状況です。

国際物流は、工場等から(空)港への、あるいは(空)港から目的地までの運搬、(空)港での荷役(船・航空機、コンテナ、トラックから、あるいは船・航空機、コンテナ、トラックへの貨物の積み下ろし)、(空)港施設での貨物の出し入れ、保管、梱包、通関、そして搬出入や在庫管理、伝票発行の事務処理など、どこが欠けても成り立ちません。

例えば通関業者や港の施設等が機能していて通関、荷役や保管などができても、コンテナを運ぶ運送会社が全て閉鎖されていたら物流はストップします。中国でのコロナ感染が収束するか、あるいは中国の「ゼロコロナ」政策が大きく方向転換されない限り、国際物流の不安定は続くことになります。しかし現状では、どちらも期待できません。そうであれば、すでに早い段階で対策している企業もありますが、中国と貿易を行なっている日本の企業が、輸入しようとするときに中国ではない他の国で調達先を探し、前述の原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品について1日でも早く物流の大幅な見直しをしなければなりません。

その見直しができるかできないかで、日本での生産・製造停止、更には業績悪化、ひどい場合は倒産、そしてますますの物価上昇、私たちのくらしにも大きな影響を与えるか否か決まってきます。

それほど、中国という国が、日本にとって、世界にとって、いまや強大な力を持つ、そして大きな影響を与える大国のひとつとなったということに改めて気付かされずにはいられません。

2022/04/13
くらしと貿易と通関と
Kyō

輸出入と「食の安全」

輸入食品の代表バナナ

輸入した食品を食べたら、病気になってしまったり、ときに命を落としてしまうことになったとしたらどうでしょう?それは誰が考えても嫌ですよね。だから、食品を外国から輸入しようとするとき、なんでもかんでも輸入できるわけではありません。

病気、ましてや命を落とすようなことにならないために、日本では輸入する食品を「食品衛生法」で規制し、出張所を含め各港や空港110ヶ所に検疫所を置き、目を光らせています。

規制の対象は、全ての飲食物、それらに使われる添加物、包装や容器、コップや箸などの器具、乳幼児向けのおもちゃです。これらを輸入するときには、それぞれのものに各々定めた有害物質(鉛やヒ素など)が、定めた試験法によりどのくらい溶け出すのか、どのくらい含まれるのか、溶け出した量などが基準値以下であることを証明する「試験成績書」等を提出のうえ、税関への輸入申告前あるいは輸入申告と同時進行で「食品等輸入届出(略称:食品届)」を検疫所へ行なう必要があります。検疫所は審査、場合によっては検査をし、問題ないと判断すれば「食品等輸入届出済証」を発行します。

本来なら食品届は輸入申告前に行ない、済証が発行されてから輸入申告を行なうのがベストです。というのは、検疫所の審査、検査の結果、有害物質が基準値を超えているということになると、済証は発行されないばかりか輸入できません。税関へ輸入申告してしまっていると、済証が発行されないので税関は輸入を許可せず、その申告は無駄になってしまうからです。

更に「食品届」を行なう前に、穀類、豆類、果物野菜などは病害虫の侵入を防ぐため「植物防疫法」という規制、肉や肉製品は伝染病侵入を防ぐため「家畜伝染病予防法」という規制があり、それぞれ植物防疫所、動物検疫所により審査、検査を受ける必要があります。病害虫、伝染病が発見されれば輸入できません。

こうして輸入に頼らざるを得ない島国・日本の食の安全は守られています。

一方、日本から外国へ食品を輸出しようとするときはどうでしょう。

「食品衛生法」による規制、加えて他の規制もなく税関へ輸出申告することができます。問題は、輸出先である相手国の規制です。日本が輸入するときに「食品衛生法」のような規制を設けているように、相手国でも外国から輸入するときには規制をかけ、食の安全を守っています。

輸出先相手国の規制に基づく求めに応じて、「輸出検疫証明書」、「産地証明書」、「放射性物質検査証明書」などが、輸出先相手国での輸入通関時に必要になります。どんな「証明書」が必要になるかは、相手国や輸出するものによりまちまちです。事前に何が必要か貿易相手等に確認しておかなければなりません。必要な「証明書」が分かったら「地方農政局」等(申請先も事前に調べておく必要あり)へ申請し「証明書」の発行を受け、税関へ提出・提示する必要はありませんが、日本での輸出通関前に用意しておく必要があります。

2011年3月11日の東日本大震災で起きた原発事故により、55の国・地域が、日本から輸出される食品に対し禁輸(輸入禁止)や輸入規制を設けました。およそ11年が経過した2022年2月21日、ようやく近隣国・台湾が福島をはじめ栃木、群馬、茨城、千葉5県の生産・加工食品の禁輸を解除しましたが、韓国、中国、香港、マカオの4ヵ国・地域が禁輸措置、インドネシア、EUなど9ヵ国・地域が条件付き限定規制をいまだに設けています。

11年経っても13の国・地域が禁輸あるいは輸入規制をかけているんです。これらの国・地域へ食品を輸出しようとするときは、「産地証明書」や「放射性物質検査証明書」が必要になります。禁輸といっても、日本の全食品が対象ではなく産地や品目によっては、これら「証明書」があれば輸出が可能です。

日本の食文化のひとつ、日本酒の輸出が好調で伸びています。1日もはやく、日本の「食の安全」が諸外国で認められ、これぞMADE IN JAPANという食品、食文化が世界へ向け発信され広まることを望むばかりです。

2022/04/09
くらしと貿易と通関と
Kyō

トルコではゴミを分別しないって本当?

トルコのゴミは分別しない

トルコでは、区や市、町や村といった行政単位でごみ処理をしています。多くの町では、ゴミを捨てるためのコンテナがあちらこちらに置いてあり、自分の好きな時にコンテナに捨てることができます。

イスタンブールのような都市部では、ゴミ処理車が回ってくる前の時間帯に道路にゴミを出しておくこともできます。実は、コンテナに捨てる際にも、道路にゴミを出す際にも、分別して捨てるという意識がトルコではまだほとんどありません。

ただ、ペットボトルや紙などは、集めて持っていくと買ってもらえる場所があるので、行政が設置しているコンテナから、売れる再生可能なゴミを集めて暮らしている人たちもいます。彼らのおかげで、一部分別してもらえていると言えなくもないかもしれませんが、十分とは言えないようです。

トルコ統計局の発表によると、2020年に行政単位で処理したゴミは、3,230万トンありました。このうち69.4%が埋め立て施設に埋められ、17%が行政の持つゴミ集積所に送られました。13.2%が再生工場で処理され、プラスチックや再生紙の原料として使われています。

13.2%しか使われていないにもかかわらず、再生処理された製品の売上高は年間50億ドルを超えています。また、再生紙を生産する際に使うエネルギーは新しく紙を生産するために必要なエネルギーの6割ですむといった数字も上げられ、経済面からも、環境のためにも、分別を進めていく必要があると言われ始めています。

トルコで使われている衣類回収ボックス

(写真は衣料品など専用の回収ボックス)

行政も分別を進めるための取り組みを行っています。ある程度の紙が出る事業所や学校などが依頼すれば、紙ごみ専用の段ボールでできたごみ箱を設置してもらって、いっぱいになった時に連絡をすると回収してもらえるというシステムができてきました。また、コンテナほどの数はないものの、町のあちらこちらに衣料品や本などを集めるボックスが別々に設置され、不要になったものをごみとして捨てるのではなく、再利用してもらえるようになっています。

トルコ最大の都市であり、1,500万を超える人が住むイスタンブールでは、毎日1万9千トンのゴミを処理していると言います。ゴミ処理場でまず、有機物と包装材に分別され、有機物は、発酵させてたい肥となります。毎日千トンほどがこの有機物で、年間18,500トンの肥料となり、イスタンブール市が管理する公園や緑地帯などで使用されています。

トルコのゴミ処理工場

(画像出典元:下記参照)

また、イスタンブール市内の食堂、学食、ケータリング会社などから出る残飯を集めて処理する際に出るメタンガスを電力にかえるというプロジェクトも進んでいます。

トルコで暮らしていると分別をしないことに慣れてしまいつつも、分別をしなくても良いのだろうかと良心の痛みのようなものを感じることがあります。でも、ゴミを使って様々なことをするプロジェクトが進んでいるのを見ると、少し安心できます。

画像出典元:
https://interaktif.trthaber.com/2018/geri-donusum/ibb-atik.php

参考サイト:トルコ統計局のゴミに関する統計(2020)
https://data.tuik.gov.tr/Bulten/Index?p=Atik-Istatistikleri-2020-37198#:~:text=Olu%C5%9Fan%20at%C4%B1k%20miktar%C4%B1%20104%2C8,8%20milyon%20ton%20at%C4%B1k%20olu%C5%9Ftu.

その他参考サイト:
https://www.trthaber.com/haber/turkiye/turkiyede-yillik-atik-miktari-32-milyon-tona-ulasti-563856.html

2022/04/06
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住

苦しいときの海外僚店頼み

イギリスの銀行

私の勤務していた銀行では海外に多くの拠点を持っていました。ふつうそれら海外店は海外店独自で営業活動をしています。国内で全世界を相手に業務をしている我々であっても、海外店となると直接の接点は殆ど無い状態でした。

かろうじて接点らしきものを振り返って見ると、海外店に直接口座を持つ先に対しての送金やL/C開設。この程度の取引しか思いつきません。要はたまたま相手銀行が海外の僚店だったと言うわけです。

しかし長い外為経験の中には本当に助けられたことがあります。通常の事故・トラブルは相手銀行との電信・電話やメールで、何とでも解決できるのですが、それではどうしようもないことが、やはり生じてくることがあります。今回はそれについてお話しをしてみたいと思います。

お話しの舞台はロンドン(英国)です。日本からロンドンのL/C開設銀行に買取書類を送った時のことです。買取書類の中に買取銀行(当行)の署名付文書が必要でした。銀行作成の文書そのものは添付して送ったのですが、署名はカバーレター(買取書類一枚目に付ける送付状です)にあるので、その文書には不要だろうとサイン無しで送ってしまったのです。

ところがこの文書は通関時に税関に提出が必要な書類でした。税関では署名が無いものは受け付けてくれません。通常であれば至急署名付の文書を後送すれば事足ります。ところが貨物の中身が生鮮食品だったので、日本から追送したのでは間に合わないことが判明しました。いくら冷蔵コンテナでも鮮度が落ちれば価値が下がってしまいます。

そこで次善の策としてこちらからSIWFTを打つので、それを添付しては駄目かとL/C発行銀行に交渉して貰いました。しかし税関の反応は「SWIFTって何?」「そんなもん。駄目!」ととりつく島もありません。困り果てたときにふと思い出したのが、僚店のロンドン支店のことです。海外店は少人数で繰り回しているので、直接関係の無い頼み事は、御法度に近いのですが、幸いロンドン支店には同期がいました。

ここで私は腹を決めました。同期のよしみで拝み倒すしかない!L/C発行銀行に出向いて貰い書類にサインして貰おう!こう決めて内線電話に飛びついたのです。幸い同期は既に出社しており事情を説明すると、話の趣旨は分ったがその方法で税関がウンというのか、確認してみないと何とも言えないというのです。そこでやむなく交渉を任せて一旦電話を切りました。

時差の関係でこちらはもう終業時間はとうに過ぎていますが、電話機を睨んでじっと待つこと小一時間。(この時間は今思い出しても本当に長かったです)やがてロンドンから電話が掛ってきました。彼が言うところではL/C発行銀行にコンタクトして、応諾を取り付けると早速出向いてサインをしてきたとのことでした。

これは本当に助かりました。今から思えば超法規的措置ですが。丁寧に丁寧に、何度も何度も、彼にお礼を言って受話器を置きました。その後のことは良く憶えていないのですが、腰が抜けてしまってしばらく立つことが出来ませんでした。以上、海外僚店に助けて貰ったという、いささか情けないお話しでした。

2022/04/02

貿易と銀行実務いろは一覧

会社員の副業と税はどうなってる?

副業の所得税と住民税

コロナ禍は私たちの生活を一変させ、新たな価値観を生み出したように思います。その中のひとつが働き方の多様性ではないでしょうか。多くの方がリモートワークを経験し、オンラインでも会議が可能であることを知り、出社せずとも仕事ができることを体感したと思います。

このような状況下で、副業を始めた、または始めたいと考えている会社員が増えているそうです。パーソナル総合研究所の調査(*)によると副業に意欲的である正社員の割合が40%を超えていることがわかっています。

そこで、今回は会社員の副業と税をテーマにしてみました。

今はネット環境があれば、スキマ時間で誰でも比較的簡単に収入を得られるようになりました。フリマアプリやアフィリエイトからの収入、YouTubeの収益、執筆原稿料など、収入源となるツールは多種多様です。会社員がこのような形態で収入を得る場合も広義では副業にあたります。

所得税法上、所得は10の種類に区分されています。会社から支給される給料は「給与所得」に該当し、会社員が副業で得た収入は多くの場合、「雑所得」に区分されます。

【10の所得区分】
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

給与所得者である会社員の所得税と住民税は、会社が手続きを行っているため、自ら納税手続きをすることはほぼありません。

所得税は、会社が源泉徴収により予め給与から天引きし、年末調整にて徴収額の過不足を整理します。住民税は前年の所得に課税される仕組みで、年末調整後に会社が発行する「給与支払報告書」により市区町村が住民税額を決定します。このような形で、会社員の場合は、給与から天引きで所得税、住民税を払っています。

一方、源泉徴収のない副業収入は、納税の必要があれば自分で確定申告をします。具体的には、副業の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。なお、年間とは、毎年1月1日~12月31日までの期間をいい、20万円は「収入額」ではなく「所得額」です。所得とは、収入から必要経費を引いた金額となります。

つまり、会社員の方は、年末調整により一旦課税関係が終了していても、副業の所得が年間20万円以上あった場合は、確定申告をして所得税の支払いが必要になるわけです。この所謂「20万円ルール」は、副業ワーカーであればご存じの方も多いと思いますが、意外に盲点となっているのは住民税についてです。

確かに副業の所得が20万円以下なら、確定申告不要、つまり所得税はかからないわけですが、これはあくまで所得税のみに適用される規定です。住民税に「20万円ルール」の適用はなく、給与所得以外に副業などの所得がある場合は、その多寡にかかわらず、住民税の申告が必要になります。住民税の申告書は、居住地の市区町村窓口に提出します。

この場合の住民税の支払い方法は2つ。「特別徴収」と「普通徴収」のどちらかを選択します。「特別徴収」は会社の給与から天引き、「普通徴収」は納付書による支払いとなります。

なお、確定申告をする場合には、その情報が自動的に市区町村へ共有されますので、住民税だけを別途申告する必要はありません。

働き方の多様性、将来へのリスクヘッジの観点から、今後、副業や兼業など、収入源を複数確保するという働き方が増えるのではないでしょうか。副業収入に関しての税金の知識を備えておけば、副業を始めるハードルも下がるかもしれません。

今回は、副業の所得税、住民税をテーマにお話しました。税金の種類は国税、地方税、合わせて50種類もあるそうです。通関士時代の私は、税といえば「関税」「酒税」「消費税」の3本立て。「所得税」や「住民税」は給与から天引きされるものという認識しかなかった為、仕組みを考えたことすら無かったかもしれません。
現在の私は複業(あえて複と書きます)ワーカーです。自分事として改めて税について考えています。

今後も税のお話は、折を見て取り上げていきたいと考えています。

(*)参照サイト:パーソナル総合研究所、副業に関する調査結果(個人編)を発表
https://rc.persol-group.co.jp/news/202108131000.html

2022/03/26
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

「RCEP」コロナへの経済ワクチンになるか?!

地域的な包括的経済連携、RCEP

2022年1月1日午前0時。日本にとって20番目、最大、最強、最得のヒト・モノ・カネ・情報の流れを生み出す可能性を秘めた他国との協定スタート!その協定の名はThe Regional Comprehensive Economic Partnership(地域的な包括的経済連携)、その頭文字をとって「RCEP」。
 
まずは中国、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ブルネイ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドと日本の10ヵ国が、同年2月1日からは韓国が、3月18日からはマレーシアが、その後インドネシア、フィリピン、ミャンマー3カ国が参加、全15ヵ国の経済のつながりです。
 
これら15ヵ国の経済圏は、全世界の人口、GDP(国内総生産)、貿易総額(輸出)の約3割の規模です。日本の輸出貿易額の約4割、輸入貿易額の約5割が、他14ヵ国との貿易で成り立っています。ましてや、アメリカを抜き2007年から最大の貿易相手国となった中国、意外にも長い間3番目の貿易相手国をキープしている韓国との初めての経済協定です。それだけ、日本がRCEPの参加国の一員となったことは、日本の貿易、経済、くらしに良い方向で大きな影響を与えることになるでしょう。
 
参加国間では、すぐにも関税をなくすか、あるいは関税率を少しずつ下げ、最長でも21年目に関税をなくすことになります。但し、全てのモノに対し無条件に関税をなくすということではありません。各国とも関税をなくすと、なくしたモノに関しては輸入が増え、安価な為に、その国で作られ売られている同様のモノは売れなくなり、メーカーや販売の会社、個人にとっては、経営、生活が成り立たなくなることにもなりかねません。

そうした事態を避けるため、そうなっては困る一部のモノに関しては、関税をなくす品目から各国交渉して除外します。日本では、米、麦、牛・豚肉、乳製品、さとうきびなどの甘味資源作物の輸入5品目を除外していて、中国からの輸入品に関しては鶏肉加工品、たまねぎ、冷凍ブロッコリーなどの野菜等も除外しています。
 
日本の関税撤廃率(全品目に対する関税をなくす品目の割合)は、輸出83~100%、輸入81~88%です。つまり日本から輸出するモノには関税がなくなるか、かかりにくくなり、日本へ輸入するモノには一部関税をかけ続けられ、日本に有利で日本が最も得をする内容になっています。
 
関税が10%かかる1個1万円のモノを100個、全100万円で輸入するとします。その時、関税は10万円、1個あたり千円となり、輸入通関後、国内の販売価格は、当然、関税10万円を含め上乗せされた価格になります。つまり単純には、私たち消費者は、そのモノを1個買うと関税分千円を支払っているわけです。しかし、そのモノの関税が0になったらどうでしょう。輸入者は10%オフで輸入することができ、私たち消費者も1個買うのに、少なくとも千円安く買うことができます。
 
昨今、牛丼、小麦粉、パン、ジャム、醤油、チーズなどの乳製品、マヨネーズ、ドレッシング、ティッシュペーパーなどなど、値上げをメーカー等々が次々発表しています。
 
その中の一つ、牛丼を例にあげると、材料の牛肉を、日本は輸入に頼っていながらも関税削減・撤廃品から除外しています。更にコロナ感染が原因となり、輸入相手国では生産工場や運送会社の稼働低下、働き手、運転手がいない、少ないことによる品薄、物流ストップなどが起き、追い打ちをかけ、牛肉の値上がりを招いています。
 
こうした新型コロナがもたらした、一部のモノの値上がり、経済の停滞・不調に対して、関税削減・撤廃をもとに「RCEP」が、経済ワクチンとして、どれだけ多くのモノにわたり輸入品の価格を下げ、更には貿易、経済を活発、元気にできるのか、その効果に乞うご期待!!

2022/03/21
くらしと貿易と通関と
Kyō

「ロシア向け支払い」を考える

ロシアのルーブル

日々目を離せないウクライナ情勢。西側諸国の経済制裁の一環で3/12(土)から、幾つかのロシアの銀行がSWIFTシステムから排除されました。また多くの国際決済システムがロシアとの取引を停止しています。

この様な状況下でロシアへの支払が可能な方法はないのか。今回はこの点を少しだけ考えてみたいと思います。但し今は外為現場から離れているので、経験者としてこれならOKでは?こんなことを皆さんにお知らせ出来ればと思っています。

1.銀行経由の海外送金
日本国内での日本円取引は、日本銀行が中央銀行として資金決済の仲立ちをしてくれます。しかし海外との取引にはこんな便利な銀行は存在しません。(世界銀行と呼ばれる組織体もありますが決済機能はありません)そこで米ドルであれば米国(特にニューヨーク)所在の銀行や、ユーロであればフランスやドイツの大手銀行に仲立ちを頼むのですが、今は米国・EU共に一致協力してロシアに制裁を課しているので、ロシアへの仲立ちは到底期待できません。

つまり米ドルやユーロは決済通貨として使えない事になります。とすればロシアルーブルか日本円による送金となります。しかも直接ロシアの銀行の口座に資金を入れなければなりません。他国を経由するとそこで資金が凍結される可能性が大いにあります。

そこで出来そうな方法は、日本の銀行がロシアの銀行に持っているロシアルーブルの口座、或いはロシアの銀行が日本の銀行に持っている日本円の口座。これらの口座に直接入金する。これなら未だ資金決済可能と思います。但しこの場合。銀行は口座の存在を公表してませんので、取引銀行に個別にその有無を確認する必要があります。

一つの可能性として3メガバンクであれば、3行共にロシアに現法を持っていますので、本支店間であれば何らかの資金決済をしているはずです。もしニューヨークやEU諸国を経由してないのなら、今でもこのルートでの決済は可能かもしれません。

2.銀行以外の国際決済システム
銀行以外ではどうでしょうか。Paypalは既にロシア向けは停止。このような報道がなされています。英国ワイズ(旧トランスファーワイズ)もやはり停止です。ウェスタンユニオンは3/21(月)までなら取組可能との情報がありました。

但しウェスタンユニオンの日本語HPでは確認できなかったので、もし送金をお考えならば取扱店舗での確認を強くお勧めします。(取扱店舗は同社日本語HPで検索が可能です)

3.いわゆる暗号資産
全く知見がないのでウッカリしたことが言えないのですが、暗号資産ならば可能かもしれません。ただ取引所が取引に応じなければ、この方法も無理と言えます。

以上幾つかお話ししましたがこれらの方法の中では、可能であるならば取引銀行に相談して日本円かロシアルーブルで、送金を取り組むのが順当な気がします。ただ資金の授受は直接相手銀行口座に入金する必要がありますので、取引銀行にそもそも可能かどうかを確認せねばなりません。

当局が難色を示す場合は、銀行に腰を引かれる可能性もあります。それでも前回の本欄に記述しましたが、JT(日本たばこ産業)が国内システムを利用して決済を続けている。こういう報道がありますので、何らかの方法があるのではと思います。

参考サイト:ロイター、訂正(会社側の申し出)- JT、ロシアの資金決済は国内システム利用SWIFT通さず
https://jp.reuters.com/article/jt-swift-russia-idJPKBN2L00J5

2022/03/17

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! 大国の脅威にさらされる隣国フィンランド

ウクライナを支援するフィンランド

2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻がはじまりました。ロシアの矛先はウクライナですが、国境を接し陸続きの隣国フィンランドの状況、国民の心情はどうでしょうか。今回は、世界が混沌としている中のフィンランドの今をお伝えします。

フィンランドは1917年にロシアから独立して今年で105年になります。その間冷戦やフィンランドのEU加盟などの際には、常にロシアに対してしたたかな姿勢で外交政策を取ってきました。

第二次世界大戦後に設立されたNATO軍事同盟には、反対側の隣国スウェーデンと共に非加盟国として存在していました。

しかし今回のウクライナ侵攻で、フィンランド国民へ世論調査を実施したところ、5割がNATO加盟に賛成していました。

実はこの侵攻以前からNATO加盟への気運は高まっていて、加盟申請に対する国民投票を求める署名運動が展開されていました。その結果、国会審議で必要な5万票を集め、国会へ申請することになりました。

こうしたウクライナ侵攻をきっかけに国民の心情の変化は、さまざまな形で顕著になってきました。

一つは、侵攻への抗議デモが毎週末フィンランド各地で行われています。

他にはウクライナの原発発電所区域が爆撃された翌日からは、フィンランド国内における放射線量の測定や、甲状腺保護のためにヨウ素剤の服用への懸念などが高まってきました。今のところこのような必要は全くありませんが、日本人が災害に備えるのと同じように、ここフィンランドでも有事における備えの一つとして象徴されています。

また以前このコラムでも紹介した核シェルターの利用も懸念されています。もちろんこちらも今のところ利用の懸念は一切ありませんが、一般市民としてはどこにあるのか、もし何かあった際には本当に利用できるのか、といった「備えあれば憂いなし」の雰囲気が広がっています。

「Terve! フィンランドの核シェルター人口の7割をカバー」
https://www.rakuraku-boeki.jp/kaigai-dayori/finland-dayori/2017-06-02

こうした国民の懸念を知ってか、フィンランド大統領は「国際社会が変化の真っ只中にいるとき、私たちは冷静さを保たなければならない」と話しています。

大統領にとっても、この10年間でロシアと幾度も話し合いを重ねてきましたが、やはり他国のあり方、そしてそれを統治する人間の心を理解するのは非常に難しいと述べています。

歴史的に支配されていたフィンランドは独立し、今までうまく外交政策を取ってきた背景から、フィンランドはロシアについてより理解がある国、と思われてきた部分があるのかもしれませんが、大統領のこの発言によれば、それは誤解であることがわかります。

フィンランドとロシアの関係は大きく揺らぎ、今までのような関係に戻るには、ロシアが大変革しなければならないという報道もあります。

ウクライナ侵攻から2週間が過ぎましたが、事態は悪化するばかりで、フィンランドの立場や役割も今までと大きく変わりつつあります。

次のコラムを執筆する時には、事態が落ち着いていることを切に願うばかりです。

参考記事:
署名活動について
https://yle.fi/news/3-12335563

国民世論調査について
https://yle.fi/news/3-12337202

ヨウ素剤について
https://yle.fi/news/3-12339880

ロシアとフィンランドの関係変化について
https://yle.fi/news/3-12336199

大統領ステートメント
https://www.presidentti.fi/tiedote/tasavallan-presidentin-lausunto-kun-muutos-on-rajua-paan-on-pysyttava-kylmana/

写真出典元:
https://de.dreamstime.com/helsinki-finland-demonstration-against-russian-aggression-ukraine-february-26-2022-detail4966

2022/3/11

海外だより:フィンランドより一覧

外為では「SWIFT」をどう使っているのか

SWIFT

今回は昨今何かと話題の「SWIFT」(スイフト)についてです。外為の現場目線での「SWIFT」への思いを、その前史を含めて幾つかお話ししたいと思います。

本論に入る前に一点確認しておきたい点があります。皆さんは今回のロシアの銀行の「SWIFT」システムからの排除。この報道を聞いてどう思われますか。「SWIFT」から排除されると海外との資金決済が出来なくなる。多くの報道の論調がこうなっています。確かにこれは間違いではありません。が、少しはしょった形です。

実は「SWIFT」自身に資金決済機能はありません。あくまでも資金決済の銀行間通信を担っているだけです。つまり銀行は受信したSWIFT電文に従って、コルレス銀行やCHIPS(チップス)、預け金・預かり金を通じて決済します。その点を押さえた上で報道に接するようにして下さい。さて本題です。

1.TELEX(テレックス)の時代(「SWIFT」前史)
「SWIFT」以前の外為での通信手段は主にTELEX(テレックス)でした。(以下TLX.と略します)TLX.は今考えても使い勝手は良くありませんでした。本当に。送信相手に即つながる。即通信出来る。こうなってくれないのです。国によっては待時(たいじ)コールと呼ばれるシステムがありました。その国と通信したいときはKDD(今のKDDI)に通信申込をします。

その後一旦回線を切って相手国からの返事を待ちます。回線が通じた!との知らせが入ると、やおら通信の開始です。こんな待ち時間付なので、この方法は待時コールと呼ばれていました。(今渦中の大国の前身が代表的な待時コール先でした)またTLX.は通信時間が長くなると通話料がドンドンかさむので、出来るだけ短時間で済むような技術も要求されました。なので新システム(SWIFTのことです)の登場に思わず万歳でした。

2.「SWIFT」は安定的且つ早い
「SWIFT」は限られた参加者によるデータのやり取りのせいか、送受信に特段の問題や心配はありません。更にその送受信スピードは目を見張るものがあり、15分ぐらいで到着しているものもありTLX.時代と隔世の感があります。

3.「SWIFT」は相手のなりすましを気にしなくて良い
「SWIFT」にはSWIFTアドレスと呼ばれる端末番号があります。このアドレスは受信電文に必ず出てきますので、どこから来たものか一目瞭然です。「SWIFT」は限られた金融機関等しか参加できません。正体不明のなりすましは排除される仕組みとなっています。(但し現実にはハッキングされたこともあります)

4.「SWIFT」は簡単なフォームでやり取りできる
これも大きな進歩でした。TLX.では言語制限はないので、英語以外の言語も入ってきます。フランス語、スペイン語ぐらいは、何とかなるのですが、それ以外になるとお手上げです。先ず何語なのか?そこから始めて皆で大騒ぎです。SWIFTはフォーマットが英語で決まっているので、必要な事項(金額、日付、銀行名etc.)を入れるだけです。誰でも電文を簡単に解読できる優れものです。

5.「SWIFT」は自行のシステムとつながっている
受信データはそのまま自行のシステムに接続が可能です。例えば被仕向送金(海外からの送金)なら、マネロン上問題の無ければ入金手前の段階まで自動処理され、朝一番にスタンバイして担当者の出社を待ってくれてます。米国年金などはUSDから日本円に交換し入金まで済んでしまいます。これはものすごい進歩です。

如何でしょうか、このようにSWIFTは非常に有益なシステムです。今回の制裁はそれの利用制限ですから、絶大な効果があると言えます。以上今回はSWIFTついてでした。

追記
JT(日本たばこ産業)が、ロシア宛支払にSWIFT制限は影響しない。こういう報道がなされていました。恐らくこれは国内にあるロシア取引先の非居住者円預金に、日本円で支払をするものと推測します。これならばSWIFTは関係ありません。念のため申し添えます。

用語ページ:SWIFT
https://www.rakuraku-boeki.jp/word/s131

2022/03/07

貿易と銀行実務いろは一覧

貿易のクロコ

横浜税関クイーンの塔と横浜港

前回のコラムで「通関」という言葉、そしてその意味、知ってもらえたでしょうか?

