前編では輸出者の立ち位置についてお話をしました。後編では具体的に戦上手振りを見ます。今回の話しは輸出者にとって最大の強みはL/Cを手中に収めたことです。L/Cの存在は仕入れ先に対して自分の商売が確実であるかをL/C原本を元に強調出来ます。|銀行との戦いが上手な輸出業者(後編)

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公開日:2021.02.26  / 最終更新日:2022.10.20

銀行との戦いが上手な輸出業者(後編)

カーゴでの輸出貨物の積み込み

前編では輸出業者(以下輸出者)の立ち位置についてお話をしました。後編では具体的に戦上手振りを見ていきます。

今回のお話しでは輸出者にとって最大の強みは、L/Cを手中に収めたことです。L/Cの存在は仕入れ先に対して、如何に自分の商売が確実であるかを、L/C原本を元に最大限強調出来ます。そして取引銀行に対してはL/Cと一緒に持ち込む外為が、如何に良質で銀行収益に貢献するか誇示できるのです。

あとはどう料理していくかです。具体策を見ていきましょう。

1. 委任状を付けてL/C原本を仕入れ先に渡す
所謂、委任状付き買取と呼ばれる方法です。委任状を自分で作成するだけで取引銀行とやり取りもなく、簡単極まりないのですが、L/Cを渡すので商売内容が丸わかりです。戦上手の輸出者にとってこの選択肢はあり得ません。

2.L/Cを仕入れ先に譲渡する
譲渡を許容するL/Cを入手するのが大前提です。L/C接受銀行(受付銀行とも)に、仕入れ先への譲渡手続きを依頼します。海外の相手方や本来の商売金額を隠しても譲渡L/Cを作れるので、輸出者の中にはこれにこだわる人も多い印象です。

仕入れ先はL/C原本が入手できますので、問題なしとするようです。一方銀行は譲渡手続きが煩雑な上に、仕入れ先と輸出者の二者に書類作成者が別れるために、信用状条件不一致が起きやすく、ひいては不渡りとなる可能性があるため、大変嫌がります。この手は戦上手とは言えないようです。

3.振込依頼
銀行によっては取扱自体がない場合もあるのですが、銀行が輸出者の名前で仕入れ先に振込をする方法です。勿論その資金はL/C買取代金です。この事務手続きを、銀行は事前に受け付けた旨の書面を出します。出された書面には受取人(=仕入れ先)と振込金額が記されています。

これには請書的な雰囲気で、銀行のゴム判と押切印が押されています。輸出者はこの書きぶりに注目しました。この紙は仕入れ先にとっては十二分に魅力的な物と判断するだろう。こう思ったのです。(どう説明したかは分りませんが)しかし輸出者に渡す書類には、どこにも保証文言もありません。表題にも保証とはどこにも書いてはありません。単なる依頼書です。しかしこれを上手に使った輸出者がいたのも事実です。

そのせいでしょうか事務手続きが改定された時、この仕組みそのものが消えていました。事務手続きに無いことは出来ませんので、結局この方法はやがて使えなくなっていきました。

しかし今考えても、この方法を依頼してきた輸出者は大変な戦上手。こう思ったのも事実です。

関連サイト:
銀行との戦いが上手な輸出業者(前編)
https://www.rakuraku-boeki.jp/boueki-ginkou-gaitame/2021-02-06

2021/02/26

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