貿易のクロコとは誰でしょうか。輸出入の当事者自らが税関へ申告できるのであれば、「通関業者」を立てることなく通関手続きを行なうことは問題ありません。では何故輸出入者である個人、特に法人(会社)が、直接税関へ輸出入申告しないのでしょうか?|貿易のクロコ

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公開日:2022.03.01  / 最終更新日:2022.03.02

貿易のクロコ

横浜税関クイーンの塔と横浜港

前回のコラムで「通関」という言葉、そしてその意味、知ってもらえたでしょうか?

「通関」:税「関」へ物を「通」す手続き、税関へ輸出や輸入の申告ができるのは、日本から海外へ物を出す(売る)、または海外から日本へ物を入れる(買う)当事者、つまり輸出者または輸入者である個人や法人(会社)です。

それと、輸出者または輸入者である個人や法人から代理申告を委ねられた通関業者に勤める「通関士」です。

輸出入者である個人が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「個人通関」といい、輸出入者である法人(会社)が、直接、税関へ輸出入の申告をして税関から許可を得るまでの手続きをすることは「自社通関」といいます。

輸出入の当事者自らが税関へ申告(申告書作成)できるのであれば、「通関業者」という代理人を立てることなく、通関手続きを行なうことは全く問題ありません。

ときに「通関業者」に勤める人、あるいは通関士であっても、税関へ輸出入申告できるのは「通関業者(通関士)」だけと思いこんでいる人がいますが、それは違います。以前勤めていた名の知られている通関業者の営業所長は、「嘘だろう!」と驚き、その事を知らないばかりか疑っていました。こちらの方が大いに驚きました。

では何故、輸出入者である個人、特に法人(会社)が、直接、税関へ輸出入申告しないのでしょうか?あるいはできないのでしょうか?

それは、税関へ提出する輸出入申告書に記入しなければならない「品目番号」(輸出・輸入する物をコード化したもの、その上6桁はHSコードという)を決めるための知識や技術、輸出入を規制する関税法をはじめとする数々の法令知識などを備えていないからです。

それから、輸出入しようとする物は、コンテナヤードなどの「保税地域」という場所に入れなければならないのですが、その「保税地域」への物の出し入れなどにかかる方法や手続きを知らない、トラックなどの運搬手段を持たないからです。

そこで輸出入者は、専門の知識、技術、手段などを持つ通関業者へ輸出入申告の代理を委ねることになります。そして委ねられた通関業者で税関への輸出入申告を行なうのが、その通関業者に勤める通関士です。

「通関士」とは、通関士試験に合格し、通関業者に勤め、その通関業者が税関へ申請し、通関業務の経験や資質などから通関士の職に就けても問題ないと税関から確認を受けた者をいいます。通関士試験に合格しただけでは「通関士」と名乗ることはできず、名刺などに「通関士」と記載もできません。「通関士有資格者」とすべきです。

全ての物を自給自足することができない島国・日本で、くらしに不可欠なモノは物流、ひいては国際物流に支えられ、今、そこに、あなたのそばにあります。

野菜や果物、飲料水、靴や衣服、洗剤などの生活必需品、プレハブ住宅、家具やインテリア、家電、自動車などなど、いろいろな物が輸入、輸出され、くらしが成り立っています。

その輸入や輸出には、必ず「通関」が行なわれています。

例えば千種類の違う商品を1回で輸入するのなら、通関士は各商品への輸入規制はあるか、規制のもとで輸入できる条件を満たしているか確認、更にひとつひとつの商品をコード化、つまり千の「品目番号」を探し充てがい、輸入申告書を作成します。

普通に作っていたら、たった1件の申告書なのに半日~1日がかりの大仕事です。しかし、そんなに時間をかけられないのが現実です。他にも申告すべきものが山ほどあるからです。

「通関」という言葉と同じく、広く人に知られることなく、表舞台に立つこともなく、コツコツと地道に、時間に追われながらも1件1件の申告書を作り、貿易の主役である輸出入者に代わり税関へ輸出入申告を行なっているのが、貿易のクロコ「通関士」です。

あなたが今調理に使っているイタリア産のオリーブオイル、あなたが今着ている中国産のシャツ。知って下さい、それはどこかの誰か、貿易のクロコ「通関士」が通関したモノに他ならないことを。

2022/03/01
くらしと貿易と通関と
Kyō

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