「通関」:税「関」へ物を「通」す手続き、税関へ輸出や輸入の申告ができるのは、日本から海外へ物を出す(売る)、または海外から日本へ物を入れる(買う)当事者、つまり輸出者または輸入者である個人や法人(会社)です。

それと、輸出者または輸入者である個人や法人から代理申告を委ねられた通関業者に勤める「通関士」です。

輸出入者である個人が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「個人通関」といい、輸出入者である法人(会社)が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「自社通関」といいます。

輸出入の当事者自らが税関へ申告(申告書作成)できるのであれば、「通関業者」という代理人を立てることなく、通関手続きを行なうことは全く問題ありません。

ときに「通関業者」に勤める人、あるいは通関士であっても、税関へ輸出入申告できるのは「通関業者(通関士)」だけと思いこんでいる人がいますが、それは違います。以前勤めていた名の知られている通関業者の営業所長は、「嘘だろう!」と驚き、その事を知らないばかりか疑っていました。こちらの方が大いに驚きました。

では何故、輸出入者である個人、特に法人(会社)が、直接、税関へ輸出入申告しないのでしょうか?あるいはできないのでしょうか?

それは、税関へ提出する輸出入申告書に記入しなければならない「品目番号」(輸出・輸入する物をコード化したもの、その上6桁はHSコードという)を決めるための知識や技術、輸出入を規制する関税法をはじめとする数々の法令知識などを備えていないからです。

それから、輸出入しようとする物は、コンテナヤードなどの「保税地域」という場所に入れなければならないのですが、その「保税地域」への物の出し入れなどにかかる方法や手続きを知らない、トラックなどの運搬手段を持たないからです。

そこで輸出入者は、専門の知識、技術、手段などを持つ通関業者へ輸出入申告の代理を委ねることになります。そして委ねられた通関業者で税関への輸出入申告を行なうのが、その通関業者に勤める通関士です。

「通関士」とは、通関士試験に合格し、通関業者に勤め、その通関業者が税関へ申請し、通関業務の経験や資質などから通関士の職に就けても問題ないと税関から確認を受けた者をいいます。通関士試験に合格しただけでは「通関士」と名乗ることはできず、名刺などに「通関士」と記載もできません。「通関士有資格者」とすべきです。

全ての物を自給自足することができない島国・日本で、くらしに不可欠なモノは物流、ひいては国際物流に支えられ、今、そこに、あなたのそばにあります。

野菜や果物、飲料水、靴や衣服、洗剤などの生活必需品、プレハブ住宅、家具やインテリア、家電、自動車などなど、いろいろな物が輸入、輸出され、くらしが成り立っています。

その輸入や輸出には、必ず「通関」が行なわれています。

例えば千種類の違う商品を1回で輸入するのなら、通関士は各商品への輸入規制はあるか、規制のもとで輸入できる条件を満たしているか確認、更にひとつひとつの商品をコード化、つまり千の「品目番号」を探し充てがい、輸入申告書を作成します。

普通に作っていたら、たった1件の申告書なのに半日~1日がかりの大仕事です。しかし、そんなに時間をかけられないのが現実です。他にも申告すべきものが山ほどあるからです。

「通関」という言葉と同じく、広く人に知られることなく、表舞台に立つこともなく、コツコツと地道に、時間に追われながらも1件1件の申告書を作り、貿易の主役である輸出入者に代わり税関へ輸出入申告を行なっているのが、貿易のクロコ「通関士」です。

あなたが今調理に使っているイタリア産のオリーブオイル、あなたが今着ている中国産のシャツ。知って下さい、それはどこかの誰か、貿易のクロコ「通関士」が通関したモノに他ならないことを。

2022/03/01
くらしと貿易と通関と
Kyō

今さら聞けない!?リボ払いの仕組み

pic_fpmototsuukanshi1_20220224

今回は少しFPらしいお話をしたいと思います。

今やほとんどの決済がキャッシュレスで可能となり、実際に現金に触れる機会が極端に少なくなりました。先日、ある情報番組で、今の小学生(低学年)にはおつりの概念がないらしいという話をしていました。確かに給料は銀行振込、支払いはクレジットカードやスマホで完結しますので、納得できるところもあります。

キャッシュレスには利便性を感じる反面、お金の実態が見えないだけに、子どものみならず大人も改めて考えてみる必要があると感じました。

スマホ決済やクレジットカード決済は、支払いが後払いという気安さもあり、ついつい使いすぎてしまい後々請求額を見て真っ青になった、という経験をしたことはありませんか。請求額が思いがけず多額となった時に、カード会社のサイトからリボ払いを勧められることがあります。そこで、キャッシュレス時代の今だからこそもう一度リボ払いの仕組みについて整理してみましょう。

そもそもリボ払いとは?
リボルビング払いの略称で、決済金額にかかわらず、毎月の返済額を平準化する返済方法です。返済金額は自分のお財布事情に応じて設定できますので、表面的には使いやすい返済方法として知られています。

しかし、本体代金に対して利息が発生する通常のクレジットの分割払いに対し、リボ払いは前月末の残高に対して利息が発生する仕組みです。

では、リボ払いの利息を具体的な例でシミュレーションしてみましょう。

(具体例)
Sさんは、4月に20万円で家電を購入し、5月には旅行費用として10万円を支払いました。決済にはクレジットカードを使用し、返済額は毎月2万円のリボ払い、5月から返済開始です。

(リボ払い 返済条件)
・年利15%
・毎月返済額 20,000円

返済月 4月 5月 6月
費目 家電 旅行
購入金額 200,000 100,000
リボ払い返済額 20,000 20,000
利息 2,500(a) 3,531(e)
元金 17,500(b) 16,469(f)
月末残高 200,000 282,500(c) 266,031(g)

(a)4月末20万円の残高に対しての利息を計算します。年利15%なので月の利息は1/12です。
200,000x0.15÷12=2,500円 

(b)5月の返済額20,000円の内訳は、2,500円は利息なので、元金の返済額は
20,000-2,500=17,500円  
この時点の残高は200,000ー17,500=182,500円

(c)5月末残高は、(b)に旅行代金10万円が加算されますので、
200,000-17,500+100,000=282,500円

(e)5月末残高282,500円に対して利息がかかります。
282,500x0.15÷12=3,531円

(f)6月の返済額20,000円の内訳は、3,531円は利息なので、元金の返済額は
20,000‐3,531=16,469円

(g)よって、6月末残高
282,500-16,469=266,031円

このように残高に対して利息がかかるために、残高が増え続けることで、元金がなかなか減らないという現象が起こります。結果、延々と返済が続くという魔のループになりかねません。

少し細かい話となってしまいましたが、リボ払いは取っ付きやすいわりに分かりにくい仕組みかと思い、今回解説させて頂きました。

現金派でもキャッシュレス派でも、家計管理の基本は同じです。予算を決めてその範囲でお金を使う。キャッシュレスの場合は請求ベースではなく、支払ベースでお金を管理すれば、遅れてきたカードの請求額に惑わされることもないでしょう。

もはや、キャッシュレスという便利なツールを使わない手はありませんが、使っていいお金の上限額などマイルールを決めて、スマートにキャッシュレス時代を生きていきたいものです。

2022/02/24
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

プロダクトスペシフィックルール

品目別規則。

EPA特恵税率を適用するためには産品が協定締約国原産の「原産品」でなけらばならないが、非原産材料を一部に使って生産していても原産品とみなす場合がある。この基準が品目ごと(HSコードごと)に決められており、この基準のことを品目別規則(PSR)という。

PSRは3つに分かれている。
1. 関税分類変更基準
非原産材料のHSコードと産品のHSコードが異なっていること。類、項、号のどのレベルでの変更が基準となるかは協定・品目ごとに異なる。

2. 付加価値基準
一定の付加価値が締約国域内で付加された場合に原産品とみなす基準。

3. 加工工程基準
各製品で定める「特定の加工」が域内で施された場合に原産品とみなす基準。

PSRは各協定の附属書に示されている。また、税関HPの「原産地規則ポータル」で検索できる。

Product Specific Rules PSR

品目別規則。

EPA特恵税率を適用するためには産品が協定締約国原産の「原産品」でなけらばならないが、非原産材料を一部に使って生産していても原産品とみなす場合がある。この基準が品目ごと(HSコードごと)に決められており、この基準のことを品目別規則(PSR)という。

PSRは3つに分かれている。
1. 関税分類変更基準
非原産材料のHSコードと産品のHSコードが異なっていること。類、項、号のどのレベルでの変更が基準となるかは協定・品目ごとに異なる。

2. 付加価値基準
一定の付加価値が締約国域内で付加された場合に原産品とみなす基準。

3. 加工工程基準
各製品で定める「特定の加工」が域内で施された場合に原産品とみなす基準。

PSRは各協定の附属書に示されている。また、税関HPの「原産地規則ポータル」で検索できる。

ビフォーパーミット ・びふぉーぱーみっと

輸入許可前引取り承認制度(BP通関)。

輸入貨物は原則、輸入許可後でなければ国内に引き取ることができない。
そのため、輸入許可が下りるまで保税地域で貨物を留置することになるが、税関の承認を受け担保を提供することで、輸入許可前に貨物を引き取ることができる。
これを輸入許可前引取り承認制度(BP通関)という。

BPができる貨物は
・時間の経過により変質・損傷の恐れがあるなど引き取りを急ぐもの
・展示会等に出品するもので時間的制約があるもの
・新規輸入品などで分析や審査により関税率表の分類に時間が日時を要するもの
・課税標準決定に日時を要するもの
など、特別な事情があると認められるものに限る。

輸入申告後、許可前引取り承認申請及び担保提供したのち、引取り承認がされれば貨物の引取りが可能。その後3カ月以内に本申告を行い関税納付、担保が解除され、輸入許可という流れ。

担保は輸入貨物の関税に相当する額である。

Before Permit BP

輸入許可前引取り承認制度(BP通関)。

輸入貨物は原則、輸入許可後でなければ国内に引き取ることができない。
そのため、輸入許可が下りるまで保税地域で貨物を留置することになるが、税関の承認を受け担保を提供することで、輸入許可前に貨物を引き取ることができる。
これを輸入許可前引取り承認制度(BP通関)という。

BPができる貨物は
・時間の経過により変質・損傷の恐れがあるなど引き取りを急ぐもの
・展示会等に出品するもので時間的制約があるもの
・新規輸入品などで分析や審査により関税率表の分類に時間が日時を要するもの
・課税標準決定に日時を要するもの
など、特別な事情があると認められるものに限る。

輸入申告後、許可前引取り承認申請及び担保提供したのち、引取り承認がされれば貨物の引取りが可能。その後3カ月以内に本申告を行い関税納付、担保が解除され、輸入許可という流れ。

担保は輸入貨物の関税に相当する額である。

トルコには「通りの猫・犬」がいるって本当?

トルコの通りの猫・犬の家

トルコには野良猫・野良犬という表現がありません。飼い主がいない犬や猫は、sokak kedisi(通りの猫)/sokak köpeği(通りの犬)という言い方をします。

そのあたりの人が面倒を見ていることもありますし、区や町などの行政が餌や住むところを提供していることもあります。行政区によっては、プラスチック製や木製の簡単に組み立てられる箱を配布していて、家の前などにのらちゃん用の家として使われていることもあります。

写真のように、マンションタイプのものを公園などに設置しているところもあります。住むところだけでなく、餌や水などもあちらこちらに置かれています。

犬は、狂犬病の予防接種が義務付けられています。野良犬のように見える犬でも、耳にタグがつけられているなら、予防接種を受けている犬なので安心です。

推定ですが、トルコには2000万匹の野良猫や野良犬がいると言われています。その約25%に当たる500万匹が飼い犬や飼い猫として買われていると言います。実は、トルコのペット市場は2010年代からずっと右肩上がりで拡大し続けています。平均すると、年間15%ずつ拡大してきたと言います。

コロナ禍の下、2021年のペット市場は年間で125%の拡大を見せています。家の中で暮らす時間が長くなる中、初めてペットを飼ったという人たちの数も増えていて、約2割の家で猫を、12%の家で犬がペットとして飼われているそうです。ペットとして飼われている動物としては他に、鳩やインコなどの鳥類、水槽で飼う金魚などの魚類もあります。

ペット市場は、2021年には100億リラ規模になり、2023年には10億ドル規模となるとみられています。2020年の市場では、72%が猫の餌で占められていました。飼い猫のうち、既製品の猫餌を食べているのは約25%、犬の場合はさらに低く約12%が既製品の餌を食べているとみられ、さらに拡大が期待されている分野であることがわかります。

トルコのペットショップ

ペット市場の大きな部分を占めている餌も、年代や種別、価格帯など、様々なカテゴリーに分化し、拡大しています。さらに、アクセサリーや薬品、ペット用の衛生用品などを考えると、現在ペット市場の大きさで世界の20位前後にいると言われるトルコ市場が、トップ10に入る日も近いかもしれません。

実は、餌だけでなく、アクセサリー類も含めて国内生産がすすめられています。トルコ全体で5500件のペットショップ、2000件のペット専門のクリニックがあり、毎年その数は増え続けています。

2021年9月に8回目を迎えた「ペットズー・ユーラシア」は、ペット産業の国際見本市です。最近では65か国にペット製品を輸出するようになり、ペット産業の分野でも輸出国になりつつトルコにとって、この見本市は重要な位置を占めていると言えます。
 
参考サイト:
ミッレット紙の記事「ペットに10億リラ規模の餌」
https://www.milliyet.com.tr/ekonomi/evcil-dostlarimiza-1-milyar-tllik-mama-6378912

ギュネイ・ギュンデム経済紙のサイト「ペット製品は何億ドル産業」
https://www.guneygundemi.com/haber/evcil-hayvan-urunleri-milyar-dolarlik-bir-sektor

ペットズー・ユーラシア2021のHP
https://petfuari.com/eurasia/en/

2022/02/19
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住

マーケットレートで外為取引を!

マーケットレートの外為取引

今回はこのタイトルです。パッと見てどう思われましたか?「FX(外国為替証拠金取引)で(業者)マージンなしを実現!」こう取られた人も多いと思います。確かにこれだと経済誌の特集になりそうです。しかし残念ながら今回はこの手のお話ではありません。(スイマセン)
あくまでも銀行での輸出入取引等のお話しです。さて本題です。

銀行の外為取引では円建、外貨対価、予約取引以外の取引では、必ず当日相場による通貨交換が発生します。つまり当日の相場で通貨交換のやりとりが発生するのです。正直このやり取りには悩ましい部分がありました。当日のレート動向を特に気にしないお客様であれば、
銀行がレートを提示してそれを使う事で問題なしです。が、そんな神様(銀行にとって)みたいなお客様はまずいません。

ある日いくつか外為取引を銀行に持込んだ。ところがそれぞれレートが微妙に違っていた。こうなったらどうでしょうか。なんとなく銀行に対して不信感が出てきませんか。実はこれ良くあることなのです。原因は銀行の仕切り方にあります。銀行は取扱金額で大口(USD100千以上)と小口(それ未満)に分けます。そして大口は市場実勢相場、一方小口は当日公表相場を適用します。

但し公表相場発表前なら大口でも当日の公表相場も適用出来ます。つまりやや面倒くさいものの理屈の裏付けは取れている状態です。また取扱金額と言っても単純に依頼書上の金額ではありません。当日のスポット決済金額を判断基準としています。この仕切りは決して銀行都合のご都合的なものではありません。

外為全体からから見れば十分納得できる部分なのですが、そこら辺を話せば話すほど言い訳じみて来るのも事実です。私も外為営業を始めた頃一生懸命この説明を始めてしまい、目の前のお客様を頭から湯気状態とさせてしまった事があります。(お客様は仕組みでは無く、なぜ相場が違ったかを聞きたかったのです。)

こういった状況への一つの解決策が、今回テーマの「マーケットレートでの外為取引」なのです。銀行に取って例外的な取扱になるのですが、かといってとんでもなく異例な取引ではありません。外為店ならば1・2社は存在しています。それぐらい普通でもあります。では具体的にはどう対応しているのでしょうか。

多くの場合銀行の事務処理は全てシステムサポートされています。つまり手続きに従えばオンラインが事故ミスを防いでくれます。マーケットレートを常に使うというのはこのサポートを受けない事です。であるのであれば本部に異例申請が必要となります。申請理由としては、当該のお客様が為替相場を良く理解している。大口の外為持込先である。他行取引防衛のため必要。等々でした。

要は銀行のロジックでは取引が難しい。こう結論づけるわけです。本部の方も心得てましてこの手の申請はまず認可になりました。この認可を根拠にシステム上にフラッグを立てます。「市場実勢相場適用先」と呼ぶことが多かったです。このフラッグの取引先は金額や時間を問わずその場の実勢相場で、取引が成立していました。ただそれでも不満が出ることがあり、通常もう一工夫していたのも事実です。

すなわち複数持込があった場合は、合計金額で相場を押さえてしまい、それからおもむろに個々のオペレーションに入っていったのです。これも後々のクレームえの回避を考えての事でした。

このように「市場実勢相場適用先」になれば、マーケットレートでの取引は可能になります。但し一つだけ留意点が有りました。それは公表相場との選択適用は認められないと言う点です。これは自由に適用相場の選ばせないと言うことであり、相場操縦取引の禁止にもつながるものです。

以上「マーケットレートで外為取引をしたい!」でした。

2022/02/13

貿易と銀行実務いろは一覧

日本の本当の購買力は?実質実効為替レートとは?

実質実効為替レート:弱る円

為替レート(為替相場)について改めて考えてみました。昨年12月28日付朝日新聞の一面、「弱る円」という記事を読んだことがきっかけです。

外国為替相場(リアルタイムレート)を確認することは、私の毎朝のルーティンです。とはいうものの、最近はスマホを開いて数字をながめるだけで、その実、為替の変動に鈍感になっていました。最近は円安傾向が続いているなとか、今日は昨日より円高に振れている等、何となく思う程度です。

そんな時に目にした「弱る円」の一面見出し。
「日本の購買力は50年前の水準と同等である」という内容。なかなかインパクトのある見出しでしたので、読まれた方もいるかもしれません。

一般的に私たちが為替レートといっているものは、リアルタイムレートや、通関用の週間為替相場や、銀行で円を売買する際に適用するTTB、TTS等ですが、いずれも2種類の通貨を交換するためのレートです。
今日、1ドル=100円だったものが、明日、90円になれば円高、110円になれば円安といわれ、この場合、日本と米国の2つの通貨を比較して、どちらの通貨の価値が高いのか、安いのかを判断しています。

しかし、仮に円が米ドルに対して安い(円安)状態であったとしても、他の主要通貨、例えば、豪ドル、ユーロ、人民元などに対して、必ずしも円安であるとは限りません。

そこで、複数国の通貨をひっくるめて、通貨の国際的な競争力、総合的な実力(価値)を測るための指標が必要となってきます。その指標が「実質実効為替レート」です。

「実質実効為替レート」は、ある一つの通貨と他の複数の通貨とを比較して、相対的に高いのか、低いのかを判断します。数値が高ければ高いほど、その通貨の購買力が強いとされ、低ければ弱いということになります。実質実効為替レートの数値は、貿易相手国との為替レートを貿易額に応じて加重平均し、さらに物価変動を考慮して算出します。

物価変動を考慮するとは、貿易相手国の国内事情を名目上のレートに反映することです。例えば、アメリカで1ドルのジュースを買ったとします。為替レートが1ドル=100円であったなら、100円でジュースが買えたことになります。ところが、アメリカでインフレが起き、ジュースが2ドルになりました。そうなると、100円だったジュースは、日本円にすると200円払わないと買えません。つまり、名目上の為替レートに変動がなくても、実質は円安に振れたのと同じ状況になります。

このように通貨の真の購買力の指標となる「実質実効為替レート」ですが、その日本円の数値が、2021年11月に67.79まで落ち込んだとのこと。これはなんと約50年前(1970年)と同水準だそうです。因みに、日本の購買力が最も強かったのは、1995年の150.85(過去最高値)でした。(図表1参照)

pic_fpmototsuukanshi1_20220209_2

日本は、食料やエネルギーの多くを輸入に頼っていますので、円の購買力が下がると、段階を経て家計に影響が出てきます。最初に、企業の仕入れコストが上がり、そのコストアップを企業や小売りが吸収しきれなくなると、最終的には、消費者に転嫁されます。実際、昨年は様々な食料品、日用品に値上げの波が押し寄せました。

毎日見ていたリアルタイムレートからではわからなかった事が、実質実効為替レートから見えてきました。

今回は、実質実効為替レートからわかる「円の購買力」についてお伝えしました。
因みに、実質実効為替レートは毎月1回、BIS(国際決済銀行)が公表しています。

参考記事:朝日新聞 2021年12月28日 朝刊

図表出典元:三井住友DSアセットマネジメント
https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2022/01/irepo220113.pdf

2022/02/09
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

自己精査の勧め

自分自身で精査する

以前の本欄で事務の基本は「正・速・美」とお話ししました。中でも大事なのが一番目に挙げている「正確性」です。しかしこれをお題目として唱えても何も正確には出来ません。

正確な業務にはその正確性を担保するものが必要なのです。それが「検証」と「精査」です。銀行業界と他ではこれらの言葉の意味するところが違うようですが、銀行内部では担当者の行った業務を権限者が内容確認して、それを承認し正当化することを「検証」或いは「検印」と呼んでいます。

一方「精査」とは処理をした担当者以外の第三者が、内容を確認してその確認事実を記すものです。「検証」は「精査」を兼ねますので「精査」が表に出ないこともあります。

今回はこのうち精査について、皆さんの日常に役立てられるように、少し変わった視線からお話しします。

この「精査」は担当者のミスを軽減させる働きがあります。そのため銀行業務では当たり前のように行われています。事故やミスは「うっかり」に起因することが本当に多いからです。銀行業務で起こる事故やミスを第三者が点検することにより、トラブルや損害に繋がらないようにしようというわけです。これを日常生活にも応用する。これが今回のお話しのポイントです。

とは言っても何かする度に第三者を探して回って右往左往し、「精査」をお願いするわけにも行きません。そこで私が実行しているのが「自己精査」です。これは文字通り自己(自分)が自分のやった事を精査します。自分で自分をチェックしますので誰にも迷惑は掛けません。自分で精査するから「自己精査」というわけです。

しかしこんな単語は辞書にはありません。全くの造語です。さてこの「自己精査」ですがやり方は至極簡単です。何かをしたときに普通はそのままで終わりです。第三者に見て貰うなんて事はしないと思います。そのままで終わらせるはずです。しかし「自己精査」ではもう一度自分でチェックをします。なので「自己精査」なのです。

但しやり方に少々コツがあります。単純に自分の跡をなぞってもう一度見直しても、間違いは先ず見つけ出せません。当然だと思います。ではどうするのか、自分で自分を疑います。性悪説にたつのです。つまり「本当にそうか?」「大丈夫か?」「おかしく無いか?」こう頭で無理無理仕切ってしまうのです。言うほど簡単ではありませんが、やればやっただけの効果は出てきます。私はこのやり方で何度も自分のミスを救いました。

そこが皆さんにお勧めする所以です。但し一つだけ注意することがあります。慌てている時、忙しい時、面倒と感じる時。こんな時があります。ここで「自己精査」をサボると天罰てきめんとなります。かなりの確率でミスを引き起こします。つまり「自己精査」の効果を実感させられる事になるのです。こうなっては大変です。

自分は絶対大丈夫と言う人は別ですが、そう言えばミスが多いなあ。こう思われる人はだまされたと思って、「自己精査」をやってみて下さい。意外に効果があることを実感されると思います。

2022/02/04

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! フィンランドの物価上昇はいかほどに?!

2022年フィンランドでは食料品が値上がり

コロナ禍の丸3年目の2022年が明けました。年末年始から世界中がオミクロン株に感染するなど、まだまだ油断を許さない感染症との共生生活が続いています。

そんな中、フィンランドでは年明けからあらゆる分野における価格が上昇しています。今回は一般的な日常生活における物価やサービス事情について紹介します。

2022年から値上がりの影響が最も大きいのは、食費です。

経済研究グループの予測によると、生産コストの上昇と不作の年により、食料価格は1.8%上昇するという調査結果が出ています。「フィンランドの食品価格の上昇は、2021年には約0.3%と緩やかだったが、年末に向けて指数関数的に上昇し始めるだろう」とし、この上昇は、消費者物価全体の上昇予測値よりも多いと予測しています。

背景には、不作と生産コストの上昇があるとし、特に石油、ガス、電力を必要とする、肥料、飼料、建設などのコスト高が要因と考えられています。またコロナ禍で物流コストにも負荷がかかり始めていることも要因であるとしています。

食費の他には、電気自動車の課税が変更になりました。

新車の電気自動車の場合は、購入時の自動車税が廃止されました。代わりに年間の自動車税として65ユーロが増税されることになりました。実際には、最初の課税査定日が2021年10月1日以降の車にすでに適用されています。嗜好品であるタバコにも増税されています。平均価格が11%上昇し、一箱の平均価格は10ユーロ強となっています。今年7月にはさらに増税され、2023年にはさらなる引き上げが行われる予定です。

逆に価格が値下がりしたものもあります。

パスポート発行費用を、警察署で申請する場合は、58ユーロから50ユーロに下がりました。電子申請の場合は44ユーロで変更なしです。

さらにはサービスがよくなったものもあります。

フィンランド国民が無料でがん検診を受けられるようになりました。60-68歳を対象に腸がん検診が、30−65歳を対象に子宮頸がん検診が受けられるようになりました。

また借地借家法が改正され、居住者が自分の所有地の運営について、より大きな発言力を持つことができるようになりました。フィンランドには、約5万戸の居住権付きの住宅があり、この制度は30年前から実施されています。

今後は、住宅所有者協会の理事会メンバーの40%が、その物件の居住者でなければならないという条件が付けられました。

こうして見てみると、世界中に影響を与えている食料価格の上昇が一番頭を悩ませています。現在の食料サプライチェーンが世界中に渡っていることも要因となって、フィンランドだけではなく日本でも、そして他国でも食料価格は上がる傾向にあります。

電気自動車の課税については、欧州の電気自動車政策の影響が大きいようです。2035年までにガソリン車とディーゼル車、さらには内燃機関とモーターを組み合わせたハイブリッド車も事実上、販売禁止という目標が背景にあります。

がん検診は、日本人からするとやや驚きの事実ですが、がん患者が世界中で一番多い日本と比べると、フィンランドにおけるがん検診がようやく始まったばかりと言えそうです。

今年中にはコロナが収束するという情報やデータがありますが、収束してもこの2年間の影響は計り知れず、私たちの生活における物価上昇の影響はこの先しばらく続きそうです。

参考記事:
YLE NEWS
https://yle.fi/news/3-12119278
YLE NEWS
https://yle.fi/news/3-12254046

欧州グリーンディール政策
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/331e9d95b330cf03/20200044_01.pdf

がん患者:がん早期発見推進協会
https://ecdpa.or.jp/world-cancer-died/

2022年コロナ収束?!:GateNotes(THE BLOG OF BILL GATES)
https://www.gatesnotes.com/About-Bill-Gates/Year-in-Review-2021

写真出典元:
https://yle.fi/uutiset/3-12245353

2022/1/31

海外だより:フィンランドより一覧

2022-01-26 現役通関士の新コラム「くらしと貿易と通関と」始まりました

経験豊富な現役の通関士として、いろいろなトピックを執筆していただきます。担当するのはKyo氏です。

通関ということ

箱根の関所は今日の通関

「通関」という言葉、知っていますか?

もちろん、通関業者に勤めている人、商社のような貿易に携わっている人、輸出入を行っているメーカーや仕入れ・販売の会社に勤めている人は知っていることでしょう。しかし、これから輸出入を始めようとする人、ましてやその他の一般の人たちには、「通関」という言葉は、「それって何?」と思わず口にしてしまう馴染みのうすい、耳慣れない言葉でしょう。

昔の話ですが、とある通関業者へ就職し念願の通関士になって間もなく、倉庫の作業員の人から「税関士」と言われショックを受けたのを覚えています。実際、「通関」という言葉は、新聞などで貿易に関する報道があったときに、貿易の額や量の数字を示しているところに「通関ベース」などと、ひっそりとその言葉が添えられている程度です。ややもすると見逃してしまいます。

因みに「通関ベース」とは、通関業者などが税関へ輸入または輸出申告した申告価格や数量のデータを元にしているという意味で、それらのデータを財務省・関税局というところが輸出入別、国別、月別、年別にまとめ統計をとっています。

今となっては歴史上の言葉「関所」。その代表として箱根関所はとても有名ですね。街道の要所や国境に置かれ通行する人や荷物を調べ、通行料(税)をとり、江戸時代には「入鉄砲に出女」と言われたように、武器や幕府への反乱をふせぎ幕府を守るため人質として住まわせた西国大名の妻子が江戸から出ることを取り締まっていました。

「関所」と呼ばれる場所は現在ではなくなったものの、人が口に入れるもの・食の関所「検疫所」、ペットや畜産物、水産物の動物の関所「動物検疫所」、植物の関所「植物防疫所」という人や動植物、そしてそれらを含めた環境に有害な物質、病気や害虫などが海外から日本に入らないよう、日本から海外へ出ないよう、常に目を光らせ取り締まっている、「関所」という名前こそついてないですが、現代の関所があります。

そして、海外から物が入るとき「関税」をとり(実際には徴収されない物もありますが)、「黒いもの」(拳銃など)や「白いもの」(大麻、覚せい剤など)が海外から日本へ入らないよう、日本から海外へ出ないよう、関税など「税」を徴収し、武器などを取り締まる「関」所である「税関」があります。まさに「税関」は、江戸時代の「関所」のようです。

こうして、人や物が、海外から日本へ入るとき、日本から海外へ出るとき、通るのが現代の「関所」の役割をはたす税関です。

平たく言えば、人や物が税「関」を「通」る、人や物を税「関」に「通」すことが「通関」ということです。

海外旅行へ行くとき、海外旅行から帰ってきたとき、空港で税関に荷物チェック、ときにボディチェックを受け、「何か申告するものはありますか?」、「いいえ、ありません。」などとのやり取り、実はそれも「通関」です。しかし、ほとんどの人は、そうとは思っていないことでしょう。

海外から日本へ、日本から海外へ、物を入れ、物を出すときに税関へ輸入や輸出の申告をして、税関の審査や検査を経て(輸入のときは必要な関税や消費税などを支払い)、税関から許可を受けるまでを「通関」といいます。

今、あなたが飲んでいるビール、着ている服、乗っている自動車、外国製だったら、必ず「通関」されています。くらしに必要な物がそろい、安全にくらしていけるのも、検疫所などと合わせ「税関」という関所があって、そこで働く人たちが真剣に取り締まってくれているおかげです。そう思えば、海外旅行のとき空港で列をなして待たされるのも仕方ないと思いませんか?

