リスト規制においては役務(技術)の判定が規定されていますが、一方で公知の技術という考え方も存在しています。公知の技術については注意深く検討する必要があります。 |リスト規制における役務の判定と公知の技術について

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リスト規制における役務の判定と公知の技術について



日本の輸出コンプライアンス管理は国際的な安全保障の観点から、リスト規制とキャッチオール規制の2つの側面からダブルチェックする
しくみが前提となっています。

リスト規制においては、貨物そのもののスペック判定と役務(技術)の判定が求められます。

今回はリスト規制の中でも、役務(技術)の判定にフォーカスして考えてみましょう。

■役務(技術)の判定とは
貨物の設計・製造・使用に必要な特定の技術は、輸出コンプライアンスの対象としてリスト規制で規定されています。

では具体的にどのような技術が対象となるのでしょうか。

設計とは製造過程の前段階で必要な技術のことを言います
・総合的な設計・レイアウト
・設計研究・解析・概念
・プロトタイプの試作・試験
・設計データ
・設計データを製品にするための技術
などが相当します。

製造とは製造工程で必要な技術で
・生産エンジニアリング
・製品化技術
・アッセンブリ技術
・検査・試験・品質保証
などとなります。

使用とは貨物を使用するために必要な技術のことで
・装置に組み込まれたプログラム
・据え付け
・操作
・保守点検
・修理
などのこと指します。

これでは対象となる技術の範囲が広すぎて具体的に判定をおこなうことが難しいケースも出てきます。

役務(技術)の判定と表裏一体につきまとうのが「公知の技術」です。

■公知の技術とは
役務(技術)の判定では、「公知の技術」は許可不要と規定されています。

公知の技術とはどのような場合をさすのでしょうか
・技術が商品カタログに記載されている
・技術が書籍・雑誌・新聞で公開されている
・技術がインターネットで公開されている
などが対象といわれています。

「公知」にするか、してよいかどうかは輸出管理の問題ではありません。

技術を「公知化」させることで企業や技術の競争優位性に影響を与えることもありえます。
各企業で検討すべき技術管理ポリシーとなります。

役務(技術)は、貨物輸出だけに関係するのでなく、商談開始の段階から考えるべきでしょう。

秘密保持契約や共同開発契約などは商談開始時から確実に準備をすすめ、
・提供する技術
・提供しない技術
を特定することで輸出コンプライアンスとして考えるべき役務(技術)の絞り込みができるでしょう。
商談ごとにケースバイケースで検討することが必要でしょう。

2015/09/17

輸出コンプライアンス、リスト・キャッチオール規制が9月に改正



外為法輸出貿易管理令が改正されました。
毎年、輸出コンプライアンスの見直しが行われています。
貨物と技術の見直しが行われており、追加・削除・改正が行われます。
今年は9月15日から改正されています。

■リスト規制での改正
輸出コンプライアンスの必須項目であるリスト規制も多くの項番で改正が行われています。
別表1~15項の中からおもな改正をピックアップしてみました。
・2の項(原子力関連)- 追加
 ・雷管の部分品
 ・レ二ウム
 ・防爆構造容器
・3の2項(化学・生物兵器関連)– 追加、発酵槽の部分品
・7の項(エレクトロニクス関連)– 削除、デジタル方式のビデオ磁気テープ記録装置等
・7の項(エレクトロニクス関連)– 追加、サンプリングオシロスコープ
・9の項(通信関連)- 追加、インターネットを利用した通信監視装置
・11の項(航法関連)- 削除、慣性航法装置の部分品

その他、各項番で規定の改正が行われています。
2014年9月15日版パラメータシート(項目別対比表)での確認が必要です。

■キャッチオール規制での改正
ダブルチェックを求められている輸出コンプライアンス・キャッチオール規制で追加があります。
中央アフリカが国連武器禁輸国に追加されました。(別表3の2)
・アフガニスタン
・コンゴ民主共和国
・コートジボワール
・エリトリア
・イラク
・レバノン
・リベリア
・リビア
・北朝鮮
・ソマリア
・スーダン
中央アフリカが追加され、国連武器禁輸国は12か国となります。

■リスト規制・キャッチオール規制とは?
輸出取引は原則自由ですが、一部商品は外為法で事前の許可・承認が求められる輸出コンプライアンス管理が行われています。
輸出貿易管理令別表第一の1-15項(リスト規制)で貨物と技術のスペック管理が行われています。
16項(キャッチオール規制)で誰がどこでなんのために使うのかの需要者・用途の輸出コンプライアンス管理が行われています。

輸出申告の際に税関に該非判定書とパラメータシート(項目別対比表)の提出が必要です。
2014年9月15日版の書式にて提出する必要があります。
昨年度版での申告はできませんので最新版に差し替えることが大事です。

関連記事:
輸出コンプライアンスが小説に登場!

2014/10/14 

輸出コンプライアンスが小説に登場!

「齢八一にしてこの今も太陽の季節を生きている」、書評につられて読んでみました。
石原慎太郎が最近上梓した短編ばかりをまとめた新刊「やや暴力的に」(文藝春秋刊)

表題作「やや暴力的に」の中に興味を引くくだりがあります。
2000年頃に米政府が日本政府に対して輸出コンプライアンスを求めてきたことが書かれています。

海の見える屋敷で男たちが何やら政治談議をしているところを抜粋引用してみましょう。

「日本ではごく当たり前,日常の用途のために使われている技術に、実は軍事目的に転用すれば極めて有効なものがある」

「2000年の初め頃にSONYが発売した子供用のゲーム機器に搭載されているマイクロチップの機能が当時としては世界最高の128ビットあった」

「当時のアメリカの宇宙船の搭載機器に使われていたチップの容量は大方が32ビットないし64ビットでしたから連中は腰を抜かしましたな。」

「能天気な日本人にそれをそのまま北朝鮮や中国に輸出されたらかなわないということで、(中略)当時の政府に要望というか、秘密裏に禁止の命令を携えて押しつけてきました」
(文學界2013年10月号初出「やや暴力的に」)

自分が輸出している商品は軍事用途とは関係ないと思いがちです。
意外と輸出コンプライアンスの対象であるケースが多く、法令改正も不定期的に行われています。
輸出する際には必ずコンプライアンスチェックをするようにしましょう。

文中で作家・石原慎太郎が政治家・石原慎太郎に語らせているような文章に思えます。
日本の高度技術の輸出コンプライアンスがこのようにして水面下で政府間交渉されているのでしょうか。
輸出コンプライアンスとは?を考えるうえでここに登場してくる会話が何かの参考になればと思います。

関連記事:
三国間貿易、輸出コンプライアンスの見落としに要注意!

