「たゆたえども沈まず」という小説の中に、画商見習いが美術工芸品の木箱を開け中身を検品するため箱を開けると籾殻が舞い上がりくしゃみをします。今は様々な緩衝材があり、最適な緩衝材を選べば、製品の品質低下や破損リスクを避けることができます。これからはさらに、環境負荷も考えた緩衝材選びが求められるのかもしれません。 |小説から考える「緩衝材」の歴史

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公開日:2020.08.28

小説から考える「緩衝材」の歴史

広告媒体の役割をしていた浮世絵

『たゆたえども沈まず』という小説をご存知ですか。

ファン・ゴッホとその弟テオ、当時ヨーロッパのジャポニズムを支えたパリの日本人画商林忠正を題材にしたフィクションです。3人の関係性や繰り広げられるパリでの出来事はフィクションですが、史実を踏まえていて、当時のパリや美術界について垣間見ることができます。

この小説の中に、林忠正の部下で画商見習いの重吉が、日本から輸入した美術工芸品の木箱を開けるシーンがあります。重吉は送り状を確認しながら中身を検品するのですが、陶芸品の箱を開けると籾殻が舞い上がり、くしゃみをしてしまいます。

壊れやすい陶芸品を守るために詰められた籾殻。日本から遠く離れたフランスで籾殻を目にした重吉がそのミスマッチに苦笑する場面ですが、現代に置き換えれば、植物防疫が!!虫が!!と無粋なことを思ってしまいます。

小説で登場したのは籾殻ですが、江戸時代の緩衝材といえば、浮世絵です。鎖国下で唯一外交関係を保っていたオランダを介して、海外に漆器や陶磁器が輸出されていました。その包み紙に使われていたのが浮世絵です。

当時、浮世絵は折り込み広告や役者のブロマイドのような役割を果たしました。風景画は旅行雑誌のような一面もあったそうです。広告媒体として機能した浮世絵は広く庶民に普及しており、特別な美術品ではありませんでした。

包み紙として利用されヨーロッパに伝わった浮世絵。19世紀半ばに美しい包み紙が注目され、ジャポニズムの流行やモネやマネ、ゴッホら印象派の画家に大きな影響を与えました。

海上輸送の梱包資材にシロツメクサが使われていた時期もあります。浮世絵の包み紙と同じ江戸末期、シロツメクサを乾燥させたものがガラス容器の緩衝材に使われていました。「ツメクサ」とは「詰め物の草」。世界各地に種子も運ばれ、かつての海運網拠点で茂っています。

現在の緩衝材は様々な種類があります。気泡緩衝材、いわゆるプチプチはエアーパッキンとも呼ばれます。軽くてクッション性があり、陶器やガラスなど壊れやすいものを包むのに便利です。プチプチの突起を内側にしても外側にしても、緩衝性は変わらないそうです。

袋に空気を充填したエアークッション、エアーピローは保護というより、隙間を埋めて箱の中のものを固定するために使われます。発泡スチロールも固定機能に優れていますが、形を専用に加工する必要があります。

バラ緩衝材は粒上の緩衝材で、隙間を埋める目的で使われますが、物の固定には向いていません。

ポリスチレンやポリエチレンなど合成樹脂製の緩衝材が主流ですが、環境負荷の大きさが問題視されています。そこでそれらに代わって、トウモロコシでんぷんなど植物を原料にした緩衝材が使われることもあります。これは燃やしてもCO2発生量が少なく、土に埋めた場合でも微生物の働きにより水と二酸化炭素に分解されます。静電気がおこりにくく、石油系独特のにおいもありません。

昔と今ではかなり素材や形状に違いがあります。ですが、いつの時代も貨物を安全に届けるため様々な知恵が絞られ、工夫がなされていることが分かります。今は様々な緩衝材があり、最適な緩衝材を選べば、製品の品質低下や破損リスクを避けることができます。これからはさらに、環境負荷も考えた緩衝材選びが求められるのかもしれません。

2020/08/28
simalu

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