農薬の輸入に影響が出てきています。農薬は生産効率を上げる一方で、人の健康や生活環境・生態系に悪い影響もあります。これまで農薬取締法で「ヒト」への影響に重点が置かれていました。世界では昆虫や鳥など、農作物に近い環境で暮らす生き物への影響を懸念し、EU(欧州連合)では虫などの神経に作用する農薬の使用を禁止しました。 |農薬の輸入に規制はある?

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公開日:2020.04.07  / 最終更新日:2022.01.27

農薬の輸入に規制はある?

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多くの農家さんにとって農薬は、害虫を駆除したり、農作物の発育を良くしたり、生産効率を上げる助けになるものです。

しかし一方で、農薬は人の健康や生活環境、生態系に悪い影響もあります。使用した農薬は残留農薬として農作物に残り、長期間にわたって採り続けると中毒や障害を引き起こします。

そこで、農薬取締法という法律で農薬について販売と使用の規制を行っています。これまで、農薬の安全で適切な使用とは「ヒト」への影響に重点が置かれていました。

しかし、世界では昆虫や鳥など、農作物に近い環境で暮らす生き物への影響を懸念し、農薬に対する規制が厳しくなっています。EU(欧州連合)では虫などの神経に作用する農薬の使用を禁止しました。

世界の動きや消費者の関心に呼応し、日本でも、2018年6月に農薬取締法が改正されました。

改正法では、農薬の再評価制度を導入。定期的に最新の科学的根拠に照らして安全性等の再評価を行うこととしています。また、ジェネリック農薬については登録申請が簡素化されます。これらは2018年12月1日より施行されています。

そして、2020年4月1日より、農薬使用者に対する影響評価と動植物に対する影響評価の充実等に関する改正規定が施行されます。

農薬取締法の平成30年改正
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaisei/h300615/index.html

では、農薬取締法の改正は農薬の輸入にどのような影響があるのでしょうか?

【農薬の輸入手続き】

農薬について、一部を除き、農林水産大臣の登録を受けなければ輸入してはなりません。(農薬取締法第3条第1項又は第34条第1項の登録を受けている農薬)

税関に提出・提示する書類等、および輸入通関の際におけるその取扱いは以下のパターンがあります。

1.登録を受けた農薬
登録票の原本又は原本と相違ないことについて証明された登録票の写しを提出又は提示。これにより許可承認等証明とする。

2.登録を要しない農薬
◇試験研究目的の輸入
◇植物防疫法の規定による防除のために使用する農薬の輸入
予め農薬輸入願を農林水産省消費・安全局農産安全管理課長に提出。輸入確認済み印を押印された農薬輸入願又はその写しを税関に提出又は提示。

3.農林水産省消費・安全局長作成の「農薬輸入リスト」に収載された農薬原体
通関の際に、農薬輸入リストを提示。輸入する農薬原体がリスト収載されている旨の書面を提出。

4.農薬輸入リストに収載されていない農薬原体の輸入
あらかじめ届出書を農林水産省消費安全局農産安全管理課長に提出。

農薬の輸出入について
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/export_import.html

【農薬取締法における農薬の定義】
◇農作物を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、草、その他の動植物又はウイルス(病害虫)の防除に用いられる殺虫剤、除草剤、その他の薬剤

◇農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤(肥料取締法第2条第1項に規定する肥料を除く)

◇病害虫の防除のために利用される天敵

*農薬と同様の有効成分を有する薬剤であっても、駐車場等に用いる除草剤など、農作物等使用でなければ法における農薬に該当しません。

法の改正に伴い、農薬登録を行うもの、つまり輸入者または登録外国製造業者は期限までに試験成績を提出して再評価を受けなければなりません。

再評価を行った際、安全性が確認できないとなれば、登録の内容の変更又は登録の取り消しもあります。再評価にあたって、その申請時点でのガイドラインに対応する必要があります。ガイドラインはOECDガイドラインに合わせ随時更新されるので、前回登録時と使用基準等が変わってしまうこともあります。

農作物の輸出を促進するためには、安全性の高い農薬使用が必要です。また、改正法は人や生態系にとって喜ぶべきことですが、再評価制度は輸入者や農薬メーカーにとって負担になることは否めないでしょう。

2020/04/07
simalu 元通関士の実践コラム

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