私の勤務していた銀行では海外に多くの拠点を持っていました。海外店となると直接の接点は殆ど無く、かろうじて接点らしきものを振り返って見ると、たまたま相手銀行が海外の僚店だった程度です。しかし長い外為経験の中には本当に助けられたことがあります。|苦しいときの海外僚店頼み

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公開日:2022.04.02

苦しいときの海外僚店頼み

イギリスの銀行

私の勤務していた銀行では海外に多くの拠点を持っていました。ふつうそれら海外店は海外店独自で営業活動をしています。国内で全世界を相手に業務をしている我々であっても、海外店となると直接の接点は殆ど無い状態でした。

かろうじて接点らしきものを振り返って見ると、海外店に直接口座を持つ先に対しての送金やL/C開設。この程度の取引しか思いつきません。要はたまたま相手銀行が海外の僚店だったと言うわけです。

しかし長い外為経験の中には本当に助けられたことがあります。通常の事故・トラブルは相手銀行との電信・電話やメールで、何とでも解決できるのですが、それではどうしようもないことが、やはり生じてくることがあります。今回はそれについてお話しをしてみたいと思います。

お話しの舞台はロンドン(英国)です。日本からロンドンのL/C開設銀行に買取書類を送った時のことです。買取書類の中に買取銀行(当行)の署名付文書が必要でした。銀行作成の文書そのものは添付して送ったのですが、署名はカバーレター(買取書類一枚目に付ける送付状です)にあるので、その文書には不要だろうとサイン無しで送ってしまったのです。

ところがこの文書は通関時に税関に提出が必要な書類でした。税関では署名が無いものは受け付けてくれません。通常であれば至急署名付の文書を後送すれば事足ります。ところが貨物の中身が生鮮食品だったので、日本から追送したのでは間に合わないことが判明しました。いくら冷蔵コンテナでも鮮度が落ちれば価値が下がってしまいます。

そこで次善の策としてこちらからSIWFTを打つので、それを添付しては駄目かとL/C発行銀行に交渉して貰いました。しかし税関の反応は「SWIFTって何?」「そんなもん。駄目!」ととりつく島もありません。困り果てたときにふと思い出したのが、僚店のロンドン支店のことです。海外店は少人数で繰り回しているので、直接関係の無い頼み事は、御法度に近いのですが、幸いロンドン支店には同期がいました。

ここで私は腹を決めました。同期のよしみで拝み倒すしかない!L/C発行銀行に出向いて貰い書類にサインして貰おう!こう決めて内線電話に飛びついたのです。幸い同期は既に出社しており事情を説明すると、話の趣旨は分ったがその方法で税関がウンというのか、確認してみないと何とも言えないというのです。そこでやむなく交渉を任せて一旦電話を切りました。

時差の関係でこちらはもう終業時間はとうに過ぎていますが、電話機を睨んでじっと待つこと小一時間。(この時間は今思い出しても本当に長かったです)やがてロンドンから電話が掛ってきました。彼が言うところではL/C発行銀行にコンタクトして、応諾を取り付けると早速出向いてサインをしてきたとのことでした。

これは本当に助かりました。今から思えば超法規的措置ですが。丁寧に丁寧に、何度も何度も、彼にお礼を言って受話器を置きました。その後のことは良く憶えていないのですが、腰が抜けてしまってしばらく立つことが出来ませんでした。以上、海外僚店に助けて貰ったという、いささか情けないお話しでした。

2022/04/02
貿易と銀行実務いろは
おすがっぱ

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