2022/01/26
くらしと貿易と通関と
Kyō

L/Cパックについて(東京限定)

東京港レインボーブリッジ

「L/C pack」という商品が有ります。商品と言っても物ではありません。東京信用保証協会の輸入業者向け保証制度です。今回はこの保証制度についてお話ししたいと思います。

東京以外の方は直接この制度の適用はありませんが、似たようなやり方で保証を受けることが出来ることがあります。後ほどその点にも触れたいと思います。

さて信用保証協会(以下保証協会)ですが皆さんはご存じでしょうか。保証協会は全国の都道府県と一部の市に設けられています。その役割は中小企業(一定の資格要件あり)への銀行融資に対して、「信用保証」をするという信用補完機能です。そして保証協会はその機能を持つ公益法人と言うわけです。簡単に言うと保証人の役割を果たしてくれるのです。

もちろん外為をやっている事業者でも保証協会は利用出来ます。特に今回お話しする「L/Cパック」は外為専用とも言える制度で、上手く利用すれば大変重宝する制度と言えます。詳細はぜひ保証協会発行のパンフレットを見て頂きたいのですが、簡単に言いますと銀行が輸入L/C関連として認識する取引を、一通り保証協会が保証してくれるものとなります。

手順としては保証付の証書貸付か手形貸付を銀行に実行して貰います。そしてその実行代わり金で担保となる定期性預金を作成します。銀行はこの定期預金を担保としてL/Cを開設します。さらにその後行程となる輸入ユーザンス(本邦ローンとも言います)、跳ね返り金融までの一連の流れもこの定期預金がカバーします。つまり一連のL/C取引を保証協会に面倒を見て貰うというわけです。

最長一年という縛りがありますが継続利用も可能となっています。やり方は旧保証を一旦返済して新規保証を実行します。更に少し細かい話ですが万一の時この担保性定期預金は、銀行のプロパー債権に対しても相殺適用が可能です。(勿論L/C関連与信や他にある保証付融資が優先ですが)

このように妙味のある制度ですが一般の協会保証と同様に、借入資格とか取引金融機関が保証協会利用可能かとか、事前に確認すべき点はいくつかあります。それらが満たされるのであれば一考の余地はあると思います。

ここまでお話しますと「じゃあ東京以外では出来ないのか」と、お尋ねが来そうですが実は何とかやる方法はあります。実際に私がやっていた方法はこうです。まず通常の運転資金の保証申込を行います。保証協会から実行OKの返事を貰います。その保証を基に貸付金を実行し、お客様は支払等にそれを充当します。

十分貸付金が流出しきったのを確認して担保預金を作成して貰います。その後はこの担保預金を基にL/C開設を行って行きます。その後の流れはL/Cパックと同じです。実際に成約に至った例は少なかったのですが、当行はこんなことも出来ます。と、提案することはお客様に好評でした。

今回はL/Cパックについてでした。

(注)似たような名称に特定信用状関連保証があります。これは海外子会社の現地資金調達を容易にするために、親会社取引銀行が発行するスタンドバイ信用状向けの保証です。全く機能が違いますので保証協会に相談する際には注意が必要です。

参考サイト:
L/Cパックについて「東京信用保証協会」
https://www.cgc-tokyo.or.jp/cgc_201902monthly40-02.pdf

海外展開サポートデスク「東京信用保証協会」
https://www.cgc-tokyo.or.jp/assistinfo/cgc_KTsupportdesk_leaf.pdf

2022/01/20

貿易と銀行実務いろは一覧

2022-01-14 新コラム「元通関士・現FPのあれこれ話」がスタート

通関士として通関業務を経て、FP(ファイナンシャルプランナー)に転身。

FP目線でさまざまな話題を提供していただきます。担当は山﨑裕佳子氏です。

結局、通関士資格は役に立っているのか?

ファインシャルプランナーのアドバス

私が通関士の資格を取得したのは約30年前です。まだNACCSの導入前であった為、通関書類をかかえて税関へ通う毎日。メールもインターネットも無い時代でしたので、フォワーダーや荷主との連絡はもっぱら電話とFAXという超アナログでの仕事ぶりでした。

貿易業界には6年半在籍し、そのうち通関士として通関業務に携わったのは2年程、最後の1年はNACCS導入時期と重なり、使い方の研修を受けたことを覚えています。一所懸命勉強して資格を取りましたが、通関士として仕事をした期間は長くはありません。

では、「通関士の資格は無駄となってしまったのか?」という本題に対する答えですが、決して無駄ではありませんでした。むしろ資格があったからこそ今があると思っています。

出産を機に一旦仕事を離れてから1年半後、次に就いた仕事は、総合電機メーカーでの輸出に関わる仕事です。通関士資格が必須の業務内容ではありませんでしたが、資格を保有していたことが採用の決め手となりました。

新しい職場は、25年前には既に現在のようなデジタル社会を見据えたモノ創りをしていた誰もが知っている企業でした。当時の私は、コンピューターといえば、オフコン(オフィスコンピューター)しか使用した経験がなかった為、いきなり未知の世界に放り込まれた気がして、たった1年半のブランクが10年位のブランクに感じられたものです。

そこでの9年間の経験はとても有意義なものでした。物事を俯瞰で見た効率的な仕事の進め方、数十年後の社会を鑑みた業務改革、また、何よりOJTにより英語力を鍛えられたことなど、私の職業人生において大きな財産となりました。

その後は、銀行でテラー、培った英語力を活かして自動車メーカーで海外法規事務など、その時々のライフスタイルに合わせて様々な仕事を経験することになります。前職が次の仕事へ、またその次の仕事へと繋がっていきました。

紆余曲折ありながら、現在はファイナンシャルプランナーとして、フリーランスで仕事をしています。FPを目指したのは、幾度かの転職により社会保険制度や税の仕組みに興味を持つようになったこと、仕事をしながら子育て、介護を経験する中で、お金に関する様々な制度の存在を知ったことなどが大きな要因です。

仕事や人生の節目には、金銭的な課題がついて回ることを、身を持って経験しました。知識がないことで不利益を被ることを実感したことも、自分の中で忘れかけていた知識欲に火を付けるきっかけになったかもしれません。こう順を追っていくと、通関士資格があったからこそ今に繋がっていると感じます。

FP資格を取るための久しぶりの勉強は、最初は硬くなった頭をほぐすことから始めなくてはなりませんでしたが、30年前に通関士資格を取得したという自信が、もう一度チャレンジするモチベーションになりました。

FPと通関士、一見何の関連性もない資格のように思えますが、私の中では繋がっています。何より、こちらのサイトでコラムを書かせていただけることがその証明のような気がしています。

今回は、通関士からFPへ転身した経緯を、自己紹介を兼ねて書かせていただきました。次回からは、FPとして、貿易業界で働く皆さんのために、様々なお役立ち情報をお伝えできればと考えています。

2022/1/14
山﨑裕佳子 元通関士・現FPのあれこれ話

他金融機関からの研修生を受け入れる

研修を受けている様子

私のいた研修部では、他機関からの研修生もよく受入れていました。(他機関とはここでは銀行、信金、信組、生損保を総合した意味です。)これは当行では研修部(教育部門)と外為センター(実務部門)が、同じ本部ビルで仕事をしていたからです。派遣する側からみれば、研修生はずっと同じ所にいる事になります。本人の所在をいちいち確かめずに済みます。

これは好評でした。こちらも研修期間中、すべて同じビルで行うことが出来ます。当方にももってこいの環境でした。つまり当事者双方にとって、この体制は好都合だったのです。そんな外為研修ですが、具体的にはどんな人が来ていたのか。派遣側の思いも含めて、お話ししていきたいと思います。

1.研修の流れ
まず派遣希望元から本部に研修生派遣の打診が入ります。既に受入実績のある先でしたら、そのまま研修部に話がつながります。しかし初めての金融機関からですと、本部で一連の折衝が行われます。同時並行で研修部にも本部から受入要請が来ます。ここで研修内容や研修期間の希望を相手に聞くことになります。

この聴取結果を基に研修内容を組み立てていきます。その後研修生のプロフィールが来れば外為の現場にも伝えます。具体的な研修内容は、「座学」と「実習」の組み合わせで行います。期間は最短で一週間、長くて三ヶ月ぐらいでした。本当はオーダーメイドなのでもっと幅を持たせることが可能なのですが、先方の希望を満たすと大体こんな期間になるのでした。

2.初心者研修
ここからは受入れ研修生のタイプ別のお話です。最も多かったのがこのタイプです。やってくる研修生も殆どが若手でした。このタイプは研修部としても力が入ります。こちらの力量が問われます。研修初日から1週間はマンツーマンでみっちり座学です。この点が特に派遣する側からの評価が高い点の一つでした。

外為研修と言えば普通何人かまとめてです。塾みたいなもんです。しかし当方の講師は専属です。(家庭教師みたいなもんです)その後の現場実習もお客さん扱いはしません。こちらの担当者に混じって実際の業務をやってもらいます。文字通り「習うより慣れろ」です。数日もすれば本人も現場に慣れてきて、電話口で「○○銀行△△でございます!」と名乗るなど、端で聞いていてもやる気が伝わってきていました。

現場でもある程度の期間受入れるため、お客様扱いはしてませんでした。これもまた研修生本人にも派遣した金融機関にも好評を博していました。

3.専門研修
このタイプの研修は、恐らく他所では実施されていないと思います。研修概要は簡単に言うと、既に一定の外為スキルを持つ人が、派遣金融機関の特命を帯びて当行のノウハウ獲得にやってくる。こう言った位置づけです。特定分野の集中研修です。研修期間もごく短いもので、せいぜい一週間程度でした。たった二日間もありました。(尤もこれでは日が足りず再度来てましたが)

この専門研修は短期でしたが、内容はかなり高度且つ緻密でして、派遣する側からすれば割高なコストを払っても惜しくない。そう思わせるだけのメリットを含む内容でした。

今期は他金融機関からの研修生についてお話ししました。

2022/01/10

貿易と銀行実務いろは一覧

トルコのオペラ・バレエ、冬は劇場・夏は古代劇場で

トルコの国立バレエ

あまり知られていませんが、トルコは、実はオペラやバレエがお手軽に楽しめる国なんです。

その理由は、20世紀の初頭、共和国設立時に遡ります。共和国建国の父ケマルアタトゥルクは、教育の一分野として、芸術分野でも様々な改革を行いました。1923年に共和国設立後、1925年にはトルコの民族音楽の収集を開始、音楽教師を養成する学校を1924年に開校、1936年にはオペラ・音楽・バレエ・演劇の分野でのプロを養成するコンセルバトワールを設立しました。

コンセルバトワールというだけに、フランスの文化保存機構を範とし、西洋音楽をメインに据えた教育がおこなわれてきました。コンセルバトワールは、現在でも主要大学の多くに置かれていて、子供のころから歌や楽器のプロと一緒に研鑽する機会が開かれています。

イスタンブールやアンカラ、アンタルヤやイズミールといった大都市には、文化観光省の管轄下にある国立バレエ・オペラ団やオーケストラがあります。国立のバレエ団やオペラ団に所属している芸術家は、国家公務員として活動していることになります。そのため、オペラやバレエのチケットは、日本とは桁が違う金額で手に入れることができます。

例えば、オペラのチケットで前方の席で80リラ~100リラ、日本円にすると1000円~1200円くらいと、かなりお手軽に楽しめるのも嬉しいところです。

イスタンブールの新市街の中心、アタトゥルク広場に面したところに、アタトゥルク文化センターがあります。アタトゥルク文化センターは、1969年に開館した、複合文化施設でした。オペラやバレエ用の1307席ある大劇場、502席のコンサートホール、296席と190席の小劇場2つ、206席の映画館から成っていました。2008年には耐震性などの問題から一度閉館となり、新たに立て直されて2021年10月29日に再度開館しました。

トルコの演劇

イスタンブールの芸術愛好家にとって、待ちに待った時だったらしく、こけら落としのオペラ、アイーダの初日と翌日のチケットは2時間ほどで売り切れたそうです。このアイーダは、トルコの国営チャンネルTRTでも放送されていました。大都市のオペラやバレエ用の劇場は、10月にシーズンに入り、4月くらいまで、演目を変えながら上演しています。

夏には、劇場が閉まっていて寂しいと思っていましたが、実は、夏には夏の楽しみがあるのです。夏は、野外劇場でコンサートなどが開かれますが、地中海に面した人気のリゾート地アンタルヤの近くのアスペンドスにある古代劇場では、オペラやバレエが上演されています。オーケストラや役者さんたちもフルメンバーの本格的なプログラムになります。

古代劇場なので、石造りの座席に長時間座ることになるため、座布団を持参することをお勧めしますが、何千年もにわたって存在している劇場の音響効果はやはり素晴らしいです。舞台で繰り広げられるドラマの世界の中に自分もいるかのような臨場感があると思います。

写真出典元:文化観光省オペラ・バレエ部門ホームページ
https://www.operabale.gov.tr/en-us/Pages/HomePage.aspx

写真出典元: Kültür ve sanat haritası(チケット販売サイト)
https://www.kultursanatharitasi.com/wp-content/uploads/2018/02/f%C4%B1nd%C4%B1kk%C4%B1ran-768x511.jpg

2022/01/05
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

銀行との担保交渉はどうすべきか(後編)

銀行の不動産担保ローン
(中編)からの続きです。

6.不動産担保(主に根抵当権)
担保と言えば不動産担保。そう私も思います。しかしいろんな意味で難しいのがこの不動産担保です。銀行が担保交渉してきた場合、不動産担保を持ち出してきたら、一旦立ち止まって考える必要があります。

不動産担保の設定・解除には、手間と費用が多くかかります。しかも一度設定すると取引解消し無い限りは、銀行は担保の解放には応じてくれません。担保のハードルはえらく高いものになります。この不動産担保固有も言うべき不可逆性(オーバーでしょうか)。これを考えずに担保交渉に応ずべきではないと考えます。

不動産担保を考えるとき、銀行は当然のごとく根抵当を出してきます。しかし根抵当は一度設定されると、その銀行と取引解消でもしない限り、半永久的に引き継がれていきます。銀行が合併して名前が変わっても、登記権利者の名義変更で対応します。根抵当権は銀行の様々な取引の担保となり得るので、一対一対応の抵当権よりは利便性が高いとも言えます。しかしその有効性は強烈です。他の担保の一段上を行くものと言えます。銀行が不動産担保に言及した場合は、本気度が強いと言えます。しかし「時価設定」したい。「同順位設定」したい。と銀行が言ってきた場合は留意する必要があります。

先ず「時価設定」についてですが、これを持ち出してきた場合の狙いは、ずばりその不動産の価値の独占です。通常は掛け目後の価格(時価一億円の物件であれば例えばその80%の八千万円のこと)の範囲内で根抵当権を設定します。対して時価設定とは、時価一杯である一億円で設定することです。

ここからはチョット横道にそれますが、バブルの頃は時価の120%で設定していた銀行もありました。こうなると無茶苦茶です。希望価格設定とでもいうのでしょうか。時価以上の設定です。当時我々の間ではあんなやり方続けられる訳が無い。きっと破綻するに違いない。と、良く噂していました。案の定その銀行は5年後破綻しました。無茶は無茶の証明です。

本題に戻ります。

担保とする不動産の価値を独占しようとする場合に、時価目一杯に根抵当権金額を設定すると他社(銀行に限りません)は、当該不動産を実質的には利用できません。これが時価設定の狙いなのです。また既に根抵当権が相当金額設定されている場合に、後順位に設定するべき時に、銀行から同順位設定の話をしてくる場合があります。

これの狙いは先順位(既に設定している)他社と、同様の担保価値を受けようというものです。本当は根抵当権の譲渡という荒技もあるのですが、これは相手に喧嘩を売るに等しいので、通常銀行は肩代わり以外では用いることしません。

そんなこんなで不動産担保は大変です。しかし不動産担保は当該物件の使用収益権(用益権)は、会社に残りますので、その意味では使い勝手は良いといえます。銀行から見ても根抵当権を一度設定すれば、適宜担保洗い替えの必要はありますが、有価証券と異なり、現物確保の必要も無いので楽と言えば楽でした。

その他には動産担保(船舶、自動車、機械etc.)もありましたが、動産担保を設定したという事実そのものが全行紹介されるほど、事例が少なく私も残念ですが経験は無しでした。

以上、銀行が担保を要求したときの、銀行の思惑とそれに対する企業の対応について概説しました。

2021/12/25

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! サンタの国フィンランドのクリスマス商戦

フィンランド、クリスマスプレゼント

フィンランド人にとってクリスマスは、年中行事の中で最も大切な行事の一つ。その中でもプレゼントは、なくてはならないもの。今回はこのクリスマスプレゼントにまつわる話しを紹介したいと思います。

商品価格の調査会社は、フィンランド人のクリスマスプレゼントに費やす価格を調べました。調査によると、最も一般的な金額は、50〜100ユーロ(回答者の21%)または101〜200ユーロ(20%)でした。

また回答者の8%はプレゼントを購入する予定はまったくなく、10%はプレゼントに50ユーロ未満しか費やしていません。つまりフィンランド人のほぼ5分の1は、50ユーロ未満のプレゼント購入、またはプレゼントを購入していないことがわかりました。一方で、回答者のわずか5%が、500ユーロ以上を費やしていることもわかりました。

そのプレゼントの平均的な購入日(期間)は、やはりクリスマス直前の週末。ただし、回答者の4分の1以上(27%)が、クリスマス直後から始まるセールにて商品の一部またはすべてを割引価格で購入することを計画しています。

近年の傾向としては、クリスマス商戦が始まってから、またはクリスマス中(12月24−26日)の土壇場で購入する人が増えています。ちなみに昨年は25日に最も割引された商品として、調理器具、Xbox Oneゲーム、デジタルカメラ、かみそりなどが含まれていました。

この調査会社の分析から、商品価格は早くも22日ごろから下落し始めるようで、それを待ち構えてプレゼントを購入する人が増えているようです。

一方で、フィンランドは手作り(DIY)文化が根強いので、手作りプレゼントを贈る人もいます。手袋、マフラーやニット帽など編み物グッズ、クッキーやケーキなどの自家製のお菓子などを作り、自分でラッピングも楽しみながらプレゼントを用意します。

さらにはLahjakortti(ギフトカード)も根強い人気商品です。商品や映画館、レストラン、スポーツジムなどの体験プレゼントは然ることながら、最近ではBtoBの企業で自社のサービスを利用してもらうという狙いで用意している会社もあります。

そして一人当たりのプレゼントをもらう数は、大人も子どももだいたい3−5個が平均的な数のようです。子どもの場合は両親、祖父母、ここに名付け親が入って3つ以上。大人は、パートナーや友人、両親・兄弟姉妹などから3つ以上と、この辺りは日本とさほど変わらないでしょうか。

しかしフィンランドのクリスマスとは、プレゼントの内容や金額、そして個数は関係なく、家族や大切な人たちと一緒に食事をしたりサウナに入ったり、今年一年を振り返ったり来年のことを考えたり、またご先祖へお墓参りをしたりするのが一般的です。

というわけで、今年一年お読みくださりありがとうございました。
まだまだコロナ禍が続きますが、どうぞウィルス感染などに注意してお過ごしください。

皆さまにとって良い年となりますように。
Onnellista Uutta Vuotta 2022!

1ユーロ=¥126.35 (12/21)

記事参照元:
https://www.is.fi/taloussanomat/art-2000008463381.html

写真提供元:
https://res.cloudinary.com/findance/image/fetch/w_680,f_auto/https://www.findance.com/kuvat/cloudinary/joululahjat-Snzs6.jpg

2021/12/21

海外だより:フィンランドより一覧

銀行との担保交渉はどうすべきか(中編)

有価証券
(前編)からの続きです。

2.他行円定期預金
他銀行の円定期預金も担保となり得ます。(かなり面倒ですが)担保価額も取引銀行の円定期預金(自行定期と言います)と同じです。ただ違うのは質権設定契約(確定日付も付ける)を締結するのと、当該他行から質権設定の承諾を引き出す必要がある点です。

この他行承認を引き出すことは、実は大変な事なのです。ちょっと考えて見て下さい。その銀行にしてみれば自行定期預金へ、いきなり他行が質権設定を要求してきたらどうでしょうか。その銀行の考えることはこうです。「質権設定を要求してきた銀行は、自らの保全確保に汲々としている。あろうことか他行定期まで確保に走っている。」こう思われてしまったら大変です。もしその銀行がその会社に融資をしていたら、真剣に引き上げを検討するでしょう。(少なくとも私はそうします)

なのでこんな時、無理は通さずに他行の定期は解約してもらいます。そしてその資金は自己資金として使ってもらいます。これが現実的な対応だと思います。

3.外貨定期預金(自行に限る)
外為をよく知ったお客様の中には、自社の外貨決済の多さに着目し、USDやEURで外貨定期を組み、それを預金担保にしたいと申し出てこられる場合があります。為替リスクの回避を念頭に置いたお申し出だと思います。

しかし外貨預金を担保とする場合は、掛け目と呼ばれる厄介なものが発生してしまうのです。掛け目とは担保価額の計算で、一定割合(掛け目)を減額するものです。例えば百万米ドルの外貨定期を担保として用意した場合、担保としての評価方法は、まず当該外貨定期を円に換算してしまいます。(換算レートはその月の適用レートを銀行が決めています。)その換算額に9割とか8割を掛けて一定額を出します。

これが担保価額になるわけです。結果として担保金額は減ります。加えて円に換算するレートは毎月変わっていくので、不足した時には追加担保が必要になります。これではお客様の納得は得られません。殆ど実例が無かった所以です。

4.有価証券(主に公社債、上場株式)
銀行が担保とするのは、主に国債・地方債や上場会社の社債・株式です。不動産に比べて担保の取得・解放が容易で、金銭的負担もありません。但し確定日付まで取ると、若干ですが費用が発生してしまいます。この有価証券担保は一時的な担保として利用されていました。(もちろん恒久的な担保にも使えます)

しかし有価証券も担保価額では掛け目が存在しており、国債といえども額面通りの評価とはいきませんでした。この辺り難しいところで、不動産担保が良いと考える向きも有りました。加えて手持ちの有価証券を銀行に差し出す形になるため、いわゆる財布の中に手を突っ込まれる。こう考えるお客様も多かったです。結局実際の利用は今一つでした。

しかし銀行に取っては預金担保ほどではありませんが、取扱は豊富で有り、企業としても検討に値すると考えます。なお注意すべきは非上場株式です。ごく稀に提供の話がありましたが、銀行の規定では担保不適格となっており、丁重にお断りしていました。

5.ゴルフ会員権
項目立てをして見ましたが、実際どうなんでしょうか。今では担保として歓迎している銀行は無さそうな感じです。理由は有る意味簡単で、ゴルフ会員権は有価証券では無いからです。最も例の多い預託金方式で考えてみましょう。

この方式での担保対象は、ゴルフ場に預ける一定金額(預託金)に対する返還請求権です。これを銀行が担保化するのであれば、債権譲渡の形式をとります。譲渡担保契約を結んで担保とするわけです。バブルの頃は、銀行もゴルフ会員権価格は年々上昇している。いざとなれば転売も簡単にできる。こんなコンセンサスで有価証券並みの扱いをしていました。(世間一般の風潮もそんな感じでした)

現状ではその面影はありません。ゴルフ会員権担保は無理筋のようです。

以下(後編)に続きます。

2021/12/19

貿易と銀行実務いろは一覧

銀行との担保交渉はどうすべきか(前編)

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外為に限りませんが銀行取引をしていると、取引銀行から担保を要求される場合があります(特に融資取引)。信用取引(無担保取引)残高が一定限度を超えた場合に、銀行から保全措置として担保が求められる場合が多いようです。場合によっては、新規取引でも「担保を」となる場合もあります。(ここ言う担保とは物的担保のことを指します。)

さてこのような銀行からの要求ですが、どう答えるべきでしょうか。今回から3回シリーズで、言ってきた銀行の思惑や、言われた当事者の対応について、考えていきたいと思います。

まず銀行からの担保要求へどう反応するかです。「担保は出したくない。」と拒絶することがパッと思い浮かびます。初手の回答としてはこれも十分に有りです。しかし重ねて銀行が担保を求めてきた時はどうでしょうか。その段階で、この回答に固執するのは余りお奨めしません。なぜなら銀行は、取引には担保が必要と判断しているからです。

全面拒否回答は、この判断に対する真正面からの反応となります。全面拒否では銀行を、取引自体を見直す方向に追いやってしまいます。つまりその銀行と取引が出来なくなる可能性も出てくるのです。取引を切られては元も子もありません。ここは思案のしどころです。

まず頭に浮かべるべきポイントは担保の最小限化です。そこでこの延長として、「担保は(渋々ですが)応諾する」と回答します。ただここで留意すべきは、二つ返事で担保提供を申し出ないことです。銀行が担保として受け入れ易いものを提示すますが、あくまでも最少額とすべきなのです。これが上策となります。

では担保として何が受入れやすいのか。具体的に見ていきましょう。【お願い】以下の記述については筆者の知見を基にしています。判る範囲で現状も述べていますが、制度運用は銀行によって異なります。詳細はお取引銀行に、お問い合わせされることをお勧めします。

1.円定期預金(取引銀行に預入分)
最も銀行が担保として評価するのは、自分の銀行にある円定期預金です。名義は会社でも社長でも構いません。第三者が提供する場合もあります。要するに取引銀行の定期預金であれば、担保として効果を発揮します。但し二重設定は出来ません。この点注意が必要です。

銀行では定期を担保とする取引を、預金担保取引と呼んでいます。略して預担(よたん)です。ここでは定期とお話ししましたが、実は預担は定期に限りません。通知や貯蓄、積立預金でもあり得ます。さてこの預担取引では担保と評価額は、額面金額の100%です。これは銀行が担保に100%の価値を認めたと言うことです。

実際の取引場面でも、L/C開設やD/P・D/Aの買取などの、恒常的な取引に際して、与信極度枠の担保に定期預金を、入担(担保に入れること)していた取引先があります。どうせ使わない(使えない。。)資金ならば、担保提供も一法です。

なお取引銀行の支店と定期預金の預入店は同一が通常ですが、違っていても同一銀行であれば問題ありません。銀行としては担保対象が債務者或いは保証人名義自行預金で有れば、いざというときに相殺することも可能です。(むしろこちら優先のハズ)

つまり相殺の有効性からも、定期担保がまず俎上に上がると思います。(中編に)続きます。

2021/12/10

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! フィンランドらしい?!抗議の仕方

フィンランドの動物愛護の抗議グループ

日本でお馴染みのケンタッキーフライドチキン(KFC)が、首都ヘルシンキにオープンしました。開店当日、1番最初のお客さまに1年間分のチキンを無料提供するという情報を駆けつけて、3日前からテントを張って待っていたその人とは。

今回はフィンランドならではの光景を紹介します。

開店3日前からテントを張って待っていた人は「チキン・ラバー(鶏肉愛好者)」と名乗る男性でした。開店時間になると、この男性が「歴史的瞬間」とスピーチを始めましたが、その内容が動物の権利に焦点を当てたもので、つまりこの男性は動物愛護の抗議グループの一人であることがわかりました。

「私は自分の嗜好ではなく、何十億もの鶏やその他の抑圧された動物のために、ここでスピーチするために3日前から待っていました」と述べました。

その後、抗議グループの他のメンバー2人が「Love wins. Not wings(勝利を愛するが、鳥の羽は要らない)」などと書かれたTシャツを着て登場しスピーチを続けようとしたところに、警備員に退場させられてしまいました。

このKFC以外にも、ここ数年でファーストチェーン店が続々と上陸をしているフィンランドですが、食料のサプライチェーン上で発生する人権問題や店舗における労働環境問題に対して指摘する声が多くあります。今回もここフィンランドで提供する鶏肉は国産か輸入産か、また、グローバルなファーストチェーンよりは地元のレストランやカフェを支援すべきだ、などとオープン前から活発な議論が行われていました。

ちなみにKFCでは、動物愛護に関する5つのガイドラインを策定し、他のファストフードチェーンよりも透明性が高いと言われています。ただイギリスとアイルランドの自社製品に使われている鶏の3分の1以上が足皮膚炎(動物が正常に歩けなくなる痛みを伴う足の病気)を患っていることを認めています。

このような情報開示や昨今の気候変動問題を通じて、若い世代を中心にヴィーガン(菜食主義者)も浸透しはじめており、こうした店舗オープンに対する抗議も高まっていました。

ただ抗議の方法が、米国の抗議グループやスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのように組織やメディアに真っ向から対立するのではなく、鶏肉愛好者と見せかけておいて群衆が注目するオープン当日にスピーチを企む方法は、したたかさが垣間見られるフィンランド人の国民性だと、著者の目には写りました。

日本と比較すると、日本ではKFCは「クリスマスメニュー」の一つと捉えられている部分もあるかと思いますが、もちろんフィンランドではKFCとクリスマスは無関係です。また日本ではこのような抗議活動が展開されることは、まずほぼ皆無かと思われます。

グローバルなファーストチェーン店をひとつオープンするにあたり、フィンランドの反響は思いのほか大きく、そして著者にとっては改めて国民性を知る機会になりました。

参照記事及び写真出典元:
https://yle.fi/news/3-12184346

KFC, Citizenship Report 2020
https://www.yum.com/wps/portal/yumbrands/Yumbrands/citizenship-and-sustainability/reporting-and-disclosures

2021/12/02

海外だより:フィンランドより一覧

「システム障害」みずほはどうすべきだったか

みずほ銀行のシステム障害

2021年11月26日にみずほ銀行に対し、財務省と金融庁から、外為法違反に係わる命令が発出されています。これは9月30日に発生したシステム障害に関してのものです。実はこの日、同行は本年8度目のシステム障害のただ中にありました。この障害により外国送金約400件が遅延状態に陥ってしまったのです。

同行はこれらの送金処理を急ぐ余り、決定的なミスを犯します。マネーロンダリングのチェックを、後回しにしてしまったのです。これは外為法では認められていない処理方法です。幸いこれらの送金に問題はなかったようですが、結果オーライが違法性を阻却するわけがありません。結果として今回の厳しい措置につながってしまいました。

そこで今回は自分が当事者だったらどう対応しただろうか。これを考えてみたいと思います。先ず公表されている事実関係から、当日の現場をフォーカスします。当日は9月30日。これは月末。しかも半期毎の期末日です。猛烈に忙しかった事に間違いありません。オンラインが正常稼働していても、送金依頼の山は中々減りません。

そんな日のシステムダウン。これは絶望的としか言いようがありません。関係者全員の暗澹たる気持ちは、察して余りあるものがあります。それでも現場は頑張って殆どの送金処理を終えたのだと思います。そして問題の400件弱が残りました。ここで誰がゴーサインを出したのか分りませんが、「マネロンチェックを後回しにして対外発信する。」こう判断したのです。

これは絶対に止めるべき判断でした。「それは不味い!」「金融庁から一発ですよ!」「財務省に怒られる!」何でも良いと思いますが、誰かがそう言って止めるべきでした。振り返って我が身に置き換えると、こんな判断が降りてきたら、本気で本部に確認を取ります。それほど異常な話なのです。しかし実際はどこの段階でも歯止めは効きませんでした。その無制御振りを金融庁も財務省も問題としたのです。もっともこのお話し真逆の可能性もあり得ます。殆どの送金を止めて、400件弱だけ取り組んだのかもしれません。しかしこれでは別の意味で大問題となってしまいます。このパターンでは無さそうです。

ここまで述べてきて、「代行送信」の可能性に気づきました。「代行送信」とは文字通り他行に代行で発信してもらうものです。過去私も頼んだり頼まれたりしたこともあったのですが、その際送金内容は全て依頼銀行側が責任を持ちます。とすれば今回マネロンチェックがされてませんので、みずほ銀行は送金内容については大丈夫。間違いない。こう言えません。無理筋のお願いとなります。(更に言えば400件も頼めません)

やはりここは400件弱の送金は未発信分として、お客様にお詫びして、翌日以降の発信でご諒解を得るしか有りません。もし発信遅延で実損が出た場合は、当然賠償の問題となります。誠意を持ってお客様に対するしかありません。以上、私なりの考えをお話ししました。

最後に金融庁の業務改善命令に注目したいと思います。この命令の第九項に述べられている、
(3)顧客影響に対する感度の欠如、営業現場の実態軽視
(4)言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢
この二点は非常に重たく、顔から火が出るくらい恥ずかしいものです。

みずほ銀行の外為担当者にとって信頼回復への道のりは、相当に困難を極めると思います。信用は一瞬で消え去りますが、回復には年単位が掛ります。が、この二点を忘れずに、基本に忠実に対応して貰えればと思います。

参考サイト:
財務省 みずほ銀⾏に対する⾏政処分について(令和3年11月26日)
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/press_release/20211126.html

金融庁 みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について
https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211126/20211126.html

2021/11/29

貿易と銀行実務いろは一覧

非営利団体の活動資金フランスはこんな風に集める!