2014/07/22

三国間貿易、輸出コンプライアンスの見落としに要注意!

三国間ビジネス展開が活発になってきています。
カネの流れには日本が介在するがモノの流れが外国間で行われる三国間貿易。
TPPなどのFTAが世界のサプライチェーンに変化をもたらしています。

このような場合の日本企業としての輸出コンプライアンスについて考えてみましょう。

■輸出コンプライアンスとは?
輸出に携わる企業・団体・個人は、外為令に則った輸出コンプライアンスが求められています。
輸出されるすべての貨物と技術は事前に判定のうえ必要に応じて許可申請が必要です。

テロ対策や軍事用途に転用されないように貿易管理が世界規模で行われているためです。
日本発の輸出はもちろんですが、三国間貿易も輸出コンプライアンスの対象となります。

■なぜ輸出コンプライアンスが求められるのか?
多くの産業資材が武器にも転用できます。
そのためすべての輸出者は輸出貨物や技術の判定と事前許可が求められています。

パスポートがないと海外旅行に行けないのと同じです。
モノの流れが外国間だから関係ない、ではありません。

関連記事:
貿易コンプライアンスとは? 2006/12/29

2014/06/16

輸出コンプライアンス、営業部のモヤモヤをどう解消

輸出企業は、外為令に則った輸出コンプライアンスを求められています。
輸出されるすべての貨物と技術は事前に判定のうえ、必要に応じて許可申請が必要となります。
海外に行くときにパスポートが必要なのと同じですね。

テロ対策や軍事用途に転用されないように貿易管理が世界規模で行われています。
特に、迂回輸出なども多発しており、キャッチオール規制への管理も厳しくなってきています。

■キャッチオール規制とは?
輸出した貨物を「どこで誰がどのような用途に使うのか」の管理がキャッチオール規制です。

営業部のモヤモヤをいくつか。
・商社経由の販売や三国間貿易などの場合、最終需要者を特定できない
・使用用途など技術情報の開示を要求して取引自体に影響しないか などなど

営業部としては相手先に聞きづらく当然の反応なのかもしれません。
輸出コンプライアンスの大事なことはわかっているが、管理部門との板挟みで悩みが多いとか。

■輸出コンプライアンスの運用事例
こんな方法でモヤモヤを解決している運用事例をご紹介しましょう。

「どこで誰がどのような用途に使うのか」を明確に文章にした覚書を用意されています。
・輸入した貨物を特定の輸出禁輸国に再輸出しない
・民生用途以外に使用しない

契約締結時に提示して署名を取り付ける方法がとられています。
「契約時にこの覚書にも署名願います」と依頼するだけで、すんなりと輸出契約ができるようです。

管理部門との板挟みもなく輸出コンプライアンスも守れる一案かも知れません。

関連コラム:
輸出コンプライアンスのルール見直しに注目

2014/04/28

輸出管理の最新報道から輸出貿易管理令を考える

輸出管理に関する最新報道から3記事を選んでみました。

■新たな輸出管理の協議が始まっているという報道記事
「武器というよりは、防衛装備品という言葉の方がしっくりくると思う」
「呼び名も実態に合う形で示した方が、国民に正確に伝わるのではないか」
つい最近の小野寺防衛大臣の発言です。

「武器輸出3原則」から「防衛装備移転3原則」への見直しが行われています。
軍事品(武器)は原則輸出禁止、一部例外と複雑になっています。
わかりやすい輸出管理の原則にしようという動きです。

たとえば、災害時に防衛装備品を輸出できるようにする。
偵察ロボットを利用して、倒壊した家屋の内部を映像で確認できるようにする。
探知透過装置を利用して、壁の内側にいる人の動きを探知できるようにする。

「武器」と「防衛装備品」の解釈、どうちがうのか判断が難しいですね。
それだけに安全保障の観点から日本版NSCが輸出の可否の最終判断をするとの報道もあります。
経産省との調整など輸出者にとってわかりやすい輸出管理行政を望みたいものです。

■外為法(輸出貿易管理令)の違反原因についての発表記事
経産省では2007年から2011年の外為法違反の原因分析を発表しています。

・該非判定の未実施 62.1%
 つまり、「輸出するのに事前の許可が必要とは知らなかった」
・該非判定における該当項番の適用の誤り 16.7%
 つまり、「輸出貿易管理令の法律を解釈するのが難しい」

輸出する前に、外為法に該当するかどうかの判定(該非判定)を行い、該当する場合は事前の許可を受ける必要があります。

違反原因の2番目「法律を解釈するのが難しい」に注目です。
法律を読みこなすのに16.7%の方が苦労しているということですね。
悪意がなくても法令適用の誤りで違反に問われることもあるということです。

■半導体製造データを無断で持ち出し海外転職した事件
先端技術データを持ち出し海外ライバル企業に転職、提供したかどで逮捕された事件のことです。
新聞報道では不正競争防止法違反とありますが、輸出貿易管理令にも関連があると思えます。

