PL法(製造物責任法)は製品の欠陥が消費者の受けた損害の原因である場合に製造業者等が賠償責任を負います。日本国内では被害者は国内製造者には直接訴えることができます。しかし輸入品は被害者が海外の製造者に直接責任を問うことが困難です。そのためリスク回避のために有効な「PL保険」 が存在しています。|輸入品が欠陥品!損害賠償は輸入者負担って本当?

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公開日:2020.01.14  / 最終更新日:2020.02.05

輸入品が欠陥品!損害賠償は輸入者負担って本当?

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購入した製品の欠陥によって、ケガをしたり、火事になったり持ち物が壊れるなど、消費者が損害を被った場合に消費者を守る法律の一つに、PL法があります。

PL法は、製造物責任法のことで、1995年に施行されました。

「製品の欠陥によって生命、身体または財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者が製造会社などに対して損害賠償を求めることができる」法律です。

製品の欠陥が消費者の受けた損害の原因である場合に、製造業者等が賠償責任を負います。

「製造者が賠償責任を負う」とありますが、輸入品の場合、その製品を輸入した輸入者がその責任を負います。

そこで今回は、製造者ではない輸入者が気をつけるべき「PL法」と、そのリスク回避のために有効な「PL保険」について紹介しようと思います。

【PL法とは】
PL法では、製造者に「過失」がなくても、
・損害があったこと
・製品に欠陥があったこと
・欠陥によって被害が生じたこと
を証明すれば、被害者(消費者)は製造者等に賠償責任を求めることができます。

賠償責任は製造者にあるので、日本国内で製造されたものであれば、日本の製造者に賠償請求します。また、製品回収(リコール)も製造者が行います。

被害者は国内製造者には直接訴えることができると考えられている一方で、輸入品は被害者が海外の製造者に直接責任を問うことが困難と考えられています。

また、輸入業者が日本国内における流通の最初の事業者です。そのため、輸入者がその責任を負うこととなっています。
 
ただし、個人輸入代行や通関代行など単に名目的な輸入者である場合は全責任を問われないこともあります。

ですので、輸入業者は欠陥のない安全な製品を輸入する責任があります。PL法以外の数々の国内法(食品衛生法や消費生活用製品安全法など)についても、輸入者が責任を負います。

本来であれば、製造者が負うべき賠償責任です。被害者を救済するため、便宜上、製造者に代わって責任を負っているので、事故発生時には輸入者から海外製造者に損害賠償を求めることができます。

ただし、事前の費用負担割合の取り決めや賠償責任についての契約がないと、責任を逃れられてしまいます。

そこで、契約の際には以下のことを確認することが有効です。
・取扱説明書等、消費者が製品を使用するうえで必要な情報の表示や警告がされているか
・輸入者、輸出者、製造業者がPL法の知識を持っているか
・輸出者または製造者に日本を含む海外PL保険に加入してもらう
・製品の欠陥による損害賠償を製造業者に請求する旨の条項を契約に盛り込む
・輸入者は製造業者と製品の安全性の評価を行う(そもそも安全性の確認できない商品は輸入しない!)

【PL保険】
PL保険は、日本国内で請求された損害賠償を補償する保険です。
損害賠償金、弁護士費用等訴訟費用、被害の拡大防止のために支出した費用などが補償されます。

製造者のほか飲食業や工事業、販売業などが加入できる保険で、輸入業は販売業にあたります。

リコール費用補償も特約で付保できます。

PL保険の保険料は、年間売上高や業種、支払い限度額などによって決まります。例えば個人輸入のような比較的小規模なビジネスの場合、年間保険料は1万円未満。大企業で売上高も多ければ年間数十万円になります。

全国の商工会議所が提供する中小企業PL保険や、楽天市場店舗限定経営者向けPL保険などは、団体保険なので保険料が安いという特徴があります。ただし、先に会員になる必要があります。

そのほか、三井住友海上や各保険会社が提供するPL保険があります。

輸入した製品に万が一事故が起こった場合には本当に大きな負担額になりますので、PL保険加入は必須のリスクヘッジです。

2020/01/14

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