アメリカのトランプ大統領が、アメリカに輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す方針を示しました。これに対し、中国をはじめ各国が米国を非難。米国の輸入制限措置はWTO(世界貿易機関)違反としWTOに提訴、報復関税を課す手続きをしています。報復関税は、WTOで定められている特殊関税の一つなんです。 |WTOで定められた報復関税とは?

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WTOで定められた報復関税とは?

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今年3月、アメリカのトランプ大統領が、アメリカに輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す方針を示しました。

その理由は、現状の鉄鋼・アルミニウムの輸入量と世界的な過剰生産が、米国内の鉄鋼・アルミニウム生産施設の閉鎖を招いている。

そのために米国経済の弱体化や国家の非常事態時に必要な防衛上の需要を満たせない可能性があり、これは「米国の安全保障を損なう恐れ」であると言っています。

鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置は3月23日よる発動。これに対し各国が米国を非難。カナダ、EU、ロシア、メキシコ、中国などが、米国の輸入制限措置はWTO違反としWTOに提訴、報復関税を課す手続きをしています。(日本は今のところ対抗措置を留保しています。)

ということで、今日は何かと話題の「報復関税」についてお話しします。

「報復関税」とは、WTO(世界貿易機関)で定められている特殊関税の一つです。課税額は「報復」とあるように、報復する対象となる品目の価格以下を限度とします。例えば100億円分の輸入に対するなら、100億円以下の輸入に対して報復関税がかけられる、ということです。

日本においては関税定率法(第6条)に定められています。

1. WTO協定に基づいてわが国の利益を守り、その目的を達成するため必要があると認められる場合
2. ある国が、わが国の船舶、航空機、輸出貨物又は通過貨物に対して差別的に不利益な取扱いをしている場合などに、指定された物品の課税価格以下で課されます。原則として、WTOに提訴し、その承認を受けて、関税を課します。

過去には、米国の「バード修正条項」に関する報復措置として、2005年9月から2014年8月までベアリング(玉軸受)等の輸入に対し、報復関税を課しました。

「報復関税」のように、不公正な貿易取引や輸入急増などに対抗する措置として割増関税を課すことが認められています。これを、「特殊関税制度」と呼び、報復関税のほか、「相殺関税」「不当廉売関税(アンチ・ダンピング)」「緊急関税(セーフガード)」があります。

報復関税以外はその産業を代表する人が政府に対して課税を求めることができます。2018年7月現在、課税中のものは、中国産高重合度ポリエチレンテレフタレートに対する不当廉売関税など5件。調査中の貨物は中国産電解二酸化マンガンの不当廉売関税となっています。

関係法令・ガイドラインについては税関HPに詳しく掲載されています。
http://www.customs.go.jp/tokusyu/houreiguideline.htm

ただし、WTOでは特殊関税措置を認めながらも、その濫用を制限しています。

さて、話を現在の世界情勢に戻しますと、米国は中国に対して、知的財産権の侵害により膨大な不利益を被っている、として、中国からの輸入品に高関税をかけることを公表。第一弾として818品目340億ドルの自動車、情報通信機器などの輸入に対し、関税25%の上乗せを7月6日より発動しています。

この制裁を受けて、中国も報復措置をとりました。同規模の345品目340億ドルの農産品と自動車の輸入に対し、高関税をかける措置を同日発動しました。

応酬がここで止まるのであれば、世界経済に対する影響は限定的、との見方もあります。しかし、米国は中国が報復措置をとったことを受け、追加の輸入制限措置(2000億ドル分!)を発表しています。

米国から中国への輸入額は1,300億ドルなので、仮に中国が報復措置をとったとしても、金額は満たせません。そこで、お得意の米国製品の不買運動や旅行の制限、為替操作をすることが考えられます。中国内の米国企業が大打撃を受けることも考えられます。また、米国内の消費財は中国からの輸入品が多くを占めており、追加関税が課されれば、消費者の生活に直接影響が出てしまいます。

米中貿易戦争、どこに落としどころを持っていくのでしょう?いろいろな意見があるようですが、金正恩総書記と急に和解したように、来週あたり、トランプ大統領が習近平国家主席と何事もなかったように握手しているというオチなのではないでしょうか。

2018/07/17

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