銀行員とて昼食は大変楽しみなイベントです。たった一年でしたが至福の日々に包まれた時があります。時代は20世紀から21世紀に移る頃、私は60人ほどの外為担当者ばかり集めた部署にいました。三階建ての小さなビルはさながら外為担当者の梁山泊でした。|至福の時。「味匠厨師」が降臨した!

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公開日:2020.10.28  / 最終更新日:2022.10.20

至福の時。「味匠厨師」が降臨した!

外為担当者の梁山泊
サラリーマンにとって、昼食は大変楽しみなイベントです。銀行員とて一緒です。私なんか毎日お昼が鼻先のニンジンでした。今回はたった一年でしたが、日々の至福に包まれた時があります。

その時のお話しを是非お伝えしようと思います。なお表題の「味匠厨師」は私の造語です。至福に導いてくれた調理師への尊称です。他意はありません。

さて時代は20世紀から21世紀に移ろうとする頃です。当時私は、60人ほどの外為担当者ばかり集めた部署にいました。銀行から三階建ての小さなビルを与えられており、そのビルはさながら外為担当者の梁山泊のようでした。そして至福の時をもたらすその場所は一階にありました。

差配するのはTさんとおっしゃる調理師でした。ご専門は中華でしたが、和洋イタリアン何でもOKの手練れでした。そんな頭領の元、我々がなぜ日々多幸感に包まれたかと言えば、それはひとえにT調理師の料理が抜群だったからです。勿論銀行の食事ですから一食当たりの金額は決まっています。確か350円(内自己負担は半額の175円)でした。

こんな低予算から日々の献立が生まれてくるのです。しかも喫食数60人程度は先ずあり得ないのですが、セカンドメニューも備えてあり、メインメニューが食べられなくても、救済して貰える仕組みになっていました。中にはセカンドメニューなのに評判が評判を呼んで、メインメニューに昇格したものもありました。
加えてT調理師は日々の予算から幾ばくかを捻出し、

デザートやドリンクを用意してくれることもありました。我々は文字通り、心ならぬお腹を鷲づかみにされていたのです。それでは有る週のメニューを覗いてみましょう。これを見れば私たちが如何に心待ちにしていたか、分って頂けると思います。

月曜 回鍋肉、春巻き、杏仁豆腐
火曜 ロールキャベツ、ツナサラダ
水曜 生サンマの塩焼き、南京煮、季節のフルーツ
木曜 にぎり寿司盛り合わせ、小田巻蒸し
金曜 チキンソテーバーベキューソース、冷や奴なめ茸かけ

如何ですか、これが11月のとある週のメニューです。これにご飯に味噌汁(orスープ)が付いているのです。これ以外にもセカンドメニューがあり、しかもどれも美味しいのです。評判を聞きつけた本部の役員が、昼食時を狙って来訪されて、そのままパワーランチになると言うこともしばしばでした。こんなイレギュラーな場合でも、T調理師は予め何人分か、多めに用意してくれており、何の問題も発生しないのでした。やがてこの梁山泊は、より大きな館へ宿替えとなりました。

そこでももちろん社食は用意されていました。ですが、確かにメニューは複数ありそれなりに美味しいのですが、余りにもそれまでが幸せすぎました。その反動がでたのか、当時社食でメンバーと顔を合わせる度に、あの頃は良かったと愚痴りあったものでした。

2020/10/28

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