今回の新たな輸出管理の協議には、技術移転を管理する仕組みの見直しも含まれています。
技術の輸出・提供の場合も輸出貿易管理令が適用されています。

関連コラム:
輸出貿易管理令改定で思うこと、日本語はむずかしい

2014/03/17

輸出コンプライアンスのルール見直しに注目

新聞各紙で賛否両論が展開されています。
「武器輸出三原則、緩和へ」

輸出コンプライアンスの点から注目したいと思います。

多くの産業資材が武器にも民生用にも使われています。
高機能樹脂や工作機械などは軍事用途にも転用することができます。

逆に、軍事・民生の共同開発も増えてきています。
自動車の追突防止装置やETCなどは軍事レーダー技術から生まれました。

武器そのものの輸出は、外為法(貿易管理令)で禁止されています。
民生品も軍事用途に転用できないようにコンプライアンス管理が行われています。

日本が優位に立つ技術で軍事・民生の共同開発がますます進むことでしょう。
しかし、違う目的への流用、第三国への迂回輸出などの違反事件も絶えません。

そのため国際環境に適した貿易管理のルールを明確化しようということのようです。
輸出コンプライアンスのルール見直しに注目です。

関連コラム:
輸出コンプライアンスもっと弾力的な運用を 2013/03/25

2013/12/24

波紋が大きい韓国経由の迂回輸出違反事件

また北朝鮮がらみの輸出貿易管理令違反事件が報道されています。
名古屋市の貿易商社が韓国を経由して北朝鮮へ迂回輸出したとのこと。

韓国向けは「ホワイト国」として特例対応がされています。
相応の管理体制ができているとの判断からキャッチオール規制の対象外となっています。

「ホワイト国」を悪用して直接輸出が禁止されている北朝鮮に迂回輸出をしたということです。

今後韓国向けについて顧客審査が厳しくなるなど波紋が大きくならないことを願っています。
輸出時の法令順守はもちろんですが、販売後の管理も求められてくると思われます。
「売りっぱなしにしないこと」が大事なのでしょう。

関連コラム:
ワッセナーアレンジメントで見直し 2013/01/23

2013/12/20

米新駐日大使と輸出貿易管理体制の変遷

キャロライン・ケネディー新駐日大使が着任されました。

初めての日米間のTV中継がケネディー暗殺事件でした。
当時、6歳のあどけない少女の姿が想い出されます。
あれからもう50年も経っているのですね。

1963年11月26日朝日新聞夕刊に「北京の反応」というコラムがあります。
同じ共産圏でも中国とソ連の対応が違うという趣旨のコラムです。

中国では簡単な報道のみで北京政府からの公式な弔電もありませんでした。
一方、ソ連からは世界平和のため大きな打撃として丁重な対応でした。
弔電だけでなく、ソ連首脳が在モスクワ米大使館におもむいて弔意をあらわしました。
このことを取り上げて、あまりの違いとコメントしています。

当時は、米ソ両国が軍拡競争をしていた東西冷戦の時代でした。
米を中心とした自由主義圏はソ連などの共産圏に対して輸出統制をしていました。
COCOMという戦略物資の輸出貿易管理体制が敷かれていました。

その後、米ソ冷戦は徐々に雪解けとなり、対共産圏への管理は役割を終えました。
しかし現代になりテロや軍事紛争を防止するための輸出貿易管理が必要となってきました。

そのため輸出貿易管理体制(ワッセナーアレンジメント)COCOMから引き継がれました。
先端材料などの汎用品についても軍事転用されないように輸出管理が行われています。
日本の外為法(輸出貿易管理令)は、このワッセナーアレンジメントに準じています。

ケネディー新駐日大使の着任に際し、輸出貿易管理体制の変遷を思いおこしました。

関連コラム:
ココム規制とワッセナーアレンジメント 2012/01/19

2013/11/18

どうして輸出コンプライアンスが求められるのか?

「政府が武器輸出3原則の見直しを打ち出した」と新聞報道されています。
永田町だけの政治問題と思いがちですが、輸出実務にも大いに関連があります。

武器など軍事用途の輸出は、外為法(外国為替及び外国貿易法)で規制されています。
この同じ外為法は、世界的な安全保障管理から一般の輸出品に対しても適用されています。

自由に海外へ行ける時代なのに、法律で輸出コンプライアンスが求められているのは、どうして?
よくある質問です。

海外旅行に行くときにパスポートが必ず必要ですよね。
これと同じで、海外に貨物や技術を輸出するときには軍事用途へ転用されないように管理が行われているのです。

多くの産業資材が武器にも民生用に使われています。
そのため、B2B, B2Cだけでなく、大学や研究機関などすべての輸出者に対して、「判定をする責任者を置くこと」と「社内で周知・指導をすること」が求められているのです。

輸出の基本ですので、12月6日(金)のらくらく貿易主催第6回ワークショップでもこれらに関連したポイントで「輸出コンプライアンス」について考えてみたいと思います。
「クイズで学ぶ輸出コンプライアンス」

関連コラム:
ココム規制とワッセナーアレンジメント 2012/01/19

2013/11/5

輸出コンプライアンス・ケーススタディーその5

【サンプル輸出で貿易管理令違反となったケース】

ライフルスコープ(照準器)のサンプル輸出での出来事です。
この商品は、武器付属品のため輸出許可申請が必要な商品です。

でも、「サンプル輸出には事前許可はいらないだろう」と思い込んだようです。
結果として、「無許可輸出」で書類送検との報道がされています。

このような「思い込み」が原因の違反事例はかなりあります。

・海外顧客から緊急依頼されハンドキャリーする場合
・展示会に出展する場合
・輸入商品を修理するため返品する場合
などは輸出でないと思いがちですが、正式な輸出手続きが必要です。

