輸出書類にB/L(船荷証券)の代わりに、FCR(Forwarder’s Cargo Receipt:貨物受取証)を添付した場合に、銀行は買取に応じてくれるか。このFCRですが邦語表示が示すように、有価証券ではありません。|B/Lの代わりにFCRは有りか?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索
公開日:2021.10.31  / 最終更新日:2022.10.20

「B/L」の代わりに「FCR」は有りか?

輸出書類にB/L(船荷証券)の代わりにFCR(貨物受取証)

今回は輸出書類にB/L(船荷証券)の代わりに、FCR(Forwarder’s Cargo Receipt:貨物受取証)を添付した場合に、銀行は買取に応じてくれるか。この点を検討したいと思います。(恒例のAIBA論壇からになります)

このFCRですが邦語表示が示すように、有価証券ではありません。受取証に過ぎません。つまり担保価値はないのです。銀行は船積書類を買い取るときに留意するのは、当該貨物を担保として取得できるかどうかです。担保として取得可能であれば買取も可能と判断します。しかし取得不可であれば買取も出来ないことになります。

それでは実際に貨物を担保に出来なくても、買取に「応じている」「応じていない」どちらでしょうか? ここからがいかにも銀行らしいのですが、その判断基準を与信判断にリンクさせているのです。買取を依頼してきた顧客に信用扱いの与信が打てるのであれば、買取に応じているのが実際の所です。この場合結論としては買取には「応じる」です。

逆に信用扱いの与信を打てそうもない顧客に対してです。これはL/CベースとD/PD/A(L/C無し)での場合分けをします。D/PD/Aベースでは具体的な保全がなければ、信用扱い(すなわち無担保)での買取は、かなり高いハードルになります。何らかの保全が買取の前提条件となるでしょう。

ではL/Cベースはどうでしょうか。ここは議論が分かれるところです。原則論から言えば無担保与信が取れない先柄であれば、買取は否定的なニュアンスになっていきます。しかし以下の理由により私は買取もありと考えます。

理由その一
信用状統一規則にはFCRに関する規定はない。信用状統一規則にはB/L、海上運送状(Seaway bill)、傭船契約船荷証券(Charter Party B/L)等の規定はありますが、FCRの定めはありません。こういった規定のない物は、当事者間での取り決めとなります。つまり銀行を含め関係当事者全員で了解すれば、FCRでの取扱は可能と考えます。

理由その二
実際のL/Cには、担保権が確保されていないB/L条件もある。L/C条件の中には「B/L一部直送の許容」や「サレンダードB/L(元地回収B/L)許容」といった担保権の無いものもあります。信用状統一規則に定めの無いこういったB/L条件でも、L/C条件にそう定めてあれば邦銀では買取に応じています。となるとこれらが良くてFCRは駄目という。議論はかなり困難です。むしろ実務上は買取に応じるのが素直と感じます。

理由その三
L/C開設における煩雑さは僅か。もしFCRを認めるL/Cを考えた場合でも、敢えて条項を新設しなくても、B/Lに関する条項を全て普通に整えた上で、その他条件欄でFCR許容文言を追加すれば、顧客の要望は充足されます。例えばA FCR(Forwarder’s Cargo Receipt) is acceptable.(I/O original B/L).と表示すれば良いと考えます。ちなみに I/Oはinstead of の略です。

以上FCR に関する銀行の対応についてでした。

参考サイト:JIFFA - 一般社団法人 国際フレイトフォワーダーズ協会
JIFFA FCR (Forwarder's Cargo Receipt)
https://www.jiffa.or.jp/documents/fcr.html

2021/10/31

貿易と銀行実務いろは一覧

貿易と銀行実務の関連記事