今回はいつもワークショップに参加されている、大手メーカーのご担当者よりの質問を紹介します。質問は「バンク・ギャランティーは世界中にあるものなのか?実はこの手の質問。背景説明が必須です。そこで事情をお伺いしました。すると以下の状況でした。|銀行発行のバンク・ギャランティーとは?

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公開日:2020.05.20  / 最終更新日:2022.10.20

銀行発行のバンク・ギャランティーとは?

日本銀行本店

今回はいつもワークショップに参加されている、大手メーカーのご担当者よりの質問を紹介します。

質問は「バンク・ギャランティーは世界中にあるものなのか?」(ン!?)実はこの手の質問。背景説明が必須です。

そこで事情をお伺いしました。すると以下の状況でした。

・物は東アジアからのタンク類の輸入
・資金決済方法は、製品出荷後の海外送金
・初めての取引なので、輸出者が前渡金を要求
・社内規定ではバンク・ギャランティーを入手できれば、一定部分の前渡金には応じられる
・ところがこの新規シッパーはバンク・ギャランティーを知らず、このシッパーの取引銀行も知らないという
・「バンク・ギャランティーは、一般的ではないのか」

この様な状況です。これで質問の意図するところは分りました。これへの回答ですが、以下私のメッセージを引用します。なお「バンク・ギャランティー」という言葉は、銀行では用いませんので、以下の文章には出してはいません。

ご承知のようにL/Gには2種類あり、輸出と輸入では内容が異なります。また輸出でも銀行と輸出者が発行するものがあり、これまた内容が異なります。ご質問のL/Gは輸出サイドの銀行発行のものとのことなので、前受金返還保証(いわゆるRefundment Bond)の事と思います。(輸出者が発行するのものは、輸出銀行宛であり補償状というべきものです。)

本邦ではこのような保証状でも、タイトルはL/G、Bondのどちらも使います。また与信上は表示方法にかかわらず全て外為保証に分類されます。

さて『海外での使用は一般的か?』とのことですが、前受金返還保証そのものが、他の保証(契約履行保証や入札保証)に比べて、利用件数は相当少ない印象です。更に用いられるのは主にプラント輸出のように、契約完了まで長期間を有するものが主流です。普通の商取引では余り見たことがありません。輸出サイドとしては新規取引の場合、全額前受金がベストです。

次善の策としてL/Cもよくあります。今回の事例は従前の取引先はどうしても前受金が欲しいので、前受金返還保証のスキームを使った。こういう流れだと推測します。

『一部前受け、残額は後受け』は良くありますが、前受け部分に銀行保証を付けることは、あまり多くないようです。

二点補足します。

一点目:商売不調で前受金の返還を請求する場合、そこで必要な書類は驚くほど簡単です。(為替手形と返還を要求する証書(Certificate)のみが多い) 結果としてL/G発行銀行(輸出サイド)は、返還請求を受けやすくなります。よって輸出側にとっては顧客・銀行共に、輸入側から信用状を入手し、船積書類を買い取る方が好ましいと言えます。なので前受金返還保証は、尚更利用されないことになります。

二点目:輸出円貨代わり金振込承諾書のことを、バン・ギャラ(バンク・ギャランティーの略)と呼ぶ向きもありますが、銀行がこの承諾書で述べているのは、輸出書類を買取した場合は、その代わり金を顧客に代わって輸出者指定先に振り込む。これだけです。つまりこの一連の事務手続きを受けたに過ぎません。輸出買取の約束や買取金の振込を保証をしたのではありません。

この承諾書には全く保証的効力も担保的効力もないのです。(つまりギャランティーと呼ぶのは大きな間違いです)銀行によってはこの取り扱いそのものをしない。こんな銀行が数多く見受けられます。

関連サイト:JETRO 貿易投資相談Q&A
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010817.html

2020/05/20

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