TPP11(CPTPP)、日EU・EPAが相次ぎ発効されました。EPAでは協定国を原産地とする産品を低税率、又は無税で輸入できます。EPA税率を適用して輸入するには、通常の輸入申告書類の他に貨物が協定国の原産品であることを証明する書類が必要です。今回はTPP11と日EU・EPAの「原産品申告書」について紹介します。|TPP11、日EU・EPAに必要な原産品申告書は?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索
公開日:2019.03.01

TPP11、日EU・EPAに必要な原産品申告書は?

pic_tsuukan20190301

昨年末の12月30日よりTPP11(CPTPP)が発効されました。

2019年2月1日より日EU・EPAも発効され、いよいよ多国間経済協定時代の到来です。

EPAでは協定国を原産地とする産品を低税率、又は無税で輸入することができます。

EPA税率を適用して輸入するには、通常の輸入申告書類に加えて、貨物が協定国の原産品であることを証明するための書類が必要です。

従来のEPAでは輸出国の発給当局による第三者証明制度が採用されています。日本からの輸出であれば、商工会議所に申請して「特定原産地証明書」を発行してもらい、輸入国税関に提出します。

日豪EPAでは上記の第三者証明に加え、輸入者、輸出者又は生産者による自己申告制度が採用されています。しかし、TPP11、日EU・EPAではこの、自己申告制度のみ採用されています。(第三者証明制度は採用されません。)自己申告制度では輸入者、輸出者又は生産者自らが原産品であることを証明する「原産品申告書」を作成しなければなりません。

そこで今回は、TPP11と日EU・EPAの「原産品申告書」について紹介したいと思います。

「原産品申告書」とは、貨物がEPA上の原産品であることを証明する書類です。

【作成者】
輸入者、輸出者または生産者。輸入者から依頼を受けた通関業者。ただし、輸出者または生産者は締約国に所在する者でなければなりません。第三国の輸出者は原産品申告書を作成できません。また、訂正は作成者のみが行えます。

◆必要的記載事項
1. 証明者 2. 輸出者 3. 生産者 4. 輸入者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレス
5. 産品の品名及び統一システムの関税分類(HSコード)
6. 原産性の基準
7. 証明者の署名及び日付等
8. 誓約文(既定の文言あり)

【様式】
◆TPP11
協定上規定の様式はないが、必要的記載事項を記載した任意の様式。日本への輸入の場合は税関様式C第5292号-3を使用。英語又は輸入国の言語で作成。

◆日EU・EPA
輸入者が作成する場合、協定上既定の様式はなく、必要的記載事項を記載した任意の様式。日本への輸入の場合は税関様式C第5292号-3を使用。輸出者又は生産者が作成する場合、協定で規定の記載様式に沿った原産地に関する申告文をインボイス等に記載します。

◆提出期限・有効期限
原則として輸入申告の際。有効期限は作成日から1年。

「原産地申告書」とともに、「原産品申告明細書」、契約書や価格表、総部品表、製造工程表など明細書に記載された事項を確認する書類も必要です。原産品申告明細書は商品ごとに作成します。

ただし、
1.文書による税関の事前教示を取得し、輸入申告書にその事前教示登録番号を記載している場合。(迅速な輸入通関確保の観点から事前教示を勧めています。)
2.締約国内で完全生産される一次産品であって、インボイス等通関関係書類によりそのことが確認できる場合。
3.課税価格の総額が20万円以下。(原産品申告書の提出も省略可)
上記の場合は、原産品申告明細書の作成不要です。

提出した書類は許可の翌日からTPP11で5年間、日EU・EPAで4年間保存することが求められています。

自己申告制度では、輸入国税関が輸入者に対する検証や、輸出国税関を通じて輸出者・生産者に対する検証を行うことができます。輸入者、輸出者又は生産者が原産品であることの十分な情報提供と説明ができない場合、EPA税率の適用が認められませんので、事前の準備は万全にしましょう。

なお、現在発効されているEPAの原産品申告書、原産品明細書は税関のHPでダウンロードできますので、ぜひご利用ください。

原産地証明手続き(税関HP)
http://www.customs.go.jp/roo/procedure/index.htm

「自己申告制度」利用の手引き
http://www.customs.go.jp/roo/procedure/riyou.pdf

2019/03/01

元通関士の実践コラムの関連記事