外貨建債権債務の為替ヘッジ策はいろいろ有ります。 そしてその中で、真っ先に上がるのが先物為替予約。 この為替予約、一般に銀行と結ぶことが多いのですが、融資と違って資金は動きませんし、コストも締結レート織込みなので、貿易業者にとっては取り組みやすい為替ヘッジ率です。予約すれば交換レートはその時点で確定するので、採算は決めやすくなります。 |為替予約のヘッジ率はどうすべきか

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公開日:2018.08.17

為替予約のヘッジ率はどうすべきか

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輸出入を問わず、貿易取引では通貨交換が発生します。(全額円建て取引。こんな恵まれた話は別ですが。)

今回は、どの程度為替予約を取るべきか。いわゆる為替ヘッジ率に、焦点を当ててお話しします。

外貨建債権債務の為替ヘッジ策はいろいろ有ります。

そしてその中で、真っ先に上がるのが先物為替予約です。

この為替予約、一般に銀行と結ぶことが多いのですが、融資と違って資金は動きませんし、コストも締結レート織込みなので、貿易業者にとっては取り組みやすい為替ヘッジ策です。予約すれば交換レートはその時点で確定するので、採算は決めやすくなります。

また予約を使う時は、当日の実勢レートに一切関係ないので、安心して取引出来る点も大きなメリットです。それでは全額為替予約にすればいいではないか。こうなりそうですが、そうも行かない場合があります。

例えば輸出を考えます。円安になれば外貨を円に交換するとき、円安になった分手取りが増えます。USD1.00=100円からUSD1.00=110円になったとすれば、何もしないのに10%手取りが増えます。為替予約を取っていれば実勢レートが110円であれ120円であれ、予め決められたレートで交換しますので、このメリットは受けられません。100円のままです。(これは得べかりし利益の喪失です。)

一方相手から見れば外貨額は変わっていないのに、為替レートが変化したので、輸入商品は割高になっています。レート変化前と同じ商売をしたければ、100円の商品は100/110減価して貰わない合わない理屈です。つまり約90.9円になって変化前と同じ水準と考えます。

そうなると当然値引き要求が出てきます。こんな状態で予約を使うと、赤字になる可能性大です。このように為替予約によるリスクヘッジは、儲け損ねだけでなく、相手からの値引き要求にも晒されかねません。

そんなこんなで、為替予約100%ヘッジがベストともいえません。

さてどうしたものか。相談を受けるたびに悩みました。しかし経験則的な積み上げで、ある程度分かってきたことがあります。それをここでご披露します。

まずカバーする割合ですが、通貨交換が発生する為替量に対して、50・70・90・100%のいずれかまでヘッジします。もちろん厳密な話ではありません。あくまでも目安です。

50%未満では為替リスクに晒される部分が過半数となり、あまりヘッジしたという実感が湧きませんし、なによりレートの変化がもろに響いてきます。

70%はメーカーの場合であれば、原価率に近似するでしょうし、90%まで予約を取れば、残りは利益部分ともいえ、そこの部分は最悪ゼロで無ければ良し。こう考えることも出来ます。

100%はもちろんフルヘッジですが、デメリットもあるのでそこを納得されたお客様は上手に100%ヘッジされていました。

世の中がどんなに進歩しても、世界中が単一通貨にならない限り、通貨交換の問題はついて回ります。今になってみると、必要に応じて全額為替予約をして、その後は一切レート変動を気にせず、取引相手に対してもその旨を言い込んで、本来の商売に注力していた会社がありました。

この会社が一番確実に利を重ねていたように見えました。何か王道を歩んでいるように思えました。如何でしょうか。

2018/08/17

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