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自分の所属している趣味のサークル、職場、子供達の学校などでお金を集める場面が出てきた場合どうするでしょうか。フランスでは、例えば職場の誰かへのお祝いを皆で集めるという時、金額は各自の判断で決めると事がとても多いです。あくまでも強制ではなく、各自の意思で参加することを尊重しているように感じます。

また、より多くの金額を集める場合などは、ネットから参加できるクラウドファンディングも浸透してきています。しかし、ネット環境に馴染みのないシニア世代も未だに多いのが現状です。

今回は学校やスポーツクラブなどの非営利団体の資金集めについてレポートします。

学校や非営利団体で生じる活動資金の主な使い道は、修学旅行や社会科見学そして道具などの買い替えです。父兄や会員からお金を徴収する前にまず行われるのが外からの資金集めです。各地域の自治体に資金サポートを申請と同時に、色々なイベントを企画します。

一般的なのは物品販売です。不用品を売るバザー、手作りお菓子の販売、福引を作り参加してもらうなどです。これらのものは、事前準備として材料や景品を買うなど先行投資が必要になります。加えて、イベントを運営するスタッフの手配やスケジュール調整などもなかなか大変な面もあります。

そんな中ここ数年で人気を集めているのがカタログ販売です。例えば学校で修学旅行の計画が持ち上がります。通信販売をしているチョコレート販売会社からカタログが配られます。オーガニックのチョコレート、ギフトセットやビスケットなど色々な商品が選べるようになっています。

カタログには正規の販売価格の横に、10パーセント割引された価格が記されており注文する側はこの割引価格で買い物ができる様になっています。なおかつ契約したPTAやスポーツクラブは、売り上げの25%を受け取れます。

フランス人はチョコレートが大好きな国民です。親戚などにこのカタログをみせて、旅行の計画を話すと殆どの人が心よく注文に応じてくれます。寄付などには積極的にしてくれるフランス人なので、子供達の見聞を広めるとなれば喜んで参加してくれます。

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フランスでもペーパーレス化が進んでおり綺麗なカタログを手にする機会が減ってきています。特にシニア世代には、カタログをみて注文できるという手法は馴染みがあり、支援をお願いしやすいと言えましょう。

実際、各家庭5件程度の注文を取り付けてきます。クリスマス前の時期ですと自分用と贈り物用にと買うこともあり一件5000円以上の注文が簡単とれてしまいます。送料込なのも手軽です。

昨今の社会情勢から父兄や生徒が集まって何かを販売することが難しいことから、カタログ通販会社とタイアップしたこのような方法であればリスクや負担を軽減しながら資金集めができます。また、販売数が多ければ各自の自己負担金が減るという事もあり、提案する側の士気も高まります。

商材はチョコレートの他にもスペイン産のオリーブオイル、農家直売のチーズなど食べ物が多いのですが、春には家庭菜園の苗、クリスマスにはもみの木などもあります。

しかし何と言ってもチョコレートが一番人気のようです。通販会社は個人客と団体購入と客層を広げるシステムをしっかり構築しており、なおかつ金銭的余裕のあるシニア世代に買ってもらえる様なカタログの作成などの工夫が支持されている理由なのかもしれません。

2021/11/24

海外だより:フランスより一覧

銀行員の出張

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いつ行ってもお店の中にいるイメージが強いのが銀行員。しかし営業担当は、日中殆ど店内にはいません。(ある意味当たり前?)彼等、彼女等は、担当先・新規先を積極的に訪問しているのです。多くの取引先は自店テリトリー内です。遠くても半日で往復できます。しかし全く遠出(出張とも)をしないかと言えば、そうでもありません。

銀行本部主催の東京での全国会議や本部集合研修などは、ほぼ終日or宿泊で出張をしていました。(これは典型的例です)
これとは別に、お取引先からお声掛かりで出張することもありました。今回はこの辺の所をお話ししてみようと思います。

私が新米担当者の頃、外為基幹先だった機械メーカーのお話しです。この会社は主に中国・東南アジア諸国向けに輸出をしていました。本社は大坂でしたが、主力工場は滋賀県にありました。銀行に持ち込む輸出書類は本社で作っていたのですが、製品そのものは滋賀から直接輸出していました。

この会社の方針として、取引銀行には自社製品を理解して欲しい。そのためには自社工場まで足を運んで貰うのが一番の良策。こう言った考えから、年に一度工場見学に招待してくれていたのです。或る年、そのお鉢が私に回ってきました。候補日は幾つかあって、選べるようになっていました。いずれも土日ではありません。その時私は思いました。これこそ正に公務出張ではないだろうか。何やら自分が一段の高みにアップしたような、取引先からも一人前として認められたような。そんな気になったのです。

当日朝、勇躍そのお取引先本社に参上しました。実を言うと、そこにいたのは私一人ではありませんでした。招待されたのは支店長と私の上司、そして私の三人。要するに私は鞄持ちだったのです。しかしここで私は気を取り直しました。相手から見たら、銀行の看板を背負っているのは三人一緒。なら卑屈になる必要は無い。喜んでおもてなしを受けよう。なんとも都合の良い結論ですが、これで気が楽になりました。

さて我々の相手をしてくれるのは、先方の専務と経理部長です。こちらはお二方共に普段からよく知ってますし、何より自分はその会社を店の誰よりも分っている。こう自負していました。その辺の事情が明確になると、この日は大変楽しい出張となりました。工場では工場長さんから製品の説明を受けて、実際に製造されている工程を見せて貰ったりすると、今まで船積書類でしか出会えていない商品達が、実に生き生きとして迫って来るようでした。

工場見学自体も大変有意義だったのですが、工場の食堂でご馳走になった昼食。これが大変美味しく、普段多忙で昼食難民の身としては、少し羨ましくなってしまいました。午後は近場の名所・旧跡を案内して貰い、まるで大名旅行のようでした。夕刻は近くの割烹料亭に招待されました。地元の特産品に舌鼓を打ちながら、懇談に相勤めていると、よしこの会社のために、一肌脱ごうと思えてくるのでした。バブル華やかなりし頃とは言え贅沢な話です。

しかし翌日からは一転、多忙な日々が戻ってきました。そして二度とこのような出張は有りませんでした。今となっては遠い記憶の片隅の出来事です。懐かしい反面、不思議な気持ちがする出来事でもありました。今でもこんな話はあるのか。現担当者に聞いてみたいものです。

2021/11/20

貿易と銀行実務いろは一覧

貿易業務におけるテレワーク

テレワークで貿易業務を行う

世の中が「コロナ禍」と言われ始めた頃には新鮮に感じた「テレワーク」や「在宅勤務」といった言葉もすっかりおなじみとなりました。

私が会社勤めをしていたころには在宅勤務とは育児や介護で出社の難しい社員の為に設けられているような制度というイメージでしたが、現在では、社員の健康を守り感染拡大を予防もする、無くてはならないというか企業にとっては当たり前の制度となっています。このこと一つを取ってみても、世の中というのは何がどうなるのか先のことは全くわからないものだなぁと改めて感じます。

そんな、もはや世間の定番となったテレワークですが、貿易関連ではどのようにテレワークが行われているのでしょうか。私が現在お仕事で関わらせていただいている某フォワーダーでは、海上輸送における「shipping instruction」(以下、S/I)の作成をテレワークにて行っています。

S/IはBLやWaybillに記載される情報のベースとなる書類です。一般的にはフォワーダーが作成し、決まった様式はないものの主要項目はほぼ共通しており、どのフォワーダーも同じような書式で船社に提出しています。記載される項目は輸出入者名や船名、コンテナ本数など決まった項目が大半を占めていますので、bookingの際のコンファメーション書類などを見れば割と難なく作成できる書類です。そのため、システムをネットワークで繋ぎ、自宅でテレワークをしている従業員が送付されてきた書類の内容を確認してシステム上でS/Iを作成し、船社へ送付するという流れでスムーズに作業が進んでいるようです。

他には、船社へのBooking申請も、テレワークで作業しやすい業務内容であると思います。コンテナを予約する際には、希望する船社へ、希望する船名やコンテナ本数、輸出入者名やコンテナピックアップ日時などを連絡します。一昔前はFAXや電話、メールなどが主流でありましたが現在はほとんどの船社でインターネットによるBooking申請を受け付けています。IDとパスワードさえあれば各船社のホームページから予約できる場合が多く、テレワークでも何ら問題なく作業ができるでしょう。

これら以外にも考えてみますと、事務系作業ではコンテナのピックアップオーダー(港からいつコンテナを引っ張るかの予約)やトレース作業(船が現在どこにいるかの確認)、顧客対応系作業では発行されたB/Lのデータでの送付や現地へのシッピングアドバイス(どういう貨物がどの船でいつ到着するかの連絡)送付など、色々な作業が貿易業務においてもテレワークで出来ると思います。

元々が紙ベースで進められることの多い作業ですので、紙データを電子化することさえできれば、貿易業務は非常にテレワークと相性がよいと言えるのではないでしょうか。

2021/11/12
輸出入よもやま話一覧

事務の基本は「正・速・美」

事務の基本は正・速・美

研修講師のとき、新入相手に良くこの話をしてました。枕に「事務の」とありますが、別に事務に限りません。営業の場面でも大いに役立ちます。研修生には「憶えておいて損の無い話だよ。」こう言って話してました。今回はこの「正・速・美」についてのお話しです。

1.「正」とは、とにかく「正確」であること
ここでも何度となく触れていますが、銀行はお金を扱う商売です。銀行が間違っていては、文字通り商売になりません。しかも一度間違うとそれを正常にするには、当初の三倍の時間がかかってしまいます。つまり間違った処理や対応を「1」とすると、それを訂正するのに「1」、正しい処理や対応に又「1」かかります。つまり「1+1+1=3」となるわけです。

実際にミスが発生すると当人は狼狽してしまい、なかなか正しい手順戻れません。思った以上に時間がかかるのです。その意味でも「1+1+1=3」上手い表現と言えます。

2.「速」とは手際のよいこと。単にスピードの問題では無い
二番目は「速」です。これも言うは易く行うは難しです。日々の業務から一例を挙げたいと思います。営業店では日常業務(多くは午後3時まで)終了後に、店全体の勘定を合わせます。現金勘定と振替勘定の両方がゴメイ(勘定一致)となれば、基本的には終業体制となります。つまり帰れるようになるのです。

しかし「速」が失われると、この勘定合わせに異常に時間がかかります。各課、各係の締め上げ(当日勘定照合のこと)が中々揃いません。正しいのですが歩みがのろいので、何時までも店全体が合いません。このように単に「正」だけでは目的が達せられないことが多々あります。「速」あっての「正」と言えます。

3.最後は「美」です
これは前の二つに比べて理解が得にくいものです。「美」といっても勿論美的センス云々ではありません。言い換えると、「乱れなく整っている」と言えば良いでしょうか。なんでこんなことが重要かと言いますと、例えばお客様のご依頼を処理した場合を考えます。正しく早く出来上がっても、見るからに乱れて整って無ければ、お客様は何と思われるでしょうか。頼むからもう少し丁寧にやってよ。こう思われると思います。

これでは「正」「速」が出来ていても、評価はガタ落ちです。或いはこれは良くあったのですが、本部の臨店検査や金融庁検査などで、過去の取引記録を提出することがあります。これらの資料が「美」の条件を満たしていると、言い換えれば「乱れなく整っている」の状態であれば、検査官の心証は良好ですし検査結果も上向きになります。しかしその真逆の資料を出したらどうでしょうか。検査官の心証も真っ逆さまです。これではいけません。

こうならないためにも「美」の意識は持つべきだし、それを心掛けるべきなのです。如何でしたでしょうか。「正・速・美」。よかったら一度考えてみませんか。

2021/11/07

貿易と銀行実務いろは一覧

「B/L」の代わりに「FCR」は有りか?

輸出書類にB/L(船荷証券)の代わりにFCR(貨物受取証)

今回は輸出書類にB/L(船荷証券)の代わりに、FCR(Forwarder’s Cargo Receipt:貨物受取証)を添付した場合に、銀行は買取に応じてくれるか。この点を検討したいと思います。(恒例のAIBA論壇からになります)

このFCRですが邦語表示が示すように、有価証券ではありません。受取証に過ぎません。つまり担保価値はないのです。銀行は船積書類を買い取るときに留意するのは、当該貨物を担保として取得できるかどうかです。担保として取得可能であれば買取も可能と判断します。しかし取得不可であれば買取も出来ないことになります。

それでは実際に貨物を担保に出来なくても、買取に「応じている」「応じていない」どちらでしょうか? ここからがいかにも銀行らしいのですが、その判断基準を与信判断にリンクさせているのです。買取を依頼してきた顧客に信用扱いの与信が打てるのであれば、買取に応じているのが実際の所です。この場合結論としては買取には「応じる」です。

逆に信用扱いの与信を打てそうもない顧客に対してです。これはL/CベースとD/PD/A(L/C無し)での場合分けをします。D/PD/Aベースでは具体的な保全がなければ、信用扱い(すなわち無担保)での買取は、かなり高いハードルになります。何らかの保全が買取の前提条件となるでしょう。

ではL/Cベースはどうでしょうか。ここは議論が分かれるところです。原則論から言えば無担保与信が取れない先柄であれば、買取は否定的なニュアンスになっていきます。しかし以下の理由により私は買取もありと考えます。

理由その一
信用状統一規則にはFCRに関する規定はない。信用状統一規則にはB/L、海上運送状(Seaway bill)、傭船契約船荷証券(Charter Party B/L)等の規定はありますが、FCRの定めはありません。こういった規定のない物は、当事者間での取り決めとなります。つまり銀行を含め関係当事者全員で了解すれば、FCRでの取扱は可能と考えます。

理由その二
実際のL/Cには、担保権が確保されていないB/L条件もある。L/C条件の中には「B/L一部直送の許容」や「サレンダードB/L(元地回収B/L)許容」といった担保権の無いものもあります。信用状統一規則に定めの無いこういったB/L条件でも、L/C条件にそう定めてあれば邦銀では買取に応じています。となるとこれらが良くてFCRは駄目という。議論はかなり困難です。むしろ実務上は買取に応じるのが素直と感じます。

理由その三
L/C開設における煩雑さは僅か。もしFCRを認めるL/Cを考えた場合でも、敢えて条項を新設しなくても、B/Lに関する条項を全て普通に整えた上で、その他条件欄でFCR許容文言を追加すれば、顧客の要望は充足されます。例えばA FCR(Forwarder’s Cargo Receipt) is acceptable.(I/O original B/L).と表示すれば良いと考えます。ちなみに I/Oはinstead of の略です。

以上FCR に関する銀行の対応についてでした。

参考サイト:JIFFA - 一般社団法人 国際フレイトフォワーダーズ協会
JIFFA FCR (Forwarder's Cargo Receipt)
https://www.jiffa.or.jp/documents/fcr.html

2021/10/31

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! フィンランドにおける外国人の労働市場は今

フィンランドにおける外国人の雇用面接

コロナワクチン接種が対象者の約8割に届く状況となったフィンランド。10月からは、商業施設などは全て通常営業に戻り、リモートワーク推奨の制限も解除されます。それに伴い経済も少しずつ回復してきていますが、いまだに失業率が7.6%と他国に比べて高い割合になっています。

その中でも外国人における失業率が、外国人全体の27.5%に達しています。こうした状況を分析するためにフィンランドのエンジニアおよび建築業界のキャリア開発団体である「Tekniikan Akateemiset」が「移民の国際労働市場での地位に影響を与える要因を特定する」プロジェクト結果が発表されました。今回はフィンランドにおける外国人の労働市場の現状を簡単に紹介したいと思います。

この報告書によると、フィンランドの労働市場における外国人は、フィンランド人に比べて偏見、フィンランド語の過度な高レベルの要求、差別、資格や経験の認知不足、低賃金などが雇用の妨げになっていると指摘しています。このような要因を主に5つ特定し、それぞれに関する提言を発表しました。

1.「流暢なフィンランド語」が必須
多くの求人募集では「流暢なフィンランド語」という条件を目にします。しかし「流暢な」とは実際には何を意味するのでしょうか?全ての職種に「流暢さ」は必要なのでしょうか?また外国語のアクセントがあるだけで「流暢さ」には至らず、不適切なフィンランド語を話しているとみなされてしまうことがある、と指摘しています。

今回の調査では、雇用主が特定の仕事に必要な言語能力を適切に判断するためには、フィンランド国家言語能力証明書YKI(1-6)と欧州言語共通参照枠(A1-C2)のレベルの内容をもっとよく知るべきだと提言しています。

こうした求人広告における「流暢なフィンランド語」という条件は、外国人を雇用しないための言い訳である、とも指摘しています。

2. 海外で取得した教育や仕事の経験が認められない
外国人のスキルや資格が、採用プロセスや職場で認められないことはよくあることだ、と指摘しています。フィンランドでは母国や他国で培った知識や経験を基に職業に就いている外国人は少なく、全く新しい職業を学ばなければならなかったり、以前の職業について再教育を受けなければならなかったりする人が多くいます。

調査の過程では、外国人はスキルがないと思われていたり「フィンランド式の仕事のやり方」について教育を受ける必要があると思われていることが多い、ということがわかりました。外国人がフィンランドでの仕事の仕方を知らないという仮定は、フィンランド国外での教育や仕事の経験に対する差別的な態度を示している、とも指摘しています。

3. フィンランドで仕事の経験を積むための人脈や機会の不足
技術分野におけるフィンランド人と外国人の新卒学生を比較すると、仕事の経験や雇用に大きな違いがあることがわかります。
例えば仕事やインターンの経験があるのは、
フィンランド人新卒者:29%が2年以上、34%が1~2年の経験
留学生:4%が卒業時に2年以上、16%が1~2年の経験

実際、卒業時に就職活動をしている留学生の数は、フィンランド人の2倍にものぼると指摘しています。

4. 官僚主義
外国人にフィンランドへ入国し滞在してもらうためには、フィンランドへの移住や滞在のプロセスを簡易にしなければならないと指摘しています。滞在許可証の処理時間やビザの所得要件を引き下げるべきだと、具体的な提言も記載されています。

5. フィンランドの労働市場と従業員の権利に関する知識の欠如
フィンランドの労働市場は法律と労働協約に基づいており、従業員の権利が守られています。しかし外国人にとっては、自分の権利やフィンランドの労働市場のルールを知ることは大変な努力を必要とします。情報提供を行う言語をフィンランド語と英語の両方で提供することを提言しています。

このような要因は、技術分野(主にIT)に留まらず多方面から耳にし、実際に著者自身も経験したことがあります。個人事業を営む傍ら、言語のレベルアップを図ったり、自身の専門分野のレベルを維持したり新しいことを学んだりしても、フィンランドの労働市場へ参入するのは、そう簡単ではないと感じています。

フィンランドの大学で博士号や修士号を取得しても、残念ながらこの国で活かすことなく、日本へ帰国されたり近隣諸国へ移住したりという日本の留学生さんたちも今までに幾人もいらっしゃいました。

一見すると国際的に開かれた労働市場であるフィンランド、と認識しがちですが、意外にも内向的な傾向がみられ、外国人に対する労働問題は長年に渡って山積したままであるようです。

報告書:Immigrants’ integration into the labor market in Finland
https://lehti.tek.fi/english/language-requirements-prejudice-hinder-recruiting-immigrants

ニュース記事:Migrants suffer lower pay, prejudice, discrimination in Finland
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/union_report_migrants_suffer_lower_pay_prejudice_discrimination_in_finland/12114024

失業率:Employment increased and unemployment decreased clearly
https://www.stat.fi/til/tyti/2021/08/tyti_2021_08_2021-09-21_tie_001_en.html

写真出典元:
https://www.thenomadtoday.com/articulo/work-in-finland/in-finland-it-is-hard-to-find-work-unless-you-have-contacts-according-to-foreigner-fi-readers/20200225085157004457.html

2021/10/26

海外だより:フィンランドより一覧

「現金その場限り」を実感したとき

現金の束

銀行業務の原則の一つに、「現金その場限り」というものがあります。これは文字通り、現金の授受はその場で関係者全員が確認する。後で「多い」「少ない」と言っても駄目。という当たり前のような原則です。

銀行員なら誰でも耳にタコができるくらい言われます。実際に仕事をしていると、この原則が身に染みる場面が多々有ります。銀行はお金と縁が切れませんので、時代を超えての原則と言えます。今回はこの「現金その場限り」を、違ったニュアンスで実感したお話しです。

時は今から30年ほど前、バブル景気華やかなりし頃です。お取引先のデベロッパーが、総額60億円で宅地開発を行いました。ほぼ全額を銀行借入で賄った上で、開発後の商業ビル売却で一括返済。こんなスキームの話です。

その当時既にバブル崩壊の懸念が出ていた時期でもあり、銀行としても複数行で協融体制を取ってリスク分散を図りました。さていよいよ売買取引と融資実行という段階になったとき、このデベロッパーから珍しい依頼がありました。それは取引当日に現金で3億円用意して欲しいというのです。

売買当日に手数料名目で、現金が授受されるのは良く目にします。しかし3億円というのは総額が60億円とはいえ大きな金額です。事情を聞くと売主側からのたっての依頼のようです。そこで現金は当日取引時間に間に合うように手配しました。不動産売買では銀行が融資をして担保を設定するため、取引場所が銀行の応接室になる事があります。今回は参加人数が20人を超えそうだとの情報で、店の会議室を用意しました。

現金はそこに持ち込むことになりました。売買当事者が全員揃ったところで、銀行依頼の司法書士が所有権の移転登記と、抵当権の設定登記書類の完備を確認しました。ここでデベロッパーに対し融資金が交付されます。と同時に現金も受渡がされました。私と言えば当日はヘルプで隣の部屋に控えていたのですが、チラ見したところ用意された現金は日銀封のものでした。

少し説明すると、日銀封とは日銀が同一金種を100枚ごとに数えて、束にしたものをさらに10束まとめたものです。普段見る機会は全くないと思いますが、大変に信用力あるものなので、我々も日銀封緘印があるものは、まき直しをせず使っていました。一方他行封緘の束はそのままとは行きませんので、すべて数え直して自行の封緘印を押していました。これをまき直しと呼んで正直大変な作業で、窓口担当の悩みの種でした。

さてこの日銀封の現金がどうなったのか。この後は売主側に渡ったのは間違いないのですが、銀行担当者は席を外して欲しいとの依頼だったので、詳しくは分りませんでした。しかし小一時間が経過して20人ほどいた関係者が、三々五々紙袋を大事に抱えて会議室から出てきました。入れ替わりに入ってみると現金は綺麗になくなっており、大封紙(おおぶうし)と呼んでいた日銀封緘印のある、札束を結束していた紙だけが机の上に残されていました。

文字通り現金その場限りだったのです。3億円という一生涯かけてもお目にかかれないような現金でも、20人が相手では小脇に抱えられる程度になるのか。そんな不思議な感覚を持ってしまいました。

参考サイト: 銀行見学 | 商業科(課題研究) | 一般社団法人 全国銀行協会
https://www.zenginkyo.or.jp/education/support/support03/sakaidesho-h/shogyo/report02/

2021/10/24

貿易と銀行実務いろは一覧

輸出書類の買取と取立

銀行に輸出書類を持ち込む

輸出を扱う皆さんは銀行に輸出書類を持ち込む際に、買取で依頼しますか?それとも取立の依頼でしょうか?