輸出取引は、「原則自由」ですが、外為法で安全保障貿易管理が行われています。
比較的身近な民生用品であっても規制対象となっていますので、注意が必要です。

2013/08/17

輸出コンプライアンスもっと弾力的な運用を 

輸出するときに必要な貿易管理コンプライアンス業務、大変な労力ですね。
輸出企業にとって作業負荷が高く、法体系を見直す時期ではないかという意見もあるようです。

法律(貿易管理令)を読みくだくのが大変、さらに専門知識も求められる。
挙句の果てに、刑事罰や行政処分まである。

もともと貿易管理は、米ソの冷戦時代に「対共産圏輸出規制(ココム)」から始まりました。
その後、軍事転用やテロなどにならないように貿易コンプライアンス管理が行われています。

でも、法体系そのものは、基本的にココムの当時(50年以上も前)とほとんど同じなのです。
リスト規制(貨物・技術の判定)とキャッチオール規制(輸出先企業の判定)のダブルチェックが必須です。

多くの企業が海外展開を進め、海外子会社向けの輸出が増えている時代です。
少なくとも、軍事転用への懸念がないことが明らかな海外子会社向けの輸出については、もっと弾力的な運用ができないものでしょうか。

関連コラム:
貿易の基本2:取引に法規制があるの?2012/02/24

2013/03/25

ワッセナーアレンジメントで見直し

輸出企業にとってコンプライアンス体制は必須ですが、難しい課題でもあります。
特に初めて輸出される企業にとって法令を的確に解釈するのはご苦労が多いと思いますが、ベテランの輸出企業でもこんな「ついうっかりケース」が報告されています。

定期的に輸出をしている企業で起こりがちなついうっかりケース:
・A社は、以前に輸出実績のある商品と同等商品の輸出契約を受注した。
・前回輸出時に「非該当」判定をしていたので、前回どおりにて輸出申告した。
・輸出申告時に指摘を受けるまで、法令改正で「該当」となっていたことを認識していなかった。
・結果、輸出許可申請手続きのため、契約納期に間に合わなかった。

昨年12月に行われたワッセナーアレンジメント2012年総会で工作機械・人工衛星などの見直し合意が行われました。
この合意により日本の輸出貿易管理令も今年の夏には法令改正となる予定です。
ついうっかりとならないように、定期的に法令改正情報をチェックするようにしましょう。

関連コラム:
ココム規制とワッセナーアレンジメント 2012/01/19

2013/01/23

輸出コンプライアンス・ケーススタディーその4 

【少額特例の適用要件を誤って考えていたため、外為法違反となったケース】

少額特例はよく利用される制度ですが、適用できる要件をよく理解しておきましょう。

違反事例:
・A社は、少額特例は100万円以下のすべての貨物に適用できると思い込んでいた。
・適用対象が「別表第1の5の項以降の項に該当する貨物のみ」を認識していなかった。
・輸出対象の商品が、5の項と2の項に該当する商品のため、少額特例は適用できず、無許可輸出と判定された。

少額特例が適用できるかどうかは、1から4までのすべてをクリアする必要があります。
1 ,対象貨物: 別表第1の5の項から13の項まで又は15の項の中欄に掲げる貨物で、(1の項から4の項に該当する貨物には適用できない)
2 ,輸出金額: 総価額100万円以下(別表第3の3:告示貨物は、5万円)であり、
3 ,仕向地: 別表第4(懸念国=イラン、イラク、北朝鮮の3ヶ国)以外の地域向けのとき 
4 ,この3条件以外に、「キャッチオール規制」の判定も必要となります。

輸出コンプライアンス違反の半数以上は「思い込みで判断した」・・・気をつけましょう。

2013/01/10

輸出コンプライアンス・ケーススタディーその3

【クレーム返品で外為法違反となったケース】

輸入した商品が品質不良、そしてクレーム返品。
この時に、輸出コンプライアンス・チェックをしていますか?
意外と見落とされやすいのが、クレーム返品です。

トルエンが50%以上含まれていた塗料の違反事例:
・クレーム返品は、輸出承認手続きが不要だと思い込んでいた。
・トルエンの含有量が輸出規制対象となっており、輸出承認が必要であった。
・「思い込みで独自に判断した」結果として、外為法違反となった。

クレーム返品や修理のための返送も、正規の輸出手続きが必要です。

2012/12/01

輸出コンプライアンス・ケーススタディーその2

【展示会への出展手続きで外為法違反となったケース】

展示会に出展する際に、「ATAカルネ」を利用された方は多いと思います。
この制度は、関税免除となるなど一時的な輸出入への制度でありますが、「輸出入の承認手続き」が不要となるわけではありません。

違反事例;
・ A社は、ワニ革のアパレル商品を海外展示会に出展することにした
・ 展示会用に「ATAカルネ」を取得して、輸出することにした
・ A社は、ワシントン条約に関する輸出承認を得ていないため、輸出できなかった

ワニ革製品がワシントン条約に抵触するため、輸出承認手続きが必要であったが、
「ATAカルネ」を取得すれば、その他の手続きは不要だと思い込んでいたケース。

法令違反に問われた半数以上は、「思い込みで独自に判断した」
気をつけましょう。

2012/11/05

輸出コンプライアンス・ケーススタディーその1

【換算レートの違いで外為法違反となったケース】

・A社は、$12,500で輸出契約をした
・輸出申告日の為替レートでは、$12,500*79=¥987,500であった
・100万円以下の少額特例が適用できると判断した
・そのため、経済産業省に輸出許可申請をせずに、輸出した

少額特例の外貨換算は、輸出日ではなく、「契約日」が適用されます。
・契約日の適用レートは¥81のため、$12,500*¥81=¥1,012,500となる
・100万円超となるため少額特例の適用外、「無許可輸出」に問われた。

契約日の換算レートは、日銀が毎月発表している基準レートが適用されます。

また、少額特例は、契約単位です。 出荷単位ではありません。
分割で輸出しても、少額特例は適用できません。

法令違反に問われた半数以上は、「知らなかった」「思い込みで独自に判断した」
気をつけましょう。

関連コラム:
貿易の基本2:取引に法規制があるの? 2012/02/24

2012/10/01

無許可輸出、これは悪どい!

