銀行の残高についてです。皆さんが(借入)残高と言われたときに頭に浮かぶのは、その時点での実際の残高(現在残)だと思います。しかし与信を考える上では、現在残だけでは情報不足なのです。そこで登場するのが「極度ベース」とか「極度」と呼ばれている基準です。「極度」は、予め銀行が与信枠を設定しておいた金額です。 |銀行が考える二つの残高とは?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索
公開日:2019.09.01

銀行が考える二つの残高とは?

pic_bank_20190901

先日ある研修会場で出席者から、銀行対応について質問を受けました。

その人は住宅ローンの申込を、取引銀行にしたそうです。

ご本人はOKの自信がお有りだったのに、結果はなんとNO!「何で?何で?」と、その人は銀行に理由を聞いたそうです。

その時返ってきた答えが「借入過多」。。。。。「借入過多??」確かに別ローンはあったが、その残高は僅かで審査に影響するとは思えない。でも否決になってしまった。どうすれば良いのか。

これが質問でした。この質問自体は外為とは無関係ですが、同じような質問を外為のお客様からもよく受けます。

そこで今回は、銀行の残高についてお話をしたいと思います。皆さんが(借入)残高と言われたときに頭に浮かぶのは、その時点での実際の残高(以下現在残と言います)だと思います。この点は銀行でも同じで単に残高と言うのであれば、自行分であれ他行分であれ現在残が残高です。

しかし与信を考える上では、現在残だけでは情報不足なのです。そこで登場するのが、別基準の考え方です。

銀行ではこれを「極度ベース」とか「極度」と呼んでいます。「極度」は、現在残のように今の残高を表すものではありません。予め銀行が与信枠を設定しておいた金額なのです。ですから銀行に教えて貰わないと、分からないこともあります。不便と言えば不便ですが「極度」が一度設定されると、お客様はその範囲内であれば反復して利用が可能になります。これは大きなメリットと言えます。

一方銀行も都度都度、大げさな稟議を書かないで済みます。(極度実行の稟議は非常に簡単なのです)このように銀行、お客様双方にメリットがありなす。が、一点だけ注意を要する点があります。

それは与信(供与)残高を計算する場合です。極度の場合は現在残でなく、極度枠そのもので計算します。例えば信用状発行の「極度」で考えてみます。極度が50百万円で、残高がゼロとします。この場合の与信額はゼロではありません。50百万円です。極度の場合はすべてこの考えで計算します。

銀行はこの計算結果で与信を検討します。この対応、銀行は秘密にしているわけではありませんが、積極的に開示しているわけでもありません。結果として、お客様の考えと大きくずれる場合があります。

もし皆さんが銀行に与信を申し込んだときに、銀行が応諾を渋るようであれば、他の与信への極度設定の有無と、その極度額を確認して下さい。もし極度があってその極度額が大きすぎる、或いは不要ならば、思い切って、極度金額縮減や極度廃止を検討すべきです。

銀行が出せる与信総額には限度があります。この限度を超えずに円滑に借入をするためには、借り入れしたい項目はどれか。金額はいくらか必要か。この命題に対して、最適解を与える必要があります。

文頭のお話しでは、やはり極度ベースの他の借入があり、その極度額が住宅ローンの審査に悪影響となったようです。住宅ローンをOKとするためには、極度の見直しが必須であり、今一度その極度が必要なのか。再検討のお話をしました。

如何でしょうか。以上、銀行には二つの残高があるというお話でした。

2019/09/01

貿易と銀行実務の関連記事