いつ行ってもお店の中にいるイメージが強い銀行員。しかし営業担当は日中、担当先・新規先を積極的に訪問しているのです。多くの取引先は自店テリトリー内ですので遠くても半日で往復できます。しかし出張するこあともあるのです。|銀行員の出張

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索
公開日:2021.11.20  / 最終更新日:2022.10.20

銀行員の出張

pic_bank_20211120

いつ行ってもお店の中にいるイメージが強いのが銀行員。しかし営業担当は、日中殆ど店内にはいません。(ある意味当たり前?)彼等、彼女等は、担当先・新規先を積極的に訪問しているのです。多くの取引先は自店テリトリー内です。遠くても半日で往復できます。しかし全く遠出(出張とも)をしないかと言えば、そうでもありません。

銀行本部主催の東京での全国会議や本部集合研修などは、ほぼ終日or宿泊で出張をしていました。(これは典型的例です)
これとは別に、お取引先からお声掛かりで出張することもありました。今回はこの辺の所をお話ししてみようと思います。

私が新米担当者の頃、外為基幹先だった機械メーカーのお話しです。この会社は主に中国・東南アジア諸国向けに輸出をしていました。本社は大坂でしたが、主力工場は滋賀県にありました。銀行に持ち込む輸出書類は本社で作っていたのですが、製品そのものは滋賀から直接輸出していました。

この会社の方針として、取引銀行には自社製品を理解して欲しい。そのためには自社工場まで足を運んで貰うのが一番の良策。こう言った考えから、年に一度工場見学に招待してくれていたのです。或る年、そのお鉢が私に回ってきました。候補日は幾つかあって、選べるようになっていました。いずれも土日ではありません。その時私は思いました。これこそ正に公務出張ではないだろうか。何やら自分が一段の高みにアップしたような、取引先からも一人前として認められたような。そんな気になったのです。

当日朝、勇躍そのお取引先本社に参上しました。実を言うと、そこにいたのは私一人ではありませんでした。招待されたのは支店長と私の上司、そして私の三人。要するに私は鞄持ちだったのです。しかしここで私は気を取り直しました。相手から見たら、銀行の看板を背負っているのは三人一緒。なら卑屈になる必要は無い。喜んでおもてなしを受けよう。なんとも都合の良い結論ですが、これで気が楽になりました。

さて我々の相手をしてくれるのは、先方の専務と経理部長です。こちらはお二方共に普段からよく知ってますし、何より自分はその会社を店の誰よりも分っている。こう自負していました。その辺の事情が明確になると、この日は大変楽しい出張となりました。工場では工場長さんから製品の説明を受けて、実際に製造されている工程を見せて貰ったりすると、今まで船積書類でしか出会えていない商品達が、実に生き生きとして迫って来るようでした。

工場見学自体も大変有意義だったのですが、工場の食堂でご馳走になった昼食。これが大変美味しく、普段多忙で昼食難民の身としては、少し羨ましくなってしまいました。午後は近場の名所・旧跡を案内して貰い、まるで大名旅行のようでした。夕刻は近くの割烹料亭に招待されました。地元の特産品に舌鼓を打ちながら、懇談に相勤めていると、よしこの会社のために、一肌脱ごうと思えてくるのでした。バブル華やかなりし頃とは言え贅沢な話です。

しかし翌日からは一転、多忙な日々が戻ってきました。そして二度とこのような出張は有りませんでした。今となっては遠い記憶の片隅の出来事です。懐かしい反面、不思議な気持ちがする出来事でもありました。今でもこんな話はあるのか。現担当者に聞いてみたいものです。

2021/11/20

貿易と銀行実務いろは一覧

貿易と銀行実務の関連記事