またまた、パソコンが無許可で輸出されたと、報道されました。
持ち出し先が北朝鮮というだけでなく、違反の手口が凝っているケースです。

サッカーW杯予選観戦ツアーに参加するふりをして、機内持ち込み手荷物として持ち出したという。
貿易管理令の特例(個人使用)を悪用したケースです。

今後、個人使用特例が厳しくならないことを願いたいものです。

関連コラム:
パソコン、不正輸出で逮捕 2012/02/24

2012/03/23

パソコン、不正輸出で逮捕

先週末、「PC4000台、北朝鮮に不正輸出」の新聞報道がありました。
ノートパソコンを中国経由で北朝鮮に不正輸出(未許可輸出)したとして、都内の中古パソコン販売業の社長が逮捕されたとの報道でした。
常習的に行われていたケースのようです。

パソコンなどコンピューター関連商品は、貿易管理令対象商品です。
輸出する場合には、経済産業省の手続きが必要です。

海外出張などでPCを持って行く時、特に、お咎めがないのはなぜ?
それは、貿易管理令の特例(個人使用)だからです。

パソコンを個人使用でなく、他人に提供する場合には、役務取引の許可が必要となります。
また、商業輸出だけでなく、展示会への出展輸出などの場合にも、必ず手続きがいることをお忘れなく!

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貿易管理令違反 中国へポンプ不正輸出 2011/10/3
日本の輸出管理 2009/4/7

2012/2/24

ココム規制とワッセナーアレンジメント

「ココム規制」、この言葉知っていますか?
東西冷戦時代に米ソ軍拡競争のなか、対共産圏輸出規制のことです。
現在は、ワッセナーアレンジメントとして貿易管理が行われています。

ワンポイント:
元駐米大使・松永信雄氏が昨年12月に亡くなられました。
1980年代に東芝機械のココム違反の際に、米国政府との調整窓口として大変に苦労された方でした。

東芝機械が共産圏向けに工作機械を輸出、結果としてソ連の潜水艦技術向上となり、米軍に危険を与えたとして、ココム規制違反となった事件でした。
東芝製品の輸入禁止など、日米政府間の外交問題にまで発展しました。

関連コラム:
貿易コンプライアンスとは? 2006/12/29

2012/1/19

貿易管理令違反 中国へポンプ不正輸出

埼玉県越谷市のポンプ製造販売会社が日中合弁会社向け輸出で、貿易管理令違反(外為法無許可輸出)との報道がありました。
貿易管理令で輸出許可申請が必要と知りながら、納期に間に合わなくなるため、無許可で輸出したとのことです。

輸出は国内取引と異なり、輸出の許可が必要な場合があります。
今回のように、輸出先が日系企業の日中合弁会社向けでも許可が不要とはなりません。
この点について、認識しておくことがコンプライアンス管理の上で、大変に重要です。

関連コラム:
再度の外為法違反事件 2006/10/5
外為法違反事件(2) 2006/2/23
外為法違反事件 2006/1/30

2011/10/3

貿易関係証明書のトラブル

東京商工会議所で発行された証明書類が国際取引で不正取引に悪用された、とのニュースがあります。

日本法人証明書をデータ送信した際に、何者かにより、データがハッキング、証明内容を改ざんされ、海外7カ国にわたる被害となったようです。

東京商工会議所からは、、原産地証明書などの貿易関係証明書をデータ化して保存・データ送信することをできるだけ避けるように、との注意喚起がなされています。
皆さま、十分に気をつけましょう。

2011/9/20

リスクマネジメント

最近、鉄道事故・地震などといった惨事の多い日本ですが、リスクマネジメントのプロセスは、日米で大きな差異はないが、 考え方に大きな違いを感じるという記事を読みましたので、ご紹介いたします。

・日本では、昔から”安全と水はただ”と言われてきたせいか、限りなくリスクをゼロにすることを当然の目標とする 傾向がある。リスクがない状態を当たり前としたある意味での完璧主義の発想。

・欧米では、あらゆるものにリスクはつきもので、それを完全に無くすことは不可能であるという考え方から、 リスクを出来る限り少なくしようという考え方が一般的である。

・ビジネスでも、リスクは避けられないものであり、完全に無くそうの発想をしない。ある時には受け入れ、 リスクを削減・緩和しようという”リスクテイキング”の考え方をする。少しでもリスクを削減できれば、 それだけ安全になったという理解をし、リスクゼロに固執はしていない。

ちょっと考えさせられる記事でした。
海外取引には、商慣習の違い・言葉の違いだけでなく、契約完了までさまざまなリスクがあります。 取引先との初期の契約交渉で明確にした商流構築を準備することが、 将来”こんなはずではない”といった行き違いやクレーム防止・自己防衛になります。

関連コラム:
貿易は難しい? 2011/6/13
国際取引リスクとして認識しておくこと 2010/3/23

2005/5/6

情報過多の時代は怖い

突然に関空税関から電話、「カメルーンの方への来日招聘状にサインされましたか?」まったく、身に覚えがないので、 きょとん。でも、急に思い出し、「そう言えば、数日前にJETROから紹介を受けたので、ビジネスの話しに訪問したいという メールがきていましたよ、でもまだ返事をしていませんが」

税関、「そうですか、貴社名でのLetterを持ってきたのですが、そのサインが実にへたくそで、念のためと思って電話で確認したのです、身柄保障されますか?」、「まったく面識もないし、日本に呼んでもいません」といったやり取りの挙句、。。。当然、入国拒否・強制送還の手続きが始まった。

でも、当の本人から電話が何回も。悪びれもせず、「なんとかして欲しい」、「見ず知らずの人の保障なんてできないし、イリーガルなことをする会社ではありませんよ!」
同じような電話がカメルーン本国の会社から、友人と称する人からとリンリン。。。 2日間も関空に居座ってごねている間にしょっちゅう電話がくる。

ようやく、3日目にバンコクに国外退去になった。バンコクからまた電話が、「いま着いた。ホテルがどうしたらいい?」
5日目に、メールが。。。”カメルーンに帰国しました。今回は無駄な旅費を使ってしまった。でも、貴社とはぜひ取引をしたい”なんてメールが飛んできました。それから1ヶ月後くらいにアメリカの輸入商社と称する人から突然に電話。カメルーンの友達から電話番号を聞いた、取引がしたい。。。情報過多の時代はこわいですね。

関連コラム:
国際詐欺にご注意を 2006/1/20

2005/5/30

貿易業界で使うコンプライアンスとは?

