輸入した食品の安全性を担保するために、日本では「食品衛生法」で規制しています。全国に110ヶ所の検疫所を置いて目を光らせています。輸出においては相手国の規制に基づき輸出検疫証明書、産地証明書、放射性物質検査証明書などが必要となります。 |輸出入と「食の安全」

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公開日:2022.04.09

輸出入と「食の安全」

輸入食品の代表バナナ

輸入した食品を食べたら、病気になってしまったり、ときに命を落としてしまうことになったとしたらどうでしょう?それは誰が考えても嫌ですよね。だから、食品を外国から輸入しようとするとき、なんでもかんでも輸入できるわけではありません。

病気、ましてや命を落とすようなことにならないために、日本では輸入する食品を「食品衛生法」で規制し、出張所を含め各港や空港110ヶ所に検疫所を置き、目を光らせています。

規制の対象は、全ての飲食物、それらに使われる添加物、包装や容器、コップや箸などの器具、乳幼児向けのおもちゃです。これらを輸入するときには、それぞれのものに各々定めた有害物質(鉛やヒ素など)が、定めた試験法によりどのくらい溶け出すのか、どのくらい含まれるのか、溶け出した量などが基準値以下であることを証明する「試験成績書」等を提出のうえ、税関への輸入申告前あるいは輸入申告と同時進行で「食品等輸入届出(略称:食品届)」を検疫所へ行なう必要があります。検疫所は審査、場合によっては検査をし、問題ないと判断すれば「食品等輸入届出済証」を発行します。

本来なら食品届は輸入申告前に行ない、済証が発行されてから輸入申告を行なうのがベストです。というのは、検疫所の審査、検査の結果、有害物質が基準値を超えているということになると、済証は発行されないばかりか輸入できません。税関へ輸入申告してしまっていると、済証が発行されないので税関は輸入を許可せず、その申告は無駄になってしまうからです。

更に「食品届」を行なう前に、穀類、豆類、果物野菜などは病害虫の侵入を防ぐため「植物防疫法」という規制、肉や肉製品は伝染病侵入を防ぐため「家畜伝染病予防法」という規制があり、それぞれ植物防疫所、動物検疫所により審査、検査を受ける必要があります。病害虫、伝染病が発見されれば輸入できません。

こうして輸入に頼らざるを得ない島国・日本の食の安全は守られています。

一方、日本から外国へ食品を輸出しようとするときはどうでしょう。

「食品衛生法」による規制、加えて他の規制もなく税関へ輸出申告することができます。問題は、輸出先である相手国の規制です。日本が輸入するときに「食品衛生法」のような規制を設けているように、相手国でも外国から輸入するときには規制をかけ、食の安全を守っています。

輸出先相手国の規制に基づく求めに応じて、「輸出検疫証明書」、「産地証明書」、「放射性物質検査証明書」などが、輸出先相手国での輸入通関時に必要になります。どんな「証明書」が必要になるかは、相手国や輸出するものによりまちまちです。事前に何が必要か貿易相手等に確認しておかなければなりません。必要な「証明書」が分かったら「地方農政局」等(申請先も事前に調べておく必要あり)へ申請し「証明書」の発行を受け、税関へ提出・提示する必要はありませんが、日本での輸出通関前に用意しておく必要があります。

2011年3月11日の東日本大震災で起きた原発事故により、55の国・地域が、日本から輸出される食品に対し禁輸(輸入禁止)や輸入規制を設けました。およそ11年が経過した2022年2月21日、ようやく近隣国・台湾が福島をはじめ栃木、群馬、茨城、千葉5県の生産・加工食品の禁輸を解除しましたが、韓国、中国、香港、マカオの4ヵ国・地域が禁輸措置、インドネシア、EUなど9ヵ国・地域が条件付き限定規制をいまだに設けています。

11年経っても13の国・地域が禁輸あるいは輸入規制をかけているんです。これらの国・地域へ食品を輸出しようとするときは、「産地証明書」や「放射性物質検査証明書」が必要になります。禁輸といっても、日本の全食品が対象ではなく産地や品目によっては、これら「証明書」があれば輸出が可能です。

日本の食文化のひとつ、日本酒の輸出が好調で伸びています。1日もはやく、日本の「食の安全」が諸外国で認められ、これぞMADE IN JAPANという食品、食文化が世界へ向け発信され広まることを望むばかりです。

2022/04/09
くらしと貿易と通関と
Kyō

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