RCEPが2022年1月1日にスタートしました。日本にとって最大、最強、最得のヒト・モノ・カネ・情報の流れを生み出す可能性を秘めた15ヶ国との協定がRCEP(地域的な包括的経済連携)です。これら15ヵ国の経済圏では世界全体の3割の規模です。|「RCEP」コロナへの経済ワクチンになるか?!

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公開日:2022.03.21  / 最終更新日:2022.03.22

「RCEP」コロナへの経済ワクチンになるか?!

地域的な包括的経済連携、RCEP

2022年1月1日午前0時。日本にとって20番目、最大、最強、最得のヒト・モノ・カネ・情報の流れを生み出す可能性を秘めた他国との協定スタート!その協定の名はThe Regional Comprehensive Economic Partnership(地域的な包括的経済連携)、その頭文字をとって「RCEP」。
 
まずは中国、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ブルネイ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドと日本の10ヵ国が、同年2月1日からは韓国が、3月18日からはマレーシアが、その後インドネシア、フィリピン、ミャンマー3カ国が参加、全15ヵ国の経済のつながりです。
 
これら15ヵ国の経済圏は、全世界の人口、GDP(国内総生産)、貿易総額(輸出)の約3割の規模です。日本の輸出貿易額の約4割、輸入貿易額の約5割が、他14ヵ国との貿易で成り立っています。ましてや、アメリカを抜き2007年から最大の貿易相手国となった中国、意外にも長い間3番目の貿易相手国をキープしている韓国との初めての経済協定です。それだけ、日本がRCEPの参加国の一員となったことは、日本の貿易、経済、くらしに良い方向で大きな影響を与えることになるでしょう。
 
参加国間では、すぐにも関税をなくすか、あるいは関税率を少しずつ下げ、最長でも21年目に関税をなくすことになります。但し、全てのモノに対し無条件に関税をなくすということではありません。各国とも関税をなくすと、なくしたモノに関しては輸入が増え、安価な為に、その国で作られ売られている同様のモノは売れなくなり、メーカーや販売の会社、個人にとっては、経営、生活が成り立たなくなることにもなりかねません。

そうした事態を避けるため、そうなっては困る一部のモノに関しては、関税をなくす品目から各国交渉して除外します。日本では、米、麦、牛・豚肉、乳製品、さとうきびなどの甘味資源作物の輸入5品目を除外していて、中国からの輸入品に関しては鶏肉加工品、たまねぎ、冷凍ブロッコリーなどの野菜等も除外しています。
 
日本の関税撤廃率(全品目に対する関税をなくす品目の割合)は、輸出83~100%、輸入81~88%です。つまり日本から輸出するモノには関税がなくなるか、かかりにくくなり、日本へ輸入するモノには一部関税をかけ続けられ、日本に有利で日本が最も得をする内容になっています。
 
関税が10%かかる1個1万円のモノを100個、全100万円で輸入するとします。その時、関税は10万円、1個あたり千円となり、輸入通関後、国内の販売価格は、当然、関税10万円を含め上乗せされた価格になります。つまり単純には、私たち消費者は、そのモノを1個買うと関税分千円を支払っているわけです。しかし、そのモノの関税が0になったらどうでしょう。輸入者は10%オフで輸入することができ、私たち消費者も1個買うのに、少なくとも千円安く買うことができます。
 
昨今、牛丼、小麦粉、パン、ジャム、醤油、チーズなどの乳製品、マヨネーズ、ドレッシング、ティッシュペーパーなどなど、値上げをメーカー等々が次々発表しています。
 
その中の一つ、牛丼を例にあげると、材料の牛肉を、日本は輸入に頼っていながらも関税削減・撤廃品から除外しています。更にコロナ感染が原因となり、輸入相手国では生産工場や運送会社の稼働低下、働き手、運転手がいない、少ないことによる品薄、物流ストップなどが起き、追い打ちをかけ、牛肉の値上がりを招いています。
 
こうした新型コロナがもたらした、一部のモノの値上がり、経済の停滞・不調に対して、関税削減・撤廃をもとに「RCEP」が、経済ワクチンとして、どれだけ多くのモノにわたり輸入品の価格を下げ、更には貿易、経済を活発、元気にできるのか、その効果に乞うご期待!!

2022/03/21
くらしと貿易と通関と
Kyō

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