個人情報保護法以来、「コンプライアンス」という言葉が氾濫しておりますが、 貿易業界で使用するコンプライアンスについて簡単にご紹介いたします。

英語でComplianceは、「規則や要求に従うこと、(規則などの)順守、(規則などに対する)服従、準拠、従順、整合性」の意味となります。対象範囲が非常に広く、個人情報保護法もこの一部になります。貿易業界で使用する場合は、輸出入規制を遵守するという意味でトレードコンプライアンスと限定した言い方をしております。

日本では、輸出入は特に規制がないと思われるほど、「原則自由」で運用されていますが、貨物の輸出入契約とソフトウエアや技術提供となる役務契約は、外国為替及び外国貿易法(略して、外為法、ガイタメホウ)に準拠しており、安全保障貿易などの管理がされています。

核兵器や通常兵器などの開発で国際情勢の不安定化、ひいては私達の生活を直接脅かすことがないように、個人・企業の利益に優先し、安全保障貿易管理を国際的に行うことが必要な時代です。
兵器産業だけの規制と思われがちですが、比較的身近な民生用品であっても規制対象となっていますので、注意が必要です。「輸出管理を知らなかった」、「輸出管理は自社とは関係が無いと思っていた」では済みません。経済産業大臣の許可が必要になり、違反の場合には、刑事罰(罰金、懲役)や行政処分(貨物輸出・技術提供の禁止)が科される場合もありますので、注意が必要です。

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2005/6/20

貿易摩擦- 米中繊維協議で思い出すこと

中国と米国が繊維摩擦解決を政府間レベルで協議をしているというニュースが報道されています。最近の日米間では、まったく貿易紛争が話題になりませんが、日本は、米国との間でいままで数多くの政府間交渉を行ってきたことを思い出してみましょう。

1960年代の繊維を皮切りに、70年代の鉄鋼製品・カラーテレビ・工作機械・ベアリング、80年代の半導体、90年代の自動車と戦後の日本経済は、米国との間で通商摩擦の連続でした。

ダンピング輸出の防止と米国製造業の保護、さらには閉鎖的な日本市場の開放など公正な貿易競争ルールを構築する過程でもありました。日本からの輸出自主規制で折り合いがつかなくなると、米国政府がセーフガード(輸入制限)や報復関税などの対抗処置を打ち出し、最終的には外圧で米国での現地調達比率を引き上げるとか、日本国内の産業構造自体の転換を余儀なくされました。

元通産省棚橋次官(現石油資源開発社長)は、政府間交渉の日本側代表として矢面に立ち、相互に納得する競争ルール構築に大変にご尽力された方ですが、「まさに”摩擦人生”であった」と述懐されています。

戦前の日本の主力産業は、生糸と綿業といった繊維産業でした。
戦後経済の第1の転換期を迎えた昭和30年(1955年)には、戦後の復興が急速に展開し、輸出奨励のもと、繊維をはじめ、工作機械や産業機械が滝のように米国市場に流れ込んだのです。

その結果、1ドル360円の固定相場制であった円が1971年には308円に切り上げられ、73年からは変動相場制に移行したのです。
また、1973年の第1次石油ショックに引き続き、79年の第2次ショックを経て、日本はインフレ抑制と省エネルギーに努めることになり、産業構造の転換を迫られたのでした。
自動車・半導体などの加工度の高い製品輸出が急増し、80年代には日米半導体協議が締結され、さらに90年代初頭には米国大統領が米ビッグ3を引き連れて自動車摩擦の政府間協議が行われたのでした。
今回の米中協議のニュースに接し、歴史は繰り返すの念を強く感じております。

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2005/8/30

自助・共助・公助の精神

今年は、世界各地で台風・ハリケーン・地震などの自然災害が多いですが、昨年の新潟中越地震の時に瓦礫の山から土砂に埋もれた幼い男の子を無事救出した、あの感動的なシーン、その時に活躍された東京消防庁のハイパーレスキュー隊を覚えておられますでしょうか。

その時の隊長さんが「ゆうたちゃんを救い出すことができた喜びよりも、まゆちゃんとお母さんを助けられなかった無念のほうが大きい」と救出の時を振り返っておられます。
また、「自助・共助・公助の精神」が一番大事であるとも言われています。
余震の続く瓦礫の山で二次災害のこと、東京の家族のことなどが頭に浮かぶなか、「自助・共助・公助の精神」をかみしめ、繰り返し、山に入ったそうです。

この「自助・共助・公助の精神」は、貿易取引でも当てはまります。貨物保険の考え方は、まさにこのとおりです。

貿易取引に係る当事者は、お互いに利害が反しています。
売主と買主、荷主と運送会社など利害の反した当事者が運命共同体である本船に貨物を載せて輸送をしています。たとえば、海上事故で本船に被害が及ぶと判断された場合には、積荷の一部を海上投棄することもあります。船長判断で、全員のための最善の救助策を決めるのです。
貨物保険用語で「共同海損」といいますが、「自助・共助・公助の精神」で全員の安全を選択するのです。

