とあるお取引先の輸入決済が一件ありました。事前にその会社から決済依頼書を貰っていたので、その通りに、為替予約による決済を準備していました。ところが思い込みにより、事態は思わぬ方向へ行くことになります。実は記載された予約は輸出予約でした。しかし輸入決済は、輸入予約使用に決まっていると思い込んでました。|輸入決済に必要だったのは輸出予約だった!?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索

輸入決済に必要だったのは輸出予約だった!?

pic_bank_20200311

どんな職業でもそうでしょうが、思い込みは本当に怖いです。

今回はそんなお話しをと思ったのですが、タイトルだけでは、内容は想像できないと思います。なので早速本題に入ります。

事案はまだ営業店で外為をやっていた頃のことです。その日、とあるお取引先の輸入決済が一件ありました。

事前にその会社から決済依頼書を貰っていたので、その通りに、為替予約による決済を準備していました。

勿論予約番号もしっかりと指示書に記載済みです。何も不審な点はありません。この依頼書に従って、当日OP.するだけです。(OP.とはオンライン端末操作のこと)ところが思い込みにより、事態は思わぬ方向へ行くことになります。(実は記載された予約は輸出予約でした。しかし輸入決済は、輸入予約使用に決まっていると思い込んでました。)

思い込みのまま事態は進みます。発端はOP.エラーです。入力指示書通りOP.しても、エラーが出るのです。最初は「残高不足」のエラーだと、気にもとめません。それでも、担当者はそのお取引先に電話して、口座には入金があるとの、回答を貰って処理を後回しにします。

OP.が一巡してそろそろ入金済かと思い、再度OP.をするのですが、またもエラー表示です。口座には既に残高は十分にあります。そこでエラー表示を改めて見ると、「予約使用エラー」とあります。このエラー表示は、使えない予約を使った場合に出ます。

そこで担当者は予約内容の確認をします。

「履行期日は今日で合っているのか。」
「予約金額より使用金額が大きいのではないか。」
「本当に予約残高はあるのか。」

これらを確認すると期日や金額は合っているが、残高がゼロになっていることが分りました。担当者はお取引先の指示相違と思い込み、おっとり刀で電話します。が、先方からは間違いないとの回答です。確かに他に予約は無いので、間違えようがありません。

この段階で担当者から、どうしたら良いか訴えがありました。話を聞いて私もまさか輸出予約とは思いませんでしたので、わかりません。思考停止状態です。しかし時間は刻々と過ぎます。遅くとも15:15までに終わらねば、決済自体が今日できなくなってしまいます。そこでやむなく本部に事態説明をして、助けて貰う事にしました。

私が本部に電話して、予約内容を説明し始めたところ、ふとこの予約が、輸出予約であることに気がつきました。瞬間、目の前が真っ暗になりました。正確には紫色の輪が目の前を包んで、見えなくなったのです。

「やばい。間違えた!輸入予約と輸出予約を間違えて、当初締結してしまった!」

とにかく状況がはっきりしたので、本部の助けは要らなくなりました。不審がる本部担当者との電話を早々に切って、必死に考えました。

「残高がゼロになった理由が知りたい。そうか、裏書き明細だ!」

裏書き明細とは予約取引の明細のことです。それを見るとなんと今日の取引に使われて、残高がゼロになっていたのです。その取引はと見れば、外貨預金からの円転取引でした。(円転とは外貨を円貨にする取引です)これは確かに輸出予約を使います。そして入金された口座は、決済資金を引き落とす口座でした。

ここまで突き止めると、頭に一つのストーリーが浮かびました。その瞬間、電話に飛びついてお取引先に、

「依頼書に書かれた予約は外貨預金からの円転に使い、決済そのものはいつも通り、スポットで決済ですね。」

こう一気に喋ったのです。

お取引先からの返事は、「そうですよ。○○さん(銀行担当者)にはそう言いましたよ。」と、えらくのんびりした調子です。そこで電話を切って、すぐにスポット決済の指示をしました。すでに時刻は15:15を過ぎており、本部から外為勘定が締められない。との怒りの督促がホットラインから流れていたのです。

平謝りに謝って、なんとか一連の処理を終えると、外為全員、口もきけないぐらいグッタリしていました。
結果なんとかなったものの、今思い出しても、冷や汗しか出ない出来事でした。

2020/03/11
おすがっぱ

貿易と銀行実務の関連記事

らくらく貿易は東京都主催「2020TDM推進プロジェクト」に参加しています。

お知らせ

貿易・海外展開を学ぼう

国際物流ナビ

効率的な物流を行うには?

銀行と上手くつき合う

キャリア35年の元銀行マンが本音で語る



節税&投資教科書"

ビジネス書籍ランキング2位。当サイトパートナー総合会計事務所emz代表執筆