特に調べたわけではありませんが、多くの場合L/C付の書類は買取、D/P・D/A(L/C無)は取立。こう区分けしている会社が多かったようです。実はこの区分け、銀行から見ても意味がありました。今回のお話しはこの辺りになります。

さて買取とはなんでしょうか。一言で言えば銀行が輸出者から債権譲渡を受けることです。銀行はその対価として買取代わり金を支払います。ここを捉えて買取と呼んでいます。この効果は輸出者から見ると不渡り等がなければ、銀行の買取を持って資金回収終了と見なすことも可能な点です。(正しくは最終決済までの期間金利が追加請求されますが)

次に取立ですがこちらは銀行に対して取立の委任をするだけです。若干の手数料は払いますが、債権譲渡は発生しません。輸入サイドから入金があって初めて資金回収となります。このことから銀行から見ると与信を起こすのが買取、起こさなくて済むのが取立という区分けになります。

では銀行は買取と取立をどう考えているのでしょうか。まず買取ですが、これは取引形態と輸出者の信用状態がポイントです。L/C付(信用状付)であれば、L/C発行銀行の支払の確約が有ります。輸出者に少々難があっても、発行銀行に乗っかれば対応できます。良くあったのが年商相当のL/C買取が持ち込まれても、発行銀行が一流銀行で書類もクリーン(条件違反無し)であれば、そのまま応じる。と言うものでした。これなど国内融資と外為の違いが良く出ていると思います。(国内融資では年商相当の貸金など打ちませんので)

D/P・D/A(信用状無し)の場合は少々異なります。輸出手形保険で保全を補強しても、輸出者自身の与信状況がポイントになります。多くの場合D/P・D/A(信用状無し)では、取立が第一選択となります。以上が銀行サイドの考えなのですが、これらを理解すると、顧客サイドとして対応が見えてきます。

L/C付であれば先ずは買取が大前提となります。もし資金繰りに余裕が有り、立替金利を払いたくない。こう考えるのであれば買取では無く、プリテンドネゴという方法もあります。このプリテンドネゴですが銀行によって呼び方が違うので、内容を説明して銀行に検討を依頼して下さい。ポイントは銀行との間では取立処理なのですが、対外的には買取表示をして貰うと言うことです。

次にD/P・D/A(信用状無し)の場合は、輸出手形保険も一法ですが、キチンとした担保を提供するの有力候補になります。不動産や有価証券がその代表例です。もしそれでも上手くいかなければ奥の手があります。それは預金担保です。最初からこの話を持ち出す必要はありませんが、第三者名義の預金や他行の預金でも担保になり得ますので、どうしても買取に対して銀行がネガティブの場合使ってみて下さい。担保設定期間もa/s物(一覧払い)であれば、1ヶ月有れば何とかなります。

今回は買取と取立についてでした。

2021/10/18

貿易と銀行実務いろは一覧

日本のアイスクリーム、輸出が絶好調

日本のアイスクリーム輸出

この10年くらいで、日本のアイスクリームの輸出が絶好調とのことです。2020年はなんと輸出の金額も数量もどちらも過去最高を更新したそうです。2021年の上半期も前年同期を約四割上回ったそうですので、もしかしたら2021年は最高記録がまた更新される結果となるかもしれません。

アイスクリームの輸出が伸びていることの一つには、昨今の世界的な和食ブームがあります。2013年に和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に選ばれて以来、世界中で日本食がブームとなっているのです。特に、抹茶や小豆といった和の素材を使った商品が人気になりやすいようです。

アイスクリームには抹茶味や小豆入りなどの種類が数多く見られますので、外国の方の興味を引きやすいと思われます。今年は東京オリンピック・パラリンピックも開催されて日本食がさらに注目を浴びていましたね。オリンピック開催中に、外国の記者の方がコンビニアイスを食べてあまりの美味しさにSNSで絶賛していたことも話題になりました。より一層、日本のアイスクリームに注目が集まっていること間違いなしです。

そんな世界的な和食ブームに加えまして、日本からの輸出品に課される関税の削減が実現してきたことも要因の一つと考えられています。2018年8月に発行した環太平洋連携協定(TPP)では、アイスクリームや氷菓の関税がオーストラリアで即時撤廃されました。2021年1月発行の日米貿易協定でも、2024年までに20%から10%への引き下げが決まっているそうで、こうした背景によりアイスクリームの輸出は右肩上がりに伸びていくと予想されています。

アイスクリームを製造する各メーカーも、海外事業を本格化させたり、現地生産に乗り出したりと、海外市場の開拓を加速させているそうです。これからますます日本のアイスクリームが世界中に広まっていくことがとても楽しみです。

さてそんなアイスクリームですが輸出される際の統計品目番号は2105.00に分類されます。こちらには、ミルク又はクリームをもととして調整されたアイスクリーム及びその他の氷菓(シャーベット、アイスキャンディー等)が含まれます。

輸入統計品目表/関税率表
https://www.customs.go.jp/tariff/2020_4/data/j_21.htm

輸送にはもちろんリーファーコンテナが使われます。冷凍輸送が可能なコンテナを用いて決して溶けないように輸送されます。輸送中だけではなく港での保管中にも冷凍させておかなければならないので、冷凍倉庫のある港に搬入しなければなりません。

したがってアイスクリームの輸出は主要港からされることがほとんどです。倉庫からコンテナに移動される際にはコンテナが既に冷えている必要がありますのでコンテナ内部のプリクール(予冷)も必要となります。もちろん、そのコンテナを輸送するドレー車両も、MGシャーシと呼ばれる、発電機付きの車両を用意しなければなりません。

アイスクリームの輸出にはかなりの費用と手間がかかっています。世界中のどこでも日本のアイスクリームが同じ品質で食べられるのは、フォワーダーの努力があってこそと言えるかもしれませんね。

参考記事:
中日新聞 「あずき、大福…和製アイスが熱い和食ブームで輸出右肩上がり」
https://www.chunichi.co.jp/article/320843

2021/10/11
輸出入よもやま話一覧

B/L(船荷証券)裏書は全通に必要か

B/L(船荷証券)の裏書サイン

今回は裏書きが必要な銀行経由のB/L(船荷証券)に、裏書もれが有ったときの銀行対応についてです(AIBA論壇の最近のトピックスより)。例によって具体的な説明は無いのですが、銀行対応を知りたい企業担当者からのようです。

それでは、まずなぜB/Lに裏書が必要なのかですが、これはB/Lの有価証券性が大きく影響しています。一般に有価証券の譲渡には裏書が必要です。B/Lも有価証券ですから、裏書が無いと譲渡出来ません。(記名式B/Lのように裏書不要の場合もありますが)

次に裏書漏れがどこで発見されたかです。輸出国サイドでなら、何を於いても裏書補記に全力集中です。「裏書は同じ人がしなければならない。」とのたまう、銀行があると聞いたことがあります。しかし私は寡聞にして、そんな規定聞いたことはありません。(所詮はインハウスルールでしょうか?)信用状統一規則にもそこまでの決めはありません。よって正当なサイン権限者であれば、その内の誰かが裏書をして、形式を整えれば良いことになります。

これを裏書補充優先の原則と呼ぶことにします。次に輸入国サイドで発見された場合です。これは輸出国のチェックを、何らかの理由で通り抜けたことを意味します。そこで受け取った輸入国銀行の対応が問題になってきます。銀行としての実務対応は、大きく二つに分かれます。

一つ目は全通裏書漏れの場合でなければ、つまり一通でも裏書きがあれば、輸入者の了解を前提に、そのまま手続きを進めてしまうやり方です。ご承知のようにB/Lは一通で貨物は引き取れますので、他のB/Lの不備には影響されないからです。また輸出国銀行に裏書漏れを通知するかどうかは、やや考慮すべき事項となります。

過去微細な不備を先方に通知したところ、先方銀行からB/L全通の返却を要請されました。こちらは顧客に確認の上それに応じたのですが、再入手に手間取り通関が遅れてしまいました。やむなくL/G(荷物引取保証)を発行したのですが、顧客にその部部分での追加負担をお願いすることになりました。それ以降はこのことは、注意点として皆で共有しました。

二つ目の方法は輸出国銀行に電信で裏書漏れを通知して、先方からこちらでの補記訂正の了解を取り付けることです。しかしこの方法はいくら先方の了解の得るとはいえ、銀行自身で裏書をすると言うことです。事務規定に何も定めなんか有りませんでした。当然でしょうね。異例事項ですから。本部協議です。

私は常にこの可能性も頭に置いてました。しかし本部と協議して説得できる自信はありませんでした。つまりこの方法は画に描いた餅だったわけです。よって実務上は一番目の方法に全力投球でした。懸念があるとすれば船会社からのクレームでしたが、
船会社にしてみれば全通回収できて、その内一通にも裏書があれば他は気にしない。こう判断していたのでしょう。

一回もクレーム騒ぎにはなりませんでした。今回はB/L裏書漏れについてのお話しでした。

2021/10/07

貿易と銀行実務いろは一覧

コロナで変わったトルコの引越し事情

トルコの1LDKのアパート
コロナ時代の引っ越しは小さい家を選ぶ傾向があります

トルコの新学期は9月に始まります。大学の合格発表も7月の末から8月の頭のあたりに出ることが多くなっています。そのため、8月から9月にかけては、引っ越しシーズンになります。ところが、トルコでも2020年の3月に最初のコロナ患者さんが出た後、状況が変わりました。

学校の授業はインターネットを通したものになり、多くの官公庁や会社の仕事もテレワークに移行したため、大学や会社のある街に住む必要が無くなりました。2020年3月26日以降、全国の大学で授業がインターネットを使ったものになると決められ、多くの学生寮も閉鎖されると発表されました。学生寮は、海外から帰ってきた人たちの隔離施設として使われるようになり、寮にいた学生は実家に帰らざるを得なくなりました。

寮にいた学生だけでなく、家を借りていた学生たちも、借りていた家を畳んで実家に帰る人が多くいました。そのため、2020年4月に3ヶ月から6ヶ月のスパンでの貸倉庫の利用が前年に比べて77%増えたといいます。通常、6月から9月にかけて貸家が増えるのですが、2020年は4月に空き家がどっと増え、家の窓に、貸家表示されている家が多くみられるようになりました。

トルコのアパートの窓には貸部屋の広告pic_turkey20211003_2
部屋の窓には貸家の広告が

トルコで家を探す際には、インターネットの不動産サイトも使いますが、最も多いのは住みたい地区を歩いて探す方法です。貸家にはKIRALIK、売り家にはSATILIKという表示がされ連絡先も書かれています。気になる家があったらその場で電話をして、家の大きさや家賃などを問い合わせ、条件に合うようであればその場で見せてもらいます。

気に入ったら、そのまま不動産屋さんか大家さんと契約交渉に移ります。間に不動産屋さんが入る場合には、家賃の12か月分の12%を手数料として支払います。家によって、日本の敷金に当たるデポジットが設定されていて、家賃1ヵ月分から3ヶ月分くらいを要求されることもあります。これは、退室時に返ってくることになっていますが、残念ながら、外国人の私はあまり返してもらえたことがありません。

統計によると、2020年の下半期には引っ越しが前年に比べて44%増えたといいます。興味深いことにパンデミックの下、3LDKの大きめの家への引っ越しが4%減り、1LDKの小さな家への引っ越しが逆に4%増えたと言います。

トルコの引っ越しはリフトで行います
引っ越しにはリフトを使います

トルコにも引っ越し業者がいて、梱包作業から家具の組み立てまですべてをお願いすることもできます。1LDKの大きさの家の市内での引っ越し費用の平均が、1400リラから1600リラくらいするため、市内の引っ越しであれば、友人や家族の力を借りて自分たちで引っ越しをする人もいます。

県を越えた引っ越しの場合、荷物の量だけでなく、距離と部屋のある高さによって変わってきます。5階建て以上の家の場合、屋内のエレベーターを引っ越しに使うことが禁じられているため、外付けのリフトを使う必要があり、その費用が乗ってきます。
 
参考サイト:
貸倉庫の利用数の増加
https://emlakkulisi.com/kovid-19-sonrasi-tasinmalar-yuzde-107-artti/642768

引っ越し数のデータ
https://emlakkulisi.com/turkiyede-tasinma-orani-yuzde-42-buyudu/665693

2021/10/03
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

みずほ銀行への「業務改善命令」を憂う

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つい先日、みずほ銀行及びその持株会社のみずほファイナンシャルグループに対して、監督官庁である金融庁から「業務改善命令」が発出されました。銀行業界の末席に連なりその禄を食んだ者として、この業務改善命令について大いに感じる所があります。その感じるところとは一言で言えば大いなる憂いです。今回はこの点についてお話ししたいと思います。

今回の業務改善命令は言うまでも無く、今年に入ってから大小取り混ぜて7回に及ぶ、同行のシステム障害に起因するトラブルへのものです。古くは大蔵省の時代から、銀行に対する監督官庁からの指示指導は絶対でした。今回の命令もみずほ銀行に取っては絶対のものと言えます。しかも金融庁のHPに掲載された命令の中を見ると、かなりの特異性が見られます。これが私の憂鬱の原因なのです。

以下が私の気づいた点です。

その一. 業務改善命令を出すタイミングが早すぎる

通常の業務改善命令では、発出前に金融庁の検査が行われます。そしてその結果を基に改善命令が出されます。もちろん今回も金融庁の検査は行われています。但し検査は未だ終わってません。それは金融庁自身が認めています。しかし改善命令が出されました。これは異例と言わざるを得ません。それだけ金融庁が本件を重く見ていることと言えます。

その二. システムの安定性・継続性を優先して求めていること

次に気になったのは金融庁がみずほ側の一連の対応について、強い危機感を持っていることです。改善命令の中に、業務継続上必要なシステム更改及び更新であっても、新たなシステム障害が発生しないように管理体制を整えること。このように表現された部分があります。

この表現はかなりきついです。対メガバンクとしては異例と思います。かつての「護送船団方式」の行政指導で、船足の最も遅い銀行に対してのそんな言い方をしていました。何やらそれを彷彿させる物言いです。極めて不名誉な言われ方です。

この点に関して麻生大臣は「みずほ銀行を管理下に置くのか?」との質問に対して明確にそれを否定していました。しかしこの書きぶりは、銀行を管理下に置いた。こう考えてしまいます。銀行基幹システムの安定運用に対してそこ迄言うのか。そう感じます。

最後に最も気になった点です。それはみずほ銀行の役職員のモチベーションです。ここまで言われて、みんなの気持ちは現在どうなっているのでしょうか。背水の陣を敷いて全行一丸となっている!いま「みずほ」が熱い!こんな話は寡聞にして聞こえてきません。

システムの不具合はある程度どこの銀行にもあるもの。システム部門の人が足りないのでやむなし。こうなったら足らずを補いつつ日々の業務をやっていくしかない。こんな気持ちではないでしょうか。もしそうだったら間違いなく同じような問題に出くわします。

ここは是非全員が一丸となって、一日も早いシステム安定化を、目指して欲しいと思います。それこそが最短ルートの解決策だと思います。

参考HP:金融庁 みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について
https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20210922.html

2021/09/29

貿易と銀行実務いろは一覧

税関検査となることは事前に分かる?

税関検査となりました

輸出入をされている方なら一度は言われたことがあるのが「こちらの貨物、申告しましたところ税関検査となってしまいました」というフォワーダーからのお知らせかと思います。

税関検査となったため、
・「納入がさらに1日遅れる」
・「船が一本後ろになってしまう」
・「検査料と立会い料で〇万円が追加で発生します」
など言われ、悲鳴を上げられたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

フォワーダーの立場として上記のようなことを輸出入者に伝えた際に時々言われるのが「税関検査になるかどうかって事前にわからないのですか?わかれば前もって日程に余裕を見ておけますし、料金の心構えもできるのですけど」ということです。結論から言えば事前に100%の確率でわかることはまずありません。その申告をした通関士も、実際に輸出(輸入)の申告を税関にかけてみて初めて、その結果が分かるのです。

どのように分かるのかというと、現在はほとんど全ての申告がNACCSにて行われていますので、NACCSから税関へ申告をかけると自動的に申告結果がフォワーダーのNACCSへ即時で返ってくるようになっています。そちらの結果が「区分1」となっており輸出(輸入)許可書が同時に届いていれば、書類審査も検査もなく許可が下りたということです。「区分2」となっていれば、税関職員による書類審査を受けなければならないので、NACCSを通して税関へ、申告に関連する書類(BLやインボイスなど)を提出することとなります。そして「区分3」となっていますと、税関検査になる可能性があるということです。

なぜ「検査になる可能性」なのかというと、この段階ではまだ100%で税関が検査をするということが決定していないのです。実はこの後に、取りやめになる可能性も十分にあります。ですので区分3となったらまずは区分2の書類審査と同様に、税関へ申告関連書類を提出します。そこから税関職員が書類内容をチェックし、必要であれば通関士や輸出入者へ聞き取り調査をし、やはり実物を見て検査をしなければならないと判断されると、そこで初めて税関検査となることが決定するのです。

逆に言えば、区分3となったとしても、書類をチェックした結果、税関検査の必要がないと認められれば検査は省略され、許可がおります。検査取り止め通知書と許可書がNACCSへと届けられます。これは通関業者にとっても喜ばしい瞬間です。

さらに逆を言えば、区分2となり書類審査のみで終わるはずだったのに、税関検査になってしまったということも往々にしてあります。書類審査の結果として税関検査が必要だと判断されれば区分2から区分3へと切り替わり、検査通知書が送付されてしまうのです。なので通関業者は区分2や区分3となった申告がある場合には、ずっと気がかりでモヤモヤとして、何度も何度もNACCSを確かめるという羽目に陥ることがしばしばあります。

税関検査とはこんな流れで税関より通知されるものですので、どの申告がどのタイミングで検査となるかは、通関業者には決して事前にわかることのないものだということがお分かりいただけたかと思います。

2021/09/26
輸出入よもやま話一覧

「アザカレ」を安定的に調達する方法

外国通貨 Other Currency

タイトルが少し判り難いので説明をします。「アザカレ」とは、米ドル・ユーロ以外の外国通貨を総称するものです。Other Currencyの略語と言えます。豪ドルや英ポンド等も含みます。今回は、この「アザカレ」調達に悩むお客様からのご相談を紹介します。

当時こちらのお客様は手工業品の輸入をされていました。目利きに優れた方だったのでサンプルを輸入されて、国内で試験的に販売した後は、継続的に輸入をして外国送金で順次決済をされていました。販売実績に見合った海外発注を心掛けておられたので、在庫が膨らんで資金繰りがショートすることはありませんでした。銀行としては安心してお付き合いが出来る方と言えます。

このお客様の悩みの一つが送金する通貨でした。殆どの場合、米ドルで二つ返事のOKが来るのですが、結構な割合で現地通貨を要求されるそうです。そんな時は、国内円預金で現地通貨を調達し送金されていました。この時の使われる換算レートがいつも変動していて、その変動幅が米ドル・ユーロより大きい気がする。何でこんなことになるのか。これがご相談の内容でした。

私がなぜそんなことを思われるのかとお尋ねしたところ、同じ品物を複数回注文して、代金をそれぞれ送金しようとすると、米ドルやユーロに比べて送金換算レートが大きく違うことがある。理由は有るのだろうけれど、これでは実務上大変困ってしまう。何とか安定的に送金できないだろうか。こんなお返事でした。

実はこのお話し中々に鋭いのです。日本では銀行が外貨建ての取引を行う場合は、ほぼ全て米ドルを基準にして行っています。つまり「アザカレ」であっても、直接日本円と「アザカレ」を交換するのでは無く、一度米ドルと交換した上で「アザカレ」と交換しているのです。(ちなみに米ドルと「アザカレ」の交換レートをクロスレートと呼びます)

つまり二重交換とも言える状況なのです。その「アザカレ」と米ドルは固定比率でもない限り、為替変動はそれぞれの通貨で発生します。ダブルで通貨変動リスクが発生するのです。お客様が適用相場の変動が大きいと感じられるのは、こんな仕組みが背景にあるからなのです。

ではこの変動をどう防ぐか。お客様の関心は正にここあったのです。ここでの最適解は、銀行としては儲けの減る話ではあるのですが、交換相場の適用回数を減らすしか有りません。具体的には、日本円から交換し始めるのでは無く、米ドルから交換を始めるのです。

これはお客様に米ドルの外貨預金を開いて頂いて、ここに米ドルをプールしておき、必要に応じて米ドルを出金して、「アザカレ」を買って頂くというやり方です。元々米ドル建ての送金が多くあるお客様でして、銀行チャージ削減の観点と、為替リスク回避の観点から、米ドルの外貨預金を活用されていました。

ですから私の提案はお客様の理解を簡単に得られ、早速外貨預金から送金され始めました。実はこの方法はドルクロスの活用と言うことなのですが、銀行にとってクロス取引の手数料は1%です。(ここはあくまでも私が勤務していた銀行の話です)このお客様の優遇は80%(つまり手数料を20%頂いてた)でしたので、1%%ですと銀行としては大減収となりました。

おそらくお客様も利益実感が相当あったと見えて、それから後は(出がらしちっく)「お茶」から(喫茶店)「珈琲」に、もてなしの内容が格上げになりました。これだけだと「何やってるんだ!」みたいな話ですが、こちらのお客様には後日談があります。

為替リスクヘッジのご相談から大きな為替予約に結びつき、銀行も大変儲けさせて頂きました。結局、「損して得取れ」の要領でしょうか。そのお話しは別の機会に譲りたいと思います。

2021/09/20

貿易と銀行実務いろは一覧

神戸と横浜。意外な共通点?

神戸ポートタワーと横浜マリンタワー

日本を代表する港町。神戸と横浜。私は外為担当として、どちらの都市も走り回っていました。この両都市。今思っても意外に似た点があるのです。今回はそんな両都市の意外な共通点を、お話ししてみたいと思います。

1. 同じ地名がある
何よりもこれが一番目に来ます。銀行の営業担当も店を出れば街中を走り回るのですが、地名が同じだと勘違いを起こします。例えば「海岸通り」「元町」「山手」など、どちらも似たような場所にあります。似たような場所にありますので、地番を頼りに走り回っていると、神戸と横浜を混同してしまい、目出度く「大人の迷子」になってしまいます。(今ならGPS機能がサポートしてくれますが。。。)

2. 税関が身近な存在である
銀行員の宿命として、新規先を開拓し続ける必要があります。このネタ探しに毎日頭を悩ませるのですが、ここで登場するのが税関です。各税関に置かれた資料室を覗けば、今当地で旬の貿易商品は何かが直ぐ分ります。これをヒントに扱い業者にアプローチを掛けるわけです。また既存先にもここで仕入れた情報を教えてあげれば、通関業者とはひと味違ったサービスが提供でき感謝されました。

更に税関関係で分らないことがあれば、「税関相談室」という便利な部室が有り、銀行員のど素人丸出しの質問にも丁寧に説明してくれていました。東京や大阪で営業していたときは、税関は場所的に遠いので、何かあっても直ぐ税関に飛び込むわけにも行きません。両都市は税関が非常に身近でした。(物理的にも心理的にもです)これが第二点です。

3. 華僑取引が大変だった
神戸には「南京町」、横浜には「横浜中華街」という、一大華僑集団が存在しているのは皆さんもよくご存じと思います。実はこれら中華街の企業と取引をするのが大変に難しいのです。それぞれ窓口機関としては南京町商店街振興組合(神戸)、横浜中華街発展会協同組合(横浜)があるのですが、窓口を訪問して会員企業を紹介して欲しいと言っても、別に銀行のために紹介の労など取ってくれません。(当たり前ですが)

そこで個別にお店や雑居ビルに当たりを付けていきます。しかしほとんどの場合上手くいきません。上手くいかない理由は様々です。
・実権者に面談が出来ない
・会社事務所が別の所にある
・会社組織になっていても社長に利益を集中していて、会社のB/S(貸借対照表)を見てもスカスカで何も無い
・華僑系金融機関が既に取引している 等々
こんなに阻害要因があるので、中華街取引は既存先企業の紹介を貰ってアプローチする。これぐらいしか出来ませんでした。

4. よそ者に優しい
最後にこれは声を大にして言いたいのです。銀行員には転勤がつきものです。その多くは出身地以外の勤務です。いわゆるよそ者状態での仕事になるわけです。この時。よそ者扱いをされると、大変につらいものがあります。しかし、神戸も横浜もこの点では実に立派なものです。どんな人でも受け入れてくれます。その度量の広さは特筆ものです。私は秘かに幕末の開国以来の素晴らしい文化とみていました。

以上、神戸と横浜の意外な共通点についてでした。

2021/09/12

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! フィンランド人の徴兵制への参加

徴兵の申請を待つフィンランドの若者

前回の「フィンランドの若者に人気の職業とは?」の男性ランキングで3位に入った「国防・防衛」について、今回はフィンランドの徴兵制について簡単に紹介したいと思います。

「Terve! フィンランドの若者に人気の職業とは?」
https://www.rakuraku-boeki.jp/finland-dayori/2021-07-02

フィンランドの徴兵法により、すべてのフィンランド国民は国防に参加する義務を負っています。18歳から60歳までのフィンランド国民の男性は兵役義務があり、女性は任意で兵役を申請することができます。兵役義務者は、約6ヶ月から1年の間に、武装または非武装の兵役、または非兵役のいずれかを完了する必要があります。

18歳になった男性は全員、その年に召集令状に参加します。今年は2003年生まれの男性が対象となります。召集の際には、兵役への適性チェックとして面接が行われ、健康診断や兵役についての希望を聞かれ、それに基づいて兵役の開始日と場所が決められます。兵役に適さないと判断された場合は、兵役が免除され非兵役として非軍事的な市民福祉サービスなどの業務に就くことになります。

兵役では陸海空軍に分かれて質の高い軍事訓練を受けることができます。日常生活に役立つスキルやリーダーシップをはじめ、フィンランドの国土ならではのサバイバル(森などの自然との共生生活)スキルなども身に付けます。兵役を終えると、危機管理業務や軍人の専門職に応募することができます。

こうしたキャリアップを見据えた背景があるため、前回の人気職業で3位にランクインした理由がお分かりになるかと思います。

徴兵制に対する考え方はさまざまですが一般的に伝えられていることとして、フィンランドは小国家であり、どの軍事同盟にも加盟していないため、自国の領土を自力で防衛することが必要との考えが根底にあります。そのため、国防軍の準備態勢を整え、維持し、軍事的な国防任務のために徴兵制度を導入し、徴兵者を訓練しています。

フィンランドは過去に西側のスウェーデン王国、東側のロシア帝国に占領および支配された歴史的背景からも、この徴兵制度はやはり自力で防衛することを重要視していると理解できます。

この徴兵制度は、時代とともに進化しています。訓練システム自体は常に開発されていますが、召集される国民にとっても、理由があって兵役につかない人や近年では女性の兵役希望者も増えています。

今年2021年は、国内約250ヵ所で召集令状が予定され、約3万6千人の若者が参加する予定です。彼ら自身の選択によって将来どのような道が開かれるのか。この徴兵制度はフィンランド人にとっての人生の選択の一つとも言えそうです。

参考記事:

徴兵召集に関するニュース記事・写真出典元 
https://yle.fi/uutiset/osasto/news/defence_forces_calls_on_tens_of_thousands_of_young_men_for_conscription/12060387

フィンランド国防軍
https://puolustusvoimat.fi/en/finnish-conscription-system

2021/09/06

海外だより:フィンランドより一覧

通関士の独立開業は現実的か?

通関士とは

通関士は「貿易に関する唯一の国家資格」と言われており、国際貿易の活発化と昨今の資格ブームの中で、老若男女問わず取得の人気が高まっている資格と言えます。しかしながら、そういった貿易や通関などに興味を持って調べた方でもない限り、「通関士」という資格は士業(「士(し)」と付く職業、つまり弁護士や公認会計士など)の中でも一般的な認知度は低いのではないかと思います。

それはなぜかと考えてみますと、理由の一つに、独立開業して仕事をする種類の資格ではないことがあげられます。例えば「山田太郎弁護士事務所」や「高橋税理士事務所」なんて事務所の名前は日本中どの地域に暮らしていても多少は見聞きするものですが、「鈴木花子通関士事務所」などは今まで生きてきた中で一度も聞いたことがないでしょう。通関士は、士業のなかでも、独立開業が非現実的な資格なのです。弁護士や税理士など知名度の高い資格に比べて、日常生活の中で見聞きする機会が圧倒的に少ないのです。

さらになぜ、独立開業が非現実的と考えてみますと、通関士という資格は保有しているだけで効力があるものではないことが理由と考えられます。通関業の許可を受けた企業に所属し、そこで「登録通関士」として税関に届出をして初めて通関士と名乗ることができ、通関士としての業務もできるようになるのです。

例えば私は確かに通関士試験に合格し資格を保有しておりますが、現在は企業に属しておらず通関士として税関に登録もされておりませんので、自分のことを「通関士です」と名乗ることはできません。もちろん通関士としての業務をすることもできません。もっと細かいことを言えば名刺に「通関士」と肩書をつけることも許されません。

どうしても通関士の資格を保有していることを名刺に記載したいのであれば、「通関士有資格者」や「元通関士」などとするしかないのです。(個人的意見ですが、「元通関士」というのは、何か悪いことをして通関士資格をはく奪されてしまった雰囲気がありますので、むしろ記載しない方が良いのではと思っています)。

それでももちろん、自分で通関業の会社を立ち上げ、そこで通関業の許可を通り、自らが通関士となって通関業務を行うことは禁止されてなどいません。実際、直接の知人ではないですが、そのように個人で許可を得て独立した通関士として営業されている方も存じ上げています。ただ、通関業の許可を得るためには厳しい条件をクリアしなければなりません。特に「経営の基盤が確実であること」という条件は個人事業主としてはかなり難しいものであるでしょう。

以前にもコラムで書かせていただきました通り、輸入通関では高額な関税消費税の立替が避けられません。そのような立替が発生したときに支払うことができず輸入が遅れるなどして輸入者が損害を被ることのないよう、十分な資金を保有していないことにはまず許可は下りないと考えられます。

こうして書いてみると、通関士とはせっかく頑張って取得しても独立開業もできず何だか夢のない国家資格のように思えてしまいますが決してそんなことを言いたいのではありません。通関業の許可を得るためには然るべき人数の通関士を有していることが必須ですし、それぞれの営業所にも必ず通関士を配置しなければならないことになっています。

これからの国際社会には必要不可欠な資格です。ぜひたくさんの方に通関士を目指していただき、日本の貿易を支えていただきたいと考えています。

2021/09/01
輸出入よもやま話一覧

「為替リスクヘッジ」他社の状況は?

