今は何でもペーパーレスの時代です。実際にサインをすることは、大変に少なくなりました。しかし今でも外為取引では、送金小切手の発行・輸出手形の裏書き・輸入船積書類の裏書きなど、サインが必要な場面があります。銀行は外為担当者から、必要に応じてサイン権限者を任命しています。このサイン権限者をサイナーと呼びます。 |外為における英文サインについて

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公開日:2019.04.19

外為における英文サインについて

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今は何でもペーパーレスの時代です。

実際にサインをすることは、大変に少なくなりました。

しかし今でも外為取引では、送金小切手の発行・輸出手形の裏書き・輸入船積書類の裏書きなど、サインが必要な場面があります。

今回はこの英文サインにまつわるお話しです。

日本で銀行取引と言えば、すぐ思い浮かぶのが印鑑です。

商家の友人の家では銀行の用事は例え通帳記帳だけでも、印鑑を忘れないようにと言っていたそうです。事ほどさように銀行では印鑑が必要不可欠な存在です。

しかし同じ銀行と言っても外為の現場では、印鑑取引が通用するのは、東アジアの限られた国でした。具体的には中国・台湾・香港・韓国です。それ以外の国は全てサインが必要です。

そこで銀行は外為担当者から、必要に応じてサイン権限者を任命しています。このサイン権限者をサイナーと呼びます。外為にいると周りはサイナーだらけですが、他の現場に行くとまずお目にかかれない。いわば珍品扱いでした。サイナーは英文署名権者という厳めしい名前の資格でしたが外為担当の管理職の多くが持っている割には、その役割は中々に大変でした。

その理由はこんなことからです。

銀行が対外的にその意思を表すとき日本語文書であれば、頭取印が大基本となります。もっとも何でもかんでも頭取印ではなく、通常の大多数は押切印(おしきりいん)と称する印鑑を使います。これが押されると、その文書は銀行の正式文書と認められるのです。

しかし外為取引にはいくら頭取印を押しても、海外では認めてもらえません。そこで英文サインが必要となるのです。つまりサインが必要となる場面は多々あるのです。そこで一定資格者をサイナーとして、サインリストに登録した上で、サイン業務を行わせるわけです。

一旦サインをするとその文書は銀行の正式文書となりますので、有る意味頭取印と同等の重みがあると言えます。ところがこのサイナー。外為現場では意外にありきたりで、役職者であればほぼ全員が権限を持っていました。本部が承認すれば主任クラスでも持てました。

サインの形状は自分で考えれば良いので、有名人のまねをして凝ったサインを登録する人間もいましたが、多くの人は日本語の姓と名をひっくり返して、ヘボン式でローマ字表記。これを筆記体で書いてお終い。というなんとも形容しがたいものでした。私は少し凝って名の第一文字を大きく書いて、その中に姓全体を埋め込む形とし少し変化を持たせました。

このサインが、外為に縁がある間はずっとついて回りました。サインリストはコルレス先全行に配布されますので、世界中の銀行に、自分のサインが伝わっていたことになります。長く外為をやっていると、古くから登録者として信頼が出来てしまい、登録日浅の役員より受けが良かった。などという信じられない話もありました。

如何でしたでしょうか、今回は英文サインのお話しでした。

2019/04/19

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