「あいみつ」とは「相見積もり」の略称です。一定の条件の下で最も自分にとって有利な相手と取引する。そんな時に最適な交渉方法と言えます。このやり方が銀行取引で使えるのか。使えたとしてその効果は如何ほどのものなのでしょうか|銀行に「あいみつ」作戦は有効か

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公開日:2021.06.20  / 最終更新日:2022.10.20

銀行に「あいみつ」作戦は有効か

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皆さんは「あいみつ」という言葉をご存じでしょうか。「あいみつ」とは「相見積もり」の略称です。商品売買や役務の提供・享受など多くの場面で使われています。一定の条件の下で最も自分にとって有利な相手と取引する。そんな時に最適な交渉方法と言えます。

その特徴は、複数の相手に同条件で見積して貰うことにあります。その見積を比較して、自社に最も有利な相手と取引します。これが「あいみつ」の大まかな説明ですが、問題はこのやり方が銀行取引で使えるのか。使えたとしてその効果は如何ほどのものか。この辺が皆さんの関心事になると思います。そこで今回はこの点について考えてみたいと思います。

実は銀行との接点が余りない方は、「あいみつ」作戦は無理では。そもそも銀行との条件交渉は殆ど不可能ではないか。こう考えておられると思います。しかし銀行取引には、交渉の余地がある場面が多々あります。勿論箸にも棒にもかからない対応をされる場合もあるのですが、銀行がこちらのことを取引先と認識するようであれば、個別交渉の余地は大いにあります。

外為の場合は交渉の俎上に上がるのは、金利・手数料・為替売買益の大きく分けて三つのカテゴリーです。金利は主に輸出入為替の割引利息が該当するのですが、国内金利が超低金利のまま推移している現在では、金利選好の強いお客様は割引に回さずに取立扱いとして、その間の資金は別途調達していますので、銀行との交渉にはなりません。

次に手数料ですが、郵便電信料のように実費相当分のものや、信用状の通知手数料のように銀行に取って、それ以外に収益機会が無い場合などの場合は、条件交渉向きでないため、「あいみつ」を取っても上手くいかないようです。

最後の為替売買益ですが、これは大いに交渉の余地はあります。それは為替売買益は銀行サイドの取り分が多い点と、ボリュームを確保出来れば実収益が確保出来るからです。

まず銀行取り分ですがよく知られているように、USDでは売買でそれぞれ1円の利鞘が銀行にはあります。つまりUSD10千なら一万円。USD1百万なら百万円の収益になります。またボリューム確保の点では、年間USD5百万の外為が確保出来れば、年間収益は5百万円となります。

このように為替売買益(為替手数料とも言います)は、銀行にとって有難い収益減のため、まず銀行からサービスしましょうとは言ってきません。そこで「あいみつ」を取る際にいくら優遇してくれるのかを、各銀行に出して貰うのです。

銀行の立場からすればどうしても取引したければ、相当思い切った数字をぶつけてくるはずです。例えば私は80%優遇を最初に出して、それ以上も含みを持たせました。80%はかなりの好条件ですが、他行も同条件提示の可能性が有り、含みを持たせることにより他行との差別化を図ったのです。

なお「あいみつ」を取ったときに、単純に最も好条件の銀行と、取引するのも良いと思いますが、逆に取引したい銀行に、
その好条件をぶつけて譲歩を迫るというのも、銀行としては大変に手強く感じる交渉術で有り、ここぞと言うときに用いるというのは大変に効果的と言えます。

2021/06/20

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