為替がダウンするリスク

最近ある論文が目にとまり、そこに興味深い記述が有りました。今回はそのご紹介をしてみたいと思います。

貿易担当者にとって決済代金の通貨を何にするか、どのような方法で決済するかは大変悩ましいことです。もちろん輸出であれ輸入であれ100%日本円で決済できれば、このような悩みは全くないと言えます。しかし実際は、そんな奇跡的な話は存在しないと思います。

そこで決済時点で発生する為替リスクをどうするかが、この対処法が企業として必須の永続的なテーマとなってきます。我々外為担当は顧客企業からこのような相談を受けたときには、先物為替予約をメインとした幾つかの対策をお話しします。しかし正直言って先物為替予約関連以外は、銀行にメリットが余りありません。そんなことから他の対策は、教科書的な説明に止まってしまいます。

また同時によく出るのが、「他社(よそ)さんはどうでしょうか?」です。こっちとしては「他社動向は気になるのだなあ」と思いながらも、具体的な数字が手元にあるわけでも無いので、「予約する人が多いみたいです」と当たり障りのない話をします。

今回ご紹介する論文はこの漠然とした銀行員のヘボ解答に、一定の解決法を提示してくれるものといえます。

さてこの調査論文ですが、発表したのは独立法人経済産業研究所です。2017年11月現在の数字を基に2018年9月に発表されました。(但しこの論文はあくまでも執筆者の見解を示すものであり、同研究所の見解を示すものでは無いとの注が付いています。)

この論文の調査対象は日本の上場企業(製造業)から、貿易取引があると思われる1,006社にアンケートを送付し、回答を得た151社を分析したものです。(項目によって社数は減少)

まず気になる為替リスクヘッジ策で「先物為替予約」の利用状況ですが、98.2%の企業が利用していると回答しています。これはほぼ全社とも言える数字です。銀行としても顧客企業から照会があれば、まず先物為替予約をお勧めするという方法が、大筋では間違っていないと言える数字だと思います。

それ以外の方法では通貨オプションが12.6%、為替関連デリバティブが約7.2%でした。(複数採用している企業があるので総和は100%になりません)

この2者に関しては銀行も顧客企業の理解状況や社内体制を見て、お勧めするので納得感があります。その他ではマリー(自社内で外貨債権を外貨債務に充当)や、ネッティング(自社内で相殺勘定を起こす)が留意されます。
マリー・ネッティングは導入企業と非導入企業は約4:6の割合でした。

この2者は企業規模が大きいと導入メリットが上がるため、大企業の方が、多く導入しているという数字が出ています。ただ同一企業内の本支店間では企業規模を問わず、導入企業が7割を越えており、それなりの数字となっています。

以上、ほんのさわりの部分ですが為替リスクヘッジについてでした。為替リスクヘッジに妙案はありません。先物為替予約を中心にして、自社の特性に応じた策を組み合わせる。こう言った合わせ技が引き続き対策としては有効と思われます。

2021/08/26

貿易と銀行実務いろは一覧

消えゆく「銀行の突き出し看板」

銀行の看板

皆さんが考える伝統的な銀行と言えば、「金看板を背負った商売」をしているイメージでしょうか。今回のお話しはこの「金看板」と結びつきやすかった、街中にデカデカと出ている銀行名の入った看板についてです。(これを「突き出し看板」と言います)

実は街中を歩いていると、この突き出し看板が妙に少ないのです。確かに都心のターミナルで辺りを見回しても、突き出し看板は影を潜めてしまっています。一体なぜ消えて無くなったのでしょうか?恐らく理由は以下の各点に有ると思われます。

1.そもそも銀行の営業店が少なくなってきている
諸々の理由が相まって銀行そのものの数が減ってきています。銀行が合併すると真っ先に実行されるのが、店舗統合による効率化です。「人・物・金」全てを減らせるのですから、これをやらない手は有りません。結果としてお店が無くなったところからは看板が消えてしまいます。

2.路面店(地上に接して道路に面した店)が減っている
銀行の店舗はその設置状況から、路面店舗と空中店舗に大別されます。圧倒的多数は路面店舗です。(ビルの一階などで大通りに面している)通常銀行員を含め、銀行の店舗と言えばこちらを考えます。つまり空中店舗は地方銀行の東京支店のように、近隣に営業店を置かずに単独で出店する場合のように、店頭業務を考えていない時に用いられる店舗形態です。他にはATMコーナーを一階に残して、店自体は二階以上になっている。こんな営業店も増えています。こんな時店舗改装に併せて、突き出し看板を撤去しているようです。

3.営業体制が変化して、フルブランチが無くなってきている
銀行が突き出し看板を派手に掲げる理由は、銀行に用事がある人は、すべてこの看板を目印にして欲しい。こんなメッセージを看板に込めているからです。ところが銀行の営業体制が変化してきているのです。法人の営業拠点と個人の営業拠点を全然別の場所にしたり、個人でも預金や為替を利用する顧客と、資産運用やローンの顧客を、別の場所や時間で対応する等、同一店舗内ではやらなくなっています。この結果、従前のフルブランチ(営業店に全ての銀行業務がある)は、どんどんその姿を消していっています。フルブランチでも無いのに今までの大きな看板を出していたら、違った用の顧客まで呼び込みかねません。よって看板は無しになります。

4.収益構造の変化で、預金を集める必要性が薄れてきている
これが一番の原因かもしれません。つまりこうです。嘗て銀行収益は、「貸金―預金=利鞘」に大きく依存していました。つまり沢山の預金を集めた銀行が大きく貸金を打てて、その結果として大きな収益を獲得できていたのです。この原資となる預金を預けてくれるのは主に個人の顧客でした。(法人は預けも多いのですが、貸出も当然多いのです。)個人客を呼び込むには、目立つ看板があれば便利です。そんなこんなで、駅前に看板が林立したのです。ところが低金利が続いてもう25年以上が経ちます。利鞘商売はとうの昔に成り立たなくなっています。銀行はもう預金集めはやってません。

必然的に突き出し看板も不要となってしまいました。以上、銀行の突き出し看板にまつわるお話しでした。

2021/08/19

貿易と銀行実務いろは一覧

フランス人に注目される日本の食材とは?

サラダやタルトなどフランスの食材

海外暮らしの発見の面白さはギャップからくることが多いようです。

食材でいえばフランスのキュウリは、かなり大きくニガウリなみの大きさです。逆に人参は、とてもほそく日本の3分の1位の大きさ。なすもピーマンもとても大きいです。フルーツは、手ごろな値段で味のよいものが手に入りやすくマルシェを見るだけでも食材の豊富さに楽しさを覚えます。

しかし、野菜などの素材は豊富でも、和食を作ろうとすると日本では当たり前に手に入ったものが簡単に入らないことに愕然とします。

お肉では、しゃぶしゃぶなどに使われる薄切り肉、すでに骨を外してある鶏のもも肉、鶏のひき肉などはこちらのスーパーでは入手が困難。お魚も丸ごと売られていることがほとんどです。

パリでは、アジア系スーパーにて日本と同じレベルのものが手に入りますが、地方になるとアジアスーパーも近くにない場合が多く日本食材の確保はハードルがあがります。日本では、食卓で当たり前に楽しめていた油揚げと豆腐のお味噌汁でさえ縁遠くなってしまいます。

しかし、食べたい意欲が強いと人は頑張れるものです。海外暮らしの人たちは家で手作りしたり、似たような食材を見つけて代用したりと創意工夫で和風な食事を楽しんでいます。

とはいっても私などは日本の里帰りのスーツケースは未だに日本食材で膨れ上がってしまいます。

今までは、フランス在住日本人に求められていた日本食材がフランス人にも注目を浴び始めています。近所のスーパーにも寿司テイクアウトコーナーができ、そこの一角に日本のビールやラムネの瓶などがお値段高めですが売られています。

オーガニック食品のコーナーには、パック包装されたお豆腐、糸こんにゃくなどもヘルシーな食材としておしゃれなパッケージで売りに出されています。パッケージに使われている写真はサラダやタルトなどフランスのお馴染みのお料理です。お豆腐は、生クリームの代わりに、こんにゃくはサラダに加えるという使い方がされているようです。

今、じわじわと人気がでているのが「餅アイス」と呼ばれるもの。日本の雪見大福よりは小さめな作りで、マンゴー風味などトロピカルなフレーバーが多いです。箱にはグルテンフリーという文字が書いてあります。アイスがメインでお餅の部分はわずかなのに、グルテンフリーという点をアピールしているのが面白いと思いました。

日本食は健康的であるというイメージはしっかりフランス人の間で定着しているようです。フランスのオーガニックストアにはあずき、大豆、お豆腐、おから、玄米などが手に入りますし、この前は梅干しも小瓶にはいったものが売られていました。オーガニックスーパーが増えているフランスでは、食生活を見直す人たちが多くなってきたといえるでしょう。

食べることが大好きなフランスの人たち。日本人が普段何気なく口にしている食べ物も彼らにとっては魅力的なヘルシーフードとなります。和食を食べるというより、日本で親しまれている食材をフランスの食生活に取り入れるスタイルのようです。

健康的な日本の食材はこれからもフランスではどんどん普及していくのではないでしょうか。

2021/08/12

海外だより:フランスより一覧

同じ「SENDAI」でも大きな違い!

正しいSendaiはこちら

先日のネットニュースでとても興味深い記事を読みました。

米東部メーン州のポートランドでギョーザ販売店を営む夫婦が、中国からギョーザ製造機を取り寄せたところ、注文後のメールで届け先が約4,000キロも離れた西部オレゴン州のポートランドとなっていることに気付いたとのことです。

ご夫婦は通関代理店に連絡し、製造機を後日無事に受け取ることができたそうです。港の名前が同じ「ポートランド(Portland)」であったことから起きてしまった間違いなのですが、実は私も日本国内で同じような事態に遭遇したことがあるのです。

もう10年ほど前になるある日、某家具メーカーの輸入者より、「ヨーロッパから家具を輸入しますが納入先が仙台のお客様なので仙台港に着けます」とご依頼がありました。なるほど仙台か、東北の代理店に手配をお願いしなくてはと考え、東北へ連絡を取り納入日など確認して準備万端に到着を待っておりました。

間もなく日本へ到着という頃、輸入者よりアライバルノーティス(以下A/N)を入手したと連絡があり転送いただいたのですが、そのA/Nが東北ではなく九州の船舶代理店から発行されたものでした。あれ、東北に到着するはずなのにおかしいなと違和感を抱き、とりあえずA/Nに記載されている電話番号に電話をかけて問合せをしてみました。するとオペレーターさんから驚くようなことを言われたのです。

「はい、こちらのコンテナ、確かにセンダイ港に到着ですが、お客様が仰っている宮城県の『仙台(せんだい)』港ではなく、鹿児島県の『川内(せんだい)』港に到着となっております」。なんと、同じ「せんだい(SENDAI)」読みだったために、輸出者が間違って鹿児島の川内港行きの船に乗せてしまっていたのです!

私たちにとっては幸い(?)なことに、そのコンテナはCIF契約であり日本到着までの責任は輸出者側にありましたので手配ミスを責められることこそなかったものの、鹿児島県に到着してしまった貨物を宮城県へ運ぶという大仕事の対応が必要となりました。

海上輸送は叶わなかったので陸揚げし、数日かけてドレージ車両にて運送したのですが、高額なドレージ費用が余計にかかることになったのは言うまでもありません(もちろん、輸出者の負担となりましたが)。何とか無事に納入できたものの、輸入者にも輸出者にもフォワーダーにも、かなりの手間と負担がかかってしまいました。

アメリカのポートランド間ほどの距離ではないものの、この「せんだい」間の距離も1,700キロほどあり、軽微なミスはとても言えないものです。どうすれば防ぐことができたかと言えば、やはり輸出者側で、不慣れな場所への到着や納入をリクエストされたら、一度地図上で住所や港の位置を確認するべきだったかと思います。自分がブッキングをした川内港の位置と、輸入者が指示する仙台市内の住所をネットの地図で調べれば、それらがあまりにかけ離れていることは一目瞭然に判明したでしょう。

長年貿易業務に携わっておりますが、ほんのちょっとした気の緩みや見落としで、大きなミスにつながってしまうことが往々にしてあります。冒頭のポートランド誤りのニュースを読んでこの川内(仙台)誤りのことを思い出し、どこで落とし穴が待ち受けているかわからないので今後も気を引き締めて業務を遂行しようと、改めて思いました。

参考記事:
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210706/for2107060006-n1.html

2021/08/05
輸出入よもやま話一覧

船積書類のスピード化を考える

コンテナ荷物を船積みする

言うまでも無く、外航貨物の主流はコンテナ輸送です。一方で船積書類は相変わらず紙ベースで動きます。

コンテナが輸出者から輸入者に渡るまでに、船積書類の方は輸出者⇒買取銀行⇒輸入者取引銀行⇒輸入者と、丁寧に受渡をされていきます。これでは貨物の動きと、船積書類の動きに差が開くのは当然です。

そこで銀行もこのギャップ解消にアレコレ考えています。究極の解決方法は船積書類の完全電子化と思いますが、今すぐ移行するわけにも行きません(つらいところです)。では銀行がどうやってスピードアップを図っているか、これを見て行きたいと思います。

銀行によっては顧客と銀行間の書類のやり取りについて、一部電子化を行っているところもあります。これですとB/L(船荷証券)とI/P(保険証券)以外は、瞬時に銀行に送り込むことが出来ます。これに船会社(通関業者経由)からのB/L、保険会社からのI/P(保険証券)が到着すれば、銀行は内容チェックしての買取が可能になります。

もし電子化されていなくても、直接顧客から外為センターのような、集中業務セクションに書類が送付出来れば、営業店を通さないので同じような効果が期待できます。実はこの方法は銀行にとっても、営業店に外為スタッフ配置せずにすみ、人員面で効率化が計れることになります。実際にこの方法を採れば、大体丸一日は短縮出来る印象でした。

次に勘定処理の短縮です。銀行は顧客から船積書類を受領して、内容を点検します。そして問題がなければ買取処理を行います。この内容点検から買取処理まで、タイミングが悪いと二日かかります。そこで内容点検を買取に必要な部分にとどめ、そのまま買取処理を行えば、勘定処理が早まります。

顧客から見れば銀行持込当日に買取して貰えるわけです。誰にでも適用出来る方法ではありませんが、与信上懸念無い外為先には、充分に対応可能でした。ここは銀行のスピードアップというよりは、顧客サービス向上が大きかった印象です。

さて買取処理が終わった船積書類を海外発送する場合に、多くの銀行では郵便局の持ち込むのでは無く、DHLやOCSのような民間宅配業者を使います。メガバンクではこの様な宅配業者が外為センターに常駐しており、専用の部屋で銀行処理済の書類を受け取り、海外発送の手続をします。銀行からの持込時限は16時頃が多かった記憶があります。

ここからの処理の速さは尋常では無く、17時頃には自社の車に載せ終わって、そのまま都内近郊のデポ(サービスセンター)に持ち込まれます。そしてその日の夜には成田空港に到着し、そのまま専用便で香港に送られていました。(香港がハブでしたので)

これが顧客持込の翌日ですから、相当のスピード感です。この方法でやれば本当の近場以外は、書類が貨物の動きに大きく遅れないですみました。その点からも銀行の外為部門が集中化されていったのが、分るような気がします。

2021/07/30

貿易と銀行実務いろは一覧

女性通関士支援事業って何?

PCを使って在宅勤務

日本通関業連合会では現在、「女性通関士支援事業」という取り組みが行われていることを前回のコラムでお話させていただきました。それでは、具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。

最近ではコロナ禍のために開催が見送られていることもあると思いますが、連合会では定期的に「全国女性通関士会議」という場が設けられています。全国から女性通関士が数十名参加し、通関業連合会の会長などと意見交換や討議が行われているそうです。私も現役通関士だったらぜひ参加してみたいものです。

その会議の中では例えば通関士の「働き方改革」について話合われています。人材不足や荷主ファースト主義、このコラムでも以前にお話しました慢性的なドレージ不足により長時間労働が通関業界でも発生してしまっており、これが女性通関士の活躍を妨げる要因の一つとなっています。

その是正に向けて、データをシステム化する、休みやすい状況を整える、フレックスタイム制や在宅勤務制度を整えるといった対策の意見交換を女性通関士同士でされています。

会議の終了後には、懇親会も開催されています。関税局の方も参加され、リラックスモードで関税局、通関業連合会、女性通関士の方々が懇親を深めているようです。同じ通関士と言っても他社の通関士とはなかなか交流を持つ機会もありません。

管理職になれば税関などを交えた保税地域での会議などに出席することもありますが前回述べましたように管理職をしている女性通関士はまだまだ少ないので、そういった会議に出席されている女性通関士も少ないことでしょう。ですのでこのような懇親の場が女性通関士の為に用意されているのはとても喜ばしいことだと思います。

そのような場での交流が刺激となり、最近では女性通関士のネットワークの構築や女性の会の設置が行われたり、連合会ではSNSが立ち上げられたりと、成果も出ているとのことです。男性目線だけでは浮かばなかったアイデアが女性通関士の活発な交流のおかげで生み出されたということでしょう。

会議の中で取り上げられたテーマとして、私が注目したいのは在宅勤務の導入についてです。在宅勤務が通関業界でもっと広まれば、家庭との両立も今以上に容易となり、女性通関士の活躍の場も増えることでしょう。申告まで在宅で行うとセキュリティの問題が出てくるといった課題や障害は山積みですが、まずは、申告までの業務を在宅でもできるように環境を整えることから始め、最終的には在宅勤務用に切り分けられた仕事をするのではなく会社でしているいつもの通関業務を在宅でできるようになれば理想的です。

実際、在宅によるリモートワーク専任の通関士を契約社員として採用を始めた会社もあると聞きます。このような動きが活発になれば、育児や介護などで一線を退いてしまった元女性通関士の人たちも、また以前のように登録通関士として輝けることができると思います。

いつの日か、名実ともに女性通関士が男性と同等に活躍している通関業界が実現される日を心から楽しみにしています。そのためにはこれからも、通関業連合会が主体となっての「女性通関士支援事業」をぜひとも継続していただきたいです。

参考記事:
http://www.tsukangyo.or.jp/files/NO154.pdf

関連記事:女性通関士、どれくらい活躍している?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/boueki_jitsumu_jirei/2021-06-29

2021/07/25
輸出入よもやま話一覧

大臣の発言を残念に思う

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このコラムで政治向きの話題をすることは無いのですが、今回は特にお許しを願って、一言書かせて頂きたいと思います。

既にメディア等で大きく報道されましたが、残念な発言が現内閣の閣僚から出ました。それは新型コロナ対策(休業要請)に応じない飲食店に対し、取引銀行からの(休業の)働きかけを要請する。と言うものです。

この発言を聞いたとき正直唖然としてしまいました。この人は「銀行の優先的地位の濫用は許されない。」と言う、銀行として最も神経を使っている点を理解した上で、「要請する」と発言しているのだろうか?理解しての発言であれば、看過出来ませんし、知らないのであれば、大臣の発言としては問題があります。

銀行が何か取引先に言えば、その影響力は大きいものです。特に融資が絡んでいる取引先には、さらに大きく影響します。借り手は圧倒的に弱い立場なのです。貸し手である銀行からある種の「要請」を受ければ、借り手としては無視できません。もし従わなければ、融資を引き上げられてしまうかもしれない。こう考えてしまいます。当たり前だと思います。

もし大臣がこの効果を期待して発言したのであれば、法規制に基づく指示命令よりたちが悪いと言えます。この発言に至った経緯は明らかではありませんが、この発言そのものが突然の思いつきであったとは思えません。事前に周囲の人との間で話が有った筈です。

であれば、要請は「優先的地位の濫用」に結びつきかねない。こう気づくブレーンはいなかったのでしょうか。或いは銀行への要請であれば、事前に全銀協(全国銀行協会)に、コンタクトしてみよう。の一言は無かったのでしょうか。

その何れも無かったのであれば、大変残念なことです。長年銀行にお世話になってきた者としては特にそう思います。1997〜1998のジャパンプレミアムが発生した頃、短期市場で金利を上乗せしても、米ドルが調達不可能な事がありました。米ドルが調達できなければ、海外銀行と決済が出来ません。いわゆる資金ショートと呼ばれる状態です。

そんな時、銀行の窮状を見かねて、数億ドル単位の外貨預金を預けてくれた融資取引先がありました。この一報が入ってきた時に、思わず各店の外為担当者は、これで外貨決済が出来ると、本当に喜んだものでした。(当時大口の輸入決済は、本部が直ぐに決済させてくれなかったのです。)

そんな過去もありますから、融資先に対しては慎重な発言・対応をしていました。今回のこの発言。これらの経緯が無視されたようで残念さがひとしおです。幸い発言は翌日撤回されましたし、発言趣旨のご説明もありました。

大臣は2009年には自民党総裁選挙にも出馬され、その知見・見識は折り紙付きと考えています。引き続きの陣頭指揮を大いに期待したいところです。

2021/07/19

貿易と銀行実務いろは一覧

人気の医療ツーリズムがトルコでも盛ん!

トルコヤロヴァの湯治施設の温泉プール

トルコは、17か所の世界遺産を抱える観光立国ですが、最近人気となっている観光資源が医療ツーリズムです。トルコの定義では、1. 温泉治療、2. 老人の介護、3. 病院での治療・処置を行う狭義の医療ツーリズムの3分野を広義の医療ツーリズムとしています。

温泉治療に関しては、アラブ諸国やロシア周辺諸国とトルコ国内からの観光客に人気となっています。元々、温泉資源に恵まれていて、イスタンブールの隣県のブルサやヤロヴァ、魚が住んでいる温泉で有名なシヴァス、ぬるめのお湯が流れ落ちる石灰棚で有名なパムッカレなど、数多くの温泉地があります。

温泉治療をおこなっている宿泊施設には、湯治客用のプランがあったり、医師の処方箋をもって保険を使って滞在できるようになっていたりするところもあります。温泉治療をする施設の管轄は観光省ですが、リハビリ治療などをする複合施設の充実化に補助金を出す、建設に際して奨励金を出すなど、国を挙げて力を入れています。

トルコでの医療ツーリズム奨励のために行われている活動
https://yigm.ktb.gov.tr/TR-11479/turkiye39de-saglik-turizmine-yonelik-yapilan-calismalar-.html

USHAŞ(国際健康サービス株式会社:医療ツーリズムを推進するために2019年に保健省の下部組織として設立された半官会社)の統計によると、2002年には観光産業の1%足らずだった医療ツーリズムが2020年には4.5%を占めるようになったといいます。2020年はコロナの影響で観光業自体が大きな打撃を受けていたことを考えると、それほどではないように見えるかもしれません。

しかし、コロナ以前の2019年のデータで見ると、医療ツーリズムに訪れた患者さんの数は662,087人、10億6500万アメリカドルの売り上げとなっています。また、2021年の第一四半期では110,716人の患者さんが医療ツーリズムのプログラムを購入し、1億9600万ドル超の売上を挙げています。コロナがまだ収束していないとはいえ、ほぼコロナ以前の状況に近づいているのがわかります。

国としても、医療ツーリズムに力を入れていて、次のような取り組みを行っています。
1. 医療ツーリズムに携わる企業や病院に関する規定を定めて、年に2回の監査を行うといった制度上の整備
2013年に発行された医療ツーリズムで提供される健康サービスの規定:
https://www.ado.org.tr/mevzuat/yonergeler/saglik-turizmi-ve-turist-sagligi-kapsaminda-sunulacak-saglik-hizmetleri-hakkinda-yonerge

2. この規定に基づいて、医療ツーリズムにサービスを提供できる病院に認可を出す
認可されている私立病院のリスト:
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30579ozel-saglik-tesisleripdf.pdf

3.医療ツーリズムを行う施設や組織に奨励金を出す

2.のリストは、私立病院だけでなく、大学病院や公営の病院のリストもあります。特に多いのはイスタンブールですが、地中海岸のアンタルヤやエーゲ海に面したイズミール・アイドゥンといった都市の病院が次に多くなっているのは、やはり、観光分野の一部であると言えます。インプラント治療を受けながらエーゲ海や地中海のリゾート地で過ごす、というプランは、魅力的な感じがします。

病院リストを見ると、眼科や歯科、美容整形といった分野に人気があるのがうかがえます。眼科でのレーシック手術、歯科でのインプラント治療、植毛を含む美容整形は、技術が高い割に自国に比べると費用が大分安いということで、ヨーロッパ諸国やアラブ諸国のツーリストに人気です。アラブ諸国からの観光客には、手術でなおす糖尿病治療も人気のようです。

日本でも最近、トルコでの植毛手術を扱っているところが出てきています。日本から、トルコに来て植毛をして帰る2泊3日のプランを出しているところもあります。トルコでの植毛技術はかなり高いので、コロナの収束後、気になる方は是非観光がてら試してみるというのはいかがでしょうか。

参考サイト:
USHAŞ(国際健康サービス株式会社、英語サイト):
https://www.ushas.com.tr/en/health-tourism-data/

2019年医療ツーリズム認可組織リスト:
私立病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30579ozel-saglik-tesisleripdf.pdf

私立大学病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/27126vakif-universitesi-saglik-tesisleripdf.20190510153016.pdf

公立病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/27126vakif-universitesi-saglik-tesisleripdf.20190510153016.pdf

公立大学病院
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30381kamu-universitesi-saglik-tesisleripdf.pdf

仲介業者
https://ohsad.org/wp-content/uploads/2019/05/30450araci-kuruluslarpdf.pdf

2021/07/13
海外だより:トルコより
土窓愉見

トルコ在住

3メガバンクの取締役構成を見て

銀行の看板

日本を代表する3メガバンクは、何れも毎年3月が決算月です。そして3ヶ月後の6月は、各行共に株主総会の月となります。日本企業はこの株主総会を持って取締役が交代する事が多く、今年も3行共にその例にもれません。

今回は新しい3メガバンク取締役の顔ぶれを見て、そこから各銀行の行風を見てみたいと思います。(なおここではそれぞれ持株会社を見ることにします。三菱UFJ銀行は三菱UFJファイナンシャルグループ、三井住友銀行は三井住友ファイナンシャルグループ、みずほ銀行はみずほファイナンシャルグループとなります。)

では早速始めます。一番目は三菱UFJ銀行です。三菱UFJ銀行が現在の形となったのは2006年1月なので、今年で15年目となります。流石にこの時間経過では三菱UFJ銀行になってからの、プロパー行員はまだ取締役にはなっていないようです。実際に業務執行担当としての取締役は5人なのですが、全員旧銀行の出身者の方のようです。

さてその出身行ですが5人の内4人が三菱銀行、1人が三菱信託銀行となっています。東京銀行出身者がいないのはある程度想像できましたが、UFJ銀行出身者(三和銀行・東海銀行)が1人もいないのはビックリです。この銀行の主導権は、今やはっきりと三菱銀行でしょうか。とすると取引は「組織の三菱・人の三井」で謳われるように、何時でもどこでも組織的な対応をしてくれる、伝統的な三菱流が主流となっていくはずです。

これは聞いた話なのですが三菱UFJ銀行と取引すると、転勤などで担当者が代わっても、次の人が同じように接してくれるので、安心して取引出来る。(担当者が没個性という意味ではありません)こう断言できるそうです。

二番目は三井住友銀行です。こちらは現在の姿となったのは、2001年4月なので20年が経過したことになります。ひょっとしたらと思ったのですが、やはり業務執行担当役員全員が、住友銀行の出身でした。(全部で8人です)これも有る意味すごい話です。ご承知のようにこの銀行が発足したときには、三井財閥と住友財閥の合併と大きな話題となりました。

しかし20年経った現在では完全に住友主導となったと言えます。となると行風は住友色が濃くなってくるはずなので、個人の力が大きく影響してきます。ここに人の三井も少し影響してくるかもしれません。住友色に関しては好みの分かれるところで、はっきりした個性的な取引を望むのなら、この銀行が一番だと思います。

最後はみずほ銀行です。同行は2000年9月に3(第一勧銀、富士、興銀)で、持ち株会社を作りそれぞれがその傘下に入り、2002年4月にみずほ銀行とみずほコーポレート銀行になりました。さらに時が下って2013年7月に上記二行が一緒になって、現在のみずほ銀行が出来上がりました。

さて取締役の構成ですが、実は開示資料ではこれがよく分りません。他の二行は堂々と開示しています。調べるのは簡単でした。しかし、みずほ銀行は開示していないのでよく分らないのです。一応分る範囲で調べたところ業務執行担当5名の内、興銀出身が2名、第一勧銀出身が1名でした。残りは分りませんでした。しかしファイナンシャルグループ傘下のみずほ銀行の新頭取は、富士銀行出身らしいので、「たすき掛け」の色は残っているようです。となると行風は断言できません。今後の様子見が基本となります。

以上取締役の出身行という点からだけですが、各行の実態を垣間見てみました。

2021/07/07

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! フィンランドの若者に人気の職業とは?

フィンランドの若者たち

6月から長い2ヶ月の夏休みに入ったフィンランドの学生たち。この期間に高校生以上を中心にKesätyö(ケサ・トゥオ)という日本でいう夏休みのアルバイトを体験することが、将来の就職や自身のキャリアアップにつながると言われています。今回は、フィンランドの若者たちに人気の職業を紹介します。

フィンランドには、すべての若者が働くことに興味を持ち、自分でお金の管理や社会の一員として社会に関わることを支援する「TAT」という団体があります。このTATが今春、中学・高校・応用大学の学生約15,000人を対象に、将来の職業についての見解を調査しました。

その結果、男女ともに関心の高い職業分野は、
1位「ヘルスケア」
2位「メディア・コミュニケーション」
3位「文化・エンターテイメント」
4位「観光・飲食」
5位「小売業などの商業系」となりました。

男女別にみてみると、女子は
1位「ヘルスケア」
2位「サービス業」
3位「旅行・飲食」

男子は
1位「テクノロジー分野」
2位「建築・建設」
3位「国防・防衛」*

となりました。
*フィンランドは、主に男子18歳を対象に兵役制度があります。この制度を経験した後、国防・防衛関連の仕事に就くことを希望しているようです。

このようにヘルスケア関連の職業に男女ともに人気があるのは、フィンランドはEU加盟国の中で高齢化社会となるのが一番速いと言われている背景があり、このヘルスケア分野の職種の一つである保育士と介護士の2つの資格を持った「Lahihoitaja(ラヒ・ホイタヤ)」の需要が年々高まっていると言われています。

男女平等のイメージが強いフィンランドですが、今回の調査結果からは、依然として非常にジェンダー的(性別に偏った)であることがわかりました。女子は、サービス業を中心とした仕事ですし、男子は、テクノロジーや建設、物流・貨物輸送などの分野に人気がありました。

また普段の生活において情報やスキルを得る方法として、学校教育が最も一般的であることもわかりました。このほかに親や友人たちとの会話、読書や趣味を通じてとありますが、男子は、YouTubeやゲームから情報やスキルを得ているという回答があり、ジェンダー的かつ世代間の違いも現れていました。

さらには両親の教育的背景や雇用形態が、職業の選択や将来を考える上で強く影響することもわかりました。今回の調査では、大卒の親を持つ若者の81%が小学校卒業後に高等学校への進学を予定しているのに対し、職業資格(中卒・高卒・職業学校卒)を持つ子どもでは36%にとどまっています。また両親ともに働いていない若者の14%が、将来仕事を見つけられないと考えています。

現在フィンランドの失業率は7.6%で、昨年のコロナ禍よりは回復しましたが、人口550万人中でこの割合は依然として高い数値であります。そうした労働市場の背景も重なり、若者の職業選択は、昔に比べると早期から、そして親や友人からの影響も強くなっていると言われています。

コロナでヘルスケア分野の職業の需要も増えて、ますますこの分野の人気が高まることも示唆されていました。今夏は、コロナの変種株がヨーロッパ諸国を感染している影響で、まだまだ経済回復も鈍く全体的に停滞中です。

こうした社会背景の中、若者が将来に対して自分の能力に自信を失ってしまわないように、親や友人たちとワーキングライフについて語り、人生の幸福のためにその重要性を強調することが重要であると、TAT団体のディレクターは話していました。

参考記事:
TAT団体および職業調査レポート
https://www.tat.fi/tyttojen-kiinnostus-johtajuuteen-nousussa-perinteinen-sukupuolijakauma-patee-edelleen-tulevaa-alaa-valitessa/

フィンランドの失業率
https://www.stat.fi/til/tyti/2021/05/tyti_2021_05_2021-06-22_tie_001_en.html

画像提供元:
https://www.mtvuutiset.fi/artikkeli/nuoret-stressaavat-alavalintaa-ja-moni-pitaa-valivuoden-nuoret-eivat-odota-omannakoisen-elaman-alkamista-elakeikaan/7419096#gs.4gaone

2021/07/2

海外だより:フィンランドより一覧

女性通関士、どれくらい活躍している?