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2005/9/12

国際詐欺にご注意を

突然に見知らぬ外国からメールやFAXを受け取った方も多いと思いますが、国際詐欺に関連したものが多いのでご注意を。

一番多いのは、隠し財産を外国で運用したいので運用を任せたいとか、貴社のビジネス・商品に関心があるので投資したいので一定額の銀行預金をしてもらいたいなど、資金運用の支援や融資を持ちかけるものです。

次に多いのは、ビザ詐欺です。商品を買い付けたいが、直接検品をしたい、大量に買い付けたいなどを理由に、日本入国に際し必要な招請状を出して欲しいというものです。
具体的な取引条件が煮詰まる前に、招請状を申し入れてくるケースに要注意です。

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2006/1/20

外為法違反事件

年始早々のライブドア逮捕ニュースに隠れてしまいましたが、外為法違反容疑でヤマハ発動機が捜索を受けたとのニュースにお気づきになりましたでしょうか。

無人ヘリコプターを中国向けに不正輸出(無許可輸出)したとされる事件です。
外為法では、日本の輸出入取引が「原則自由」という基本を定めていますが、同時に、特定取引については事前の許可・承認を必要とする管理がされています。

日本は、ワッセナーアレンジメント批准国として、国際的な平和および安全の観点から、貿易管理令のもと、安全保障貿易管理を国内法で規程しています。大量破壊兵器・通常兵器に使用可能な商品・技術の不拡散規制を目的とし、該当品はすべて経済産業省の輸出許可が必要となります。輸出される商品の用途が、間接的でも軍需用途に転用できると判断される場合には、経済産業省の輸出許可が必要となります。

今回の事件は、輸出申告者が当然判断しなければならない輸出貿易管理令の該非判断がされず、結果として無許可輸出として摘発されました。

この判断は輸出者責任であり、故意でなくても判断を間違えると外為法違反に問われます。違反の場合、経済産業省からの警告、または刑事罰(5年以下の懲役、輸出金額の5倍以下の罰金)と行政制裁(3年以内の輸出入禁止)が課せられることになります。

輸出先が民間会社でも、軍需用途に関係ないような商品でも輸出貿易管理令の規制対象になっていますので、事前調査を十分にする必要があります。民生用途=非該当と決めつけず、十分なる調査が必要です。

意外と思われるかも知れないような商品が軍事用途に転用できるのです。
たとえば、ゴルフクラブの炭素繊維シャフトはミサイルの構造材料へ、化粧品・シャンプーの原料であるトリエタノールアミンは化学兵器原材料へ、など転用が可能なのです。

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2006/1/30

外為法違反事件(2)

外為法違反容疑で大手精密機器メーカー、ミツトヨが警視庁の捜索を受けたとのニュースが報じられています。

ヤマハ発動機のケースと同じく、経済産業省の輸出許可を得ずに、輸出規制に抵触する商品を輸出したことで、捜査を受けています。今回は、核開発転用可能な三次元測定機器を無許可輸出したためです。

違法輸出と認識していなかったと同社はコメントしていますが、日本企業の国際安全保障に対する認識の甘さが問われており、厳正な輸出管理が重要です。

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再度の外為法違反事件

またまた大手精密測定機器メーカーの不正輸出事件が報道されています。警視庁が関係者を外為法違反(無許可輸出)容疑で再逮捕し、法人としての同社も書類送検と報道されております。

日本の輸出入取引は、原則自由です。しかし、「外国為替および外国貿易管理法(外為法)」で対外取引が自由に行われることの基本を定め、特定の取引については、事前の許可・承認が求められる必要最小限の管理がされています。この法律は基本的なことだけを定めており、実際の運用は、主務官庁である経済産業省、税関(財務省)の政省令により、内外情勢の変化に応じて、運用が行われています。

輸出は国内取引と異なり、輸出の許可が必要な場合があります。輸出先が日系企業の子会社でも許可が不要とはなりません。この点について、認識しておくことがコンプライアンス管理の上で、大変に重要です。
外為法違反に対する罰則は、刑事罰(5年以下の懲役、対象貨物価格の5倍以下の罰金)と行政制裁(3年以内の輸出禁止)とが定められています。

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2006/10/5

輸出規制、強化へ

北朝鮮への経済制裁強化の動きに関連して、輸出規制強化の動きが報道されております。
外為法輸出貿易管理令の「少額特例」を本年度内に廃止、2007年1月より施行すると発表されました。

輸出貿易管理令では、大量破壊兵器を製造している可能性のある「懸念国(北朝鮮、イラン、イラク、リビアの4カ国)」に対して、キャッチオール規制管理として経済産業省に輸出承認許可が義務づけられています。ただし、輸出商品価格が5万円以下の場合は、この許可申請が不要でありましたが、この少額特例が撤廃されることになりました。

同時に、大量破壊兵器の製造に転用の恐れがある製品の貿易取引の仲介などへの取締り強化も盛り込まれると報道されています。
民生用途で一般的に使用されている商品でも、大量破壊兵器製造に転用の恐れがある製品として外為法の管理下にありますので、事前調査を十分にされることが肝要となっております。

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2006/11/30

貿易コンプライアンスとは?

