担保と言えば不動産担保。しかしいろんな意味で難しいのがこの不動産担保です。銀行が担保交渉してきた場合、不動産担保を持ち出してきたら、一旦立ち止まって考える必要があります。不動産担保の設定・解除には、手間と費用が多くかかります。 |銀行との担保交渉はどうすべきか(後編)

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公開日:2021.12.25  / 最終更新日:2022.10.20

銀行との担保交渉はどうすべきか(後編)

銀行の不動産担保ローン
(中編)からの続きです。

6.不動産担保(主に根抵当権)
担保と言えば不動産担保。そう私も思います。しかしいろんな意味で難しいのがこの不動産担保です。銀行が担保交渉してきた場合、不動産担保を持ち出してきたら、一旦立ち止まって考える必要があります。

不動産担保の設定・解除には、手間と費用が多くかかります。しかも一度設定すると取引解消し無い限りは、銀行は担保の解放には応じてくれません。担保のハードルはえらく高いものになります。この不動産担保固有も言うべき不可逆性(オーバーでしょうか)。これを考えずに担保交渉に応ずべきではないと考えます。

不動産担保を考えるとき、銀行は当然のごとく根抵当を出してきます。しかし根抵当は一度設定されると、その銀行と取引解消でもしない限り、半永久的に引き継がれていきます。銀行が合併して名前が変わっても、登記権利者の名義変更で対応します。根抵当権は銀行の様々な取引の担保となり得るので、一対一対応の抵当権よりは利便性が高いとも言えます。しかしその有効性は強烈です。他の担保の一段上を行くものと言えます。銀行が不動産担保に言及した場合は、本気度が強いと言えます。しかし「時価設定」したい。「同順位設定」したい。と銀行が言ってきた場合は留意する必要があります。

先ず「時価設定」についてですが、これを持ち出してきた場合の狙いは、ずばりその不動産の価値の独占です。通常は掛け目後の価格(時価一億円の物件であれば例えばその80%の八千万円のこと)の範囲内で根抵当権を設定します。対して時価設定とは、時価一杯である一億円で設定することです。

ここからはチョット横道にそれますが、バブルの頃は時価の120%で設定していた銀行もありました。こうなると無茶苦茶です。希望価格設定とでもいうのでしょうか。時価以上の設定です。当時我々の間ではあんなやり方続けられる訳が無い。きっと破綻するに違いない。と、良く噂していました。案の定その銀行は5年後破綻しました。無茶は無茶の証明です。

本題に戻ります。

担保とする不動産の価値を独占しようとする場合に、時価目一杯に根抵当権金額を設定すると他社(銀行に限りません)は、当該不動産を実質的には利用できません。これが時価設定の狙いなのです。また既に根抵当権が相当金額設定されている場合に、後順位に設定するべき時に、銀行から同順位設定の話をしてくる場合があります。

これの狙いは先順位(既に設定している)他社と、同様の担保価値を受けようというものです。本当は根抵当権の譲渡という荒技もあるのですが、これは相手に喧嘩を売るに等しいので、通常銀行は肩代わり以外では用いることしません。

そんなこんなで不動産担保は大変です。しかし不動産担保は当該物件の使用収益権(用益権)は、会社に残りますので、その意味では使い勝手は良いといえます。銀行から見ても根抵当権を一度設定すれば、適宜担保洗い替えの必要はありますが、有価証券と異なり、現物確保の必要も無いので楽と言えば楽でした。

その他には動産担保(船舶、自動車、機械etc.)もありましたが、動産担保を設定したという事実そのものが全行紹介されるほど、事例が少なく私も残念ですが経験は無しでした。

以上、銀行が担保を要求したときの、銀行の思惑とそれに対する企業の対応について概説しました。

2021/12/25

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