マウスを操作する女性通関

日本通関業連合会では現在、「女性通関士支援事業」という取り組みが行われています。女性通関士の活躍と登用を促進するとともに、優秀な人材を毎年採用し、キャリアアップをあきらめることなく活躍できる業界にしていくということを目標としています。

通関業界では、従業員に占める女性の割合が増えて来ていると言われています。確かに、私が就職活動をしていた20年近く前は、まだまだ通関(物流)業界は男社会というイメージが強く、「物流会社に就職することにしたよ」と報告した友人に「え!あんな男社会の会社に飛び込んで働くの!?」驚かれたことを覚えています。今では信じられないことですが女性は一般職でしか採用しないと明言していた物流会社も数多くありました。

それから20年近くが過ぎた現在、物流会社や通関業界に対する男社会のイメージはかなり薄れて来ていると感じます。もちろん日本全体においてそういった男女差別的な職場をなくそうとしている動きがある事の影響も大きいですが、昨今の資格ブームの中で、「通関士」というどこかインテリジェンスを感じさせる名前の国家資格に惹かれて取得を目指す女性も多いのでしょう。

では現場では実際にどれくらいの女性が活躍しているのでしょうか。私の経験を元にしますと、通関部署の中で、女性の占める割合は50%くらいでした。その女性のうち半数位が派遣社員であり、その中で通関士の資格を取得している方はさらに半数位といった割合です。

社員は基本的に社内で通関士を取得している人が配属されることが多いですし、取得していない社員は仕事の合間に勉強をして1年~2年の内に合格することがほとんどでしたので、ほぼ全員の社員が通関士資格を取得しているという状況でした。

と、人数の割合だけで見ますと女性通関士が男性通関士と同等に仕事をしているように思えますが、実際はそれほど同等とは見えませんでした。なぜならいわゆる「管理職」という立場の通関士は全員が男性だったからです。

なぜ女性通関士かつ管理職という立場の人がいなかったか、それはやはり職場環境にあったと思います。通関部署は水商売とよく言われますが理由は自分たちで仕事の量をコントロールできないことにあります。その日に通関しなければならない書類は何時になろうと仕上げなければなりません。

今日が暇だからと言って明日は忙しくなるとは限らず、逆に今日は目が回る忙しさなのに翌日は余裕たっぷり、なんてこともざらにあります。その、仕事量の読めなさゆえに、管理職という立場になると家庭との両立が難しいという現実があるのでしょう。

また、検査の立会いなど力仕事的な業務も多いですし、管理職ともなれば何かあった際に税関への謝罪なども対応しなければならないといったことが、家庭との両立を目指す妨げになっていたと思います。

ですので、通関業連合会という大きな組織が主体となって女性通関士の支援に積極的に動いていただけることは、元女性通関士の一人としてとても喜ばしいことです。具体的にどのような支援があるのか、また別の機会にお話できたらと思います。

参考記事:
https://www.fujibuturyu.co.jp/headlines/210301/03.html

2021/06/29
輸出入よもやま話一覧

過労死レベルの残業、銀行・外為では?

過酷な残業による過労死

一般的に過労死レベルの残業とは、80時間/月と言われています。週休二日制であれば土日はしっかりと休んだ上で、残りの5日間一日当たり4時間の残業をすると、このラインに到達することになります。

銀行は労働集約型産業の典型みたいな印象がありますが、確かに過去はその事実は厳然としてありました。振り返ると一番労働集約していたのが、バブル景気の時代でした。今回はこの時の勤務状況を見てみたいと思います。ちなみに今は流石にこんな事はありません。あくまでも過去のお話です。

当時の就業規則で定められていた就業時間は、開始が8時40分(8時50分の時期もありました)で、終了が17時でした。(24時間制で書いています)昼食休憩が1時間とすれば、実働は7時間チョットになります。残業はこの時間帯を越えて就業する事で発生するのですが、ここで注意点が一つ有ります。

時間外勤務=残業とすると、残業=終業後と思い込みがちです。しかし始業時刻以前にも時間外はあり得ます。現に当時は鍵番と呼ばれる担当者が銀行の通用門を解錠し、機械警備を解除して入店し、金庫のダイヤル解錠も行っていました。これを始業時間にやっていたのでは、到底開店時間に間に合いません。

私も「出納元方」を担当していた時期は手の遅さもあって、金庫から現金を出しての預払機への詰め。大口出金の事前取り置き。各担当者への手元現金の配分。前日作成の現金資金繰り表による現金センターとのやり取り。これらを行うのに正味1時間は必要でした。ちなみに「出納元方」は「すいとうもとかた」と読みます。店の金庫番です。

外為担当となっても開店と同時に店頭に来られるお客様も多々あり、準備しながら顧客対応をするわけにも行きません。つまりどのポジションであっても1時間ぐらいの早出はあり得ました。つまり既にお話した4時間の内業務終了後に回せる時間は、いいとこ3時間となるわけです。3時間となると17時終業から数えて、20時がその時間となります。この時間皆さんどう思われますか。

当時の自分を振り返ってみると随分早い時間だな、という印象です。当時帰店が18時頃でしたのでそこから1時間程度は、持ち帰り物件の整理をしていました。そして机の上に残されているメモ。これに基づき本部照会に回答したり、顧客問い合わせに対応していれば、更に1時間ぐらいはあっという間に経ってしまいます。

そこから会議や打合せがあると、もうそれだけでゲームオーバーです。しかしそこで「お先に失礼します!」とは行きません。稟議や顧客プレゼン書類の作成、そして上席へ当日報告があります。最も忙しかった時期にはとにかく深夜残業の手前で打ち切り!!

これが営業担当全員の合い言葉になっていました。当時の記憶がおぼろげなのですがこの時間が22時だとすると、17時からの残業は5時間。朝1時間と併せて6時間/日となります。これに20労働日を掛けると120時間/月。なんともすごい数字です。

今は朝も夜も残業は思いっきり短くなっているようなので、この数字はあり得ないと思いますが、当時の感覚では土日が完全に休めるのなら特に問題なし。こう考えてました。流石に土日出勤は頭に来てましたが。
やはりこのような問題には時代の流れが大きく影響するようです。過労死レベルの残業についてでした。

2021/06/27

貿易と銀行実務いろは一覧

銀行に「あいみつ」作戦は有効か

見積書

皆さんは「あいみつ」という言葉をご存じでしょうか。「あいみつ」とは「相見積もり」の略称です。商品売買や役務の提供・享受など多くの場面で使われています。一定の条件の下で最も自分にとって有利な相手と取引する。そんな時に最適な交渉方法と言えます。

その特徴は、複数の相手に同条件で見積して貰うことにあります。その見積を比較して、自社に最も有利な相手と取引します。これが「あいみつ」の大まかな説明ですが、問題はこのやり方が銀行取引で使えるのか。使えたとしてその効果は如何ほどのものか。この辺が皆さんの関心事になると思います。そこで今回はこの点について考えてみたいと思います。

実は銀行との接点が余りない方は、「あいみつ」作戦は無理では。そもそも銀行との条件交渉は殆ど不可能ではないか。こう考えておられると思います。しかし銀行取引には、交渉の余地がある場面が多々あります。勿論箸にも棒にもかからない対応をされる場合もあるのですが、銀行がこちらのことを取引先と認識するようであれば、個別交渉の余地は大いにあります。

外為の場合は交渉の俎上に上がるのは、金利・手数料・為替売買益の大きく分けて三つのカテゴリーです。金利は主に輸出入為替の割引利息が該当するのですが、国内金利が超低金利のまま推移している現在では、金利選好の強いお客様は割引に回さずに取立扱いとして、その間の資金は別途調達していますので、銀行との交渉にはなりません。

次に手数料ですが、郵便電信料のように実費相当分のものや、信用状の通知手数料のように銀行に取って、それ以外に収益機会が無い場合などの場合は、条件交渉向きでないため、「あいみつ」を取っても上手くいかないようです。

最後の為替売買益ですが、これは大いに交渉の余地はあります。それは為替売買益は銀行サイドの取り分が多い点と、ボリュームを確保出来れば実収益が確保出来るからです。

まず銀行取り分ですがよく知られているように、USDでは売買でそれぞれ1円の利鞘が銀行にはあります。つまりUSD10千なら一万円。USD1百万なら百万円の収益になります。またボリューム確保の点では、年間USD5百万の外為が確保出来れば、年間収益は5百万円となります。

このように為替売買益(為替手数料とも言います)は、銀行にとって有難い収益減のため、まず銀行からサービスしましょうとは言ってきません。そこで「あいみつ」を取る際にいくら優遇してくれるのかを、各銀行に出して貰うのです。

銀行の立場からすればどうしても取引したければ、相当思い切った数字をぶつけてくるはずです。例えば私は80%優遇を最初に出して、それ以上も含みを持たせました。80%はかなりの好条件ですが、他行も同条件提示の可能性が有り、含みを持たせることにより他行との差別化を図ったのです。

なお「あいみつ」を取ったときに、単純に最も好条件の銀行と、取引するのも良いと思いますが、逆に取引したい銀行に、
その好条件をぶつけて譲歩を迫るというのも、銀行としては大変に手強く感じる交渉術で有り、ここぞと言うときに用いるというのは大変に効果的と言えます。

2021/06/20

貿易と銀行実務いろは一覧

関税消費税の立替はフォワーダーには負担大

フォワーダーにとっては資金繰りの悪化

前回のコラムで、輸入者自身で関税消費税を直接支払う方法は多少の手間がかかるためか、フォワーダーに立替を依頼することが現在でも主流です。しかしながら、多くの顧客の関税消費税を立て替えることはフォワーダーにとっては大きな負担とリスクになることをお話いたしました。

それでは実際、フォワーダーにとってどれほどの負担になっているのか、具体的に考えてみましょう。程度の差はありますが輸入通関というのは週明けの月曜日が最も件数が多くなる傾向にあります。週末の土日に到着した貨物はメーカーや工場が休みで納入できないため、週の明けた月曜日に通関して納入することが多いからです。

ここからは私の経験を元にしたお話となります。以前、某国際物流会社のとある空港支店にて航空輸入通関を通関士として担当しておりました。当時は通常の土日明けは300件近く、3連休となり稼働が火曜日となると400件以上の輸入通関をするのが通常でした。

航空輸送されるものは物量では海上輸送と比べてかなり少なくなりますが、迅速な輸送ができるという利点から高価な貨物を運ばれることも多く(PC関連機器、精密機械、航空機部品など)必然的にインボイス価格も高くなり、税関に収める関税や消費税も高額となります。

1日での立替金額が1000万円を超えることも全く珍しくありませんでした。一箇所の支店だけでそれだけの金額を立て替えているのですから、全社で考えると1日で1億円近くの金額を輸入者の代理として支払っていたと言っても過言ではないでしょう。たった1日でこの金額ですので、1週間、1ヶ月と期間を延ばして考えるとその額は途方もないものとなります。

これだけの金額を立て替えるというのはどんなに大きい会社であってもキャッシュフロー的には悪くなります。そしてもちろんリスクもあります。輸入通関して貨物を引き渡した後に輸入者の資金繰りが悪化して倒産となり、輸入通関料などはもちろん高額の立替金も回収不能となった、などという事態が起こり得るからです。実際、私が勤めていた頃にも、年に一度くらいはこういった回収不能問題が発生していました。

当然、通関業者側も対策はしています。
・取引実績がなく支払いに不安のある輸入者には先にざっと見積もった立替金額の請求書を発行して入金の確認が取れてから通関をかけたり
・取引先の信用状況をこまめにチェックして立て替えられる金額の上限を定めたり
・できる限り輸入者自身でのリアルタイム口座の開設や納期限延長制度の使用を検討していただいたり

など、色々な方法で関税消費税の立替金未収リスクを減らすよう努力しています。

しかしながら通関業者も一企業ですので、顧客から「面倒だからそちらで立て替えて下さい。他の通関業者さんは何も言わずに立て替えてくれていますよ」なんて言われたら断りにくいものです。通関業者の努力だけではままならない部分も多々あります。

ですので前回のコラムでもチラッと出ましたが、クレジットカードなどで簡単に支払えたり、面倒な手続きなく顧客の口座から引き落としたりできるような輸入通関システムが開発されたらいいのにな、と元輸入通関士の立場からは思っています。もちろん、安全安心に使え悪用されないシステムであることが前提ではありますが。

2021/06/16
輸出入よもやま話一覧

銀行にとっての「シーウェイビル」と「サレンダードB/L」

海上輸送中のコンテナ船

お馴染みのAIBA論壇ですが、今回も興味深い議論がされてました。「シーウェイビル」と「サレンダードB/L」が俎上に上がっていたのです。

この「シーウェイビル」と「サレンダードB/L」はいずれも、海上貨物運送に用いられる輸送状とも言うべきものですが、両者の性質の違いから、銀行はその扱いに悩まされる部分があります。今回はその辺の機微についてお話ししたいと思います。

まず「シーウェイビル」ですが勿論日本語由来では無く、「Sea Waybill」と綴り「海上運送状」と訳される英語由来のものです。意味するところは「流通性の無い海上運送書類」という具合になります。銀行が取扱根拠としてるのは信用状統一規則(UCP600)の第21条以下の条項となります。銀行としては保全確保の見地からB/L(船荷証券)が望ましいのですが、航空貨物では「Air Waybill」が圧倒的な地位を占めており、その影響も有り「Sea Waybill」は、 採りあげ容易となっています。

またいわゆる船荷証券の危機を考えた場合、銀行としては明確な根拠が無い「サレンダードB/L」を常用して欲しくない。このような思いもあり買取依頼者の信用性に重きを置く、信用状無し取引ではその姿を見る事が多いといえます。但し銀行としては「Sea Waybill」は発行後であっても、「コンサイニー」(受取人名)を含めて変更が可能な点が悩ましく、B/Lの全面的肩代わりを推進するまでの意思がないのが実情です。

一方「サレンダードB/L」は Surrendered B/Lと綴ります。日本語では元地回収B/Lと呼んでます。意味するところは、本来輸入者に送るべきB/Lを、元地(すなわち輸出地)で船会社が回収してしまった。そしてそのことをB/Lに「Surrendered(回収済)」と表示した。更にコピーとして当該サレンダードB/L を輸出者に手交した。これが一連の流れとなります。
 
この「サレンダードB/L」は実務上の要請から生み出されたものであり、実際に目にするようになったのは、ここ20~30年位です。出始めた頃はその根拠が分らず、本部に問い合わせても判然としない、よって手探り状態で書類を受付して海外へ発送していました。しかし作成根拠こそ不明でしたが、外見も記載内容もB/Lそのものです。(当たり前ですが)よって買取依頼人に問題がなければ、そのまま買取に応じていました。

また信用状付き買取であれば、L/C本文の中にSurrendered B/L acceptableとあれば、無条件でスルーさせていました。これはサレンダードB/Lでも、L/C条件でそれを認めるのであれば、発行銀行の支払の確約は存在し、輸出債権は確保されている。こう言った判断を優先させたからです。

結局の所、銀行での両者の取扱はどちらかに収斂するのではなく、限りなく今の状態が継続すると思います。もし決着が付くとしたら、それは劇的な変化の結果でしょう。それが船積書類の完全電子化なのか、貿易決済における銀行の役割終了かは分りませんが、
そんなときが来るまでは、銀行は今のような対応を続けるのだと思います。

参考記事:JETRO サレンダードB/Lと海上運送状(Sea Waybill)の違い
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070301.html

2021/06/13

貿易と銀行実務いろは一覧

「英文字」の聞きまちがえを防ぐ

フォネティックコード

今回のお題は「英文字」聞きまちがえの防ぎ方です。「英語」の聞き間違えの防ぎ方。ではありません。ややこしいですが。これどういうことかと言えば、文字の羅列(意味の有無は不問)を音声で相手に伝えたい時に、確実に伝えるにはどうやれば良いかについてです。

一番良いのは文字そのものを相手に見せることですが、それが出来ない場合も多々あります。一例を挙げて見ます。「PMS」(ぴー・えむ・えす)と言う3文字を、口頭で相手に伝えようとします。この時、話者がどんなに大きな声や、一文字ずつ区切って発音しても、「P」が「T」に聞こえたり、「M」が「N」、「S」が「F」に聞こえる場合があります。これは話者の滑舌や、その場の騒音状況、聞き手の思い込みなどが誤伝の原因と考えられます。

しかし原因が何であれ、間違って伝わってしまうのでは困ります。L/C(信用状)やB/L(船荷証券)番号が間違って伝わることを、想像して頂ければ、正しく伝える重要性がおわかり頂けると思います。そこで外為現場では正しく伝えるために、言い換えを用いてました。この言い換えのことを「フォネティックコード」と言います。日本語では「通話表」と呼んでいるようです。(今回初めて知りました)

この「フォネティックコード」を使うと、相手にかなり正確に伝わります。前述の「PMS」の場合は、「ペキンのP、メキシコのM、スペインのS」と、主に国名・都市名を用いて表現していました。実際に使っていた感想では日本国内は勿論ですが、海外とのやり取りでも、今からスペルアウトすると言った上で、フォネティックコードを使えば、回線状況が悪くても何とかなっていました。

面白いのはそこで出てくる国名や都市名です。欧米系の銀行が相手ですと圧倒的に欧米の地名・都市名が良く、アジア系の銀行では、日本の地名でも非常に良く通じました。そしてどちらの場合でも「Y」は「ヨコハマ」の一択でした。こんなことからも港ヨコハマの知名度は高いんだ。こう思いました。

ちなみに今改めて各種のフォネティックコードを見てみると、英文字の表現は様々で有り、自分たちが使っていたのは、限りなく我流仕様だったんだなーと、やや赤面するものがあります。ちなみに当時は得意げに使っていました。

ここまでお話ししていると、和文の場合が気になってきました。じつは和文を言い換える場合には、総務省令に定めがあります。(総務省令無線局運用規則別表第5表)中を見てみると大変懐かしい気持ちに襲われました。遙か昔学生の頃、郵便局でアルバイトをしていました。担当は郵便窓口で書留や速達・小包等の受付・発送をしていました。

この郵便窓口では電報も受け付けたのです。受け付けるために、お客様に電文内容を頼信紙に書いて貰いました。そしてその頼信紙を手に、電報センターに発電依頼をかけます。そのときまさしくこの通話表通りに言い換えていたのです。「金頼む」だと「為替のカ、鼠のネ、煙草のタ、野原のノ、無線のム」と、言い換えながらセンターに電文を依頼していました。

今回、このコラムを書いていてこの二つが結びつきました。何とも言えない妙な気分です。こんなこともあるのですね。ではまた。

参考サイト: 通話表(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%A9%B1%E8%A1%A8

2021/06/09

貿易と銀行実務いろは一覧

関税消費税をどのように支払うか?

関税消費税の支払い方法

輸出入のアドバイザーのようなお仕事をしている関係上、フォワーダーを通しての本格的な輸入をするのが初めてだという方とお話をさせていただく機会も度々あります。

輸入者さんのニーズに合わせてフォワーダーを選定し、場合によってはその後の実務的な作業も代行しています。実際に輸入実務が始まった際に必ず決めなければならないことの一つが「関税消費税はどのように支払うか」です。

こちらをストレートに輸入者さんにお聞きすると「じゃあクレジットカードで払いますね!」と答えられることがあります。クレジットカードで支払いできたら確かに便利ですよね、と思いつつ

「申し訳ございません、関税消費税はカード払いができず、銀行からの引き落としがメインでして。。。」と説明を始めると「だったらこちらの銀行口座を教えますのでそちらから引き落として下さい!」なんて回答をいただくこともしばしばあります。

そうですよね、簡単に自分の口座から引き落としてもらえればとても楽ですよね、と激しく同意をしつつも「いえ、引き落としができるのは税関にあらかじめ申請をしてある口座のみであり、申請完了までは2~3週間かかりまして。。。」

とお話しますと「それではどうしたらいいんですか!?」と困惑の面持ちで尋ねられますので「一般的にはフォワーダーの口座から一旦引き落としてもらって立替してもらい、後日、通関料などと一緒にお支払いする流れとなります。」とご説明し、納得していただけることが多々あります。

確かに、税関への関税消費税の支払い方法は、普段輸入者をされていない方にとってはピンと来ない事柄かと思います。基本的には先ほども申し上げましたように、予め税関へ申請してある銀行口座、いわゆる『リアルタイム口座』からの引き落としとなります。この申請には手間はもちろん、2~3週間と時間もかかるためか、リアルタイム口座を保有されている輸入者さんは個人も企業も含めてそれほど多くなく、ほとんどがフォワーダーのリアルタイム口座から引き落としとなっている印象です。

他の納税方法として納期限の延長、いわゆる『延納』もあります。個別や包括など色々な種類がありますが基本的には輸入者があらかじめ税関に対して税額に相当する担保を提供したときにその納期限の延長が認められる制度です。

これはリアルタイム口座の解説よりもさらに手間がかかりますし包括の納期限延長になりますとかなりの額の担保を提供しなければならないので、利用されている輸入者さんは限られています。担保の提供に耐えうる資本をもつ、大企業さんが多いイメージです。

このように輸入者自身で関税消費税を直接支払う方法は多少の手間がかかるためか、フォワーダーに立替を依頼することが現在でも主流の流れとなっています。しかしながら、多くの顧客の関税消費税を立て替えることはフォワーダーにとっては大きな負担とリスクになります。

冒頭の話に戻りますが、関税消費税をクレジットカードなどでサッと払え、且つ安心して利用できるシステムがあれば、輸入者にとってもフォワーダーにとってもメリットがあるのかもしれません。

参考サイト:リアルタイム口座
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/mpn/mpn_direct.htm

2021/06/06
輸出入よもやま話一覧

銀証連携が進めば

銀証連携とは銀行と証券会社の連携のこと

今回は「銀証連携」と呼ばれるものについて考えます。この「銀証連携」ですが、「ぎんしょうれんけい」と読みます。意味するところは、文字通り銀行と証券会社(以下証券と略)が、連携して効果的な商売をしていこう。こんな意味合いです。

「顧客紹介」、「共同店舗の運営」、「金融商品の共同開発」などが、銀証連携の具体例に良く挙げられます。どの施策も銀行単体・証券単体でやるよりお互いに連携してやった方が、人・物・金すべての面で上手く行く。このような経験知を基にしています。一方、日本には「銀証の壁」(ファイヤーウオール)も存在しています。このファイヤーウオール規制と言う言葉を、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。

これは今から約30年前の1993年に設けられた規制で、銀行が証券子会社を持って証券業務を行う場合に、銀行の顧客情報を勝手に証券子会社に使わせてはならない。必ず顧客の同意を要する。こう言った規制です。確かに当時は銀行の優先的地位が現在よりも明確で、銀書連携には専業の証券会社から大きな反発が出たのも事実です。しかし今やこの壁の存在は、時代遅れとなっています。(私の意見です)

そこで2020年の7月に閣議決定された政府の成長戦略フォローアップには、「国内顧客を含めたファイヤーウオール規制の必要についても、公正な競争環境に留意しつつ検討する。」と明言されました。つまり銀証連携の障害となるファイヤーウオール規制は、今後更なる緩和や撤廃が見えてきたと言うことです。

ところでこの銀証連携の利用者側にとってのメリットは何でしょうか。やはり大きな所では、従来からの商売では銀行は銀行の守備範囲、証券は証券の守備範囲でしか何も出来ませんでした。つまり企業の資金調達や資金運用、個人の資産形成などで、利用者には限られた選択肢しかなかったのです。

しかし銀証連携が進むと複合的な提案が可能になります。銀行、証券、顧客すべてが最大メリットを追求できるようになるわけです。今までの銀行・証券別建てに比べて、大きく前進することが想像できます。

既にネット専業銀行では先行しています。楽天銀行と楽天証券、SBI証券と住信SBIネット銀行の組み合わせは、利用者から見て全く銀証の障壁を感じさせません。翻ってメガバンクでも三井住友銀行とSMBC日興証券、三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガンスタンレー証券が、一歩先んじているような印象を受けます。

特に三井住友グループは都心の大型店では銀行店舗と証券店舗が同一フロアに入居しており、受付も実質一体となっています。利用者感覚では銀証同一店舗です。また双方に口座を開設していれば、資金移動は即時に行えるため、いちいち実店舗に行く必要もありません。

今後銀証連携が進めば、更に実店舗の必要性は低下するのでは?こんな感想をも持ってしまいます。今回は銀証連携についてお話ししました。

2021/06/02

貿易と銀行実務いろは一覧

Terve! フィンランドEU圏外からのオンライン注文に通関必須

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コロナ禍で世界中のオンラインショッピングの注文が急増している中、欧州議会(EU)は今年7月1日よりEU圏外から圏内へと輸入されるオンライン商品に通関手続きを実施する新しい規制を施行する予定です。今回はその規制や現状の郵便事情について紹介します。

現在、EU圏外のオンラインショッピングで買い物をして、その合計が22ユーロ以下の場合は付加価値税(VAT)が免除され、通関や関税の対象外となっています。しかし7月1日から施行される新しい規制ではこの免除措置が廃止され、価格の大小に関わらずすべてのオンラン商品に通関が必要となります。

現在アジアや米国のオンラインショップの大半では、すでにVATを直接支払えるシステムが構築されているところもあります。しかし、最終的なチェックアウト価格にVATが含まれていないオンラインショップで注文した場合、消費者は90セントのサービス料をフィンランドの郵便局(Posti)に支払う必要があります。

一方EUでは、この新しい規制に合わせて、消費者がオンラインショップで直接VATを支払えるように「Import One-Stop Shop(IOSS)」を構築しています。

この新しい規制は、150ユーロ以下の商品にしか適用されません。この価格の壁を超えると、消費者はVATだけでなく関税も支払うことになります。このような事態を避けるためには、消費者が購入時にVATを支払うことができるサイトで買い物をすることが最善の方法だと、フィンランド郵便局の国際eコマース担当者は述べています。

実際に著者は、EU圏外のオンラインショップで22ユーロ以下に抑えられる買い物の場合は、そのサービスを利用していました。今後はこうした事態からなるべくEU圏内で利用するようにと考えています。

今回の新しい規制により、また著者のような行動変容によって、EUに拠点を置く企業の競争力は、EU圏外に拠点を置く企業に比べて向上することが、フィンランド財務省によって予測されています。

またこの規制によって約70%の注文でVATがオンラインショップに直接支払われるようになると予測されていますが、ショップ内のシステム移行期間にどれぐらいかかるか、さらには到着後の税関等のシステム移行や手続き進行にもどれぐらいかかるか、この点がフィンランド国内では焦点となっています。

というのも、今年の3月中旬からフィンランドの税関では各国からの通関電子データの送信義務化によって、現場のシステムがこの義務化に対応できておらず、EU圏外からのすべての荷物に遅れが出ています。実際に著者も日本の実家からEMS便が到着したにも関わらず、日本発送から半月以上経過しても税関検査に入ったまま未だに受け取りができていない状況です(通常ですと日本ーフィンランド間のEMS便は、ほぼ1週間ぐらいで受け取れます)。

こうした現状から、7月以降の新しい規制が導入されても現場は再び大混乱に陥る可能性が高いですし、それまでに現在の税関混雑が解消されればですが、その可能性も今は未知であります。

今回のコロナウィルスが弱毒化するまでにはあと1-2年かかるとも言われており、するとわたしたち人間の生活もこうした規制やシステムの変更を余儀なくされることが続くと予想されます。人だけではなく、モノの移動についても改めて考えさせられる状況であります。

参考記事
フィンランド郵便局(7月1日からの新規制について):
https://www.posti.fi/fi/henkiloille/paketit-ja-seuranta/lahetyksen-seuranta-ja-hakeminen/paketin-tullaus-ja-kasittelymaksu/tullaus-1-7-2021-alkaen

フィンランド税関(現在の税関混雑について):
https://tulli.fi/en/-/delay-in-customs-clearances-of-postal-packages-arriving-from-outside-the-eu

欧州議会(「IOSS」について):
https://ec.europa.eu/taxation_customs/business/vat/ioss_en

日本郵便(通関電子データ義務化について):
https://www.post.japanpost.jp/int/ead/index.html

2021/05/27

海外だより:フィンランドより一覧

人の壁とエコー作戦

クレーマーの対応

今回は銀行のトラブル・防犯対策を見てみます。今から思えば銀行員生活の日々は、トラブル・防犯との日々でした。人間はお金が絡むと簡単にトラブル・事件になる。これは身に染みました。

出来ればトラブルや事件は起こしたくは有りません。今回はこの気持ちをお伝えすべく、お話を進めていきたいと思います。最初は人の壁についてのお話です。

○○の壁というと某国前大統領を思い出します。ホント。しかしこのお話は前大統領とは全く関係ありません。トラブル回避対策で銀行が良くやる対策です。クレーマーの決まり文句に「責任者を出せ!」があります。要するにお前ら下っ端に話をしても、何のたしにもならない。責任者と話をして、キチンと対応して貰う。こんな意図だと思います。

ここで窮地に陥った担当者をサポートするのが、責任者と呼ばれる管理職です。大抵のトラブルはこの二人(稀に三人)で解決させてしまいます。つまりクレームに対して人の壁を二重(or三重)で対処するわけです。そして極々稀にですが、更に上位者の出馬を仰ぐ場合があります。これは銀行に元々落ち度があり、初期対応も間違えてしまった場合です。

こうなるとお客様は頭から湯気状態です。(こちらも当初のクレーマー扱いは吹っ飛んでます)こうした非常事態への対応として、更にもう一つ人の壁を重ねるのです。この一連の対応を人の壁を作ると言っていました。あくまでも冷静な人を増やすことで、問題解決させるのが狙いでした。

次はエコー作戦です。このやり方は他業態でも行われています。その狙いは不審者に対する犯罪抑止効果です。銀行の店の中に入ると、中に居る行員やロビー係から声が掛ります。「いらしゃいませ」がほぼ鉄板かと思います。これは勿論お客様の来店を歓迎する意味も有りますが、来店目的へのスムーズな誘導の意味もあります。そして何より重要なのが、万一不審者が店内に入っても、声を掛けることによって、その存在を認識したとの明確なシグナルを、その不審者に送る効果があることです。

そしてこの声掛けは、複数人で行うのが望ましいとされていました。つまり店内に入るといろんな方角から「貴方を認識した」との声が、掛かることにより、不審者にその気をなくさせようというわけです。

この声掛け。山彦のように響くことから、エコー作戦と呼んでいました。ここで大事なのが、単に声掛けに終わっては駄目なのです。ロビー担当者の歩み寄りや、窓口担当者の目線合わせ、このような合わせ技も駆使して、防犯対策を完璧にする。このような指導も併せて行われていました。

如何でしたか、この二つのお話。もし皆さんも使えるようでしたら、是非一度試みて下さい。意外にお役に立つと思います。

2021/05/24

貿易と銀行実務いろは一覧

突然。「TREASURY CHECK」が来た!

