輸入申告時の申告価格を算出するには、運賃や保険料、インボイス価格に含まれていない材料費などを加算します。これらの加算要素には、意匠権や商標権、特許権などロイヤルティも含まれます。ロイヤルティは、ほとんどの場合、売手と買手の間でやり取りするインボイス価格に含まれません。見落とされて申告されているケースも多いのです。|輸入申告時ロイヤルティは課税価格に加算?

  • Twitter
  • facebook
  • LINE
検索
公開日:2019.09.27

輸入申告時ロイヤルティは課税価格に加算?

pic_tsuukan20190927

輸入貨物のインボイス価格は輸出者(売手)と輸入者(買手)の契約によって決まります。

そのため、その価格は加工費の場合や、日本や第三国から供給された材料費、金型の使用料、運賃・保険料などが含まれていないことがほとんどです。

輸入申告時の申告価格を算出するには、運賃や保険料、インボイス価格に含まれていない材料費などを加算する必要があります。

これら、インボイス価格以外の加算要素には、意匠権や商標権、特許権などロイヤルティも含まれます。

そこで今回は、申告価格(課税価格)におけるロイヤルティの取り扱いについてお話ししたいと思います。

関税定率法第4条第1項第4号:

「当該輸入貨物に係る特許権、意匠権、商標権その他これらに類するもの(当該輸入貨物を本邦において複製する権利を除く。)で政令で定めるものの使用に伴う対価で、当該輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により直接又は間接に支払われるもの」

関税定率法第4条には、上記の価格を課税価格に加算しなければならないことが明記されています。

ロイヤルティは、ほとんどの場合、売手と買手の間でやり取りするインボイス価格に含まれません。ですので、加算しなければならないにも係わらず、見落とされて申告されているケースも多いのです。

そのため、事後調査で追徴課税になることも多いそうです。

ただし、全てのロイヤルティが課税価格に含まれるわけではありません。

加算要素となるロイヤルティは、
・輸入貨物に係るもので
・輸入貨物の輸入取引をするために
・買手により直接または間接に支払われるもの
です。

以上3つの条件がそろったものが加算要素になります。

通達では、「買手が当該対価を特許権者等に支払わなければ、実質的に当該輸入貨物に係る輸入取引を行うことができないこととなる又は行われないこととなるもの」と規定されています。

ライセンサーは売手や輸出者と同一であっても第三者であっても関係ありません。また、ライセンサーの所在(国)にも関係しません。関係者に特殊関係が存在してもしなくても、です。

加算するかどうかの判断は売買契約やライセンス契約の内容、取引実態などから行います。

例えば、
・商標権者はA社。A社の子会社である売手からA商標の付された商品を輸入。買手はA社とライセンス契約を締結。A社にロイヤルティを支払う場合
・買手は商標権者である売手とライセンス契約を結んでおり、貨物代金とは別にロイヤルティを売手に支払う場合
・商標権者である売手と買手はライセンス契約を締結。売手から貨物を輸入。輸入後に商標を付す場合
・売手の持つ特許製法を使用した材料を使用した商品を輸入。買手がロイヤルティを支払わなければ特許製法で製造した材料を含む商品を輸入することができないことになっている場合

上記のような場合はロイヤルティを課税価格に加算します。

反対に、ロイヤルティを輸入貨物の課税価格に加算しない場合もあります。

例えば、輸入取引に際し、ライセンサーと製造者の関係性が認められず、ライセンス契約に関して製造者に直接行使することができない場合などです。

この場合、ロイヤルティの支払いが売手と買手の輸入取引に影響しないため、課税価格に加算しません。

2019/09/27

元通関士の実践コラムの関連記事