今年は、違法輸出で大手企業幹部が刑事罰を受けるなどのニュースが多い年でした。

コンプライアンス(Compliance)=「規則や要求に従うこと、(規則などの)順守、(規則などに対する)服従、準拠、従順、整合性」を意味します。対象範囲が非常に広く、個人情報保護法もこの一部になります。貿易業界で使用する場合は、輸出入規制を遵守するという意味でトレードコンプライアンス(=貿易コンプライアンス)と限定した言い方をしております。

日本では、輸出入取引は、「原則自由」で運用されていますが、貨物の輸出入契約とソフトウエアや技術提供となる役務契約は、外国為替及び外国貿易法(略して、外為法、ガイタメホウ)に準拠しており、安全保障貿易などの管理が行われています。

核兵器や通常兵器などの開発で国際情勢の不安定化、ひいては私達の生活を直接脅かすことがないように、個人・企業の利益に優先し、安全保障貿易管理を国際的に行うことが必要なための管理です。兵器産業だけの規制と思われがちですが、比較的身近な民生用品であっても規制対象となっていますので、事前調査が必須です。

「輸出管理対象とは知らなかった」、「輸出管理は自社製品とは関係が無いと思っていた」などというコメントをよく伺うことがあります。違反の場合には、刑事罰(罰金、懲役)や行政処分(貨物輸出・技術提供の禁止)が科されますので、細心の注意が必要です。

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2006/12/29

日本の輸出管理

北朝鮮からの長距離弾道ミサイル発射に関連して、制裁措置として貿易管理令の改正も検討しているとの報道がされています。今回は、日本の輸出管理についてご説明いたします。

日本の輸出入取引は、「外国為替および外国貿易管理法(外為法)」のもと、原則自由ですが、全くの自由ではありません。外為法では、「国際的な平和と安全の維持を妨げるものとして、特定の貨物・技術を輸出しようとする者は経済産業大臣の許可を受けなければならない」と規定しています。

つまり、核兵器や通常兵器などの開発で国際情勢の不安定化、ひいては私達の生活を直接脅かすことがないように、個人・企業の利益に優先し、安全保障貿易管理を国際的に行うことが必要なための管理です。

輸出される商品の用途が、間接的にでも軍需用途に転用できると判断される場合には、経済産業省の輸出許可が必要となります。

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2009/4/7

不可抗力を理由に免責?

契約相手先が契約不履行をしても、不可抗力を理由に免責を主張するケースがよくあります。
契約当事者双方ともに、商習慣上一般的に求められる注意義務を尽くしても、義務を果たせないような止むを得ない事情を“不可抗力”と規定し、契約義務を軽減または免除するのが一般原則です。

どのような場合を“不可抗力”と認めるか、その場合の免責条件を明確にしておく必要があります。

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2009/6/25

リスクヘッジ

どのような場合を“不可抗力”と認めるか、法律上必ずしも明確にはなっていません。
一般的には、台風、地震などの天変地異、戦争・ストライキ等に起因した船積遅延など契約不履行について、売主が責任を負わない旨の規定をします。

同時に、不可抗力が継続する間、売主の船積履行を猶予するとの規定や、不可抗力が長期間にわたる場合、契約を終了できると規定しておくなど、リスクヘッジをしておくことをお勧めいたします。

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2009/6/25

貿易摩擦

TVドラマ「官僚たちの夏」 (TBS日曜劇場)が始まりました。
昭和30年代の通産省(現、経済産業省)の官僚が政府間交渉の日本側代表として矢面に立ち、日本の発展に大いに貢献したドラマです。
戦後日本が歩んできた貿易摩擦の歴史を知ることができます。

当時、昭和30年(1955年)頃から、戦後の復興が急速に進み、高度成長経済が始まりました。
輸出奨励のもと、繊維をはじめ、工作機械や産業機械が滝のように米国市場に流れ込んだのです。その結果、(ダンピング輸出)、戦後の日本経済は、米国との間で通商摩擦の連続でした。

1960年代の繊維を皮切りに、70年代には鉄鋼製品・カラーテレビ・工作機械・ベアリング、80年代の半導体、90年代の自動車などが政府間で交渉されました。
ダンピング輸出防止と米国製造業の保護、さらには閉鎖的な日本市場の開放など、公正な貿易競争ルールの構築へとつながっていきました。

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2009/7/14

ダンピング輸出

国内価格より不当に安く海外輸出すること。
「公正な取引・貿易」(フェアトレード="適正価格"で取引をすること)に反していること。

輸出先市場が混乱、現地産業に打撃を与え、その結果、国内産業を保護しようとすることにつながり、関税障壁や貿易制限などで、世界の貿易振興の妨げとなるため、世界主要国の間でダンピング防止協定が取り決められ、フェアトレードに取り組んでいます。

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2009/7/14

フェアトレード

つい最近発売された文春新書「民主党が日本経済を破壊する」(与謝野馨著、22年1月20日第1刷)に、世界の通商制度に関して大変に分かりやすい記述がありますので、ご紹介したいと思います。

かなりセンセーショナルな表題の著書ですが、前政権で経済3閣僚を兼務していた著者は、日本経済がいままで貿易立国として成長してきた背景には、世界のフェアな通商制度のおかげであると説いています。

趣旨を引用しますと、
・資源に恵まれない日本が目指してきた方向は、いつの時代も「モノづくり」。
・加工貿易が日本経済を支え、貿易立国こそが日本経済の本質。
・これを支えたのは、国民の知恵と質の高い労働力にプラスして、世界のフェアな通商制度のおかげ。
・第二次大戦後、ドル体制と自由貿易を取り決めたプレトンウッズ体制のもと、日本の輸出立国を支える上で、関税貿易協定(GATT)の果たした意義は大いにあった。
・さらに、世界貿易機関(WTO)合意以降は、モノだけでなく、サービス貿易の自由化も進み、日本経済はもちろん、世界経済にも大きな影響を与えている。

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2010/2/1

国際取引リスクとして認識しておくこと

船舶のスペースは一定であり、効率経営の観点から、できるだけ高い運賃の貨物を多く積みたいと考えるのは当然です。
資本主義経済では当たり前のことですが、国際運賃は、需給バランスにより決定されていることを認識しておくことが必要だと思います。

1970年代に2回経験したオイルショック当時は、一気に需給バランスが逆転したために、運賃の高い貨物から優先的にスペース割当となり、その結果、船舶の運行ルート・寄港地の変更が頻繁に起こり、大混乱の状況が続きました。
同じような状況が最近の海運需給バランスの変化にも表れており、先物契約を締結する際には、国際取引リスクとして十分に認識しておく必要があります。

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2010/3/23