米国財務省小切手

先月頃から突然シニアに向けて、英語の封書が到着しています。開封しても説明文も何も無し。英文小切手が入っているだけ。(「TREASURY CHECK」は米国財務省小切手のことです)今回はこんなちょっと「ビックリ」するお話しです。

実はこの封書、シニアであれば誰にでも来るのではありません。米国での勤務経験がある、米国政府の年金受給者宛なのです。金額はUSD1,400.00(約15万円強)。結構な金額です。思わずガッツポーズが出そうになります。しかし残念ながら折角受け取っても、殆どの方は受給対象外となります。

そもそもこれは何のお金なのか?実はこのお金はバイデン政権の政策に基づく交付金です。米国財務省発行の新型コロナウイルス対策の給付小切手(Economic Impact Payment)と呼ばれています。1人当たり最大USD1,400.00支給されるものです。ではなぜ日本に送られて来るのか?

どうやら年金受給者であれば米国内外を問わずに、登録住所に送っているようです。(海外にも米国市民はいますので)なので折角の小切手ですが、受け取れる人は限られています。もし自分が受給対象者であれば、すぐに換金手続きを取りましょう。

ただ日本の銀行は、原則として海外小切手の取扱を停止していますので、個別に取り扱うようにネゴする必要があります。取扱可能な銀行としてSMBC信託銀行(下記Url参照)があります。

一方、自分が受給対象外であれば小切手の有効期間は1年なので、何もせず放置しておくのも一つの手です。放置するのが嫌ならば、小切手券面にVOID表示(無効表示)の上、(米国)内国歳入庁(IRS)に返送する必要があります。若干とはいえ郵送料が発生するのが業腹ですが。。。

これからも年金を貰い続けるため已む無しでしょうね。ここまで書いていて日本の「特別定額給付金」(去年の10万円)は、どうなっていたのか気になったので調べてみました。当時の報道を見ますと、海外在住の日本人は対象外のようです。その後支給を検討するにステータスが変わったようですが、それ以降のことはよく分りませんでした。

その代わりに昨年12月3次補正予算で91億円を捻出し、各日本人会で役立て貰う。こう言う記事を見つけました。建て付けが変わったようです。

参考サイト
米国大使館:
新型コロナウイルス対策給付金小切手
https://jp.usembassy.gov/ja/services-ja/eip_checks_ja/

SMBC信託銀行プレスティア:
米国財務省発行の新型コロナウイルス対策の給付小切手(Economic Impact Payment)のお持込みをご検討のお客さまへ
https://www.smbctb.co.jp/contacts/us_treasury/index.html

2021/05/20

貿易と銀行実務いろは一覧

深刻な海上コンテナ不足。解決の手立ては?

不足している海上輸送用コンテナ

前回のコラムでは、新型コロナウィルスの影響もあり、昨今では世界中で海上輸送コンテナ不足が叫ばれていることを述べさせていただきました。

コンテナが不足すると、輸送に遅れが生じてしまうだけではなく、コンテナ運賃の上昇につながりかねません。結果、上昇した海上運賃が商品の価格に転嫁される可能性も十分にあり、私たちの生活にも密接に関係している問題です。そんな、世界経済にも影響を与え得るコンテナ不足ですが、解決する手立てはないのでしょうか。

コンテナ不足の解消方法として、まず思いついたのが「コンテナが足りないのであれば作ればよいのでは?」ということです。足りない分を増やせば当然ですが需要は満たされます。しかし調べてみると簡単なことではないようです。

海上輸送コンテナは、現状では9割が中国で製造されています。その中国では、現在のように新型コロナウィルスによる国際輸送量の増加が起こる前は、米中貿易摩擦の影響で輸送量は逆に減少していたそうなのです。それにより中国のコンテナメーカーはコンテナ生産を大幅に減らしていたようで、結果として新しいコンテナが思うように増えていないのです。かといって今、増産体制が取られているということもなく、こういった突発的な需要によるコンテナ不足がいつまで続くかわからないという中、生産を大きく増やす計画はない見通しのようです。

一方で、明るい兆しはあります。ベトナムの大手鉄鋼会社が、コンテナの需給ひっ迫に対応するため、2022年夏にコンテナの生産を始める計画と立てているとのことです。計画が実現すれば、コンテナ不足解消の大きな一歩となるでしょう。

それでもコンテナ増産までにはまだまだ年月がかかります。それまでにできることを考えてみますと、海上輸送がダメなら航空輸送に切り替えればよいのでは?ということも思いつきます。しかし、航空輸送も、新型コロナウィルスにより海外旅行客が激減している影響で便数を大きく減らしており、航空運賃は高止まりしスペースも確保しにくい状況が続いています。海上輸送から航空輸送に切り替えてもあまりメリットはないと言えるでしょう。
 
視点を変えて船社では、コンテナ不足解消に対してどういった対策をされているのでしょうか。大手海運会社では、空コンテナ在庫の適正化のため、大手IT企業とタッグを組み、ビッグデータとアナリティクスを活用して、「どの拠点にどの程度の在庫を持つか」「コンテナ在庫をいかに効率的に管理するか」といった情報収集・分析の迅速化に努めているそうです。また、別の船社では、6週より先のブッキングを受け付けない予約制限措置を取ることで、コンテナ在庫の適正化と最適化を図っているとのことです。

こういった事柄から、輸出者側で出来ることが見えてきます。輸出をする際によくあるのが、コンテナが足りないといけないので多めにブッキングを入れておいて、直前で本数が決まったらキャンセルすればよい、という考えです。こういった動きにより、空コンテナの無駄な輸送が生じ、コンテナ不足に繋がってしまうこともあるでしょう。できる限り、実際に近い本数で初めから予約を入れることが、小さなことですがコンテナ不足解消の一因となります。

ここまで深刻なコンテナ不足は、一朝一夕に解決するものではありません。船社、輸出者、コンテナメーカー、それぞれの努力によって少しずつでも改善されていくよう、努力が求められていると思います。

参照記事:
NHKサクサク経済Q&A
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20210205.html

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0252Z0S1A300C2000000/

関連サイト:
海上輸送コンテナ不足が深刻に。その原因は?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/boueki_jitsumu_jirei/2021-05-05

2021/05/16
輸出入よもやま話一覧

銀行のセールス攻撃を考える

銀行の投資信託商品

銀行取引をしていると、頻繁にセールス攻撃に遭うことがあります。これが正直なところ「うっとうしい」です。しかも「しつこい」です。ホント。

これが嫌でネット銀行としか取引しない。こんな人もいます。ただ対面式の銀行では、こちらの意向をくみ取ってきめ細かく、
サービスしてくれる場合もありますので、無闇に切るわけにも行きません。そんなこんなで対面式の銀行取引は残したい。しかしセールス攻撃は勘弁して欲しい。こんな二律背反のような状態を解消する方策はあるのか。これが今回のテーマとなります。

具体的な対応策の前に、なぜ銀行はセールス攻撃を仕掛けてくるか。これを考えてみたいと思います。銀行は高い公共性を持つ組織です。とはいえ民間企業でもあります。利潤を上げなければ行員を養えませんし、株主に配当も出せません。そこで利益のために、いろいろな商品をセールスしてくるわけです。

伝統的な銀行業務では、預金を集めてそのお金で融資をすれば、預貸の利鞘で十分な収益を確保出来ました。しかしここまで低金利が続くと、この方法は最早使えません。そこで別の方法を採ったのです。

例えば投資信託販売を見てみます。投資信託は皆さんに購入して貰うと銀行に手数料が入ります。この手数料が銀行収益なのです。販売額の3%貰えるものもあります。これだと10百万円販売すれば、300千円!が入る計算になります。実はこんな銀行の思いが、セールス攻撃となって現れて来るのです。

ではこれにどう対抗していくか?方法は以下の通りです。

1. セールス商品に興味なし。断りたい。
セールスを受けたときの気持ちは、このパターンが一番多いと思います。しかし対応が難しいのもこのパターンです。しかこの場合、一番はあっさりと断ってしまう事です。これで一向に構いません。別に後に影響は出ません。せいぜい当日の面談記録に「セールス不調」こう書かれる位です。

それでも心配ならば、銀行からの話しかけには返事をせずに、ひたすら「ウーン」とか「そうでしょうけどもねー」といった、曖昧語をつぶやくのが良いと思います。そして適当なときに「生憎と次の予定がありますので失礼します」これで締めれば、それ以上の深追いはしてきません。

2.興味はあるが決めかねる場合
ポーズで良いので聞く振りを。そうすれば担当者は熱弁を振るいます。しかし結果として話が長くなりがちなので、話のイニシアチブを渡さないためにも、「デメリットは何か?」とか、「リスク(この場合は危険の意味)や不利益はあるのか?」を聞いて下さい。このフレーズは相手の話に大きくブレーキを掛けられます。お勧めです。そして即断即決はせずに、持ち帰り検討すると言い込むようにします。

3.興味はあるし、決めても良いと思っている。
相手のペースでも構いませんが、前記2のような質問は必要です。そしてその場では手続きせずに「検討します」とか、もう少し気持ちを込めるなら「前向きに検討します」と言って下さい。

以上、場合に分けてお話ししました。最後に強調しておきたいのは何れのパターンでも、銀行のペースで話が進むと、後で問題が発生したときに、解決に難儀する場合があります。出来ればすべての場合で、一旦検討のため持ち帰りを原則とする、これで丁度いいと思います。

2021/05/11

貿易と銀行実務いろは一覧

海上輸送コンテナ不足が深刻に。その原因は?

海上輸送のコンテナ

この半年から1年くらいは、フォワーダーや海貨業者の方とお話をすると、世界中でコンテナ不足が起きているということを実感させられます。

フォワーダーから輸出入輸送の見積もりをいただいても、コンテナ不足により海上運賃が急激に変化しやすく先の見通しが立たないということで、見積もりの有効期限が短く設定されていることがほとんどです。

どうやら海上コンテナだけではなく航空機の貨物スペースもひっ迫しているようですが、こちらの理由は何となく想像できます。新型コロナウィルスの影響で世界的に旅行客、特に海外旅行客が大きく減少しており必然的に航空便のスケジュールも減便しているため、貨物の積載スペースも少なくなってしまうのでしょう。

それではなぜ、海上輸送のコンテナ不足が昨今で叫ばれているのでしょうか。

調べてみましたところ、海上コンテナの不足も新型コロナウィルスが大きく影響を与えていることがわかりました。感染拡大により在宅勤務や自宅時間が増えたことにより、いわゆる「巣ごもり需要」が増えたことが要因であると言われています。在宅勤務での仕事環境を整えるために、昨年はPC関連機器の販売数が伸びたことはニュースなどでも度々報道されていました。それらのPC関連機器の輸送のために通常より多くのコンテナが予約され、船に積載されました。

もちろんそれ以外にも、自宅時間を快適に過ごすための家具や、子どもたちを楽しませるための玩具などが、今まで以上に色々な国へ運ばれたことでしょう。特に北米へ向かう航路ではコンテナ船の物量が昨年度と比較して25%も増えた月もあったそうです。

それだけ多くの船が北米へ向かえば、今まで以上のパフォーマンスでコンテナの積み降ろしなどをしないとどんどん港に滞留されてしまいます。ところが、北米の港では、外出自粛やロックダウンなどの影響もあり、港湾労働者や長距離ドライバーの数が不足しているため、むしろコンテナの取扱い作業量は減ってしまっている状況のようです。

そのため、コンテナを船から降ろしてもらうために(そして新たに輸出されるコンテナを積んでもらうために)北米の港でたくさんの貨物船が行列を作って待っている状況が発生してしまっていたのです。

海上コンテナは一つの航路だけで使われているわけではなく、世界中の港で共通して使われています。北米の港を出た後にアジアを回る航路を組んでいる船も多いでしょう。ですので北米でコンテナが滞留してしまえば、それが他の国でのコンテナ不足にも繋がってしまいます。こうして、今の深刻な世界規模でのコンテナ不足の事態へと陥っていました。

コンテナ不足が続いてしまうと、輸送の遅れはもちろんですが、海上運賃の値上げも避けられません。私自身、ここ最近のフォワーダーからの見積もりを見ていますと、数年前と比べて本当に高くなったと感じることばかりです。海上運賃の値上げは商品価格の値上げに直結しますので、私たちの生活に与える影響は少なくありません。

コンテナ不足は輸出入に関わる方々だけの問題ではないのです。一朝一夕には解決できない難しい問題ではありますが、何とか解消する手立てはないのでしょうか。また別の機会に、考えてみたいと思います。

参照記事: NHKサクサク経済Q&A
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20210205.html

関連サイト:
海上輸送コンテナ不足が深刻に。その原因は?
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/boueki_jitsumu_jirei/2021-05-16

2021/05/05
輸出入よもやま話一覧

フランスの住まい探しあれこれ

フランスで住まいを探す

フランスで住まいを探すのは、インターネットの普及により事前情報が素速くえられるようになりました。

パン屋さんの横に無料の不動産雑誌が置いてあることが多く、そこには地元の売り出し物件の広告が載っていてフランスパンとその無料冊子を持ち歩く人の姿もちらほら。地元の不動産会社の情報もわかりますし、販売物件の家の写真もでているので冷やかしで読むだけでも面白いものです。今回は、住まい探しをテーマにレポートいたします。

まず住みたい地区や、広さをキーワード検索して物件を探すのがまず第一歩です。家の写真もすでにサイトに掲載されているので便利になりました。次に気になる物件があれば、管理をしている不動産会社に連絡をいれて内見予約をお願いします。その時、自分が希望している条件を伝えておくと似たような条件の物件を内見の日に3か所ほど回れるようにアレンジをしてくれます。

面白いのは、まだ住人がすんでいる物件にお邪魔するパターンも多い点。全く知らない人の家に上がりこむのは不思議な感覚です。住人が不在の時でもインテリアや雰囲気である程度暮らしぶりが感覚としてわかることもあります。物があふれている家、モデルルームのようなすっきりとしたアパートなど様々です。

住人がいる時の見学は緊張するのですが、隣人や夜の騒音などの細かい点をヒアリングできる利点もあります。あらかじめ自分の望む暮らしや条件をできるだけイメージしておき、ノートに書き留めておくのがお勧めです。そうすると見学した物件の状態がどんなものであれ冷静に判断しやすくなります。空き物件だとニュートラルに判断できることでも、他人が住んでいる物件だと目に入る情報にとらわれがちになってしまうものです。

不動産屋の決まり文句にご用心!

見学したのち、お気に入りの物件をみつけたら次は交渉です。購入の場合は、値段交渉が可能な場合が多いです。買い手側が売値より低い価格を提案して交渉がスタートするわけですが、ここでも慌てず冷静に対応がポイントです。「この物件、他にも購入希望している人がいます。」と不動産会社からいわれるパターン。これを聞くと買い手は焦ってしまいがちですが、これは不動産屋の決まり文句のようなものなので鵜呑みにしないほうがいいでしょう。

最後に、住まいがかわるとそれにまつわる出費も多くなります。快適に暮らすために家具の買い足しや、内装を変えたりなどの費用が必ずでてくるので予算は余裕をもって組んでおくことをお勧めします。

またフランスの引っ越しシーズンは年末と新学期が始まる9月前です。いい物件をみつけたければこの引っ越しシーズンの3か月前に決めておくのがお勧めです。

2021/04/28

海外だより:フランスより一覧

銀行からのDM。封筒に押されたハンコの意味

DM ダイレクトメール

昔に比べて郵送されるDM(ダイレクトメール)は激減しています。しかし未だに銀行からはDMが届くことがあります。しかもご丁寧に「親展」表示付きも珍しくありません。「親展」とは何事だと、慌てて開封される方も多いと思います。

しかしこの手のDMには、共通したある特徴があります。それは封筒にある印鑑の存在です。しかもご丁寧に二カ所も。場所は銀行支店名の後ろと、封筒の封緘部の場合が殆どです。これは何を意味するのでしょうか。気になると妙に気になります。

現金封筒なら割印(署名でも可)が必要なのは分るのですが、普通郵便ならば印鑑不要です。二カ所も押す必要なんかありません。しかも押されている封筒を開けてみても、担当者交代の挨拶とか、資産運用セミナーのお誘いとかです。これで「親展」扱い。ン!?本当にそう思います。さらに不可解なのは二カ所の印鑑。

気にしなければそれまでですが、なぜなんだろうと気になります。実はこの印鑑、受取人の為に押されているのではありません。銀行が自分たちの身を守るために押しているのです。なぜでしょうか。大いに気になりませんか?この疑問解く鍵は発信元にあります。

この手の封書に共通する特徴は、発信元が営業店なのです。つまり本部からやセンターからのように大量発送する場所からではなく、一通毎に手作業で出された封筒達なのです。本部やセンターで有れば、圧着ハガキや窓付き封筒での対応でしょうが、営業店であればこの部分は手作業にならざるを得ません。

手作業になった場合に、銀行が最も嫌がるのは個人情報の漏えいです。要は封筒の宛名と中身が違っていた場合です。こんな封書を受取人が開けてしまえば、それで一件事務事故発生です。銀行の一方的ミスで、個人情報が第三者に漏れるわけです。言い訳なんか出来ません。これは最も避けるべき事態なのです。それへの防止策が二カ所の印鑑なのです。

具体的には、まず封筒と中身をセットした人間が印鑑を押します。次に精査を頼まれた別人が、中身と封筒の宛名の一致を確認して、中身を封入してのり付けします。この時自分の印鑑を押すのです。これで誰と誰が当事者なのか明確になるわけです。何ともモヤモヤしたシステムですが、相互牽制を効かすことにより、事務事故を未然に防止するためで仕方有りません。

外為の場合更に厄介で英文表示が表に出てくるので、英語と日本語の一致を確認する作業が加わります。他課の人に精査を頼むと間違えやすいので、今一つ評判が良くありませんでした。そんな封書ですが現在でも一定数が届くので、「銀行の現場では相変わらずなんだなー」とつぶやくこの頃です。

2021/04/24

貿易と銀行実務いろは一覧

意外と身近にある輸入許可前引取制度

輸入マグロの水揚げ

「輸入許可前引取り」という単語を聞いたことがある方も多いかと思います。私は初めてその言葉を聞いたときには何だか違和感を抱いてしまいました。

貨物は輸入許可を受けなければ引き取ることができないはずなのにどういうこと?と、とても不思議な言葉のように感じたのです。しかしながら制度をしっかり理解すれば何ら不思議ではありませんでした。今回はそんな、輸入許可前引取についてお話したいと思います。

「輸入許可前引取り承認制度」は通称「BP申告」と呼ばれています。「Before Permit」の頭文字を取ってBPです。ある条件下にある貨物について、輸入の許可前に貨物を直ちに引き取ることができる制度のことです。

先ほども申し上げましたように、原則、輸入貨物は輸入の許可を受けなければ国内に引き取ることはできません。しかし、貨物を保税地域に長期留置させることにより、輸入者の商取引上の商機を逃すことにつながってしまい、適当でない場合などが世の中には存在します。このため、こういった制度が導入されているのです。

この輸入許可前引取制度を利用できる例として次のようなものがあります。
1. 引き取りを急ぐもの(貴重品や危険物、変質・損傷の恐れがある場合など)
2. 時間的制約がある場合(展示会等へ出品するものなど)
3. 特恵税率又は経済連携協定に基づく税率の適用のため必要とされる原産地証明書の提出が遅れる場合
4. 税関側の事情により輸入許可が遅延する場合
5. 申告者側の事情により、課税標準の決定に時間を要するため輸入許可が遅延する場合
といった例が挙げられますが、文字で読んでもなかなかわかりづらいものなので、5番目の例を元に身近なもので具体的にお話したいと思います。

5番目の例に該当する、皆さんにもお馴染みのものとして、海外から輸入する「マグロ」があります。

とある水産会社が、定期的にオーストラリアからマグロを輸入していました。もちろん切り身などではなく、丸々一匹です。そのマグロの価格は、日本国内において市場で競りにかけられることによって確定します。

インボイスはあくまで仮の金額であり、日本に到着したばかりの段階ではまだこのマグロが一体いくらになるのか全く未知数なのです。これでは、正しい輸入申告及び納税をすることができません。
そこで用いられるのがこの輸入許可前引取制度です。

輸入者は一旦、仮の金額で輸入許可前引取承認申請をします。あらかじめ担保を設定して仮の納税を行い、マグロを引き取ります。そして市場での競りが終わりマグロの値段が確定しましたら、改めて正しい金額にて輸入申告を行い、正しい金額の納税を行うという流れで輸入をされていました。

もちろん、この制度の適用を受けられるのは、特定の条件に合ったものに限られますので何でもかんでも輸入許可前に引き取ることができるというわけではありません。

でも私たちが普段何気なく食べているマグロにもこういった制度が活用されていることを知ると、私のように今まで何となくしっくりこなかった方でも、意外と身近な制度であることがお分かりいただけたかと思います。

2021/04/20
輸出入よもやま話一覧

貨物が来たのに輸入書類はまだ!解決策は?

輸入貨物のサンプルワイン

初めての輸入商談で、正式契約前に先ずはサンプルを輸入する。これ良くある話だと思います。この場合決裁は送金でしょう。多分。

しかしごく稀に、ドキュメンタリーベースの決裁になる事があります。つまり海外の輸出業者が、船積書類一式をこちらに送りつけて、書類と引替に何らかの形で資金を回収しようとするのです。この場合問題となるのが、相手業者がこちらの意向とは無関係に、荷受人(Consignee)を(勝手に!)銀行としてくる場合です。

L/C(信用状)取引ではL/C条件がそうであれば問題なしですが、L/C無しの取引ではこの状態は大変に困ってしまいます。ではなぜこの取引が大変に困るのか。

この点を解決法にも触れながら、お話ししたいと思います。銀行が困ってしまう理由。

その1 海外の銀行からの指図が不明
例えばD/P(支払渡し)なのかD/A(引受渡し)なのかも分らない。特別な条件があるのかも分らない。指示がなければ動きようがない。この状態は非常に困ってしまいます。

その2 船積書類が本当に到着するのか不明
相手が銀行経由で送ったと言っても、来ないと本当かどうか分りません。もっと言えば、そもそも銀行に持ち込んだかどうかも分りません。銀行を通さずに日本に送ってくる場合だってあり得ます。(ビックリする話ですが、長く外為をやっていると一度は経験します。)

その3 他人の物を引渡す指図なんか本来出来るわけない
L/C(信用状取引)なら銀行は支払の約束をしてますので、到着した貨物の荷受人が銀行なら、銀行の所有権を主張できます。しかしL/C無しでは、銀行はそんな約束を誰にもしてません。しかし到着した貨物をB/Lなしに引き取るためには、船便であればL/G(輸入貨物引取保証)が必要ですし、航空便であればRelease Order(貨物引渡指図書)が必要となります。

何れも荷受人(Consignee)が銀行の場合や、荷受人がTo orderで銀行に送られる予定であれば、銀行発行のものが必要になってきます。そこで銀行に発行してくれと頼むことになるのですが、銀行としては船積書類が手元に無い状態で、はいそうですかと、簡単には引き受けられません。貨物の所有権は未だ海外の銀行か輸出業者にありますので、素直に応じるわけにはいかないのです。早い話。他人の貨物を第三者に引き渡す指図書なぞ作れない。こういうことになります。

そこでこんな四面楚歌の状態から脱出する手立てですが、一にも二にも銀行の協力が必要となります。そのため輸入者は次の二点を早急に打つ必要があります。

一点目
海外銀行から取引銀行に大至急指図を送ってもらう。これは輸出業者に頼んで海外銀行に動いて貰います。貨物は到着してますので、大々至急ぐらいの対応が必須です。

二点目
輸入決済に見合う金額を預金する。銀行としては異例な取扱であってもその必要性に納得し、具体的な手続面での問題が無ければ、後は決済資金の問題だけです。なので決済資金を予め用意しておき、銀行を安心させるのです。ここまで段取りすれば銀行の方で内部決裁を取って、発行に応じてくれると思います。

ただし事前に銀行と外為の取引してない場合は、時間的にこの話は無理です。この点はよく気をつけるようにしてください。

2021/04/15

貿易と銀行実務いろは一覧

銀行は文書照会にどう対応しているのか?

国税局

銀行は個人法人問わず、膨大な取引データを持っています。通常このデータは、本人の了解無しでは一切他人には開示しません。よく耳にするのが、預金者が死亡したり判断能力が衰えたりで、家族が銀行に取引の有無などを、照会しても何も答えて貰えない。

こういった事態です。とりつく島もない状態に追い込まれます。本当にお気の毒と思いますが、これはご本人の承諾なしに、情報を開示することに対して、銀行は権限がないのです。しかし何事にも例外はあるもので、銀行はある条件下では、照会に対して回答をすることがあります。今回はこちらをご紹介してみたいと思います。

1.税務署から聞かれた時
皆さんにも大変関心のあることと思います。税務署は納税申告(所得税・法人税・相続税等)に関連して、当該納税者の資産状況調査の照会を銀行に掛けてきます。主に文書の照会なのですが、結構これが神経を使う物でした。文書には通常、根拠条文として国税通則法の関連条項が記載されています。これがいわゆる「質問検査権」です。この権限は強制では無く、あくまでも任意なのですが、いい加減な回答をすると罰則が適用されるので、銀行としては丁寧な対応を心掛けていました。

ちなみに罰則の内容は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。そのような経緯があるので、皆さんの所に税務調査が入って、銀行取引について質問があった場合は、既に銀行情報は持っているという前提で対応することをお勧めします。

2.警察署から聞かれた時
警察からの照会は、犯罪捜査に関連してのものです。「捜査関係事項照会」という名称で文書が送られてきます。これは税務署の照会とは異なり、回答義務が銀行には有ると考えられています。但し罰則はありません。これが送られてきた時は、銀行は一件ごとに案件ファイルを作成します。(ちなみに税務署からのものは、日付順にまとめていました。)

通常は、紹介書の到着時と回答書の提出時に、本部に報告していました。警察からの照会は税務調査に比べると件数が少ないので、実際に照会書が届くと、大変な騒ぎになり鳩首協議を良くやりました。

3.弁護士会から聞かれた時
実は上記照会と良く似たものに、通称「弁護士照会」があります。これは弁護士会名義で、銀行にくるものです。(弁護士会とは弁護士の団体です。ここに所属しないと弁護士活動が出来ない仕組みになっています。)照会内容は税務署や警察署とよく似ています。

しかし銀行の対応は異なっており、前二者に回答拒否はありませんでしたが、「弁護士会照会」に対しては、個人情報保護の原則を全面に出して、回答を保留して照会書を返却することもありました。現在では最高裁判所の判例も有り一部の弁護士会とですが、本照会に対し全店照会を含め回答をする旨の協定を結んでいます。その限りに於いて前二者と同様に回答がなされています。

以上が銀行照会に対する簡単な説明です。上記三点の照会はそれらがあったとの通知は、どこからも皆さんに行きませんので、それぞれの機関から問い合わせがあった場合は、既に銀行の調査は済んでいる。この前提で対応されることをお勧め致します。

参考サイト:

税務署関連
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf

警察署関連
捜査関係事項照会書の適正な運用について
https://www.npa.go.jp/laws/notification/keiji/keiki/310327-20.pdf

弁護士会関連
日本弁護士連合会:弁護士会から照会を受けた皆さまへ
https://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/shokai/what.html

2021/04/08

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