税関職員による貨物検査の模様を放送するテレビ番組が増えました。テレビではよく税関の検査に素直に従わない人の姿も放送されていますが、実際拒むことはできるのでしょうか?答えは「NO」です!関税法では税関職員の質問に対して答弁しなかったり、偽りの陳述をしたり、職務の執行を拒んだりすることはできません。|拒否できない税関検査、内容や費用はどうなる?

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公開日:2019.03.25

拒否できない税関検査、内容や費用はどうなる?

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最近、空港での税関職員による貨物検査の模様を放送するテレビ番組が増えましたね。

密輸防止キャンペーンでもしているのかな?とか、旅行者が増えて一般の人の関心が高まっているのかな?とか感じます。

テレビではよく、税関の検査に素直に従わない人の姿も放送されていますが、実際拒むことはできるのでしょうか?

答えは「NO」です!

関税法では「税関職員の質問に対して答弁せず、もしくは偽りの陳述をし、又はその職務の執行を拒み、妨げ、もしくは忌避した者に対しては一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」とあります。抵抗すると罰せられる、ということです。

では、旅行者にとってだけでなく、輸入者にとっても気になる税関検査、内容や費用はどうなっている?ということでまとめてみました。

【検査の意義】
・麻薬や覚せい剤、コピー商品など輸入禁止品が入っていないか
・輸入(納税)申告が正しくされているか、申告外貨物が入っていないか
・正しく原産地表示されているか
・食品衛生法や動植物検疫法、輸出管理令などの規制貨物が正しい手続きがとられているか

上記の確認を行うため検査を行います。

輸入が初めて、または輸入実績の少ない輸入者は高確率で検査になります。また、過去の輸入検査で不備があった場合も、しばらくの期間は検査になる確率が高いです。それ以外は一定割合でランダムに検査対象を抽出します。

優秀な輸入者は大抵の場合申告後即許可になりますが、たまには検査になります。ここでもし申告外貨物などが出てきたら、せっかく積み上げてきた税関との信頼関係がくずれ、再び検査が続くことになります。

【検査方法】
・X線検査
コンテナ輸入の場合、多くは税関の検査場にある大型X線装置を使って検査します。コンテナまるごと入る大きな装置で、小屋のようです。小型X線装置はカートンを調べます。X線を通して不審な影が写っていたり、申告内容に異議があったりする場合には、さらにコンテナまたはカートンを開けて(開披)、検査します。

・見本検査、抜き取り検査
税関に指定された貨物を検査します。カートンNo.を指定される場合や「どれでも1カートン」と言われることもあります。
一般的には税関の検査場にて検査します(検査場検査)。数量が多い場合など、蔵置している場所から動かすことが難しい場合は、税関職員が出向いて検査します(現場検査)

・全量検査
言葉通り貨物の全部を検査します。

検査場所はその他、小麦や木材などの輸入に対し、艀や本船上で行うこともあります。

これらの検査は食品検査や動物検疫とは別です。混同しないようご注意ください。

【検査料金】
税関に支払う検査料というのはありません。ですが、通関業者から検査費用を請求されます。これは検査によって生じる様々な作業費用です。

税関職員は貨物の内容確認のために検査をしますが、指定貨物を探し出したりコンテナを検査場まで移動させたりといった諸々の作業をするのは、トラックの運転手や税関での開梱を許された上屋の作業員です。税関職員は貨物が目の前に差し出されるまで何もしませんし、検査後の片付けもしません。

これらのトラックの手配やコンテナの移動費(横持費、ドレー費用などという)、開梱に掛かる作業費用、検査立ち合い料などが、手配を行う通関業者からまとめて請求されています。

いかがでしたでしょうか。輸入実績の少ない輸入者は特に検査確率が高くなりますので、検査に掛かる費用を考慮しなくてはなりません。ですが、毎回どういった検査になるかはわからず、費用も上下することだけはご理解ください。

2019/3/25

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